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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】砥石
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/00 20060101AFI20221202BHJP
   B24D 7/14 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B24D7/00 P
B24D7/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021507217
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020009963
(87)【国際公開番号】W WO2020189368
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019048053
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
(72)【発明者】
【氏名】グェン、トウン タイン
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-050313(JP,A)
【文献】中国実用新案第206795609(CN,U)
【文献】特表2018-505067(JP,A)
【文献】特開平06-099359(JP,A)
【文献】特開2016-168660(JP,A)
【文献】国際公開第2002/022310(WO,A1)
【文献】特開2005-161449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工面に沿って並べられ、前記加工面に交わる方向に延びる複数の柱状部を備え、
前記各柱状部は、
第1板状部と、
前記第1板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部に連結される第2板状部と、
前記第1板状部及び前記第2板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部及び前記第2板状部に連結される第3板状部と、を備え、
前記複数の柱状部は、前記加工面に沿って隙間なく並べられた仮想的な六角形の各角部に配置され、
前記第1板状部、前記第2板状部及び前記第3板状部は前記六角形の辺に沿う方向に延びる、
砥石。
【請求項2】
前記砥石は、前記第1板状部及び前記第2板状部が連結されてなる複数の板材と、
前記複数の板材の間に設けられる接着層と、を備え、
前記板材は、それぞれ、
前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第1砥粒と、
前記複数の第1砥粒を結合する結合材と、を備え、
前記接着層は、
前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第2砥粒と、
前記複数の第2砥粒を結合し、前記複数の板材の間を接着する接着材と、を備える、
請求項1に記載の砥石。
【請求項3】
3つの前記板材は、それぞれV字板状をなし、それぞれ異なる方向に向けて開口する向きに配置され、
前記接着層は、前記3つの板材の間のY字状の隙間に設けられ、前記3つの板材を接着する、
請求項2に記載の砥石。
【請求項4】
被加工物を加工する加工面に沿って並べられ、前記加工面に交わる方向に延びる複数の柱状部を備える砥石であって
前記各柱状部は、
第1板状部と、
前記第1板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部に連結される第2板状部と、を備え、
前記砥石は、
前記第1板状部及び前記第2板状部が連結されてなる複数の板材と、
前記複数の板材の間に設けられる接着層と、を備え、
前記板材は、それぞれ、
前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第1砥粒と、
前記複数の第1砥粒を結合する結合材と、を備え、
前記接着層は、
前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第2砥粒と、
前記複数の第2砥粒を結合し、前記複数の板材の間を接着する接着材と、を備え、
3つの前記板材は、それぞれV字板状をなし、それぞれ異なる方向に向けて開口する向きに配置され、
前記接着層は、前記3つの板材の間のY字状の隙間に設けられ、前記3つの板材を接着する、
砥石。
【請求項5】
前記各柱状部は、
前記第1板状部及び前記第2板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部及び前記第2板状部に連結される第3板状部を備える、
請求項4に記載の砥石。
【請求項6】
前記第1板状部、前記第2板状部及び前記第3板状部は等角度間隔で配置される、
請求項1、2、3又は5に記載の砥石。
【請求項7】
前記加工面の単位面積あたりの前記柱状部の数は前記砥石の径方向の内側に向かうにつれて多くなる、
請求項1から6の何れか1項に記載の砥石。
【請求項8】
前記複数の柱状部はそれぞれ同一の形状及びサイズをなす、
請求項1から7の何れか1項に記載の砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の砥石は、多数の平行な貫通孔を有するセラミックス製の多孔支持体と、この多孔支持体の端面に超砥粒を金属メッキ層で固定された砥粒層とを具備する。この砥粒層には貫通孔に対応した開口部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-129675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の第5図等に示すように、砥粒層は格子状をなす。よって、砥粒層と被加工物の接触面積が大きくなる。このため、砥石が被加工物に加える加工圧力が小さくなり、加工性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、加工性能を向上させることができる砥石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る砥石は、被加工物を加工する加工面に沿って並べられ、前記加工面に交わる方向に延びる複数の柱状部を備え、前記各柱状部は、第1板状部と、前記第1板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部に連結される第2板状部と、前記第1板状部及び前記第2板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部及び前記第2板状部に連結される第3板状部と、を備え、前記複数の柱状部は、前記加工面に沿って隙間なく並べられた仮想的な六角形の各角部に配置され、前記第1板状部、前記第2板状部及び前記第3板状部は前記六角形の辺に沿う方向に延びる。
【0007】
また、前記砥石は、前記第1板状部及び前記第2板状部が連結されてなる複数の板材と、前記複数の板材の間に設けられる接着層と、を備え、前記板材は、それぞれ、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第1砥粒と、前記複数の第1砥粒を結合する結合材と、を備え、前記接着層は、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第2砥粒と、前記複数の第2砥粒を結合し、前記複数の板材の間を接着する接着材と、を備える、ようにしてもよい。
【0008】
また、3つの前記板材は、それぞれV字板状をなし、それぞれ異なる方向に向けて開口する向きに配置され、前記接着層は、前記3つの板材の間のY字状の隙間に設けられ、前記3つの板材を接着する、ようにしてもよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る砥石は、被加工物を加工する加工面に沿って並べられ、前記加工面に交わる方向に延びる複数の柱状部を備える砥石であって、前記各柱状部は、第1板状部と、前記第1板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部に連結される第2板状部と、を備え、前記砥石は、前記第1板状部及び前記第2板状部が連結されてなる複数の板材と、前記複数の板材の間に設けられる接着層と、を備え、前記板材は、それぞれ、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第1砥粒と、前記複数の第1砥粒を結合する結合材と、を備え、前記接着層は、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の第2砥粒と、前記複数の第2砥粒を結合し、前記複数の板材の間を接着する接着材と、を備え、3つの前記板材は、それぞれV字板状をなし、それぞれ異なる方向に向けて開口する向きに配置され、前記接着層は、前記3つの板材の間のY字状の隙間に設けられ、前記3つの板材を接着する。
【0010】
また、前記各柱状部は、前記第1板状部及び前記第2板状部と異なる方向に延び、前記第1板状部及び前記第2板状部に連結される第3板状部を備える、ようにしてもよい。
【0011】
また、前記第1板状部、前記第2板状部及び前記第3板状部は等角度間隔で配置される、ようにしてもよい。
【0012】
また、前記加工面の単位面積あたりの前記柱状部の数は前記砥石の径方向の内側に向かうにつれて多くなる、ようにしてもよい。
【0013】
また、前記複数の柱状部はそれぞれ同一の形状及びサイズをなす、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、砥石において、加工性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の一実施形態に係る砥石の下面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る図1Aを部分的に拡大した拡大図である。
図1C】本発明の一実施形態に係る図1Bを部分的に拡大した拡大図である。
図2図1Aの2-2線の断面図である。
図3A】本発明の変形例に係るX字柱状部の下面図である。
図3B】本発明の変形例に係るV字柱状部の下面図である。
図4】本発明の変形例に係るY字柱状部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る砥石の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1A及び図2に示すように、砥石ユニット1は、被加工物Wを加工する砥石10と、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、を備える。
【0017】
図2に示すように、砥石ホルダー20は略円板状をなす。砥石ホルダー20の中心には円柱状のシャフト25が挿通される。砥石ホルダー20は、砥石10とともに、シャフト25に沿う回転軸Oを中心にモータ27により回転する。砥石10の下面である加工面10aに図示しないチャックに固定された被加工物Wが接触した状態で砥石10が回転する。これにより、砥石10は被加工物Wを加工、すなわち研磨又は研削する。被加工物Wは、例えば、セラミックス、シリコンウエハ、半導体基板、LED(Light Emitting Diode)基板、放熱基板、シリコンカーバイド、アルミナ、サファイア又は金属等である。
【0018】
図1Aに示すように、砥石10は円環状をなす。図1Bに示すように、砥石10は、それぞれ同一の形状及びサイズで形成される複数のY字柱状部11を備える。各Y字柱状部11は、砥石ホルダー20の下面に固定され、回転軸Oに沿うZ方向に延びる。複数のY字柱状部11の間には、空気及び切りくずが通過可能な隙間が形成される。複数のY字柱状部11の間の隙間は、砥石10における径方向Rの外側及び内側の外部空間に連通する。
【0019】
複数のY字柱状部11は、隙間なく並べられた仮想六角形Hxの各角部に配置される。複数のY字柱状部11は、仮想六角形Hxの辺の中央部が省略された形状で形成される。
仮想六角形Hxは砥石10の周方向C及び径方向Rに沿って並べられる。仮想六角形Hxの面積は径方向Rの内側の列となるにつれて小さくなる。例えば、周方向Cに沿う第1列L1には仮想六角形Hx1が並び、周方向Cに沿う第2列L2には仮想六角形Hx2が並ぶ。第2列L2は、第1列L1に対して径方向Rの内側に隣接して位置する。第2列L2に並ぶ仮想六角形Hx2は、第1列L1に並ぶ仮想六角形Hx1よりも小さい面積である。また、第2列L2に並ぶ仮想六角形Hx2は、第1列L1に並ぶ仮想六角形Hx1に対して周方向Cに、仮想六角形Hx1又は仮想六角形Hx2のハニカム径の半分の距離だけずらされて配置されている。
【0020】
また、砥石10の加工面10aの単位面積あたりのY字柱状部11の数は径方向Rの内側に向かうにつれて多くなる。言い換えると、複数のY字柱状部11の周方向Cの間隔は径方向Rの内側に向かうにつれて狭くなる。
【0021】
詳しくは、図1Cに示すように、Y字柱状部11は、第1板状部11aと、第2板状部11bと、第3板状部11cと、を備える。第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは、それぞれ、矩形板状をなす。第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは、それぞれ基端部が一点で連結され、基端部から先端部に向けて互いに異なる方向に延びる。第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは、等角度間隔、すなわち、120°間隔で配置される。言い換えると、第1板状部11aが第2板状部11b及び第3板状部11cに対してなす角度、第2板状部11bが第1板状部11a及び第3板状部11cに対してなす角度、及び第3板状部11cが第1板状部11a及び第2板状部11bに対してなす角度は、何れも120°に設定される。
【0022】
第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは仮想六角形Hxの各辺に沿って延びる。仮想六角形Hxの6つの角部には、それぞれ向きの異なる6つのY字柱状部11が配置される。第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cの交点は仮想六角形Hxの角部に一致する。第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cの板厚は、好ましくは、100μm、より好ましくは、10μm~500μmに設定される。また、第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは、例えば、各辺が3mmの正方形板状をなす。
【0023】
砥石10は、複数の砥粒及び結合材により形成される。
複数の砥粒は結合材内に分布している。砥粒は、例えば、ダイヤモンドである。なお、砥粒は、ダイヤモンドに限らず、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であってもよいし、CBN砥粒とダイヤモンドを混合させてもよい。さらには、複数の砥粒は、炭化ケイ素(SiC)、又は溶融アルミナ(Al)、若しくはこれらを混合したものであってもよい。結合材は、内部に複数の砥粒を保持する。結合材は、ニッケル、アルミニウム等の金属、樹脂又はセラミックにより形成される。
【0024】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)砥石10は、被加工物Wを加工する加工面10aに沿って隙間を持って並べられ、加工面10aに交わる方向に延びる複数の柱状部の一例であるY字柱状部11を備える。各Y字柱状部11は、第1板状部11aと、第1板状部11aと異なる方向に延び、第1板状部11aに連結される第2板状部11bと、を備える。
この構成によれば、複数のY字柱状部11は隙間を持って並べられるため、砥石10と被加工物Wの接触面積を小さくすることができる。これにより、砥石10が被加工物Wに加える加工圧力が大きくなり、加工性能が向上する。
また、Y字柱状部11における第1板状部11a及び第2板状部11bが異なる方向に延びつつ連結される。このため、砥石10と被加工物Wの接触面積が小さくなった場合であっても、Y字柱状部11が被加工物Wから受ける力により撓みづらい。よって、加工性能が向上する。
また、複数のY字柱状部11の間には隙間が形成されるため閉じた空間が形成されない。例えば、比較例に係る閉じた空間を有する複数の筒状を有する砥石の場合、閉じた空間内の空気によりエアハンマー現象が生じるおそれがある。エアハンマー現象が生じると、例えば、閉じた空間内の空気が膨張して加圧状態となり、砥石が被加工物に接することが妨げられたり、砥石の振動により加工面が粗くなったりすることで、加工精度が低下するおそれがある。この点、本実施形態では、複数のY字柱状部11間には空気が出入りする隙間が形成されるため、エアハンマー現象が生じることが抑制される。これにより、加工精度が低下することが抑制される。
複数のY字柱状部11の間の隙間には、被加工物Wの切りくずが保持される。よって、切りくずが砥石10と被加工物Wの間に進入することが抑制され、これにより、切りくずが加工に影響を与えることが抑制される。
【0025】
(2)各Y字柱状部11は、第1板状部11a及び第2板状部11bと異なる方向に延び、第1板状部11a及び第2板状部11bに連結される第3板状部11cを備える。
この構成によれば、Y字柱状部11は被加工物Wから受ける力により撓みづらい。よって、加工性能が向上する。
【0026】
(3)第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは等角度間隔で配置される。
この構成によれば、Y字柱状部11は、被加工物Wから受ける力の方向に関わらず、撓みづらくすることができる。
【0027】
(4)複数のY字柱状部11は、加工面10aに沿って隙間なく並べられた仮想六角形Hxの各角部に配置される。第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは仮想六角形Hxの辺に沿う方向に延びる。
この構成によれば、仮想六角形Hxの各角部に位置する6つのY字柱状部11の向きが異なるように設置される。よって、Y字柱状部11は、被加工物Wから受ける力の方向に関わらず、撓みづらくすることができる。
【0028】
(5)加工面10aの単位面積あたりのY字柱状部11の数は砥石10の径方向Rの内側に向かうにつれて多くなる。
砥石10が回転軸Oを中心に回転すると、砥石10の径方向Rの外側の部位は、砥石10の径方向Rの内側の部位よりも高速で回転する。このため、本実施形態と異なる比較例である同一のサイズの筒部が並べられた砥石の場合、被加工物のうち砥石の径方向外側に接触する部位の加工量は、被加工物のうち砥石の径方向内側に接触する部位の加工量よりも多くなる。よって、この比較例の構成では、被加工物を均一に加工することが困難であった。この点、本実施形態では、単位面積あたりのY字柱状部11の数は砥石10の径方向の内側に向かうにつれて多くなる。これにより、砥石10の径方向Rにおける周速差に関わらず、被加工物Wを均一の加工量にて加工することができる。
【0029】
(6)複数のY字柱状部11はそれぞれ同一の形状及びサイズをなす。
筒部が並べられた砥石である比較例では、筒部の径や筒の形状を変更する場合には、砥石を成形する型を新たに用意する必要がある。この点、本実施形態では、Y字柱状部11の位置関係を変更するだけで済み、砥石を成形する型を新たに用意する必要がない。よって、多種類の砥石を簡単に製造することができる。
【0030】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0031】
(変形例)
上記実施形態においては、第1板状部11a、第2板状部11b及び第3板状部11cは、等角度間隔で配置されていたが、等角度間隔でなくてもよい。例えば、第1板状部11aに対する第2板状部11bの角度は鋭角をなすとともに、第3板状部11cに対する第1板状部11a及び第2板状部11bの角度は鈍角をなしてもよい。
【0032】
上記実施形態においては、複数のY字柱状部11は、隙間なく並べられた仮想六角形Hxの各角部に配置されていたが、配置態様はこれに限らず、隙間なく並べられた仮想四角形の各角部に配置されてもよい。
【0033】
上記実施形態においては、単位面積あたりのY字柱状部11の数は砥石10の径方向Rの内側に向かうにつれて多く設定されていた。しかしながら、これに限らず、単位面積あたりのY字柱状部11の数は径方向Rの内側に向かうにつれて少なく設定されてもよいし、径方向Rに沿って同数に設定されてもよい。
【0034】
上記実施形態においては、複数のY字柱状部11はそれぞれ同一の形状及びサイズで形成されていたが、それぞれ異なる形状又はサイズで形成されてもよい。
【0035】
上記実施形態においては、柱状部は、Y字柱状部11であったが、これに限らず、図3Aに示すように、X字柱状部12であってもよい。X字柱状部12は、第1板状部12aと、第1板状部12aに交差する第2板状部12bと、を備える。第1板状部12aの中心位置と第2板状部12bの中心位置が交わる。第1板状部12aと第2板状部12bがなす角度は略90°であってもよい。
また、柱状部は、図3Bに示すように、V字柱状部13であってもよい。V字柱状部13は、第1板状部13aと、第1板状部13aに対して角度をなす第2板状部13bと、を備える。第1板状部13aの端部と第2板状部13bの端部が連結される。第1板状部13aと第2板状部13bがなす角度は鋭角である。
さらに、柱状部は、N字柱状部、L字柱状部、T字柱状部、Z字柱状部、十字柱状部又は三角形筒状の柱状部であってもよい。
【0036】
上記実施形態において、図4に示すように、Y字柱状部11は、3つのV字板材11v1,11v2,11v3と、接着層11sと、を備えていてもよい。
V字板材11v1は、互いに異なる角度で連結される第1板状部11a1及び第2板状部11b1により構成される。V字板材11v2は、互いに異なる角度で連結される第1板状部11a2及び第2板状部11b2により構成される。V字板材11v3は、互いに異なる角度で連結される第1板状部11a3及び第2板状部11b3により構成される。
第1板状部11a1,11a3は、互いに対面し、接着層11sを介して互いに接着されている。第2板状部11b2,11b3は、互いに対面し、接着層11sを介して互いに接着されている。第1板状部11a2及び第2板状部11b1は、互いに対面し、接着層11sを介して互いに接着されている。
V字板材11v1,11v2,11v3は、それぞれ、被加工物Wを加工する際に被加工物Wに接触する複数の砥粒11eと、複数の砥粒11eを結合する結合材11fと、を備える。
複数の砥粒11eは、V字板材11v1,11v2,11v3に沿って1列に並べられている。結合材11fは、砥粒11eの平均粒径以上の厚さ、例えば、砥粒11eの平均粒径の1.0倍~1.5倍の厚さに設定される。砥粒11eは、例えば、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒、SiC、又はAl等である。結合材11fは、ニッケル、アルミニウム等の金属、樹脂又はセラミックにより形成される。
【0037】
V字板材11v1,11v2,11v3は、それぞれの角部がY字柱状部11の中心点Cpに近い位置となり、かつ、異なる方向に向けて開口する向きで設置される。V字板材11v1は第1方向F1に向けて開口するV字状をなす。V字板材11v2は第2方向F2に向けて開口するV字状をなす。V字板材11v3は第3方向F3に向けて開口するV字状をなす。第1方向F1、第2方向F2及び第3方向F3は、中心点Cpを中心として互いに120°間隔で互いに異なる向きに設定される。
【0038】
接着層11sは、Y字状に形成され、V字板材11v1,11v2,11v3の間の隙間に形成され、V字板材11v1,11v2,11v3を互いに接着する。
接着層11sは、被加工物Wを加工する際に被加工物Wに接触する複数の第2砥粒の一例である砥粒11s1と、砥粒11s1を結合し、V字板材11v1,11v2,11v3の間を接着する接着材11s2と、を備える。接着材11s2は、2つの第1板状部11a1,11a3の間、2つの第2板状部11b2,11b3の間、及び第1板状部11a2及び第2板状部11b1の間に位置して接着する。
複数の砥粒11s1は、接着層11sに沿って1列に並べられている。接着材11s2は、砥粒11s1の平均粒径以上の厚さ、例えば、砥粒11s1の平均粒径の1.0倍~1.5倍の厚さに設定される。砥粒11s1は、例えば、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒、炭化ケイ素(SiC)、又は溶融アルミナ(Al)等である。接着材11s2は例えばエポキシ樹脂である。
なお、接着層11sは、図4に示す変形例に限らず、図3A及び図3Bに示す変形例に適用されてもよい。また、接着層11sに含まれる複数の砥粒11s1は省略されてもよい。
【0039】
図4の変形例には以下の技術的思想が開示されている。
砥石10は、第1板状部11a1及び第2板状部11b1が連結されてなる板材の一例であるV字板材11v1と、第1板状部11a2及び第2板状部11b2が連結されてなる板材の一例であるV字板材11v2と、第1板状部11a3及び第2板状部11b3が連結されてなる板材の一例であるV字板材11v3と、V字板材11v1,11v2,11v3の間に設けられる接着層11sと、を備える。V字板材11v1,11v2,11v3は、それぞれ、被加工物Wを加工する際に被加工物Wに接触する複数の第1砥粒の一例である砥粒11eと、複数の砥粒11eを結合する結合材11fと、を備える。接着層11sは、被加工物Wを加工する際に被加工物Wに接触する複数の第2砥粒の一例である砥粒11s1と、複数の砥粒11s1を結合し、V字板材11v1,11v2,11v3の間を接着する接着材11s2と、を備える。
この構成によれば、接着材11s2に複数の砥粒11s1が含まれることにより、砥石10の加工能力を向上させることができる。
【0040】
3つのV字板材11v1,11v2,11v3は、それぞれV字板状をなし、それぞれ異なる第1方向F1、第2方向F2及び第3方向F3に向けて開口する向きに配置される。接着層11sは、3つのV字板材11v1,11v2,11v3の間のY字状の隙間に設けられ、3つのV字板材11v1,11v2,11v3を接着する。
この構成によれば、Y字柱状部11は、V字板材11v1,11v2,11v3と接着層11sにより3層構造で形成される。よって、Y字柱状部11の強度を高めることができる。これにより、砥石10の加工能力を向上させることができる。
【0041】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0042】
本出願は、2019年3月15日に出願された、日本国特許出願2019-048053号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2019-048053号の明細書、特許請求の範囲、及び図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0043】
1 砥石ユニット
10 砥石
10a 加工面
11 Y字柱状部
11v1,11v2,11v3 V字板材
11a,12a,13a,11a1,11a2,11a3 第1板状部
11b,12b,13b,11b1,11b2,11b3 第2板状部
11c 第3板状部
11s 接着層
11s1 砥粒
11s2 接着材
11e 砥粒
11f 結合材
12 X字柱状部
13 V字柱状部
20 砥石ホルダー
25 シャフト
27 モータ
C 周方向
L1 第1列
L2 第2列
O 回転軸
R 径方向
W 被加工物
Hx,Hx1,Hx2 仮想六角形
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4