(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
G01N27/82
(21)【出願番号】P 2021515539
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2019106138
(87)【国際公開番号】W WO2020057491
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】201821540838.X
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building D & E, No.2 Guangdong Road,Zhangjiagang Free Trade Zone,Zhangjiagang,Jiangsu,215634 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、クオハイ
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュンヨン
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/016978(WO,A1)
【文献】実開平06-087861(JP,U)
【文献】中国実用新案第206772899(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103995048(CN,A)
【文献】特開2010-273469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107941899(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第01186565(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
B66B 5/00-7/12
H02G 1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下シェル(1)、ブシュ(3)、上シェル(4)、電気コネクタ(5)、エア・バッグ(9)、PCB(10)、およびガイド・ホイール(16)を備える鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置であって、
該ブシュ(3)は、
位置制限溝
(14)によって該下シェル(1)および該上シェル(4)を制限し、該下シェル(1)は、開閉構造を介して該上シェル(4)に接続され、該エア・バッグ(9)は、該ブシュ(3)に巻き付けられ、該PCB(10)は、該上シェル(4)または該下シェル(1)に固定され、該PCB(10)は、該
電気コネクタ(5)を通して該ガイド・ホイール(16)に接続され、
N個の磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイは、該エア・バッグ(9)の内側に配置され、該ブシュ(3)の周方向に均一に配置され、鋼線ロープ(15)は、該磁気抵抗センサ・アレイを通過し、該鋼線ロープ(15)が移動するとき、それは、該ガイド・ホイール(16)を駆動して回転し、命令の取得を引き起こし、
該ガイド・ホイール(16)
には、該鋼線ロープの移動の相対位置を計算するために使用されるポジション・コーダ
が設けられており、
該PCB(10)は、周辺インタフェースを介してシングル・チップ・マイクロコンピュータに接続され、該シングル・チップ・マイクロコンピュータを使用して、N個の隣接した磁気抵抗センサの差動信号を計算し、該鋼線ロープ(15)が損傷を受けているかを決定する、非破壊検査装置。
【請求項2】
前記開閉構造は、バックル(2)およびヒンジ(7)を含み、
前記下シェル(1)および前記上シェル(4)の第1の接続部分は、該バックル(2)を介して接続され、前記下シェル(1)および前記上シェル(4)の第2の接続部分は、該ヒンジ(7)を介して接続され、
該バックル(2)および該ヒンジ(7)は、それぞれ、皿ねじによって前記下シェル(1)および前記上シェル(4)に固定される、請求項1に記載の鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置。
【請求項3】
前記PCB(10)は、金属化貫通穴を通ったなべ小ねじ(11)によって前記上シェル(4)または前記下シェル(1)に固定され、
前記PCB(10)は、ツイストペア・ケーブルを介して前記電気コネクタ(5)に接続され、前記ガイド・ホイール(16)は、ツイストペア・シールド・ケーブルを介して前記電気コネクタ(5)に接続され、該ツイストペア・シールド・ケーブルの遮蔽層は、前記電気コネクタ(5)のピンを通って前記上シェル(4)に接続される、請求項1に記載の鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置。
【請求項4】
リード(6)の少なくとも2つのセットをさらに含み、リード(6)の各セットは、前記周方向に前記ブシュ(3)の内面に沿って均一に分布し、該リード(6)の一端は、前記ブシュ(3)の該内面に溶接され、該リード(6)の他端は、前記ブシュ(3)の前記内面で開いた溝に埋め込まれる、請求項1に記載の鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置。
【請求項5】
リードの各セットは、少なくとも2つのリードを含み、前記ブシュ(3)の前記内面の軸方向にリードの隣接したセット間の距離は同じである、請求項4に記載の鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置。
【請求項6】
前記ブシュ(3)
には、位置決めコラム
(12)が設けられ、前記エア・バッグ(9)
には、該位置決めコラムに対応する位置決め穴
(13)が設けられ、該位置決めコラムは、該位置決め穴の中に挿入される、請求項1に記載の鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置。
【請求項7】
前記PCB(10)は、マルチプレクサと一体化され、該マルチプレクサを介しておよび予め設定された順序で前記磁気抵抗センサ・アレイによって取得された情報を出力するために使用される、請求項1に記載の鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁非破壊検査の分野に関し、詳細には、鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼線ロープの非破壊検査は、公共輸送の設備(ケーブルウェイ、貨物ロープウェイ、チェアリフト、スキーリフトなど)、または装備(貨物用リフト、クレーン、フォークリフトなど)の鋼線ロープの状況を確認するために使用される措置である。定期的な非破壊検査は、疲労または異常なスクラッチ、腐食、製造または組立の欠陥による異常な張力分布などによる鋼線ロープの破損といった多くの要因によって引き起こされ得る鋼線ロープの劣化を防ぐために実施される。
【0003】
高い動荷重および過負荷の支持力により、鋼線ロープは、様々な巻上機および輸送機器、機械式伝達装置、船舶牽引機構、橋梁架設機械、および牽引、ホイスティング、および張力調整、ならびに固定を必要とする他の機会に主に使用される。電磁非破壊検査は、現在、最もよく使用されている、鋼線ロープの損傷を検出する方法である。鋼線は、励起ユニット(永久磁石励起部または渦電流励起)によって磁気的に励起され、磁気センサを使用して鋼線ロープの損傷部分における漏れ磁場を検出し、それによって鋼線ロープの損傷状態を評価する。この検出方法の欠点は、鋼線ロープの内部損傷検出を達成するために、励起場を増大させて漏れ磁場の強度を増大させる必要があり、これは、磁気飽和を防ぐために磁気センサのダイナミック・レンジを増大させる必要があるが、磁気センサの磁場感度を低下させ、それによって検出の効果を減少させる。他の方法は、磁気センサの感度を高め、励起のために低い励起場を使用するが、採用された磁気センサは、空間分解能が十分でなく、検出結果の再現性が乏しい。同時に、2つの検出方法は共に、損傷を決定するために検出データを参照信号と比較し、標準試験片が検出プロセスに必要とされ、または試験を受ける鋼線ロープの比較的無傷の部分が参照として選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的課題を解決するために、鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置が、本発明において提案される。本発明は、リアルタイム検出のために使用中に形成される鋼線ロープの磁気メモリを利用し、励起構造および参照を必要とせず、操作が便利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の技術的解決手段、すなわち、
下シェル、ブシュ、上シェル、電気コネクタ、エア・バッグ、PCB、およびガイド・ホイールを含む鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置であって、
ブシュは、制限溝によって下シェルおよび上シェルを制限し、下シェルは、開閉構造を介して上シェルに接続され、エア・バッグは、ブシュに巻き付けられ、PCBは、上シェルまたは下シェルに固定され、PCBは、電気コネクタを通してガイド・ホイールに接続され、
N個の磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイは、エア・バッグの内側に配置され、ブシュの周方向に均一に配置され、鋼線ロープは、磁気抵抗センサ・アレイを通過し、鋼線ロープが移動するとき、それは、ガイド・ホイールを駆動して回転し、命令の取得を引き起こし、
ガイド・ホイールは、鋼線ロープの移動の相対位置を計算するために使用されるポジション・コーダを用いて設定され、
PCBは、周辺インタフェースを介してシングル・チップ・マイクロコンピュータに接続され、シングル・チップ・マイクロコンピュータを使用して、N個の隣接した磁気抵抗センサの差動信号を計算し、鋼線ロープが損傷を受けているかを決定する、非破壊検査装置に従って実施される。
【0006】
さらに、開閉構造は、バックルおよびヒンジを含み、
下シェルおよび上シェルの第1の接続部分は、バックルを介して接続され、下シェルおよび上シェルの第2の接続部分は、ヒンジを介して接続され、
バックルおよびヒンジは、それぞれ、皿ねじによって下シェルおよび上シェルに固定される。
【0007】
さらに、PCBは、金属化貫通穴を通ったなべ小ねじによって上シェルまたは下シェルに固定され、
PCBは、ツイストペア・ケーブルを介して電気コネクタに接続され、ガイド・ホイールは、ツイストペア・シールド・ケーブルを介して電気コネクタに接続され、ツイストペア・シールド・ケーブルの遮蔽層は、電気コネクタのピンを通って上シェルに接続される。
【0008】
好ましくは、リードの少なくとも2つのセットがさらに含まれ、リードの各セットは、周方向にブシュの内面に沿って均一に分布し、リードの一端は、ブシュの内面に溶接され、リードの他端は、ブシュの内面で開いた溝に埋め込まれる。
【0009】
好ましくは、リードの各セットは、少なくとも2つのリードを含み、ブシュの内面の軸方向にリードの隣接したセット間の距離は同じである。
【0010】
好ましくは、ブシュは、複数の位置決めコラムを用いて設定され、エア・バッグは、位置決めコラムに対応する位置決め穴を用いて設定され、位置決めコラムは、位置決め穴の中に挿入される。
【0011】
好ましくは、PCBは、マルチプレクサと一体化され、マルチプレクサを介しておよび予め設定された順序で磁気抵抗センサ・アレイによって取得された情報を出力するために使用される。
【発明の効果】
【0012】
先行技術と比べて、本発明は、以下の有益な技術的効果を有する。
【0013】
1.本発明は、励起構造を簡単にするために鋼線ロープの磁気メモリ特性を利用する。本発明は、検出デバイスの小型化および可搬性を改善することができ、普及させるのがより容易であり、それは、鋼線ロープの磁化に対する地球の自然の磁場のメモリ効果を利用し、磁気抵抗センサを磁気感知ユニットとして採用して、励起させることなく鋼線ロープの周りの磁場勾配情報を測定する。それは、構造がシンプルであり、操作が便利であり、欠陥の解決力が高く、データ解釈が容易であり、センサは、鋼線ロープの大きさに従って配置することができる。
【0014】
2.従来の検出スキームでは、磁気センサ検出データは、鋼線ロープの周りの周囲の磁場分布を説明し、小さい損傷信号は、大きいバックグラウンド信号に重ね合わされ、参照サンプル(参照データ)は、データ解釈前の比較のために必要とされる。本発明の検出方法は、参照データまたはさらなる比較センサなしで鋼線ロープの損傷によって引き起こされる空間磁場の勾配の変化を直接検出し、鋼線ロープの損傷の説明を実現させ、したがって検査結果はより直接であり、データはより容易に解釈される。
【0015】
3.本発明は、磁気抵抗センサ・アレイのプローブを形成するために磁気抵抗センサを使用する。検出感度を確実にするが、損傷検出の空間分解能は、マイクロメートルのオーダーにほぼ到達し、これは、断線、狭くなった直径、および深い損傷を検出するための能力を改善する。
【0016】
4.本発明の磁気抵抗センサ・アレイは、特注可能であり、異なる大きさおよび他の強磁性材料の鋼線ロープの損傷を検出する必要を満たす。
【0017】
本発明の実施形態または先行技術の解決手段をより明確に説明するために、以下、この実施形態または先行技術の説明に用いられる必要のある添付図面を簡単に紹介する。以下の説明における添付図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎないことが明らかである。当業者は、創作的な努力をせずともこれらの添付図面に従って他の添付図面をさらに得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】本発明による半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサの概略図である。
【
図1b】本発明によるフル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサの概略図である。
【
図1c】本発明による単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサの概略図である。
【
図2】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する磁気抵抗センサ・アレイの概略構造図である。
【
図3】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査の原理の概略図である。
【
図4】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の側面図である。
【
図5】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の断面図である。
【
図6】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の正面図および背面図である。
【
図7】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の信号処理ユニットのブロック図である。
【
図8】本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の信号処理の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態の目的、技術的解決手段、および利点をより明確にするために、本発明の実施形態における技術的解決手段は、本発明の実施形態における添付図面を参照して、以下明確かつ完全に説明される。説明された実施形態は、本発明の実施形態の全部ではなく一部であることが明らかである。
【0020】
鋼線ロープの損傷の磁気勾配場を検出する本発明において共通に使用される3つの基本的な検出ユニットは、半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサ、フル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサ、および単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサである。
図1aは、本発明による半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサの概略図であり、
図1bは、本発明によるフル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサの概略図であり、
図1cは、本発明による単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサの概略図である。
図1aから
図1cに示されるように、3つの構造において、単一の磁気抵抗器抵抗値はRとし、磁気抵抗変化値はΔRとする。
【0021】
図1aに示されるように、半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサは、第1の磁気抵抗器Ra、および第2の磁気抵抗器Rbで構成されており、第1の磁気抵抗器Raの抵抗値はRa1であり、第2の磁気抵抗器Rbの抵抗値はRb1である。Ra1=Rb1=Rと仮定すると、半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサの出力信号V
1の計算式は、
【数1】
であり、
ただし、Vccは、磁気抵抗センサの入力信号である。
【0022】
図1bに示されるように、フル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサは、第3の磁気抵抗器Rm、第4の磁気抵抗器Rn、第5の磁気抵抗器Rp、および第6の磁気抵抗器Rqで構成される。第3の磁気抵抗器Rmの抵抗値はRm1であり、第4の磁気抵抗器Rnの抵抗値はRn1であり、第5の磁気抵抗器Rpの抵抗値はRp1であり、第6の磁気抵抗器Rqの抵抗値はRq1である。Rm1=Rn1=Rp1=Rq1=Rの場合、フル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサの出力信号V
2の計算式は、
【数2】
であり、
ただし、V
+は、第3の磁気抵抗器Rmと第4の磁気抵抗器Rnの間の接続端の信号値であり、V
-は、第5の磁気抵抗器Rpと第6の磁気抵抗器Rqの間の接続端の信号値であり、Vccは、磁気抵抗センサの入力信号である。さらに、V
+およびV
-の計算式は、それぞれ、
【数3】
である。
【0023】
図1cに示されるように、単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサは、第7の磁気抵抗器Rdで構成されており、第7の磁気抵抗器Rdの抵抗値は、Rd1である。Rd1=Rの場合、単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサの出力信号V
3の計算式は、
V
3=(R+ΔR)I
CC
であり、
ただし、I
CCは、単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサの入力電流である。
【0024】
図2は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する磁気抵抗センサ・アレイの概略構造図である。
図2に示されるように、磁気抵抗センサ・アレイは、N個の磁気抵抗センサで構成され、2つごとの隣接した磁気抵抗センサが、磁場勾配センサを形成する。
【0025】
磁場が均一であるとき、すなわち、鋼線ロープが損傷を受けていないとき、様々な磁気抵抗センサの出力は一致する。半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサ、フル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサ、および単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサについては、
様々な磁気抵抗センサの出力信号間の差Vnが0であり、計算式は、
Vn=Voutn-Voutn+1=0
であり、
ただし、Voutnは、第nの磁気抵抗センサの出力信号であり、Voutn+1は、第(n+1)の磁気抵抗センサの出力信号である。
【0026】
磁場が均一でないとき、すなわち、鋼線ロープが局所的に損傷を受けているとき、鋼線ロープの局所損傷は、損傷位置に磁場の空間分布の勾配を引き起こし、様々な磁気抵抗センサの出力信号は、損傷位置からの距離に関連している。
【0027】
基本的ユニットとして半ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイについては、様々な磁気抵抗センサの出力信号間の差V
n1についての計算式は、
【数4】
であり、
ただし、ΔR
nは、第nの磁気抵抗センサの磁気抵抗の変化値であり、ΔR
n+1は、第(n+1)の磁気抵抗センサの磁気抵抗の変化値である。
【0028】
基本的ユニットとしてフル・ブリッジ構造を備えた磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイについては、様々な磁気抵抗センサの出力信号間の差V
n2についての計算式は、
【数5】
であり、
ただし、ΔR
nは、第nの磁気抵抗センサの磁気抵抗の変化値であり、ΔR
n+1は、第(n+1)の磁気抵抗センサの磁気抵抗の変化値である。
【0029】
基本的ユニットとして単一の磁気抵抗構造を備えた磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイについては、様々な磁気抵抗センサの出力電圧間の差Vn3についての計算式は、
Vn3=(ΔRn-ΔRn+1)ICC
であり、
ただし、ΔRnは、第nの磁気抵抗センサの磁気抵抗の変化値であり、ΔRn+1は、第(n+1)の磁気抵抗センサの磁気抵抗の変化値である。
【0030】
図3は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査の原理の概略図である。
図3に示されるように、N個の磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイは、周方向に鋼線ロープを囲む。磁気抵抗センサ・アレイは、複数の磁気抵抗センサ17を配置することによって形成される。鋼線ロープの損傷の検出に使用されるとき、磁気抵抗センサ・アレイは、鋼線ロープの軸方向に移動し、差動信号は、N個の差動信号の合計を得るように2つごとの隣接した磁気抵抗センサの出力値を用いて計算され、N個の差動信号は、鋼線ロープの周囲の磁場勾配の分布を反映する。
V
1=V
out1-V
out2
V
2=V
out2-V
out3
……
V
n=V
outn-V
out1
ただし、V
out1は第1の磁気抵抗センサの出力値であり、V
out2は第2の磁気抵抗センサの出力値であり、V
out3は第3の磁気抵抗センサの出力値であり、V
outnは第nの磁気抵抗センサの出力値である。V
1は、第1の磁気抵抗センサおよび第2の磁気抵抗センサの出力値の差動信号である。V
2は、第2の磁気抵抗センサおよび第3の磁気抵抗センサの出力値の差動信号である。V
nは、第1の磁気抵抗センサおよび第nの磁気抵抗センサの出力値の差動信号である。
【0031】
鋼線ロープが局所的に損傷を受けるとき、鋼線ロープの周方向の空間磁場分布は、損傷位置で突然変化し、すなわち、損傷位置における空間磁場は、勾配を有する。磁気抵抗センサ・アレイの相対位置および勾配場の大きさを用いることにより、損傷状況の損傷および評価の迅速な位置決定を実現することができる。
【0032】
図4は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の側面図であり、
図5は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の断面図であり、
図6は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の正面図および背面図である。
図4から
図6を参照して、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置は、下シェル1、ブシュ3、上シェル4、電気コネクタ5、エア・バッグ9、PCB10、およびガイド・ホイール16を含み、
ブシュ3は、制限溝によって下シェル1および上シェル4を制限し、下シェル1は、開閉構造を介して上シェル4に接続される。エア・バッグ9は、ブシュ3に巻き付けられ、PCB10は、上シェル4または下シェル1に固定され、PCB10は、電気コネクタ5を通してガイド・ホイール16に接続される。
【0033】
N個の磁気抵抗センサで構成された磁気抵抗センサ・アレイは、エア・バッグ9の内側に配置され、ブシュ3の周方向に均一に配置され、鋼線ロープ15は、磁気抵抗センサ・アレイを通過し、鋼線ロープ15が移動するとき、それは、ガイド・ホイール16を駆動して回転し、命令の取得を引き起こす。ガイド・ホイール16は、鋼線ロープの移動の相対位置を計算するために使用されるポジション・コーダを用いて設定される。PCB10は、周辺インタフェースを介してシングル・チップ・マイクロコンピュータに接続され、シングル・チップ・マイクロコンピュータを使用して、N個の隣接した磁気抵抗センサの差動信号を計算し、鋼線ロープ15が損傷を受けているかを決定する。
【0034】
この実施形態では、ブシュ3は円筒形であり、下シェル1および上シェル4はそれぞれ複数の皿ねじ8によってブシュ3に固定される。PCB10は、周辺インタフェースを介してシングル・チップ・マイクロコンピュータに接続される。シングル・チップ・マイクロコンピュータは、N個の差動信号を得るために2つごとの隣接した磁気抵抗センサによって取得されたデータの差動信号を計算する。少なくとも2つの隣接した差動信号が狭いパルスである場合、鋼線ロープ15は損傷を受けていると決定される。
【0035】
さらに、開閉構造は、バックル2およびヒンジ7を含む。下シェル1および上シェル4の第1の接続部は、バックル2を介して接続され、下シェル1および上シェル4の第2の接続部は、ヒンジ7を介して接続される。バックル2およびヒンジ7は、それぞれ、皿ねじによって下シェル1および上シェル4に固定される。
【0036】
上シェル4および下シェル1は開閉構造を介して接続され、上シェル4および下シェル1は開かれ、鋼線ロープ15がその中に設置され、次いで上シェル4および下シェル1はバックル2によって閉じられ、締められる。
【0037】
さらに、PCB10は、金属化貫通穴を通ったなべ小ねじ11によって上シェル4または下シェル1に固定される。PCB10はツイストペア・ケーブルを介して電気コネクタ5に接続され、ガイド・ホイール16はツイストペア・シールド・ケーブルを介して電気コネクタ5に接続され、ツイストペア・シールド・ケーブルの遮蔽層は電気コネクタ5のピンを通って上シェル4に接続される。
【0038】
本発明は、リード6の少なくとも2つのセットをさらに含み、リード6の各セットは周方向にブシュ3の内面に沿って均一に分布し、リード6の一端は、ブシュ3の内面に溶接され、リードの他端は、ブシュ3の内面で開いた溝に埋め込まれる。さらに、溝が開いている内面、およびリード6の一端が溶接される内面は、同じ内面である。ここで、リードの各セットは、少なくとも2つのリード6を含み、ブシュ3の内面の軸方向のリード6の隣接したセット間の距離は同じである。本発明の特定の実施形態では、溝の位置、長さ、および深さは、実際の必要に従って選択することができる。ブシュ3の内面で開いた溝の中にリード6の他端を挿入することにより、リード6はある程度の変位を有することができ、したがって、異なる半径を有する鋼線ロープは、非破壊検査装置によって検出することができ、非破壊検査装置は、より幅広い範囲で使用され得る。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、ブシュ3は、複数の位置決めコラムを用いて設定され、エア・バッグ9は、位置決めコラムに対応する位置決め穴を用いて設定され、位置決めコラムは、位置決め穴の中に挿入される。
【0040】
図7は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の信号処理ユニットのブロック図である。
図7に示されるように、PCB10は、マルチプレクサと一体化され、マルチプレクサを介しておよび予め設定された順序で磁気抵抗センサ・アレイによって取得された情報を出力するために使用される。本発明のマルチプレクサは、ADG726チップを使用する。ADG726チップは、-2.5Vおよび+2.5Vのデュアル電源によって電力供給され、32個のシングル・エンド式のチャンネル、および16個の差動チャンネルとして使用することができ、通ることが許される信号は、-2.5Vから+2.5Vの電圧範囲を有する。32チャンネルの電圧減衰ネットワークは、1%未満の誤差範囲を有する対応する高精度抵抗器を使用して、電圧を分割する。マルチプレクサは、取得された信号を演算増幅器で構成された信号調整回路へ伝達する。本発明の演算増幅器は、AD620チップを使用する。信号調整回路が信号調整を完了するとき、信号は、データ取得カードによって取得され、次いでシングル・チップ・マイクロコンピュータによって処理および記憶される。本発明のデータ取得カードは、NI PIXe-6368を使用する。
【0041】
本発明の動作原理を、以下の通りに簡単に説明する。
【0042】
鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置は、開かれ、バックル2によって鋼線ロープ15に固定され、ガイド・ホイール16が、鋼線ロープ15に取り付けられる。検出の要求に従って、サンプリング・レート、検出速度、および検出開始位置が設定される。鋼線ロープに対しての非破壊検査装置の変位が検出され、鋼線ロープ検出デバイスは、安定に維持される。磁気抵抗センサ・アレイのデータが取得され、リアルタイムに記憶され、ガイド・ホイール16の位置データは、同期的に取得および記憶される。シングル・チップ・マイクロコンピュータは、取得されたデータをリアルタイムで解析する。
図8は、本発明による鋼線ロープの損傷を検出する非破壊検査装置の信号処理の波形図である。
図8に示されるように、鋼線ロープが損傷を受けるとき、損傷を通過する磁気センサの出力は狭いパルスであり、狭いパルスを同期的に出力する少なくとも2つのセンサがあるとき、それは、損傷信号として決定され、さもなければ、それは、非破壊検査装置に対しての鋼線ロープのジッタによって引き起こされる誤った損傷信号として決定される。
【0043】
シングル・チップ・マイクロコンピュータは、サンプリング・レート、ガイド・ホイールの回転速度、および取得時間の長さを使用して、非破壊検査装置の位置データをリアルタイムで解析し、それを損傷データに関連付け、検出センサの時間領域データを鋼線ロープの位置に関連しているデータに変換し、次いで、検出データに従って鋼線ロープの損傷の位置を特定する。
【0044】
鋼線ロープの損傷の半径方向位置は、磁気抵抗センサ・アレイの位置情報を用いて位置が特定され、鋼線ロープの損傷モードが以下の通りに損傷検出データの振幅およびパルス幅に従って決定される:狭帯域パルスが局所破損(LF:LocaL Fault)として決定され、比較的大きいパルス幅を有するパルスが金属断面積の損失(LMA:Loss of Metallic cross-sectional Area)として決定される。LFは、錆つき、摩耗、断線などを含む。継続使用の場合、鋼線ロープは、鋼線ロープのいろいろな使用環境を反映する様々な損傷の現象を伴う異なる劣化モードを有する。実際には、鋼線ロープを使用するプロセスにおいて、鋼線ロープの損傷の発生および発達は、相互に影響を受ける。例えば、鋼線ロープの錆つきは摩耗損傷を悪化させ、摩耗は断線の発生を促進する。損傷発達の速度および程度は、様々な使用条件において異なるということである。
【0045】
本発明は、損傷検出のために鋼線ロープの磁気メモリ特性を使用し、励起機構を必要とせず、検出プローブの構造を簡単にし、操作がより便利である。鋼線ロープの損傷の磁場勾配を検出する磁気抵抗センサが設計され、センサはペタワットのオーダーで高い磁場感度を有し、したがって、ミクロンオーダー近くの磁場空間分解能は、断線、より小さい線径、および鋼線ロープの深い損傷を検出する能力を改善する。磁気抵抗センサは、磁気抵抗センサ・アレイのプローブを形成するように並列に接続され、磁気抵抗センサ・アレイのプローブを形成する磁気抵抗センサの個数は、鋼線ロープの大きさに従って特注されてよい。隣接した磁気抵抗センサの差動信号は、鋼線ロープを囲む周囲の磁場勾配情報を説明するために使用され、検出結果は、いずれも参照せずに鋼線ロープの損傷状況を直接説明する。
【0046】
本発明の実施形態に基づいて、創作的努力なしで当業者によって得られる全ての他の実施形態は、本発明の保護範囲内に含まれる。本発明を好ましい実施形態の観点から図示および説明してきたが、当業者は、本発明の特許請求の範囲によって定められる範囲をそれが超えない限り、様々な変更および修正が本発明になされてよいことを理解するはずである。
【符号の説明】
【0047】
参照番号:1-下シェル、2-バックル、3-ブシュ、4-上シェル、5-電気コネクタ、6-リード、7-ヒンジ、8-皿ねじ、9-エア・バッグ、10-PCB、11-なべ小ねじ、12-位置決めコラム、13-位置決め穴、14-制限溝、15-試験を受ける鋼線ロープ、16-ガイド・ホイール、17-磁気抵抗センサ。