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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221202BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20221202BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20221202BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
E02F9/20 D
E02F9/22 R
F02D29/00 B
F02D29/04 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017563870
(86)(22)【出願日】2017-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2017003035
(87)【国際公開番号】W WO2017131189
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2018-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2016014727
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩之
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183689(JP,A)
【文献】特開平10-252521(JP,A)
【文献】特開2015-68071(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194601(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対して旋回自在に搭載された上部旋回体と、
動力源と接続された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの作動油で駆動するブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを含むフロント作業機と、
前記フロント作業機の姿勢を検出するフロント作業機姿勢検出部と、
前記フロント作業機姿勢検出部の検出値に基づいて、上部作業領域及び先端作業領域で囲まれる作業領域内における前記フロント作業機の姿勢に応じて掘削動作の後半、若しくは、掘削動作後のブーム上げ動作にて、掘削動作の前半よりも前記油圧ポンプの馬力を増加させる制御する制御部とを有することを特徴とするショベル。
【請求項2】
前記フロント作業機姿勢検出部は、前記ブームの角度を検出するブーム角度センサを有し、
前記制御部は
前記ブームの角度が第1閾値以上の場合に、更に前記油圧ポンプの増加した馬力を低減させることを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記フロント作業機姿勢検出部は、前記アームの角度を検出するアーム角度センサを有し、
前記制御部は
前記アームの角度が第2閾値未満の場合に、掘削動作の後半であるとして、前記油圧ポンプの馬力を増加させることを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記フロント作業機姿勢検出部は、前記アームの角度を検出するアーム角度センサを有し、
前記制御部は
前記アームの角度が、掘削後半における第3閾値未満の場合に、更に前記油圧ポンプの増加した馬力を低減させることを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御部は、
レギュレータを調節することによって、前記油圧ポンプの馬力を制御することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
前記制御部は、
前記動力源の回転数を変更することによって前記油圧ポンプの馬力を制御することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御部は、作業領域内における前記フロント作業機の姿勢に基づいて動作区間が変化したかを判定することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項8】
前記フロント作業機姿勢検出部は、前記フロント作業機を撮影するカメラにより撮影された画像により、前記フロント作業機の姿勢を検出することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項9】
前記フロント作業機の姿勢に基づき、深掘り掘削動作が行われているか、通常の掘削動作が行われているかを判定することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の建設機械は、さまざまな環境や使われ方に適合させるため、その出力を切り替える作業モード選択機能を備えている。選択される作業モードとしては、例えば、スピード・パワー重視モード、燃費優先モード、微操作用モードがある。
【0003】
オペレータが状況に合わせてスロットルボリュームを操作して、複数の作業モードから任意の作業モードを選択すると、選択された作業モードに対応した一定回転数が決定される構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-324511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでショベルの作業において、作業負荷はフロント作業機(アタッチメント)の姿勢によって変わってくる。そのため選択した作業モードと作業負荷との間にミスマッチが発生する虞がある。
【0006】
例えばスピード・パワー重視モードが選択されている際に、作業負荷のあまり掛からないアタッチメントの姿勢になっているときに過度の出力が提供されると、操作性及び燃費効率が悪化してしまう。
【0007】
上記課題に鑑み、フロント作業機の姿勢に応じた最適な出力制御を行って操作性と燃費効率を向上できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るショベルは、
下部走行体と、
前記下部走行体に対して旋回自在に搭載された上部旋回体と、
駆動源と接続された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの作動油で駆動するブーム、アーム、及びエンドアタッチメントを含むフロント作業機と、
前記フロント作業機の姿勢を検出するフロント作業機姿勢検出部と、
前記フロント作業機姿勢検出部の検出値に基づいて、上部作業領域及び先端作業領域で囲まれる作業領域内における前記フロント作業機の姿勢に応じて掘削動作の後半、若しくは、掘削動作後のブーム上げ動作にて、掘削動作の前半よりも前記油圧ポンプの馬力を増加させる制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述の手段により、フロント作業機の姿勢に応じた最適な出力制御を行って操作性と燃費効率を向上できるショベルが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ショベルの側面図である。
図2】ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。
図3】ショベルの「深掘り掘削・積込み動作」の作業流れを説明する説明図である。
図4A】実施形態に係るショベルの制御の概念を説明する説明図である。
図4B】実施形態に係るショベルの制御の概念を説明する説明図である。
図5】実施形態に係るショベルの制御の流れを示すフローチャートである。
図6図3の作業流れにおけるブームの姿勢(角度)、吐出圧力、ポンプ馬力、及び吐出流量の時間的推移を示す図である。
図7】別の実施形態に係るショベルの制御の概念を説明する説明図である。
図8】更に別の実施形態に係るショベルの「通常の掘削・積込み動作」の作業流れを説明する説明図である。
図9図8の作業流れにおけるポンプ馬力の時間的推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【0012】
油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1の上に、旋回機構2を介して、上部旋回体3を旋回自在に搭載する。
【0013】
上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6によりフロント作業機としてのアタッチメントが構成される。また、ブーム4、アーム5、バケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。ここで、図1ではエンドアタッチメントとしてのバケット6を示したが、バケット6は、リフティングマグネット、ブレーカ、フォーク等で置き換えられてもよい。
【0014】
ブーム4は、上部旋回体3に対して上下に回動可能に支持されている。そして、連結点としての回動支持部(関節)には、フロント作業機姿勢検出部としてのブーム角度センサS1が取り付けられている。ブーム角度センサS1は、ブーム4の傾き角度であるブーム角度α(ブーム4を最も下降させた状態からの上昇角度)を検出できる。ブーム4を最も上昇させた状態が、ブーム角度αの最大値となる。
【0015】
アーム5は、ブーム4に対して回動可能に支持されている。そして、連結点としての回動支持部(関節)には、フロント作業機姿勢検出部としてのアーム角度センサS2が取り付けられている。アーム角度センサS2は、アーム5の傾き角度であるアーム角度β(アーム5を最も閉じた状態からの開き角度)を検出できる。アーム5を最も開いた状態が、アーム角度βの最大値となる。
【0016】
バケット6は、アーム5に対して回動可能に支持されている。そして、連結点としての回動支持部(関節)には、フロント作業機姿勢検出部としてのバケット角度センサS3が取り付けられている。バケット角度センサS3は、バケット6の傾き角度であるバケット角度θ(バケット6を最も閉じた状態からの開き角度)を検出できる。バケット6を最も開いた状態が、バケット角度θの最大値となる。
【0017】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、加速度センサ、ジャイロセンサ等であってもよい。加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよい。操作レバーの操作量を検出する装置であってもよい。このように、フロント作業機姿勢検出部の検出値に基づいて、ブーム4の姿勢(角度)とアーム5の姿勢(角度)を含む「フロント作業機の姿勢」が把握される。また、「フロント作業機の姿勢」は、バケット6の位置や姿勢(角度)を含んでいてもよい。フロント作業機姿勢検出部はカメラであってもよい。カメラは、例えば、フロント作業機(アタッチメント)を撮影することができるように、上部旋回体3の前部に取り付けられている。カメラは、ショベルの周囲を飛行する飛行体に取り付けられたカメラであってもよく、作業現場に設置された建造物等に取り付けられたカメラであってもよい。そして、フロント作業機姿勢検出部は、撮影した画像におけるバケット6の画像の位置の変化、アーム5の画像の位置の変化等を検出し、フロント作業機の姿勢を検出する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る油圧ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図であり、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気駆動・制御系を、それぞれ二重線、実線、破線、及び点線で示す。
【0019】
本実施形態において、油圧システムは、エンジン11によって駆動される油圧ポンプとしてのメインポンプ12L、12Rから、センターバイパス管路40L、40Rのそれぞれを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0020】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ内に配置された流量制御弁151、153、155及び157を連通する高圧油圧ラインであり、センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ内に配置された流量制御弁150、152、154、156及び158を連通する高圧油圧ラインである。
【0021】
流量制御弁153、154は、メインポンプ12L、12Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0022】
流量制御弁155、156は、メインポンプ12L、12Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0023】
流量制御弁157は、メインポンプ12Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ21で循環させるために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0024】
流量制御弁158は、メインポンプ12Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0025】
レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ12L、12Rの吐出圧に応じてメインポンプ12L、12Rの斜板傾転角を調節することによって(全馬力制御によって)、メインポンプ12L、12Rの吐出量を制御する。具体的には、パイロットポンプ14とレギュレータ13L、13Rとを繋ぐ管路には減圧弁50L、50Rが設けられている。減圧弁50L、50Rはレギュレータ13L、13Rに作用する制御圧をシフトさせてメインポンプ12L、12Rの斜板傾転角を調節する。減圧弁50L、50Rは、メインポンプ12L、12Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ12L、12Rの吐出量を減少させ、吐出圧と吐出量との積で表されるポンプ馬力がエンジン11の馬力を超えないようにする。減圧弁50L、50Rは、電磁比例弁で構成されてもよい。
【0026】
アーム操作レバー16Aは、アーム5の開閉を操作するための操作装置である。アーム操作レバー16Aは、パイロットポンプ14が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を流量制御弁155の左右何れかのパイロットポートに導入させる。操作量によっては、流量制御弁156の左側のパイロットポートに制御圧を導入させる。
【0027】
圧力センサ17Aは、アーム操作レバー16Aに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値を制御部としてのコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向及びレバー操作量(レバー操作角度)である。
【0028】
左右走行レバー(又はペダル)、ブーム操作レバー、バケット操作レバー及び旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、ブーム4の上げ下げ、バケット6の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、アーム操作レバー16Aと同様、パイロットポンプ14が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じた制御圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。また、これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、圧力センサ17Aと同様の対応する圧力センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
【0029】
コントローラ30は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、圧力センサ17A、ブームシリンダ圧センサ18a、吐出圧センサ18b、ネガコン圧を検出する圧力センサ(図示せず。)等の出力を受信し、適宜にエンジン11、レギュレータ13R、13L等に対して制御信号を出力する。
【0030】
これにより、コントローラ30は、例えば、ブーム4の姿勢又はアーム5の姿勢に応じてレギュレータ13L、13Rに対し制御信号を出力する。レギュレータ13L、13Rは、制御信号に応じてメインポンプ12L、12Rの吐出流量を変更し、メインポンプ12L、12Rのポンプ馬力を制御する。
【0031】
次に、図3を参照しながら深掘り掘削・積込み動作について説明する。図3(A)の斜線領域は、アタッチメントの作業領域Nを表わす。作業領域Nは、上部領域Nupと、先端領域Noutを除いたエンドアタッチメントの存在領域を指す。
【0032】
上部領域Nupは、例えばブーム角度αが最大角度から10度以内のときのエンドアタッチメントの存在領域として定められる。
【0033】
先端領域Noutは、例えばブーム角度αが閾値以上でありアーム角度βが最大角度から10度以内のときのエンドアタッチメントの存在領域として定められる。したがって、コントローラ30は、バケット6が作業領域N内にあるか否かをブーム角度αとアーム角度βから判断できる。
【0034】
まず、図3(A)に示すように、オペレータは作業領域N内において、ブーム下げ操作を行う。ブーム角度αが所定の閾値αTH3以下になると、ショベルは、深掘り掘削動作が行われていると判定する。そして、オペレータは、バケット6の先端が掘削対象に関して所望の高さ位置に来るにように位置決めし、図3(B)に示すようにバケット6を開いた状態から徐々に閉じる。このとき掘削土は、バケット6内に入る。このときのショベルの動作を掘削動作と称し、この動作区間を掘削動作区間と称する。掘削動作区間に必要とされるポンプ馬力は比較的大きい。図3(B)に示すバケット6の位置を(X1)と表記し、そのときのバケット6の角度を「θTH」と表記する。
【0035】
次に、オペレータは、バケット6の上縁を略水平にした状態で、ブーム4を上げてバケット6を図3(C)に示す位置まで上げる。図3(C)に示すバケット6の位置を(X2)と表記し、そのときのブーム4の角度を第1閾値αTH1とする。
【0036】
そして、オペレータは、図3(D)に示すように、バケット6の底部が地面から所望の高さとなるまでブーム4を上げる。所望の高さは例えばダンプの高さ以上の高さである。オペレータは、これに続いて、あるいは同時に、上部旋回体3を矢印AR1で示すように旋回させ、排土する位置までバケット6を移動させる。このときのショベルの動作をブーム上げ旋回動作と称し、この動作区間をブーム上げ旋回動作区間と称する。ブーム4の上げ動作の初期においては比較的大きいポンプ馬力が必要とされ、ブーム4が上がっていくにしたがって(旋回との複合動作を含む)、必要とされるポンプ馬力は徐々に小さくなる。図3(D)に示すバケット6の位置を(X3)と表記する。
【0037】
オペレータは、ブーム上げ旋回動作を完了させると、次に、図3(E)に示すようにアーム5及びバケット6を開いて、バケット6内の土を排出する。このときのショベルの動作をダンプ動作と称し、この動作区間をダンプ動作区間と称する。ダンプ動作では、オペレータはバケット6のみを開いて排土してもよい。ダンプ動作区間に必要とされるポンプ馬力は比較的小さい。図3(E)に示すバケット6の位置を(X4)と表記する。
【0038】
オペレータは、ダンプ動作を完了させると、次に、図3(F)に示すように、上部旋回体3を矢印AR2で示すように旋回させ、バケット6を掘削位置の真上に移動させる。このとき、旋回と同時にブーム4を下げてバケット6を掘削対象から所望の高さのところまで下降させる。このときのショベルの動作をブーム下げ旋回動作と称し、この動作区間をブーム下げ旋回動作区間と称する。ブーム下げ旋回動作区間に必要とされるポンプ馬力はダンプ動作区間に必要とされるポンプ馬力より更に低い。
【0039】
オペレータは、「掘削動作」、「ブーム上げ旋回動作」、「ダンプ動作」、及び「ブーム下げ旋回動作」で構成されるサイクルを繰り返しながら、作業領域N内において深掘り掘削・積込み動作を進めていく。
【0040】
本実施形態の制御の概要について図4A及び図4Bに基づいて簡潔に説明する。
【0041】
図4Aは、図3のバケット位置(X1)~(X4)を含む空間領域とショベルの動作との関係を説明する。図4Aに示す通り、バケット6がバケット位置(X1)から(X2)へ移動するときにバケット6は空間領域「1」に含まれ、バケット位置(X2)から(X3)へ移動するときにバケット6は空間領域「2」に含まれ、バケット位置(X3)から(X4)へ移動するときにバケット6は空間領域「3」に含まれる。ショベルはバケット位置が空間領域「1」にあるときに高いポンプ馬力を必要とし、空間領域「2」にあるときに徐々に低いポンプ馬力となる制御を必要とし、空間領域「3」にあるときに更に低いポンプ馬力を必要とする。図4Aは、ブーム上げ旋回動作の前半でバケット6が空間領域「1」に存在し、ブーム上げ旋回動作の後半でバケット6が空間領域「2」に存在し、ダンプ動作のときにバケット6が空間領域「3」に存在することを表している。
【0042】
図4Bは、空間領域「1」~空間領域「3」における制御の概要を説明する。縦軸はメインポンプ12L、12Rの吐出流量Q、横軸はメインポンプ12L、12Rの吐出圧力Pを示している。グラフ線SPは、スピード・パワー重視のSPモードにおける吐出流量と吐出圧力との関係を示している。グラフ線Hは、燃費優先のHモードにおける吐出流量と吐出圧力との関係を示している。グラフ線Aは、微操作に適したAモードにおける吐出流量と吐出圧力との関係を示している。グラフ線Mは本実施形態における吐出流量と吐出圧力との関係を示している。
【0043】
従来は作業モードが決定されると、レギュレータ13R、13Lにより、斜板傾転角は、吐出流量と吐出圧力との関係が図示例のグラフ線となるように制御される。
【0044】
例えばグラフ線SPに注目する。バケット6が空間領域「1」から空間領域「2」、空間領域「3」へ移動すると、馬力一定制御により、吐出圧力(作業負荷)が徐々に下がるにつれて吐出流量Qが増加するため、アタッチメントの動作スピードが速くなってしまう。
【0045】
特にブーム上げ旋回動作や、ダンプ動作において、オペレータはバケット6の位置を微調整しつつ各動作を行う必要があるため、ポンプ馬力が大きいと操作性が非常に悪い。更にブーム上げ旋回動作や、ダンプ動作では、ポンプ馬力が小さくてもよいため、SPモードのままであると、無駄な作動油が吐出されて燃費が悪い。
【0046】
本実施形態の制御は、グラフ線Mに示す制御であり、端的に云うとアタッチメント姿勢追従型のポンプ馬力シフト制御である。つまり、バケット6が空間領域「1」にあるときには高いポンプ馬力となり、空間領域「2」にあるときには徐々に低いポンプ馬力となり、領域「3」にあるときには更に低いポンプ馬力となるようにする制御である。
【0047】
具体的には、「フロント作業機の姿勢」としてのブーム4の姿勢(角度)の変化に伴って、バケット6が空間領域「1」から空間領域「2」、空間領域「2」から空間領域「3」へ移動したとしても、吐出流量Qが一定となるようにポンプ馬力を減少させる。このときエンジンの回転数は変化させず一定となるように制御する。
【0048】
吐出流量Qが一定であるとアタッチメントのスピードが一定になるため、特にブーム上げ旋回動作や、ダンプ動作における操作性が飛躍的に向上する。また、ブーム上げ旋回動作や、ダンプ動作における吐出流量Qが従来(図示例の各グラフ線)に比して飛躍的に節約されて燃費が向上する。
【0049】
ここで、図5を参照しながら、ブーム4の角度に応じて馬力を制御する処理について説明する。なお、図5は、メインポンプ12R、12Lのポンプ馬力の低減を開始するタイミングを説明するフローチャートである。図5のフローチャートは、深掘り掘削・積込み動作を行う場合の一例であり、作業モードは当初スピード・パワー重視のSPモードに設定されている(図4Aのグラフ線SP参照。)。
【0050】
コントローラ30は、バケット角度センサS3で検出したバケット角度θの値に基づいて、バケット角度θが所定値θTH以下であるかを判定する(ステップST1)。これにより、コントローラ30は掘削動作を終了したかを判定できる。
【0051】
所定値θTHは、例えば70度に設定される。所定値θTHは、作業内容に応じて任意に変更される。なお、バケット6を閉じる程、バケット角度θは小さくなる。バケット角度θが所定値θTHを超えている場合、(ステップST1のNO)、コントローラ30は、バケット角度θが所定値θTH以下になるまでST1の処理を繰り返す。
【0052】
バケット角度θが所定値θTH以下の場合、(ステップST1のYES)、コントローラ30は、ブーム角度センサS1で検出したブーム角度αの値に基づいて、ブーム角度αが所定の第1閾値αTH1以上であるかを判定する(ステップST2)。ブーム角度αが第1閾値αTH1未満の場合、(ステップST2のNO)、コントローラ30は、処理をST1へ戻す。
【0053】
第1閾値αTH1は、例えば30度に設定される。第1閾値αTH1は、作業内容に応じて任意に変更される。
【0054】
ブーム角度αが第1閾値αTH1以上である場合(ステップST2のYES)、コントローラ30は、動作区間が掘削動作区間からブーム上げ旋回動作区間に変化したと判定し、油圧アクチュエータの動きが徐々に遅くなるように、メインポンプ12L、12Rのポンプ馬力を低減させる(ステップST3)。具体的には、コントローラ30は、減圧弁50L、50Rでシフトさせた制御圧をレギュレータ13L、13Rに作用させる。レギュレータ13L、13Rは、斜板傾転角を調整してメインポンプ12L、12Rのポンプ馬力を徐々に低減させる。このとき、コントローラ30は、メインポンプ12R、12Lの吐出流量Qが一定となるよう馬力を減少させている。
【0055】
このように、コントローラ30は、バケット角度θが所定値θTH以下で、且つ、ブーム角度αが第1閾値αTH1以上であると判定した場合、メインポンプ12L、12Rのポンプ馬力を徐々に低減させる。すなわち、ブームシリンダ7や圧油回路全体を循環する作動油の流量を通常よりも減少させる。したがって、アーム5又はバケット6の迅速な動きが不要であるにもかかわらずアーム5又はバケット6を迅速に動作させてしまうことによる不要なエネルギー消費(例えば、燃料の消費である。)を抑制し、燃費を向上できる。なお、図5に示したフローチャートは、所定の制御周期で繰り返される。
【0056】
ここで、図6を参照しながら、コントローラ30がポンプ馬力を低減させる際のブーム角度α、吐出圧力P、ポンプ馬力W、吐出流量Q、及び、バケット位置を含む空間領域の時間的推移について説明する。ブーム操作レバー(図示せず。)及びアーム操作レバー16Aのそれぞれのレバー操作量は一定である。また、ポンプ馬力の低減は、レギュレータ13L、13Rを調節することによって実現される。図6では、吐出流量Qは、メインポンプ12L、12Rのそれぞれの吐出流量を同時に示す。すなわち、メインポンプ12L、12Rの吐出流量は、同じ推移を辿る。
【0057】
図6で示されるように、コントローラ30は、時刻t1において、ブーム角度αが第1閾値αTH1以上になると、掘削動作が終了しバケット位置が空間領域「2」に入っていると判定する。
【0058】
その後、コントローラ30は、レギュレータ13L、13Rにより斜板傾転角を調整して、メインポンプ12L、12Rの吐出流量Qが一定となるよう(上がらないよう)に徐々にポンプ馬力を低減させる。このようにして、メインポンプ12L、12Rのポンプ馬力Wが低減された結果、ブーム角度αの増大(開き)速度は、ポンプ馬力が低減されない場合に比べ低下する。
【0059】
そして、時刻t2、t3に進行するにしたがって、すなわち、バケット6が空間領域「2」を経て空間領域「3」に移動するにしたがって、ポンプの吐出圧力Pは、P1からP2まで徐々に減少していく。また、ポンプ馬力Wも同様に、W1からW2へ徐々に減少していく。
【0060】
本実施形態のショベルは、上記したように吐出流量Qを一定にしてポンプ馬力Wを徐々に減少させる制御を行う構成である。そのため、ブーム4を上昇させた場合に、ブーム角度αが第1閾値αTH1以上になった途端にアタッチメントの動作速度が増大して、操作者に違和感を抱かせてしまうのを防止できる。
【0061】
時刻0~t1の期間は、ブーム上げ動作区間に対応し、時刻t1~t2の期間はブーム上げ旋回動作区間(複合動作区間)に対応し、時刻t2~t3の期間はダンプ動作区間に対応している。
【0062】
このように、本実施形態では、作業領域N内において、フロント作業機の姿勢に応じて油圧ポンプのポンプ馬力が制御される。これにより、本実施形態のショベルは、負荷(吐出圧力P)が減少しても、吐出流量Qが一定でアタッチメント(ブーム4)の動作スピードが増大しないため、従来のポンプ馬力一定制御の例えばSPモードで制御される場合に比して作業性と燃費が飛躍的に向上される。
【0063】
コントローラ30は、アタッチメントの動きが早くならないようにした後、図3(A)に示すように再度、掘削動作が行われた場合、或いは、ブーム角度αが第1閾値αTH1より小さいと判定した場合に、アタッチメントの動作速度を元の状態に戻すようにしてもよい。また、フロント作業機の姿勢検出としてブーム4の操作量を用い、動作区間の変化を判断してもよい。この場合、ブーム操作量を最大にした状態の継続時間に基づいて掘削動作区間からブーム上げ旋回動作区間への変化を判断する。
【0064】
次に、別の実施形態に係るショベルを説明する。別の実施形態は上述の実施形態と同様の技術的思想に基づいており、以下その相違点のみを説明する。図7は別の実施形態に係るショベルにおける制御の概要を説明する。
【0065】
図7の制御は、基本的には図4で説明した制御と同様であり、以下、重複する説明は省略する。別の実施形態においても、アタッチメント姿勢追従型のポンプ馬力シフト制御である点は同じである。
【0066】
図4に示した制御は、アタッチメントの姿勢によってバケット位置が空間領域「1」から空間領域「2」、空間領域「2」から空間領域「3」へ移動したとしても、吐出流量Qが一定となるよう(変化しないように)にポンプ馬力を徐々に低減させる。このとき、エンジンの回転数は変化させない。
【0067】
一方、図7に示した制御は、アタッチメントの姿勢によってバケット位置が空間領域「1」から空間領域「2」、空間領域「2」から空間領域「3」へ移動したとしても、吐出流量Qが一定となるようにエンジン11の回転数を徐々に低減させる制御である。
【0068】
このように、別の実施形態に係るショベルは、エンジン11の回転数を低減させることによってアタッチメント(アーム5又はバケット6)の動きが早くならないようにする点で、レギュレータ13L、13Rの調節を利用する上述の実施形態に係るショベルと異なるが、その他の点で共通する。
【0069】
したがって別の実施形態においても、吐出流量Qが一定でアタッチメント(ブーム4)の動作スピードが一定となるため、作業性と燃費が飛躍的に向上される。
【0070】
次に、図8及び図9を参照しながら、本発明の更に別の実施形態に係るショベルについて説明する。
【0071】
この実施形態は、図3に示す「深掘り掘削・積込み動作」ではなく、浅掘り掘削・積込み動作等の「通常の掘削・積込み動作」における制御を特長としている。
【0072】
この実施形態においても、上述の2つ実施形態と略同様の構成と基本制御思想が利用されており、重複する説明は省略される。
【0073】
先ず、この実施形態の「通常の掘削・積込み動作」について詳しく説明する。
【0074】
図8(A)~図8(D)は、掘削動作が行われている状態を示す。更に別の実施形態の掘削動作は図8(A)及び図8(B)の掘削動作前半と、図8(C)及び図8(D)の掘削動作後半とに分けられる。
【0075】
図8(A)の斜線領域は、アタッチメントの作業領域Nを表わす。作業領域Nは、上部領域Nupと先端領域Noutとを除いたエンドアタッチメントの存在領域を指す。
【0076】
上部領域Nupは、例えば、ブーム角度αが最大角度から10度以内のときのエンドアタッチメントの存在領域として定められる。
【0077】
先端領域Noutは、例えば、ブーム角度αが閾値以上であり、且つ、アーム角度βが最大角度から10度以内のときのエンドアタッチメントの存在領域として定められる。したがって、コントローラ30は、バケット6が作業領域N内にあるか否かはブーム角度とアーム角度から判断できる。
【0078】
図8(A)に示すように、ブーム角度αが所定の閾値αTH3より大きい場合、ショベルは、通常の掘削動作が行われていると判定する。そして、オペレータはバケット6の先端が掘削対象に関して所望の高さ位置に来るにように位置決めし、図8(B)に示すようにアーム5を開いた状態からアーム5が地面に対して略垂直になる角度(約90度)まで閉じる。この動作により、ある程度の深さの土が掘削され、アーム5が地表面に略垂直になるまでに、領域Dにおける掘削対象がかき寄せられる。以上の動作を掘削動作前半と称し、この動作区間を掘削動作前半区間と称する。また、図8(B)のアーム5の角度を第2閾値βTHする。第2閾値βTHは、アーム5が地面に対して略垂直になるときのアーム角度であってよい。掘削動作前半区間に必要とされるポンプ馬力は低い。
【0079】
図8(C)に示すように、オペレータはアーム5を更に閉じて、領域Dαにおける掘削対象をバケット6により更にかき寄せる。そして、バケット6を上縁が略水平となるまで(約90度)閉じて、かき集めた掘削土をバケット6内に収納し、ブーム4を上げてバケット6を図8(D)に示す位置まで上げる。図8(D)に示すブーム4の角度を「αTH2」と表記する。以上の動作を掘削動作後半と称し、この動作区間を掘削動作後半区間と称する。掘削動作後半区間は高いポンプ馬力を必要とする。図8(C)の動作は、アーム5とバケット6との複合動作であってよい。このように、コントローラ30は、フロント作業機の姿勢に基づき、動作区間が掘削動作前半区間から掘削動作後半区間に変化したと判定する。また、フロント作業機の姿勢検出としてアーム5の操作量を用い、動作区間の変化を判断してもよい。この場合、アーム操作量を最大にした状態の継続時間に基づいて掘削動作前半区間からブーム上げ掘削動作後半区間への変化を判断する。
【0080】
浅掘り掘削・積込み動作等の通常の掘削・積込み動作においては、アーム角度が第2閾値βTH未満のときと、第2閾値βTH以上のときとで、必要となるポンプ馬力が異なる点が上述の実施形態と相違している。したがって、この実施形態では、「フロント作業機の姿勢」としてのアーム5の姿勢(角度)が、第2閾値βTH未満となる場合に、ポンプ馬力を増加させる。また、この実施形態では、図1図7で説明した「フロント作業機の姿勢」としてのブーム4の姿勢(角度)に応じたポンプ馬力の制御も行なわれる。
【0081】
次に、オペレータは、バケット6の上縁を略水平にした状態で、図8(E)に示すようにバケット6の底部が地面から所望の高さとなるまでブーム4を上げる。所望の高さは例えばダンプの高さ以上の高さである。ブーム角度αが第1閾値αTH1以上になると、コントローラ30は、動作区間が掘削動作区間からブーム上げ旋回動作区間に変化したと判定し、油圧アクチュエータの動きが徐々に遅くなるように、メインポンプ12L、12Rのポンプ馬力を低減させる。オペレータは、これに続いて、あるいは同時に、上部旋回体3を矢印AR3で示すように旋回させ、排土する位置までバケット6を移動させる。ブーム上げ動作の初期は比較的高いポンプ馬力が必要とされ、その後に続くブーム上げ旋回においては、徐々に低いポンプ馬力となるポンプ馬力制御が必要とされる。
【0082】
オペレータは、ブーム上げ旋回動作を完了させると、次に、図8(F)に示すようにアーム5及びバケット6を開いて、バケット6内の土を排出する。このダンプ動作では、バケット6のみを開いて排土してもよい。ダンプ動作区間に必要とされるポンプ馬力は低い。
【0083】
オペレータは、ダンプ動作を完了させると、次に、図8(G)に示すように、上部旋回体3を矢印AR4で示すように旋回させ、バケット6を掘削位置の真上に移動させる。このとき、旋回と同時にブーム4を下げてバケット6を掘削対象から所望の高さのところまで下降させる。ブーム下げ旋回動作区間に必要とされるポンプ馬力は、ダンプ動作区間に必要とされるポンプ馬力より更に低い。その後、オペレータは、図8(A)に示すようにバケット6を所望の高さまで下降させ、再び掘削動作を行う。
【0084】
オペレータは、「掘削動作前半」、「掘削動作後半」「ブーム上げ旋回動作」、「ダンプ動作」、及び「ブーム下げ旋回動作」で構成されるサイクルを繰り返しながら、「通常の掘削・積込み動作」を進めていく。このように、更に別の実施形態では、作業領域N内において、フロント作業機の姿勢に応じて油圧ポンプのポンプ馬力が制御される。
【0085】
作業領域Nは、「掘削動作前半」、「掘削動作後半」、「ブーム上げ旋回動作」が行われるときにバケット6が存在する領域を含んでいる。作業領域Nはキャビン10の形状又は油圧ショベルの機種(サイズ)等に応じて予め設定される。
【0086】
ここで、図9を参照しながら、アーム5の角度とブーム4の角度に応じてポンプ馬力を制御する処理について説明する。図9はコントローラ30がポンプ馬力Wを制御する際のポンプ馬力Wの時間的推移を示している。ブーム操作レバー(図示せず。)及びアーム操作レバー16Aのそれぞれのレバー操作量は一定である。
【0087】
図9におけるポンプ馬力Wの時間的推移は、基本的に図6に示したポンプ馬力Wの時間的推移と略同様であるが、掘削動作前半と掘削動作後半で異なる。また、作業モードは、当初、燃費優先のHモードに設定されている(図4Aのグラフ線H参照。)。
【0088】
図8(A)及び図8(B)に示したようにアーム5を開いた状態から地面に対して略垂直になる角度まで閉じる掘削動作前半において、ポンプ馬力は低いポンプ馬力W2に制御されている。
【0089】
コントローラ30は、時刻t1において、アーム角度βが第2閾値βTH未満であると判定する。なお、アーム5を閉じる程、アーム角度βは小さくなる。その後、コントローラ30は、レギュレータ13L、13Rにより斜板傾転角を調整してポンプ馬力を変更し、メインポンプ12L、12Rの吐出流量を上げて徐々にポンプ馬力W1へ増加させる。第2閾値βTHは、例えば、図8(B)に示すようにアーム5が地面に対して略垂直になる角度(水平面に対するアーム5の角度が例えば90度±5度となるときのアーム角度)である。
【0090】
コントローラ30は、時刻t2において、ブーム角度αが所定値αTH2以上であることを判定する。所定値αTH2は、図8(D)に示すように、ブーム4が最も降下した状態におけるブーム角度より所定角度(例えば30度)だけ大きい値である。
【0091】
コントローラ30は、メインポンプ12L、12Rの吐出流量Qが一定となるよう(上がらないよう)に徐々にポンプ馬力を低減させる。
【0092】
コントローラ30は、時刻t2からt3に進行するにしたがって、ポンプ馬力WをW1からW2まで徐々に減少させる。ここでは、ブーム角度αに基づき、時刻t2において、ポンプ馬力低減の切替え判断を行ったが、アーム角度βに基づき、ポンプ馬力低減の切替え判断を行うようにしてもよい。掘削後半では大きなポンプ馬力が必要であるが、作業場の状況によっては、アーム角度βが閉じた状態からは大きなポンプ馬力が不要になる場合もある。このような場合には、アーム5の姿勢(角度)が、「第3閾値」としての所定値βTH2(例えば、最大角度から110度を差し引いた角度)未満となる場合に、ポンプ馬力を低減させる制御を行ってもよい。
【0093】
コントローラ30は、時刻t3において、レギュレータ13L、13Rにより斜板傾転角を調整してポンプ馬力を変更し、メインポンプ12L、12Rの吐出流量を上げてポンプ馬力Wをポンプ馬力W2からポンプ馬力W2hへ増加させる。時刻t3は、図8(F)に示すダンプ動作が開始されるタイミングである。
【0094】
コントローラ30は、時刻t4において、レギュレータ13L、13Rにより斜板傾転角を調整してポンプ馬力を変更し、メインポンプ12L、12Rの吐出流量を下げてポンプ馬力Wをポンプ馬力W2hからポンプ馬力W2lへ低減させる。時刻t4は、図8(G)に示すブーム下げ旋回動作が開始されるタイミングである。
【0095】
このとき、図7に示したように吐出流量Qが一定となるように、エンジン11の回転数を徐々に減少させる制御を実施してよい。
【0096】
したがって、本実施形態では、負荷(吐出圧力P)が減少しても、吐出流量Qが一定でアタッチメントの動作スピードが一定となるため、作業性と燃費が飛躍的に向上される。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更等が可能である。
【0098】
また、本願は、2016年1月28日に出願した日本国特許出願2016-014727号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0099】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 12L、12R・・・メインポンプ 13L、13R・・・レギュレータ 14・・・パイロットポンプ 16・・・操作装置 16A・・・アーム操作レバー 17A・・・圧力センサ 18a・・・ブームシリンダ圧センサ 18b・・・吐出圧センサ 50L、50R・・・減圧弁 20L、20R・・・走行用油圧モータ 21・・・旋回用油圧モータ 30・・・コントローラ 40L、40R・・・センターバイパス管路 150~158・・・流量制御弁 S1・・・ブーム角度センサ S2・・・アーム角度センサ S3・・・バケット角度センサ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9