(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221202BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B41J2/14 209
B41J2/14 611
B41J2/14 613
B41J2/14 605
B41J2/16 503
B41J2/16 101
(21)【出願番号】P 2018148023
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永持 創一朗
(72)【発明者】
【氏名】青木 武志
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087464(JP,A)
【文献】特開2012-000921(JP,A)
【文献】特開2015-193218(JP,A)
【文献】特開2016-107420(JP,A)
【文献】特開2017-213860(JP,A)
【文献】特開2011-126102(JP,A)
【文献】特開2014-072418(JP,A)
【文献】特開2017-055049(JP,A)
【文献】特開2014-008680(JP,A)
【文献】特開2012-061750(JP,A)
【文献】特開2011-025547(JP,A)
【文献】特表2014-503398(JP,A)
【文献】特開2018-108707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の主面に配された半導体素子と、
前記主面の上に配され、液体を吐出するための液体吐出素子と、
前記主面と前記液体吐出素子との間に配された絶縁膜と、
前記基材および前記絶縁膜を貫通する
複数の液体供給口と、
前記複数の液体供給口が接続された共通液室と、
前記半導体素子と前記液体吐出素子とを電気的に接続するために前記絶縁膜の中に配された第1導電体パターンと、
前記主面に対する正射影において、前記
複数の液体供給口
のそれぞれを
個別に囲むように前記絶縁膜の中に配された
複数の第2導電体パターンと、を備え、
前記絶縁膜は、第1絶縁膜、および、前記第1絶縁膜と前記液体吐出素子との間に配された第2絶縁膜を含み、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とが、前記主面に沿う方向に延在する接合面において接合され、
前記第1導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第1導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、前記接合面において接合され、
前記
複数の第2導電体パターン
の各々は、前記第1絶縁膜の中に配された第3導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第4導電部材とを含み、
前記第3導電部材と前記第4導電部材とが、前記接合面において接合していることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項2】
前記第1導電部材と前記第2導電部材との接合部と、前記第3導電部材と前記第4導電部材との接合部とが、同じ材料によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項3】
前記主面と交差する方向において、前記第1導電部材と前記第3導電部材とが同じ高さを有し、前記第2導電部材と前記第4導電部材とが同じ高さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項4】
前記第3導電部材および前記第4導電部材が、金属を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項5】
前記第3導電部材および前記第4導電部材が、銅を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項6】
前記第3導電部材は、銅を含む第1金属層と、前記第1金属層と前記第1絶縁膜との間に配された第1バリアメタル層と、を含み、
前記第4導電部材は、銅を含む第2金属層と、前記第2金属層と前記第2絶縁膜との間に配された第2バリアメタルと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項7】
前記
複数の第2導電体パターン
の各々と
それによって取り囲まれた前記液体供給口との間に前記第1導電体パターンが配されないことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項8】
前記第3導電部材と前記第4導電部材との接合部の前記液体に対する耐性が、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との接合部の前記液体に対する耐性よりも高いことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項9】
前記液体供給口の壁面のうち少なくとも前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との接合部を覆うように、保護パターンが配されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項10】
前記第2導電体パターンが、前記第1導電体パターンから電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッド用基板が、前記第2導電体パターンの電位を制御するための電位制御パターンをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッド用基板の動作中において、前記第2導電体パターンに負の電位が印加されることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項13】
前記液体吐出ヘッド用基板が、前記第2導電体パターンと前記基材との間の電位差を測定するための電位差測定パターンをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項14】
液体吐出ヘッド用基板であって、
基材と、
前記基材の主面に配された半導体素子と、
前記主面の上に配され、液体を吐出するための液体吐出素子と、
前記主面と前記液体吐出素子との間に配された絶縁膜と、
前記基材および前記絶縁膜を貫通する液体供給口と、
前記半導体素子と前記液体吐出素子とを電気的に接続するために前記絶縁膜の中に配された第1導電体パターンと、
前記主面に対する正射影において、前記液体供給口を囲むように前記絶縁膜の中に配された第2導電体パターンと、を備え、
前記絶縁膜は、第1絶縁膜、および、前記第1絶縁膜と前記液体吐出素子との間に配された第2絶縁膜を含み、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とが、前記主面に沿う方向に延在する接合面において接合され、
前記第1導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第1導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、前記接合面において接合され、
前記第2導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第3導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第4導電部材とを含み、
前記第3導電部材と前記第4導電部材とが、前記接合面において接合し、
前記液体吐出ヘッド用基板の動作中において、前記第2導電体パターンに負の電位が印加されることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項15】
基材と、
前記基材の主面に配された半導体素子と、
前記主面の上に配され、液体を吐出するための液体吐出素子と、
前記主面と前記液体吐出素子との間に配された絶縁膜と、
前記基材および前記絶縁膜を貫通する液体供給口と、
前記半導体素子と前記液体吐出素子とを電気的に接続するために前記絶縁膜の中に配された第1導電体パターンと、
前記主面に対する正射影において、前記液体供給口を囲むように前記絶縁膜の中に配された第2導電体パターンと、
前記第2導電体パターンと前記基材との間の電位差を測定するための電位差測定パターンと、を備え、
前記絶縁膜は、第1絶縁膜、および、前記第1絶縁膜と前記液体吐出素子との間に配された第2絶縁膜を含み、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とが、前記主面に沿う方向に延在する接合面において接合され、
前記第1導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第1導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、前記接合面において接合され、
前記第2導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第3導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第4導電部材とを含み、
前記第3導電部材と前記第4導電部材とが、前記接合面において接合していることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項16】
基材と、
前記基材の主面に配された半導体素子と、
前記主面の上に配された液体吐出素子と、
前記主面と前記液体吐出素子との間に配された絶縁膜と、
前記基材および前記絶縁膜を貫通する液体供給口と、
前記半導体素子と前記液体吐出素子とを電気的に接続するために前記絶縁膜の中に配された導電体パターンと、
保護パターンと、
前記保護パターンの電位を制御するための電位制御パターンと、を備え、
前記絶縁膜は、第1絶縁膜、および、前記第1絶縁膜と前記液体吐出素子との間に配された第2絶縁膜とを含み、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とが、前記主面に沿う方向に延在する接合面において接合され、
前記導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第1導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、前記接合面において接合され、
前記保護パターンは、前記液体供給口の壁面のうち少なくとも前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との接合部を覆うよう
に配されることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項17】
前記保護パターンが、前記絶縁膜および前記基材のうち前記液体供給口が貫通した壁面の全体を覆うことを特徴とする請求項
16に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項18】
前記保護パターンが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブおよびタンタルのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
16または17に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項19】
前記保護パターンが導電性を備え、
前記保護パターンが、前記導電体パターンから電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項
16乃至18の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項20】
前記液体吐出ヘッド用基板の動作中において、前記保護パターンに負の電位が印加されることを特徴とする請求項
16乃至19のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項21】
基材と、
前記基材の主面に配された半導体素子と、
前記主面の上に配された液体吐出素子と、
前記主面と前記液体吐出素子との間に配された絶縁膜と、
前記基材および前記絶縁膜を貫通する液体供給口と、
前記半導体素子と前記液体吐出素子とを電気的に接続するために前記絶縁膜の中に配された導電体パターンと、
保護パターンと、
前記保護パターンと前記基材との間の電位差を測定するための電位差測定パターンと、を備え、
前記絶縁膜は、第1絶縁膜、および、前記第1絶縁膜と前記液体吐出素子との間に配された第2絶縁膜とを含み、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とが、前記主面に沿う方向に延在する接合面において接合され、
前記導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第1導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、前記接合面において接合され、
前記保護パターンは、前記液体供給口の壁面のうち少なくとも前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との接合部を覆うように配されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項22】
請求項1乃至
21の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板と、前記液体吐出ヘッド用基板によって液体の吐出が制御される吐出口と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項23】
請求項
22に記載の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに液体を吐出させるための駆動信号を供給する手段と、を有することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や画像などの情報を紙やフィルムなどの記録媒体に記録する記録装置において、液体吐出ヘッドが広く用いられている。特許文献1には、半導体素子が形成された駆動回路基板と吐出素子が形成された流路形成基板とを接合させた液体吐出ヘッドが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液体吐出ヘッドにおいて、インクを供給するためのマニホールドが、駆動回路基板と流路形成基板とが接合する接合部を通過する。液体吐出ヘッドの動作時において、インクなどの液体がマニホールド内に装填されると、接合部が液体に曝され、接合部が浸食される場合がある。浸食が、駆動回路基板と流路形成基板とを電気的に接続するための導電体パターンまで到達してしまった場合、液体を介して導電体パターン間のショートが発生するなど、液体吐出ヘッドの信頼性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、液体吐出ヘッドに用いる液体吐出ヘッド用基板の信頼性の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、液体吐出ヘッド用基板に係り、前記液体吐出ヘッド用基板は、基材と、前記基材の主面に配された半導体素子と、前記主面の上に配され、液体を吐出するための液体吐出素子と、前記主面と前記液体吐出素子との間に配された絶縁膜と、前記基材および前記絶縁膜を貫通する複数の液体供給口と、前記複数の液体供給口が接続された共通液室と、前記半導体素子と前記液体吐出素子とを電気的に接続するために前記絶縁膜の中に配された第1導電体パターンと、前記主面に対する正射影において、前記複数の液体供給口のそれぞれを個別に囲むように前記絶縁膜の中に配された複数の第2導電体パターンと、を備え、前記絶縁膜は、第1絶縁膜、および、前記第1絶縁膜と前記液体吐出素子との間に配された第2絶縁膜を含み、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とが、前記主面に沿う方向に延在する接合面において接合され、前記第1導電体パターンは、前記第1絶縁膜の中に配された第1導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第2導電部材とを含み、前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、前記接合面において接合され、前記複数の第2導電体パターンの各々は、前記第1絶縁膜の中に配された第3導電部材と前記第2絶縁膜の中に配された第4導電部材とを含み、前記第3導電部材と前記第4導電部材とが、前記接合面において接合している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッドに用いる液体吐出ヘッド用基板の信頼性の低下を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド用基板の構成例を示す図。
【
図2】
図1の液体吐出ヘッド用基板の製造方法の例を示す図。
【
図3】
図1の液体吐出ヘッド用基板の製造方法の例を示す図。
【
図4】
図1の液体吐出ヘッド用基板の製造方法の例を示す図。
【
図5】
図1の液体吐出ヘッド用基板の変形例を示す図。
【
図6】
図5の液体吐出ヘッド用基板の変形例を示す図。
【
図7】
図1の液体吐出ヘッド用基板の変形例を示す図。
【
図9】
図1、5、6、7の液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド用基板の具体的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0010】
第1の実施形態
図1(a)~4(c)を参照して、本発明の実施形態による液体吐出ヘッド用基板の構造および製造方法について説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態における液体吐出ヘッド用基板100の構成例を示す断面図であり、
図1(b)は、液体吐出ヘッド用基板100の上面図、
図1(c)は、
図1(a)の点線Aで囲まれた部分の拡大図である。ここで、
図1(a)は、
図1(b)のB-B’間の断面を示した図である。
図1(d)、1(e)は、
図1(a)の接合面121における上面図および下面図である。ここで、本明細書において、基材110から接合面121に向かう方向を「上」方向と呼ぶ。例えば、
図1(a)において、基材110の上に液体吐出素子130が配される、と表現する。
【0011】
液体吐出ヘッド用基板100は、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサなどの液体吐出装置に用いられる。以下の実施形態では、液体吐出ヘッド用基板100が備える液体を吐出するための液体吐出素子130として、発熱抵抗素子が使用される場合を示す。しかしながら、これに限られることはなく、液体吐出素子130は、液体を吐出させるためのエネルギを液体に付与可能な素子であればよく、例えば圧電素子などが用いられてもよい。
【0012】
液体吐出ヘッド用基板100は、基材110、基材110の主面に配された半導体素子111、基材110の主面の上に配され、液体を吐出するための液体吐出素子130、基材110の主面と液体吐出素子130との間に配された絶縁膜140を含む。また、液体吐出ヘッド用基板100は、半導体素子111と液体吐出素子130とを電気的に接続するために絶縁膜140の中に配された導電体パターン120(第1導電体パターン)を含む。また、液体吐出ヘッド用基板100は、液体吐出素子130に液体を供給するために、基材110および絶縁膜140を貫通する液体供給口160を含む。本実施形態において、液体供給口160は、1つの液体吐出素子130に対して2つずつ配されており、それぞれの液体供給口160は、共通液室161に接続されている。さらに、液体吐出ヘッド用基板100は、基材110の主面に対する正射影において、液体供給口160を取り囲むように絶縁膜140の中に配されたガードリング構造の導電体パターン150(第2導電体パターン)を含む。本実施形態において、
図1(a)に示される半導体素子111、液体吐出素子130、導電体パターン120、液体供給口160および導電体パターン150によって、1つのユニットUNITが構成されている。液体吐出ヘッド用基板100は、基材110や基材110の上の絶縁膜140に複数のユニットUNITが配される(形成される)ことによって構成される。本実施形態において、液体供給口160は、1つのユニットに配される1つの液体吐出素子130に対して2つ配されるが、例えば、液体供給口160は、1つのユニットに1つであってもよいし、3つ以上配されてもよい。また、例えば、共通液室161は、複数のユニットUNIT間で共有されてもよい。
【0013】
基材110には、例えばシリコンなどの半導体基板が用いられうる。基材110には、トランジスタなどの半導体素子111と、LOCOSやSTIなどの素子分離領域(不図示)が形成されている。
【0014】
絶縁膜140は、絶縁膜140a(第1絶縁膜)、および、絶縁膜140aと液体吐出素子130との間いに配された絶縁膜140b(第2絶縁膜)とを含む。絶縁膜140aと絶縁膜140bとは、基材110の主面に沿う方向に延在する接合面121において接合された積層構造を備える。接合面121は、基材110の主面と略平行であってもよい。絶縁膜140には、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの各種の絶縁材料が用いられうる。
【0015】
導電体パターン120は、絶縁膜140aの中に配された導電部材125(第1導電部材)を含む導電体パターン120aと絶縁膜140bの中に配された導電部材127(第2導電部材)を含む導電体パターン120bとを含む。導電部材125と導電部材127とは、接合面121において接合されている。また、導電体パターン120aは、絶縁膜140aの内部に配された導電部材124を含む。導電部材124、125は、例えば、配線パターンでありうる。複数層にわたって配された導電部材124、125のうち基材110に最も近い導電部材124は、基材110に形成された半導体素子111などとプラグ202を介して電気的に接続されている。また、導電部材124と導電部材125とは、プラグ204を介して互いに接続されている。また、導電体パターン120bは、絶縁膜140bの内部に配された導電部材128を含む。導電部材127、128は、例えば、配線パターンでありうる。複数層にわたって配された導電部材127、128のうち基材110から最も遠い導電部材128は、プラグ303を介して液体吐出素子130と電気的に接続されている。また、導電部材127と導電部材128とは、プラグ305を介して互いに接続されている。
【0016】
導電体パターン150は、絶縁膜140aの中に配された導電部材150a(第3導電部材)と絶縁膜140bの中に配された導電部材150b(第4導電部材)とを含む。導電部材150aと導電部材150bとは、接合面121において接合している。導電部材150aと導電部材150bとは、
図1(d)、1(e)に示されるように、液体供給口160の外周を囲むように配されている。液体吐出ヘッド用基板100が組み込まれた液体吐出装置の使用時において、液体吐出ヘッド用基板100には、液体吐出素子130を用いて吐出させる液体が、共通液室161および液体供給口160に装填される。接合面121において、絶縁膜140aと140bとの結合部が液体によって浸食されてしまうと、液体を介して導電体パターン120間のショートが発生するなど、液体吐出ヘッドの信頼性が低下してしまう可能性がある。そこで、液体供給口160の外周を取り囲むように、導電体パターン150が設けられる。詳細は後述するが、導電体パターン150の導電部材150aと導電部材150bとの結合部の液体に対する耐性が、絶縁膜140aと絶縁膜140bとの結合部の液体に対する耐性よりも高くなるように、導電体パターン150を構成する材料が選択される。また、
図1(a)、1(d)、1(e)に示されるように、それぞれのユニットUNITにおいて、導電体パターン150と導電体パターン150によって取り囲まれた液体供給口160との間に導電体パターン120は配されない。
【0017】
導電部材150a、150bを含む導電体パターン150は、導電体パターン120と同様に導電性を備えうる。この場合、導電体パターン150が、それぞれのユニットUNITにおいて、同じユニットUNITに配される半導体素子111や導電体パターン120から電気的に絶縁されていてもよい。つまり、導電体パターン150と導電体パターン120とは、互いに電気的に接続されていなくてもよい。換言すると、導電体パターン150は、信号伝達や電力供給に寄与しない導電体パターンであってもよい。このため、導電体パターン150は、液体吐出ヘッド用基板100が組み込まれた液体吐出装置の動作時において、電気的にフローティングの状態で用いられうる。また、後述するが、液体吐出装置の動作時において、導電体パターン150に所定の電位が印加されてもよい。
【0018】
導電体パターン120aと導電体パターン120bとの接合部と、導電部材150aと導電部材150bとの接合部とが、同じ構造や同じ材料によって構成されていてもよい。具体的には、導電部材150a、150bと導電部材125、127とのそれぞれが、同じバリアメタル層と同じ金属層とを備える同じ積層構造を有していてもよい。導電部材150a、150bおよび導電部材125、127のバリアメタル層は、例えばタンタル、タンタル化合物、チタン、チタン化合物によって形成され、金属層に含まれる材料の拡散や相互反応を抑制する。また、導電部材150a、150bおよび導電部材125、127の金属層は、例えば銅などのバリアメタル層と比較して低抵抗な金属によって形成されていてもよい。
【0019】
図1(c)に示されるように、導電部材125は、金属層125aとバリアメタル層125bとを含み構成されうる。バリアメタル層125bは、金属層125aと絶縁膜140aとの間に配される。導電部材127は、金属層127aとバリアメタル層127bとを含み構成されうる。バリアメタル層127bは、金属層127aと絶縁膜140bとの間に配される。導電部材150aは、金属層151a(第1金属層)とバリアメタル層152a(第1バリアメタル層)とを含み構成されうる。バリアメタル層152aは、金属層151aと絶縁膜140aとの間に配される。導電部材150bは、金属層151b(第2金属層)とバリアメタル層152b(第2バリアメタル層)とを含み構成されうる。バリアメタル層152bは、金属層151bと絶縁膜140bとの間に配されうる。接合面121において、金属層125aと金属層127aと、バリアメタル層125bとバリアメタル層127bと、金属層151aと金属層151bと、バリアメタル層152aとバリアメタル層152b、絶縁膜140aと絶縁膜140bと、がそれぞれ互いに接合されている。
図1(c)に示されるように、導電部材125の上面と導電部材150aの上面と絶縁膜140aの上面とは、同一面上にあり、導電部材127の下面と導電部材150bの下面と絶縁膜140bの下面とは、同一面上にある。また、
図1(c)に示されるように、基材110の主面と交差(例えば、直交)する方向において、導電部材150aと導電部材125とが同じ高さを有していてもよい。同様に、基材110の主面と交差する方向において、導電部材150bと導電部材127とが同じ高さを有していてもよい。換言すると、導電部材150a、150bおよび導電部材125、127のバリアメタル層や金属層が、それぞれ同じ厚さを有していてもよい。後述するように液体吐出ヘッド用基板100は2枚の基板を接合することによって製造される。この2枚の基板が互いに接合される面が、接合面121となる。
【0020】
液体吐出素子130は、導電体パターン120の上に位置する。導電体パターン120によって(具体的には導電体パターン120に含まれる導電材によって)半導体素子111と液体吐出素子130とは、互いに電気的に接続されている。上述のように、本実施形態において、液体吐出素子130には発熱抵抗素子が用いられ、例えばタンタルやタンタル化合物によって形成されうる。また、発熱抵抗素子は、ポリシリコンやタングステン、タングステン化合物によって形成されてもよい。1つのユニットUNITに配される液体吐出素子130は1つに限られることはなく、吐出する液体の量に応じて、1つのユニットUNITに2つ以上の液体吐出素子130が配されていてもよい。また、液体吐出素子130の上には、液体が液体吐出素子130に直接触れないように、保護膜が配されうる。保護膜には、例えば、窒化シリコンが用いられてもよい。さらに、保護膜の上に、例えばタンタルやタンタル化合物を用いた耐キャビテーション膜が配されていてもよい。
【0021】
次に、
図2(a)~
図4(b)を参照し、液体吐出ヘッド用基板100の製造方法について説明する。まず、
図2(a)~2(f)を用いて、液体吐出ヘッド用基板100のうち基材110から接合面121までの半導体素子111を含む基板200の形成について説明する。
【0022】
基板200の形成は、まず、
図2(a)に示されるように、シリコンなどの半導体材料を用いた基材110に半導体素子111や素子分離領域(不図示)を形成する。半導体素子111は、例えばトランジスタなどのスイッチ素子であってもよい。また、素子分離領域は、LOCOS法で形成されてもよいし、STI法で形成されてもよい。
【0023】
次いで、半導体素子111が形成された基材110の上に、絶縁膜140aの一部となる絶縁層201を成膜する。絶縁層201の成膜後、絶縁層201の所定の位置にホールを開口し、
図2(b)に示されるように、ホール内にプラグ202を形成する。プラグ202は、例えば、絶縁層201の上にタングステンなどを用いた金属膜を形成し、この金属膜のうち絶縁層201に開口したホールに入り込んだ部分以外をエッチバック法やCMP法を用いて除去することによって形成される。プラグ202の形成において、チタンやチタン化合物を用いたバリアメタル層を形成してから、タングステンが成膜されてもよい。絶縁層201には、例えば、SiO
2が用いられる。絶縁層201上面は、プラグ202を形成する際のCMP工程などによって平坦化されてもよい。
【0024】
プラグ202の形成後、
図2(c)に示されるように、絶縁層201の上に導電部材124を形成する。導電部材124には、例えば、アルミニウムが用いられてもよい。絶縁層201の上に導電部材124を形成するためのアルミニウムなどの金属膜を成膜し、この金属膜の上に所望の形状のマスクパターンを形成する。次いで、マスクパターンの開口を介して、金属膜をエッチングすることによって、導電部材124が形成される。
【0025】
導電部材124の形成後、
図2(d)に示されるように、絶縁層201および導電部材124の上に絶縁膜140aの一部となる絶縁層203を形成し、絶縁層203にプラグ204を形成する。プラグ204は、バリアメタル層および金属層を含んでもよいし、金属層のみであってもよい。バリアメタル層には、例えば、チタンやチタン化合物が用いられる。また、金属層には、例えば、タングステンが用いられる。絶縁層203には、例えば、SiO
2が用いられる。
【0026】
絶縁層203およびプラグ204を形成した後、
図2(e)に示されるように、絶縁層203の上に、絶縁膜140aの一部となる絶縁層205と、導電部材125および導電部材150aと、を形成する。
図2(f)は、
図2(e)の上面図であり、導電部材150aは、後の工程で形成される液体供給口160の周囲を囲うガードリング構造として配置される。
【0027】
導電部材125および導電部材150aは、例えば、ダマシン法を用いて同時に形成することができる。この場合、導電部材125および導電部材150aは、同じ材料によって構成され、基材110の主面と交差する方向に同じ高さを有しうる。導電部材125および導電部材150aは、上述のように、それぞれバリアメタル層125b、152aおよび金属層125a、151aを含んでもよい。バリアメタル層125b、152aには、例えば、タンタルやタンタル化合物、チタン、チタン化合物が用いられる。また、金属層125a、151aには、例えば、銅が用いられる。また、絶縁層205には、例えば、SiO2が用いられる。
【0028】
以上の工程を含み、基板200が形成される。本実施形態において、基板200は、2層の導電部材124、125を含むが、導電部材が配される層数は、これに限られることはない。導電部材が配される層の数は、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。導電部材124、125、プラグ202、204が、上述の液体吐出ヘッド用基板100の導電体パターン120aを構成する。また、本実施形態において、絶縁膜140aは、絶縁層201、絶縁層203および絶縁層205を含むが、導電部材が配される層数に応じて、絶縁膜140aに含まれる絶縁層の層数は、適宜変化しうる。
【0029】
また、本実施形態において、導電部材150aは、1層構造であるが、2層以上にしてもよい。導電部材150aが、2層以上の構成を有する場合、複数層の導電部材150aのうち1層の導電部材150aは、基板200の表面に露出する。また、導電部材150aが、2層以上の構成を有する場合、それぞれの層に配された導電部材150aは、プラグによって互いに接続されていてもよい。
【0030】
次に、
図3(a)~3(f)を用いて、液体吐出ヘッド用基板100のうち接合面121から液体吐出素子130側を構成することになる基板300の形成について説明する。本明細書において、基板200の形成について先に説明を行うが、基板200の形成と基板300の形成との順番について特に制限はない。基板200を先に製造してもよいし、基板300を先に製造してもよいし、基板200と基板300とを並行して製造してもよい。
【0031】
まず、
図3(a)に示されるように、基材301の上に液体吐出素子130を形成する。基材301には、シリコンなどの半導体基板が用いられてもよいし、ガラスなどの絶縁体基板が用いられてもよい。本実施形態において、発熱抵抗素子である液体吐出素子130は、例えば、タンタルやタンタル化合物、ポリシリコン、タングステン、タングステン化合物などを用いて形成される。また、液体吐出素子130を形成する前に、基材301の上に窒化シリコンなどを用いた保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、後述の基材301を除去する工程において、基材301と保護膜との間でエッチングの選択性がある材料が用いられうる。
【0032】
液体吐出素子130の形成後、基材301および液体吐出素子130の上に、絶縁膜140bの一部となる絶縁層302を形成する。絶縁層302の形成後、絶縁層302の所定の位置にホールを開口し、
図3(b)に示されるように、ホール内にプラグ303を形成する。プラグ303は、例えば、絶縁層302の上にタングステンなどを用いた金属膜を形成し、この金属膜のうち絶縁層302に開口したホールに入り込んだ部分以外をエッチバック法やCMP法を用いて除去することによって形成される。プラグ303の形成において、チタンやチタン化合物を用いたバリアメタル層を形成してから、タングステンが成膜されてもよい。絶縁層302には、SiO
2が用いられる。さらに、絶縁層302の上面を平坦化することによって、絶縁層302の厚さを調節してもよい。
【0033】
プラグ303の形成後、
図3(c)に示されるように、絶縁層302の上に導電部材128を形成する。導電部材128には、例えば、アルミニウムが用いられてもよい。絶縁層302の上に導電部材128を形成するためのアルミニウムなどの金属膜を成膜し、この金属膜の上に所望の形状のマスクパターンを形成する。次いで、マスクパターンの開口を介して、金属膜をエッチングすることによって、導電部材128が形成される。
【0034】
導電部材128の形成後、
図3(d)に示されるように、絶縁層302および導電部材128の上に絶縁膜140bの一部となる絶縁層304を形成し、絶縁層304にプラグ305を形成する。プラグ305は、バリアメタル層および金属層を含んでもよいし、金属層のみであってもよい。バリアメタル層には、例えば、チタンやチタン化合物が用いられる。また、金属層には、例えば、タングステンが用いられる。絶縁層304には、例えば、SiO
2が用いられる。
【0035】
絶縁層304およびプラグ305を形成した後、
図3(e)に示されるように、絶縁層304の上に、絶縁膜140bの一部となる絶縁層306と、導電部材127および導電部材150bと、を形成する。
図3(f)は、
図3(e)の上面図であり、導電部材150bは、後の工程で形成される液体供給口160の周囲を囲うガードリング構造として配置される。
【0036】
導電部材127および導電部材150bは、例えば、ダマシン法を用いて同時に形成することができる。この場合、導電部材127および導電部材150bは、同じ材料によって構成され、基材301の主面と交差する方向に同じ高さを有しうる。導電部材127および導電部材150bは、上述のように、それぞれバリアメタル層127b、152bおよび金属層127a、151bを含んでもよい。バリアメタル層127b、152bには、例えば、タンタルやタンタル化合物、チタン、チタン化合物が用いられる。また、金属層127a、151bには、例えば、銅が用いられる。また、絶縁層306には、例えば、SiO2が用いられる。
【0037】
以上の工程を含み、基板300が形成される。本実施形態において、基板300は、2層の導電部材127、128を含むが、導電部材が配される層数は、これに限られることはない。導電部材が配される層の数は、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。導電部材127、128、プラグ303、305が、上述の液体吐出ヘッド用基板100の導電体パターン120bを構成する。また、本実施形態において、絶縁膜140bは、絶縁層302、絶縁層304および絶縁層306を含むが、導電部材が配される層数に応じて、絶縁膜140bに含まれる絶縁層の層数は、適宜変化しうる。
【0038】
また、本実施形態において、導電部材150bは、1層構造であるが、2層以上にしてもよい。導電部材150bが、2層以上の構成を有する場合、複数層の導電部材150bのうち1層の導電部材150bは、基板300の表面に露出する。また、導電部材150bが、2層以上の構成を有する場合、それぞれの層に配された導電部材150bは、プラグによって互いに接続されていてもよい。
【0039】
次いで、
図4(a)に示されように、上述の各工程を用いて形成された基板200と基板300とを、半導体素子111と液体吐出素子130とが電気的に接続されるように接合する。具体的には、導電部材125と導電部材127と、絶縁膜140aと絶縁膜140bと、導電部材150aと導電部材150bと、がそれぞれ互いに接合するように、基板200と基板300とが貼り合わされる。例えば、所謂、常温接合法を用いて基板200と基板300とを接合してもよい。この場合、絶縁膜140aと絶縁膜140bとは、共有結合によって接合されうる。また、導電部材125と導電部材127とは、金属結合により接合されうる。同様に、導電部材150aと導電部材150bとは、金属結合により接合されうる。
【0040】
基板200と基板300とを接合した後、
図4(b)に示されるように、基板300のうち基材301を除去する。基材301は、その全体が除去されてもよい。次いで、基材110の半導体素子111が配された主面とは反対の側の底面に配される共通液室161、および、共通液室161から絶縁膜140の上面まで連通する液体供給口160を形成する。液体供給口160および共通液室161は、ドライエッチング、ウェットエッチング、レーザ加工、サンドブラスト加工、機械加工などの手法を用いて形成できる。液体供給口160と共通液室161とは、同じ手法を用いて形成してもよいし、互いに異なる手法を用いて形成してもよい。また、液体供給口160と共通液室161とは、どちらを先に形成してもよい。液体供給口160は、上述したように、ガードリング構造の導電体パターン150の内周に取り囲まれるように形成される。これらの工程によって、
図1(a)に示される液体吐出ヘッド用基板100が形成される。
【0041】
上述の工程を経て製造された液体吐出ヘッド用基板100は、液体吐出装置に組み込まれ使用される。液体吐出装置の使用時において、液体吐出ヘッド用基板100には、液体吐出素子130から吐出する液体が、共通液室161および液体供給口160に装填される。この液体のpHは、8~10の弱アルカリ性である場合が殆どである。本実施形態において絶縁膜140aおよび絶縁膜140bを構成するSiO
2の液体に対する溶解性は、SiO
2の分子密度に依存し、SiO
2の分子密度が低いほど溶解が進みやすい。これは、SiO
2に限らず、絶縁膜140a、140bとして用いられる種々の絶縁物においても同様である。絶縁膜140aおよび絶縁膜140bのバルクのSiO
2の分子密度と比較して、接合面121におけるSiO
2の分子密度は、相対的に低くなりうる。このため、絶縁膜140aと絶縁膜140bとの接合部では、SiO
2の溶解が進みやすい。一方、本実施形態においてガードリング構造の導電体パターン150(導電部材150aと導電部材150bと)を構成する銅の溶解性は、
図8に示される電位-pH図に依存する。液体のpHが8~10の範囲では、電位が0V以下であれば銅は、不活性領域またはCu
2Oの不動態領域に属するため、導電部材150aと導電部材150bとの接合部は、液体に対して安定した状態である。つまり、導電部材150aと導電部材150bとの接合部の液体に対する耐性が、絶縁膜140aと絶縁膜140bとの接合部の液体に対する耐性よりも高い状態にある。さらに、本実施形態において、導電部材150a、150bは、銅を用いた金属層151a、151bとバリアメタル層152a、152bの積層構造を備える。銅とSiO
2を用いた絶縁膜140とが直接、接しているよりも、バリアメタル層152a、152bが配された方が、液体の浸潤に対する導電体パターン150および導電部材150a、150bの結合部の耐性が高くなる。結果として、
図1(a)に示される液体吐出ヘッド用基板100において、液体供給口160の壁面から絶縁膜140の接合面121に沿って液体が侵入した場合であっても、ガードリング構造の導電体パターン150が液体の侵入を抑制する役割を果たす。これによって、導電体パターン120への液体の侵入が抑制され、液体吐出ヘッド用基板100の信頼性を向上させることが可能となる。
【0042】
本実施形態において、導電部材150aおよび導電部材125、導電部材150bおよび導電部材127が、それぞれ同時に同じ材料で形成することを示したが、これに限られることはない。導電部材150aおよび導電部材125、導電部材150bおよび導電部材127は、それぞれ異なる材料で別々に形成されてもよい。この場合、導電部材150a、150bには、例えば、金属が用いられてもよい。より具体的には、導電部材150a、150bに、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブおよびタンタルなどの材料や、それらの材料の化合物が用いられてもよい。また、この場合、導電部材150aおよび導電部材125、導電部材150bおよび導電部材127をそれぞれ形成する順番は、どちらが先に形成されてもよい。導電部材150a、150bに用いられる材料は、液体吐出装置に用いられる液体に応じて適宜選択されればよく、導電部材150a、150bの接合部の液体に対する耐性が、絶縁膜140a、140bの接合部の液体に対する耐性よりも高ければよい。具体的には、導電部材150a、150bに導電体を用いることで、絶縁膜140aと絶縁膜140bとの接合部より高い耐性を得ることができる。また、導電部材150a、150bに金属を用いることで、より高い耐性を得ることができる。
【0043】
第2の実施形態
図5(a)~5(c)を参照して、本発明の実施形態による液体吐出ヘッド用基板の構造および製造方法について説明する。
図5(a)は、本発明の第2の実施形態における液体吐出ヘッド用基板500の構成例を示す断面図であり、
図5(b)は、液体吐出ヘッド用基板500の上面図である。ここで、
図5(a)は、
図5(b)のB-B’間の断面を示した図である。
【0044】
本実施形態の液体吐出ヘッド用基板500は、上述の液体吐出ヘッド用基板100と比較して、導電体パターン150の電位を制御するための電位制御パターン550をさらに含む。より具体的には、本実施形態の液体吐出ヘッド用基板500は、電位制御パターン550として、電極パッド501、プラグ503、505、導電部材528を含む。これ以外は、上述の液体吐出ヘッド用基板100と同様の構造を備えていてもよい。
【0045】
次いで、液体吐出ヘッド用基板500の製造方法について説明する。液体吐出ヘッド用基板500のうち基材110から接合面121までの基板200は、上述の製造方法と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。次いで、液体吐出ヘッド用基板500のうち接合面121から液体吐出素子130側を構成することになる基板300’の形成について説明する。
【0046】
まず、
図5(c)に示すように、基材301の上に発熱抵抗素子である液体吐出素子130と電極パッド501とを形成する。このとき、液体吐出素子130を先に形成してもよいし、電極パッド501を先に形成してもよい。電極パッド501には、例えば、アルミニウムや金などの金属が用いられる。
【0047】
次いで、基材301および液体吐出素子130の上に、絶縁膜140bの一部となる絶縁層302を形成する。絶縁層302の形成後、絶縁層302の所定の位置にホールを開口し、ホール内にプラグ303およびプラグ503を形成する。プラグ503を形成するためのホールを追加で形成し、プラグ503を埋め込む以外、上述の
図3(b)に示されるプラグ303を形成する工程と同様の工程が用いられる。同様に、導電部材528は、上述の
図3(c)に示される導電部材128を形成する工程において、導電部材128に追加して形成される。また同様に、プラグ505は、上述の
図3(d)に示されるプラグ305を形成する工程において、プラグ305に追加して形成される。
図5(a)に示されるように、導電体パターン150(導電部材150a、150b)は、電極パッド501と電気的に接続される。
【0048】
本実施形態の液体吐出ヘッド用基板500において、導電体パターン150に外部から電位を印加することが可能となる。液体吐出装置を使用する際、液体吐出ヘッド用基板500の動作中において、外部電源より、電極パッド501を介して、導電体パターン150に負の電位を印加する。導電体パターン150(導電部材150a、150b)が、第1の実施形態と同様に銅などで形成されている場合、
図8に示されるように、電位が0のときと比べて負の電位を印加すると、銅はより安定な状態となる。このため、導電部材150aと導電部材150bとの接合部の液体に対する耐性がより高くなる。結果として、上述の第1の実施形態の液体吐出ヘッド用基板100よりも、導電体パターン120への液体の侵入が抑制され、液体吐出ヘッド用基板500の信頼性をより高くすることができる。電位制御パターン550は、それぞれのユニットUNITごとに配されていてもよい。また、電位制御パターン550は、複数のユニットUNITで共有されていてもよい。複数のユニットUNITで電位制御パターン550が共有されている場合、ユーザが電極パッド501を介して導電体パターン150に電位を供給するための操作が容易になりうる。
【0049】
第3の実施形態
図6(a)~6(d)を参照して、本発明の実施形態による液体吐出ヘッド用基板の構造および製造方法について説明する。
図6(a)は、本発明の第3の実施形態における液体吐出ヘッド用基板600の構成例を示す断面図であり、
図6(b)は、液体吐出ヘッド用基板600の上面図である。ここで、
図6(a)は、
図6(b)のB-B’間の断面を示した図である。また、
図6(c)、6(d)は、
図6(a)の接合面121における上面図および下面図である。
【0050】
本実施形態の液体吐出ヘッド用基板600は、上述の液体吐出ヘッド用基板500と比較して、導電体パターン150と基材110との間の電位差を測定するための電位差測定パターン650をさらに含む。より具体的には、本実施形態の液体吐出ヘッド用基板500は、電位差測定パターン650として、電極パッド601、プラグ602、603、604、605、導電部材624、625、627、628を含む。これ以外は、上述の液体吐出ヘッド用基板500と同様の構造を備えていてもよい。
【0051】
プラグ602は、上述の
図2(b)に示されるプラグ202を形成する工程において、同時に形成されてもよい。同様に、導電部材624は導電部材124と、プラグ604はプラグ204と、導電部材625は導電部材125と、それぞれ基板200を製造する際に同時に形成されてもよい。また、電極パッド601は、上述の
図5(c)に示される電極パッド501を形成する工程おいて、同時に形成されてもよい。同様に、プラグ603はプラグ303、503と、導電部材628は導電部材128、528と、プラグ605はプラグ305、505と、導電部材627は導電部材127と、それぞれ同時に形成されてもよい。
【0052】
本実施形態の液体吐出ヘッド用基板600において、基材110の電位を測定することが可能となる。液体吐出ヘッド用基板600の使用時において、インクなどの液体が液体供給口160に充填されるため、液体と基材110とが同電位となる。すなわち、電極パッド601と液体が同電位となる。このとき、外部電源を電極パッド501と電極パッド601とに接続することによって、液体を介して、基材110と導電体パターン150(導電部材150a、150b)との間で電気的な短絡を検知できる。基材110と導電体パターン150とが短絡している場合、絶縁膜140aと絶縁膜140bとの接合部において、絶縁膜140の溶解が進んでいる可能性がある。液体の侵入は、上述のように導電体パターン150によって抑制されるが、さらなる経時変化によって液体が導電体パターン120まで侵入してしまう可能性がある。そこで、基材110と導電体パターン150との短絡を検知することによって、ユーザに対して、例えば、交換用の液体カートリッジの準備を促すメッセージなどを、吐出装置や吐出装置をユーザが使用するためのパソコンなどの表示部などに表示することができる。液体吐出ヘッド用基板600に電位差測定パターン650を配することによって、より使い勝手の良い液体吐出装置を実現することができる。また、電位制御パターン550や電位差測定パターン650は、ユニットUNITごとに配されてもよいし、複数のユニットUNITで共有されていてもよい。ユニットUNITごとに電位制御パターン550や電位差測定パターン650が配される場合、ユニットUNITごとに短絡を検知できる。また、複数のユニットUNITで電位制御パターン550や電位差測定パターン650が共有されている場合、共有される範囲内に含まれる短絡を検知できる。液体吐出ヘッド用基板600の仕様などに応じて、適宜、ユニットUNIT間で電位制御パターン550や電位差測定パターン650の共有の範囲を決定すればよい。
【0053】
第4の実施形態
図7(a)~7(d)を参照して、本発明の実施形態による液体吐出ヘッド用基板の構造および製造方法について説明する。
図7(a)は、本発明の第4の実施形態における液体吐出ヘッド用基板700の構成例を示す断面図であり、
図7(b)は、液体吐出ヘッド用基板700の上面図である。ここで、
図7(a)は、
図7(b)のB-B’間の断面を示した図である。また、
図7(c)、7(d)は、
図7(a)の接合面121における上面図および下面図である。
【0054】
本実施形態の液体吐出ヘッド用基板700は、上述の液体吐出ヘッド用基板100と比較して、ガードリング構造の導電体パターン150が配されない一方、保護パターン701が配されている。保護パターン701は、液体供給口160の壁面のうち少なくとも絶縁膜140aと絶縁膜140bとの接合部を覆うように配される。換言すると、保護パターン701は、絶縁膜140の液体供給口160が貫通した壁面のうち少なくとも接合面121を覆うように配される。
図7(a)に示されるように、保護パターン701が、絶縁膜140および基材110のうち液体供給口160が貫通した壁面の全体を覆っていてもよい。さらに、保護パターン701は、基材110のうち共通液室161の部分や半導体素子111が配される主面とは反対側の面を覆っていてもよい。これ以外は、上述の液体吐出ヘッド用基板100と同様の構造を備えていてもよい。
【0055】
次いで、液体吐出ヘッド用基板700の製造方法について説明する。液体吐出ヘッド用基板700は、導電体パターン150を形成しないこと以外、上述の液体吐出ヘッド用基板100と同様の工程を用いて液体供給口160および共通液室161まで形成してもよい。液体供給口160および共通液室161を形成した後、保護パターン701を形成する。保護パターン701の形成方法としては、CVD法、スパッタリング法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)などの成膜手法から適宜選択できる。液体供給口160および共通液室161において、アスペクト比が高い機械的構造が形成されている場合がある。液体供給口160の壁面に確実に保護パターン701を形成するために、つき廻り性がよい原子層堆積法によって保護パターン701が形成されてもよい。保護パターン701には、チタンオキサイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどが用いられてもよい。保護パターン701は、上述の材料を用いた1層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。例えば、上述の材料と絶縁材料とを用いた積層構造であってもよい。この場合、絶縁材料の層は、絶縁膜140の側に配されてもよいし、液体と接触する側に配されてもよい。
【0056】
図7(a)に示される構造において、絶縁膜140および液体吐出素子130の上の保護パターン701は、除去されている。保護パターン701は、保護パターン701の材料膜を基材110や絶縁膜140などの露出する表面の全面に成膜した後、フォトレジストなどを用いてマスクパターンを形成し、ドライエッチングやウェットエッチングによって不要部分を除去し形成してもよい。また、保護パターン701は、保護パターン701を形成する前にあらかじめリフトオフ用パターンを形成し、保護パターン701となる材料膜の成膜後、リフトオフ用パターンとともに除去するリフトオフ法を用いて形成してもよい。また、保護パターン701に用いる材料膜を上述の耐キャビテーション膜として利用する場合、材料膜を除去する必要はない。保護パターン701の形成は、適宜、周知の技術を選択できる。
【0057】
以上の工程を含み、液体吐出ヘッド用基板700が製造される。このように製造された液体吐出ヘッド用基板700は、インクなどの液体が装填される動作時において、接合面121を介した液体の侵入が保護パターン701によって抑制される。このため、導電体パターン120への液体の侵入が抑制され、上述の各実施形態と同様に、液体吐出ヘッド用基板700の信頼性を向上させることが可能となる。
【0058】
本実施形態の液体吐出ヘッド用基板700においても、上述の第2の実施形態で説明した保護パターン701の電位を制御するための電位制御パターンを追加してもよい。また、
図7(a)に示す構造では、保護パターン701は、絶縁膜140および基材110を覆っている。しかしながら、保護パターン701が基材110を覆わない場合、上述の第3の実施形態で説明した保護パターン701と基材110との間の電位差を測定するための電位差測定パターンを、液体吐出ヘッド用基板700に追加してもよい。これら場合においても、上述のように、電位制御パターンや電位差測定パターンは、ユニットUNITごとに配されてもよいし、複数のユニットUNITで共有されていてもよい。
【0059】
以上、本発明に係る実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。例えば、
図1(a)に示されるガードリング構造の導電体パターン150を備える液体吐出ヘッド用基板100に、
図7(a)に示される保護パターン701が配されていてもよい。導電体パターン150に加えて、液体供給口160の壁面のうち少なくとも絶縁膜140aと絶縁膜140bとの接合部を覆うように保護パターン701が配されることによって、液体吐出ヘッド用基板100の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0060】
その他の実施形態
ここで、上述の液体吐出ヘッド用基板100、500、600、700を用いた液体吐出装置について説明する。
図9(a)は、インクジェット方式のプリンタ、ファクシミリ、コピー機等に代表される液体吐出装置1600の内部構成を例示している。本例で液体吐出装置は記録装置と称されてもよい。液体吐出装置1600は、所定の媒体P(本例では紙等の記録媒体)に液体(本例ではインク、記録剤)を吐出する液体吐出ヘッド1510を備える。本例では液体吐出ヘッドは記録ヘッドと称されてもよい。液体吐出ヘッド1510はキャリッジ1620の上に搭載され、キャリッジ1620は、螺旋溝1604を有するリードスクリュー1621に取り付けられうる。リードスクリュー1621は、駆動力伝達ギア1602、1603を介して、駆動モータ1601の回転に連動して回転しうる。これにより、液体吐出ヘッド1510は、キャリッジ1620と共にガイド1619に沿って矢印aまたはb方向に移動しうる。
【0061】
媒体Pは、紙押え板1605によってキャリッジ移動方向に沿って押さえられており、プラテン1606に対して固定される。液体吐出装置1600は、液体吐出ヘッド1510を往復移動させて、搬送部(不図示)によってプラテン1606上に搬送された媒体Pに対して液体吐出(本例では記録)を行う。
【0062】
また、液体吐出装置1600は、フォトカプラ1607、1608を介して、キャリッジ1620に設けられたレバー1609の位置を確認し、駆動モータ1601の回転方向の切換を行う。支持部材1610は、液体吐出ヘッド1510のノズル(液体吐出口、或いは単に吐出口)を覆うためのキャップ部材1611を支持している。吸引部1612は、キャップ内開口1613を介してキャップ部材1611の内部を吸引することによる液体吐出ヘッド1510の回復処理を行う。レバー1617は、吸引による回復処理を開始するために設けられ、キャリッジ1620と係合するカム1618の移動に伴って移動し、駆動モータ1601からの駆動力がクラッチ切換等の公知の伝達機構によって制御される。
【0063】
また、本体支持板1616は、移動部材1615およびクリーニングブレード1614を支持しており、移動部材1615は、クリーニングブレード1614を移動させ、ワイピングによる液体吐出ヘッド1510の回復処理を行う。また、液体吐出装置1600には制御部(不図示)が設けられ、当該制御部は上述の各機構の駆動を制御する。
【0064】
図9(b)は、液体吐出ヘッド1510の外観を例示している。液体吐出ヘッド1510は、複数のノズル1500を有するヘッド部1511と、ヘッド部1511に供給するための液体を保持するタンク(液体貯留部)1512とを備えうる。タンク1512とヘッド部1511とは、例えば破線Kで分離することができ、タンク1512を交換することができる。液体吐出ヘッド1510は、キャリッジ1620からの電気信号を受け取るための電気的コンタクト(不図示)を備えており、当該電気信号にしたがって液体を吐出する。タンク1512は、例えば繊維質状または多孔質状の液体保持材(不図示)を有しており、当該液体保持材によって液体を保持しうる。
【0065】
図9(c)は、液体吐出ヘッド1510の内部構成を例示している。液体吐出ヘッド1510は、基体1508と、基体1508の上に配され、流路1505を形成する流路壁部材1501と、液体供給路1503を有する天板1502とを備える。基体1508は、上述の液体吐出ヘッド用基板100、500、600、700の何れであってもよい。また、吐出素子ないし液体吐出素子として、ヒータ1506(電気熱変換素子、発熱抵抗素子とも言えうる)が、液体吐出ヘッド1510が備える基板(液体吐出ヘッド用基板)に各ノズル1500に対応して配列されている。各ヒータ1506は、当該ヒータ1506に対応して設けられた駆動素子(トランジスタ等のスイッチ素子)が導通状態になることによって駆動され、発熱する。
【0066】
液体供給路1503からの液体は、共通液室1504に蓄えられ、各流路1505を介して各ノズル1500に供給される。各ノズル1500に供給された液体は、当該ノズル1500に対応するヒータ1506が駆動されたことに応答して、当該ノズル1500から吐出される。
【0067】
図9(d)は、液体吐出装置1600のシステム構成を例示している。液体吐出装置1600は、インターフェース1700、MPU1701、ROM1702、RAM1703およびゲートアレイ(G.A.)1704を有する。インターフェース1700には外部から液体吐出を実行するための外部信号が入力される。ROM1702は、MPU1701が実行する制御プログラムを格納する。RAM1703は、前述の液体吐出用の外部信号や液体吐出ヘッド1708に供給されたデータ等、各種信号ないしデータを保存する。ゲートアレイ1704は、液体吐出ヘッド1708に対するデータの供給制御を行い、また、インターフェース1700、MPU1701、RAM1703の間のデータ転送の制御を行う。
【0068】
液体吐出装置1600は、ヘッドドライバ1705、並びに、モータドライバ1706、1707、搬送モータ1709、キャリアモータ1710を更に有する。キャリアモータ1710は液体吐出ヘッド1708を搬送する。搬送モータ1709は媒体Pを搬送する。ヘッドドライバ1705は液体吐出ヘッド1708を駆動する。モータドライバ1706、1707は搬送モータ1709およびキャリアモータ1710をそれぞれ駆動する。
【0069】
インターフェース1700に駆動信号が入力されると、この駆動信号は、ゲートアレイ1704とMPU1701の間で液体吐出用のデータに変換されうる。このデータにしたがって各機構が所望の動作を行い、このようにして液体吐出ヘッド1708が駆動される。
【符号の説明】
【0070】
100,500,600,700:液体吐出ヘッド用基板、110:基材、120,150:導電体パターン、121:接合面、125,127,150a,150b:導電部材、130:液体吐出素子、140:絶縁膜、160:液体供給口