(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】銅微粒子分散液及び透明導電回路の作製方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/18 20060101AFI20221202BHJP
C23C 18/28 20060101ALI20221202BHJP
C23C 18/40 20060101ALI20221202BHJP
C23C 18/52 20060101ALI20221202BHJP
C25D 5/54 20060101ALI20221202BHJP
C25D 5/56 20060101ALI20221202BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20221202BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221202BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20221202BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20221202BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20221202BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C23C18/18
C23C18/28
C23C18/40
C23C18/52 B
C25D5/54
C25D5/56 A
C25D7/00 G
H05K1/03 610B
H05K3/18 E
H05K3/18 F
H05K3/18 J
H05K1/03 610G
H01B1/22 A
H01B13/00 503D
H01B13/00 503B
H01B5/14 A
(21)【出願番号】P 2018215139
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】三田 倫広
(72)【発明者】
【氏名】川戸 祐一
(72)【発明者】
【氏名】有村 英俊
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501656(JP,A)
【文献】特許第3017987(JP,B1)
【文献】特開2008-041823(JP,A)
【文献】特許第3532146(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/18
H05K 1/03
H05K 3/10-3/26、3/38
H01B 1/20-1/24
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に無電解銅めっき用のシード層を形成するための銅微粒子分散液であって、
分散媒と、前記分散媒中に分散された銅微粒子とを含有し、
前記銅微粒子を分散させる銅微紛用分散剤と、前記銅微粒子を前記透明基材に接着する接着性樹脂と、
カーボンブラックと、前記カーボンブラックを分散させるカーボンブラック用分散剤とが添加され
、
前記分散媒は、極性分散媒であり、
前記銅微粉用分散剤は、酸性官能基を有する化合物であり、
カーボンブラック用分散剤は、湿潤分散剤であることを特徴とする銅微粒子分散液。
【請求項2】
前記接着性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる合成樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の銅微粒子分散液。
【請求項3】
前記分散媒は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチルピロリドン、2-メチルペンタン-2,4-ジオール及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選ばれる極性分散媒であり、
前記銅微紛用分散剤は、リン酸基を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の銅微粒子分散液。
【請求項4】
前記透明基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選ばれる透明な絶縁材料から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の銅微粒子分散液。
【請求項5】
透明基材と導体層のパターンとを有する透明導電回路の作製方法であって、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の銅微粒子分散液を用いて透明基材上に前記銅微粒子分散液から成る液膜のパターンを形成する工程と、
前記液膜中の前記分散媒を乾燥してシード層を形成する工程と、
前記シード層に無電解銅めっきを施して導体層のパターンを形成する工程とを有することを特徴とする透明導電回路の作製方法。
【請求項6】
導体層のパターンを形成する前記工程において、前記シード層に前記無電解銅めっきを施した後、無電解ニッケルめっきをさらに施すことを特徴とする請求項5に記載の透明導電回路の作製方法。
【請求項7】
導体層のパターンを形成する前記工程において、前記シード層に前記無電解銅めっきを施した後、電気めっきをさらに施すことを特徴とする請求項5に記載の透明導電回路の作製方法。
【請求項8】
前記導体層のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の透明導電回路の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解銅めっき用のシード層を形成するための銅微粒子分散液、及びその銅微粒子分散液を用いた透明導電回路の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末等にタッチパネルが使われている。タッチパネルは、ディスプレイとタッチセンサを統合した電子部品である。タッチセンサには、ディスプレイの視認性を確保するために透明導電回路が用いられる。透明導電回路は、透明に見える電気回路である。従来から、ITO(インジウム-錫酸化物)から成る透明導電膜を有する透明導電回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような透明導電回路は、ITOから成る導電膜の電気抵抗が高いので、タッチセンサの大型化に対応することが困難である。
【0003】
ITOを用いずに、金属膜の線状パターンから成る透明導電膜を有するタッチセンサが知られている(例えば、特許文献2参照)。金属膜の線状パターンは、例えばメッシュ状であり、肉眼で透明に見えるように細く形成される。しかしながら、この透明導電膜は、作製においてエッチングによって金属膜の不要部分を除去する工程を有するので、作製が容易ではなく、また、エッチングで発生する廃液の処理等にコストがかかる。
【0004】
透明基材は、表面を粗化すると光が乱反射するので、表面は平滑であることが望ましい。このため、金属膜の線状パターンを平滑な透明基材上に形成する場合、金属膜は、透明基材への密着性の確保が問題になり、透明基材上に形成することが容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-291726号公報
【文献】特開2015-65376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、金属から成る導体層のパターンを透明基材上に容易に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の銅微粒子分散液は、透明基材上に無電解銅めっき用のシード層を形成するためのものであって、分散媒と、前記分散媒中に分散された銅微粒子とを含有し、前記銅微粒子を前記透明基材に接着する接着性樹脂と、黒化物とが添加されていることを特徴とする。
【0008】
この銅微粒子分散液において、前記接着性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる合成樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
この銅微粒子分散液において、前記黒化物は、カーボンブラックであり、前記分散媒は、カーボンブラックを分散させるカーボンブラック用分散剤が添加されることが好ましい。
【0010】
この銅微粒子分散液において、前記透明基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選ばれる透明な絶縁材料から成ることが好ましい。
【0011】
本発明の透明導電回路の作製方法は、透明基材と導体層のパターンとを有する透明導電回路の作製方法であって、前記銅微粒子分散液を用いて透明基材上に前記銅微粒子分散液から成る液膜のパターンを形成する工程と、前記液膜中の前記分散媒を乾燥してシード層を形成する工程と、前記シード層に無電解銅めっきを施して導体層のパターンを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この透明導電回路の作製方法において、導体層のパターンを形成する前記工程において、前記シード層に前記無電解銅めっきを施した後、無電解ニッケルめっきをさらに施してもよい。
【0013】
この透明導電回路の作製方法において、導体層のパターンを形成する前記工程において、前記シード層に前記無電解銅めっきを施した後、電気めっきをさらに施してもよい。
【0014】
この透明導電回路の作製方法において、前記導体層のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の銅微粒子分散液によれば、液であるので、印刷法等によって液膜のパターンを形成することができる。その液膜は、銅微粒子を含有するので、乾燥すると、無電解銅めっき用のシード層となる。また、この銅微粒子分散液は、接着性樹脂が添加されているので、シード層の銅微粒子が透明基材に接着される。この銅微粒子分散液は、黒化物が添加されているので、シード層は、黒色となる。この銅微粒子分散液を用いた透明導電回路の作製方法によれば、銅微粒子分散液から成る液膜のパターンを形成し、液膜中の分散媒を乾燥してシード層を形成し、シード層に無電解銅めっきを施して導体層のパターンを形成するので、エッチングの工程が不要であり、導体層のパターンを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)~(d)は本発明の一実施形態に係る銅微粒子分散液を用いた透明導電回路の作製方法を時系列順に示す断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る銅微粒子分散液を説明する。この銅微粒子分散液は、透明基材上に無電解銅めっき用のシード層を形成するためのものである。この銅微粒子分散液は、分散媒と、銅微粒子とを含有する。銅微粒子は、分散媒に分散されている。この銅微粒子分散液は、接着性樹脂と黒化物とが添加されている。接着性樹脂は、銅微粒子を透明基材に接着する樹脂である。接着性樹脂は、分散媒に溶解される。
【0018】
銅微粒子は、例えば、メジアン径(中心粒子径)が1nm以上100nm未満のナノ粒子である。銅微粒子は分散媒に分散されればよく、銅微粒子の粒径は限定されない。銅微粒子分散液に、銅微粒子を分散媒中で分散させる分散剤が添加される。分散剤を用いずに銅微粒子が分散すれば、分散剤が添加されないこともある。
【0019】
分散媒は、例えば、プロトン性分散媒又は比誘電率が30以上の非プロトン性の極性分散媒である。分散剤は、銅微粒子を分散媒中で分散させるものであり、例えば、少なくとも1個の酸性官能基を有し、分子量が200以上100000以下の化合物又はその塩である。
【0020】
プロトン性分散媒としては、例えば、3-メトキシ-3-メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、2-オクタノール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール(ヘキシレングリコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
比誘電率が30以上の非プロトン性極性分散媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルフォスフォラミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ニトロベンゼン、N、N-ジエチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、フルフラール、γ-ブチロラクトン、エチレンスルファイト、スルホラン、ジメチルスルホキシド、スクシノニトリル、エチレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
分散剤は、例えば、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、硫酸基、又はカルボキシル基等を酸性官能基として有する化合物である。
【0023】
接着性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を含む。接着性樹脂は、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)を含んでもよい。接着性樹脂にエポキシ樹脂を含む場合は、銅微粒子分散液に硬化剤が添加される。
【0024】
黒化物は、銅微粒子分散液を黒化する物質であり、代表的な黒化物は、カーボンブラック(炭素微粒子)である。カーボンブラックの粒径は、例えば、BET換算粒径で13nm~24nmであり、それに限定されない。また、黒化物は、染料、顔料、又は黒色樹脂であってもよい。黒化物は、分散媒に分散又は溶解される。黒化物がカーボンブラックである場合、分散媒は、カーボンブラックを分散させるカーボンブラック用分散剤が添加される。
【0025】
透明基材は、透明な絶縁材料から成る。透明な絶縁材料は、例えば、ガラスであり、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、又は環状オレフィンコポリマー等であってもよい。接着性樹脂は、銅微粒子を透明基材に接着する合成樹脂である。
【0026】
この銅微粒子分散液を用いた透明導電回路の作製方法を
図1(a)~(d)を参照して説明する。
図1(d)に示すように、この方法は、透明導電回路1を作製する方法である。透明導電回路1は、透明基材2と、導体層5のパターンとを有する。
図1(d)は、透明導電回路1の断面構成を示しており、透明導電回路1において、導体層5のパターンは、平面視における回路パターンである。
【0027】
図1(a)に示すように、透明基材2は、透明な絶縁材料を板等に成形したものである。
【0028】
先ず、
図1(b)に示すように、透明基材2上に銅微粒子分散液から成る液膜3のパターンが形成される。銅微粒子分散液は、銅微粒子31が分散媒32に分散されており、接着性樹脂と黒化物が添加されている。液膜3のパターンは、例えば、銅微粒子分散液をインクとして用い、印刷法によって透明基材2上に形成される。また、ナノインプリント法などで溝を形成した透明基材2に、銅微粒子分散液をスキージなどで埋め込んでもよい。
【0029】
そして、
図1(c)に示すように、液膜3中の分散媒を乾燥してシード層4が形成される。液膜3がパターンを有するので、シード層4も同じパターンを有する。シード層4は、銅微粒子31、及び黒化物を含む接着性樹脂41を有する。接着性樹脂41は、銅微粒子31を透明基材2に接着する。
【0030】
そして、
図1(d)に示すように、シード層4に無電解銅めっきを施して導体層5のパターンが形成される。シード層4がパターンを有するので、導体層5も同じパターンを有する。
【0031】
この無電解銅めっきにおいて、シード層4は、銅微粒子31を有するので、めっき液に含まれる還元剤の酸化反応に対して触媒活性なシード層となる。
【0032】
導体層5は、複数の金属層を有してもよい。例えば、導体層5のパターンを形成する工程において、シード層4に無電解銅めっきを施した後、無電解ニッケルめっきをさらに施してもよい。ニッケルは酸化によって黒色化するので、導体層5の表面に入射する光の反射を低減することができる。
【0033】
また、導体層5のパターンを形成する工程において、シード層4に無電解銅めっきを施した後、電気めっきをさらに施してもよい。
【0034】
電気めっきにおいて、無電解銅めっきが施されたシード層4は、めっき液に浸漬され、陰極となる。電気めっきにおけるめっき金属は、銅、ニッケル、錫、クロム、パラジウム、金、ビスマス、コバルト、鉄、銀、鉛、白金、イリジウム、亜鉛、インジウム、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。電気めっきは、導体層5の厚さを増大する。また、この電気めっきにおいて、例えば、めっき金属を金とすることによって、導体層5の防蝕効果が得られる。
【0035】
本実施形態では、導体層5のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有する。
【0036】
線状パターンを細く形成することによって、導体層5が肉眼で透明に見える。本実施形態の透明導電回路の作製方法は、銅微粒子分散液を用いるので、線幅が5μm以下の線状パターンを形成することができる。透明導電回路1において、導体層5が線幅が5μm以下の線状パターンを有する部分は、透明感がいっそう向上する。線幅が細いと電気抵抗が高くなるので、線状パターンの線幅は、例えば1~5μm程度とされる。
【0037】
以上、本実施形態に係る銅微粒子分散液によれば、液であるので、印刷法等によって液膜3のパターンを形成することができる。その液膜3は、銅微粒子31を含有するので、乾燥すると、無電解銅めっき用のシード層4となる。また、この銅微粒子分散液は、接着性樹脂が添加されているので、シード層4の銅微粒子31が透明基材2に接着される。この銅微粒子分散液は、黒化物が添加されているので、シード層4は、黒色となる。
【0038】
本実施形態に係る透明導電回路の作製方法によれば、銅微粒子分散液から成る液膜3のパターンを形成し、液膜3中の分散媒を乾燥してシード層4を形成し、シード層4に無電解銅めっきを施して導体層5のパターンを形成するので、エッチングの工程が不要であり、導体層5のパターンを容易に形成することができる。
【0039】
この透明導電回路の作製方法によって作製される透明導電回路1は、接着性樹脂が銅微粒子31を透明基材2に接着する。導体層5は、シード層4に無電解銅めっきを施して形成されるので、接着性樹脂によって透明基材2との密着性が確保される。導体層5のパターンを細く形成することによって、透明導電回路1が透明に見える。また、黒化物が光を吸収するので、透明導電回路1は、透明基材2の側から見たとき、導体層5の金属によるキラキラ光る反射が防がれる。
【0040】
実施例として、本発明の銅微粒子分散液及び透明導電回路の作製方法を用い、透明導電回路1を作製した。
【実施例1】
【0041】
透明基材2として板状に成形したガラスを用いた。その透明基材2の表面は、平滑であり、粗化していない。分散媒と、銅微粒子と、銅微粒子を分散させる分散剤(銅微粉用分散剤)を用いて、銅微粒子分散液を作った。メジアン径(中心粒子径)40nmの銅微粒子を用いた。分散媒に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)を用いた。銅微粉用分散剤に、リン酸基を有する化合物(ビックケミー社製、商品名「DISPERBYK(登録商標)-111」)を用いた。その銅微粒子分散液に接着性樹脂、硬化剤、黒化物及びカーボンブラック用分散剤を添加した。接着性樹脂は、フェノキシ型エポキシ樹脂を含むもの(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER1256」)とビスフェノール型エポキシ樹脂を含むもの(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER828」)の混合を用いた。その混合割合は、95:5であった。硬化剤に、熱硬化剤(三菱ケミカル(株)製、商品名「YN100」)を用いた。黒化物に、BET換算粒径24nmのカーボンブラックを用いた。カーボンブラック用分散剤に、湿潤分散剤(ビックケミー社製、商品名「DISPERBYK(登録商標)-9076」)を用いた。銅微粒子、銅粉用分散剤、接着性樹脂、黒化物、及びカーボンブラック用分散剤の濃度は、それぞれ、3wt%(重量%)、0.125wt%、6wt%、6wt%、0.9wt%とした。なお、その接着性樹脂の濃度は、製品としての濃度であり、有効成分はその10%である。硬化剤の濃度は、接着性樹脂の樹脂固形分の1wt%とした。分散媒は、残部である。
【0042】
この銅微粒子分散液を用いて、印刷法により透明基材2上に銅微粒子分散液から成る液膜3を形成した。その液膜3中の分散媒32を加熱乾燥し、シード層4を形成した。このシード層4に無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0043】
導体層5の密着性をクロスカット法(JIS K5600)で試験した。この試験において、所定の面積を有する導体層5の試験面に100マスの格子パターンを切り込み、粘着テープを貼り付け、粘着テープを引き剥がし、試験面を観察した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例2】
【0044】
透明基材2として板状に成形したPET(ポリエチレンテレフタラート)を用いた。それ以外の条件は実施例1と同じとした。形成したシード層4に無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0045】
導体層5の密着性をクロスカット法(JIS K5600)で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例3】
【0046】
透明基材2、銅微粒子、銅粉用分散剤、黒化物及びカーボンブラック用分散剤は、実施例2と同じとした。分散媒に、N-メチルピロリドンと2-メチルペンタン-2,4-ジオール(ヘキシレングリコール)の混合を用いた。接着性樹脂に、変性ポリオレフィン樹脂を含むもの(ユニチカ(株)製、商品名「アローベースSD1210J2」)を用いた。硬化剤は、不要である。銅微粒子、銅粉用分散剤、接着性樹脂、黒化物、及びカーボンブラック用分散剤の濃度は、それぞれ、3wt%、0.125wt%、6wt%、6wt%、0.9wt%とした。N-メチルピロリドンの濃度は、5wt%とした。2-メチルペンタン-2,4-ジオールは、残部である。
【0047】
この銅微粒子分散液を用いて、印刷法により透明基材2上に銅微粒子分散液から成る液膜3を形成した。その液膜3中の分散媒32を加熱乾燥し、シード層4を形成した。このシード層4に無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0048】
導体層5の密着性をクロスカット法(JIS K5600)で試験した。この試験において、所定の面積を有する導体層5の試験面に100マスの格子パターンを切り込み、粘着テープを貼り付け、粘着テープを引き剥がし、試験面を観察した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例4】
【0049】
透明基材2、銅微粒子、銅粉用分散剤、黒化物及びカーボンブラック用分散剤は、実施例2と同じとした。分散媒に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)を用いた。接着性樹脂に、ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)を含むナイロン系接着剤(東亜合成(株)製、商品名「アロンマイティFS-175SV10」)を用いた。硬化剤は、不要である。銅微粒子、銅粉用分散剤、接着性樹脂、黒化物、及びカーボンブラック用分散剤の濃度は、それぞれ、3wt%、0.125wt%、6wt%、6wt%、0.9wt%とした。なお、その接着性樹脂の濃度は、製品としての濃度であり、有効成分はその10%である。分散媒は、残部である。
【0050】
この銅微粒子分散液を用いて、印刷法により透明基材2上に銅微粒子分散液から成る液膜3を形成した。その液膜3中の分散媒32を加熱乾燥し、シード層4を形成した。このシード層4に無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0051】
導体層5の密着性をクロスカット法(JIS K5600)で試験した。この試験において、所定の面積を有する導体層5の試験面に100マスの格子パターンを切り込み、粘着テープを貼り付け、粘着テープを引き剥がし、試験面を観察した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【0052】
(比較例1)
透明基材2は、実施例1と同じガラスとした。銅微粒子分散液の銅微粒子、銅粉用分散剤、黒化物及びカーボンブラック用分散剤は、実施例1と同じとした。接着性樹脂及び硬化剤は、添加しなかった。銅微粒子、銅粉用分散剤、黒化物、及びカーボンブラック用分散剤の濃度は、それぞれ、3wt%、0.125wt%、6wt%、0.9wt%とした。分散媒は、残部である。
【0053】
この銅微粒子分散液を用いて、印刷法により透明基材上に銅微粒子分散液から成る液膜を形成した。その液膜中の分散媒を加熱乾燥し、シード層を形成した。このシード層に無電解銅めっきを施した。しかし、めっき中にめっき金属が透明基材から剥離し、めっき金属から成る導体層を形成することができなかった。
【0054】
(比較例2)
透明基材2は、実施例2と同じPETとした。銅微粒子分散液は、比較例1と同じとした。すなわち、接着性樹脂及び硬化剤は、添加しなかった。
【0055】
この銅微粒子分散液を用いて、印刷法により透明基材上に銅微粒子分散液から成る液膜を形成した。その液膜中の分散媒を加熱乾燥し、シード層を形成した。このシード層に無電解銅めっきを施した。しかし、めっき中にめっき金属が透明基材から剥離し、めっき金属から成る導体層を形成することができなかった。
【0056】
実施例1~4に示したように、銅微粒子分散液に接着性樹脂を添加した場合、シード層4に無電解めっきを施すことができ、導体層5の透明基材2に対する密着性が十分であった。また、上記の比較例1、2に示すように、銅微粒子分散液に接着性樹脂を添加しない場合、シード層に無電解銅めっきを施すことができなかった。
【0057】
なお、シード層4や導体層5の透明基材2への密着性は接着性樹脂が担うので、接着性樹脂の濃度が低過ぎると、十分な密着性が確保できない。しかし、接着性樹脂の濃度が高過ぎると、シード層4に無電解銅めっきを施すことが難しくなる。したがって、実施例1~4における接着性樹脂の濃度は代表例であって、接着性樹脂の具体的な濃度は、透明基材2の材質、表面状態、接着性樹脂の種類等に応じて適宜調整することが望ましい。
【0058】
また、黒化物の濃度が高いほうが、透明導電回路1を透明基材2側から見たとき、導体層5がより目立たなくなる。しかし、黒化物は、濃度が高過ぎると、シード層4への無電解銅めっきを阻害するおそれがある。したがって、銅微粒子分散液における黒化物の具体的な濃度は、適宜調整することが望ましい。
【0059】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、透明基材2の形状は、板状に限られず、任意の3次元形状であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 透明導電回路
2 透明基材
3 液膜
31 銅微粒子
32 分散媒
4 シード層
5 導体層