(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20221202BHJP
B60T 13/38 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/38
(21)【出願番号】P 2018221941
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】松村 秀正
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-510127(JP,A)
【文献】実開平01-162863(JP,U)
【文献】実開昭57-142668(JP,U)
【文献】特開2007-320347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車ブレーキと、その駐車ブレーキを作動又は解除させるPBチャンバと、そのPBチャンバへ供給されるエアを貯留するエアタンクと、そのエアタンクから前記PBチャンバへ供給されるエアが通過するPBラインと、そのPBラインに設けられ駐車指令に基づいて前記PBチャンバへのエアの供給と停止とを切り換える切換装置とを備え、その切換装置を開にすることにより前記エアタンクから前記PBチャンバへエアを供給して前記駐車ブレーキを解除する車両において、
前記切換装置と前記PBチャンバとの間の前記PBラインに設けられ、前記駐車指令が解除されたにも拘わらず前記切換装置が故障して前記PBチャンバへのエアの供給ができず前記駐車ブレーキが作動している場合に、前記PBチャンバへエアを供給して前記駐車ブレーキの作動を解除するPB解除装置とを備え
、
更にサービスブレーキと、そのサービスブレーキを作動させるSBチャンバと、前記エアタンクから前記SBチャンバへ供給されるエアが通過するSBラインと、そのSBラインに設けられ前記SBチャンバへ供給されるエアを制御するリレーバルブと、制動指令に基づいて前記リレーバルブのパイロット圧を変化させて前記リレーバルブの開閉を制御する開閉装置とを備え、前記リレーバルブを開にすることにより前記エアタンクから前記SBチャンバへエアを供給して前記サービスブレーキを作動させるものであり、
前記リレーバルブにパイロット圧を加えるために前記開閉装置によってエアが供給されるパイロットラインと、
そのパイロットラインに設けられ、前記制動指令がないにも拘わらず前記開閉装置が故障して前記リレーバルブを開にするパイロット圧が加わった状態となって前記サービスブレーキが作動している場合に、前記パイロットラインのエアを解放して前記サービスブレーキの作動を解除するSB解除装置とを備えていることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記PB解除装置は、車両側面から操作可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記切換装置と前記PBチャンバとの間の前記PBラインに設けられ、そのPBラインのエア圧に基づいて前記駐車ブレーキが作動又は解除のいずれの状態にあるかを検出するPB検出装置と、
そのPB検出装置の検出結果に基づいて前記PB解除装置を操作すべき旨を報知するPB報知装置とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記PBチャンバは、前記SBチャンバとしても機能するものであることを特徴とする請求項
1から3のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
サービスブレーキと、そのサービスブレーキを作動させるSBチャンバと、そのSBチャンバへ供給されるエアを貯留するエアタンクと、そのエアタンクから前記SBチャンバへ供給されるエアが通過するSBラインと、そのSBラインに設けられ前記SBチャンバへ供給されるエアを制御するリレーバルブと、制動指令に基づいて前記リレーバルブのパイロット圧を変化させて前記リレーバルブの開閉を制御する開閉装置とを備え、前記リレーバルブを開にすることにより前記エアタンクから前記SBチャンバへエアを供給して前記サービスブレーキを作動させる車両において、
前記リレーバルブにパイロット圧を加えるために前記開閉装置によってエアが供給されるパイロットラインと、
そのパイロットラインに設けられ、前記制動指令がないにも拘わらず前記開閉装置が故障して前記リレーバルブを開にするパイロット圧が加わった状態となって前記サービスブレーキが作動している場合に、前記パイロットラインのエアを解放して前記サービスブレーキの作動を解除するSB解除装置とを備えていることを特徴とする車両。
【請求項6】
前記SB解除装置は、車両側面から操作可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項
1から5
のいずれかに記載の車両。
【請求項7】
前記パイロットラインに設けられ、そのパイロットラインのエア圧を検出する圧力検出装置と、
その圧力検出装置の検出値と前記制動指令の指令値とに所定以上の差がある場合に前記SB解除装置を操作すべき旨を報知するSB報知装置とを備えていることを特徴とする請求項
1から
6のいずれかに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に、ブレーキの故障時に、車両下へ潜り込むことなく、該ブレーキの作動を解除できる車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トラックやバスなどの大型車両において、駐車ブレーキとして使用されるスプリングブレーキが開示されている。スプリングブレーキタンク8の作動エアは、リレーバルブ9を介しスプリングブレーキ本体10へ導かれる。スプリングブレーキ本体10のスプリングチャンバ11に作動エアが供給されると、プッシュロッド12が圧縮バネ13の弾撥力に抗してスプリングチャンバ11内に没入する。これによりスプリングブレーキ本体10が非作動となって車輪14のロックが解除される。一方、リレーバルブ9により作動エアの供給が遮断されると、圧縮バネ13の弾撥力によりプッシュロッド12がスプリングチャンバ11内から突出して車輪14がロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、何らかの原因でリレーバルブ9が故障する等して、スプリングチャンバ11への作動エアの供給ができなくなると、圧縮バネ13の弾撥力によりプッシュロッド12がスプリングチャンバ11内から突出したままの状態となって車輪14がロックされ続ける。かかる場合には、駐車ブレーキを解除するために、車両下へ潜り込み、スプリングブレーキのリリースボルトを操作しなければならなかった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ブレーキの故障時に車両下へ潜り込むことなく、該ブレーキの作動を解除できる車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の車両は、駐車ブレーキ(PB)と、その駐車ブレーキを作動又は解除させるPBチャンバと、そのPBチャンバへ供給されるエアを貯留するエアタンクと、そのエアタンクから前記PBチャンバへ供給されるエアが通過するPBラインと、そのPBラインに設けられ駐車指令に基づいて前記PBチャンバへのエアの供給と停止とを切り換える切換装置とを備え、その切換装置を開にすることにより前記エアタンクから前記PBチャンバへエアを供給して前記駐車ブレーキを解除するものであり、前記切換装置と前記PBチャンバとの間の前記PBラインに設けられ、前記駐車指令が解除されたにも拘わらず前記切換装置が故障して前記PBチャンバへのエアの供給ができず前記駐車ブレーキが作動している場合に、前記PBチャンバへエアを供給して前記駐車ブレーキの作動を解除するPB解除装置とを備えている。
【0007】
また本発明の車両は、サービスブレーキ(SB)と、そのサービスブレーキを作動させるSBチャンバと、そのSBチャンバへ供給されるエアを貯留するエアタンクと、そのエアタンクから前記SBチャンバへ供給されるエアが通過するSBラインと、そのSBラインに設けられ前記SBチャンバへ供給されるエアを制御するリレーバルブと、制動指令に基づいて前記リレーバルブのパイロット圧を変化させて前記リレーバルブの開閉を制御する開閉装置とを備え、前記リレーバルブを開にすることにより前記エアタンクから前記SBチャンバへエアを供給して前記サービスブレーキを作動させるものであり、前記リレーバルブにパイロット圧を加えるために前記開閉装置によってエアが供給されるパイロットラインと、そのパイロットラインに設けられ、前記制動指令がないにも拘わらず前記開閉装置が故障して前記リレーバルブを開にするパイロット圧が加わった状態となって前記サービスブレーキが作動している場合に、前記パイロットラインのエアを解放して前記サービスブレーキの作動を解除するSB解除装置とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両によれば、駐車指令が解除されたにも拘わらず、切換装置が故障してPBチャンバへのエアの供給ができず駐車ブレーキ(PB)が作動している場合には、切換装置とPBチャンバとの間のPBラインに設けられたPB解除装置を操作する。これにより、PBチャンバへエアを供給して、駐車ブレーキの作動を解除することができる。即ち、かかる場合に、車両下へ潜り込むことなく駐車ブレーキの作動を解除することができる。
【0009】
また、制動指令がないにも拘わらず、開閉装置が故障してリレーバルブを開にするパイロット圧が加わった状態となってサービスブレーキ(SB)が作動している場合には、パイロットラインに設けられたSB解除装置を操作する。これにより、パイロットラインのエアを解放して、サービスブレーキの作動を解除することができる。即ち、かかる場合に、車両下へ潜り込むことなくサービスブレーキの作動を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、搬送車の正面図であり、(b)は、その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、搬送車1の正面図であり、
図1(b)は、搬送車1の側面図である。搬送車1は、搬送物を載置して搬送する車両であり、車両フレーム2と、荷台3と、運転室4と、走行装置5と、
駐車ブレーキ(PB
)解除バルブ6と、
サービスブレーキ(SB
)解除バルブ7とを備える。荷台3は、パレットP及び搬送物Wを載置する部材であり、車両フレーム2上に配設される。運転室4は、作業員による荷台3の昇降指示や走行装置5に対する運転や制動の指示等を行う制御室であり、搬送車1の前端に配設される。
【0012】
走行装置5は、運転室4からの運転指示に応じて搬送車1を走行させる装置であり、荷台3の下方に対して前後方向に7列配設され、各列に2つずつ設けられる。各走行装置5には車輪5aが設けられ、更に、搬送車1の前側(運転室4側)から2つ目および6つ目の走行装置5には、PBチャンバ5bが設けられ、搬送車1の前側から4つ目の走行装置5には、SBチャンバ5cが設けられる。
【0013】
PBチャンバ5b,SBチャンバ5cは、供給されるエアによって、車輪5aを制動させるブレーキシュー(図示せず)を制動側または非制動側に動作させるブレーキ装置である。詳細は後述するが、PBチャンバ5bによって、搬送車1の駐車ブレーキ及びサービスブレーキの作動または解除を行い、SBチャンバ5cによって、サービスブレーキの作動または解除を行う。
【0014】
PB解除バルブ6は、PBチャンバ5bによる駐車ブレーキを解除するための三方弁式のバルブであり、搬送車1の左側の側面であって、荷台3に載置したパレットPの脚P1の間に該当する位置へ設けられる。具体的には、PB解除バルブ6は、パレットPの前側から1つ目と2つ目の脚P1との間と、パレットPの前側から5つ目と6つ目の脚P1との間との2箇所に配設される。
【0015】
SB解除バルブ7は、PBチャンバ5b及びSBチャンバ5cによるサービスブレーキを解除するための手動バルブであり、後側のPB解除バルブ6と隣り合った位置に設けられる。これらPB解除バルブ6,SB解除バルブ7による、駐車ブレーキ、サービスブレーキの解除動作について、
図2を参照して説明する。
【0016】
図2は、搬送車1の空気圧回路30を示す図である。空気圧回路30には、
図1で上述したPBチャンバ5b及びSBチャンバ5cと、駐車ブレーキ及びサービスブレーキを作動または解除するための機構とが設けられる。
【0017】
まず、PBチャンバ5bと、PBチャンバ5bによって作動または解除される駐車ブレーキとについて説明する。PBチャンバ5b内は、ヘッド側室とロッド側室とで区切られており(共に図示せず)、ヘッド側室へエアを給排気するヘッド側ポート5b1と、ロッド側室へのエアを給排気するロッド側ポート5b2と、ヘッド側室とロッド側室との空気圧の差に応じて突出または没入するロッド5b3とが設けられる。
【0018】
ロッド5b3は、車輪5aのブレーキシューと接続され、ロッド側室へ供給されたエアの排出によって、ロッド5b3が突出して車輪5aのブレーキシューが制動側に動作する。一方、ロッド室へのエアの供給によって、ロッド5b3が没入して車輪5aのブレーキシューが非制動側に動作する。なお、ヘッド側室へのエアの給排気による、ロッド5b3の動作については後述する。
【0019】
本実施形態では、ロッド側室へのエアの給排気によって駐車ブレーキの作動または解除を行う。そのため、PBチャンバ5bのロッド側ポート5b2と、空気圧回路30の各所へ供給するエアを貯留するエアタンクTとが、エアが通過する空気管であるPBライン10で接続され、そのPBライン10の途中にはPB自動バルブ11が設けられる。
【0020】
PB自動バルブ11は、運転室4(
図1)からの駐車指令または駐車指令の解除に応じて、ロッド側ポート5b2からのエアの排出と、ロッド側ポート5b2へのエアタンクTからのエアの供給とを切り換える電磁弁付きのバルブである。運転室4からPB自動バルブ11へ駐車指令がされた場合は、PB自動バルブ11の電磁弁がロッド側ポート5b2からのエアを排出する側へ動作し、駐車ブレーキが作動される。一方、PB自動バルブ11へ運転室4から駐車指令が解除された場合は、PB自動バルブ11の電磁弁がエアタンクTのエアをロッド側ポート5b2へ供給する側へ動作し、駐車ブレーキが解除される。
【0021】
ところで、PB自動バルブ11が故障したり、運転室4からPB自動バルブ11の通信経路に障害が生じると、運転室4から駐車指令が解除されたにも拘らず、PB自動バルブ11の電磁弁がエアをロッド側ポート5b2へ供給する側へ動作されず、駐車ブレーキが解除できない場合がある。本実施形態では、PB自動バルブ11の状態に拘わらず、ロッド側ポート5b2へエアタンクTからのエアを供給することで、駐車ブレーキを解除する機構が設けられている。
【0022】
具体的には、まず、PB自動バルブ11とPBチャンバ5bとの間のPBライン10には、2方向からエアを供給可能な切換弁12が設けられる。その切換弁12には、エアが供給される入力ポート12a,12bと、その入力ポート12a又は12bから供給されたエアを排出する出力ポート12cとが設けられる。入力ポート12aは、PB自動バルブ11と接続され、出力ポート12cは、ロッド側ポート5b2と接続される。これによって、PB自動バルブ11からのエアが切換弁12の入力ポート12a及び出力ポート12cを介してロッド側ポート5b2へ供給される。
【0023】
他方の入力ポート12bには、エアタンクTと接続された空気管であるPB解除ライン13が接続され、そのPB解除ライン13の途中には、
図1で上述したPB解除バルブ6が設けられている。PB解除バルブ6は三方弁式のバルブで構成され、PB解除ライン13を連通させてエアタンクTのエアを切換弁12の入力ポート12bへ供給させる場合と、PB解除ライン13の連通を解除して、入力ポート12bへのエアの供給を停止させる場合とを切り換えることができる。
【0024】
PB解除バルブ6によってPB解除ライン13を連通させることで、エアタンクTからのエアが切換弁12へ、そして、切換弁12の出力ポート12cからPBライン10を介してロッド側ポート5b2へ供給される。即ち、PB自動バルブ11を介することなく、エアタンクTのエアがロッド側ポート5b2へ供給される。
【0025】
これにより、運転室4から駐車指令が解除されたにも拘わらず、PB自動バルブ11が故障等してPBチャンバ5bへのエアの供給ができず、駐車ブレーキが作動している場合に、PB解除バルブ6を操作することで、PBチャンバ5bのロッド側ポート5b2へエアが供給され、駐車ブレーキを解除できる。即ち、かかる場合に、搬送車1の下方へ潜り込んで、PBチャンバ5bを直接操作することなく駐車ブレーキを解除できるので、駐車ブレーキの解除操作を迅速かつ安全に行うことができる。しかも、一度に複数のPBチャンバ5bのロッド側ポート5b2へエアを供給できるので、各PBチャンバ5bのそれぞれにエアを供給する手間を省くことができる。
【0026】
更に
図1で示した通り、PB解除バルブ6は、搬送車1の側面であって荷台3に載置したパレットPの脚P1の間に該当する位置に設けられる。よって、荷台3にパレットPを載置した状態でも容易にPB解除バルブ6を操作して、駐車ブレーキを解除できる。
【0027】
ところで、駐車指令を行う運転室4からは、駐車指令の解除に従ってPB自動バルブ11が切り換わり、エアタンクTからのエアがロッド側ポート5b2へ供給されたかどうかを確認できない。そこで、切換弁12の出力ポート12cには、出力ポート12cからのエア圧(空気圧)に基づいて、駐車ブレーキが作動または解除されているかを判断し、その結果を運転室4に送信する第1圧力センサ14が接続される。第1圧力センサ14は、出力ポート12cのエア圧が所定値(例えば、0.59MPa)以上である場合に駐車ブレーキが解除されていると判断し、所定値より小さい場合に駐車ブレーキが作動していると判断する。
【0028】
そして、運転室4において駐車指令が解除されたにも拘わらず、第1圧力センサ14で駐車ブレーキが作動していると判断された場合に、運転室4内のタッチパネル(図示せず)に駐車ブレーキが解除できない旨のメッセージと、PB解除バルブ6を操作する旨のメッセージとが表示される。かかるメッセージを見た運転室4内の作業員が、PB解除バルブ6を操作することで、駐車ブレーキを迅速に解除し、搬送車1を走行させることができる。このようなメッセージが表示されるタッチパネルが「PB報知装置」とされる。
【0029】
次に、SBチャンバ5cと、PBチャンバ5b及びSBチャンバ5cによって作動または解除されるサービスブレーキとについて説明する。
【0030】
SBチャンバ5cには、SBチャンバ5c内にエアを供給または排出する給排気ポート5c1と、SBチャンバ5c内の空気圧に応じて突出または没入するロッド5c2とが設けられる。ロッド5c2は、車輪5aのブレーキシューと接続され、SBチャンバ5c内へエアを供給することで、ロッド5c2が突出して車輪5aのブレーキシューが制動側に動作する。一方、SBチャンバ5c内へ供給されたエアを排出することで、ロッド5c2が没入して車輪5aのブレーキシューが非制動側に動作する。
【0031】
また、PBチャンバ5bのロッド5b3も、ヘッド側室へのエアの供給によって、ロッド5b3が突出して車輪5aのブレーキシューが制動側に動作し、ヘッド側室へ供給されたエアの排出によって、ロッド5b3が没入して車輪5aのブレーキシューが非制動側に動作する。
【0032】
本実施形態では、これらPBチャンバ5bのヘッド室側へのエアの給排気と、SBチャンバ5c内へのエアの給排気とによって、サービスブレーキの作動または解除を行う。そのため、PBチャンバ5bのヘッド側ポート5b1及びSBチャンバ5cの給排気ポート5c1と、エアタンクTとがエアが通過する空気管であるSBライン15で接続され、そのSBライン15の途中には、第2リレーバルブ16が設けられる。
【0033】
第2リレーバルブ16は、運転室4(
図1)からの指示に基づいた空気圧信号であるパイロット圧に応じて、ヘッド側ポート5b1及び給排気ポート5c1へ供給されるエアタンクTからのエア圧を調節するバルブである。
【0034】
空気圧回路30には、その第2リレーバルブ16へ供給されるパイロット圧を生成する電空変換器17と第1リレーバルブ18とが設けられる。電空変換器17は、制動指令に応じた空気圧を生成する装置である。具体的には、電空変換器17に入力された、運転室4のブレーキペダル(図示せず)の踏力に基づいた制動指令に応じて、後述する第1リレーバルブ18へのパイロット圧を調整する。
【0035】
第1リレーバルブ18は、電空変換器17に接続され、電空変換器17から供給されるパイロット圧に応じて、エアタンクTから後述のパイロットライン19へ供給されるエア圧を調節するバルブである。このようなパイロット圧を生成する電空変換器17と第1リレーバルブ18とが「開閉装置」とされる。
【0036】
開閉装置によって生成されたパイロット圧は、エアが通過する空気管であるパイロットライン19を介して第2リレーバルブ16へ供給される。これにより、制動指令に基づいてPBチャンバ5b及びSBチャンバ5cを動作させ、サービスブレーキの作動または解除が行われる。
【0037】
また、パイロットライン19には、
図1で上述したSB解除バルブ7が接続される。このSB解除バルブ7を開放することで、パイロットライン19のパイロット圧が大気中に解放される。これによって、パイロット圧が低下し、第2リレーバルブ16からヘッド側ポート5b1及び給排気ポート5c1からエアが排出されることで、サービスブレーキの作動が解除される。
【0038】
開閉装置の電空変換器17が故障したり、運転室4のブレーキペダルから電空変換器17への通信経路に障害が生じると、運転室4からの制動指令がない(即ち、ブレーキペダルが踏まれていない)にも拘らず、開閉装置から第2リレーバルブ16にパイロット圧が加わった状態となり、サービスブレーキが作動したままとなる。かかる場合に、搬送車1の側面に設けられるSB解除バルブ7を操作することで、搬送車1の下方へ潜り込んでPBチャンバ5b及びSBチャンバ5cを直接操作することなく、サービスブレーキの作動を解除できる。よって、サービスブレーキの解除操作を、迅速かつ安全に行うことができる。しかも、一度に全てのPBチャンバ5bのヘッド側ポート5b1及びSBチャンバ5cの給排気ポート5c1からエアを排出できるので、各PBチャンバ5b及びSBチャンバ5cをそれぞれ操作してエアを排出する手間を省くことができる。
【0039】
更に
図1で示した通り、SB解除バルブ7も、搬送車1の側面であって荷台3に載置したパレットPの脚P1の間に該当する位置に設けられる。よって、荷台3にパレットPを載置した状態でも容易にSB解除バルブ7を操作して、サービスブレーキを解除できる。
【0040】
ところで、サービスブレーキを指示する運転室4からは、制動指令に従って、第2リレーバルブ16へ供給されるパイロット圧が低下したかどうかを確認できない。そこで、パイロットライン19に、パイロットライン19のエア圧を検出する第2圧力センサ20を接続して、そのエア圧が運転室4に送信される。
【0041】
そして、運転室4からの制動指令によってパイロットライン19へ供給されるべきエア圧(指令値)と第2圧力センサ20で検出されたエア圧とに所定(例えば、0.15MPa)以上の差がある場合、特に、制動指令がないにも拘わらず、制動指令がない場合にパイロットライン19へ供給されるべきエア圧と、第2圧力センサ20で検出されるエア圧との差が所定以上大きい場合は、運転室4内のタッチパネルにサービスブレーキが解除できない旨のメッセージと、SB解除バルブ7を操作する旨のメッセージとが表示される。
【0042】
かかるメッセージを見た運転室4内の作業員が、SB解除バルブ7を操作することで、サービスブレーキを迅速に解除し、搬送車1を走行させることができる。このようなメッセージが表示されるタッチパネルが「SB報知装置」とされる。
【0043】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0044】
上記実施形態では、車両の例として搬送車1を用いて説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、本発明をトラックやバス等、PBチャンバ5b、SBチャンバ5c等、エア圧によって駐車ブレーキ及びサービスブレーキを作動または解除する車両に適用しても良い。
【0045】
上記実施形態では、搬送車1の前方から2つ目および6つ目の走行装置5に、PBチャンバ5bを設け、搬送車1の前方から4つ目の走行装置5にSBチャンバ5cを設けた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、搬送車1の前方から4つ目の走行装置5にSBチャンバ5cの代わりに、PBチャンバ5bを設けても良いし、搬送車1に設けられる全ての走行装置5に対して、PBチャンバ5bを設けても良い。
【0046】
また、PBチャンバ5bによって駐車ブレーキとサービスブレーキとの両方の作動または解除を行ったが、これに限られるものではなく、PBチャンバ5bによって、駐車ブレーキのみを作動または解除するように構成しても良い。
【0047】
上記実施形態では、搬送車1に対して、PB解除バルブ6を含む駐車ブレーキを解除する機構と、SB解除バルブ7を含むサービスブレーキを解除する機構との両方を設けた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、搬送車1に対して駐車ブレーキを解除する機構のみ設けても良いし、サービスブレーキを解除する機構のみ設けても良い。
【0048】
上記実施形態では、PB解除バルブ6及びSB解除バルブ7を搬送車1の側面に設けた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、PB解除バルブ6及びSB解除バルブ7を搬送車1の前面または後面に設けても良いし、運転室4内に設けても良い。
【0049】
上記実施形態では、PB,SB報知装置として、運転室4内のタッチパネルを例示し、かかるタッチパネルに、駐車ブレーキが解除できない旨や、PB解除バルブ6を操作する旨等の報知内容をメッセージ表示した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、これら報知内容に該当するアイコンや画像をタッチパネルに表示しても良い。また、PB,SB報知装置を運転室4内のスピーカとし、これら報知内容に該当するブザー音や音声を鳴らせても良いし、PB,SB報知装置を運転室4内のランプとし、これら報知内容に該当するランプを点灯させても良い。加えてPB,SB報知装置は、運転室4内に設けられるものに限られず、例えば、搬送車1の側面等にタッチパネルやスピーカ、ランプ等を設け、運転室4の外部へ向けて報知内容を報知できるようにしても良い。
【0050】
上記実施形態では、PB解除バルブ6を三方弁式のバルブで構成し、SB解除バルブ7を手動バルブで構成した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、PB解除バルブ6を手動バルブで構成しても良いし、SB解除バルブ7を三方弁式のバルブで構成しても良いし、PB解除バルブ6,SB解除バルブ7を電磁弁付きバルブで構成しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 搬送車(車両)
5b PBチャンバ
5c SBチャンバ
6 PB解除バルブ(PB解除装置の一部)
12 切換弁(PB解除装置の一部)
13 PB解除ライン(PB解除装置の一部)
10 PBライン
11 PB自動バルブ(切換装置)
14 第1圧力センサ(PB検出装置)
7 SB解除バルブ(SB解除装置)
15 SBライン
16 第2リレーバルブ
17 電空変換器(開閉装置)
18 第1リレーバルブ(開閉装置)
19 パイロットライン
20 第2圧力センサ(圧力検出装置)
T エアタンク