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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】プロピレン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20221202BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018229098
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020090621
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 康寛
(72)【発明者】
【氏名】野田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】道上 憲司
(72)【発明者】
【氏名】板倉 啓太
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴憲
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-173212(JP,A)
【文献】国際公開第2006/011334(WO,A1)
【文献】特開2018-131536(JP,A)
【文献】特開平09-040714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104558312(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/654
C08F 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合させることによりプロピレン系重合体を製造する方法であって、
前記オレフィン重合用触媒が、
(i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ、下記要件(k1)~(k4)を満たす固体状チタン触媒成分と、
(ii)下記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物成分と、
(iii)周期律表の1族、2族または13族に属する元素を含む有機金属化合物成分と
を含み、且つ、
前記固体状チタン触媒成分(i)が、
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ室温でのヘキサン洗浄によってチタンが脱離することがない固体状チタン、
(b)芳香族炭化水素、
(c)液状チタン、および
(d)電子供与体
を接触させる工程を含む方法により製造される触媒〔A〕、
または、
前記触媒〔A〕にプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p)と、
前記有機ケイ素化合物成分(ii)と、
前記有機金属化合物成分(iii)と
を含む触媒〔B〕
であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法:
(k1)チタン含有量が2.5重量%以下である;
(k2)電子供与体の含有量が8~30重量%である;
(k3)電子供与体/チタン(重量比)が5以上である;
(k4)室温でのヘキサン洗浄によってチタンが実質的に脱離されることがない。
1 nSi(OR22(NR342-n ・・・(II)
[式(II)中、R1は炭素数1~20の炭化水素基を示し、R2は炭素数1~4の炭化水素基を示し、R3は炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、R4は炭素数1~12の炭化水素基を示し、R3とR4とは互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を形成していても良く、nは0または1である。]
【請求項2】
前記式(II)において、R1が炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(II)において、R3とR4とが互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を構成している請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記電子供与体が下記式(IV)で表わされる化合物である請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【化1】
式(IV)中、Rは、炭素原子数1~10直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、R'は炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、nは0~4の整数を示す。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系重合体の製造方法、より詳しくは、高立体規則性を有するプロピレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン製造用触媒として、チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチーグラー・ナッタ触媒が広く用いられている。
特に、ポリプロピレンなどの高立体規則性ポリオレフィンを製造する際には、通常、内部ドナー(内部電子供与体)を含む固体状チタン触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、外部ドナー(外部電子供与体)とからなる触媒が用いられている。例えば、内部ドナーとしてカルボン酸エステル類を含む塩化マグネシウム担持型固体状チタン触媒と、有機アルミニウム化合物とともに、外部ドナーとして有機ケイ素化合物とからなるオレフィン重合用触媒が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
しかしながら、上記のような固体状チタン触媒成分を含む触媒を用いてオレフィンを重合させると、いわゆる「剰余チタン化合物」により、高立体規則性ポリオレフィンとともに立体規則性の低いポリオレフィンも副生されるという問題点があった(特開昭59-124909)。
【0004】
一方、近年、自動車業界では環境に配慮した低燃費車の開発が盛んに行われており、自動車材料の分野においても軽量化を目的とした材料の樹脂化やさらなる薄肉化が求められている。このため、バンパー材をはじめとする自動車材料として数多くの実績があるプロピレン系材料における改善の期待は大きく、これまでにないレベルの高立体規則性を有する、高剛性および高耐熱性のプロピレン系重合体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-003215号公報
【文献】特開平08-143620号公報
【文献】特開昭59-124909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は、一定以上の高立体規則性を有するプロピレン系重合体を与える製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、プロピレン系重合体を重合するにあたり、特定の固体状チタン触媒成分と、外部ドナーとして特定の有機ケイ素化合物とを組み合わせると、十分に高い立体規則性を有するプロピレン系重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[5]に係るものである。
[1]
オレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合させることによりプロピレン系重合体を製造する方法であって、
前記オレフィン重合用触媒が、
(i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ、下記要件(k1)~(k4)を満たす固体状チタン触媒成分と、
(ii)下記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物成分と、
(iii)周期律表の1族、2族または13族に属する元素を含む有機金属化合物成分と
を含む触媒〔A〕、
または、
前記触媒〔A〕にプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p)と、
前記有機ケイ素化合物成分(ii)と、
前記有機金属化合物成分(iii)と
を含む触媒〔B〕
であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法:
(k1)チタン含有量が2.5重量%以下である;
(k2)電子供与体の含有量が8~30重量%である;
(k3)電子供与体/チタン(重量比)が5以上である;
(k4)室温でのヘキサン洗浄によってチタンが実質的に脱離されることがない。
1 nSi(OR22(NR342-n ・・・(II)
[式(II)中、R1は炭素数1~20の炭化水素基を示し、R2は炭素数1~4の炭化水素基を示し、R3は炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、R4は炭素数1~12の炭化水素基を示し、R3とR4とは互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を形成していても良く、nは0または1である。]
【0009】
[2]
前記固体状チタン触媒成分(i)が、
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ室温でのヘキサン洗浄によってチタンが脱離することがない固体状チタン、
(b)芳香族炭化水素、
(c)液状チタン、および
(d)電子供与体
を接触させる工程を含む方法により製造される前記[1]に記載の製造方法。
【0010】
[3]
前記式(II)において、R1が炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基である前記[1]または[2]に記載の製造方法。
【0011】
[4]
前記式(II)において、R3とR4とが互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を構成している前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0012】
[5]
前記電子供与体が下記式(IV)で表わされる化合物である前記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
【化1】
【0014】
式(IV)中、Rは、炭素原子数1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、R'は炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、nは0~4の整数を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、高立体規則性を有するプロピレン重合体を、高活性で安定して製造することができ、しかも低立体規則性ポリプロピレンの副生量が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
[オレフィン重合用触媒]
本発明で用いることができるオレフィン重合用触媒は、
(i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ、下記要件(k1)~(k4)を満たす固体状チタン触媒成分と、
(ii)下記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物成分と、
(iii)周期律表の1族、2族または13族に属する元素を含む有機金属化合物成分と
を含む触媒〔A〕、または、
前記触媒〔A〕にプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p)と、
前記有機ケイ素化合物成分(ii)と、
前記有機金属化合物成分(iii)と
を含む触媒〔B〕
である。
【0017】
(k1)チタン含有量が2.5重量%以下である。
(k2)電子供与体の含有量が8~30重量%である。
(k3)電子供与体/チタン(重量比)が5以上である。
(k4)室温でのヘキサン洗浄によってチタンが実質的に脱離されることがない。
【0018】
1 nSi(OR22(NR342-n ・・・(II)
式(II)中、R1は炭素数1~20の炭化水素基を示し、R2は炭素数1~4の炭化水素基を示し、R3は炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、R4は炭素数1~12の炭化水素基を示し、R3とR4とは互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を形成していても良く、nは0または1である。
【0019】
以下、前記オレフィン重合用触媒を構成する各成分について説明する。
<固体状チタン触媒成分(i)>
前記固体状チタン触媒成分(i)は、
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ室温でのヘキサン洗浄によってチタンが脱離することがない固体状チタン、
(b)芳香族炭化水素、
(c)液状チタン、および
(d)電子供与体
を接触させる工程を含む方法により調製することができる。
【0020】
≪(a)固体状チタン≫
前記固体状チタン(a)は、マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体(内部ドナー)などを種々の方法により接触させることにより、公知の固体状チタン触媒成分の調製法(例えば特開平4-096911号公報、特開昭58-83006号公報、特開平8-143580号公報等参照)により製造することができる。
【0021】
前記マグネシウム化合物は固体状態で用いられることが好ましい。この固体状態のマグネシウム化合物は、マグネシウム化合物自体が固体状態であるものであってもよく、または電子供与体との付加物であってもよい。前記マグネシウム化合物としては、特開2004-2742号公報に記載のマグネシウム化合物、具体的には、塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、ブトキシマグネシウムなどが挙げられる。また、前記電子供与体としては、特開2004-2742号公報に記載のマグネシム化合物可溶化能を有する化合物、具体的には、アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸及びこれらの混合物などが挙げられる。マグネシウム化合物及び電子供与体の使用量は、その種類、その接触条件等によっても異なるが、マグネシウム化合物を該液状の電子供与体に対して0.1~20モル/リットル、好ましくは0.5~5モル/リットルとなる量で用いることができる。
【0022】
前記チタン化合物は液状状態で用いられることが好ましい。このようなチタン化合物としては、例えば、下記式(III)で示される4価のチタン化合物が挙げられる。
Ti(OR5)g4-g ・・・(III)
式(III)中、R5は炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、0≦g≦4である。
【0023】
前記チタン化合物としては、特に四塩化チタンが好ましい。また、前記チタン化合物は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記電子供与体(内部ドナー)としては、例えば、下記式(IV)で表わされる化合物(以下「化合物(IV)」ともいう。)が挙げられる。
【0024】
【化2】
【0025】
式(IV)中、Rは、炭素原子数1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、R'は炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を示し、nは0~4の整数を示す。本発明では、nが0の化合物が好ましい。
【0026】
RおよびR'のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
【0027】
前記化合物(IV)の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸n-プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジn-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジn-ペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジn-ヘキシル、フタル酸ジn-ヘプチル、フタル酸ジ(メチルヘキシル)、フタル酸ジ(ジメチルペンチル)、フタル酸ジ(エチルペンチル)、フタル酸ジ(2,2,3-トリメチルブチル)、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中では、フタル酸ジイソブチルが特に好ましい。
【0028】
本発明では、前記電子供与体(内部ドナー)として、前記化合物(IV)以外の別の電子供与体を用いてもよい。別の電子供与体としては、例えば、複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下「ポリエーテル化合物」ともいう。)が挙げられる。
【0029】
前記ポリエーテル化合物としては、エーテル結合間に存在する原子が、炭素、ケイ素、酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素、またはこれらから選択される2種以上の原子である化合物などを挙げることができる。これらのうちエーテル結合間の原子に比較的嵩高い置換基が結合しており、2個以上のエーテル結合間に存在する原子に複数の炭素原子が含まれる化合物が好ましい。例えば、下記式(3)で表されるポリエーテル化合物が好ましい。
【0030】
【化3】
【0031】
前記式(3)において、mは1~10の整数、好ましくは3~10の整数、より好ましくは3~5の整数である。R11、R12、R31~R36は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素、水素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基である。R11およびR12は、それぞれ独立に、好ましくは炭素原子数1~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数2~6の炭化水素基である。R31~R36は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素原子数1~6の炭化水素基である。
【0032】
11およびR12の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。これらの中では、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が好ましい。R31~R36の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が挙げられる。これらの中では、水素原子、メチル基が好ましい。任意のR11、R12、R31~R36(好ましくはR11、R12)は、共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよく、主鎖中に炭素以外の原子が含まれていてもよい。
【0033】
前記ポリエーテル化合物の具体例としては、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-プロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-エチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジブトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-t-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジネオペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,3-ジシクロヘキシル-1,4-ジエトキシブタン、2,3-ジイソプロピル-1,4-ジエトキシブタン、2,4-ジイソプロピル-1,5-ジメトキシペンタン、2,4-ジイソブチル-1,5-ジメトキシペンタン、2,4-ジイソアミル-1,5-ジメトキシペンタン、3-メトキシメチルテトラヒドロフラン、3-メトキシメチルジオキサン、1,2-ジイソブトキシプロパン、1,2-ジイソブトキシエタン、1,3-ジイソアミロキシエタン、1,3-ジイソアミロキシプロパン、1,3-ジイソネオペンチロキシエタン、1,3-ジネオペンチロキシプロパン、2,2-テトラメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ペンタメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ヘキサメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、1,2-ビス(メトキシメチル)シクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソブチル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、2-イソプロピル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソブチル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、2-イソブチル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン等を例示することができる。
【0034】
これらの中では、1,3-ジエーテル類が好ましく、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)1,3-ジメトキシプロパンがより好ましい。これらの化合物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
≪固体状チタン(a)の調製≫
前記固体状チタン(a)は、前記マグネシウム化合物と、前記チタン化合物と、前記電子供与体との接触により調製することができる。この際、固体状態のマグネシウム化合物を炭化水素溶媒に懸濁して用いることが好ましい。また、これら各成分を接触させる際に、液状形態のチタン化合物を1回用いて固形物(1)を生成させてもよく、得られた固形物(1)にさらに液状形態のチタン化合物を接触させて固形物(2)を生成させてもよい。さらに、この固形物(1)または(2)を必要に応じて炭化水素溶媒で洗浄してから固体状チタン(a)を調製することが好ましい。
【0036】
上記のような各成分の接触は、通常-70℃~+200℃、好ましくは-50℃~+150℃、より好ましくは-30℃~+130℃の温度で行われる。固体状チタン(a)を調製する際に用いられる各成分の量は、調製方法によって異なり一概に規定できないが、例えばマグネシウム化合物1モル当り、電子供与体は0.01~10モル、好ましくは0.1~5モルの量で、チタン化合物は0.01~1000モル、好ましくは0.1~200モルの量で用いることができる。
【0037】
本発明では、このようにして得られた固形物(1)または(2)をそのまま固体状チタン(i)として用いることができるが、この固形物を0~150℃の炭化水素溶媒で洗浄することが好ましい。
【0038】
この炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、セタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの非ハロゲン系芳香族炭化水素溶媒、または、ハロゲン含有芳香族炭化水素溶媒などが用いられる。これらのうち、脂肪族炭化水素溶媒またはハロゲンを含まない芳香族炭化水素溶媒が好ましく用いられる。
【0039】
固形物の洗浄に際しては、炭化水素溶媒は、固形物1gに対して通常10~500ml好ましくは20~100mlの量で用いられる。このようにして得られる固体状チタン(a)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有している。この固体状チタン(a)では、電子供与体/チタン(重量比)が6以下であることが好ましい。
このようにして得られた固体状チタン(a)は、室温でのヘキサン洗浄によってチタンが脱離することがない。
【0040】
≪(b)芳香族炭化水素≫
前記固体状チタン(a)との接触に用いられる芳香族炭化水素(b)としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、これらのハロゲン含有炭化水素などが挙げられる。これらの中では、キシレン(特にパラキシレン)が好ましい。前記固体状チタン(a)を、このような芳香族炭化水素(b)と接触させることにより、低立体規則性成分を副生する、いわゆる「剰余チタン化合物」を低減することができる。
【0041】
≪(c)液状チタン≫
前記固体状チタン(a)との接触に用いられる液状チタン(c)としては、該固体状チタン(a)を調製する際に用いたチタン化合物と同様のものを挙げることができる。それらの中でも、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。
【0042】
≪(d)電子供与体≫
前記固体状チタン(a)との接触に用いられる電子供与体(d)の例としては、上述した電子供与体(内部ドナー)で例示したものと同じものを挙げることができる。それらの中でも、前記固体状チタン(a)の調製に使用した電子供与体と同じものを用いることが好ましい。
【0043】
≪固体状チタン触媒成分(i)の調製方法≫
固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)の接触は、通常110~160℃、好ましくは115℃~150℃の温度で、1分間~10時間、好ましくは10分間~5時間行われる。
【0044】
この接触では、芳香族炭化水素(b)は、固体状チタン(a)1gに対して通常1~10000ml、好ましくは5~5000mlより好ましくは10~1000mlの量で用いられる。液状チタン(c)は、芳香族炭化水素(b)100mlに対して通常0.1~50ml、好ましくは0.2~20ml、特に好ましくは0.3~10mlの範囲で用いられる。電子供与体(d)は、芳香族炭化水素(b)100mlに対して通常0.01~10ml、好ましくは0.02~5ml、特に好ましくは0.03~3mlの量で用いられる。
【0045】
固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)の接触順序は、特に限定されることなく、同時または逐次に接触させることができる。
固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)は、不活性ガス雰囲気下、攪拌下に接触させることが好ましい。例えば、充分に窒素置換された攪拌機付きガラス製フラスコ中で、固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)のスラリーを、上記温度で、攪拌機を100~1000rpm、好ましくは200~800rpmの回転数で、上記の時間、攪拌して、固体状チタン(a)、芳香族炭化水素(b)、液状チタン(c)および電子供与体(d)を接触させることが望ましい。
【0046】
接触後の固体状チタン(a)と芳香族炭化水素(b)とは、濾過により分離することができる。
このような固体状チタン(a)と芳香族炭化水素(b)との接触により、固体状チタン(a)よりもチタン含有量が減少された固体状チタン触媒成分(i)が得られる。具体的には、チタン含有量が固体状チタン(a)よりも25重量%以上、好ましくは30~95重量%より好ましくは40~90重量%少ない固体状チタン触媒成分(i)が得られる。
【0047】
上記のようにして得られる固体状チタン触媒成分(i)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含み、かつ、下記要件(k1)~(k4)を満たし、好ましくは下記要件(k5)をさらに満たしている。
【0048】
(k1)固体状チタン触媒成分(i)のチタン含有量は2.5重量%以下、好ましくは2.2~0.1重量%、より好ましくは2.0~0.2重量%、特に好ましくは1.8~0.3重量%、最も好ましくは1.5~0.4重量%である。
【0049】
(k2)電子供与体の含有量は8~30重量%、好ましくは9~25重量%、より好ましくは10~20重量%である。
(k3)電子供与体/チタン(重量比)は5以上、好ましくは7.5~35、より好ましくは8~30、特に好ましくは8.5~25である。
【0050】
(k4)固体状チタン触媒成分(i)は、室温でのヘキサン洗浄によってチタンが実質的に脱離されることがない。なお、固体状チタン触媒成分(i)のヘキサン洗浄とは、固体状チタン触媒成分(i)1gに対して、通常10~500ml、好ましくは20~100mlの量のヘキサンで5分間洗浄することをいう。室温とは15~25℃である。また、チタンが実質的に脱離されることがないとは、ヘキサン洗浄液中のチタン濃度が0.1g/リットル以下であることを意味する。
【0051】
(k5)固体状チタン触媒成分(i)は、平均粒径が5~70μmであり、好ましくは7~65μmであり、より好ましくは8~60μmであり、特に好ましくは10~55μmである。
【0052】
ここで、マグネシウム、ハロゲン、チタンおよび電子供与体の量は、それぞれ固体状チタン触媒成分(i)の単位重量あたりの重量%であり、マグネシウム、ハロゲンおよびチタンはプラズマ発光分光分析(ICP法)により、電子供与体はガスクロマトグラフィーにより定量される。また、触媒の平均粒径は、デカリン溶媒を用いた遠心沈降法により測定される。
【0053】
上記のような固体状チタン触媒成分(i)は、オレフィン重合用触媒成分として用いると、プロピレンを高活性で重合させることができるとともに、立体規則性の低いポリプロピレンの生成量が少なく、高立体規則性のポリプロピレンを安定に製造することができる。
【0054】
<有機ケイ素化合物成分(ii)>
本発明に係る製造方法において、有機ケイ素化合物成分(ii)は、上記固体状チタン触媒成分(i)に対する外部ドナー(外部電子供与体)として機能する。
【0055】
本発明のオレフィン重合用触媒を構成する有機ケイ素化合物成分(ii)は、下記式(II)で表わされる。
1 nSi(OR22(NR342-n ・・・(II)
式(II)中、R1は炭素数1~20の炭化水素基を示し、R2は炭素数1~4の炭化水素基を示し、R3は炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、R4は炭素数1~12の炭化水素基を示し、R3とR4とは互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を形成していても良く、nは0または1である。
【0056】
ここで、R1を構成する炭化水素基は、第1級炭化水素基であっても良く、第2級炭化水素基であっても良く、第3級炭化水素基であっても良い。R1としては、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基、炭素数7~20のアラルキル基などが挙げられる。
【0057】
これらのうち、炭素数3~20の脂環式炭化水素基として、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシニル基、置換基を有するこれらの基などが挙げられる。また、前記脂環式炭化水素基は、アダマンチル基、メチルアダマンチル基などの多環式基であっても良い。
【0058】
一方、R1を構成しうる炭化水素基のうち、炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基、および、炭素数7~20のアラルキル基については、Siに隣接する炭素が、1級炭素であっても良く、2級炭素であっても良く、あるいは、3級炭素であっても良い。
【0059】
これらのうち、Siに隣接する炭素が1級炭素である炭化水素基としては、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、i-ブチル基、i-アミル基などの炭素数1~20の第1級アルキル基、並びに、ベンジル基などが挙げられる。
【0060】
Siに隣接する炭素が2級炭素である炭化水素基としては、i-プロピル基、s-ブチル基、s-アミル基などの炭素数1~20の第2級アルキル基、並びに、α-メチルベンジル基などが挙げられる。
【0061】
Siに隣接する炭素が3級炭素である炭化水素基としては、tert-ブチル基、tert-アミル基などの炭素数1~20の第3級アルキル基、並びに、α,α-ジメチルベンジル基(クミル基)などが挙げられる。
【0062】
これらの中では、シクロペンチル基およびシクロブチル基が好ましい。本発明の好適な態様の1つにおいては、R1はシクロブチル基である。
ただ、実用的な側面、例えば、得られるプロピレン系重合体における立体規制性の高さとコストとのバランスなど、を重視したときには、R1が上記炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基であることも、本発明の好ましい態様の1つといえる。ここで、後述する本願実施例で確認されるように、R1として上記炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基を採用する場合、そのようなアルキル基が1級のアルキル基の場合でも、2級のアルキル基の場合と同等に、立体規則性が実用上十分に高いプロピレン系重合体を与えることができる。上記炭素数1~20の分岐状または直鎖状のアルキル基の中では、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、i-ブチル基が好ましい。
【0063】
2としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中ではメチル基およびエチル基が特に好ましい。
【0064】
3としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。これらの中では、エチル基が特に好ましい。
【0065】
4としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。これらの中では、エチル基が特に好ましい。
【0066】
また、本発明においては、R3とR4とが互いに結合して炭素数3~20の2価の炭化水素基を形成していてもよく、このような場合も本発明の好適な態様の1つである。この場合、NR34で表される基は、炭素数3~20の環状の第2級アミノ基と見ることもできる。そのような2価の炭化水素基として、例えば、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基などが挙げられる。これらは、NR34で表される基が、それぞれ、アゼチジノ基(トリメチレンイミノ基)、ピロリジノ基、ピペリジノ基、アゼパノ基(ヘキサメチレンイミノ基)、アゾナノ基(オクタメチレンイミノ基)などの場合に相当する。本発明の好適な態様では、この2価の炭化水素基は、ブタン-1,4-ジイル基である。
【0067】
前記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物のうち、nが1である化合物の具体例としては、シクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンテニル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロペンタジエニル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、n-プロピル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、n-ブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、イソブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、tert-ブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(ピペリジノジエチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、tert-ブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピルピロリジノジメトキシシラン、イソプロピルピペリジノジメトキシシランなどが挙げられる。
【0068】
前記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物のうち、nが0である化合物の具体例としては、ジピロリジノジメトキシシラン、ジピペリジノジメトキシシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノ(メチルエチルアミノ)ジメトキシシラン、ピペリジノ(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、ピペリジノ(ジメチルアミノ)ジメトキシシランなどが挙げられる。
【0069】
前記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物の中では、高立体規則性、特に、長いメソ連鎖長を高める観点から、エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランおよびシクロペンチルジエチルアミノジメトキシシランが好ましい。また、下記実施例に示されるように、イソプロピルピロリジノジメトキシシランも比較的好ましい傾向にある。
【0070】
本発明の好適な態様の1つでは、前記式(II)で表わされる有機ケイ素化合物は、R1が炭素数1~20の第1級炭化水素基であるか、あるいは、NR34で表される基が炭素数3~20の環状の第2級アミノ基である有機ケイ素化合物である。
【0071】
上述した有機ケイ素化合物成分(ii)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記固体状チタン触媒成分(i)と前記有機ケイ素化合物成分(ii)とを組み合わせて用いることにより、高いレベルの高立体規則性を有するプロピレン系重合体を得ることができる。
【0072】
<有機金属化合物成分(iii)>
本発明のオレフィン重合用触媒を構成する有機金属化合物成分(iii)は、周期律表の1族、2族または13族に属する金属を含む有機金属化合物であり、例えば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物、第2族金属の有機金属化合物などが挙げられる。なお、有機金属化合物成分(iii)は、2種以上を併用してもよい。
【0073】
≪有機アルミニウム化合物≫
前記有機アルミニウム化合物は、例えば下記式で示される。
a nAlX3-n
式中、Raは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、Xはハロゲンまたは水素であり、nは1~3である。
【0074】
aは、炭素原子数1~12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、シクロペンチル基、シクロヘキシル、フェニル、トリルなどである。
【0075】
また、前記有機アルミニウム化合物として、下記式で示される化合物を挙げることもできる。
a nAlY3-n
式中、Raは上記と同様であり、Yは-ORb基、-OSiRc 3基、-OAlRd 2基、-NRe 2基、-SiRf 3基または-N(Rg)AlRh 2基であり、nは1~2であり、Rb、Rc、RdおよびRhはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Reは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RfおよびRgはメチル基、エチル基などである。
【0076】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
・ Ra nAl(ORb)3-n で表される化合物、例えばジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど。
【0077】
・Ra nAl(OSiRc)3-n で表される化合物、例えばEt2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu) 2Al(OSiEt3)など。
・Ra nAl(OAlRd 2)3-nEt2AlOAlEt2、(iso-Bu) 2AlOAl(iso-Bu) 2 など。
上記のような有機アルミニウム化合物のうちでも、Ra 3Alで表される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。
【0078】
[オレフィン重合用触媒の製造方法]
前記オレフィン重合用触媒は、前記固体状チタン触媒成分(i)と、前記有機ケイ素化合物成分(ii)と、前記有機金属化合物成分(iii)とを接触させる工程を含む方法により製造することができる。
【0079】
本発明では、これら各成分(i)、(ii)、(iii)からオレフィン重合用触媒を形成する際に、必要に応じて他の成分を用いることもできる。
本発明では、上記のような各成分から予備重合触媒(p)が形成されていてもよい。予備重合触媒(p)は、上述した各成分(i)、(ii)、(iii)および必要に応じて用いられる他の成分の存在下に、プロピレンを予備重合させることにより形成される。このような予備重合触媒(p)は、通常、有機ケイ素化合物(ii)および有機金属化合物(iii)とともにオレフィン重合用触媒を形成するが、予備重合触媒(p)のみをオレフィン重合用触媒として用いることができる場合もある。
【0080】
[プロピレン系重合体の製造方法]
本発明のプロピレン系重合体の製造方法では、上述したオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合させる。すなわち、本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、上述したオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合させる工程を含んでいる。
【0081】
ここで、プロピレンの重合を行う際に、プロピレンに加えて、少量のプロピレン以外の他のオレフィンまたは少量のジエン化合物を重合系内に共存させてランダム共重合体を製造することもできる。このようなプロピレン以外の他のオレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテンなどの炭素数2~8のオレフィンが挙げられる。これらの中ではエチレンが好ましい。ランダム共重合体の場合、プロピレン以外の他のコモノマーの含有量は、好ましくは6モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
【0082】
本発明では、重合は溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれにおいても実施することができる。重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒として、不活性有機溶媒を用いることもできるし、反応温度において液状のオレフィンを用いることもできる。
【0083】
不活性有機溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;脂環族炭化水素;芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの接触物などを挙げることができる。これらの中では、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。
【0084】
重合に際しては、固体状チタン触媒成分(i)または予備重合触媒(p)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約1×10-5~1ミリモル、好ましくは約1×10-4~0.1ミリモルの量で用いられる。
【0085】
有機ケイ素化合物(ii)は、有機金属化合物(iii)の金属原子1モルに対し、通常約0.001モル~10モル、好ましくは0.01モル~5モルの量で用いられる。
有機金属化合物(iii)は、該化合物(iii)中の金属原子が重合系中のチタン原子1モルに対し、通常約1~2000モル、好ましくは約2~500モルとなるような量で用いられる。
【0086】
なお、この重合時に予備重合触媒(p)を用いると、有機ケイ素化合物(ii)および/または有機金属化合物(iii)を添加しなくてもよい場合がある。予備重合触媒(p)、成分(ii)および成分(iii)からオレフィン重合用触媒が形成されるときには、これら各成分(ii)および(iii)は上記のような量で用いることができる。
【0087】
重合時に水素を用いれば、得られるプロピレン重合体の分子量を調節することができ、MFRの大きい重合体が得られる。
本発明では、重合は、通常、約20~150℃、好ましくは約50~100℃の温度で、また常圧~100kg/cm2、好ましくは約2~50kg/cm2の圧力下で行われる。
【0088】
本発明では、重合を、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。
また、本発明では、プロピレンの単独重合体を製造してもよく、またプロピレン以外のオレフィンを併用してランダム共重合体またはブロック共重合体などを製造してもよい。
【0089】
[プロピレン系重合体]
上記「プロピレン系重合体の製造方法」で上述した本発明の製造方法により、プロピレン系重合体を得ることができる。
【0090】
本発明の典型的な態様において、このプロピレン系重合体は、下記要件(1)~(3)または下記要件(1)~(4)を満たす:
(1)メソ平均連鎖長が500~10万である;
(2)メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.5~1000g/10分である;
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.2~20である;
(4)23℃におけるn-デカン可溶成分量が0.01~2重量%である。
【0091】
以下、各要件について説明する。
<要件(1)>
本発明のプロピレン系重合体は、メソ平均連鎖長が500~10万、好ましくは700~5万、より好ましくは1000~10000である。メソ平均連鎖長が前記範囲内であると、プロピレン系重合体の立体規則性が充分に高くなり、プロピレン系重合体の耐熱性、および曲げ弾性率等の機械的性質が向上する。メソ平均連鎖長は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0092】
<要件(2)>
本発明のプロピレン系重合体は、MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.5~1000g/10分、好ましくは1.0~800g/10分、より好ましくは1.5~500g/10分である。MFRが前記範囲内であると、プロピレン系重合体の成形性と機械強度とのバランスが優れる。なお、本発明のプロピレン系重合体は、好ましくは50~1000g/10分、より好ましくは100~1000g/10分、特に好ましくは100~500g/10分の高MFR領域においても、これまでにないレベルの高立体規則性を有する。
【0093】
<要件(3)>
本発明のプロピレン系重合体は、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.2~20、好ましくは4.5~15、より好ましくは4.8~10である。Mw/Mnが前記範囲内であると、プロピレン系重合体の成形性の観点から好ましい。
【0094】
<要件(4)>
本発明のプロピレン系重合体の第2の態様は、23℃におけるn-デカン可溶成分量が0.01~2重量%、好ましくは0.1~1.8重量%、より好ましくは0.2~1.5重量%である。デカン可溶成分量が前記範囲内であると、高結晶性成分が充分に確保され、低立体規則性成分の副生が抑制される。
【0095】
さらに、上記製造方法で得られるプロピレン系重合体は、前記要件(1)~(3)または前記要件(1)~(4)に加えて、下記要件(5)を満たすことが好ましく、下記要件(5)および(6)を満たすことがより好ましく、さらに、下記要件(7)をも同時に満たすことがさらに好ましい:
(5)昇温溶出分別測定法(TREF)により122℃以上の温度で溶出する成分の割合をA重量%とし、前記要件(2)のメルトフローレートをBg/10分とした場合、下記式(I)を満たす;
100≧A≧20×EXP(-0.01×B)・・・(I)
(6)TREFにより122℃以上の温度で溶出する成分の割合が0.1~100重量%である;
(7)13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が99.0~100%である。
【0096】
<要件(5)>
本発明のプロピレン系重合体は、TREFにより122℃以上の温度で溶出する成分の割合をA重量%とし、前記要件(2)のメルトフローレートをBg/10分とした場合、下記式(I)を満たす。
【0097】
100≧A≧20×EXP(-0.01×B)・・・(I)
上記式(I)を満たすプロピレン系重合体は、MFRが一定以上であっても、一定の耐熱性および高剛性を示す立体規則性を有する点で好ましい。
【0098】
<要件(6)>
本発明のプロピレン系重合体は、TREFにより122℃以上の温度で溶出する成分の割合Aが、好ましくは0.1~100重量%、より好ましくは0.2~80重量%、特に好ましくは0.3~50重量%である。前記溶出成分の割合が前記範囲内であると、プロピレン系重合体の立体規則性が充分に高くなり、プロピレン系重合体の耐熱性、および曲げ弾性率等の機械的性質が向上する。
【0099】
<要件(7)>
本発明のプロピレン系重合体は、13C-NMRにより求められるメソペンタッド分率(mmmm)が、好ましくは99.0~100%、より好ましくは99.1~99.99%、特に好ましくは99.2~99.95%である。メソペンタッド分率が前記範囲内であると、プロピレン系重合体の立体規則性が充分に高くなる傾向にある。
【0100】
ここで、メソペンタッド分率は、分子鎖中の五連子アイソタクティック構造の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ構造を有する連鎖の中心にあるプロピレン構造単位の分率である。メソペンタッド分率は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0101】
[プロピレン系樹脂組成物]
本発明の製造方法で得られるプロピレン系重合体は、プロピレン系樹脂組成物の形態で用いることができる。このプロピレン系樹脂組成物は、上述した本発明のプロピレン系重合体(以下「プロピレン系重合体(A)」ともいう。)を含むプロピレン系樹脂組成物である。本発明のプロピレン系樹脂組成物を構成する前記プロピレン系重合体(A)以外の成分としては、特に限定されず、用途に応じて公知の成分を配合することができる。
【0102】
本発明のプロピレン系樹脂組成物の好ましい態様としては、
プロピレン単独重合体部とプロピレン・α-オレフィン共重合体部とからなるプロピレン系ブロック共重合体(C)20~80質量%、
エチレンに由来する構成単位50~95モル%と、炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位5~50モル%とを含有するエチレン・α-オレフィン共重合体(D)1~50質量%、および
無機充填材(E)0~70質量%
を含み(ただし、成分(C)、(D)および(E)の合計を100質量%とする。)、
前記プロピレン系ブロック共重合体(C)が、前記プロピレン単独重合体部として、前記プロピレン系重合体(A)60~99質量%、および、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体部として、プロピレンに由来する構成単位55~90モル%と、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位10~45モル%とを含有するプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)1~40質量%を含む(ただし、成分(A)と(B)の合計を100質量%とする。)、
プロピレン系樹脂組成物(以下「第1の組成物」ともいう。);
前記プロピレン系重合体(A)100質量部、および
核剤(F)0.01~10質量部
を含むプロピレン系樹脂組成物(以下「第2の組成物」ともいう。);ならびに、
前記プロピレン系重合体(A)および前記プロピレン系ブロック共重合体(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分70~99.5質量%と、
無機繊維(G)0.5~30質量%と
を含む(ただし、成分(A)、(C)および(G)の合計を100質量%とする。)プロピレン系樹脂組成物(以下「第3の組成物」ともいう。)
などが挙げられる。以下、各組成物について説明する。
【0103】
<第1の組成物>
本発明の第1の組成物は、前記プロピレン系ブロック共重合体(C)、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)を含み、必要に応じて無機充填材(E)をさらに含む樹脂組成物であり、前記プロピレン系ブロック共重合体(C)は、前記プロピレン系重合体(A)と前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)とを含む。このような本発明の第1の組成物は、成形時の流動性に優れるとともに、曲げ弾性率および耐衝撃性に優れた成形体を形成することができる。
【0104】
本発明の第1の組成物では、前記プロピレン系ブロック共重合体(C)を構成する前記プロピレン系重合体(A)として、プロピレン単独重合体が用いられる。
本発明の第1の組成物は、前記プロピレン系重合体(A)と前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)とを混合してプロピレン系ブロック共重合体(C)を形成した後、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)および必要に応じて前記無機充填材(E)を混合することにより、調製することができる。
【0105】
≪プロピレン系ブロック共重合体(C)≫
前記プロピレン系ブロック共重合体(C)は、プロピレン単独重合体部として前記プロピレン系重合体(A)を60~99質量%、好ましくは70~97質量%、より好ましくは75~95質量%の範囲で含み、前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)を1~40質量%、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%の範囲で含む(ただし、成分(A)と(B)の合計を100質量%とする。)。
【0106】
このように前記プロピレン系重合体(A)および前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いてプロピレン系ブロック共重合体(C)を形成することにより、剛性や耐熱性と耐衝撃性とのバランスに優れた成形体を形成することができる。ここで、プロピレン系ブロック共重合体(C)の形成は、例えば、前記プロピレン系重合体(A)と前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)とを溶融混練することによって行うことができる。
【0107】
≪プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)≫
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体であり、プロピレンに由来する構成単位を55~90モル%、好ましくは60~85モル%の範囲内で含有し、前記α-オレフィンに由来する構成単位を10~45モル%、好ましくは15~40モル%の範囲内で含有する(ただし、プロピレンに由来する構成単位とα-オレフィンに由来する構成単位の合計を100モル%とする。)。
【0108】
プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、エチレンが好ましい。
【0109】
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)のMFR(ASTM D1238E、測定温度230℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3~20g/10分である。
【0110】
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、種々公知の製造方法、例えば、メタロセン触媒の存在下、プロピレンとプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとを共重合させることにより製造することができる。
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
≪エチレン・α-オレフィン共重合体(D)≫
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、エチレンに由来する構成単位を50~95モル%、好ましくは55~90モル%の範囲内で含有し、前記α-オレフィンに由来する構成単位を5~50モル%、好ましくは10~45モル%の範囲内で含有する。前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)を前記プロピレン系ブロック共重合体(C)に配合することにより、耐衝撃性をさらに向上させることができる。
【0112】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、1-ブテンおよび1-オクテンがより好ましい。
【0113】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)のMFR(ASTM D1238E、測定温度230℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.1~50g/10分、より好ましくは0.3~20g/10分、さらに好ましくは0.5~10g/10分である。また、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)の密度は、好ましくは0.850~0.920kg/m3、より好ましくは0.855~0.900kg/m3である。
【0114】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。好ましい市販品としては、例えば、三井化学(株)社製の「タフマー(登録商標)A」シリーズおよび「タフマー(登録商標)H」シリーズ、デュポン・ダウ社製の「Engage(登録商標)」シリーズ、エクソンモービル社製の「Exact(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
≪無機充填材(E)≫
前記無機充填材(E)としては、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の第1の組成物では、無機充填材(E)としてタルクを用いることが好ましい。
【0116】
本発明の第1の組成物における成分(C)~(E)の含有量としては、成分(C)~(E)の合計を100質量%とした場合、成分(C)が、20~80質量%、好ましくは25~75質量%、より好ましくは30~70質量%であり、成分(D)が、1~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%であり、成分(E)が、0~70質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0117】
<第2の組成物>
本発明の第2の組成物は、前記プロピレン系重合体(A)および核剤(F)を含む樹脂組成物であり、剛性、耐熱性および曲げ弾性率に優れた成形体を形成することができる。
【0118】
本発明の第2の組成物で用いられる前記プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体でもよく、プロピレン以外のモノマーを共重合成分として含むランダム共重合体でもよい。
【0119】
前記核剤(F)としては、例えば、ソルビトール系核剤、フォスフェート系核剤(有機リン酸金属塩)、芳香族カルボン酸の金属塩、脂肪族カルボン酸の金属塩、ロジン系化合物等の有機系の核剤;無機化合物等の無機系の核剤などが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
前記核剤(F)の市販品としては、フォスフェート系核剤である「アデカスタブNA-11」((株)ADEKA製)、ロジン系核剤である「パインクリスタルKM1610」(荒川化学(株)製)、脂肪族カルボン酸の金属塩からなる核剤「ハイパーフォームHPN-20E」(ミリケン社製)、ソルビトール系核剤「ミラッドNX8000」(ミリケン社製)などが挙げられる。
【0121】
本発明の第2の組成物における核剤(F)の含有量は、前記プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~1.0質量部である。
【0122】
<第3の組成物>
本発明の第2の組成物は、前記プロピレン系重合体(A)および前記プロピレン系ブロック共重合体(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分と、無機繊維(G)とを含む樹脂組成物であり、剛性、耐熱性および曲げ弾性率のバランスに優れた成形体を形成することができる。
【0123】
本発明の第3の組成物で用いられる前記プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体およびランダム共重合体のいずれでもよいが、前記プロピレン系ブロック共重合体(C)を構成する前記プロピレン系重合体(A)はプロピレン単独重合体である。
【0124】
前記無機繊維(G)としては、例えば、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫酸マグネシウム繊維を用いた場合、その平均繊維長は、5~50μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。また、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径は、0.3~2μmであることが好ましく、0.5~1μmであることがより好ましい。市販品としては、「モスハイジ」(宇部マテリアルズ(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0125】
ガラス繊維としては、Eガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)および耐アルカリガラスなどのガラスを溶融紡糸して、フィラメント状の繊維にしたものを挙げることができる。該ガラス繊維は、1mm以下の短繊維または1mm以上の長繊維の形態で組成物中に含有される。
【0126】
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリルを原料としたポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維や、ピッチを原料としたピッチ系炭素繊維などが挙げられる。これらの炭素繊維は、繊維原糸を所望の長さに裁断した、いわゆるチョップドカーボンファイバーとして用いることができ、また必要に応じて、各種サイジング剤を用いて収束処理されたものであってもよい。
【0127】
本発明の第3の組成物における無機繊維(G)の含有量は、成分(A)および成分(G)の合計を100質量%とした場合、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0128】
<他の成分>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した成分(A)~(G)以外の、樹脂、ゴム、充填剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの他の成分を配合することができる。本発明のプロピレン系樹脂組成物における前記他の成分の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0129】
<プロピレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述した各成分を配合することにより製造することができる。各成分は、任意の順番で逐次配合してもよく、同時に混合してもよい。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。ただし、本発明の第1の組成物については、上述したように、前記プロピレン系重合体(A)と前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)とを混合してプロピレン系ブロック共重合体(C)を形成した後、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)ならびに必要に応じて前記無機充填材(E)および他の成分を混合することにより製造される。また、本発明の第3の組成物において、前記プロピレン系ブロック共重合体(C)を用いる場合も同様に、予め前記プロピレン系ブロック共重合体(C)を形成した後、他の成分を混合することにより製造される。
【0130】
各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置を用いて、各成分を同時にもしくは逐次に、混合または溶融混練する方法が挙げられる。
【0131】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明のプロピレン系重合体または本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて形成される。本発明のプロピレン系重合体は、これまでにないレベルの高立体規則性を有するとともに、高剛性および高耐熱性を有することから、本発明の成形体は、温度変化による寸法変化が小さく寸法安定性に優れている。そのため、本発明の成形体は、例えば自動車用部品、家電部品、食品容器、医療容器など様々な分野に好適に用いることができる。前記自動車用部品としては、例えば、バンパーやインストルメンタルパネル等の自動車内外装部材、ルーフ、ドアパネル、フェンダー等の外板材などが挙げられる。特に、本発明の第1の組成物は自動車用バンパー、インストルメントパネル、フェンダーとして好適であり、本発明の第2の組成物は自動車内装部材(例えば、ドアパネル、ピラー等)として好適であり、本発明の第3の組成物は自動車機能部材(例えば、エンジンファン、ファンシェラウド等)として好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
本発明の成形体の成形法としては、特に限定されず、重合体の成形法として公知の様々な方法を採用することができるが、特に射出成形やプレス成形が好ましい。
【実施例
【0133】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例に記載された各種物性の測定方法は以下のとおりである。
【0134】
<メソペンタッド分率(mmmm(ノイズ除去法))>
1.測定条件
装置:ブルカー・バイオスピン製AVANCE III cryo-500型核磁気共鳴装置
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00マイクロ秒)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:256回
測定溶媒:o-ジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20体積%)混合溶媒
試料濃度:50mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフト基準:21.59ppm(メソpentad methyl peak shifts)
【0135】
2.算出法
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたメソペンタッド分率(mmmm, %)は、上記1の測定条件により得られた13C-NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。
【0136】
ここで、本発明における測定対象のような、これまでにないレベルの高い立体規則性を有するポリプロピレンの場合、rmmr、mmrm、rmrr、rmrm、mrrr領域を積分値に含めると、「ノイズ」の積分値への影響度が大きくなり、一般的な算出方法におけるS2を過大評価、即ちmmmm(%)を過少評価してしまうという問題があると考える。Prog. Polym. Sci. 26(2001), 443-533においても、95%以上の立体規則性を有するポリプロピレンの場合、一定要件を満たせば、rmmr、mmrm、rmrr、rmrm、mrrr領域の積分値は、理論上、合計0.1%以下となることが報告されており、一般的な算出方法におけるS2の過大評価に繋がることを示唆している。
【0137】
そこで、本発明では、下記(式1)に従い算出した。rmmr, mmrm, rmrr, rmrm, mrrr領域については、Prog. Polym. Sci. 26(2001), 443-533の示唆に従い計算から除いた。以下、本明細書での算出法を「ノイズ除去法」と称する。
【0138】
mmmm(ノイズ除去法)(%)= S1/S2 * 100 ・・・(式1)
S1 = (mmmm, mmmrを含むピーク)-(n-プロピル末端)-(n-ブチル末端)- mrrm * 2
S2 = S1 + mmmr + mmrr + mrrm + rrrr
= S1 + 5 * mrrm + rrrr
【0139】
上記(式1)で算出するにあたり、例として、下記の如く帰属した。なお、mmmmのピークには、mmmrと(n-プロピル末端)及び(n-ブチル末端)の各ピークが重複している。
mmmm, mmmrを含むピーク:21.2~22.0ppmのピーク面積
mmmr = mrrm * 2
mmrr = mrrm * 2
mrrm:19.5~19.7ppmのピーク面積
rrrr:20.0~20.2ppmのピーク面積
n-プロピル末端:(A1 + A3)/2
A1:14.2ppmのピーク面積
A3:39.4ppmのピーク面積
n-ブチル末端:36.7ppmのピーク面積
【0140】
<メソ平均連鎖長>
メソ平均連鎖長Ln(m)は下記式に基づいて算出した。
Ln(m)=3+5X/(1-X)
X=mmmm(ノイズ除去法)(%)/100
【0141】
<分子量分布>
分子量分布の指標であるMw/Mn値は、下記条件で測定したクロマトグラムを公知の方法によって解析することによって得た。
装置:Waters製ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型
カラム:東ソー製TSKgel GMH6-HT x2 + TSKgel GMH6-HTL x2
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
流速:1.0ml/min
温度:140℃
カラム校正:東ソー製単分散ポリスチレン
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.4ミリリットル
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238Eに準拠し、測定温度は230℃とした。
【0142】
<デカン可溶成分量>
ガラス製の測定容器にプロピレン系重合体約6グラム(この重量を、下式においてb(グラム)と表した)、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間掛けて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G-4規格のグラスフィルターにて減圧濾過した。濾液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得た。この重量を、下式においてa(グラム)と表した。この操作の後、デカン可溶成分量を下記式によって決定した。
デカン可溶成分含有率(重量%)=100×(500×a)/(100×b)
【0143】
<融点(Tm)>
セイコ-インスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、50℃/分で230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、10℃/分で-100℃まで降温し、次いで、5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温した。この最後の昇温時の吸熱曲線より融点(Tm)を求めた。
【0144】
<曲げ弾性率>
ISO 178に準拠して、以下の条件で曲げ弾性率(MPa)を測定した。
温度:23℃
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
スパン間:64mm
<シャルピー衝撃試験>
JIS K7111に従って、下記の条件でノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
《試験条件》
温度:-30℃および23℃
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である。
【0145】
[実施例1]
<固体状チタン(a-1)の調製>
内容積2リットルの高速撹拌装置(特殊機化工業製)を充分窒素置換した後、該装置に精製灯油700ml、塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよびソルビタンジステアレート(花王アトラス(株)製「エマゾール320」)3gを装入した。この系を撹拌下で昇温し、120℃および800rpmの条件で30分間撹拌した。高速撹拌下、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め-10℃に冷却された精製灯油1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)に移液した。得られた固体を濾過し、精製n-ヘキサンで充分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。
【0146】
次いで、前記固体状付加物(マグネシウム原子に換算して45ミリモル)をデカン20mlに懸濁させた後、-20℃に保持した四塩化チタン195ml中に、攪拌下で全量導入した。この混合液を5時間かけて80℃に昇温し、ジイソブチルフタレート1.8ml(6.2ミリモル)を添加した。引き続き110℃まで昇温して1.5時間攪拌した。
【0147】
1.5時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよび室温のヘキサンによって、ろ液中にチタンが検出されなくなるまで洗浄した。このようにして、チタン3.8重量%、マグネシウム16重量%、ジイソブチルフタレ-ト18.2重量%、エタノ-ル残基1.1重量%を含有する固体状チタン(a-1)を得た。
【0148】
<固体状チタン触媒成分(i-1)の調製>
充分に窒素置換された200mlのガラス製反応器に、得られた固体状チタン(a-1)6.8g、パラキシレン113ml、デカン11ml、四塩化チタン2.5ml(23ミリモル)及びジイソブチルフタレ-ト0.34ml(1.2ミリモル)を入れた。反応器内の温度を130℃に昇温し、その温度で1時間攪拌して接触処理した後、熱ろ過により固体部を採取した。この固体部を101mlのパラキシレンに再懸濁させ、さらに四塩化チタン1.7ml(15ミリモル)及びジイソブチルフタレート0.22ml(0.8ミリモル)を添加した。
【0149】
次いで、130℃に昇温し、該温度を保持しながら1時間攪拌して反応させた。反応終了後、再び熱ろ過にて固液分離を行い、得られた固体部を100℃のデカン及び室温のヘキサンによって触媒中のパラキシレンが1重量%以下となるまで洗浄した。このようにして、チタン1.3重量%、マグネシウム20重量%、ジイソブチルフタレート13.8重量%、ジエチルフタレート0.8重量%を含有する固体状チタン触媒成分(i-1)を得た。
【0150】
なお、本発明者は、固体状チタン触媒成分(i-1)中に検出されたジエチルフタレートは、おそらく、固体状チタン触媒成分の製造過程で、ジイソブチルフタレートと、上記固体状チタン(a-1)を製造するのに用いたエタノールとのエステル交換が随伴したことに起因するのではないかと推測している。
【0151】
<予備重合触媒(p-1)の調製>
窒素置換された200mlのガラス製反応器に、ヘキサン50ml、トリエチルアルミニウム5.0ミリモル、イソプロピルピロリジノジメトキシシラン0.75ミリモル、および上記固体状チタン触媒成分(i-1)をチタン原子換算で0.25ミリモル装入した後、系内の温度を20℃に保ちながら、1.47リットル/時間の量でプロピレンを1時間供給した。この操作により、固体状チタン触媒成分(i-1)1g当り3gのプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p-1)を得た。
【0152】
なお、予備重合触媒(p-1)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0153】
<本重合>
内容積2リットルのオートクレーブに、プロピレン500gと水素4.5リットルとを装入し、系内の温度を60℃に昇温した。その後、トリエチルアルミニウムを0.5ミリモル、イソプロピルピロリジノジメトキシシランを0.1ミリモルおよび上記で得られた予備重合触媒(p-1)をチタン原子換算で0.002ミリモル添加することにより重合を開始した。系内の温度を70℃に保ちながら1時間重合を行った。次いで、エタノールを添加することにより重合を停止し、未反応のプロピレンをパージしてポリプロピレン(A-1)199gを得た。得られたポリプロピレン(A-1)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0154】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-1)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0155】
[実施例2]
<予備重合触媒(p-2)の調製>
イソプロピルピロリジノジメトキシシランに代えてシクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランを使用したことを除いては、実施例1の「予備重合触媒(p-1)の調製」と同様に行い、固体状チタン触媒成分(i-1)1g当り3gのプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p-2)を得た。
【0156】
なお、予備重合触媒(p-2)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとシクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0157】
<本重合>
予備重合触媒(p-1)に代えて上記予備重合触媒(p-2)を用い、イソプロピルピロリジノジメトキシシランに代えてシクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランを使用するとともに、水素の装入量を4.5リットルから4.0リットルに変更したことを除いては、実施例1の「本重合」と同様に行い、ポリプロピレン(A-2)220gを得た。得られたポリプロピレン(A-2)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0158】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとシクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-2)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0159】
[実施例3]
<予備重合触媒(p-3)の調製>
イソプロピルピロリジノジメトキシシランに代えてエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランを使用したことを除いては、実施例1の「予備重合触媒(p-1)の調製」と同様に行い、固体状チタン触媒成分(i-1)1g当り3gのプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p-3)を得た。
【0160】
なお、予備重合触媒(p-3)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0161】
<本重合>
予備重合触媒(p-1)に代えて上記予備重合触媒(p-3)を用い、イソプロピルピロリジノジメトキシシランに代えてエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランを使用するとともに、水素の装入量を4.5リットルから3.5リットルに変更したことを除いては、実施例1の「本重合」と同様に行い、ポリプロピレン(A-3)217gを得た。得られたポリプロピレン(A-3)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0162】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-3)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0163】
[比較例1]
<予備重合触媒(p-c1)の調製>
イソプロピルピロリジノジメトキシシランに代えてシクロヘキシルメチルジメトキシシランを使用したことを除いては、実施例1の「予備重合触媒(p-1)の調製」と同様に行い、固体状チタン触媒成分(i-1)1g当り3gのプロピレンが予備重合された予備重合触媒(p-c1)を得た。
【0164】
なお、予備重合触媒(p-c1)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとシクロヘキシルメチルジメトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0165】
<本重合>
予備重合触媒(p-1)に代えて上記予備重合触媒(p-c1)を用い、イソプロピルピロリジノジメトキシシランに代えてシクロヘキシルメチルジメトキシシランを使用したことを除いては、実施例1の「本重合」と同様に行い、ポリプロピレン(a-1)230gを得た。得られたポリプロピレン(a-1)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0166】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとシクロヘキシルメチルジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-c1)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0167】
[実施例4]
本重合において、水素の装入量を4.5リットルから11.0リットルに変更するとともに、重合を行う際の系内の温度を70℃から60℃に変更し、トリエチルアルミニウムの添加量を0.5ミリモルから1.0ミリモルに、イソプロピルピロリジノジメトキシシランの添加量を0.1ミリモルから0.2ミリモルに、予備重合触媒(p-1)の添加量をチタン原子換算で0.002ミリモルから0.004ミリモルに変更したことを除いては、実施例1と同様に行い、ポリプロピレン(A-4)295gを得た。得られたポリプロピレン(A-4)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0168】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-1)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0169】
[実施例5]
本重合において、水素の装入量を4.0リットルから9.0リットルに変更したことを除いては、実施例2と同様に行い、ポリプロピレン(A-5)234gを得た。得られたポリプロピレン(A-5)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0170】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとシクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-2)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0171】
[実施例6]
本重合において、水素の装入量を4.0リットルから10.5リットルに変更するとともに、トリエチルアルミニウムの添加量を0.5ミリモルから1.0ミリモルに、シクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランの添加量を0.1ミリモルから1.0ミリモルに、予備重合触媒(p-2)の添加量をチタン原子換算で0.002ミリモルから0.004ミリモルに変更したことを除いては、実施例2と同様に行い、ポリプロピレン(A-6)295gを得た。得られたポリプロピレン(A-6)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0172】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとシクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-2)中のチタン原子とのモル比は、250/250/1であった。
【0173】
[実施例7]
本重合において、水素の装入量を3.5リットルから8.5リットルに変更したことを除いては、実施例3と同様に行い、ポリプロピレン(A-7)207gを得た。得られたポリプロピレン(A-7)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0174】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-3)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0175】
[実施例8]
本重合において、水素の装入量を3.5リットルから11.0リットルに変更するとともに、トリエチルアルミニウムの添加量を0.5ミリモルから1.0ミリモルに、エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランの添加量を0.1ミリモルから1.0ミリモルに変更したことを除いては、実施例3と同様に行い、ポリプロピレン(A-8)186gを得た。得られたポリプロピレン(A-8)の物性を評価した結果を表1に示す。
【0176】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-3)中のチタン原子とのモル比は、250/250/1であった。
【0177】
【表1】
【0178】
表1および後記表2中の「オレフィン重合用触媒」の「有機ケイ素化合物成分 (ii)」に関する記号の意味は以下のとおりである。
ii-1:イソプロピルピロリジノジメトキシシラン
ii-2:シクロブチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン
ii-3:エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン
cii-1:シクロヘキシルメチルジメトキシシラン
cii-2:ジエチルアミノトリエトキシシラン
【0179】
[実施例9]
<予備重合触媒(p-4)の調製>
上記固体状チタン触媒成分(i-1)90g、トリエチルアルミニウム82.1ml、イソプロピルピロリジノジメトキシシラン19.2ml、ヘプタン14.3Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを1000g挿入し、120分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。以上の操作により予備重合触媒(p-4)が得られた。
【0180】
得られた予備重合触媒(p-4)を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンによりスラリーの調製を行った。
なお、予備重合触媒(p-4)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0181】
<本重合>
内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器にプロピレンを300L装入し、この液位を保ちながら、プロピレンを100kg/時間、上記で得られた予備重合触媒(p-4)触媒のスラリーを固体触媒成分として0.970g/時間、トリエチルアルミニウム10.9ml/時間、外部ドナーとしてイソプロピルピロリジノジメトキシシラン3.40ml/時間を連続的に供給し、温度は70℃で重合した。また重合槽内の気相部の水素濃度が6.90mol%となるよう水素を連続的に供給した。得られたスラリーは、失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のポリプロピレン(A-9)を得た。
【0182】
得られたポリプロピレン(A-9)は、80℃で真空乾燥を行った。
得られたポリプロピレン(A-9)の物性を評価した結果を表2に示す。
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-4)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0183】
[実施例10]
本重合において、イソプロピルピロリジノジメトキシシランの供給量を3.40ml/時間から6.80ml/時間に変更したことを除いては、実施例9と同様に行い、ポリプロピレン(A-10)を得た。得られたポリプロピレン(A-10)の物性を評価した結果を表2に示す。
【0184】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-4)中のチタン原子とのモル比は、250/100/1であった。
【0185】
[実施例11]
本重合において、重合を行う際の系内の温度を70℃から60℃に変更したことを除いては、実施例9と同様に行い、ポリプロピレン(A-11)を得た。得られたポリプロピレン(A-11)の物性を評価した結果を表2に示す。
【0186】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとイソプロピルピロリジノジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-4)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0187】
[実施例12]
<予備重合触媒(p-5)の調製>
上記固体状チタン触媒成分(i-1)160g、トリエチルアルミニウム146ml、エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン39.1ml、ヘプタン14.3Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを1000g挿入し、120分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。以上の操作により予備重合触媒(p-5)が得られた。
【0188】
得られた予備重合触媒(p-5)を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンによりスラリーの調製を行った。
なお、予備重合触媒(p-5)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0189】
<本重合>
内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器にプロピレンを300L装入し、この液位を保ちながら、プロピレンを100kg/時間、上記で得られた予備重合触媒(p-5)触媒のスラリーを固体触媒成分として1.50g/時間、トリエチルアルミニウム17.1ml/時間、外部ドナーとしてエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン6.12ml/時間を連続的に供給し、温度は64℃で重合した。また重合槽内の気相部の水素濃度が4.0mol%となるよう水素を連続的に供給した。得られたスラリーは、失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のポリプロピレン(A-12)を得た。
【0190】
得られたポリプロピレン(A-12)は、80℃で真空乾燥を行った。
得られたポリプロピレン(A-12)の物性を評価した結果を表2に示す。
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-5)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0191】
[実施例13]
本重合において、水素濃度が7.0mol%となるよう水素の供給量を変更したことを除いては、実施例12と同様に行い、ポリプロピレン(A-13)を得た。得られたポリプロピレン(A-13)の物性を評価した結果を表2に示す。
【0192】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-5)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0193】
[実施例14]
本重合において、水素濃度が16.2mol%となるよう水素の供給量を変更したことを除いては、実施例12と同様に行い、ポリプロピレン(A-14)を得た。得られたポリプロピレン(A-14)の物性を評価した結果を表2に示す。
【0194】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとエチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランと上記予備重合触媒(p-5)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0195】
[比較例2]
<予備重合触媒(p-c2)の調製>
エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランに代えてジエチルアミノトリエトキシシランを使用したことを除いては、実施例12の「予備重合触媒(p-5)の調製」と同様に行い、予備重合触媒(p-c2)を得た。
【0196】
得られた予備重合触媒(p-c2)を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンによりスラリーの調製を行った。
なお、予備重合触媒(p-c2)の調製に用いられたトリエチルアルミニウムとジエチルアミノトリエトキシシランと上記固体状チタン触媒成分(i-1)中のチタン原子とのモル比は、20/3/1であった。
【0197】
<本重合>
予備重合触媒(p-5)に代えて上記予備重合触媒(p-c2)を用い、エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシランに代えてジエチルアミノトリエトキシシランを使用し、且つ、水素濃度が1.9mol%となるよう水素の供給量を変更したことを除いては、実施例12の「本重合」と同様に行い、ポリプロピレン(a-2)を得た。得られたポリプロピレン(a-2)の物性を評価した結果を表2に示す。
【0198】
なお、本重合で用いられたトリエチルアルミニウムとジエチルアミノトリエトキシシランと上記予備重合触媒(p-c2)中のチタン原子とのモル比は、250/50/1であった。
【0199】
【表2】
【0200】
[ポリプロピレンのみからなるペレットの作製および物性の評価]
上述した実施例または比較例で得られたポリプロピレンのみを、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレットを作製した。得られたペレットを用いて、射出成形機にて下記の条件で射出成形し、試験片を作製した。得られた射出成形体(試験片)の物性を表3に示す。
【0201】
1.溶融混練条件
同方向二軸混練機:品番 KZW-15、(株)テクノベル 社製
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
2.射出成形条件
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間-保圧時間:13秒
冷却時間:15秒
【0202】
【表3】
【0203】
[ポリプロピレンと無機充填材とを含むペレットの作製および物性の評価]
上述した実施例または比較例で得られたポリプロピレンと無機充填材(E)とを下記表4に示す組成となるように混合した後、得られる混合物を二軸押出機にて溶融混練してペレットを作製した。得られたペレットを用いて、射出成形機にて射出成形し、試験片を作製した。
【0204】
ここで、溶融混練および射出成形は、それぞれ、上記「ポリプロピレンのみからなるペレットの作製および物性の評価」中の「1.溶融混練条件」および「2.射出成形条件」に記載の条件で行った。
【0205】
得られた射出成形体(試験片)の物性を表4に示す。
【0206】
【表4】
【0207】
表4中の成分(E)に関する記号の意味は以下のとおりである。
E-1:タルク(商品名:JM209、浅田製粉(株)製)
[プロピレン系ブロック共重合体と無機充填材とを含むペレットの作製および物性の評価]
まず、上述した実施例または比較例で得られたポリプロピレンとプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)とを、表5に示す量で混合した後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練することにより、プロピレン系ブロック共重合体を調製した。次いで、得られたプロピレン系ブロック共重合体に、エチレン・α-オレフィン共重合体(D)および無機充填材(E)を表5に示す量で配合し、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を作製した。得られたペレットを用いて、射出成形機にて下記の条件で射出成形し、試験片を作製した。得られた射出成形体(試験片)の物性を表5に示す。
【0208】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 KZW-15、(株)テクノベル 社製
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<射出成形条件>
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間-保圧時間:13秒
冷却時間:15秒
【0209】
【表5】
【0210】
表5中の成分(B),(D)および(E)に関する記号の意味は以下のとおりである。
B-1:プロピレン・エチレン共重合体(商品名:タフマーS4020、三井化学(株)製)
D-1:エチレン・ブテン共重合体(商品名:タフマーA1050S、三井化学(株)製)
E-1:タルク(商品名:JM209、浅田製粉(株)製)