(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】RFタグガード構造
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20221202BHJP
B65D 19/38 20060101ALI20221202BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G06K19/077 156
B65D19/38 Z
H04B5/02
G06K19/077 248
G06K19/077 220
(21)【出願番号】P 2018233711
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】500352063
【氏名又は名称】株式会社デンソーエスアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 純司
(72)【発明者】
【氏名】赤松 慎也
(72)【発明者】
【氏名】清水 博長
(72)【発明者】
【氏名】石田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】仲木 健
(72)【発明者】
【氏名】山内 雅広
(72)【発明者】
【氏名】松本 頼明
(72)【発明者】
【氏名】山鍬 靖
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/170752(WO,A1)
【文献】特開2009-009205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00
B65D 19/38
H04B 5/02
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の個品管理を目的とするRFタグを物理的衝撃から保護するために設けられるガード構造であって、
前記RFタグを装着する装着部と、
前記装着部に装着された前記RFタグの偏波方向に対して垂直方向に延びる、少なくとも一つの金属製ガードと、を有し、
前記金属製ガードは、前記RFタグの前方に設置されるとともに、
前記金属製ガードによる前記RFタグに対する電波減衰率が50%以内である
ことを特徴とするRFタグガード構造。
【請求項2】
前記RFタグは、前記金属製ガードと非接触に前記装着部に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のRFタグガード構造。
【請求項3】
前記装着部は、前記物品の一部によって構成される
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のRFタグガード構造。
【請求項4】
前記金属製ガードは、角柱状又は円柱状の棒状部材からなる
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載のRFタグガード構造。
【請求項5】
前記RFタグの通信周波数は、UHF帯又はマイクロ波帯である
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載のRFタグガード構造。
【請求項6】
前記金属製ガードは、前記RFタグの偏波方向の幅が、前記RFタグの通信周波数の1/8波長以下である
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載のRFタグガード構造。
【請求項7】
前記金属製ガードは、前記RFタグに備えられるループ回路部の全部を覆わない
ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載のRFタグガード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば所定の物品に取り付けられたRFタグを保護するための構造に関し、特に、RFタグに外部から物理的衝撃が加わることを回避するためのRFタグガード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、任意の物品や対象物に対して、当該物品や対象物に関する所定情報(個体識別情報)を読み書き可能に記憶したICチップを内蔵した所謂RFタグが広く使用されている。
RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグ,ICタグ,非接触タグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを備えた電子回路が樹脂フィルム等の基材によって封止・コーティングされた所謂インレイ(インレット)が、タグ(荷札)状に形成されてなる超小型の通信端末であり、読取・書込装置(リーダ・ライタ)によってタグ内のICチップに所定の情報が無線で読み取りや書き込み,読み書き(リードオンリー,ライトワンス,リード・ライト)が行えるようになっている。
【0003】
そして、このようなRFタグに所定の情報を書き込んで任意の物品,対象物等に取り付けることにより、RFタグに記録された情報がリーダ・ライタによりピックアップされ、タグに記録された情報を、当該物品に関する所定情報、例えば、当該物品の名称や識別記号,内容物,成分,管理者,使用者,使用状態,使用状況などの種々の情報を、個体識別情報として認識,出力,表示,更新等させることができる。
このようなRFタグは、ICチップのメモリに数百ビット~数キロビットのデータが記録可能であり、物品等に関する情報としては十分な情報量を記録でき、また、読取・書込装置側とは非接触で通信が行えるため接点の磨耗や傷、汚れ等の心配もなく、さらに、タグ自体は無電源にすることができるため対象物に合わせた加工や小型化・薄型化が可能となる。このため、RFタグは、どのような対象物にも場所を取らずに容易に装着でき、対象物品の個体識別体として使用できることから、近年広く普及している。
【0004】
ところが、このようRFタグは、ICチップとアンテナをフィルムコーティングしたインレイそのものや、インレイを薄型の筐体やホルダなどに収納しただけの構造であるため、そのままの状態では、外部から加わる衝撃等によって故障や誤動作,破損などが生じる原因となる。
例えば、貨物用のパレットやスキッドなどに取り付けられるRFタグは、運搬用のフォークリフトの爪や他のパレット,構造物などが接触・衝突等することによって、恒常的に物理的,機械的な外力・衝撃が加わるおそれのある状態にあり、そのようなパレット等の対象物に取り付けられて用いられるRFタグの場合、外力が加わることによって容易に脱落や損傷・破壊等してしまうおそれがあった。
【0005】
このため、このような外力が加わり易い環境下で使用されるRFタグについては、より強固なカバーやケース,筐体などに収納することで、RFタグを物理的・機械的な衝撃等から保護することが行われている。
例えば、特許文献1には、汎用インレイを断面コ字形状の保護金属板の間に挟み込んで保護するようにしたRFIDタグが提案されている。
また、特許文献2には、通信周波数の異なる複数のタグを内蔵したタグブロックを、耐衝撃性を有する厚みで形成した保護カバーで覆うようにICタグ保護構造が提案されている。
このように、特許文献1や特許文献2で提案されているのは、保護板や保護カバーによって保護することで、RFタグを周囲の環境から保護し、特に外部から加わる物理的・機械的な外力や衝撃,衝突等によっても、インレイが容易に故障や破損等しないように保護しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-204130号公報
【文献】特許第4982581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に提案されている技術では、RFタグの周囲を保護板や保護カバー,筐体等の保護金属で囲うことによって、RFタグ自体の物理的強度を強化することを意図するものであった。
すなわち、RFタグを覆う保護金属には、外部から衝撃等が加わることが前提とされており、保護金属に大きな衝撃が加わった場合、仮に筐体等が破壊・破損等されなかったとしても、内部のRFタグに衝撃や振動などが加わることは回避できず、そのような衝撃等によってRFタグに不具合が生じる可能性が有あった。
【0008】
また、そのような保護金属は、RFタグが取り付けられる対象物品や使用環境等に応じてカスタマイズされており、既存のRFタグ(汎用タグ)にそのまま適応することは困難な場合もあり、汎用性や拡張性の点でも問題があった。
これに対して、例えばパレットやスキッドに取り付けられるRFタグについては、RFタグをパレットの内部に格納・埋設することで回避しようとする提案もなされている。
【0009】
しかしながら、RFタグをパレット内部に格納等してしまう構造では、RFタグをパレットの外部から視認することが困難乃至不可能となり、RFタグの存在自体を確認できなくなるという問題が生じる。
例えば、RFタグをパレットの搭載面(デッキ)に埋設等した場合、パレットの側面からはRFタグの存在を視認できず、確認できるのは、非運搬時・非使用時のパレットの上面(又は下面)からのみであり、パレットの運搬中にはRFタグを視認・確認することはできなかった。
RFタグは、表面にバックアップ用のバーコードや二次元コードなどが付されることもあり、取り付けられた物品等の外部から視認できなくなると、そのようなバーコード等の読み取りもできなくなってしまう。
【0010】
また、RFタグをパレット内部に埋設等する構造では、上述した引用文献1や引用文献2の場合と同様、パレットに外力が加わると、パレットに接触しているRFタグには逃げがなくなり、特に大きな力が加わることで故障・破壊等が生じるおそれがあった。
また、RFタグをパレットの内部に格納等してしまうと、タグの交換や再度の取り付けを行うにも手間がかかるという問題もあった。
さらに、パレットが金属製パレットの場合には、RFタグをパレット内部に埋め込むと、RFタグの通信自体が行えなくなるという根本的な問題も生じてしまう。
【0011】
本発明は、上記のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、特殊な保護構造や物品内部への格納・埋設構造等を必要とすることなく、物品に加わる外力がRFタグに影響を及ぼすことを可能な限り回避・低減することができ、RFタグの物品外部からの視認性や通信性能を損なうこともないRFタグガード構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、物品の個品管理を目的とするRFタグを物理的衝撃から保護するために設けられるガード構造であって、前記RFタグを装着する装着部と、前記装着部に装着された前記RFタグの偏波方向に対して垂直方向に延びる、少なくとも一つの金属製ガードと、を有し、前記金属製ガードは、前記RFタグの前方に設置されるとともに、前記金属製ガードによる前記RFタグに対する電波減衰率が50%以内である構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特殊な保護構造や物品内部への格納・埋設構造等を必要とすることなく、物品に加わる外力がRFタグに影響を及ぼすことを可能な限り回避・低減することができる。また、RFタグの物品外部からの視認性や通信性能を損なうこともなくなる。
したがって、本発明によれば、外部から物理的な力や衝撃が加わることの多いパレットやスキッド等に用いられるRFタグに好適な保護構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1(a)(b)】本発明の一実施形態に係るRFタグガード構造について、(a)は対象物品となるパレットの使用状態を示す説明図、(b)はパレットの外観斜図である。
【
図1(c)(d)】本発明の一実施形態に係るRFタグガード構造について、(c)はパレットの装着部に装着された個体識別体の外観図、(d)は対象製品となるカゴ付きの金属製パレットの外観斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るRFタグガード構造を模式的に示す側面図及び正面図であり、(a)及び(b)はガード構造に備えられる金属製ガードが一本の場合、(c)及び(d)は同じく金属製ガードが二本の場合を示している。
【
図3】本発明の一実施形態に係るRFタグガード構想に外力が加わった場合の動作を模式的に示す側面図である。
【
図4】金属製ガードの形態とRFタグの通信特性の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るRFタグガード構造の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るRFタグガード構造について、(a)は対象物品となるパレットの使用状態を示す説明図、(b)はパレットの外観斜図、(c)はパレットの装着部に装着されたRFタグの外観図である。
図2は、本実施形態に係るRFタグガード構造を模式的に示す側面図及び正面図であり、(a)及び(b)はガード構造に備えられる金属製ガードが一本の場合、(c)及び(d)は同じく金属製ガードが二本の場合を示している。
【0016】
これらの図に示すように、本実施形態に係るRFタグガード構造は、対象物品となるパレット10の個品管理を目的とするRFタグ20を物理的衝撃から保護するために設けられるガード構造となっている。
具体的には、RFタグガード構造は、RFタグ20を装着する装着部11と、装着部11に装着されたRFタグ20の偏波方向に対して垂直方向に延びる、少なくとも一つの金属製ガード12とを備えた構成となっており、金属製ガード12が、装着部11に装着・配置されたRFタグ20の前方に設置されるようになっている。
【0017】
これによって、RFタグ20の前方から、例えばフォークリフト100の爪100a(
図3参照)などの異物が接近・進入してきた場合にも、異物は金属製ガード12に当接することでそれ以上の進入が阻止され、RFタグ20に直接的に物理的衝撃が加わることが防止されるようになる。
さらに、金属製ガード12は、金属製ガード12によるRFタグ20に対する電波減衰率が50%以内となるように、設置位置及び大きさ等が設定されるようになっている。これによって、金属製ガード12がRFタグ20の前方に配置されることによっても、RFタグ20の通信特性が阻害されず、良好な無線通信が行えるようになっている。
以下、各部を詳細に説明する。
【0018】
[パレット]
パレット10は、スキッドとも呼ばれる、運搬対象となる物や荷物を搭載して運搬・搬送される際に使用される荷役台であり、本発明の適用対象となるRFタグ20が取り付けられる物品を構成している。
具体的には、パレット10は、
図1(a)及び(b)に示すように、運搬対象物を搭載可能な搭載面となる矩形状の上面デッキ10a及び下面デッキ10bと、上下面デッキ10a,10bの間にフォークリフト100の爪100a(
図3参照)が挿入される空間を形成する複数の桁10cを備えており、複数の各桁10cの間にフォークリフト100の爪100aが挿入されて、使用・運搬されるようになっている。
【0019】
上下面デッキ10a,10bは、いずれを搭載面として使用できるように同形・同大に形成され、また、パレット10を上下方向に重ねて積層できるようになっている。
桁10cは、パレット10の側面の二方向又は四方向からフォークリフト100の爪100aが挿入可能な空間を形成している。
このようなパレット10は、木製,合成樹脂製,金属製などがあり、耐久性などの面からは金属製パレットが好適に使用される。本実施形態のパレット10も、金属製パレットが用いられることを想定している。また、
図1(d)に示すような、搭載物の転落防止などのためのカゴ付きの金属製パレット200が用いられることもある。
そして、本実施形態では、パレット10(200)の側面の所定位置に、RFタグ20を取り付けるための装着部11が備えられるようになっている。
【0020】
[装着部]
装着部11は、RFタグ20が装着される装着領域であり、本実施形態では、
図1(b)に示すように、フォークリフト100の爪100aが挿入されることを想定していない(挿入される可能性の低い)、パレット10の側面のほぼ中心において、上下面デッキ10a,10bの間の空間を利用して構成されるようになっている。
ここで、装着部11は、パレット10の4方向の側面の少なくとも一つの側面に設けることができ(
図1(b)参照)、必要に応じて、パレット10の任意の複数の側面に設けることもできる。また、パレット10の同一側面において、複数の装着部11を設けることも可能である。
【0021】
このような装着部11を備えることによって、RFタグ20は、パレット10の上下面デッキ10a,10bの内部に格納,埋設等されることなく、また、特別な保護構造等を必要とすることなく、パレット10に装着・取り付けることができる。
また、装着部11は、RFタグ20の偏波方向に沿った方向となるように、例えば水平偏波の場合は、RFタグ20の長手方向が水平方向に沿って配置可能な大きさを有している。
RFタグ20は、後述するように、ICチップとループ回路部及びアンテナを有する構成となっており、例えば水平偏波の場合は、ICチップの左右両側(又は片側)に伸びるアンテナの長手方向がRFタグ20の偏波方向となる。そして、この偏波方向が水平方向となるようにRFタグ20を装着部11内において配置することにより、後述する金属製ガード12を、RFタグ20の偏波方向と交差(直交)する垂直方向に延びるように設置させることができる。
【0022】
そして、このような装着部11に装着されたRFタグ20は、
図1(b)及び(c)に示すように、パレット10の側面から視認可能な状態で装着部11に配置されるようになる。
これによって、RFタグ20は、パレット10の外部から一目でその存在を視認・確認できるように、RFタグ20にバックアップ用のバーコードや二次元コード等がある場合にもそれらを容易かつ確実に読み取り等することができ、さらに、RFタグ20の着脱・交換等も容易に行えるようになる。
【0023】
また、装着部11に装着・配置されるRFタグ20は、パレット10の外周面より内部に納まるように装着部11に配置されるようになっている(
図2参照)。
このような構成により、装着部11に装着されたRFタグは、パレット10の上下面デッキ10a,10bの外縁よりもパレット内側に位置することになり、パレット10の上下方向からRFタグ20に対して他の物体等が接触したり衝突したりすることがなくなり、RFタグ20は装着部11の内部において確実に保護・ガードされることになる。
なお、装着部11に装着されるRFタグ20の配置位置は、パレット10の上下面デッキ10a,10bの外縁よりもパレット内側であって、上述したように、パレット10の外部からのRFタグ20の視認性や着脱性,バーコード等の読取性等が損なわれない適切な位置に配置される。例えば、パレット10の外周から約2~3cm程度パレット内側の位置にRFタグ20が配置されるようにすることが好ましい。
【0024】
[金属製ガード]
そして、上記のような装着部11の前方(パレット外周面側)に、金属製ガード12が備えられている。
具体的には、
図2に示すように、装着部11は、パレット10の上下面デッキ10a,10bの間の空間を使用して、少なくとも前方に開口した側面視コの字型(
図2(a)及び(b)参照)、又はL字型(
図2(c)及び(d)参照)のホルダ構造となっており、その前方に金属製ガード12が設置されるようになっている。
【0025】
図2(a)及び(b)に示す構造では、装着部11は、上下面デッキ10a,10bの間のパレット内部側の所定位置(例えばパレット10の外縁から数cm程度内側の位置)に、例えば板状の金属プレート等からなるホルダ10dが垂直に立設・架設された側面視コの字型に構成されている。
ホルダ10dは、上下面デッキ10a,10bの内面(底面及び上面)に例えば溶接等によって固定され、このホルダ10dの表面にRFタグ20が例えば接着剤やボルト止め等によって固定・装着されるようになっている。
【0026】
また、
図2(c)及び(d)に示す構造では、装着部11は、上面デッキ10aのパレット内部底面側の所定位置(例えばパレット10の外縁から数cm程度内側の位置)に、例えばL字形状の金属製プレート等からなるホルダ10eが垂直に垂設された側面視逆L字型に構成されている。
ホルダ10eは、上面デッキ10aの内面(底面)に例えば溶接等によって固定され、このホルダ10eの表面にRFタグ20が例えば接着剤やボルト止め等によって固定・装着されるようになっている。
【0027】
このように、装着部11は、RFタグ20を装着する対象物品となるパレット10の一部(上下面デッキ10a,10b)によって構成されるようになっている。
これによって、RFタグ20を物品(パレット10)に装着させるために、特別な構造等を必要とすることなく、パレット10が有する本質的な構造・構成を利用して、簡易かつ効率的にRFタグ20を装着するための装着部11を形成でき、また、物品の一部によって構成される装着部11は、脱落等のおそれもなく、信頼性の高いRFタグ20の保護構造を実現することができる。
【0028】
そして、このような装着部11の前方(パレット外周側)の開口の垂直方向に沿って金属製ガード12が配設され、例えば溶接等によって上下面デッキ10a,10bやホルダ10d,10eに一体的に接続・固定されるようになっている。
このような構成により、金属製ガード12は、装着部11に装着されたRFタグ20の偏波方向(水平方向)に対して垂直方向に延びる状態で配置され、RFタグ20の前方に、RFタグ20と非接触の状態で設置されるようになる。
このような垂直方向に延びる金属製ガード12によって、フォークリフト100の爪100aのように水平方向に一定の幅を有する異物が装着部11内に進入することを確実に防止・排除することができる。また、金属製ガード12はRFタグ20には非接触となるため、金属製ガード12が接触することによりRFタグ20の通信特性に影響を与えることもなくなる。
【0029】
また、金属製ガード12は、金属製ガード12が前方に存在することによって装着部11に装着されたRFタグ20の通信特性が阻害されないように、金属製ガード12によるRFタグ20に対する電波減衰率が50%以内となるように、設置位置や大きさ等が設定されるようになっている。
具体的には、金属製ガード12は、角柱状又は円柱状の棒状部材によって構成されるようになっている。このような棒状部材によって構成することで、金属製ガード12によってフォークリフト100の爪100aなどの異物が装着部11内に進入してRFタグ20に接触・衝突することを確実に防止しつつ、金属製ガード12によって覆われるRFタグ20の前方の面積を可能な限り小さくすることができる。
これによって、金属製ガード12に覆われてRFタグ20の通信特性が損なわれることを防止することができる。
【0030】
ここで、角柱状又は円柱状の棒状部材からなる金属製ガード12は、装着部11内に装着・配置されたRFタグ20の例えば偏波方向(水平方向)のほぼ中心に、1本又は2本以上の金属製ガード12を備えることができる。
棒状の金属製ガード12の数は、少なければ少ないほど、RFタグ20の前方に存在する金属製ガード12の面積(幅)が少なくなり、RFタグ20の通信特性上は好ましいことになる。
一方、金属製ガード12の数が多くなるほど、フォークリフト100の爪100aなどの異物を確実にガードすることができるようになる。
したがって、金属製ガード12の数や面積(幅)は、RFタグ20の形状や大きさ,通信特性、パレット10や装着部11の形状や大きさ等を勘案して、適切な数や面積となるように設定することができる。
【0031】
具体的には、一又は二以上の棒状部材で構成される金属製ガード12は、それぞれの金属製ガード12の幅が、RFタグ20の通信周波数の1/8波長以下となるように設定してある。
RFタグ20の前方に位置する金属製ガード12の幅が1/8波長以下であれば、金属製ガード12が存在することによっても、RFタグ20の無線通信が大きく損なわれることはなく、良好な通信特性を維持させることが可能となる(
図4参照)。
例えばRFタグ20の通信周波数が920MHzの場合には、λ≒326.0mm,λ/8≒40.75mmとなる(λは波長を表す)。したがって、金属製ガード12の水平方向(偏波方向)の幅が、最大でも40.75mm前後となるように、その範囲内において金属製ガード12の数及び幅を設定することが好ましい。
【0032】
さらに、金属製ガード12は、RFタグ20に備えられるループ回路部の全部を覆わない位置と大きさに設定される。
RFタグ20は、後述するように、ICチップとループ回路部及びアンテナを有する構成となっており、ICチップをループ状に取り囲むループ回路部は、ICチップのインピーダンスマッチングを行う回路となっている。
このループ回路部が金属によって覆われてしまうと、インピーダンス整合が阻害されたRFタグ20の通信特性が損なわれる場合がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、RFタグ20の前方に位置する金属となる金属製ガード12が、RFタグ20に備えられるループ回路部を完全に覆ってしまわないように、RFタグ20のループ回路部の少なくとも一部の前方には金属製ガード12が存在しないように、金属製ガード12の位置と面積(幅),数などを設定するようにしている。
これによって、RFタグ20のループ回路部のインピーダンスマッチング機能を損なうことなく、金属製ガード12によるRFタグ20の保護・ガードを確実に行えるようにすることができる。
そして、以上のような金属製ガード12の形状や数,面積(幅)を適切に設定することにより、金属製ガード12によるRFタグ20に対する電波減衰率が50%以内となるようにすることができる。
【0034】
なお、金属製ガード12は、上述した幅や配置位置の条件を満たすことで、RFタグ20に対する電波減衰率が50%以内となるようにできれば、上記のような形態のみに限定されず、例えば、棒状の金属製ガード12に代えて、板状の金属製ガード12を用いることもできる(
図4(c)参照)。
この場合、金属プレート等の板状部材によって金属製ガード12を形成し、その板状の金属製ガード12の幅が、RFタグ20の通信周波数の1/8波長以下となるようにし、かつ、板状の金属製ガード12によってRFタグ20のループ回路部の全部を覆わないようにすれば、上述した棒状部材からなる金属製ガード12と同様に機能させることができる。また、そのような金属製ガード12を構成する板状部材には、適宜スリットやメッシュ孔等を設けることもできる。
以上のようなRFタグ20の通信特性及び金属製ガード12による電波減衰率については、
図4を参照しつつ後述する。
【0035】
[RFタグ]
上記のような装着部11に金属製ガード12と非接触に配置・装着されるRFタグ20は、リーダ・ライタ(読取・書込装置)との間で無線による所定の情報の読み取りや書き込み,読み書きが行われるRFタグを構成しており、例えばリードオンリー型,ライトワンス型,リード・ライト型等の種類がある。
具体的には、RFタグ20は、ICチップと、ICチップが搭載されるループ回路部と、ループ回路部の両側又は片側に伸びるアンテナ(ダイポールアンテナやモノポールアンテナ)を備えたインレイと、インレイを収納するケース・筐体などで構成されている。
【0036】
ここで、RFタグ20が備えるICチップは、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百ビット~数キロビットのデータが記録可能となっている。
ICチップには、アンテナが接続され、アンテナの一部がチップ周囲を囲むようにループ状の回路導体として接続されてループ回路部を構成しており、ループ回路部を経由して、ICチップの左右両側や片側にアンテナが接続されている。
そして、ループ回路部によってICチップのインピーダンス整合が図られつつ、アンテナを介して図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップに記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップに記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
【0037】
また、RFタグ20で使用される通信周波数帯としては、所謂UHF帯又はマイクロ波帯に属する、例えば860~960MHz帯を対象とすることができる。
一般にRFタグで使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、UHF帯に属する860~960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長などや配線パターンが異なってくる。
【0038】
例えば、取付対象となるパレット10の邪魔とならず、大きな設置スペース(装着部11)も必要ないよう小型化されたRFタグ20であれば、波長が短くアンテナが小型化できるUHF帯を対象とすることができ、例えば860MHz帯や920MHz帯を対象とすることができ、これらの周波数帯において良好な通信特性が得られるような取付構造を採用することが可能となる。
但し、RFタグ20の大きさの制約等がなければ、本発明に係る技術思想自体は、RFタグ20の通信周波数は、特定の周波数帯に限定されるものではなく、例えばUHF帯以外の任意の周波数帯域についても適用できることは勿論である。
【0039】
そして、以上のようなRFタグ20が、パレット10の装着部11に対して、偏波方向が水平方向となるように配置・装着され、その前方に金属製ガード12が配置されることで、RFタグ20は外力が加わることから保護・ガードされることになる。
なお、RFタグ20自体は、具体的な構成や構造・機能等については、特に限定されるものではない。
例えば、既存の汎用タグや、特定の製品・用途などにカスタマイズされた専用タグなど、任意のものを対象とすることができ、その構成や形状・大きさ・機能などはどのようなものであっても、本実施形態に係るRFタグ20として採用することができる。
すなわち、無線通信可能なRFタグとして動作・機能するものであれば、本実施形態のRFタグ20として適用することができる。
【0040】
また、RFタグ20には、例えばインレイを収納した筐体の表面などに、バックアップ用のバーコードや二次元コードが付されることがある。このようなバーコード,二次元コードは、RFタグ20とともに個体識別体を構成することができる。
したがって、本発明に係るRFタグ20は、バーコード又は二次元コードのいずれか一方又は双方を備える構成とすることができる。
【0041】
[通信特性]
次に、以上のような構成からなる本実施形態に係るRFタグガード構造によってガードされたRFタグ20の通信特性について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態における金属製ガード12の形態とRFタグの通信特性の関係を示す説明図である。
なお、RFタグ20の通信特性の評価は、公知の評価方法・評価システムを用いることができ、以下に示す本実施形態の評価は、評価システムとして、Voyantic社のTagformanceシステムを用いて実施した。
また、評価は、通信距離を直接測定するのではなく、一定距離においたときに、電波強度から換算した値によって行った。
【0042】
図4に示すグラフは、装着部11に装着されたRFタグ20の前方に位置する金属製ガード12の形態を変更させた場合であり、実線は、金属製ガード12を設けない場合、破線は、直径10mmの丸棒形状の金属製ガード12をRFタグ20の前方の中心に均等に配置させた場合、一点鎖線は、幅がRFタグ20の通信周波数のほぼ1/8波長分の長さの板状の金属製ガード12をRFタグ20の前方の左半分側を覆うように配置させた場合、点線は、金属製ガード12に相当する棒状の金属部材をRFタグ20の偏波方向と平行な水平方向に配置させた場合である。
【0043】
これらのグラフに示すように、まず、破線で示す丸棒2本の金属製ガード12の場合には、金属製ガード12の幅の合計はRFタグ20の通信周波数の1/8波長分の長さを大きく下回る数mmの長さであり、RFタグ20のループ回路部も金属製ガード12によって全部が覆われることなく大きく露出しており、その結果、実線で示す金属製ガード12を設けていない場合とほぼ同様の通信特性が得られていることが分かる。特に、860~900MHz帯と、960~980MHz帯において、長い通信距離が得られていることが分かる。
このグラフから、960~980MHz帯においては、通信距離が約7mとなっており、970MHz帯において、通信距離のピーク(7m以上)となっていることが分かる。
【0044】
また、一点鎖線で示す幅1/8波長の板状部材からなる金属製ガード12の場合にも、RFタグ20のループ回路部の全てが覆われることはなく、丸棒2本の金属製ガード12よりは若干通信距離が短くなっているものの、金属製ガード12を設けていない場合とほぼ同様の通信特性が得られており、電波減衰率が50%以内であることが分かる。
これに対して、点線で示す金属製ガード12に相当する棒状の金属部材をRFタグ20の偏波方向に沿って水平に配置させた場合では、RFタグ20の通信特性は大きく損なわれ、通信距離は880~960MHz帯において1m以下、980MHz帯において2m以下となっており、電波減衰率が50%以上を大きく上回っていることが分かる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るRFタグガード構造によれば、まず、パレット10の装着部11に装着されたRFタグ20は、装着部11の前方に備えられた金属製ガード12によってガードされ、フォークリフト100の爪100aなどの異物が、装着部11内に進入したり、RFタグ20に接触・当接することが排除される。
したがって、RFタグ20を装着したパレット10の装着部11の近傍等に物理的な外力が加わったとしても、その物理的な外力がRFタグ20に直接的に影響を及ぼすことはなく、RFタグ20に衝撃が加わることを回避乃至低減させることができるようになる。
【0046】
また、RFタグ20は、パレット10の少なくとも一つの側面から視認可能に装着部11に配置されるため、パレット10の外部から一目でその存在を視認・確認でき、RFタグ20にバックアップ用のバーコード等が備えられる場合にも読み取り等が簡単に行え、さらに、RFタグ20の着脱・交換等も容易に行えるようになる。また、パレット10の外周面近傍に配置されるRFタグ20は、パレット10が金属製の場合であっても、また、金属製ガード12が前方に存在していても、通信特性が阻害されることはなく、円滑・良好な無線通信が行えるようになる。
さらに、装着部11内に装着・配置されたRFタグ20は、パレット10の外周面より内部に納まるように装着部11に配置されるため、パレット10の上下方向からRFタグ20に物体等が接触・衝突することが防止され、RFタグ20は装着部11の内部において確実にガードされるようになる。
【0047】
このように、本発明によれば、特殊な保護構造や物品内部への格納・埋設構造等を必要とすることなく、物品に加わる外力がRFタグに影響を及ぼすことを可能な限り回避・低減することができる。また、RFタグの物品外部からの視認性や通信性能を損なうこともなくなる。
したがって、例えば運搬用のパレットやスキッド、貨物用のコンテナ,カゴ台車,カートラックなどのように、特に外部から物理的な力や衝撃が加わることの多い対象物等に装着されるRFタグ等の取り付け方法・取り付け構造に好適に適用することができる。
【0048】
以上、本発明のRFタグについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るRFタグは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るRFタグを使用する物品として、運搬用,貨物用などに使用されるパレットを例示しているが、本発明のRFタグを装着して使用できる物品,対象物としては、パレットに限定されるものではない。
すなわち、RFタグが装着されて、リーダ・ライタを介して所定の情報・データが読み書きされて管理等される物品,対象物であれば、どのような物品・対象物であっても本発明に係る取り付け方法や取り付け構造を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば貨物用のパレットやコンテナなど、任意の物品や対象物に取り付けられて使用される、耐久性や耐衝撃性等を高めるためにRFタグの取付方法・取付構造として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 パレット
11 装着部
12 金属製ガード
20 RFタグ
100 フォークリフト
200 カゴ付き金属製パレット