IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コマツ産機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-プレスブレーキ 図1
  • 特許-プレスブレーキ 図2
  • 特許-プレスブレーキ 図3
  • 特許-プレスブレーキ 図4
  • 特許-プレスブレーキ 図5
  • 特許-プレスブレーキ 図6
  • 特許-プレスブレーキ 図7
  • 特許-プレスブレーキ 図8
  • 特許-プレスブレーキ 図9
  • 特許-プレスブレーキ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】プレスブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20221202BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B21D5/02 S
B21D5/02 M
B30B15/00 C
B30B15/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018247724
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104166
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小島 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 義博
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-122024(JP,A)
【文献】特開昭56-131100(JP,A)
【文献】特開2018-126743(JP,A)
【文献】特開2017-006958(JP,A)
【文献】特開2004-058152(JP,A)
【文献】特開2007-7702(JP,A)
【文献】特開2003-123565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイとパンチとが装着され、前記ダイと前記パンチとによってワークを曲げ加工するプレスブレーキであって、
前記ダイが取り付けられるテーブルと、
前記パンチが取り付けられるラムと、
前記パンチが前記ダイに向かって移動する近接方向と、前記パンチが前記ダイから離れる開離方向とに、前記ラムを移動させる駆動装置と、
前記ラムの移動を開始させるためにオペレータによって操作されるスイッチと、
前記駆動装置を制御するコントローラと、
前記ダイと前記パンチとの間における物体の存在を検出するセンサと、
前記センサによる安全機能の有効と無効とを選択的に設定する設定装置と、
を備え、
前記コントローラは、
前記安全機能の無効が選択されているときには、第1モードにて前記駆動装置を制御し、
前記スイッチの操作に応じて、前記ラムを前記近接方向へ移動させ、
前記第1モードでは、前記スイッチの操作に関わらず所定の一時停止位置で前記ラムを停止させ、前記スイッチの再操作に応じて、前記ラムの移動を再開する、
プレスブレーキ。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記安全機能の有効が選択されているときには、第2モードにて前記駆動装置を制御し、
前記第2モードでは、前記スイッチの操作に応じて、前記接近方向へ前記ラムを所定の速度切換位置まで所定の第1速度で移動させ、前記速度切換位置から前記接近方向へ前記ラムを前記第1速度より遅い第2速度で移動させる、
請求項に記載のプレスブレーキ。
【請求項3】
前記一時停止位置は、前記開離方向に前記速度切換位置から離れた位置である、
請求項に記載のプレスブレーキ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第2モードでは、前記センサによって前記物体が検出されると、前記ラムを減速、或いは停止させる、
請求項2又は3に記載のプレスブレーキ。
【請求項5】
前記ダイ及び前記パンチの形状と、前記ワークの厚さとを含むデータを記憶する記憶装置をさらに備え、
前記コントローラは、
前記データから前記速度切換位置を決定し、
前記データから反転位置を決定し、前記反転位置は、前記ラムの移動方向が前記近接方向から前記開離方向に転ずる位置であり、
前記速度切換位置は、前記開離方向に前記反転位置から離れた位置である、
請求項2から4のいずれかに記載のプレスブレーキ。
【請求項6】
前記コントローラは、前記スイッチの再操作に応じて、前記一時停止位置から前記速度切換位置まで、前記ラムを第3速度で移動させ、
前記第3速度は、前記第2速度よりも速い、
請求項2から5のいずれかに記載のプレスブレーキ。
【請求項7】
ダイとパンチとが装着され、前記ダイと前記パンチとによってワークを曲げ加工するプレスブレーキであって、
前記ダイが取り付けられるテーブルと、
前記パンチが取り付けられるラムと、
前記パンチが前記ダイに向かって移動する近接方向と、前記パンチが前記ダイから離れる開離方向とに、前記ラムを移動させる駆動装置と、
前記ラムの移動を開始させるためにオペレータによって操作されるスイッチと、
前記駆動装置を制御するコントローラと、
を備え、
前記スイッチは、非踏み込み位置を含む第1範囲と、最大踏み込み位置を含む第2範囲と、前記第1範囲と前記第2範囲との間の中間範囲とに操作可能であり、
前記コントローラは、前記スイッチの操作に応じて、前記ラムを前記近接方向へ移動させ、前記スイッチの操作に関わらず所定の一時停止位置で前記ラムを停止させ、前記スイッチの再操作に応じて、前記ラムの移動を再開し、
前記スイッチの操作が解除された後、前記スイッチの操作位置が前記中間範囲内であるときに、前記ラムの移動を再開する、
プレスブレーキ。
【請求項8】
前記一時停止位置は、前記パンチと前記ワークとの間の距離が25mm以上となる位置である、
請求項1から7のいずれかに記載のプレスブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、ラムとテーブルとを備えている。ラムには、パンチが取り付けられる。テーブルには、ダイが取り付けられる。ダイとパンチとによって、ワークが加圧されることで、ワークが曲げられる。詳細には、プレスブレーキによる曲げ作業は、以下の手順で行われる。
【0003】
まず、オペレータが、ダイ上に、ワークを載置する。オペレータがフートスイッチを踏むと、ラムが下降を開始する。ラムは、速度切換位置まで、高速で下降する。速度切換位置は、パンチがワークに接触する直前の位置であり、例えばワークの2~3mm上方の位置である。ラムは、速度切換位置から低速で下降する。それにより、パンチは、ワークを加圧しながら曲げる。ラムが下限位置まで達すると、ラムは高速で上昇して、上限位置で止まる。それにより、一連の曲げ作業が完了する。
【0004】
近年、プレスブレーキにおいて、安全装置が用いられている。例えば、特許文献1のプレスブレーキは、レーザー式の安全装置を備えている。この安全装置は、投光器と受光器とを備えている。投光器と受光器とは、ラムの両端に、それぞれ取り付けられている。投光器と受光器とは、パンチの刃先の下方に、パンチの刃先と平行に、複数のレーザー光を走らせる。レーザー光が遮られると、ラムの下降が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-189800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したレーザー式の安全装置は、レーザー光が遮られることで、ラムの下降が停止する。しかし、箱曲げと呼ばれる曲げ作業においては、曲がったワークの一部がパンチの側方に配置される。そのため、レーザー光が、曲がったワークの一部によって遮られる場合がある。それにより、ラムの下降が停止してしまう。
【0007】
従って、箱曲げのような作業では、安全装置を無効化して、ラムの下降速度を低速にして、曲げ作業を行うことになる。しかし、この場合、作業性が低下してしまう。
【0008】
本発明は、プレスブレーキにおいて、安全性と作業性とを共に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係るプレスブレーキは、テーブルと、ラムと、駆動装置と、スイッチと、コントローラとを備える。テーブルには、ダイが取り付けられる。ラムには、パンチが取り付けられる。駆動装置は、近接方向と開離方向とにラムを移動させる。近接方向は、パンチがダイに向かって移動する方向である。開離方向は、パンチがダイから離れる方向である。スイッチは、ラムの移動を開始させるためにオペレータによって操作されるスイッチである。コントローラは、駆動装置を制御する。コントローラは、スイッチの操作に応じて、ラムを近接方向へ移動させる。コントローラは、スイッチの操作に関わらず所定の一時停止位置でラムを停止させる。コントローラは、スイッチの再操作に応じて、ラムの移動を再開する。
【0010】
本態様に係るプレスブレーキでは、スイッチの操作に関らず、一時停止位置でラムが停止する。従って、一時停止位置まで高速でラムを移動させても、安全性を向上させることができる。それにより、安全性と作業性とを共に向上させることができる。
【0011】
プレスブレーキは、センサと設定装置とをさらに備えてもよい。センサは、ダイとパンチとの間における物体の存在を検出してもよい。設定装置は、センサによる安全機能の有効と無効とを選択的に設定してもよい。コントローラは、安全機能の無効が選択されているときには、第1モードにて駆動装置を制御してもよい。コントローラは、第1モードでは、スイッチの操作に関わらず一時停止位置でラムを停止させ、スイッチの再操作に応じて、ラムの移動を再開してもよい。この場合、安全機能の無効が選択されても、安全性と作業性とを共に向上させることができる。
【0012】
コントローラは、安全機能の有効が選択されているときには、第2モードにて駆動装置を制御してもよい。コントローラは、第2モードでは、スイッチの操作に応じて、接近方向へラムを所定の速度切換位置まで所定の第1速度で移動させてもよい。コントローラは、速度切換位置から接近方向へラムを第2速度で移動させてもよい。第2速度は、第1速度より遅くてもよい。この場合、安全性と作業性とをさらに向上させることができる。
【0013】
一時停止位置は、開離方向に速度切換位置から離れた位置であってもよい。この場合、安全性をさらに向上させることができる。
【0014】
コントローラは、第2モードでは、センサによって物体が検出されると、ラムを減速、或いは停止させてもよい。この場合、安全性をさらに向上させることができる。
【0015】
プレスブレーキは、記憶装置をさらに備えてもよい。記憶装置は、ダイ及びパンチの形状と、ワークの厚さとを含むデータを記憶していてもよい。コントローラは、データから速度切換位置を決定してもよい。コントローラは、データから反転位置を決定してもよい。反転位置は、ラムの移動方向が近接方向から開離方向に転ずる位置であってもよい。速度切換位置は、開離方向に反転位置から離れた位置であってもよい。
【0016】
コントローラは、スイッチの再操作に応じて、一時停止位置から速度切換位置まで、ラムを第3速度で移動させてもよい。第3速度は、第2速度よりも速くてもよい。この場合、作業性をさらに向上させることができる。
【0017】
一時停止位置は、パンチとワークとの間の距離が25mm以上となる位置である。この場合、安全性をさらに向上させることができる。
【0018】
スイッチは、第1範囲と第2範囲と中間範囲とに操作可能であってもよい。第1範囲は、非踏み込み位置を含んでもよい。第2範囲は、最大踏み込み位置を含んでもよい。中間範囲は、第1範囲と第2範囲との間の範囲であってもよい。コントローラは、スイッチの操作が解除された後、スイッチの操作位置が中間範囲内であるときに、ラムの移動を再開してもよい。この場合、ラムが一時停止位置で停止しているときに、オペレータがスイッチから一旦足を外して、再び中間位置に踏み込んだときに、ラムの移動が再開される。それにより、安全性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プレスブレーキにおいて、安全性と作業性とを共に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るプレスブレーキの正面図である。
図2】ダイとパンチとの一例を示す側面図である。
図3】スイッチの構成を示す模式図である。
図4】設定装置の構成を示す模式図である。
図5】第1安全モードにおける処理を示すフローチャートである。
図6】第1安全モードでのラムの位置の変化を示すタイミングチャートである。
図7】ラムの位置に応じたパンチの刃先の位置を示す図である。
図8】第2安全モードにおける処理を示すフローチャートである。
図9】第2安全モードにおける処理を示すフローチャートである。
図10】第2安全モードでのラムの位置の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、実施形態に係るプレスブレーキについて説明する。図1は、実施形態に係るプレスブレーキ1の正面図である。プレスブレーキ1は、パンチ2とダイ3によって板状のワークWを曲げ加工する装置である。プレスブレーキ1は、フレーム10と、テーブル11と、ラム12と、駆動装置13とを含む。
【0022】
フレーム10は、テーブル11を固定的に支持している。フレーム10は、ラム12を上下に移動可能に支持している。テーブル11には、ダイ3が装着可能である。ラム12には、パンチ2が装着可能である。ダイ3とパンチ2とは互いに向かい合って配置される。
【0023】
駆動装置13は、ラム12を近接方向と開離方向とに移動させる。近接方向は、パンチ2がダイ3に向かって移動する方向である。開離方向は、パンチ2がダイ3から離れる方向である。本実施形態では、近接方向は下方である。開離方向は上方である。従って、以下の説明において、「下方」は、「近接方向」と読み替えられてもよい。「上方」は、「開離方向」と読み替えられてもよい。
【0024】
本実施形態では、ラム12が下方に移動することで、パンチ2がダイ3に向かって移動する。そして、パンチ2がワークWをダイ3に向かって押圧することで、ワークWに対して曲げ加工が行われる。また、ラム12が上方に移動することで、パンチ2がダイ3から離れる。
【0025】
図2は、ダイ3とパンチ2との一例を示す図である。図2に示すように、パンチ2は、刃先2aを含む。パンチ2は、刃先2aに向かってテーパしたV字形状を有している。ダイ3は、下方に向かって凹んだV溝3aを有している。パンチ2の刃先2aが、ダイ3のV溝3aに向かってワークWを押圧する。それにより、ワークWが、破線で示すワークW’のように、折り曲げられる。
【0026】
駆動装置13は、例えば、サーボモータと油圧ポンプと油圧シリンダとを含む。サーボモータによって油圧ポンプが駆動される。油圧ポンプから吐出された作動油によって、油圧シリンダが伸縮する。油圧シリンダが伸縮することで、ラム12が昇降する。ただし、駆動装置13の構成は、これに限らず、変更されてもよい。例えば、駆動装置13は、ラム12は、電動モータによって駆動されてもよい。
【0027】
プレスブレーキ1は、位置センサ14と、スイッチ15と、物体センサ16と、制御盤17とを含む。位置センサ14は、ラム12の位置を検出する。位置センサ14は、ラム12の位置を示す信号を出力する。
【0028】
スイッチ15は、ラム12の移動を開始させるためにオペレータによって操作される。スイッチ15は、足によって操作されるフートスイッチである。図3は、スイッチ15の構成を示す模式図である。スイッチ15は、第1範囲A1と第2範囲A2と中間範囲A3とに操作可能である。第1範囲A1は、非踏み込み位置を含む所定の範囲である。第2範囲A2は、最大踏み込み位置を含む所定の範囲である。中間範囲A3は、第1範囲A1と第2範囲A2との間の範囲である。スイッチ15は、スイッチ15の操作状態を示す信号を出力する。
【0029】
物体センサ16は、ダイ3とパンチ2との間における物体の存在を検出する。物体センサ16は、光学式のセンサであって、光によって物体を検出する。例えば、物体センサ16は、レーザー式の物体検出センサである。詳細には、物体センサ16は、投光器18と受光器19とを含む。投光器18と受光器19とは、プレスブレーキ1の左右方向に互いに向かい合って配置されている。投光器18と受光器19とは、ラム12に取り付けられている。投光器18と受光器19とは、ラム12と共に上下に移動する。投光器18は、レーザー光を照射する。受光器19は、投光器18からのレーザー光を受光する。コントローラ22は、投光器18からのレーザー光が遮られることで、物体の存在を検出する。それにより、指等の物体がダイ3とパンチ2との間に存在することが検出される。
【0030】
制御盤17は、入力装置21とコントローラ22とを含む。入力装置21は、オペレータが入力データを入力するための装置である。入力データは、ワークデータと金型データとを含む。ワークデータは、ワークWの材質、及びワークWの厚さなどの情報を含む。金型データは、パンチ2及びダイ3の形状の情報を含む。詳細には、金型データは、パンチ2及びダイ3のV溝3aの幅及び角度、パンチ2の高さ、及びダイ3の高さなどの情報を含む。入力装置21は、例えば、物理的スイッチを含んでもよい。或いは、入力装置21は、タッチパネルを含んでもよい。入力装置21は、入力された情報を示す信号を出力する。
【0031】
制御盤17は、図4に示す設定装置23を含む。設定装置23は、物体センサ16による安全機能の有効と無効とを選択的に設定する。設定装置23は、オペレータによって操作可能なスイッチである。設定装置23は、物理的スイッチであってもよい。或いは、設定装置23は、タッチパネルに表示されるソフトウェアスイッチであってもよい。設定装置23は、選択された設定を示す信号を出力する。
【0032】
オペレータは、設定装置23によって、複数の設定を選択可能である。複数の設定は、「有効」と、「無効1」と、「無効2」とを含む。「無効2」が選択されると、コントローラ22は、第1モードにてラム12を制御する。「有効」が選択されると、コントローラ22は、第2モードにてラム12を制御する。「無効1」が選択されると、コントローラ22は、第3モードにてラム12を制御する。各モードについては、後に詳細に説明する。
【0033】
コントローラ22は、プレスブレーキ1を制御するようにプログラムされている。コントローラ22は、入力データに基づいて、ラム12を制御する。コントローラ22は、駆動装置13を制御することで、ラム12の移動を制御する。コントローラ22は、位置センサ14が検出したラム12の位置に基づいて、フィードバック制御によってラム12の移動を制御する。コントローラ22は、駆動装置13と通信可能に接続されている。コントローラ22は、位置センサ14、スイッチ15、物体センサ16、入力装置21、及び設定装置23と通信可能に接続されている。
【0034】
コントローラ22は、記憶装置24とプロセッサ25とを含む。記憶装置24は、例えばRAMなどの揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリとを含む。記憶装置24は、HDD、或いはSSDなどの補助記憶装置を含んでもよい。記憶装置24は、プレスブレーキ1を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。記憶装置24は、上述した入力データを記憶している。プロセッサ25は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、プログラムに従って、プレスブレーキ1を制御するための処理を実行する。
【0035】
第2モードでは、コントローラ22は、物体センサ16による安全機能を有効とする。図2において、B1-B9は、物体センサ16の光軸の位置を示している。図2に示すように、物体センサ16は、複数の光軸B1-B9を有している。複数の光軸B1-B9は、パンチ2の刃先2aの下方に位置する防護範囲C内に配置されている。防護範囲Cは、刃先2aから、刃先2aの下方の所定距離、離れた位置までの範囲である。
【0036】
防護範囲Cは、複数のゾーンC1-C3を含む。詳細には、防護範囲Cは、第1ゾーンC1と、第2ゾーンC2と、第3ゾーンC3とを含む。第1ゾーンC1は、刃先2aから最も離れている。第3ゾーンC3は刃先2aに最も近い。第2ゾーンC2は、第1ゾーンC1と第2ゾーンC2との間に位置である。ただし、ゾーンの数は、3つより多くてもよく、或いは3つより少なくてもよい。光軸B1-B3は、第1ゾーンC1に配置されている。光軸B4-B6は、第2ゾーンC2に配置されている。光軸B7-B9は、第3ゾーンC3に配置されている。
【0037】
パンチ2とダイ3との間に指などの物体が存在する場合、物体によって光軸B1-B9のいずれかが遮られる。物体センサ16が、光軸B1-B9のいずれかが遮られたことを検出すると、コントローラ22は、ラム12を停止する。
【0038】
また、コントローラ22は、ワークWの近傍のミュート範囲を記憶している。第1ゾーンC1の光軸B1-B3がミュート範囲内に入ると、コントローラ22は、第1ゾーンC1の光軸B1-B3による物体の検出を無効化する。第2ゾーンC2の光軸B4-B6がミュート範囲内に入ると、コントローラ22は、第2ゾーンC2の光軸B4-B6による物体の検出を無効化する。第3ゾーンC3の光軸B7-B9がミュート範囲内に入ると、コントローラ22は、第3ゾーンC3の光軸B7-B9による物体の検出を無効化する。それにより、物体センサ16によって、ワークWが、指等の物体として誤検出されることが防止される。
【0039】
以下、コントローラ22によって実行される処理について説明する。図5は、第2モードにおける処理を示すフローチャートである。図6は、第2モードでのラム12の位置の変化を示すタイミングチャートである。図7は、ラム12の位置に応じたパンチ2の刃先2aの位置を示す図である。なお、図5では、理解の容易のためにラム12の各位置を強調して表示している。そのため、図5及び図7における各位置の縮尺は必ずしも一致しない。図7と後述する図10とについても同様である。
【0040】
図5に示すように、コントローラ22は、ステップS101で、反転位置Pr1を決定する。コントローラ22は、入力データから、反転位置Pr1を算出する。図6に示すように、反転位置Pr1は、ラム12の移動方向が、下方から上方に転ずる位置である。本実施形態では、反転位置Pr1は、ラム12の移動の下限位置に相当する。反転位置Pr1は、接触位置Pr2よりも下方である。接触位置Pr2は、パンチ2の刃先2aがワークWに接触するときのラム12の位置である。図7において、Pp1は、ラム12が反転位置Pr1でのパンチ2の刃先2aの位置(以下、「反転位置Pp1」と記す)を示す。Pp2は、ラム12が接触位置Pr2でのパンチ2の刃先2aの位置(以下、「接触位置Pp2」と記す)を示す。図7に示すように、接触位置Pp2は、加工前のワークW上の位置である。
【0041】
ステップS102では、コントローラ22は、速度切換位置Pr3を決定する。コントローラ22は、入力データから、速度切換位置Pr3を算出する。図6に示すように、速度切換位置Pr3は、反転位置Pr1から上方に離れた位置である。速度切換位置Pr3は、接触位置Pr2よりも上方の位置である。図7において、Pp3は、ラム12が速度切換位置Pr3でのパンチ2の刃先2aの位置(以下、「速度切換位置Pp3」と記す)を示している。図7に示すように、速度切換位置Pp3は、曲げ加工前のワークWの上方に位置している。
【0042】
例えば、速度切換位置Pp3と接触位置Pp2との間隔d1は、2~3mmである。ただし、間隔d1は、これに限らず、変更されてもよい。間隔d1は、入力装置21によってオペレータが設定可能であってもよい。なお、ラム12の反転位置Pr1、接触位置Pr2、及び速度切換位置Pr3の位置関係は、パンチ2の刃先2aの反転位置Pp1、接触位置Pp2、及び速度切換位置Pp3の位置関係と同様である。
【0043】
ステップS103では、コントローラ22は、スイッチ15がオンされているかを判定する。コントローラ22は、スイッチ15が中間範囲A3内に維持されているときに、スイッチ15がオンされていると判定する。コントローラ22は、スイッチ15が第1範囲A1又は第2範囲A2に位置しているときには、スイッチ15がオンされていると判定しない。その場合、コントローラ22は、ラム12を移動させずに、上限位置Pr4に待機させる。スイッチ15がオンされているときには、処理は、ステップS104に進む。
【0044】
ステップS104では、コントローラ22は、ラム12を第1速度で下方に移動させる。第1速度は、作業性を向上させることができる程度の高い速度である。オペレーターがスイッチ15をオンに維持している間、ラム12は近接方向へ移動する。コントローラ22は、上限位置Pr4から速度切換位置Pr3まで、ラム12を第1速度で移動させる。
【0045】
ステップS105では、コントローラ22は、物体を検出したかを判定する。コントローラ22は、物体センサ16からの信号に基づいて、物体を検出したかを判定する。コントローラ22は、上述した防護範囲C内で物体が光軸B1-B9を遮ったときに、物体を検出したと判定する。防護範囲C内で物体が検出されたときには、処理は、ステップS106に進む。ステップS106では、コントローラ22は、ラム12を停止させる。
【0046】
ステップS105において物体が検出されないときには、処理は、ステップS107に進む。ステップS107では、コントローラ22は、速度切換位置Pr3に到達したかを判定する。ラム12が速度切換位置Pr3に到達したときには、処理は、ステップS108に進む。ステップS108では、コントローラ22は、ラム12を第2速度で下方に移動させる。コントローラ22は、速度切換位置Pr3から反転位置Pr1まで、ラム12を第2速度で移動させる。それにより、パンチ2の刃先2aが、加工前のワークWよりも下方の位置まで移動する。その結果、ワークWがパンチ2の刃先2aによって押圧されて、折り曲げられる。
【0047】
第2速度は、第1速度より遅い速度である。第2速度は、加工によるワークWの跳ね上げ等の動作を考慮した十分に遅い速度である。例えば、第1速度が約200mm/秒であり、第2速度は約10mm/秒である。ただし、第1速度と第2速度とはこれらの速度に限らず、変更されてもよい。
【0048】
ステップS109では、コントローラ22は、ラム12が反転位置Pr1に到達したかを判定する。ラム12が反転位置Pr1に到達したときには、処理はステップS110に進む。ステップS110では、コントローラ22は、ラム12を上方に移動させて、ラム12を上限位置Pr4に戻す。このとき、コントローラ22は、ラム12を第4速度で移動させる。第4速度は、第1速度と同様に、作業性を向上させることができる程度の高い速度である。第4速度は、第2速度よりも早い。第4速度は、第1速度と同じ速度であってもよい。第4速度は、第1速度と異なる速度であってもよい。
【0049】
その後、処理はステップS103に戻り、スイッチ15がオンされるたびに、ラム12の下降と、ワークWの折り曲げと、ワークWの上昇とが繰り返される。また、ラム12の移動中に、物体センサ16によって物体が検出されたときには、ワークWが停止される。
【0050】
次に、第1モードにおける処理について説明する。図8及び図9は、第1モードにおける処理を示すフローチャートである。図10は、第1モードでのラム12の位置の変化を示すタイミングチャートである。図8に示すように、ステップS201,S202は、上述したステップS101,S102と同様である。すなわち、コントローラ22は、入力データから、反転位置Pr1と速度切換位置Pr3とを決定する。
【0051】
ステップS203では、コントローラ22は、一時停止位置Pr5を決定する。図10に示すように、一時停止位置Pr5は、速度切換位置Pr3よりも上方の位置である。一時停止位置Pr5は、速度切換位置Pr3よりも上方に位置している。図7において、Pp5は、ラム12が一時停止位置Pr5でのパンチ2の刃先2aの位置(以下、「一時停止位置Pp5」と記す)を示している。
【0052】
図7に示すように、一時停止位置Pp5と速度切換位置Pp3との間の間隔d2は、速度切換位置Pp3と接触位置Pp2との間の間隔d1よりも大きい。一時停止位置Pp5と接触位置Pp2との間の距離は、25mm以上である。好ましくは、一時停止位置Pp5と接触位置Pp2との間の距離は、25mmである。ただし、一時停止位置Pp5と接触位置Pp2との間の距離は、これに限らず、変更されてもよい。例えば、一時停止位置Pp5と接触位置Pp2との間の距離は、25mm以上、且つ、30mm以下であってもよい。
【0053】
なお、ラム12の反転位置Pr1、接触位置Pr2、速度切換位置Pr3、上限位置Pr4、及び一時停止位置Pr5の位置関係は、パンチ2の刃先2aの反転位置Pp1、接触位置Pp2、速度切換位置Pp3、上限位置Pp4、及び一時停止位置Pp5の位置関係と同様である。
【0054】
ステップS204,S205は、上述したステップS103,S104と同様である。すなわち、コントローラ22は、スイッチ15がオンされたときに、ラム12を第1速度で下方に移動させる。
【0055】
ステップS206では、コントローラ22は、ラム12が一時停止位置Pr5に到達したかを判定する。コントローラ22は、ラム12が一時停止位置Pr5に到達するまで、ラム12を第1速度で移動させる。ラム12が一時停止位置Pr5に到達したときには、処理はステップS207に進む。ステップS207では、コントローラ22は、ラム12を一時停止位置Pr5で停止させる。
【0056】
ステップS208では、コントローラ22は、スイッチ15が再操作されたかを判定する。コントローラ22は、スイッチ15の操作が解除された後、スイッチ15の操作位置が中間範囲A3内であるときに、スイッチ15が再操作されたと判定する。スイッチ15が再操作されたときには、処理は、ステップS209に進む。スイッチ15が再操作されていないときには、コントローラ22は、ラム12を一時停止位置Pr5に保持する。
【0057】
ステップS209では、コントローラ22は、ラム12を第3速度で下方に移動させる。すなわち、コントローラ22は、スイッチ15の再操作に応じて、ラム12の移動を再開する。コントローラ22は、一時停止位置Pr5から速度切換位置Pr3まで、ラム12を第3速度で移動させる。第3速度は、第2速度よりも速い。第3速度は、第1速度と同じ速度であってもよい。或いは、第3速度は、第1速度より遅くてもよい。
【0058】
ステップS210~S213の処理は、上述したステップS107~S110の処理と同様である。すなわち、コントローラ22は、速度切換位置Pr3から反転位置Pr1まで、ラム12を第2速度で下方に移動させる。それにより、ワークWがパンチ2によって押圧されて折り曲げられる。そして、ラム12が反転位置Pr1に到達すると、コントローラ22は、ラム12を上方に移動させて、上限位置Pr4に戻す。
【0059】
その後、処理はステップS204に戻る。そして、スイッチ15がオンされると、上述した処理が再び実行される。なお、オペレーターがスイッチ15をオンに維持している間、ラム12は近接方向へ移動する。第1モードでは、コントローラ22は、オペレーターがスイッチ15をオンに維持していても、ラム12が一時停止位置Pr5に到達すると、ラム12を停止させる。コントローラ22は、スイッチ15が再操作されると、ラム12の移動を再開する。コントローラ22は、スイッチ15がオンに維持されている間、ラム12を移動させる。
【0060】
なお、第1モードにおいて、コントローラ22は、スイッチ15が1回、オンされると、ラム12を近接方向へ移動させ、ラム12が一時停止位置Pr5に達すると、ラム12の移動を停止させてもよい。さらに、スイッチ15が再度1回、オンされることで、コントローラ22は、ラム12の移動を再開させてもよい。
【0061】
第3モードでは、スイッチ15がオンされると、コントローラ22は、上限位置Pr4から反転位置Pr1まで、ラム12を第2速度で移動させる。このように、ラム12を十分に遅い速度で移動させる。そして、コントローラ22は、反転位置Pr1から上限位置Pr4まで、ラム12を第4速度で移動させる。
【0062】
以上説明した本実施形態に係るプレスブレーキ1では、設定装置23によって「無効1」が選択されているときには、第1モードにてプレスブレーキ1が制御される。第1モードでは、物体センサ16の検出結果に関らず、一時停止位置Pr5でラム12が停止する。従って、一時停止位置Pr5まで高速でラム12を移動させても、安全性を向上させることができる。その後、オペレータがスイッチ15の再操作を行うことで、ラム12が移動を再開する。このとき、物体センサ16による安全機能は無効とされているため、物体センサ16の誤検出を抑えることができる。
【0063】
コントローラ22は、スイッチ15の再操作に応じて、一時停止位置Pr5から速度切換位置Pr3まで、ラム12を第3速度で移動させる。第3速度は、第2速度よりも速い。そのため、作業性をさらに向上させることができる。
【0064】
コントローラ22は、スイッチ15の操作が解除された後、スイッチ15の操作位置が中間範囲A3内であるときに、ラム12の移動を再開する。そのため、ラム12が一時停止位置Pr5で停止しているときに、オペレータがスイッチ15から一旦足を外して、再び中間位置に踏み込んだときに、ラム12の移動が再開される。それにより、安全性をさらに向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
上記の実施形態では、プレスブレーキ1は、ラム12がテーブル11の上方に配置された所謂オーバードライブ式の装置である。しかし、プレスブレーキ1は、ラム12がテーブル11の下方に配置された所謂アンダードライブ式の装置であってもよい。
【0067】
パンチ2とダイ3との形状は上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。物体センサ16の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、物体センサ16は、レーザー以外の光を照射するものであってもよい。スイッチ15の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0068】
設定装置23の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。設定装置23は、制御盤17以外の場所に設けられてもよい。入力装置21の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。入力装置21は、制御盤17以外の場所に設けられてもよい。スイッチ15は、フートスイッチに限らず、他の種類のスイッチであってもよい。
【0069】
コントローラ22の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。コントローラ22は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。上述した第2モード、第1モード、及び第3モードの処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。
【0070】
上記の実施形態では、物体センサ16によって物体が検出されると、コントローラ22は、ラム12を停止させている。しかし、コントローラ22は、物体センサ16によって物体が検出されたときに、ラム12を減速させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、プレスブレーキにおいて、安全性と作業性とを共に向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
2 パンチ
3 ダイ
11 テーブル
12 ラム
13 駆動装置
15 スイッチ
16 物体センサ
22 コントローラ
23 設定装置
24 記憶装置
Pr1 反転位置
Pr3 速度切換位置
Pr5 一時停止位置
A1 第1範囲
A2 第2範囲
A3 中間範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10