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特許7186629ステップを固定するボルトの締結の状態を確認する安全装置および乗客コンベア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】ステップを固定するボルトの締結の状態を確認する安全装置および乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20221202BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B66B29/00 D
B66B31/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019017853
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020125183
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】陶山 拓未
(72)【発明者】
【氏名】瀬水 登
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一文
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-091755(JP,A)
【文献】実開昭61-200886(JP,U)
【文献】特開2010-143676(JP,A)
【文献】特開2009-091055(JP,A)
【文献】特開2011-148628(JP,A)
【文献】特開2002-068654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの循環移動するステップ軸にステップを固定するボルトの締結が十分なときに当該ボルトの先端が描く軌道の上において、複数の前記ボルトの通過を順次検出する検出部と、
前記検出部が複数の前記ボルトの通過を検出する時間間隔が予め設定された時間を超えるときに、前記ボルトの締結が不十分であることを判定する判定部と、
を備える安全装置。
【請求項2】
前記検出部は、
長手方向の第1端部および第2端部の間において支持軸に回転可能に支持され、前記第1端部が前記軌道の上に設けられる可動片と、
前記可動片の前記第2端部側に設けられ、前記軌道の上において前記ボルトが前記可動片の前記第1端部に接触するときに前記可動片の前記第2端部の変位によって状態が切り替えられるスイッチと、
を備え、
前記スイッチの前記状態の切替えによって当該ボルトの通過を検出する
請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記可動片に対して前記スイッチの反対側に設けられ、前記可動片を前記スイッチに押し付けるスプリング
を備える
請求項2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記軌道の上における前記ボルトの近接を非接触で検知する近接センサー
を備え、
前記近接センサーの近接の検知によって当該ボルトの通過を検出する
請求項1に記載の安全装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記軌道の上の前記ボルトとの距離を非接触で測定する距離センサー
を備え、
前記距離センサーが測定する距離によって当該ボルトの通過を検出する
請求項1に記載の安全装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の安全装置と、
前記ボルトの締結が不十分であると前記判定部が判定するときに、前記循環移動を停止させる制御盤と、
を備える乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全装置および乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗客コンベアのステップの例を開示する。ステップは、口金と、棒状体と、球状表示体と、確認窓と、を備える。ステップは、口金によってステップ軸に固定される。口金がボルトによって締結されると、棒状体は、押しつぶされて変形する。球状表示体は、変形した棒状体によって確認窓に押し付けられる。保守員は、球状表示体が押し付けられていることを確認窓から目視することで、ボルトの締結の状態を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-213957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される例において、保守員は、複数のステップの各々についてボルトの締結の状態を目視によって確認する。このため、保守員のミスなどにより、複数のステップのいずれかについてボルトの締結の状態の確認がされない可能性がある。このとき、乗客コンベアは、ボルトの締結が不十分なまま運転を継続する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ステップを固定するボルトの締結の状態を運転しながら確認する安全装置および乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る安全装置は、乗客コンベアの循環移動するステップ軸にステップを固定するボルトの締結が十分なときに当該ボルトの先端が描く軌道の上において、複数のボルトの通過を順次検出する検出部と、検出部が複数のボルトの通過を検出する時間間隔が予め設定された時間を超えるときに、ボルトの締結が不十分であると判定する判定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る乗客コンベアは、上記の安全装置と、ボルトの締結が不十分であると判定部が判定するときに、循環移動を停止させる制御盤と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安全装置は、検出部と、判定部と、を備える。検出部は、ボルトの締結が十分なときに当該ボルトの先端が描く軌道の上において、複数のボルトの通過を順次検出する。ボルトは、乗客コンベアの循環移動するステップ軸にステップを固定する。判定部は、検出部が複数のボルトの通過を検出する時間間隔が予め設定された時間を超えるときに、ボルトの締結が不十分であると判定する。これにより、ステップを固定するボルトの締結の状態を運転しながら確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
図2】実施の形態1に係る安全装置の構成図である。
図3】実施の形態1に係る安全装置の構成図である。
図4】実施の形態1に係る安全装置による不十分な締結の検出の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【0012】
乗客コンベア1は、例えばエスカレーターである。図1において、乗客コンベア1の左右方向は、紙面に垂直な方向である。図1において、乗客コンベア1の前後方向は、紙面の左右方向である。
【0013】
乗客コンベア1は、例えば建築物の上階と下階との間に掛け渡される。乗客コンベア1は、上階と下階との間に一定傾斜部を有する。乗客コンベア1の上部乗降口2aは、建築物の上階に設けられる。乗客コンベア1の下部乗降口2bは、建築物の下階に設けられる。乗客コンベア1は、上部乗降口2aと下部乗降口2bとの間で乗客を輸送する装置である。乗客コンベア1は、主枠3と、駆動装置4と、一対のステップチェーン5と、複数のステップ軸6と、複数のステップ7と、一対の手摺8と、一対の手摺駆動装置9と、制御盤10と、安全装置11と、を備える。
【0014】
主枠3は、上部乗降口2aと下部乗降口2bとの間に掛け渡される。乗客コンベア1において、上部機械室12aは、主枠3の上端部に設けられる。上部機械室12aは、上部乗降口2aの下方に設けられる。乗客コンベア1において、下部機械室12bは、主枠3の下端部に設けられる。下部機械室12bは、下部乗降口2bの下方に設けられる。
【0015】
駆動装置4は、例えば上部機械室12aに設けられる。駆動装置4は、駆動力を発生させる装置である。駆動装置4は、例えばモーターおよび減速機を備える。
【0016】
一対のステップチェーン5の各々は、無端状のチェーンである。一対のステップチェーン5の一方は、乗客コンベア1の左側に設けられる。一対のステップチェーン5の他方は、乗客コンベア1の右側に設けられる。一対のステップチェーン5の各々は、駆動装置4が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。
【0017】
複数のステップ軸6の各々は、一対のステップチェーン5の間において連なる。複数のステップ軸6の全体は、一対のステップチェーンに沿って等間隔に環状に連結されている。複数のステップ軸6の各々は、一対のステップチェーン5の循環移動に追従して循環移動する機器である。
【0018】
複数のステップ7の各々は、複数のステップ軸6の各々に固定される。複数のステップ7の各々は、複数のステップ軸6の各々の循環移動に追従して上側を往路として循環移動する機器である。複数のステップ7は、乗客コンベア1の往路の一定傾斜部において階段状に配置される。複数のステップ7の各々は、踏み板13と、一対の口金14と、を備える。踏み板13は、乗客コンベア1の乗客が搭乗する平板状の部分である。踏み板13は、乗客コンベア1の往路において水平に配置される。一対の口金14の一方は、踏み板13の下方の左側に設けられる。一対の口金14の他方は、踏み板13の下方の右側に設けられる。一対の口金14は、例えばステップ軸6を挟み込むことによってステップ7をステップ軸6に固定する部分である。
【0019】
一対の手摺8の各々は、無端状の輪である。一対の手摺8の各々は、例えば合成ゴムとキャンバスとにより形成される。一対の手摺8の一方は、複数のステップ7より左側に設けられる。一対の手摺8の他方は、複数のステップ7より右側に設けられる。
【0020】
一対の手摺駆動装置9の一方は、乗客コンベア1の左側に設けられる。一対の手摺駆動装置9の他方は、乗客コンベア1の右側に設けられる。左側の手摺駆動装置9は、駆動装置4が発生させる駆動力によって左側の手摺8を循環移動させる装置である。右側の手摺駆動装置9は、駆動装置4が発生させる駆動力によって右側の手摺8を循環移動させる装置である。
【0021】
制御盤10は、例えば上部機械室12aに設けられる。制御盤10は、駆動装置4の動作を制御する。駆動装置4の動作は、例えば駆動装置4の運転または停止である。
【0022】
安全装置11は、複数のステップ7の各々のステップ軸6への固定の状態を検出する装置である。安全装置11は、例えば主枠3のボクシングメンバーまたはテンプレートに設けられる。
【0023】
例えばエスカレーターである乗客コンベア1の上り運転時に、駆動装置4は、制御盤10の制御によって駆動力を発生させる。一対のステップチェーン5の各々は、駆動装置4が発生させた駆動力によって循環移動する。複数のステップ軸6の各々は、一対のステップチェーン5の循環移動に追従して循環移動する。複数のステップ7の各々は、複数のステップ軸6の各々の循環移動に追従して循環移動する。一対の手摺駆動装置9の各々は、駆動装置4が発生させる駆動力によって一対の手摺8の各々を循環移動させる。一対の手摺8の各々は、複数のステップ7の各々の移動速度と同じ移動速度で循環移動する。
【0024】
乗客コンベア1の上り運転時に、乗客は、一対の手摺8の一方をつかんで下部乗降口2bから複数のステップ7のいずれかに乗る。乗客は、往路を移動するステップ7の上に立ち止まって上部乗降口2aに移動する。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る安全装置の構成図である。
図2において、ステップ7の左右方向は、紙面に垂直な方向である。図2において、ステップ7の前後方向は、紙面の左右方向である。図2において、ステップ軸6は図示されない。
【0026】
一対の口金14の各々は、上部口金15と、下部口金16と、ボルト17と、を備える。上部口金15は、ステップ軸6に上方から接触する。下部口金16は、ステップ軸6に下方から接触する。一対の口金14の各々は、上部口金15と下部口金16とによってステップ軸6を挟み込むことによってステップ7をステップ軸6に固定する。下部口金16は、後方において上部口金15に回転可能に連結される。上部口金15および下部口金16の両方は、前端に締結穴を有する。ボルト17は、上部口金15および下部口金16の両方の締結穴に上方から下方に向けて挿入される。ボルト17は、踏み板13に設けられる貫通孔を通して挿入される工具によって回転させられることで締結される。ステップ7は、一対の口金14のボルト17の締結によってステップ軸6に固定される。ボルト17の先端は、ステップ7の下方に向けられる。ボルト17は、締結されることによって下方に移動する。ボルト17の締結が十分なとき、当該ボルト17は、下方に向けて突出する。締結が充分なボルト17の先端は、ステップ7の循環移動によって軌道Cを描く。
【0027】
ここで、ステップ7の取付け作業において、保守員がボルト17の締結を忘れる可能性がある。このとき、ボルト17の締結が不十分になる。ボルト17の締結が不十分なとき、当該ボルト17の先端は、締結が充分なボルト17の先端より上方に位置する。このとき、締結が不十分なボルト17の先端は、軌道Cより踏み板13の側に位置する。
【0028】
安全装置11は、一対の検出部18と、判定部19と、を備える。
【0029】
検出部18は、軌道Cの上において、複数のボルト17の通過を順次検出する部分である。この例において、一対の検出部18の各々は、一対の口金14の各々の下方に設けられる。一対の検出部18の各々は、支持軸20と、可動片21と、スプリング22と、スイッチ23と、を備える。支持軸20は、左右方向を向く軸状の部材である。支持軸20は、例えば主枠3に対して固定される。支持軸20は、口金14の下方に設けられる。可動片21は、支持軸20によって回転可能に支持される板状の小片である。可動片21の上端部は、軌道Cの上に設けられる。スプリング22は、可動片21の下端部の後側に設けられる。スプリング22は、例えばコイルバネである。スプリング22は、可動片21の後方において、前後方向に圧縮されて設けられる。可動片21は、スプリング22に押し付けられることによって、上端部が後方に傾いて配置される。スイッチ23は、可動片21の下端部の前側に設けられる。スイッチ23は、例えばマイクロスイッチである。スイッチ23は、アクチュエーター24を備える。アクチュエーター24が押されているとき、スイッチ23の状態はON状態である。アクチュエーター24が押されていないとき、スイッチ23の状態はOFF状態である。アクチュエーター24は、スプリング22の弾性力によって可動片21の下端部に押されている。
【0030】
判定部19は、一対の検出部18の各々に接続される。判定部19は、例えばマイクロコンピューターまたは専用のハードウェアである。判定部19は、ボルト17の締結の状態を判定する部分である。判定部19は、判定結果を出力しうるように、制御盤10に接続される。
【0031】
続いて、図3および図4を用いて安全装置11および乗客コンベア1の動作を説明する。
図3は、実施の形態1に係る安全装置の構成図である。図4は、実施の形態1に係る安全装置による不十分な締結の検出の例を示す図である。
【0032】
図3において、ステップ7の左右方向は、紙面に垂直な方向である。図3において、ステップ7の前後方向は、紙面の左右方向である。図3において、ステップ軸6は図示されない。
【0033】
乗客コンベア1の通常運転時において、ステップ7は、ステップ軸6に追従して循環移動する。このとき、締結が充分なボルト17の先端は、軌道Cの上を後方から前方に向かって移動する。当該ボルト17の先端は、軌道C上を後方から前方に移動する。当該ボルト17の先端は、可動片21の上端に接触する。当該ボルト17の先端は、スプリング22の弾性力に抗しながら可動片21の上端部を前方に変位させる。可動片21は、支持軸20を回転軸として回転する。可動片21の下端部は、スプリング22の弾性力に抗しながら後方に変位する。可動片21の下端部は、接触していたスイッチ23のアクチュエーター24から離れる。このとき、スイッチ23の状態は、ON状態からOFF状態に切り替えられる。
【0034】
ステップ7は、引き続き前方に移動する。可動片21の上端部に接触していたボルト17は、検出部18の上方を通過する。当該ボルト17は、可動片21の上端から離れる。可動片21は、スプリング22の弾性力によって、下端部が前方に変位するように回転する。スプリング22は、スイッチ23のアクチュエーター24に可動片21の下端部を押し付ける。このとき、スイッチ23の状態は、OFF状態からON状態に切り替えられる。
【0035】
検出部18は、スイッチ23の状態がON状態、OFF状態、続いて再びON状態の順に切り替えられる一連の動作によって、締結が充分なボルト17の通過を検出する。
【0036】
一方、締結が不十分なボルト17は、軌道Cより踏み板13の側に位置する。このため、締結が不十分なボルト17の先端は、軌道Cの上に設けられる可動片21の上端部に接触しない。したがって、検出部18は、締結が不十分なボルト17の通過を検出しない。
【0037】
図4において、横軸は時間を表す。図4において、縦軸は一対の検出部18のいずれか一方のスイッチ23の状態を表す。
【0038】
ボルト17の先端が可動片21に接触していないとき、スイッチ23の状態はON状態である。
【0039】
ステップ7の循環移動によって、締結が充分なボルト17の先端は可動片21の上端部に接触する。このとき、スイッチ23の状態はOFF状態に切り替えられる。引き続きボルト17は前方に移動する。時間t1が経過した後、ボルト17の先端は可動片21の上端部から離れる。このとき、スイッチ23の状態はON状態に切り替えられる。
【0040】
判定部19は、スイッチ23の状態がON状態である時間を計測する。時間t2が経過した後、次のステップ7の循環移動によって、スイッチ23の状態はOFF状態に切り替えられる。このとき、判定部19は、ボルト17の通過を検出する時間間隔を時間t2であると判定する。ここで、時間t2は、予め設定された時間t3より短い。このとき、先に通過したボルト17の締結は不十分であると判定されない。
【0041】
検出部18は、複数のステップ7の循環移動によって移動するボルト17の通過を順次検出する。
【0042】
締結が不十分なボルト17がある場合に、当該ボルト17の通過は検出部18に検出されない。このため、スイッチ23の状態はON状態から切り替えられない。このとき、判定部19は、スイッチ23の状態がON状態である時間を計測している。一対の検出部18の少なくとも一方について当該時間が予め設定された時間t3を超えるときに、判定部19は、検出部18に通過が検出されなかったボルト17があったと判定する。すなわち、判定部19は、当該ボルト17の締結が不十分であることを判定する。判定部19は、判定結果を制御盤10に出力する。
【0043】
制御盤10は、駆動装置4の動作を停止させる。その後、乗客コンベア1の動作は、停止する。
【0044】
以上に説明したように、実施の形態1に係る乗客コンベア1は、安全装置11と、制御盤10と、を備える。安全装置11は、検出部18と、判定部19と、を備える。検出部18は、ボルト17の締結が十分なときに当該ボルト17の先端が描く軌道Cの上において、複数のボルト17の通過を順次検出する。ボルト17は、乗客コンベア1の循環移動するステップ軸6にステップ7を固定する。判定部19は、検出部18が複数のボルト17の通過を検出する時間間隔が予め設定された時間t3を超えるときに、ボルト17の締結が不十分であると判定する。制御盤10は、ボルト17の締結が不十分であると判定部19が判定するときに、ステップ軸6の循環移動を停止させる。
【0045】
締結が充分なボルト17は、軌道Cの上を等間隔で順次通過する。検出部18は、通過するボルト17を順次検出する。一方、締結が不十分なボルト17は、軌道Cの上を通過しない。検出部18は、当該ボルト17の通過を検出しない。判定部19は、検出部18によるボルト17の通過の検出の間隔に基づいて、ボルト17の締結の状態を判定する。これにより、ステップ7を固定するボルト17の締結の状態が運転しながら確認される。安全装置11は、乗客コンベア1に常設できる。このため、仮にステップ7の取付け作業において複数のステップ7のいずれかについてボルト17の締結の状態の確認がもれたとしても、判定部19はステップ7が外れる前にボルト17の締結が不十分であることを判定できる。また、運転中にボルト17の締結が緩んだ場合においても、判定部19は、ボルト17の緩みを締結が不十分な状態として判定できる。また、制御盤10は、判定部19の判定結果に基づいてステップ軸6の循環移動を停止させる。これにより、ボルト17の締結が不十分なままの乗客コンベア1の運転の継続が防止される。
【0046】
また、検出部18は、可動片21と、スイッチ23と、を備える。可動片21は、支持軸20に回転可能に支持される。可動片21は、支持軸20の一方側が軌道Cの上に設けられる。スイッチ23は、可動片21の支持軸20の他方側に設けられる。スイッチ23は、軌道Cの上においてボルト17が可動片21に接触するときに可動片21の変位によって状態が切り替えられる。検出部18は、スイッチ23の状態の切替えによって当該ボルト17の通過を検出する。
【0047】
これにより、簡単な構成によって検出部18が実現される。また、ボルト17の機械的な接触によって通過を検知するので、検出部18は、ボルト17の表面状態によらずに安定的に通過を検出できる。
【0048】
また、検出部18は、スプリング22を備える。スプリング22は、可動片21に対してスイッチ23の反対側に設けられる。スプリング22は、可動片21をスイッチ23に押し付ける。
【0049】
これにより、可動片21の動きのばたつきが抑えられる。このため、検出部18によるボルト17の通過の検出がより安定する。
【0050】
なお、検出部18は、近接センサーを備えてもよい。近接センサーは、軌道Cの上におけるボルト17の近接を非接触で検知する。検出部18は、近接センサーの近接の検知によって当該ボルト17の通過を検出する。
【0051】
近接センサーは、例えば超音波式、赤外線もしくはレーザー光などを用いる光学式、または静電容量式などのいずれの形式であってもよい。例えば近接センサーは、軌道Cを通過するように投光部から受光部に発せられる赤外線がボルト17によって遮られるときに、当該ボルト17の近接を検出する。ボルト17に接触しないので、検出部18は、連続運転しても動作音の発生およびボルト17の磨耗の原因とならない。
【0052】
また、検出部18は、距離センサーを備えてもよい。距離センサーは、軌道Cの上のボルト17との距離を非接触で測定する。検出部18は、距離センサーが測定する距離によって当該ボルト17の通過を検出する。
【0053】
距離センサーは、例えば超音波式、赤外線もしくはレーザー光などを用いる光学式、または静電容量式などのいずれの形式であってもよい。例えば距離センサーは、軌道Cに向けて発せられたレーザー光とボルト17によって反射された反射光との位相差によって距離を測定してもよい。検出部18は、ボルト17との距離が予め設定された範囲にあるときに当該ボルト17の通過を検出する。ボルト17に接触しないので、検出部18は、連続運転しても動作音の発生およびボルト17の磨耗の原因とならない。
【0054】
また、乗客コンベア1は水平式のエスカレーターであってもよい。このとき、ステップ7はパレットであってもよい。
【0055】
また、検出部18は、口金14の真下に設けられなくてもよい。検出部18は、ボルト17の先端の通過を左右のいずれかの方向から検出してもよい。
【0056】
また、スイッチ23は、両方向動作スイッチであってもよい。このとき、安全装置11は、乗客コンベア1の上り運転および下り運転の両方に対応する。
【符号の説明】
【0057】
1 乗客コンベア、 2a 上部乗降口、 2b 下部乗降口、 3 主枠、 4 駆動装置、 5 ステップチェーン、 6 ステップ軸、 7 ステップ、 8 手摺、 9 手摺駆動装置、 10 制御盤、 11 安全装置、 12a 上部機械室、 12b 下部機械室、 13 踏み板、 14 口金、 15 上部口金、 16 下部口金、 17 ボルト、 18 検出部、 19 判定部、 20 支持軸、 21 可動片、 22 スプリング、 23 スイッチ、 24 アクチュエーター
図1
図2
図3
図4