(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/45 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
G01N21/45 B
(21)【出願番号】P 2019038601
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 公紀
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159671(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108917943(CN,A)
【文献】特開2009-014359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0340502(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108613791(CN,A)
【文献】西川雅清 ほか,コンタクトイメージングにおける細胞による屈折変化量の可視化,情報処理学会研究報告,2017年11月01日,Vol.2017-CVIM-209, No.17,p.1-7,URL: http://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej//index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=13&block_id=8&item_id=184132&item_no=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背景画像、及び前記背景画像
から発せられる光を透過可能な物質、を含む第1の映像を取得することと、
前記背景画像及び前記物質を含み、当該背景画像と当該物質との映像内における相対的な位置関係が前記第1の映像と異なる第2の映像を取得することと、
前記第1の映像と前記第2の映像
の2つの画像の間での前記背景画像の位置の差異である第1の変位量を算出することと、
を具備する測定方法。
【請求項2】
前記第1の映像及び前記第2の映像
の2つの画像の間での前記背景画像の基準部分の位置の差異である第2の変位量を算出することと、
前記第1の変位量から、前記第2の変位量を減ずることと、
をさらに具備する請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
前記第2の映像を、前記背景画像が結像される結像位置、前記物質の位置、及び前記背景画像の位置、のうち少なくともいずれか一つを、前記第1の映像
の取得時の光軸と直交する軸直交方向に異ならせて取得すること、
を特徴とする請求項1記載の測定方法。
【請求項4】
前記第1の映像の取得時における前記結像位置と前記背景画像の位置との間の前記軸直交方向における距離と、前記第2の映像の取得時における前記結像位置と前記背景画像の位置との間の前記軸直交方向における距離と、の前記第1の映像及び前記第2の映像
の2つの画像における差異である第2の変位量を算出することと、
前記第1の変位量から、前記第2の変位量を減ずることと、
をさらに具備する請求項3記載の測定方法。
【請求項5】
背景画像、及び前記背景画像
から発せられる光を透過可能な物質、をそれぞれが含む第1の映像及び第2の映像を取得可能な撮像装置と、
前記第1の映像と前記第2の映像
の2つの画像の間での前記背景画像の位置の差異である第1の変位量を算出する第1の変位算出部と、
を具備し、
前記第2の映像は、前記背景画像と前記物質との映像内における相対的な位置関係が前記第1の映像
の取得時の光軸と直交する軸直交方向に当該第1の映像と異なる測定装置。
【請求項6】
前記第1の映像及び前記第2の映像
の2つの画像の間での前記背景画像の位置の差異に基づき第2の変位量を算出する第2の変位算出部と、
前記第1の変位量から、前記第2の変位量を減ずる第3の変位算出部と、
をさらに具備する請求項5記載の測定装置。
【請求項7】
前記撮像装置、前記物質、又は前記背景画像を前記軸直交方向に移動させる移動装置、
をさらに具備する、
請求項5又は請求項6記載の測定装置。
【請求項8】
前記撮像装置と前記背景画像との間に設けられ、前記撮像装置と前記背景画像との間の前記光軸に沿う光を分岐させるビームスプリッタをさらに具備する、
請求項5乃至請求項7のいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項9】
前記撮像装置と前記背景画像との間に設けられ、前記光軸に沿って前記背景画像から前記撮像装置に向かう光を平行に分岐させる光学系をさらに具備する、
請求項5乃至請求項7のいずれか一つに記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品や気体のような、光が透過可能な物質における屈折率の分布が、例えばシュリーレン法又は背景型シュリーレン法(Background-Oriented Schlieren;BOS)により測定される。背景型シュリーレン法によれば、物質における屈折率の分布を定量化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、背景型シュリーレン法では、物質を通して背景が表される計測画像と、物質を除去して背景が表される基準画像とを比較することで、物質の屈折率の分布が得られる。しかし、物質の除去又は配置作業の時間経過によって、計測画像の取得時と、基準画像の取得時と、における条件が変化し、測定結果の正確性が低下することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態に係る測定方法は、背景画像、及び前記背景画像から発せられる光を透過可能な物質、を含む第1の映像を取得することと、前記背景画像及び前記物質を含み、当該背景画像と当該物質との映像内における相対的な位置関係が前記第1の映像と異なる第2の映像を取得することと、前記第1の映像と前記第2の映像の2つの画像の間での前記背景画像の位置の差異である第1の変位量を算出することと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る測定装置を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の制御装置の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の制御装置の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の一方の映像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の他方の映像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の一方の映像の一部及び他方の映像の一部を概略的に示す例示的な図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態のシフト量の算出結果の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の差分の算出結果の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る測定装置を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の制御装置の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る測定装置を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態の制御装置の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【
図13】
図13は、第4の実施形態に係る測定装置を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図14】
図14は、第4の実施形態の制御装置の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図8を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称で特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によって説明され得る。
【0008】
図1は、第1の実施形態に係る測定装置10を概略的に示す例示的な斜視図である。
図1に示すように、第1の実施形態の測定装置10は、撮像装置11と、背景装置12と、保持装置13と、フィルタ14と、第1の移動装置15と、第2の移動装置16と、第3の移動装置17と、出力装置21と、入力装置22と、制御装置23とを有する。第1の移動装置15、第2の移動装置16、及び第3の移動装置17のうち少なくとも一つは、移動装置の一例である。
【0009】
測定装置10は、例えば、被観察物Sにおける屈折率の不均一な分布(以下、屈折率勾配と称する)を測定するための装置である。なお、測定装置10は、この例に限られない。被観察物Sは、物質の一例である。
【0010】
被観察物Sは、撮像装置11によって撮影可能な波長の光が透過可能な気体、液体、又は固体である。本実施形態における被観察物Sは固体である。被観察物Sとしての固体は、例えば、レンズ若しくはプリズムのような光学部品、又はSiCのような半導体である。なお、被観察物Sは、熱流体や、音波が伝播する気体のような、密度の不均一な分布が生じた流体であっても良い。
【0011】
撮像装置11は、第1のカメラ31を有する。第1のカメラ31は、例えば、デジタルカメラ又は高速度カメラのような、撮像素子を有するカメラである。撮像素子は、例えば、ピクセルピッチが既知であるCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサであり、当該撮像素子で結像した映像(picture)を映像データとしての電気信号に変換する。
【0012】
第1のカメラ31は、第1の光軸OA1を有する。第1の光軸OA1は、第1の光軸及び撮像装置の光軸の一例である。第1の光軸OA1は、第1のカメラ31におけるレンズの中心軸を通るとともに、当該第1のカメラ31の外へと延びる仮想的な直線である。レンズの中心軸が第1のカメラ31の撮像面に垂直となる場合、光軸OA1は第1のカメラ31の撮像面に垂直な直線となる。なお、本実施形態においては、第1の光軸OA1上の光が反射により曲がる場合、当該第1の光軸OA1も同じく曲がるものとして定義される。すなわち、第1の光軸OA1は、第1のカメラ31が撮影可能な範囲の中心を示す。
【0013】
本実施形態において、第1の光軸OA1は、水平に延びる。なお、第1の光軸OA1は、この例に限られない。第1のカメラ31は、第1の光軸OA1が、背景装置12、フィルタ14、及び被観察物Sを通るように配置される。
【0014】
各図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、第1の光軸OA1に沿う方向に設けられる。Y軸は、第1の光軸OA1と直交する水平方向に設けられる。Z軸は、鉛直方向に設けられる。
【0015】
背景装置12は、背景部材35と、拡散板36と、光源37とを有する。背景部材35は、例えば、紙又は合成樹脂によって作られ、光が透過可能なシートである。背景部材35は、表面35aを有する。
【0016】
表面35aは、略平坦であり、第1の光軸OA1と略直交する。表面35aは、第1のカメラ31に向く。表面35aに、模様39が設けられる。言い換えると、背景部材35は、模様39を表示する。模様39は、背景画像(background image)の一例である。背景部材35は、模様39の少なくとも一部が第1のカメラ31の撮影範囲に含まれるように配置される。
【0017】
背景画像の一例である模様39は、例えば、ランダムドット模様である。なお、模様39はこの例に限らず、格子状に並ぶドット、千鳥状に並ぶドット、縞模様、図形、絵、又は写真のような、種々の画像(イメージ)であっても良い。背景装置12が省略され、風景が測定のための背景画像として利用されても良い。また、背景部材35は、複数の孔が設けられた金属シートであっても良い。この場合、当該複数の孔が模様39を形成する。
【0018】
模様39は、撮像装置11により、当該模様39の移動が判別可能な模様(背景画像)である。例えば、第1のカメラ31がランダムドットである模様39を撮影した場合、撮影された映像におけるドット間の距離は、一ピクセルよりも大きく、当該映像全体の幅よりも小さい。
【0019】
拡散板36は、背景部材35の、表面35aの反対側の面に取り付けられる。光源37は、例えばLEDである。なお、光源37は、他の光源であっても良いし、自然光であっても良い。光源37は、拡散板36に向かって光L1を照射する。光源37から照射された光L1は、拡散板36により拡散光となり、背景部材35を透過する。これにより、光L2が背景部材35から第1のカメラ31に向かって出射する。光L2が拡散光であることで、第1のカメラ31へ入射する当該光L2の入射角による影響が低減される。
【0020】
光源37は、背景部材35の模様39に光L1を照射しても良い。この場合、光L1が背景部材35によって反射されることで、光L2が背景部材35から第1のカメラ31に向かって出射する。また、背景部材35が発光することで、光L2が背景部材35から第1のカメラ31に向かって出射しても良い。
【0021】
第1のカメラ31が模様39を撮影することにより、背景部材35から出射される光L2の出射点の位置を特定することが可能となる。すなわち、第1のカメラ31により撮影された映像における模様39の位置により、第1のカメラ31から見た光L2の出射点の位置を特定することが可能である。このように、光L2は、背景画像の光の一例である。
【0022】
保持装置13は、撮像装置11と背景装置12との間に配置される。保持装置13は、被観察物Sを、第1の光軸OA1が当該被観察物Sを通る位置で保持する。なお、例えば被観察物Sが気体である場合、保持装置13は省略されても良い。
【0023】
フィルタ14は、第1の光軸OA1上において、第1のカメラ31と被観察物Sとの間に配置される。フィルタ14は、例えば、被観察物Sに応じて、カットフィルタや偏光板を含み得る。なお、フィルタ14は省略されても良い。例えば、測定装置10は、被観察物Sから発生する光や、周囲の光を遮断するカットフィルタであるフィルタ14を有する。
【0024】
例えば、測定装置10は、レーザ加工や溶接のような加工が行われる空間中の温度差を測定するため、被観察物Sである当該空間中の気体の屈折率勾配を測定することがある。この場合、測定装置10は、加工により発生する光を遮断するカットフィルタであるフィルタ14を有しても良い。
【0025】
また、例えば、測定装置10は、被観察物Sに生じる所定の方向の応力を測定するため、被観察物Sの屈折率勾配を測定することがある。この場合、測定装置10は、測定対象である応力の方向に応じた光を通過させる偏光板であるフィルタ14を有しても良い。
【0026】
第1の移動装置15、第2の移動装置16、及び第3の移動装置17は、例えば、自動又は手動のステージである。なお、測定装置10は、第1の移動装置15、第2の移動装置16、及び第3の移動装置17のうち一つを有していれば良い。
【0027】
第1の移動装置15は、第1のカメラ31を、被観察物S及び模様39に対し、第1の光軸OA1と直交する軸直交方向に移動させることが可能である。軸直交方向は、例えば、Y軸方向(水平方向)、Z軸方向(鉛直方向)、又はY軸方向及びZ軸方向を組み合わせた方向である。
【0028】
第2の移動装置16は、背景装置12を軸直交方向に移動させることが可能である。これにより、第2の移動装置16は、模様39を、第1のカメラ31及び被観察物Sに対し、軸直交方向に移動させることが可能である。
【0029】
第3の移動装置17は、保持装置13を軸直交方向に移動させることが可能である。これにより、第3の移動装置17は、被観察物Sを、第1のカメラ31及び模様39に対し、軸直交方向に移動させることが可能である。
【0030】
出力装置21は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)のような表示装置である。出力装置21は、例えば、第1のカメラ31が撮影した映像や、種々の情報を表示可能である。入力装置22は、例えば、キーボードやマウスのような入力のための装置である。出力装置21及び入力装置22は、これらの例に限られない。
【0031】
図2は、第1の実施形態の制御装置23の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置23は、例えば、互いにバス40によって接続された、CPU41、ROM42、RAM43、ストレージ44、及びインターフェース(I/F)45を有する。ストレージ44は、HDDやSSDのような情報を記憶、変更、削除可能な装置である。
【0032】
制御装置23は、例えば、インターフェース45を通じて、第1の移動装置15、第2の移動装置16、第3の移動装置17、出力装置21、入力装置22、及び第1のカメラ31に電気的に接続される。
【0033】
図3は、第1の実施形態の制御装置23の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
図3に示すように、制御装置23は、映像取得部51、移動制御部52、出力制御部53、シフト量算出部54、移動量算出部55、及び差分算出部56を備える。シフト量算出部54は、第1の変位算出部の一例である。移動量算出部55は、第2の変位算出部の一例である。差分算出部56は、第3の変位算出部の一例である。
【0034】
制御装置23は、例えば、CPU41がROM42又はストレージ44に格納されたプログラムを読み出し実行することで、
図3に示す各部を実現する。
図3に示す各部は、制御装置23の機能を表現した一例であり、
図3に示す各部の機能は、例えば、CPU41、又はCPU41を含むハードウェアによって実現される。
【0035】
映像取得部51は、撮像装置11を制御する。本実施形態では、映像取得部51は、第1のカメラ31を制御するとともに、第1のカメラ31が撮影した映像の映像データを取得する。
【0036】
移動制御部52は、第1の移動装置15、第2の移動装置16、及び第3の移動装置17を制御する。移動制御部52は、例えば、所定の指令値を第1の移動装置15、第2の移動装置16、又は第3の移動装置17に入力することで、第1のカメラ31、背景装置12、又は保持装置13を移動させる。なお、第1の移動装置15、第2の移動装置16、及び第3の移動装置17は、手動で動作させられても良い。
【0037】
出力制御部53は、出力装置21を制御する。例えば、出力制御部53は、第1のカメラ31が撮影した映像を出力装置21に表示させることができる。さらに、出力制御部53は、測定装置10による測定結果を出力装置21に表示させることができる。
【0038】
以下、測定装置10による測定方法の一例と、当該測定におけるシフト量算出部54、移動量算出部55、及び差分算出部56の機能の一例について説明する。なお、測定装置10による測定方法は、以下に記載される例に限られない。
【0039】
まず、保持装置13に、被観察物Sが保持される。被観察物Sは、第1のカメラ31の第1の光軸OA1上に配置される。なお、被観察物Sが気体である場合、例えば、第1の光軸OA1上に被観察物Sが発生させられ、又は第1の光軸OA1上で被観察物Sに屈折率勾配が生じた状態にさせられる。
【0040】
次に、映像取得部51が、第1のカメラ31に、被観察物Sを撮影させ、映像P1を取得させる。映像P1は、二つの映像のうち一方、すなわち第1の映像の一例である。映像取得部51は、第1のカメラ31から、映像P1のデータを取得する。
【0041】
次に、移動制御部52が、例えば第2の移動装置16に、背景装置12の背景画像(模様39)を移動させる。なお、移動制御部52は、第1の移動装置15に第1のカメラ31を移動させても良いし、第3の移動装置17に保持装置13を移動させても良い。
【0042】
背景装置12が移動させられた後、映像取得部51が、第1のカメラ31に、被観察物Sを撮影させ、映像P2を取得させる。映像P2は、二つの映像のうち他方、すなわち第2の映像の一例である。映像取得部51は、第1のカメラ31から、映像P2のデータを取得する。
【0043】
映像P1,P2は、例えば、静止画である。なお、映像P1,P2は、動画であっても良い。映像P1,P2は、第1の光軸OA1と交差する面における、光の強度の面内分布、光の波長の面内分布、及び偏光の面内分布のうち少なくとも一つを含む情報である。
【0044】
映像P1の取得時と映像P2の取得時との間に背景装置12が移動させられることで、二つの映像P1,P2の取得時において、軸直交方向における模様39の位置が互いに異なる。すなわち、二つの映像P1,P2の取得時において、軸直交方向における、模様39の位置が互いに異なる。本実施形態における模様39の位置は、具体的には、模様39に含まれる各ピクセル又は各特徴点の位置である。
【0045】
映像P1の取得時と映像P2の取得時との間に被観察物Sが移動させられることで、二つの映像P1,P2の取得時において、軸直交方向における被観察物Sの位置が互いに異なっても良い。また、映像P1の取得時と映像P2の取得時との間に第1のカメラ31が移動させられることで、二つの映像P1,P2の取得時において、軸直交方向における第1のカメラ31で映像P1,P2が結像される結像位置が互いに異なっても良い。本実施形態における結像位置は、具体的には、映像P1,P2の取得時における第1のカメラ31の撮像素子の各画素の位置である。すなわち、第1の映像である映像P1と第2の映像である映像P2との間では、それぞれの映像を取得した時の光軸に垂直な方向(つまり、映像P1及び映像P2の面内)において被観察物Sと背景画像である模様39との相対的な位置(位置関係)が異なっている。
【0046】
図4は、第1の実施形態の映像P1の一例を示す図である。
図5は、第1の実施形態の映像P2の一例を示す図である。
図4及び
図5の例における映像P1,P2の取得時において、模様39と被観察物Sとの間の距離は150mmに設定され、第1のカメラ31と被観察物Sとの間の距離は365mmに設定されている。また、第1のカメラ31の撮像素子は、2.41μmのピクセルピッチ、13.2×8.8mmの大きさを有する。なお、映像P1,P2の取得条件は、この例に限られない。
【0047】
図4及び
図5の例において、第1のカメラ31は、被観察物Sであるアクリル板と、背景としての模様39と、被観察物Sを押圧する圧子Inとを撮影している。このため、映像P1,P2は、被観察物Sと、背景としての模様39とをそれぞれが含む。言い換えると、映像P1,P2のそれぞれの取得時において、第1のカメラ31の撮影範囲に、被観察物Sと模様39とが存在する。なお、第1のカメラ31の撮影範囲に、被観察物Sのみが存在しても良い。
【0048】
圧子Inが被観察物Sを押圧することで、被観察物Sに応力及び密度の不均一な分布が生じる。屈折率は密度に依存するため、被観察物Sに、屈折率勾配が生じる。例えば、被観察物Sにおいて、圧子Inに押圧される圧縮点の近傍部分S1における屈折率が変化し、被観察物Sに屈折率勾配が生じる。例えば、被観察物Sの屈折率勾配から、被観察物Sにおける応力及び密度の分布を算出することが可能である。
【0049】
背景部材35から出射された光L2は、被観察物Sを透過可能である。このため、
図4及び
図5に示すように、映像P1,P2は、被観察物Sを通して表れた模様39をそれぞれが含む。言い換えると、映像P1,P2において、模様39は、被観察物S越しに視認可能となっている。
【0050】
第1のカメラ31は、背景装置12が映像P1の取得時における位置からY軸方向(水平方向)に約10μm移動させられた後に、映像P2を取得する。これにより、映像P2における模様39の位置は、全体的に、映像P1における模様39の位置から、約2,3ピクセル平行移動している。なお、映像P1,P2における模様39の移動量は、この例に限られず、例えば0.5ピクセル程度以上の移動があれば十分検出することができる。
【0051】
図6は、第1の実施形態の映像P1の一部及び映像P2の一部を概略的に示す例示的な図である。次に、シフト量算出部54が、映像P1と映像P2との間での、被観察物Sを通して表れた模様39の位置の差異であるシフト量Dsを算出する。シフト量Dsは、第1の変位量の一例である。シフト量算出部54は、例えば、映像P1,P2の、全てのピクセル、一部のピクセル、又は複数の特徴点について、シフト量Dsを算出する。
【0052】
シフト量算出部54は、例えば、Optical Flow処理により、二つの映像P1,P2の間でのY軸方向(水平方向)におけるシフト量Dsを算出する。上述した映像P1の取得時と映像P2の取得時との間における背景装置12の移動量は、Optical Flow処理において追跡可能な範囲に設定される。なお、シフト量算出部54は、他の処理によりシフト量Dsを算出しても良い。
【0053】
図7は、第1の実施形態のシフト量Dsの算出結果R1の一例を示す図である。シフト量算出部54は、
図7のような、シフト量Dsの分布を人間が感知できる映像、グラフ、又は表として、シフト量Dsの算出結果R1を出力しても良い。出力制御部53は、出力装置21に、算出結果R1を出力させる。
図7の例では、算出結果R1は、ピクセル量としてのシフト量Dsの分布を示す。しかし、算出結果R1は、他の物理量としてのシフト量Dsの分布を示しても良い。
図7に示すように、この例では全体的には約1ピクセル前後の移動がみられることがわかる。
【0054】
一般的に、光は、屈折率勾配が存在する場を通過すると屈折により偏角しその経路が曲がる。すなわち、屈折率勾配は、光に偏角(屈折角)を生じさせる。例えば、屈折率が不均一である物質中を光が通過する際に、当該物質中に屈折率勾配があると、光は、屈折により屈折率が高い方向に偏角する。このため、被観察物Sが屈折率勾配を有する場合、被観察物Sを通して表れた模様39は歪む(シュリーレン現象)。
【0055】
上述のように、
図4及び
図5の例では、被観察物Sの圧縮点の近傍部分S1において、屈折率勾配が生じている。このため、
図6に示すように、被観察物Sにおいて、圧縮点の近傍部分S1におけるシフト量Dsは、屈折率の分布が略均一な部分S2におけるシフト量Dsと異なる。部分S2は、基準部分の一例であり、屈折率の分布が圧縮点の近傍部分S1よりもなだらかである。
【0056】
次に、移動量算出部55が、映像P1の取得時と映像P2の取得時との間における模様39の移動量Daを算出する。移動量Daは、第2の変位量の一例である。移動量算出部55は、シフト量算出部54と同じく、例えば、映像P1,P2の、全てのピクセル、一部のピクセル、又は複数の特徴点について、移動量Daを算出する。
【0057】
移動量Daは、映像P1の取得時における映像P1の結像位置と模様39との間の軸直交方向における距離と、映像P2の取得時における映像P2の結像位置と模様39との間の軸直交方向における距離と、の映像P1,P2における差異である。映像P1,P2における差異とは、例えば、映像P1,P2におけるピクセル量として算出された差異を示す。本実施形態の移動量Daの算出において、映像P1,P2の結像位置は、映像P1,P2の取得時における第1のカメラ31の位置に等しい。すなわち、移動量Daは、背景画像である模様39のうち、応力及び密度の不均一な分布が生じず屈折率の分布が略均一で屈折率勾配が生じないような位置に例えばあらかじめ設定した、模様39のパターン、印又は代表点などの基準部分(例えば部分S2)が、映像P1と映像P2の間での光軸に対する軸直交方向にどれだけ移動したかを示している。さらに換言すると、移動量Daは映像P1と映像P2の間の背景画像としての模様39の基準部分の移動量、すなわち基準移動量である。
【0058】
本実施形態では、移動量算出部55は、二つの映像P1,P2の間での、被観察物Sの部分S2を通して表れた模様39の位置の差異に基づき、移動量Daを算出する。部分S2は上述の基準部分の一例である。上述のように、部分S2の屈折率の分布は略均一である。このため、二つの映像P1,P2の間での部分S2を通して表れた模様39の位置の差異は、背景装置12の背景画像(模様39)の実際の移動量を反映したピクセル量であり、上述のように約2,3ピクセルとなる。
【0059】
移動量算出部55は、例えば、部分S2のうち、測定装置10の操作者が指定した範囲内におけるシフト量Dsの平均値として、移動量Daを算出する。なお、移動量算出部55は、この例に限らず、ニューラルネットワーク等を用いて自動的に部分S2を判別し、当該部分S2におけるシフト量Dsの平均値として、移動量Daを算出しても良い。また、移動量算出部55は、移動制御部52が第1の移動装置15、第2の移動装置16、又は第3の移動装置17に入力した指令値に基づき、移動量Daを算出しても良い。
【0060】
図8は、第1の実施形態の差分ΔDの算出結果R2の一例を示す図である。次に、差分算出部56が、シフト量Dsから移動量Daを減じ、差分ΔDを算出する。屈折率勾配が生じた部分S1における差分ΔDは、屈折率勾配によって生じたシフト量Dsの差分を表す。
図8に示すように、屈折率が略均一である部分S2における差分ΔDは、ほぼ0となる。
【0061】
差分算出部56は、
図8のような差分ΔDの分布を人間が感知できる映像、グラフ、又は表として、差分ΔDの算出結果R2を出力しても良い。出力制御部53は、出力装置21に、算出結果R2を出力させる。
図8の例では、算出結果R2は、ピクセル量としての差分ΔDの分布を示す。しかし、算出結果R2は、他の物理量としての差分ΔDの分布を示しても良い。
【0062】
例えば、差分ΔDから、屈折率勾配によって生じた光の偏角を算出することが可能である。さらに、当該偏角から、被観察物Sの屈折率の分布を算出することが可能である。加えて、被観察物Sの屈折率の分布から、被観察物Sの密度の分布、及び被観察物Sにおける応力の分布を算出することが可能である。
【0063】
以上のように、測定装置10は、映像P1と映像P2との間でのシフト量Ds及び差分ΔDの分布を測定する。当該測定装置10を用いることで、被観察物Sの偏角、屈折率、密度、及び応力の分布を算出することが可能となる。
【0064】
以上説明された第1の実施形態に係る測定装置10及び測定方法において、撮像装置11により取得された映像P1,P2は、被観察物Sを通して表れた模様39をそれぞれが含む。別の表現によれば、模様39、及び模様39の光を透過可能な被観察物S、を含む映像P1,P2が取得され、映像P2は、模様39と被観察物Sとの相対的な位置関係が、映像P1と異なる。このため、映像P1,P2の間において、被観察物Sを通して表れた模様39はシフトしている。さらに、映像P1,P2の間での被観察物Sを通して表れた模様39の位置の差異であるシフト量Dsが算出される。被観察物Sにおいて屈折率勾配が存在し、被観察物S中の位置によって屈折率が異なる場合、シフト量Dsは、当該被観察物S中の位置によって異なる。従って、被観察物S中の各位置におけるシフト量Dsが測定されることで、被観察物Sの屈折率勾配を算出することができる。
【0065】
二つの映像P1,P2の取得時において、撮像装置11の第1の光軸OA1と直交する軸直交方向における、撮像装置11で模様39を含む映像P1,P2が結像される結像位置、被観察物Sの位置、及び模様39の位置、のうち一つが互いに異なる。別の表現によれば、映像P2は、模様39が結像される結像位置、被観察物Sの位置、及び模様39の位置、のうち少なくともいずれか一つを、映像P1の取得時の第1の光軸OA1と直交する軸直交方向に異ならせて取得される。このため、映像P1,P2の間において、被観察物Sを通して表れた模様39は軸直交方向にシフトしている。従って、第1の光軸OA1に沿う方向の移動により生じる倍率の変化がシフト量Dsに影響することが抑制され、より正確に被観察物Sの屈折率勾配を算出することができる。
【0066】
一般的に、背景シュリーレン法によっても被観察物Sの屈折率勾配を算出することができる。しかし、背景シュリーレン法では、被観察物Sを通して背景が表される計測画像と、被観察物Sを除去して背景が表される基準画像とを比較することで、被観察物Sの屈折率勾配が求められる。この場合、被観察物Sの除去や配置に手間がかかることがある。また、被観察物Sの除去又は配置作業の時間経過によって、計測画像の取得時と、基準画像の取得時と、において被観察物Sや背景の位置が温度による体積の変化や振動により変動し、測定結果の正確性が低下することがある。
【0067】
これに対し、本実施形態では、被観察物Sを通して表れた模様39が軸直交方向に移動している映像P1,P2を比較することで、被観察物Sの屈折率勾配を算出することができる。これにより、被観察物Sの配置又は除去が不要であるため、測定が容易になる。さらに、映像P1,P2が取得される時期を近づけ、測定結果の正確性の低下を抑制することができる。
【0068】
映像P1,P2の取得時における結像位置と模様39の位置との間の軸直交方向における距離の、映像P1,P2における差異である移動量Daが算出される。さらに、シフト量Dsから移動量Daが減じられる。これにより、移動量Daの影響を除き、被観察物S中の屈折率の分布をより正確に反映した差分ΔDが得られる。従って、差分ΔDから被観察物Sの屈折率勾配をより正確に求めることができる。
【0069】
移動量Daは、映像P1,P2の間での、模様39の基準部分(部分S2)の位置の差異に基づき算出される。別の表現によれば、移動量Daは、映像P1,P2の間での、被観察物Sのうち部分S2を通して表れた模様39の位置の差異に基づき算出される。部分S2は、屈折率の分布が他の部分S1よりなだらかである。例えば、部分S2における屈折率が均一である場合、映像P1,P2の間での、部分S2を通して表れた模様39の位置の差異に基づき算出された移動量Daは、ほぼ正確に実際の移動量Daを反映する。従って、例えば第2の移動装置16への指令値に基づき移動量Daを算出する場合に比べ、より正確に移動量Daを算出することが可能となる。
【0070】
二つの映像P1,P2の取得時の間において、模様39が軸直交方向に移動させられる。これにより、映像P1,P2を容易に取得することができ、測定が容易になる。なお、二つの映像P1,P2の取得時の間において、被観察物S又は撮像装置11が移動させられても良い。
【0071】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図9乃至
図10を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0072】
図9は、第2の実施形態に係る測定装置10を概略的に示す例示的な斜視図である。
図9に示すように、第2の実施形態の測定装置10は、ビームスプリッタ61をさらに有する。ビームスプリッタ61は、フィルタ14と第1のカメラ31との間において、第1の光軸OA1上に配置される。
【0073】
ビームスプリッタ61は、例えば、ハーフミラーである。第1の光軸OA1上の光(及び第1の光軸OA1に沿う光)は、ビームスプリッタ61を透過する。第1の光軸OA1は、ビームスプリッタ61及び被観察物Sを通して、模様39に向かって延びる。
【0074】
撮像装置11は、第2のカメラ62をさらに有する。第2のカメラ62は、第1のカメラ31と同じく、例えば、デジタルカメラ又は高速度カメラのような、撮像素子を有するカメラである。第2のカメラ62の撮像素子は、例えば、第1のカメラ31の撮像素子とピクセルピッチ及び大きさが同一である。なお、第1のカメラ31及び第2のカメラ62の撮像素子は、異なっても良い。
【0075】
第2のカメラ62は、第2の光軸OA2を有する。第2の光軸OA2は、第2のカメラ62におけるレンズの中心を結ぶとともに、当該第2のカメラ62の外へと延びる仮想的な直線である。なお、本実施形態においては、第2の光軸OA2上の光が反射により曲がる場合、当該第2の光軸OA2も同じく曲がるものとして定義される。すなわち、第2の光軸OA2は、第2のカメラ62が撮影可能な範囲の中心を示す。
【0076】
ビームスプリッタ61は、第2の光軸OA2上に配置される。第2の光軸OA2上の光は、ビームスプリッタ61で反射される。このため、第2の光軸OA2は、ビームスプリッタ61で曲がる。第2の光軸OA2は、ビームスプリッタ61及び被観察物Sを通して、模様39に向かって延びる。すなわち、第2の光軸OA2上に配置されるビームスプリッタ61は、撮像装置11(第1のカメラ31及び第2のカメラ62)と模様39の間の光軸に沿う光を分岐させる。
【0077】
第1のカメラ31と模様39との間の光路の距離は、第2のカメラ62と模様39との間の光路の距離と略等しい。言い換えると、第1のカメラ31及びビームスプリッタ61の間の距離と、ビームスプリッタ61及び模様39の間の距離と、の合計は、第2のカメラ62及びビームスプリッタ61の間の距離と、ビームスプリッタ61及び模様39の間の距離と、の合計に略等しい。
【0078】
第1の光軸OA1は、当該第1の光軸OA1と直交する方向に、第2の光軸OA2から離間する。例えば、模様39とビームスプリッタ61との間において、第1の光軸OA1は、第2の光軸OA2と平行に延びるとともに、第2の光軸OA2からY軸方向(水平方向)に離間する。なお、模様39とビームスプリッタ61との間において、第1の光軸OA1は、第2の光軸OA2からZ軸方向(鉛直方向)、又はY軸方向及びZ軸方向を組み合わせた方向に離間しても良い。
【0079】
図10は、第2の実施形態の制御装置23の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
図10に示すように、第2の実施形態において、映像取得部51は、第2のカメラ62をさらに制御する。映像取得部51は、第2のカメラ62が撮影した映像の映像データを取得する。
【0080】
第2の実施形態では、第1のカメラ31が映像P1を取得し、第2のカメラ62が映像P2を取得する。第1のカメラ31による映像P1の取得と、第2のカメラ62による映像P2の取得とは、同時に行われても良いし、順番に行われても良い。
【0081】
上述のように、第1の光軸OA1は、当該第1の光軸OA1と直交する方向に、第2の光軸OA2から離間する。このため、二つの映像P1,P2の取得時において、軸直交方向における第1のカメラ31で映像P1が結像される結像位置と、軸直行方向における第2のカメラ62で映像P2が結像される結像位置と、が互いに異なる。
【0082】
本実施形態では、第1の光軸OA1は、当該第1の光軸OA1と直交する方向に、第2の光軸OA2から約10μm離間している。これにより、映像P2における模様39の位置は、全体的に、映像P1における模様39の位置から、約2,3ピクセル平行移動している。なお、映像P1,P2における模様39の移動量は、この例に限られない。
【0083】
第1の実施形態と同じく、シフト量算出部54が映像P1,P2の間でのシフト量Dsを算出し、移動量算出部55が映像P1,P2の取得時の間における移動量Daを算出する。
【0084】
本実施形態では、模様39が静止しており、映像P1,P2が同時に取得され得る。しかし、映像P1の取得時における映像P1の結像位置と模様39との間の軸直交方向における距離と、映像P2の取得時における映像P2の結像位置と模様39との間の軸直交方向における距離と、の映像P1,P2における差異が存在する。このため、移動量Daが算出される。
【0085】
さらに、差分算出部56が、差分ΔDを算出する。従って、シフト量Ds及び差分ΔDの分布から、被観察物Sの偏角、屈折率、密度、及び応力の分布を算出することが可能となる。
【0086】
以上説明された第2の実施形態の測定装置10及び測定方法において、撮像装置11と模様39との間に、撮像装置11と模様39との間の光軸に沿う光を分岐させるビームスプリッタ61が設けられる。撮像装置11は、ビームスプリッタ61及び被観察物Sを通して模様39に向かう第1の光軸OA1を有する第1のカメラ31と、ビームスプリッタ61及び被観察物Sを通して模様39に向かう第2の光軸OA2を有する第2のカメラ62とを有する。第1の光軸OA1は、当該第1の光軸OA1と直交する方向に、第2の光軸OA2から離間する。第1のカメラ31及び第2のカメラ62により、二つの映像P1,P2が取得される。これにより、撮像装置11、被観察物S、及び模様39を移動させる必要が無く、測定が容易になる。さらに、二つの映像P1,P2を同時に取得することが可能となり、測定結果の正確性の低下を抑制することができるとともに、熱流体のような移動する被観察物Sの、特定の瞬間における屈折率勾配をより正確に算出することができる。
【0087】
第2の実施形態のビームスプリッタ61は、背景部材35から出射した光L2を第1のカメラ31と第2のカメラ62とに向かって分岐させる。しかし、ビームスプリッタ61は、例えば、第1のカメラ31の第1の光軸OA1上の光を二つの背景部材35に向かうように分岐させても良い。言い換えると、ビームスプリッタ61は、第1の光軸OA1を分岐させても良い。この場合、二つの背景部材35における模様39は、第1の光軸OA1と直交する軸直交方向において、第1の光軸OA1に対する位置が互いに異なる。例えば、一方の背景部材35に向かう光をシャッタにより遮ることで、撮像装置11は二つの映像P1,P2を取得することができる。このようにビームスプリッタ61を、第1のカメラ31の第1の光軸OA1上の光を二つの背景部材35に向かうように分岐させる場合、二つの背景部材35の一方の模様39については第1の波長の光を取得し、他方の模様39については第1の波長とは異なる第2の波長の光を取得するようにすれば、光を遮るシャッタを用いずに、第1のカメラ31の1台で第1の映像P1と第2の映像P2を同時に取得するように構成しても良い。この場合でも、ビームスプリッタ61は、撮像装置11と模様39の間の光軸に沿う光を分岐させる構成となる。
【0088】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は、第3の実施形態に係る測定装置10を概略的に示す例示的な斜視図である。
図11に示すように、第3の実施形態の測定装置10は、レンズアレイ66をさらに有する。レンズアレイ66は、光学系の一例である。
【0089】
レンズアレイ66は、一つの基板上に設けられた複数のレンズを有し、光を平行に分割させることが可能である。なお、測定装置10は、光を平行に分割させることが可能な他の光学系を有しても良い。
【0090】
レンズアレイ66は、フィルタ14と第1のカメラ31との間において、第1の光軸OA1上に配置される。言い換えると、第1の光軸OA1は、レンズアレイ66及び被観察物Sを通して模様39に向かう。このため、レンズアレイ66は、第1の光軸OA1上の光L2(及び第1の光軸OA1に沿う光)を平行に分割させる。
【0091】
分割された複数の光L2は、第1のカメラ31の撮像素子上の異なる画素上で結像される。これにより、第1のカメラ31は、二つの映像P1,P2を含む一つの映像を取得する。言い換えると、第1のカメラ31は、第1のカメラ31の撮像素子の一部で結像された映像P1と、第1のカメラ31の撮像素子の他の一部で結像された映像P2と、を取得する。第1のカメラ31が取得する映像は、三つ以上の映像を含んでも良い。すなわち、工学系の一例であるレンズアレイ66は、撮像装置11の光軸に沿って模様39から撮像装置11に向かう光を平行に分岐させる構成である。
【0092】
以上のように、レンズアレイ66によって光L2が分割されることで、二つの映像P1,P2の取得時において、軸直交方向における第1のカメラ31で映像P1,P2が結像される結像位置が互いに異なる。本実施形態では、映像P2における模様39の位置は、全体的に、映像P1における模様39の位置から、約2,3ピクセル平行移動している。なお、映像P1,P2における模様39の移動量は、この例に限られない。
【0093】
図12は、第3の実施形態の制御装置23の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
図12に示すように、第3の実施形態において、制御装置23は、映像分割部67をさらに備える。制御装置23は、例えば、CPU41がROM42又はストレージ44に格納されたプログラムを読み出し実行することで、映像分割部67を実現する。
【0094】
映像取得部51が第1のカメラ31が撮影した映像の映像データを取得すると、映像分割部67は、当該映像を映像P1と映像P2とに分割する。言い換えると、映像分割部67は、第1のカメラ31が取得した映像から、二つの映像P1,P2を抽出する。これにより、第1のカメラ31が取得した映像から、二つの映像P1,P2が取得される。
【0095】
第1の実施形態と同じく、シフト量算出部54が映像P1,P2の間でのシフト量Dsを算出し、移動量算出部55が映像P1,P2の取得時の間における移動量Daを算出する。
【0096】
本実施形態では、模様39が静止しており、映像P1,P2が同時に取得され得る。しかし、映像P1の取得時における映像P1の結像位置と模様39との間の軸直交方向における距離と、映像P2の取得時における映像P2の結像位置と模様39との間の軸直交方向における距離と、の映像P1,P2における差異が存在する。このため、移動量Daが算出される。
【0097】
さらに、差分算出部56が、差分ΔDを算出する。従って、シフト量Ds及び差分ΔDの分布から、被観察物Sの偏角、屈折率、密度、及び応力の分布を測定することが可能となる。
【0098】
以上説明された第3の実施形態の測定装置10及び測定方法において、撮像装置11と模様39との間に、光軸に沿って模様39から撮像装置11に向かう光を平行に分岐させるレンズアレイ66が設けられる。第1のカメラ31の第1の光軸OA1は、光L2を平行に分岐させることが可能なレンズアレイ66及び被観察物Sを通して模様39に向かう。第1のカメラ31は、当該第1のカメラ31の異なる二つの部分で結像された、二つの映像P1,P2を取得する。これにより、第1のカメラ31、被観察物S、及び模様39を移動させる必要が無く、測定が容易になる。さらに、二つの映像P1,P2を同時に取得することが可能となり、測定結果の正確性の低下を抑制することができるとともに、熱流体のような移動する被観察物Sの、特定の瞬間における屈折率勾配をより正確に算出することができる。
【0099】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態について、
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は、第4の実施形態に係る測定装置10を概略的に示す例示的な斜視図である。
図13に示すように、第4の実施形態の背景装置12は、表示装置81を有する。
【0100】
表示装置81は、例えば、ディスプレイ82を有する。ディスプレイ82は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)である。液晶ディスプレイは、例えば、偏光板、ガラス基板、液晶、拡散板、及び光源を有する。なお、ディスプレイ82は、有機ELディスプレイ(OLED)やレーザディスプレイのような他のディスプレイであっても良い。例えば、有機ELディスプレイでは、素子が発光するため、光源が不要となる。ディスプレイ82は、映像を表示可能なスクリーン82aを有する。
【0101】
第1の光軸OA1は、被観察物Sを通してスクリーン82aに向かって延びる。スクリーン82aは、略平坦であり、第1の光軸OA1と略直交する。スクリーン82aは、第1のカメラ31に向く。
【0102】
図14は、第4の実施形態の制御装置23の構成を機能的に示す例示的なブロック図である。
図14に示すように、第4の実施形態において、制御装置23は、画像制御部85をさらに備える。制御装置23は、例えば、CPU41がROM42又はストレージ44に格納されたプログラムを読み出し実行することで、画像制御部85を実現する。
【0103】
画像制御部85は、表示装置81を制御する。画像制御部85は、表示装置81のスクリーン82aに、模様39を表示させる。さらに、画像制御部85は、スクリーン82aにおける模様39を移動させることが可能である。
【0104】
第4の実施形態において、映像取得部51が、第1のカメラ31に、被観察物Sを撮影させ、映像P1を取得させる。次に、画像制御部85が、スクリーン82aに表示された模様39を移動させる。言い換えると、画像制御部85は、映像P1の取得時における位置と異なる位置にある模様39を表示する。模様39が移動させられた後、映像取得部51が、第1のカメラ31に、被観察物Sを撮影させ、映像P2を取得させる。これにより、二つの映像P1,P2が取得される。
【0105】
以上説明された第4の実施形態の測定装置10及び測定方法において、模様39は、当該模様39が表示される位置を変更可能な表示装置81に表示される。これにより、模様39が表示された背景装置12の物理的な移動無しに、二つの映像P1,P2を取得することが可能となり、物理的な移動により生じる測定結果の正確性の低下を抑制することができる。
【0106】
以上の複数の実施形態に係る測定装置10により、種々の被観察物Sのシフト量Ds及び差分ΔDを測定することができる。さらに、差分ΔDから、種々の被観察物Sの屈折率勾配及び物理的特性を算出することができる。
【0107】
例えば、レーザ加工や溶接のような加工が行われる空間中の気体、又はエアコンの室外機が配置された空間中の気体の屈折率勾配を算出することで、当該空間中の温度差を算出することができる。さらに、射出成型された光学部品の屈折率勾配を算出することで、当該光学部品の密度の分布を算出することができる。測定装置10により算出可能な被観察物Sの物理的特性は、例えば、応力、温度、圧力、ひずみ、密度、濃度、応力の向き、含有物の配向、屈折率の応力係数、屈折率の温度係数、及び複屈折率を含む。
【0108】
以上説明された少なくとも一つの実施形態によれば、撮像装置により取得された二つの映像である第1の映像と第2の映像とは、物質を通して表れた背景画像をそれぞれが含む。例えばこれらの二つの映像の取得時において、撮像装置の光軸と直交する軸直交方向における、撮像装置で映像が結像される結像位置、物質の位置、背景画像の位置、のうちすくなくとも一つが互いに異なるなど、第1の映像と第2の映像とは背景画像と物質の相対的な位置関係が互いに異なる。このため、二つの映像の間において、物質を通して表れた背景画像は軸直交方向に移動している。さらに、二つの映像の間での物質を通して表れた背景画像の位置の差異である第1の変位量が算出される。物質において屈折率勾配が存在し、物質中の位置によって屈折率が異なる場合、第1の変位量は、当該物質中の位置によって異なる。従って、物質中の各位置における第1の変位量が求められることで、物質の屈折率勾配を求めることができる。又は、実施形態によれば、物質の設置又は除去作業が不要となるため、測定が容易になる。若しくは、二つの映像が取得される時期を近づけ、測定結果の正確性の低下を抑制することができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の内容を付記する。
[1]
背景画像、及び前記背景画像の光を透過可能な物質、を含む第1の映像を取得することと、
前記背景画像及び前記物質を含み、当該背景画像と当該物質との相対的な位置関係が前記第1の映像と異なる第2の映像を取得することと、
前記第1の映像と前記第2の映像との間での前記背景画像の位置の差異である第1の変位量を算出することと、
を具備する測定方法。
[2]
前記第1の映像及び前記第2の映像の間での前記背景画像の基準部分の位置の差異である第2の変位量を算出することと、
前記第1の変位量から、前記第2の変位量を減ずることと、
をさらに具備する[1]記載の測定方法。
[3]
前記第2の映像を、前記背景画像が結像される結像位置、前記物質の位置、及び前記背景画像の位置、のうち少なくともいずれか一つを、前記第1の映像の前記取得時の光軸と直交する軸直交方向に異ならせて取得すること、
を特徴とする[1]記載の測定方法。
[4]
前記第1の映像の取得時における前記結像位置と前記背景画像の位置との間の前記軸直交方向における距離と、前記第2の映像の取得時における前記結像位置と前記背景画像の位置との間の前記軸直交方向における距離と、の前記第1の映像及び前記第2の映像における差異である第2の変位量を算出することと、
前記第1の変位量から、前記第2の変位量を減ずることと、
をさらに具備する[3]の測定方法。
[5]
背景画像、及び前記背景画像の光を透過可能な物質、をそれぞれが含む第1の映像及び第2の映像を取得可能な撮像装置と、
前記第1の映像と前記第2の映像との間での前記背景画像の位置の差異である第1の変位量を算出する第1の変位算出部と、
を具備し、
前記第2の映像は、前記背景画像と前記物質との相対的な位置関係が前記第1の映像の前記取得時の光軸と直交する軸直交方向に当該第1の映像と異なる測定装置。
[6]
前記第1の映像及び前記第2の映像の間での前記背景画像の位置の差異に基づき第2の変位量を算出する第2の変位算出部と、
前記第1の変位量から、前記第2の変位量を減ずる第3の変位算出部と、
をさらに具備する[5]の測定装置。
[7]
前記撮像装置、前記物質、又は前記背景画像を前記軸直交方向に移動させる移動装置、
をさらに具備する、
[5]又は[6]の測定装置。
[8]
前記撮像装置と前記背景画像との間に設けられ、前記撮像装置と前記背景画像との間の前記光軸に沿う光を分岐させるビームスプリッタをさらに具備する、
[5]乃至[7]のいずれか一つの測定装置。
[9]
前記撮像装置と前記背景画像との間に設けられ、前記光軸に沿って前記背景画像から前記撮像装置に向かう光を平行に分岐させる光学系をさらに具備する、
[5]乃至[7]のいずれか一つの測定装置。
【符号の説明】
【0110】
10…測定装置、11…撮像装置、12…背景装置、15…第1の移動装置、16…第2の移動装置、17…第3の移動装置、23…制御装置、31…第1のカメラ、35…背景部材、39…模様、54…シフト量算出部、55…移動量算出部、56…差分算出部、61…ビームスプリッタ、62…第2のカメラ、66…レンズアレイ、81…表示装置、S…被観察物、OA1…第1の光軸、OA2…第2の光軸、P1,P2…映像、S1,S2…部分、Ds…シフト量、Da…移動量、ΔD…差分。