(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 1/00 20060101AFI20221202BHJP
E01F 15/14 20060101ALI20221202BHJP
E01F 15/08 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
E01D1/00 Z
E01F15/14
E01F15/08
(21)【出願番号】P 2019061691
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直以
(72)【発明者】
【氏名】藤川 敬人
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02740896(EP,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2013-0007266(KR,U)
【文献】特開2016-199896(JP,A)
【文献】特開2014-163170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00
E01F 15/14
E01F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の壁高欄に沿って設置されたガイド機構と、前記ガイド機構に支持されかつ前記橋梁の上面側を覆
い、火炎を遮断する複数の遮蔽体ユニットと、を有し、
前記遮蔽体ユニットは
、前記橋梁の連続方向へ相互に連結されて
、前記橋梁に沿った
、火炎を遮断する遮蔽体
を形成
することを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項2】
請求項1に記載された橋梁防炎装置において、
前記遮蔽体ユニットは、連結される他の前記遮蔽体ユニットと互いに重ね合わせ可能なラップ部を有することを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項3】
請求項2に記載された橋梁防炎装置において、
前記遮蔽体ユニットとして、外側遮蔽体ユニットと、前記外側遮蔽体ユニットの内側に収容可能な内側遮蔽体ユニットとを有することを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された橋梁防炎装置において、
前記ガイド機構は、前記壁高欄の外側面、前記壁高欄の内側面、または前記壁高欄の上面に設置されることを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項5】
請求項4に記載された橋梁防炎装置において、
前記ガイド機構は、前記橋梁に沿って設置されたレールと、前記遮蔽体ユニットに設置されて前記レールでガイドされるスライダと、を有することを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された橋梁防炎装置において、
前記遮蔽体ユニットは、前記橋梁の幅方向の中間位置で分割可能であることを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載された橋梁防炎装置において、
前記遮蔽体ユニットは、前記遮蔽体ユニットの内外を連通する開口部を有することを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載された橋梁防炎装置において、
前記遮蔽体ユニットは、前記橋梁の連続方向に沿って移動することを特徴とする橋梁防炎装置。
【請求項9】
橋梁の壁高欄に沿って設置されたガイド機構と、前記ガイド機構に支持されかつ前記橋梁の上面側を覆
い、火炎を遮断する複数の遮蔽体ユニットと、を有する橋梁防炎装置の設置方法であって、
前記壁高欄に沿って前記ガイド機構を設置しておき、
複数の前記遮蔽体ユニットを順次前記ガイド機構の所定の搬入位置に搬入しつつ、搬入された前記遮蔽体ユニットを順次前記ガイド機構に沿って移動させ、所定の設置位置に配置された前記遮蔽体ユニットを相互に連結して
、前記橋梁に沿った
、火炎を遮断する遮蔽体を形成することを特徴とする橋梁防炎装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や高速道路などにおいては、渡河部分に橋梁が利用されるほか、連続的な高架橋も多用されている。都市部では、敷地の利用効率を高めるために、橋梁を上下に配置する例もある。
近年、橋梁での火災による被害を抑制する技術が開発されている。例えば、下段の橋梁で車両火災が生じた際に、上段の橋梁が火炎により損傷されることを防止するために、橋梁の下面から側面までを遮炎パネルで覆う構造が提案されている(特許文献1参照)。
このような特許文献1の橋梁防炎構造においては、下段の橋梁での車両火災のほか、沿線火災から橋梁を防護する効果も得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1の橋梁防炎構造は、専ら橋梁自体の防護を目的としていた。しかし、橋梁においては、通行する車両などの防護も必要になる。例えば、沿線火災時など、橋梁に達した火炎により、橋梁を通行する車両が延焼する可能性があり、その防止が求められる。一方、橋梁を通行する車両に火災が生じた際には、沿線の建物などへの延焼を防止することが求められる。このように、橋梁とその周囲との間で火災を遮断できる防炎装置が求められていた。
なお、橋梁における防炎装置で考慮すべき点として、橋梁を通行する車両が火災を生じた際に、乗員が脱出できること、または乗員を救出できること、言いかえれば出入りを妨げないことが求められる。また、既存の橋梁に追加的に設置する場合など、通行の一時抑止状態を最小限にすることも求められる。
【0005】
本発明の主な目的は、橋梁とその周囲との間で火災を遮断できる橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、橋梁とその周囲との間で出入りを妨げない橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の橋梁防炎装置は、橋梁の壁高欄に沿って設置されたガイド機構と、前記ガイド機構に支持されかつ前記橋梁の上面側を覆う複数の遮蔽体ユニットと、を有し、前記遮蔽体ユニットは前記橋梁の連続方向へ相互に連結されて前記橋梁に沿った遮蔽体が形成されることを特徴とする。
【0007】
このような本発明では、橋梁の連続方向に配列された複数の遮蔽体ユニットにより一連の遮蔽体が形成され、長い区間にわたって橋梁の上面側を覆うことができる。遮蔽体ユニットは、橋梁の壁高欄に設置されたガイド機構で支持され、橋梁を通行する車両などを妨げない。
橋梁を通行する車両などに火災が生じた場合、遮蔽体により火炎が遮蔽され、沿線への火災拡大を防止できる。また、沿線に火災が生じた場合、遮蔽体により火炎が遮蔽され、橋梁を通行する車両などへの火災被害を防止できる。
【0008】
さらに、本発明では、ガイド機構により、遮蔽体ユニットを橋梁に沿って移動させることができる。このため、ガイド機構の任意位置に遮蔽体ユニットを搬入し、別の位置まで移動させ、固定することで、所望の位置に設置できる。例えば、所定の搬入位置において複数の遮蔽体ユニットを順次搬入し、ガイド機構に沿って移動させて橋梁に沿って配列させることで、長尺の遮蔽体であっても効率よく組み立てることができる。とくに、搬入位置を一定とすることができ、搬入設備を同じ場所で共用でき、搬入作業を効率よく行うことができる。
【0009】
本発明の橋梁防炎装置において、前記遮蔽体ユニットは、連結される他の前記遮蔽体ユニットと互いに重ね合わせ可能なラップ部を有することが好ましい。
このような本発明では、複数の遮蔽体ユニットを連結する際に、相互のラップ部を重ね合わせることで、内外の遮蔽性能を高めることができる。
なお、ラップ部を用いずに、例えば遮蔽体ユニットの端縁どうしを突き合わせ、接続したうえシールしてもよい。
【0010】
本発明の橋梁防炎装置において、前記遮蔽体ユニットとして、外側遮蔽体ユニットと、前記外側遮蔽体ユニットの内側に収容可能な内側遮蔽体ユニットとを有することが好ましい。
このような本発明では、内側遮蔽体ユニットが外側遮蔽体ユニットの内側に収容可能であるため、互いに対向する端縁どうしを重ね合わせてラップ部を形成することができる。
さらに、一連の遮蔽体とされている状態から、内側遮蔽体ユニットまたは外側遮蔽体ユニットの一方を移動させることで、遮蔽体の一部を開放することができ、そこから人の出入りが可能である。例えば、橋梁上での事故の際の救助用出入口や排煙用換気口とすることができ、定期点検などの際には保守用出入口とすることができる。
また、内側遮蔽体ユニットと外側遮蔽体ユニットとを重ね合わせた状態で、一括して輸送することもでき、作業の効率化が図れる。
【0011】
本発明の橋梁防炎装置において、前記ガイド機構は、前記壁高欄の外側面、前記壁高欄の内側面、または前記壁高欄の上面に設置されることが好ましい。
このような本発明では、橋梁に常用される壁高欄を利用してガイド機構を設置することができ、空間を有効利用することができる。このうち、ガイド機構を壁高欄の外側に設置する場合、壁高欄の内側の通行スペースを減少させることがない。ガイド機構を壁高欄の内側に設置する場合、壁高欄の外側に設備スペースが張り出すことを防止できる。ガイド機構を壁高欄の上面に設置する場合、壁高欄の内外の設備スペースを省略できる。
【0012】
本発明の橋梁防炎装置において、前記ガイド機構は、前記橋梁に沿って設置されたレールと、前記遮蔽体ユニットに設置されて前記レールでガイドされるスライダと、を有することが好ましい。
このような本発明では、遮蔽体ユニットは、スライダを介してレールにガイドされ、橋梁に沿って移動可能である。スライダとしては、金属製のブロックを用いることができ、表面に低摩擦性のコーティング(4フッ化エチレン樹脂など)を形成することが好ましい。なお、ガイド機構としては、レールに摺動するスライダではなく、レールに転動する車輪を用いてもよい。
【0013】
本発明の橋梁防炎装置において、前記遮蔽体ユニットは、前記橋梁の幅方向の中間位置で分割可能であることが好ましい。
このような本発明では、遮蔽体ユニットを幅方向の中間位置で分割することで小型化が可能であり、搬送を容易にできる。とくに、幅方向の中央で2分割することで各側を同じ形状とすることができ、半割りのユニットを逆向きに向かい合わせて接続することで、橋梁の全幅にわたり掛け渡される遮蔽体ユニットを形成できる。
【0014】
本発明の橋梁防炎装置において、前記遮蔽体ユニットは、前記遮蔽体ユニットの内外を連通する開口部を有することが好ましい。
このような本発明では、開口部を保守用出入口あるいは救助用出入口や排煙用換気口として利用できる。幅方向に分割された遮蔽体ユニットを用いる場合、各側の間に開口部が残るように形成してもよい。
【0015】
本発明の橋梁防炎装置の設置方法は、橋梁の壁高欄に沿って設置されたガイド機構と、前記ガイド機構に支持されかつ前記橋梁の上面側を覆う複数の遮蔽体ユニットと、を有する橋梁防炎装置の設置方法であって、前記壁高欄に沿って前記ガイド機構を設置しておき、複数の前記遮蔽体ユニットを順次前記ガイド機構の所定の搬入位置に搬入しつつ、搬入された前記遮蔽体ユニットを順次前記ガイド機構に沿って移動させ、所定の設置位置に配置された前記遮蔽体ユニットを相互に連結して前記橋梁に沿った遮蔽体を形成することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の橋梁防炎装置の通りの効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、橋梁とその周囲との間で火災を遮断できる橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法を提供できる。また、橋梁とその周囲との間で出入りを妨げない橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の橋梁防炎装置の一実施形態を示す斜視図。
【
図2】前記実施形態の遮蔽体ユニットを示す斜視図。
【
図3】前記実施形態の遮蔽体ユニットを示す断面図。
【
図6】本発明のガイド機構の他の実施形態を示す断面図。
【
図7】本発明のガイド機構の他の実施形態を示す断面図。
【
図8】本発明の橋梁防炎装置の他の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、橋梁1は、地盤上に高架支持されたものであり、所定間隔で配置された図示しない橋脚に掛け渡された主桁2を有する。主桁2には、コンクリート製の路面3が形成され、その両側には連続して壁高欄4が形成されている。
【0019】
橋梁1には、壁高欄4の両外側に沿って一対のガイド機構10が設置されている。一対のガイド機構10には、複数の遮蔽体ユニット20が掛け渡されている。
複数の遮蔽体ユニット20は、それぞれ橋梁1を幅方向に跨ぐように配置され、隣接する遮蔽体ユニット20どうしが連結されている。
連結された複数の遮蔽体ユニット20により、橋梁1に沿って一連の遮蔽体9が形成され、橋梁1の上面側は遮蔽体9で覆われている。
これらの遮蔽体9およびガイド機構10により、橋梁防炎装置8が構成される。
【0020】
遮蔽体ユニット20は、上部が寄棟状の屋根部21とされ、その両側が垂直な壁部22とされている。これらの屋根部21および壁部22は、それぞれ鋼製の骨組みに耐火性のパネルを張って形成されたものの他、全体が耐火性のパネルで形成されてもよい。
遮蔽体ユニット20を形成するパネルは、耐火性を有するとともに、透明または透光性であることが好ましい。全体が透明または透光性である必要はなく、一部が不透明であってもよい。
【0021】
図2に示すように、遮蔽体ユニット20は、屋根部21の棟部分で分割された半割のユニット20L,20Rで構成することができる。
半割のユニット20L,20Rは、それぞれ片側分の屋根部21および壁部22を有する。半割のユニット20L,20Rは、製造工場で製造され、橋梁1の近傍の組立て現場まで搬送されたのち、一対を対向させて結合することで遮蔽体ユニット20とされる。
半割のユニット20L,20Rは、各々同じものを向かい合わせにしたものであってもよい。
【0022】
図3に示すように、遮蔽体ユニット20としては、外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bが用いられている。
外側遮蔽体ユニット20Aは、内側遮蔽体ユニット20Bよりも高さおよび幅が一回り大きく形成され、各々を同じ位置に配置した場合でも、外側遮蔽体ユニット20Aの内側形状と内側遮蔽体ユニット20Bの外側形状とが互いに干渉することがなく、内側遮蔽体ユニット20Bを外側遮蔽体ユニット20Aの内側に収容可能である。
【0023】
図1に戻って、外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bは、橋梁1に沿って交互に配置されている。隣接する外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bの互いに対向する辺縁では、各々の外側のラップ部23Aおよび内側のラップ部23Bが互いに重ね合わせられた状態とされている。
外側のラップ部23Aの内面と内側のラップ部23Bの外面との隙間には、耐火性のシール材などが充填される。
【0024】
遮蔽体ユニット20には、棟部分に開口部24が形成されている。
開口部24としては、屋根部21に開けられた開口が用いられるほか、半割のユニット20L,20R(
図2参照)を組立てる際に、屋根部21の棟部どうしの間隔を残したものとしてもよい(
図1参照)。
開口部24としては、人が出入りできる程度の大きさを有することが好ましい。開口部24には、適宜ドアを設けて通常は閉じられていてもよい。開口部24のドアを透明パネルとしてもよい。
このような開口部24は、遮蔽体ユニット20が複数連結されることで、遮蔽体9とされた際には橋梁1の連続方向に所定間隔で配列されることになる。
【0025】
ガイド機構10は、壁高欄4の外側面に沿ってガイドウェイ11を有する。
図4において、ガイドウェイ11は、断面L型の鋼製部材またはコンクリート製部材で形成され、壁高欄4の底面に固定されかつ壁高欄4の外側面に沿って立ち上がっている。
ガイドウェイ11の底部上面には凹溝状のレール12(12A,12B)が設置されている。本実施形態では、断面E字状の部材を用いることで、レール12A,12Bが一体に形成されている。
レール12A,12Bは、それぞれ橋梁1に沿って連続しており、橋梁1の両側のレール12Aどうしの軌間およびレール12Bどうしの軌間は、長手方向のどの部位でも互いに一定とされている。
【0026】
遮蔽体ユニット20(外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20B)の壁部22の下縁には、それぞれ複数のスライダ13が設置されている(
図3参照)。
このうち、外側遮蔽体ユニット20Aの壁部22の下縁のスライダ13は、外側のレール12Aを走行可能である。また、内側遮蔽体ユニット20Bの壁部22の下縁のスライダ13は、内側のレール12Bを走行可能である。
これらのスライダ13、レール12およびガイドウェイ11により、ガイド機構10が構成されている。
【0027】
このようなガイド機構10により、遮蔽体ユニット20(外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20B)は橋梁1に沿って移動可能とされている。
すなわち、外側遮蔽体ユニット20Aは外側のレール12Aに沿って移動可能であり、内側遮蔽体ユニット20Bは内側のレール12Bに沿って移動可能である。そして、レール12A,12Bが分離されているため、内側遮蔽体ユニット20Bはレール12B上を移動することで、レール12Aで支持される外側遮蔽体ユニット20Aの内側を通り抜けることも可能である。
【0028】
本実施形態の橋梁防炎装置8は、次のような設置手順で設置することができる。
図5において、橋梁1に沿った所定位置に搬入位置31を設定する。搬入位置31は、橋梁1の橋梁防炎装置8の設置範囲内であって、周囲に組立て現場32が確保できる位置が好ましい。
組立て現場32には、工場生産された半割のユニット20L,20Rをトラックなどで搬入する荷揚げスペースを確保しておく。組立て現場32では、搬入されたユニット20L,20Rを順次組立てて遮蔽体ユニット20(外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20B)とする作業を行う。さらに、組み立てた遮蔽体ユニット20を吊り上げ、橋梁1に設置されたガイド機構10に載せ替えるためのクレーン33などが設置される。
【0029】
組立て現場32の設営と並行して、橋梁1の橋梁防炎装置8が設置される範囲にわたって、壁高欄4に沿ってガイド機構10を設置してゆく。すなわち、橋梁1にガイドウェイ11を取り付け、レール12A,12Bを設置して連続させてゆく。
橋梁防炎装置8の設置範囲にガイド機構10が設置できたら、組立て現場32で組み立てられた遮蔽体ユニット20(外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20B)を、順次ガイド機構10の搬入位置31に搬入してゆく。搬入時には、外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bが交互に搬送される。
【0030】
搬入位置31に搬入された遮蔽体ユニット20は、両側のスライダ13がそれぞれレール12上を走行できる状態で設置される。この際、外側遮蔽体ユニット20Aでは外側のレール12A上に、内側遮蔽体ユニット20Bでは内側のレール12B上に設置される。
レール12上を走行可能な状態になったら、ワイヤなどを介してウインチなどで駆動することで、遮蔽体ユニット20を橋梁1のガイド機構10に沿って移動させる。
ガイド機構10においては,最初に搬入された遮蔽体ユニット20が、設置位置34の奥側(
図5右側)から順に配置され、続いて搬入される遮蔽体ユニット20は、既に設置位置34に設置されている遮蔽体ユニット20との連結位置まで移動され、橋梁1またはガイド機構10に対して固定される。
【0031】
連結される遮蔽体ユニット20は、先に設置されていた遮蔽体ユニット20と、互いのラップ部23A,23Bが重なり合った状態で固定される。遮蔽体ユニット20は、外側遮蔽体ユニット20A(一回り大きい)および内側遮蔽体ユニット20B(外側遮蔽体ユニット20Aの内側に収容可能)が交互に搬入され、隣接するものどうし入れ子状態とすることができ、各々のラップ部23A,23Bが所定奥行きで重なり合った状態にしたうえで固定すればよい。
このような外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bを、交互に連結してゆくことで橋梁1に沿って一連の遮蔽体9が形成され、橋梁1の上面側を覆う橋梁防炎装置8が形成される。
【0032】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態では、橋梁1の連続方向に配列された複数の遮蔽体ユニット20(外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20B)により一連の遮蔽体9が形成され、長い区間にわたって橋梁1の上面側を覆うことができる。遮蔽体ユニット20は、橋梁1の壁高欄4に設置されたガイド機構10で支持され、橋梁1を通行する車両などを妨げない。
橋梁1を通行する車両などに火災が生じた場合、遮蔽体9により火炎が遮蔽され、沿線への火災拡大を防止できる。また、橋梁1の沿線に火災が生じた場合、遮蔽体9により火炎が遮蔽され、橋梁1を通行する車両などへの火災被害を防止できる。
【0033】
本実施形態では、ガイド機構10により、遮蔽体ユニット20を橋梁1に沿って移動させることができる。このため、ガイド機構10の任意位置に遮蔽体ユニット20を搬入し、別の位置まで移動させ、固定することで、所望の位置に設置できる。例えば、所定の搬入位置31(
図5参照)において複数の遮蔽体ユニット20を順次搬入し、ガイド機構10に沿って移動させ、橋梁1に沿って配列させることで、長尺の遮蔽体9であっても効率よく組み立てることができる。とくに、搬入位置31を橋梁1の一定位置とすることができ、クレーン33などの搬入設備を同じ場所(組立て現場32)で共用でき、搬入作業を効率よく行うことができる。
【0034】
本実施形態では、複数の遮蔽体ユニット20として外側遮蔽体ユニット20A(一回り大きい)および内側遮蔽体ユニット20B(外側遮蔽体ユニット20Aの内側に収容可能)を用い、連結する際に相互のラップ部23A,23Bを重ね合わせることで、遮蔽体9としての内外の遮蔽性能を高めることができる。
【0035】
本実施形態では、内側遮蔽体ユニット20Bが、外側遮蔽体ユニット20A(一回り大きい)の内側に収容可能であるため、互いに対向する端縁どうしを重ね合わせてラップ部23A,23Bを形成することができる。
さらに、一連の遮蔽体9とされている状態から、内側遮蔽体ユニット20Bまたは外側遮蔽体ユニット20Aの一方を、固定を外してガイド機構10に沿って移動させることで、遮蔽体9の一部を開放し、内外を連通させることができ、そこから人の出入りが可能である。例えば、橋梁1上での事故の際の救助用出入口や排煙用換気口とすることができ、定期点検などの際には保守用出入口とすることができる。
また、内側遮蔽体ユニット20Bと外側遮蔽体ユニット20Aとを重ね合わせた状態で、一括して輸送することもでき、作業の効率化が図れる。
【0036】
本実施形態では、ガイド機構10は、橋梁1の壁高欄4の外側面に設置していた。このため、橋梁1に常用される壁高欄4を利用してガイド機構10を設置することができ、空間を有効利用することができる。とくに、ガイド機構10を壁高欄4の外側に設置したので、壁高欄4の内側の通行スペースを減少させることがない。
【0037】
本実施形態では、ガイド機構10に橋梁1に沿って設置されたレール12(12A,12B)と、遮蔽体ユニット20に設置されてレール12でガイドされるスライダ13と、を用いた。このため、遮蔽体ユニット20は、スライダ13でレール12を走行することができ、円滑な移動が可能である。
さらに、本実施形態では、外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bに応じた外側のレール12Aおよび内側のレール12Bを用いたので、内側遮蔽体ユニット20Bが外側遮蔽体ユニット20Aの内側を通り抜けること、あるいは外側遮蔽体ユニット20Aが内側遮蔽体ユニット20Bの外側を通り抜けることが支障なく行え、搬入時の作業の自由度を高めること、あるいは非常時の遮蔽体9の開放の範囲の拡大にも有効である。
【0038】
本実施形態では、遮蔽体ユニット20(20A,20B)は、屋根部21の棟部分で分割された半割のユニット20L,20R(橋梁1の幅方向の中間位置で分割されたもの)を組み立てて構成されるものとした。
このような遮蔽体ユニット20では、逆向きに向かい合わせて接続することで遮蔽体ユニット20となる半割のユニット20L,20Rを用いたので、搬送時に小型化が可能であり、搬送を容易にできる。そして、逆向きに向かい合わせて接続することで遮蔽体ユニット20を簡単に組み立てることができる。
このようなユニット20L,20Rは、同じ形状とすることができ、2種類を製造するのではなく、一方のみを共用化することができる。
【0039】
本実施形態では、遮蔽体ユニット20に、遮蔽体ユニット20の内外を連通する開口部24を形成したため、この開口部24を保守用出入口あるいは救助用出入口や排煙用換気口として利用できる。とくに、半割のユニット20L,20Rを用い、各々の屋根部21の棟部どうしの間隔を残すことで開口部24を容易に形成できる。
【0040】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
ガイド機構10は、前述した壁高欄4の外側面に設置されるもの(
図4参照)に限らず、壁高欄4の内側面または上面に構成してもよい。
【0041】
図6において、ガイド機構10Cは、橋梁1の壁高欄4の内側にレール12Cを有する。遮蔽体ユニット20は、壁部22の内側に壁高欄4をまたぐ支持部22Cを有し、その下縁にスライダ13が設置されている。
このようなガイド機構10Cにおいても、スライダ13がレール12Cでガイドされ、遮蔽体ユニット20が橋梁1に沿って移動できる。そして、ガイド機構10Cが壁高欄4の内側に設置されるため、壁高欄4の外側への設備スペースの張り出しを防止できる。
【0042】
図7において、ガイド機構10Dは、橋梁1の壁高欄4の上面にレール12Dを有する。遮蔽体ユニット20は、壁部22の内側に張り出す支持部22Dを有し、その下面にスライダ13が設置されている。
このようなガイド機構10Dにおいても、スライダ13がレール12Dでガイドされ、遮蔽体ユニット20が橋梁1に沿って移動できる。そして、ガイド機構10Dが壁高欄4の上面に設置されるため、壁高欄4の内外の設備スペースを省略できる。
【0043】
遮蔽体ユニット20は、半割のユニット20L,20Rで組み立てられるものに限らず、橋梁1の幅方向に一連のものであってもよい。また、遮蔽体ユニット20の屋根部21は平面に限らず、曲面その他としてもよい。
図8において、遮蔽体ユニット20Eは、円筒状の屋根部21Eと、その両側の壁部22Eとで形成されている。このような遮蔽体ユニット20Eを順次連結することで、
図1の実施形態と同様な一連の遮蔽体9を形成することができる。
【0044】
前述した
図1の遮蔽体ユニット20では、半割のユニット20L,20Rの間に隙間を空けて開口部24を形成したが、
図8の遮蔽体ユニット20Eのように、別途開口を形成して開口部24Eとしてもよい。
前述した
図1の遮蔽体ユニット20では、遮蔽体ユニット20Eの隣接する部分にラップ部23A,23Bを形成して一部を重ね合わせたが、
図8の遮蔽体ユニット20Eのように、各々の対向端縁を突き合わせてシールする構造としてもよい。一方、
図8の遮蔽体ユニット20Eにおいて、端縁に沿って段差を形成することで、同じ形状(つまり外側遮蔽体ユニット20Aおよび内側遮蔽体ユニット20Bのような2種類を準備しない)でありながら、互いの辺縁にラップ部を形成することもできる。
【0045】
前述した実施形態では、橋梁1が路面3を有する自動車用としたが、線路が設置された鉄道用であってもよい。また、遮蔽体9の設置は橋梁1の直線状部分に限らず、曲線状部分であってもよい。橋梁1の曲線状の部分であっても、ガイド機構10が橋梁1に沿って曲線状となることで、遮蔽体ユニット20等を適切にガイドすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、橋梁防炎装置および橋梁防炎装置の設置方法として利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1…橋梁、2…主桁、3…路面、4…壁高欄、8…橋梁防炎装置、9…遮蔽体、10,10C,10D…ガイド機構、11…ガイドウェイ、12,12A,12B,12C,12D…レール、13…スライダ、20,20E…遮蔽体ユニット、20A…外側遮蔽体ユニット、20B…内側遮蔽体ユニット、20L,20R…半割のユニット、21,21E…屋根部、22,22E…壁部、22C,22D…支持部、23A,23B…ラップ部、24,24E…開口部、31…搬入位置、32…組立て現場、33…クレーン、34…設置位置。