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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019142391
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021024373
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】泉川 志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-170127(JP,A)
【文献】特開2018-020652(JP,A)
【文献】特開2019-069727(JP,A)
【文献】特許第7051733(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/145280(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0092126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 ー 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流れる空気通路(3)を内部に有する空調ケース(2)と、
前記空気通路(3)に配置される冷却用熱交換器(4)と、
前記空気通路(3)に、前記空気の流れ方向における前記冷却用熱交換器(4)の下流側に配置される加熱用熱交換器(5)と、
前記空気の流れ方向における前記加熱用熱交換器(5)の上流側にスライド可能に配置され、前記加熱用熱交換器(5)の一端側に設けられた第1冷風バイパス(3a)に向かう空気と前記加熱用熱交換器(5)に向かう空気との比率を調整する第1温調ドア(11)と、
前記空気の流れ方向における前記加熱用熱交換器(5)の上流側にスライド可能に配置され、前記加熱用熱交換器(5)の前記一端側に対向する他端側に設けられた第2冷風バイパス(3b)に向かう空気と前記加熱用熱交換器(5)に向かう空気との比率を調整する第2温調ドア(15)と、
前記空気通路(3)内で前記第1温調ドア(11)と連結し、周方向の回転に伴って前記第1温調ドア(11)を移動させる第1シャフト(12)と、
前記空調ケース(2)の外部で前記第1シャフト(12)に連結され、前記第1シャフト(12)の回転軸線(X12)の周りを回転する第1外部ギア(21)と、
前記空気通路(3)内で前記第2温調ドア(15)と連結し、周方向の回転に伴って前記第2温調ドア(15)を移動させる第2シャフト(16)と、
前記空調ケース(2)の外部で前記第2シャフト(16)に連結され、前記第2シャフト(16)の回転軸線(X16)の周りを回転する第2外部ギア(25)と、
前記第1外部ギア(21)と噛み合う第1中間ギア(31)と前記第2外部ギア(25)と噛み合う第2中間ギア(35)とを含み、前記第1外部ギア(21)の回転中に前記第1外部ギア(21)の回転方向と反対の回転方向に前記第2外部ギア(25)を回転させる中間ギア部(30)と、
前記第1外部ギア(21)、前記第2外部ギア(25)および前記中間ギア部(40)のいずれかに回転駆動力を出力する回転駆動部(40)と、
を備え、
前記第1外部ギア(21)の歯先円の半径(R21)よりも、前記第2外部ギア(25)の歯先円の半径(R25)の方が大きく、
前記第1シャフト(12)の前記回転軸線(X12)と前記加熱用熱交換器(5)の外接面のうち前記空気の流れ方向における上流側を向く面(S5)との距離(L21)よりも、前記第2シャフト(16)の回転軸線(X16)と前記加熱用熱交換器(5)の外接面のうち前記上流側を向く面(S5)との距離(L25)の方が大きい、空調装置(1,100,200)。
【請求項2】
前記第2外部ギア(25)の歯先円の半径(R25)よりも、前記第2シャフト(16)の回転軸線(X16)と前記加熱用熱交換器(5)の外接面のうち前記上流側を向く面(S5)との距離(L25)の方が大きい、請求項1に記載の空調装置(1,100,200)。
【請求項3】
前記第1外部ギア(21)の基準円直径(D21)よりも、前記第2外部ギア(25)の基準円直径(D25)の方が大きく、
前記第1温調ドア(11)は、前記第1冷風バイパス(3a)の開口面積を最小にする第1バイパス閉鎖位置と前記第1冷風バイパス(3a)の開口面積を最大にする第1バイパス開放位置との間を移動可能であり、
前記第2温調ドア(15)は、前記第2冷風バイパス(3b)の開口面積を最小にする第2バイパス閉鎖位置と前記第2冷風バイパス(3b)の開口面積を最大にする第2バイパス開放位置との間を移動可能であり、
前記第1バイパス閉鎖位置から前記第1バイパス開放位置まで移動する前記第1温調ドア(11)の軌跡の長さ(T11)よりも、前記第2バイパス閉鎖位置から前記第2バイパス開放位置まで移動する前記第2温調ドア(15)の軌跡の長さ(T15)の方が短い、請求項1または2に記載の空調装置(1,100,200)。
【請求項4】
前記空調ケース(2)には、前記加熱用熱交換器(5)を前記空気通路(3)に着脱可能な着脱開口(2m)が形成されており、
前記第1外部ギア(21)および前記第2外部ギア(25)は、前記着脱開口(2m)を通じて前記加熱用熱交換器(5)を前記空気通路(3)に装着する際に、及び/又は前記着脱開口(2m)を通じて前記加熱用熱交換器(5)を前記空気通路(3)から取り外す際に、前記加熱用熱交換器(5)が通過する通過領域(A5)と干渉しない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の空調装置(1,100,200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気が流れる空気通路を内部に有する空調ケースと、空調ケース内に配置される加熱用熱交換器と、を備えた車両用の空調装置が知られている。このような空調装置では、加熱用熱交換器を迂回する迂回路と加熱用熱交換器が配置された温風通路の開口面積を変更することによって、加熱用熱交換器を迂回する空気と加熱用熱交換器を通過する空気との比率を調節し、空調装置の吹出温度を調節する。
【0003】
特許文献1および2に示された空調装置のように、加熱用熱交換器を迂回する迂回路が二つ、加熱用熱交換器の上方および下方に形成されている場合、各迂回路に対応して設けられた上下二枚の温調ドアを協調して移動させて、上側と下側それぞれの迂回路および温風通路の開口率を調節する。ここで、特許文献1に示された空調装置のように、二つの迂回路の一方よりも他方が狭い場合、上側の温調ドアは下側の温調ドアよりも軌跡の長さが長くなる。従って、二つのドアを、迂回路を全閉とする位置から迂回路を全開とする位置まで移動させるにあたり、下側の温調ドアを上側の温調ドアよりも遅い速度で移動させる必要がある。したがって、二枚の温調ドアを協調して移動させつつ、一方の温調ドアよりも他方の温調ドアを遅い速度で移動させる空調装置に対するニーズが存在する。さらに、空調装置の設計の自由度や組み立て性、保守点検時の作業性を損なうことなく、二枚の温調ドアを異なる速度で協調して移動させ得る空調装置の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-43535号公報
【文献】特開2015-110404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空調装置の設計の自由度や組み立て性、保守点検時の作業性を損なうことなく、二枚の温調ドアを異なる速度で協調して移動させることが可能な空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な一実施の形態によれば、
空気が流れる空気通路を内部に有する空調ケースと、
前記空気通路に配置される冷却用熱交換器と、
前記空気通路に、前記空気の流れ方向における前記冷却用熱交換器の下流側に配置される加熱用熱交換器と、
前記空気の流れ方向における前記加熱用熱交換器の上流側にスライド可能に配置され、前記加熱用熱交換器の一端側に設けられた第1冷風バイパスに向かう空気と前記加熱用熱交換器に向かう空気との比率を調整する第1温調ドアと、
前記空気の流れ方向における前記加熱用熱交換器の上流側にスライド可能に配置され、前記加熱用熱交換器の前記一端側に対向する他端側に設けられた第2冷風バイパスに向かう空気と前記加熱用熱交換器に向かう空気との比率を調整する第2温調ドアと、
前記空気通路内で前記第1温調ドアと連結し、周方向の回転に伴って前記第1温調ドアを移動させる第1シャフトと、
前記空調ケースの外部で前記第1シャフトに連結され、前記第1シャフトの回転軸線の周りを回転する第1外部ギアと、
前記空気通路内で前記第2温調ドアと連結し、周方向の回転に伴って前記第2温調ドアを移動させる第2シャフトと、
前記空調ケースの外部で前記第2シャフトに連結され、前記第2シャフトの回転軸線の周りを回転する第2外部ギアと、
前記第1外部ギアと噛み合う第1中間ギアと前記第2外部ギアと噛み合う第2中間ギアとを含み、前記第1外部ギアの回転中に前記第1外部ギアの回転方向と反対の回転方向に前記第2外部ギアを回転させる中間ギア部と、
前記第1外部ギア、前記第2外部ギアおよび前記中間ギア部のいずれかに回転駆動力を出力する回転駆動部と、
を備え、
前記第1外部ギアの歯先円の半径よりも、前記第2外部ギアの歯先円の半径の方が大きく、
前記第1シャフトの前記回転軸線と前記加熱用熱交換器の外接面のうち前記空気の流れ方向における上流側を向く面との距離よりも、前記第2シャフトの回転軸線と前記加熱用熱交換器の外接面のうち前記上流側を向く面との距離の方が大きい、空調装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空調装置の設計の自由度や組み立て性、保守点検時の作業性を損なうことなく、二枚の温調ドアを異なる速度で協調して移動させることが可能な空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態による空調装置の空気調和部の構成を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す空気調和部の上下方向に沿った断面図である。
図3図1に示す空気調和部のII-II線に沿った部分断面図である。
図4図1に示す空気調和部のIII-III線に沿った部分断面図である。
図5図1に示すドア装置を示す分解斜視図である。
図6図5に示すドア装置の外部ギアおよび中間ギアを示す平面図である。
図7図2に対応する図であって、空調装置の変形例を説明するための図である。
図8図2に対応する図であって、空調装置の他の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態による空調装置の空気調和部の構成を模式的に示す側面図である。また、図2は、図1に示す空気調和部の上下方向に沿った断面図である。具体的には、図2は、空気調和部を図3のI-I線に沿って切断した断面を示している。また、図3および図4は、それぞれ、図1に示す空気調和部のII-II線およびIII-III線に沿った部分断面図である。なお、図3および図4では、後述する吹出通路ドアの図示が省略されている。また、図5は、図1に示すドア装置の構成を示す分解斜視図である。
【0011】
図1乃至図4に示すように、車両用の空調装置1の空気調和部1aは、空調ケース2を有している。空調ケース2は、空気が流れる空気通路3を内部に有している。より具体的には、空調ケース2の上流側端部2aには、送風機と接続する接続口(図示せず)が形成されており、送風機から吹き出された空気が当該接続口を通じて空調ケース2の空気通路3に流れ込むようになっている。また、空調ケース2の下流側端部2bには、複数の吹出通路301,302,303が形成されており、空気通路3に流れ込んだ空気が吹出通路301,302,303から流出するようになっている。
【0012】
空調ケース2の複数の吹出通路は、デフロスト吹出通路301と、ベント吹出通路302と、フット吹出通路303とを含む。図1および図2に示すように、デフロスト吹出通路301は、空調ケース2の天面2cに設けられている。デフロスト吹出通路301の下流端は、車室内のフロントガラスの内面に向けて空気を吹き出す図示しないデフロスト吹出口に接続されている。また、ベント吹出通路302は、空調ケース2の下流側端面2dの上側部分に設けられている。ベント吹出通路302の下流端は、運転席及び助手席(場合によっては後席も)に座っている乗員の上半身に向けて空気を吹き出す図示しないベント吹出口に接続されている。また、フット吹出通路303は、空調ケース2の下流側端面2dの下側部分に設けられている。フット吹出通路303の下流端は、運転席及び助手席(場合によっては後席も)に座っている乗員の足元に向けて空気を吹き出す図示しないフット吹出口に接続されている。
【0013】
図1乃至図4に示すように、空調ケース2の空気通路3内には、冷却用熱交換器(エバポレータ)4、加熱用熱交換器(ヒータコア)5、及び、空気通路3を通流する空気の流れを変更する各種ドア(温調ドア11,15及び吹出通路ドア301D,302D,303D)が設けられている。また、運転席から見て空調ケース2の左側の側面2gには、温調ドア11,15を駆動する駆動機構20が設けられている。図示された例では、駆動機構20と温調ドア11,15とにより、ドア装置10が構成されている。
【0014】
冷却用熱交換器(エバポレータ)4は、空調ケース2内に流入した空気の全てが冷却用熱交換器4を通過するように設けられている。具体的には、冷却用熱交換器4は、空気通路3の全断面積を占有するように設けられている。冷却用熱交換器4は、そこを通過する空気から熱を奪い、かつ、空気の湿度が高い場合には空気中の水分を凝縮させることにより空気の湿度を下げる。
【0015】
加熱用熱交換器(ヒータコア)5は、空気通路3内において、空気の流れ方向における冷却用熱交換器4の下流側に配置されている。加熱用熱交換器5は、そこを通過する空気を加熱する。
【0016】
加熱用熱交換器5は、空気通路3の全断面積を占有してはいない。空調ケース2内において、加熱用熱交換器5の上方(一端側)には第1冷風バイパス3aが、下方(上記一端側に対向する他端側)には第2冷風バイパス3bが形成されている。これらの冷風バイパス3a,3bは、空気通路3内を流れる空気が加熱用熱交換器5を通過しないで(加熱用熱交換器5を迂回して)加熱用熱交換器5の下流側に流れることを可能にする。
【0017】
なお、図示された例では、加熱用熱交換器5は、空気通路3の上下方向における中央よりもやや下方に配置されている。このため、上下方向(温調ドア11,15の移動方向)において、第1冷風バイパス3aの通路幅が、第2冷風バイパス3bの通路幅よりも大きい。これにより、例えば後述するベントモードにおいて第1冷風バイパス3aの開口面積を最大にした際、空調ケース2の上側部分に設けられた後述するベント吹出通路302に、大量の冷風を送ることができる。
【0018】
また、図1に示すように、空調ケース2の左側の側面2gには、加熱用熱交換器5を空調ケース2内に挿入して空気通路3に装着し或いは空気通路3から取り外して空調ケース2から抜き出すための、着脱開口2mが設けられている。
【0019】
温調ドア11,15は、空気の流れ方向における冷却用熱交換器4と加熱用熱交換器5との間に設けられている。図示の例では、温調ドア11,15は、板状の部材であり、加熱用熱交換器5の上流側の面に概ね平行に配置されている。温調ドア11,15は、それぞれ、空気通路3の上側部分及び下側部分に設けられ、第1冷風バイパス3aおよび第2冷風バイパス3bの開口面積を調整することができるようになっている。以下では、空気通路3の上側部分に配置された温調ドア11を「第1温調ドア11」とも呼び、空気通路3の下側部分に配置された温調ドア15を「第2温調ドア15」とも呼ぶ。
【0020】
第1温調ドア11は、空気通路3の上側部分内を上下方向に沿ってスライドすることができるようになっている。そして、第1温調ドア11は、その位置に応じて、加熱用熱交換器5の上側部分5aに向かう空気と、第1冷風バイパス3aに向かう空気との比率を調整する。また、第2温調ドア15は、空気通路3の下側部分内を上下方向に沿ってスライドすることができるようになっている。第2温調ドア15は、その位置に応じて、加熱用熱交換器5の下側部分5bに向かう空気と、第2冷風バイパス3bに向かう空気との比率を調整する。
【0021】
図3および図4に示すように、第1温調ドア11および第2温調ドア15は、それぞれ、空気通路3内を左右方向に沿って延びるシャフト12,16に連結されており、シャフト12,16の回転に伴って、空気通路3の上側部分内および下側部分内を上下方向に沿ってスライドする。より具体的には、図5に示すように、各温調ドア11,15の一方の面(空気の流れ方向における上流側の面)には、その上端縁から下端縁に亘って、それぞれラック11r,15rが設けられている。また、各シャフト12,16の外周面には、このラック11r,15rと噛み合うギア12p,16pが設けられている。そして、シャフト12,16を周方向に回転させると、シャフト12,16の回転運動がギア12p,16pとラック11r,15rとによって上下方向の運動に変換され、温調ドア11,15が上下にスライドする。
【0022】
なお、図示された例では、シャフト12とシャフト16とは共用化されている。このため、ギア12pの基準円直径とギア16pの基準円直径とは、互いに等しい。したがって、仮にシャフト12およびシャフト16を同じ回転位相だけ回転させれば、第1温調ドア11および第2温調ドア15は、互いに同じ移動距離だけ移動する。
【0023】
以下では、第1温調ドア11に連結されたシャフト12を「第1シャフト12」とも呼び、第2温調ドア15に連結されたシャフト16を「第2シャフト16」とも呼ぶ。
【0024】
図3および図4に示すように、シャフト12,16は、その両端部において、空調ケース2の左右の側面2g,2hに回転可能に支持されている。図示の例では、シャフト12,16の左側の端部は、空調ケース2の外側に延び出しており、駆動機構20に接続されている。
【0025】
上述のように、第1温調ドア11は、空気通路3の上側部分内を上下方向に沿ってスライドすることにより、加熱用熱交換器5の上側部分5aに向かう空気と第1冷風バイパス3aに向かう空気との比率を調整する。すなわち、第1温調ドア11が上下方向に沿ってスライドすることにより、第1冷風バイパス3aの開口面積が変更され、また、空気の流れ方向に見て加熱用熱交換器5の上側部分5aのうち第1温調ドア11と重なる部分の面積が変更される。これにより、空気通路3の上側部分において第1冷風バイパス3aに向かう空気と加熱用熱交換器5の上側部分5aに向かう空気との比率が変更される。具体的には、図2において、第1温調ドア11が実線で示す位置にあるとき、第1冷風バイパス3aの開口面積が最小にされ、空気の流れ方向において加熱用熱交換器5の上側部分5aのうち第1温調ドア11と重なる部分の面積が最小にされる。この場合、空気通路3の上側部分において、第1冷風バイパス3aに向かう空気の割合が最小となる一方、加熱用熱交換器5に向かう空気の割合は最大となる。また、図2において、第1温調ドア11が二点鎖線で示す位置にあるとき、第1冷風バイパス3aの開口面積が最大にされ、空気の流れ方向において加熱用熱交換器5の上側部分5aのうち第1温調ドア11と重なる部分の面積が最大にされる。この場合、空気通路3の上側部分において、第1冷風バイパス3aに向かう空気の割合が最大となる一方、加熱用熱交換器5に向かう空気の割合は最小となる。
【0026】
以下では、第1温調ドア11の第1冷風バイパス3aの開口面積を最小にする位置(図2で実線で示す位置)を「第1バイパス閉鎖位置」と呼び、第1冷風バイパス3aの開口面積を最大にする位置(図2で二点鎖線で示す位置)を「第1バイパス開放位置」と呼ぶ。
【0027】
また、上述のように、第2温調ドア15は、空気通路3の下側部分内を上下方向に沿ってスライドすることにより、加熱用熱交換器5の下側部分5bに向かう空気と第2冷風バイパス3bに向かう空気との比率を調整する。すなわち、第2温調ドア15が上下方向に沿ってスライドすることにより、第2冷風バイパス3bの開口面積が変更され、また、空気の流れ方向に見て加熱用熱交換器5の下側部分5bのうち第2温調ドア15と重なる部分の面積が変更される。これにより、空気通路3の下側部分において第2冷風バイパス3bに向かう空気と加熱用熱交換器5の下側部分5bに向かう空気との比率が変更される。具体的には、図2において、第2温調ドア15が実線で示す位置にあるとき、第2冷風バイパス3bの開口面積が最小にされ、空気の流れ方向において加熱用熱交換器5の下側部分5bのうち第2温調ドア15と重なる部分の面積が最小にされる。この場合、空気通路3の下側部分において、第2冷風バイパス3bに向かう空気の割合が最小となる一方、加熱用熱交換器5に向かう空気の割合は最大となる。また、図2において、第2温調ドア15が二点鎖線で示す位置にあるとき、第2冷風バイパス3bの開口面積が最大にされ、空気の流れ方向において加熱用熱交換器5の下側部分5bのうち第2温調ドア15と重なる部分の面積が最大にされる。この場合、空気通路3の下側部分において、第2冷風バイパス3bに向かう空気の割合が最大となる一方、加熱用熱交換器5に向かう空気の割合は最小となる。
【0028】
以下では、第2温調ドア15の第2冷風バイパス3bの開口面積を最小にする位置(図2で実線で示す位置)を「第2バイパス閉鎖位置」と呼び、第2冷風バイパス3bの開口面積を最大にする位置(図2で二点鎖線で示す位置)を「第2バイパス開放位置」と呼ぶ。
【0029】
図示の例では、空調装置1において、ドア装置10は、後述する駆動機構20によって、温調ドア11,15が協調して移動するように構成されている。具体的には、ドア装置10は、第1温調ドア11が第1バイパス閉鎖位置(図2において実線で示す位置)にあるとき、第2温調ドア15が第2バイパス閉鎖位置(図2において実線で示す位置)にあり、且つ、第1温調ドア11が第1バイパス開放位置(図2において二点鎖線で示す位置)にあるとき、第2温調ドア15が第2バイパス開放位置(図2において二点鎖線で示す位置)にあるように構成されている。第1温調ドア11および第2温調ドア15の位置は、乗員により設定された空調装置1の運転モードおよび設定温度、車室内の実際の温度、車両が受ける日射量、車両の外気温度などを用いて演算された目標吹出温度に基づいて制御される。これにより、乗員により設定された空調装置1の運転モードや設定温度等に応じた温度の空気が、車室内に吹き出される。
【0030】
なお、上述の説明から理解されるように、各温調ドア11,15の位置は、それぞれ、シャフト12,16の回転位相に対応している。したがって、各温調ドア11,15の位置は、シャフト12,16の回転位相を制御することにより制御される。
【0031】
吹出通路301,302,303は、上述のように、空調ケース2の温調ドア11,15よりも下流側となる部分に形成されている(図1および図2参照)。このうち、デフロスト吹出通路301およびベント吹出通路302は、空調ケース2の上側部分に設けられている。これらの吹出通路301,302には、加熱用熱交換器5の上側部分5aおよび/または第1冷風バイパス3aを通過した空気が入りやすい傾向にある。また、フット吹出通路303は、空調ケース2の下側部分に形成されている。この吹出通路303には、加熱用熱交換器5の下側部分5bおよび/または第2冷風バイパス3bを通過した空気が入りやすい傾向にある。
【0032】
吹出通路ドア301D,302D,303Dは、それぞれ、デフロスト吹出通路301、ベント吹出通路302及びフット吹出通路303に設けられ、対応する吹出通路301,302,303の開口面積を調整する。以下では、デフロスト吹出口、ベント吹出口およびフット吹出口に続く吹出通路301,302,303を開閉するドアという意味において、吹出通路ドア301D,302D,303Dを、それぞれ、「デフロストドア301D」、「ベントドア302D」、「フットドア303D」とも呼ぶ。
【0033】
吹出通路ドア301D,302D,303Dは、空調ケース2内を左右方向に延びるシャフト301s,302s,303sから延出する板状の部材である。吹出通路ドア301D,302D,303Dは、シャフト301s,302s,303sが図示しない駆動機構によって回転されることにより、対応する吹出通路301,302,303を開放または閉鎖する。これらのドア301D,302D,303Dの開度は、車載マイクロコンピュータなどからなる制御部により制御され、吹出通路301,302,303の開口面積を任意の開口面積にすることができる。
【0034】
なお、図1乃至図5に示す空調装置1の運転モードには、例えば、デフロストモード、デフフットモード、フットモード、ベントモード、バイレベルモード等がある。デフロストモードでは、デフロストドア301Dが開かれ、かつ、ベントドア302Dとフットドア303Dが閉じられて、デフロスト吹出口から調和空気が吹き出される。デフフットモードでは、デフロストドア301D及びフットドア303Dが開かれ、かつ、ベントドア302Dが閉じられて、デフロスト吹出口及びフット吹出口から調和空気が吹き出される。フットモードでは、デフロストドア301Dとベントドア302Dとが閉じられ、かつ、フットドア303Dが開かれて、フット吹出口から調和空気が吹き出される。ベントモードでは、ベントドア302Dが開かれ、かつ、デフロストドア301D及びフットドア303Dが閉じられて、ベント吹出口から調和空気が吹き出される。バイレベルモードでは、ベントドア302D及びフットドア303Dが開かれ、かつ、デフロストドア301Dが閉じられ、ベント吹出口とフット吹出口とから調和空気が吹き出される。
【0035】
次に、図1乃至図6を参照して、第1シャフト12および第2シャフト16を互いに協調して回転させる駆動機構20について説明する。本実施の形態の駆動機構20は、空調装置1の設計の自由度が抑制される虞を低減するための工夫がなされている。また、駆動機構20は、温調ドア11,15を信頼性高く制御するための工夫がなされている。
【0036】
図6は、図1に示すドア装置10の第1外部ギア21、第2外部ギア25および中間ギア31,35を、空調ケース2に設けられた着脱開口2mと共に示す平面図である。
【0037】
図1図3および図4に示すように、駆動機構20は、空調ケース2の外側に、空調ケース2の左側の側面2gに対向して配置されている。図1に示すように、駆動機構20は、第1シャフト12の左側端部に連結された第1外部ギア21と、第2シャフト16の左側端部に連結された第2外部ギア25とを有する。また、駆動機構20は、第1外部ギア21と第2外部ギア25との間に配置されて外部ギア21,25の回転を互いに協調させる中間ギア部30と、中間ギア部30に回転駆動力を出力する回転駆動部40を有する。
【0038】
図示された例では、第1外部ギア21は、第1シャフト12の回転軸線X12の周りを回転する。また、第2外部ギア25は、第2シャフト16の回転軸線X16の周りを回転する。
【0039】
中間ギア部30は、第1外部ギア21と噛み合う第1中間ギア31と、第2外部ギア25と噛み合う第2中間ギア35とを含み、第1外部ギア21の回転中に第1外部ギア21の回転方向と反対の方向に第2外部ギア25を回転させるように構成されている。図示された例では、第1中間ギア31と第2中間ギア35とは互いに噛み合うが、第1中間ギア31と第2中間ギア35との間に更なるギアが配置されていてもよい。中間ギア31,35は、それぞれ、空調ケース2から突出する図示しない軸部によって支持されて、回転軸線X12,X16に平行な回転軸線X31,X35の周りを回転可能である。
【0040】
回転駆動部40は、アクチュエータ41を含んでいる。アクチュエータ41は、第1中間ギア31に接続されている。これにより、アクチュエータ41の回転駆動力が第1中間ギア31に伝達されると、第1中間ギア31は回転軸線X31の周りを時計回りあるいは反時計回りに回転する。
【0041】
アクチュエータ41の回転駆動力は、第1中間ギア31を介して第1外部ギア21および第2中間ギア35に伝達され、さらに、第2中間ギア35を介して第2外部ギア25に伝達される。第1外部ギア21および第2中間ギア35は、第1中間ギア31の回転方向とは反対の回転方向に回転し、第2外部ギア25は、第2中間ギア35の回転方向とは反対の回転方向に回転する。すなわち、第1外部ギア21と第2外部ギア25とは、互いに異なる回転方向に回転する。これにより、第1温調ドア11を図2に実線で示す第1バイパス閉鎖位置から二点鎖線で示す第1バイパス開放位置に向けて移動させると同時に、第2温調ドア15を、図2に実線で示す第2バイパス閉鎖位置から二点鎖線で示す第2バイパス開放位置に向けて移動させることができる。また、第1温調ドア11を第1バイパス開放位置から第1バイパス閉鎖位置に向けて移動させると同時に、第2温調ドア15を、第2バイパス開放位置から第2バイパス閉鎖位置に向けて移動させることができる。アクチュエータ41の動作量(すなわち第1中間ギア31の回転軸31aの回転位相)は、車載マイクロコンピュータなどからなる図示しない制御部により制御される。
【0042】
なお、図示された例では、回転駆動部40は、第1中間ギア31に回転駆動力を出力するが、これに限られない。回転駆動部40は、中間ギア部30を構成する他のギアあるいは外部ギア21,25に回転駆動力を出力してもよい。
【0043】
このような駆動機構20によれば、空調装置1の設計の自由度が損なわれることを防止しつつ、第1シャフト12と第2シャフト16とを協調して回転させることができる。例えば、特許文献2に開示された空調装置のように、第1外部ギア21および第2外部ギア25を、これらの外部ギア21,25と噛み合うラックを上下に移動させることでシャフト12,16を互いに協調して回転させる場合、上下に移動するラックの動きを阻害しないように空調装置1を設計する必要がある。具体的には、空調ケース2の側面2gには、とりわけ当該側面2gの天面2cあるいは底面2eの近傍には、各種配管や配線が設けられることが多い。しかしながら、上下に動くラックを用いてシャフト12,16を回転させる場合、ラックが上記配管や配線と干渉しないよう、当該配管や配線を、第1外部ギア21の上方領域および第2外部ギア25の下方領域を避けて設置する必要がある。一方、本実施の形態の駆動機構20によれば、第1外部ギア21の上方領域および第2外部ギア25の下方領域を、上記配管や配線の設置スペースとして利用することができる。したがって、空調装置1の設計の自由度が損なわれる虞が低減される。
【0044】
また、第1シャフト12と第2シャフト16とを協調して回転させる方法として、第1シャフト12および第2シャフト16にベルト部材を巻き掛け、当該ベルト部材を介して第1シャフト12の回転と第2シャフト16の回転とを協調させる方法も考えられる。しかしながら、この場合、ベルト部材が伸縮したり破断したりして、第1シャフト12および第2シャフト16の回転を所望のように協調させることができなくなる虞がある。一方、本実施の形態の駆動機構20によれば、第1シャフト12および第2シャフト16の回転を協調させるための部材(具体的には中間ギア部30)が伸縮したり破断したりする虞が低い。したがって、第1シャフト12および第2シャフト16の回転を所望のように協調させ、温調ドア11,15を信頼性高く制御することができる。
【0045】
上述したように、図示された例では、温調ドア11,15の移動方向において、第1冷風バイパス3aの通路幅が、第2冷風バイパス3bの通路幅よりも大きい。すなわち、温調ドア11,15の移動方向において、第1冷風バイパス3aの通路幅よりも、第2冷風バイパス3bの通路幅が小さい。この場合、第1温調ドア11を第1バイパス閉鎖位置から第1バイパス開放位置まで移動させる際の第1温調ドア11の軌跡の長さT11(図2参照)よりも、第2温調ドア15を第2バイパス閉鎖位置から第2バイパス開放位置まで移動させる際の第2温調ドア15の軌跡の長さT15(図2参照)の方が短くなるように、第1シャフト12および第2シャフト16を回転させる必要がある。具体的には、第1シャフト12の回転位相よりも第2シャフト16の回転位相が小さくなるように、第1シャフト12および第2シャフト16を回転させる必要がある。
【0046】
図示された例では、第1シャフト12に連結する第1外部ギア21の基準円直径D21よりも、第2シャフト16に連結する第2外部ギア25の基準円直径D25が大きい。これにより、外部ギア21,25が回転する際の第1シャフト12の回転位相よりも第2シャフト16の回転位相を小さくすることができる。なお、一般に、ギアの基準円直径が大きいほど、当該ギアの歯先円の半径も大きくなる。したがって、図示された例では、第1外部ギア21の歯先円の半径R21よりも、第2外部ギア25の歯先円の半径R25が大きい。
【0047】
ところで、上述したように、空調ケース2には、加熱用熱交換器5を空気通路3に着脱するための着脱開口2mが形成されている。着脱開口2mは、駆動機構20の近傍に形成されており、空調装置1を組み立てる際、着脱開口2mを通じて加熱用熱交換器5を空気通路3に装着する。また、空調装置1を保守点検する際、着脱開口2mを通じて加熱用熱交換器5を空気通路3から取り外す。したがって、空調装置1の組み立て性あるいは保守点検時の作業性を損なわないために、駆動機構20のギア21,25,31,35は、加熱用熱交換器5を空気通路3に装着する際あるいは空気通路3から取り外す際に加熱用熱交換器5が通過する通過領域A5(具体的には、図1および図6においては破線5を底面とする直方体となる領域)と干渉しないように設けられる必要がある。
【0048】
したがって、外部ギア21,25および中間ギア31,35は、上記通過領域A5と干渉しないように配置される。具体的には、図6に示すように、第1外部ギア21は、第1外部ギア21の歯先円の半径R21よりも、第1外部ギア21の回転軸線(すなわち、第1シャフト12の回転軸線X12)と加熱用熱交換器5の外接面のうち空気の流れ方向における上流側を向く面S5との距離L21が大きくなるように、配置される。同様に、中間ギア31,35は、中間ギア31,35の歯先円の半径R31,R35よりも、中間ギア31,35の回転軸線X31,X35と上記上流側を向く面S5との距離L31,L35が大きくなるように、配置される。また、第2外部ギア25は、第2外部ギア25の歯先円の半径R25よりも、第2外部ギア25の回転軸線(すなわち、第2シャフト16の回転軸線X16)と上記上流側を向く面S5との距離L25が大きくなるように、配置される。
【0049】
ここで、温調ドア11,15は、温調ドア11,15による温度調節機能が最も望ましく発揮されるよう、加熱用熱交換器5に十分に近接して配置されることが好ましい。言い換えると、第1温調ドア11が第1バイパス開放位置にあり第2温調ドア15が第2バイパス開放位置にあるとき、冷風バイパス3a,3bに向かった空気が温調ドア11,15の下流側で温調ドア11,15と加熱用熱交換器5の間に意図せずに回り込んで加熱用熱交換器5を通過する虞や、第1温調ドア11が第1バイパス閉鎖位置にあり第2温調ドア15が第2バイパス閉鎖位置にあるとき、加熱用熱交換器5に向かった空気が温調ドア11,15の下流側で加熱用熱交換器5を意図せずに迂回して冷風バイパス3a,3bに向かう虞を最も望ましく低減可能なよう、温調ドア11,15は加熱用熱交換器5に十分に近接して配置されることが好ましい。
【0050】
このような事情を考慮して、第1温調ドア11は、第1温調ドア11による温度調節機能が最も望ましく発揮されるよう、加熱用熱交換器5に十分に近接して配置される。そして、第2温調ドア15のみが、第2外部ギア25の歯先円の半径R25に応じて、第2温調ドア15による温度調節機能が最も望ましく発揮される位置よりも加熱用熱交換器5から離れた位置に配置される(図2乃至図4参照)。このように温調ドア11,15を配置することで、温調ドア11,15がその移動方向に整列するように共に加熱用熱交換器5から離れた位置に配置される場合と比較して、温調ドア11,15全体として発揮する温度調節機能が損なわれる虞を、効果的に低減させることができる。
【0051】
なお、上述のように第2温調ドア15が第1温調ドア11よりも加熱用熱交換器5から離れて配置されることに伴って、第2シャフト16は、第1シャフト12よりも加熱用熱交換器5から離れて配置される。このため、図6に示すように、第1シャフト12の回転軸線X12と加熱用熱交換器5の外接面の上記上流側を向く面S5との距離L21よりも、第2シャフト16の回転軸線X16と上記上流側を向く面S5との距離L25の方が大きい。
【0052】
また、第2温調ドア15が第1温調ドア11よりも加熱用熱交換器5から離れて配置されるため、すなわち温調ドア11,15が移動方向に整列していないため、図示された例では、空気通路3には、空調ケース2の左右方向に延びるリブ6が設けられている。リブ6は、その上面が第1バイパス開放位置に配置された第1温調ドア11の下端部と接触し、その下面が第2バイパス開放位置に配置された第2温調ドア15の上端部と接触するように配置されている。これにより、第1温調ドア11が第1バイパス開放位置に配置され、第2温調ドア15が第2バイパス開放位置に配置された際、第1温調ドア11の下端部と第2温調ドア15の上端部との間に隙間が形成されて空気通路3を流れる空気の一部が加熱用熱交換器5に向かうことを防止することができる。
【0053】
なお、図1乃至図6に示す例では、第1温調ドア11および第2温調ドア15は、それぞれのドアの軌跡が形成する面について互いに平行に配置されているが、これに限られない。例えば、第1温調ドア11および第2温調ドア15は、図7および図8に示す空調装置100,200の空気調和部100a,200aの温調ドア11,15のように、それぞれのドアの軌跡が形成する面について互いに非平行に配置されてもよい。また、この場合、図8に示すように、第1バイパス開放位置に配置された第1温調ドア11の下端部と第2バイパス開放位置に配置された第2温調ドア15の上端部とが当接するように、第1温調ドア11および第2温調ドア15を配置してもよい。この場合、空気通路3に上述したリブ6を設けなくても、第1バイパス開放位置に配置された第1温調ドア11の下端部と第2バイパス開放位置に配置された第2温調ドア15の上端部との間を通じて空気が加熱用熱交換器5に向かうことを防止することができる。また、図示しないが、リブ6を設けたとしても小型化できる。
【0054】
なお、上述した実施形態およびその変形例において、説明の便宜上、冷風バイパス3a,3bと加熱用熱交換器5とが並ぶ方向や、温調ドア11,15の並ぶ方向、シャフト12,16の並ぶ方向、並びに、ギア21,25,31,35の並ぶ方向が、図1図2図6乃至図8の上下方向に沿っている。しかしながら、このことによって、空調装置1,100,200が実際に車両に組み込まれた場合の冷風バイパス3a,3bと加熱用熱交換器5とが並ぶ方向や、温調ドア11,15の並ぶ方向、シャフト12,16の並ぶ方向、ギア21,25,31,35の並ぶ方向が上下方向(鉛直方向)に沿うものと限定されるわけではない。また、上述した実施形態およびその変形例において、説明の便宜上、シャフト12,16,301s,302s,303sの延びる方向が、図3および図4の左右方向に沿っている。しかしながら、このことによって、空調装置1,100,200が実際に車両に組み込まれた場合のシャフト12,16,301s,302s,303sの延びる方向が、運転席から見た左右方向に沿うものと限定されるわけではない。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、空調装置1,100,200は、空気が流れる空気通路3を内部に有する空調ケース2と、空気通路3に配置される冷却用熱交換器4と、空気通路3に、空気の流れ方向における冷却用熱交換器4の下流側に配置される加熱用熱交換器5と、を備えている。また、空調装置1,100,200は、空気の流れ方向における加熱用熱交換器5の上流側にスライド可能に配置され、加熱用熱交換器5の一端側に設けられた第1冷風バイパス3aに向かう空気と加熱用熱交換器5に向かう空気との比率を調整する第1温調ドア11と、空気の流れ方向における加熱用熱交換器5の上流側にスライド可能に配置され、加熱用熱交換器5の上記一端側に対向する他端側に設けられた第2冷風バイパス3bに向かう空気と加熱用熱交換器5に向かう空気との比率を調整する第2温調ドア15と、を備えている。また、空調装置1,100,200は、空気通路3内で第1温調ドア11と連結し、周方向の回転に伴って第1温調ドア11を移動させる第1シャフト12と、空調ケース2の外部で第1シャフト12に連結され、第1シャフト12の回転軸線X12の周りを回転する第1外部ギア21と、空気通路3内で第2温調ドア15と連結し、周方向の回転に伴って第2温調ドア15を移動させる第2シャフト16と、空調ケース2の外部で第2シャフト16に連結され、第2シャフト16の回転軸線X16の周りを回転する第2外部ギア25と、第1外部ギア21と噛み合う第1中間ギア31と第2外部ギア25と噛み合う第2中間ギア35とを含み、第1外部ギア21の回転中に第1外部ギア21の回転方向と反対の回転方向に第2外部ギア25を回転させる中間ギア部30と、第1外部ギア21、第2外部ギア25および中間ギア部30のいずれかに回転駆動力を出力する回転駆動部40と、を備えている。そして、第1外部ギア21の歯先円の半径R21よりも、第2外部ギア25の歯先円の半径R25の方が大きく、また、第1シャフト12の回転軸線X12と加熱用熱交換器5の外接面のうち上記空気の流れ方向における上流側を向く面S5との距離L21よりも、第2シャフト16の回転軸線X16と加熱用熱交換器5の外接面のうち上流側を向く面S5との距離L25の方が大きい。
【0056】
このような空調装置1,100,200によれば、空調装置1,100,200の設計の自由度や組み立て性、保守点検時の作業性を損なうことなく、第1の温調ドア11よりも第2の温調ドア15を遅い速度で協調して移動させることが可能である。
【0057】
具体的には、第2外部ギア25の歯先円の半径R25よりも、第2シャフト16の回転軸線X16と加熱用熱交換器5の外接面のうち上流側を向く面S5との距離L25の方が大きい。このように第2外部ギア25の位置を決定することにより、第1外部ギア21よりも歯先円の半径が大きい第2外部ギア25が邪魔をして加熱用熱交換器5の空気通路3への装着および空気通路3からの取り外しが阻害される、ということが防止される。すなわち、第2外部ギア25によって空調装置1,100,200の組み立て性や保守点検時の作業性が損なわれることが、防止される。
【0058】
また、本実施の形態によれば、第1外部ギア21の基準円直径D21よりも、第2外部ギア25の基準円直径D25の方が大きい。また、第1温調ドア11は、第1冷風バイパス3aの開口面積を最小にする第1バイパス閉鎖位置と第1冷風バイパス3aの開口面積を最大にする第1バイパス開放位置との間を移動可能である。また、第2温調ドア15は、第2冷風バイパス3bの開口面積を最小にする第2バイパス閉鎖位置と第2冷風バイパス3bの開口面積を最大にする第2バイパス開放位置との間を移動可能である。そして、第1バイパス閉鎖位置から第1バイパス開放位置まで移動する第1温調ドア11の軌跡の長さT11よりも、第2バイパス閉鎖位置から第2バイパス開放位置まで移動する第2温調ドア15の軌跡の長さT15の方が短い。
【0059】
このような空調装置1,100,200によれば、最大の開口面積が異なる2つの冷風バイパス3a,3bの開放、及び閉塞を協調して同時に行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、空調ケース2には、加熱用熱交換器5を空気通路3に着脱可能な着脱開口2mが形成されている。そして、第1外部ギア21および第2外部ギア25は、着脱開口2mを通じて加熱用熱交換器5を空気通路3に装着する際に、及び/又は着脱開口2mを通じて加熱用熱交換器5を空気通路3から取り外す際に、加熱用熱交換器5が通過する通過領域A5と干渉しない。
【0061】
このような空調装置1,100,200によれば、外部ギア21,25が邪魔をして加熱用熱交換器5の空気通路3への装着および空気通路3からの取り外しが阻害される、ということが防止される。すなわち、外部ギア21,25によって空調装置1,100,200の組み立て性や保守点検時の作業性が損なわれることが、防止される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る空調装置は、工業的に製造することができ、また商取引の対象とすることができるから、経済的価値を有して産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,100、200 車両用の空調装置
2 空調ケース
2m 着脱開口
3 空気通路
5 加熱用熱交換器
A5 通過領域
S5 加熱用熱交換器の外接面のうち上流側を向く面
10 ドア装置
11 第1温調ドア
12 第1シャフト
15 第2温調ドア
16 第2シャフト
20 駆動機構
21 第1外部ギア
25 第2外部ギア
30 中間ギア部
40 回転駆動部
41 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8