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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
H04B1/04 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019160570
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021040247
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 将吉
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-013248(JP,A)
【文献】特開2001-332986(JP,A)
【文献】特開2015-192414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0151898(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1378400(CN,A)
【文献】米国特許第08873662(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を増幅して出力するパワーアンプと、
少なくとも2つ以上のアンテナのうち、前記パワーアンプからの送信信号を出力するアンテナを切り替えるアンテナスイッチと、
前記アンテナスイッチに前記アンテナを切り替えるための切替制御信号を出力した際に、前記パワーアンプの出力パワー制御を行う制御回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記アンテナの切り替えを、所定の切替期間の中央で行うように、前記切替制御信号を前記アンテナスイッチに出力し、前記所定の切替期間の内、前記アンテナの切り替えを行うまで、前記パワーアンプの出力をパワーダウンさせ、前記アンテナの切り替えを行った後、前記パワーアンプの出力をパワーアップさせる
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
送信データから搬送波の同相成分の第1信号及び直交成分の第2信号を生成し、少なくとも2つ以上のアンテナのうち、いずれかのアンテナに切り替えるための切替制御信号を出力した際に、前記第1信号及び前記第2信号の振幅制御を行う制御回路と、
前記切替制御信号に基づき、前記送信データを出力するアンテナに切り替えるアンテナスイッチと、
変調回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記アンテナの切り替えを、所定の切替期間の中央で行うように、前記切替制御信号を前記アンテナスイッチに出力し、
前記変調回路は、前記所定の切替期間の内、前記アンテナの切り替えを行うまで、前記第1信号及び前記第2信号の振幅を小さくし、前記アンテナの切り替えを行った後、前記第1信号及び前記第2信号の振幅を大きくする
ことを特徴とする送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近接無線通信のBluetooth(登録商標)の次期規格としてBLE(Bluetooth Low Energy)が策定されている。BLEは、頻繁に接続・切断を繰り返すことで電力消費を抑えるようになっている。
【0003】
BLEは、1つのパケット内で、1usあるいは2usでの高速なアンテナスイッチの切り替えを行っている。この場合、信号を送信した状態でアンテナスイッチを切り替えるため、高速切り替えの不連続性によるスプリアスが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-274625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、実施形態は、複数のアンテナの高速切り替えの不連続性によるスプリアスの発生を抑制することができる送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の送信装置は、パワーアンプと、アンテナスイッチと、制御回路とを有する。パワーアンプは、送信信号を増幅して出力する。アンテナスイッチは、少なくとも2つ以上のアンテナのうち、パワーアンプからの送信信号を出力するアンテナを切り替える。制御回路は、アンテナスイッチにアンテナを切り替えるための切替制御信号を出力した際に、パワーアンプの出力パワー制御を行う。また、制御回路は、アンテナの切り替えを、所定の切替期間の中央で行うように、切替制御信号をアンテナスイッチに出力し、所定の切替期間の内、アンテナの切り替えを行うまで、パワーアンプの出力をパワーダウンさせ、アンテナの切り替えを行った後、パワーアンプの出力をパワーアップさせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る送信装置の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態のパケットの構造の一例を示す図である。
図3】本実施形態のアンテナの切り替えとパワーアンプのRamp制御の一例を説明するための図である。
図4】本実施形態のRamp制御による効果について説明するための図である。
図5】第2の実施形態に係る送信装置の一例を示すブロック図である。
図6】本実施形態のアンテナの切り替えとIQ複素振幅制御の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
まず、図1に基づき、第1の実施形態に係る送信装置の構成を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る送信装置の一例を示すブロック図である。
【0009】
送信装置1は、変調回路11と、PLL(Phase Locked Loop)回路12と、TXVCO回路(送信用電圧制御発信回路)13と、パワーアンプ14と、アンテナスイッチ15と、複数のアンテナ16とを有して構成されている。なお、送信装置1は、4つのアンテナ16a~16dを有して構成されているが、これに限定されることなく、2つ、3つ、あるいは、5つ以上のアンテナを有して構成されていてもよい。
【0010】
制御回路を構成する変調回路11には、パケットが入力される。変調回路11は、パケットPをFSK変調し、PLL12に出力する。また、変調回路11は、アンテナ16を切り替えるためのアンテナ切替制御信号(ANT CNT)をアンテナスイッチ15に出力する。さらに、変調回路11は、アンテナ16の切り替えに同期させて、パワーアンプ14のRamp制御(出力パワー制御)を行うためのPA Ramp制御信号を出力する。
【0011】
PLL回路12は、パケットPに応じた送信データをTXVCO回路13に出力するとともに、TXVCO回路13から帰還した発振信号をフェーズロックして生成したPLL信号をTXVCO回路13に出力する。
【0012】
TXVCO回路13は、PLL信号に基づいて、発振信号を生成する。また、TXVCO回路13は、PLL回路12からの送信データと、生成した発振信号とに基づき、所定の周波数を有する送信信号Txを生成し、パワーアンプ14に出力する。
【0013】
パワーアンプ14は、送信信号Txを増幅し、アンテナスイッチ15に出力する。また、パワーアンプ14は、変調回路11からのPA Ramp制御信号に応じて、アンテナ16の切り替えに同期したRamp制御を行う。
【0014】
アンテナスイッチ15は、アンテナ切替制御信号に基づいて、接続するアンテナを切り替える。これにより、接続されているアンテナ16から送信信号Txが送信される。
【0015】
図2は、本実施形態のパケットの構造の一例を示す図である。
パケットPは、4usのGuard period、8usのReference periodを有して構成されている。その後、アンテナの切り替えと送信信号Txの送信が交互に構成されている。具体的には、パケットは、Reference periodの後に、それぞれ1usまたは2usのSW slot A1、Tx slot B1、SW slot A2、Tx slot B2、・・・、SW slot An、Tx slot Bnを有して構成されている。
【0016】
SW slot A1、SW slot A2等は、アンテナ16を切り替える所定の切替期間であり、Tx slot B1、Tx slot B2等は、切り替えられたアンテナ16から送信信号Txを送信する期間である。
【0017】
本実施形態では、SW slot A1の期間においてアンテナ16aに切り替え、Tx slot B1の期間にアンテナ16aから送信信号Txを送信する。次に、SW slot A2の期間においてアンテナ16bに切り替え、Tx slot B2の期間に切り替えられたアンテナ16bから送信信号Txを送信する。
【0018】
図3は、本実施形態のアンテナの切り替えとパワーアンプのRamp制御の一例を説明するための図である。図3では、切替期間、及び、送信期間がそれぞれ2usとなっている。
【0019】
図3に示すように、変調回路11は、SW slot A1の先頭から1usの時刻において、アンテナ切替制御信号(ANT CNT)を有効にし、アンテナスイッチ15の切り替えを行う。さらに、変調回路11は、SW slot A1の先頭から1usにおいて、パワーアンプ14の出力パワーをダウンさせるPA Ramp制御信号を出力する。
【0020】
変調回路11は、アンテナスイッチ15を切り替えた後、すなわち、送信信号Txを送信するアンテナを切り替えた後、パワーアンプ14の出力パワーをアップさせるPA Ramp制御信号を出力する。そして、変調回路11は、他のアンテナの切替期間においても、SW slot A1と同様の制御を行っている。
【0021】
本実施形態では、切替期間の中央でアンテナ16の切替を行っているため、変調回路11は、切替期間の中央でパワーアンプ14の出力パワーが最小になるようにPA Ramp制御信号を出力する。そのため、切替期間の先頭から1usにおいて、パワーアンプ14の出力パワーをダウンさせ、アンテナ16を切り替えた後、切替期間の後半の1usにおいて、パワーアンプ14の出力パワーをアップさせる。
【0022】
なお、本実施形態では、変調回路11は、切替期間の中央でアンテナ16の切り替えを行っているが、これに限定されるものではない。例えば、変調回路11は、切替期間内であれば、どのタイミングでもアンテナ16の切り替えを行ってもよい。
【0023】
図4は、本実施形態のRamp制御による効果について説明するための図である。Ramp制御の実施がない場合、アンテナ16の高速切り替えの不連続性によるスプリアスが発生している。これに対し、本実施形態のRamp制御の実施がある場合、アンテナ16の高速切り替えの不連続性によるスプリアスの発生が抑えられている。
【0024】
本実施形態の送信装置1は、スプリアスの発生が抑えられることにより、周波数F1において、利得が約8dB改善している。
【0025】
本実施形態の送信装置によれば、1つのパケット内において、アンテナの切り替え毎に同期させて、パワーアンプ14のRamp制御を複数回行うようにしている。これにより、複数のアンテナの高速切り替えの不連続性によるスプリアスの発生を抑制することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態に係る送信装置の一例を示すブロック図である。なお、図5において、図1と同様に構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
送信装置1Aは、図1の各構成に加え、デジタルアナログ変換器(以下、DACという)21、24、ミキサ22、25、及び、位相器23を有して構成されている。また、送信装置1Aは、図1の変調回路11に代わり、変調回路11Aを有して構成されている。
【0028】
制御回路を構成する変調回路11Aは、アンテナ16の切り替えを制御するためのアンテナ切替制御信号をアンテナスイッチ15に出力する。また、変調回路11Aは、入力されたパケットに基づいて、搬送波の同相成分のI信号及び直交成分のQ信号を生成する。I信号をDAC21に出力し、Q信号をDAC24に出力する。変調回路11Aは、アンテナ16の切り替えに同期させて、I信号及びQ信号のIQ複素振幅制御を行う。
【0029】
DAC21は、アナログ変換したI信号をミキサ22に出力する。DAC24は、アナログ変換したQ信号をミキサ25に出力する。
【0030】
位相器23は、TXVCO回路13からの、同相の発振信号と、位相を90°シフトした発振信号を生成する。同相の発振信号をミキサ22に出力し、90°シフトした発振信号をミキサ25に出力する。
【0031】
ミキサ22は、アナログ信号のI信号と、同相の発振信号とを混合してパワーアンプ14に出力する。ミキサ25は、アナログ信号のQ信号と、90°シフトした発振信号とを混合してパワーアンプ14に出力する。なお、ミキサ22、25の出力は、加算されてパワーアンプ14に入力される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0032】
次に、本実施形態のアンテナの切り替えとIQ複素振幅制御について図6を用いて説明する。図6は、本実施形態のアンテナの切り替えとIQ複素振幅制御の一例を説明するための図である。
【0033】
変調回路11Aは、SW slot A1の先頭から1usの時刻において、アンテナ切替制御信号(ANT CNT)を有効にし、アンテナスイッチ15の切り替えを行う。このとき、変調回路11Aは、I信号及びQ信号のIQ複素振幅の制御を行っていない。IQ複素振幅は、I信号の振幅をI、Q信号の振幅をQとすると、√(I+Q)で表される。アンテナスイッチ15を切り替えた後、変調回路11Aは、I信号及びQ信号のIQ複素振幅を所定の振幅値に上げる制御を行う。続いて、変調回路11Aは、Tx slot B1の期間において、IQ複素振幅を所定の振幅値に維持する制御を行う。
【0034】
また、変調回路11Aは、SW slot A2の先頭から1usにおいて、IQ複素振幅を下げる制御を行う。さらに、変調回路11Aは、SW slot A2の先頭から1usの時刻において、アンテナ切替制御信号(ANT CNT)を有効にし、アンテナスイッチ15の切り替えを行う。変調回路11Aは、アンテナスイッチ15を切り替えた後、IQ複素振幅を上げる制御を行う。変調回路11Aは、他のアンテナの切替期間においても、SW slot A2と同様の制御を行っている。
【0035】
本実施形態では、送信装置1は、1つのパケットP内において、アンテナの切り替えに同期させて、IQ複素振幅制御を複数回行うようにしている。これにより、送信装置1Aは、第1の実施形態と同様に、アンテナ16の高速切り替えの不連続性によるスプリアスの発生を抑えるようにしている。
【0036】
以上により、本実施形態の送信装置によれば、第1の実施形態と同様に、複数のアンテナの高速切り替えの不連続性によるスプリアスの発生を抑制することができる。
【0037】
発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1,1A…送信装置、11,11A…変調回路、12…PLL回路、13…TXVCO回路、14…パワーアンプ、15…アンテナスイッチ、16a,16b,16c,16d…アンテナ、21,24…DAC、22,25…ミキサ、23…位相器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6