(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】高強度鋼製品及び該製品を製造するためのアニーリング工程
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20221202BHJP
C22C 38/06 20060101ALI20221202BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20221202BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/06
C22C38/14
C21D9/46 G
(21)【出願番号】P 2019511825
(86)(22)【出願日】2017-05-10
(86)【国際出願番号】 US2017031938
(87)【国際公開番号】W WO2017196965
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-01
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518399313
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ スチール コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES STEEL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホイディック,デイビッド ポール
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,エドゥアルド アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】マッコスビー,マシュー マイケル
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-302734(JP,A)
【文献】特開2004-218025(JP,A)
【文献】特開2006-283130(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099402(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/06
C22C 38/14
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cを0.17~0.35質量%、Mnを1.5~2.3質量%、Siを0.4~1.5質量%、Alを最大1質量%でSiとの合計量が0.8質量%以上、Tiを最大0.02質量%、Nbを最大0.02質量%含み、残部Fe及び不純物である高強度冷間圧延鋼板製品であって、
前記鋼板製品は
、ミクロ組織が、フェライト結晶粒と、平均アスペクト比が2:1より小さく、平均結晶粒径が1ミクロン未満であって、実質的に等軸の残留オーステナイト結晶粒とを含み、極限引張強さと全伸びとの組合せであるUTS・TEが25,000MPa%より大きい、高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項2】
Cを0.12~0.5質量%、Mnを1~3質量%、Si及びAlの組合せを0.8~3質量%含み、残部Fe及び不純物である高強度冷間圧延鋼板製品であって、
前記鋼板製品は
、ミクロ組織が、フェライト結晶粒と、平均アスペクト比が2:1より小さく、平均結晶粒径が1ミクロン未満であって、実質的に等軸の残留オーステナイト結晶粒とを含み、フェライトは少なくとも50体積%、残留オーステナイトは5~25体積%であり、極限引張強さと全伸びとの組合せであるUTS・TEが25,000MPa%より大きい、高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項3】
Cを0.12~0.5質量%、Mnを1~3質量%、Si及びAlの組合せを0.8~3質量%含み、残部Fe及び不純物である高強度冷間圧延鋼板製品であって、
前記鋼板製品は
、ミクロ組織が、フェライト結晶粒と、平均アスペクト比が2:1より小さく、平均結晶粒径が1ミクロン未満であって、実質的に等軸の残留オーステナイト結晶粒とを含み、極限引張強さと全伸びとの組合せであるUTS・TEが25,000MPa%より大きい、高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項4】
Cを0.12~0.5質量%、Mnを1~3質量%、Si及びAlの組合せを0.8~3質量%含み、残部Fe及び不純物である高強度冷間圧延鋼板製品であって、
前記鋼板製品は
、ミクロ組織が、フェライト結晶粒と、平均アスペクト比が2:1より小さく、平均結晶粒径が1ミクロン未満であって、実質的に等軸の残留オーステナイト結晶粒とを含み、15体積%未満のフレッシュマルテンサイトを含み、極限引張強さと全伸びとの組合せであるUTS・TEが25,000MPa%より大きい、高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項5】
鋼板製品は、720~1,100MPaの極限引張強さと、少なくとも20%の全伸びを有する、請求項1乃至4の何れかの高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項6】
鋼板製品は、20%超の穴広がり比を有する、請求項1乃至4の何れかの高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項7】
UTS・TEは、少なくとも30,000MPa%である、請求項1乃至4の何れかの高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項8】
鋼板製品に亜鉛ベースのめっきをさらに含む、請求項1乃至4の何れかの高強度冷間圧延鋼板製品。
【請求項9】
フェライト結晶粒と、平均アスペクト比が2:1より小さく、平均結晶粒径が1ミクロン未満であって、実質的に等軸の残留オーステナイト結晶粒とを含み、極限引張強さと全伸びとの組合せであるUTS・TEが25,000MPa%より大きい高強度冷間圧延鋼板製品を、第1段階のアニーリング工程及び第2段階の工程によって製造する方法であって、
前記鋼板製品は、Cを0.12~0.5質量%、Mnを1~3質量%、Si及びAlの組合せを0.8~3質量%含み、残部Fe及び不純物からなり、
前記第1段階のアニーリング工程が、前記鋼板製品を、820~980℃の温度に加熱した後、少なくともマルテンサイト変態開始温度よりも低い温度まで急冷することを含み、
前記第2段階の工程が、前記鋼板製品を720~850℃の温度の変態区間で均熱し、次いで、前記鋼板製品を360~440℃の温度で保持することを含む、方法。
【請求項10】
第1段階のアニーリング工程は、830~940℃の温度で行われる、請求項9の方法。
【請求項11】
第2段階の保持工程は370~430℃の温度で行われる、請求項9の方法。
【請求項12】
鋼板製品は、第1段階の工程と第2段階の工程との間で、300℃より低い温度に冷却される、請求項9の方法。
【請求項13】
鋼板製品は、第2段階の均熱工程と第2段階の保持工程との間で、300℃を超える温度に維持される、請求項9の方法。
【請求項14】
第1段階のアニーリング工程は、連続アニーリングラインで行われ、第2段階の工程は、連続アニーリングラインで行われる、請求項9の方法。
【請求項15】
同じ連続アニーリングラインが、第1段階のアニーリング工程及び第2段階の工程の両方に用いられる、請求項14の方法。
【請求項16】
異なる連続アニーリングラインが、第1段階のアニーリング工程と第2段階の工程に用いられる、請求項14の方法。
【請求項17】
第1段階のアニーリング工程は、連続アニーリングラインで行われ、第2段階の工程は、連続亜鉛めっきラインで行われる、請求項9の方法。
【請求項18】
鋼板製品に亜鉛ベースめっきで電解めっきすることをさらに含む、請求項9の方法。
【請求項19】
Siは最大2質量%、Alは最大2質量%を含み、鋼板製品は、最大0.05質量%のTiと、最大0.05質量%のNbとをさらに含む、請求項9の方法。
【請求項20】
Cは0.15~0.4質量%含み、Mnは1.3~2.5質量%含み、Siは0.2~1.8質量%含み、Alは最大1.5質量%を含み、Tiは最大0.03質量%含み、Nbは最大0.03質量%含む、請求項19の方法。
【請求項21】
Cは0.17~0.35質量%含み、Mnは1.5~2.3質量%含み、Siは0.4~1.5質量%含み、Alは最大1質量%を含み、Tiは最大0.02質量%含み、Nbは最大0.02質量%含む、請求項19の方法。
【請求項22】
フェライトは、少なくとも50体積%を含み、残留オーステナイトは、5~25体積%を含む、請求項9の方法。
【請求項23】
鋼板製品は、15体積%未満のフレッシュマルテンサイトを含む、請求項9の方法。
【請求項24】
鋼板製品は、720~1,100MPaの極限引張強さと、少なくとも20%の全伸びを有する、請求項9の方法。
【請求項25】
鋼板製品は、20%超の穴広がり比を有する、請求項9の方法。
【請求項26】
鋼板製品に、亜鉛ベースのめっきを施すことをさらに含む、請求項9の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年5月10日に出願された米国仮出願第62/334,189号及び2016年9月19日に出願された米国仮出願第62/396,602号の優先権を主張し、両出願とも引用を以て本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、良好な特性を有する高強度鋼製品、及び該製品を製造するためのアニーリング工程に関する。
【背景技術】
【0003】
過去数年間、世界の鉄鋼業界は、自動車市場向けの第3世代先進高強度鋼(Advanced High Strength Steel(AHSS))の開発に力を注いできた。これらの第3世代鋼(Generation 3 steels)は、引張強度と伸びのバランスが良好で、典型的には、UTSxTE範囲が約20,000MPa・%以上である。しかしながら、鉄鋼産業は、第3世代AHSSを商業化するのが困難な時期にある。その理由は、その多くの方策が、合金成分を多く含む必要があるためである。典型的には、4質量%を超えるマンガンを含む必要があり、従来の鋼製造設備では、このような鋼を製造することが困難である。さらに、現在商業的に入手可能なAHSSでは、スポット溶接などの技術によって溶接することが困難であり、亜鉛基めっき皮膜を施すことが困難であり、広範囲の用途で要求される薄板シートに製造することが困難であった。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、所望のミクロ組織と、高強度及び超高成形性等の良好な機械的特性を有するシート製品を製造するために、2段階のアニーリング工程に付されるよう制御された組成を有する鋼板製品を提供する。本発明に基づいて処理された鋼は、標準サブサイズASTM又は標準フルサイズJISの引張試験手順を用いた試験において、極限引張強さと全伸びの組合せであるUTS・TE特性が25,000MPa%超である。さらに、本発明に基づいて製造された鋼は、TEと穴広がり(hole expansion)の良好な組合せを示し、全体的成形性と局所的成形性の両方が良好である。これらの特性を有する鋼は、第3世代先進高強度鋼のカテゴリーに含まれ、自動車メーカーを含む様々な産業によって強く望まれている。
【0005】
本発明の一態様は、Cを0.12~0.5質量%、Mnを1~3質量%、Si及びAlの組合せを0.8~3質量%含む高強度冷間圧延鋼板製品を提供する。鋼板製品は2段階アニーリング工程に付され、鋼板製品は、フェライトと、3:1より小さい平均アスペクト比を有する実質的に等軸の残留オーステナイトとを含み、極限引張強さと全伸びとの組合せ(UTS・TE)が25,000MPa%を超える。
【0006】
本発明の別の態様は、Cを0.12~0.5質量%、Mnを1~3質量%、Si及びAlの組合せを0.8~3質量%含む高強度冷間圧延鋼板製品を製造する方法を提供する。この方法は、鋼板製品を、第1段階のアニーリング工程でマルテンサイト主体の組織を得た後、第2段階の工程に付すもので、前記第2段階の工程は、鋼板製品を720~850℃の温度の変態区間で均熱し、次いで、鋼板製品を370~430℃の温度で保持することを含む。
【0007】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における2段階アニーリング工程を示しており、時間に対して温度をプロットしたものである。
【0009】
【
図2】
図2は、本発明の別の実施形態における2段階アニーリング工程を示しており、時間に対して温度をプロットしたものである。
【0010】
【
図3】
図3は、1つの製造設備の中で、2段階の加熱工程を、任意選択的な溶融亜鉛めっきと組み合わせた2段階アニーリング工程を示しており、時間に対して温度をプロットしたものである。
【0011】
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の熱サイクルにおいて、均熱ゾーンと保持ゾーンを構成するアニーリングの第2段階について、時間に対して温度をプロットしたものである。
【0012】
【
図5】
図5は、電子後方散乱回折(EBSD)顕微鏡写真であって、本発明の一実施形態における高強度鋼板製品のミクロ組織を示す。
【
図6】
図6は、電子後方散乱回折(EBSD)顕微鏡写真であって、本発明の一実施形態における高強度鋼板製品のミクロ組織を示す。
【0013】
【
図7】
図7は、
図1に示す熱処理を施した鋼板製品の光学顕微鏡写真であり、暗いフェライト粒と明るいオーステナイト粒を示している。
【0014】
【
図8】
図7に示すオーステナイト粒のアスペクト比を示す棒グラフである。
【0015】
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における高強度鋼板製品のグラフであって、オーステナイトの結晶粒径分布を示している。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態における高強度鋼板製品のグラフであって、フェライトの結晶粒径分布を示している。
【0016】
【
図11】
図1に示される処理によって製造された高強度鋼板製品のミクロ組織を示すEBSD顕微鏡写真である。
【0017】
【
図12】
図12は、
図2に示される処理によって製造された鋼板製品を示すEBSD顕微鏡写真である。
【
図13】
図13は、
図2に示される処理によって製造された鋼板製品を示すEBSD顕微鏡写真である。
【0018】
【
図14】
図14は、
図3に示される処理によって製造された鋼板製品を示すEBSD顕微鏡写真である。
【0019】
【
図15】本発明の高強度鋼板製品と、本発明の範囲外条件の処理によって製造された他の鋼板製品との比較であって、全伸びと極限引張強さとの関係を示すグラフである。
【0020】
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に基づいて工場実験で製造された高強度鋼製品について、全伸びと極限引張強さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の高強度鋼板製品は、制御されたアニーリング工程との組合せにおいて、所望のミクロ組織と、高強度及び超高成形性を含む好ましい機械的特性とを実現する制御された組成物を有する。特定の実施形態において、鋼組成物は、炭素、マンガン及びシリコンを、当業者に知られている他の適当な合金添加元素と共に、含むことができる。C、Mn、Si、Al、Ti、及びNbを所定範囲で含む鋼組成物の例を以下の表1に示す。
【表1】
【0022】
表1に列挙したC、Mn、Si、Al、Ti及びNbの量に加えて、鋼組成物は、他の元素を少量又は不純物レベルで含むことができ、前記元素として、例えば、最大で0.015のS、最大で0.03のP、最大で0.2のCu、最大で0.02のNi、最大で0.2のCr、最大で0.2のMo、最大で0.1のSn、最大で0.015のN、最大で0.1のV、最大で0.004のBがある。鋼板製品の組成に関して、本明細書で使用する「実質的に含まない(substantially free)」という用語は、特定の元素又は材料が粗に意図的に加えられておらず、不純物として、又は微量に存在するだけであることを意味する。
【0023】
本発明の鋼板製品では、Cは強度を高め、残留オーステナイトの生成を促進する。Mnは硬化に寄与し、固溶強化剤として作用する。Siは、熱処理中に炭化鉄の析出を抑制し、残留オーステナイトを増加させる。Alは、熱処理中の炭化鉄の析出を抑制し、残留オーステナイトを増加させる。Ti及びNbは、強度を向上させる結晶粒微細化剤として作用し得る。
【0024】
特定の実施形態では、Alは、少なくとも0.1重量パーセント又は少なくとも0.2重量パーセントの量で存在し得る。例えば、幾つかの実施形態において、Alは、0.5~1.2重量パーセント、又は0.7~1.1重量パーセントの量で存在してもよい。或いはまた、鋼板製品は実質的にAlを含まなくてよい。
【0025】
上述の組成を有する鋼板製品は、2段階アニーリング工程に付される。これについては、以下でより詳細に説明する。得られた鋼板製品は、好ましい機械的特性を有することがわかった。この機械的特性は、好ましい極限引張強さ、高い伸び、高いラムダ値(lambda values)、高い曲げ性及び高い降伏比(YS/UTS)を含む。
【0026】
特定の実施形態において、鋼板製品の極限引張強さ(UTS)は、700~1,100MPa又はそれ以上である。特定の実施形態において、鋼板製品は、700MPaを超える極限引張強さを有し、例えば720~1,100MPa、又は750~1,050MPaである。
【0027】
特定の実施形態において、鋼板製品の全伸び(TE)は、典型的には22%より大きく、例えば27%より大きいか、又は33%より大きい。例えば、鋼板製品は、少なくとも20%、例えば22~45%、又は25~40%の全伸びを有することができる。
【0028】
鋼板製品は、標準の穴広げ試験によって測定されたラムダ(λ)値が、典型的には20%より大きく、例えば25%より大きいか、又は30%より大きいか、又は35%より大きい。全広がり率又はラムダは、20%より大きく、例えば22~80%、又は25~60%であり得る。
【0029】
特定の実施形態において、全伸び(TE)及び穴広がり(λ)の値が両方とも高いと、鋼板製品は、全体的成形性及び局所的成形性が良好になる。
【0030】
本発明の鋼板製品では、25,000を超える強度伸びバランス(UTS・TE)が観察され、自動車産業などの産業によって強く求められる第3世代の鋼種に該当する。特定の実施形態において、UTS・TE値は、30,000を超えるか、又は35,000を超えることができる。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、鋼板製品の最終ミクロ組織は、フェライトを主体とし、フェライトより少ない量の残留オーステナイトと少量のフレッシュマルテンサイトを含み、フェライトは、例えば、少なくとも50%、最大80%又はそれ以上であり、残留オーステナイトは、例えば5~25%であり、フレッシュマルテンサイトは、例えば0~10%又は15%である。フェライト、オーステナイト及びマルテンサイトの量は、標準のEBSD技術によって求められることができる。或いはまた、残留オーステナイト含有量は、磁気飽和法によって求められることもできる。本明細書中で特に明記しない限り、残留オーステナイトの体積パーセントは、EBSD技術によって求められる。
【0032】
特定の実施形態において、残留オーステナイトは、1~25体積%を含み、例えば5~20体積%を含む。フレッシュマルテンサイトの量は、15体積%未満、又は10体積%未満、又は5体積%未満であり得る。特定の実施形態において、鋼板製品は、フレッシュマルテンサイトを実質的に含まない。フレッシュマルテンサイト量が15%を超えると、穴広がり値が有意に低下し、例えば局所的成形性が有意に低下することがわかった。
【0033】
フェライトの少なくとも一部分は、後述するように、加熱セクション中にマルテンサイトの再結晶化及び/又は焼戻しによって形成されるか、又は第2のアニーリング工程の冷却及び保持セクション中にオーステナイトの分解によって形成される。フェライトの一部は、ベイニティック(bainitic)フェライトと考えられる。フェライト相、オーステナイト相及びマルテンサイト相は、結晶粒が微細であり、平均粒径が10ミクロン未満であり、例えば、5ミクロン未満、又は3ミクロン未満である。例えば、フェライトの結晶粒径は、10ミクロン未満の範囲であり、例えば8ミクロン未満、又は6ミクロン未満である。オーステナイトの平均結晶粒径は、2ミクロン未満の範囲であり、例えば1ミクロン未満、又は0.5ミクロン未満である。マルテンサイトが存在する場合、マルテンサイトの結晶粒径は、10ミクロン未満の範囲であり、例えば8ミクロン未満、又は6ミクロン未満である。
【0034】
オーステナイト結晶粒は、実質的に等軸粒であり、例えば、3:1より小さいか又は2:1より小さく、例えば約1:1の平均アスペクト比を有する。残留オーステナイトの量が約5%未満になると、全伸び(TE)が有意に低下することがわかった。また、25%を超える量の残留オーステナイトが得られるのは、炭素量が非常に多いときのみであり、溶接性が悪くなることがわかった。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、上記の良好な機械的特性を有する先進高強度鋼製品を製造するために、2段階アニーリング工程が用いられる。第1段階及び第2段階の各アニーリング工程では、熱処理を行うための複数の方法が用いられ得る。2段階アニーリング工程の実施例は
図1~
図3に示されており、以下に説明する。
図1は、連続アニーリングライン(Continuous Annealing Line (CAL))とそれに続く連続アニーリングライン(CAL)の製造ルートを示す。
図2は、CAL+連続亜鉛めっきライン(Continuous Galvanizing Line (CGL))の製造ルートを示す。
図3は、1つの設備の中で、CAL+CAL、又はCAL+CGLの両方の段階を行うことができるように特別に設計されたラインを表す。
図3では、直接燃焼式加熱炉(Direct-fired Furnace (DFF))の後にラジアントチューブ型(Radiant Tube (RT))加熱炉の実施形態が示されているが、所望の熱サイクルを達成するために、全てがラジアントチューブ、電気ラジアント加熱等の他の実施形態を使用することもできる。
【0036】
<段階1>
アニーリング工程の第1段階の目的は、マルテンサイトのミクロ組織を達成することである。第1段階の第1アニーリング工程では、アニーリング温度は、A3温度を超える温度が通常使用され、例えば、820℃以上のアニーリング温度が使用され得る。特定の実施形態では、第1段階のアニーリング温度は、通常、830~980℃の範囲であり、例えば830~940℃、又は840~930℃、又は860~925℃である。特定の実施形態では、ピークアニーリング温度は、典型的には、20秒間以上保持され、保持時間は、例えば20~500秒間、又は30~200秒間であり得る。加熱は、非酸化式又は酸化式の直接燃焼炉(DFF)、酸素富化DFI、誘導加熱、ガスラジアントチューブ加熱、電気ラジアント加熱等の従来の技術によって行われることができる。本発明の工程での使用に適合した加熱システムの例は、Fives Stein社に譲渡された米国特許第5,798,007号、第7,368,689号、第8,425,225号、第8,845,324号、米国特許出願第2009/0158975号、及び国際公開第WO2015/083047号に記載されている。本発明の工程での使用に適合した加熱システムの他の例として、Drever International社に譲渡された米国特許第7,384,489号、Nippon Steel社及びSumitomo Metal Corporation社に譲渡された米国特許第9,096,918号が挙げられる。これらの他にも、既知の適当な加熱システム及び工程を、段階1及び段階2で使用されることができる。
【0037】
第1段階では、ピークアニーリング温度に達し、所定時間保持された後は、以下に詳細に記載するように、鋼は、室温まで、又は室温より高い制御された温度まで急冷される(quenched)。急冷温度は、必ずしも室温でなくてもよいが、マルテンサイト変態開始温度(MS)よりも低い温度であるべきであり、マルテンサイトを主体としるミクロ組織を形成するためには、好ましくは、マルテンサイト変態終了温度(MF)より低い温度である。特定の実施形態では、鋼板製品は、第1段階の工程と第2段階の工程との間で、300℃未満の温度、例えば200℃未満の温度に冷却されることができる。
【0038】
急冷は、水急冷、浸漬されたナイフ/ノズル水急冷(submerged knife/nozzle water quenching)、ガス冷却、冷水・温水・温水・ガスの組合せを用いた急速冷却、水溶液冷却、他の液体又はガス流体冷却、チルドロールクエンチ、水ミストスプレー、湿式フラッシュ冷却、非酸化式湿式フラッシュ冷却などの従来技術によって行われることができる。急冷速度は、典型的には、30~2000℃/秒の速度が使用され得る。
【0039】
本発明の工程の使用に際しては、当業者に既知の様々なタイプの冷却及び急冷システム及び工程を適合させることができる。商業ベースで従来より使用されている適当な冷却/急冷システム及びプロセスは、水急冷、水ミスト冷却、乾式フラッシュ、湿式フラッシュ、酸化冷却、非酸化冷却、アルカン流体からガス相への変化冷却、熱水急冷を含み、2段階水急冷、ロール急冷、高割合の水素又はヘリウムガスのジェット冷却などを含む。例えば、Fives Stein社の国際公開第WO2015/083047号に開示された乾式フラッシュ及び/又は湿式フラッシュの酸化及び非酸化冷却/急冷を使用されることができる。本発明の工程で使用できるよう構成された冷却/急冷システム及び工程を記載したFives Stein社の他の特許文献として、米国特許第6,464,808B2号、第6,547,898B2号、第8,918,199B2号、及び米国特許出願公開第US2009/0158975A1号、第2009/0315228A1号及び第2011/0266725A1号が挙げられる。本発明の工程で使用できるよう構成された冷却/急冷システム及び工程の他の例として、米国特許第8,359,894B2号、第8,844,462B2号、第7,384,489B2号、並びに、米国特許出願公開第2002/0017747A1号及び第2014/0083572A1号が挙げられる。
【0040】
特定の実施形態では、第1段階のピークアニーリング温度に達して、鋼を急冷してマルテンサイトを形成した後、マルテンサイトは、任意選択的に、焼戻しが施されることにより、鋼は幾らか軟化され、さらなる加工をより容易に行うことができる。焼戻しは、鋼の温度を室温から約500℃まで上昇させて、600秒間保持することによって行われる。焼戻しが利用される場合、焼戻し温度は一定温度に保たれてもよいが、この好ましい範囲内で変化させてもよい。
【0041】
焼戻し後、温度を室温まで降下させる。その降下(ramp-down)速度は、典型的には1~40℃/秒の範囲であり、例えば2~20℃/秒である。
図3に示されるように、単回通過(single pass)式設備炉の場合は、焼戻しは必要でない。
【0042】
<段階2>
アニーリング工程の第2段階は、比較的高温で行われる第1工程と、比較的低温で行われる第2工程とを含む。これらの工程は、
図4に記載されているように、第2アニーリングの「均熱(soaking)」ゾーン及び「保持(holding)」ゾーンとして構成される。温度は、最終製品における所望のミクロ組織の生成が促進されるように制御される。
【0043】
第2段階の第1アニーリング工程では、均熱温度は、A1とA3の間の温度が用いられ、例えば、720℃以上のアニーリング温度が用いられる。特定の実施形態において、均熱温度は、典型的には720~850℃の温度範囲であり、例えば760~825℃である。特定の実施形態において、ピークアニーリング温度での保持時間は、典型的には、少なくとも15秒間であり、例えば20~300秒間、又は30~150秒間である。
【0044】
第2段階の第1工程の間、均熱ゾーンの温度は、Msより低い比較的低温度、例えば室温から、0.5~50℃/秒の平均速度、例えば、約2~20℃/秒の平均速度で、鋼を加熱することによって行われることができる。特定の実施形態では、昇温(ramp-up)は25~800秒、例えば100~500秒を要する。第2段階の第1工程の加熱は、輻射加熱、誘導加熱、直接燃焼炉での加熱等のあらゆる適当な加熱システム又はプロセスによって行われることができる。
【0045】
均熱ゾーン温度に達して所定時間保持された後、鋼は、室温を超える制御された温度の保持ゾーンまで冷却される。特定の実施形態において、鋼板製品は、第2段階の均熱工程と第2段階の保持工程との間で300℃を超える温度に維持される。均熱ゾーンから保持ゾーンへの冷却は、水冷、ガス冷却などの従来の技術によって行われることができる。平均冷却速度は、典型的には、5~400℃/秒が使用され得る。均熱温度から保持温度への冷却には、上記のものを含むあらゆる適当な冷却及び急冷システムを用いられることができる。
【0046】
本発明の実施形態において、保持ゾーン段階は、典型的には360~440℃の温度、例えば370~430℃の温度で行われる。保持ゾーンでは、最大800秒、例えば30秒~600秒間保持されることができる。
【0047】
保持ゾーンの温度は一定の温度に保たれるができるし、好ましい温度範囲内で多少変動があってもよい。なお、保持工程の後に、鋼に溶融めっきが施される場合、鋼は、誘導加熱又は他の加熱方法によって再加熱を施し、適当な温度の溶融めっきポットの中に装入することで、良好なめっき結果が得られる。
【0048】
特定の実施形態では、保持ゾーンの温度を所望の時間維持した後、温度を室温まで下降させることができる。このような下降は、典型的には10~1000秒を要し、例えば約20~500秒を要する。そのような下降の速度は、典型的には1~1000℃/秒の範囲であり、例えば2~20℃/秒である。
【0049】
特定の実施形態によれば、第1段階及び第2段階のアニーリング工程の一方又は両方は、連続アニーリングライン(CAL)で行うことができる。CAL+CAL工程を経た後、鋼は電気亜鉛めっきを施すことで、亜鉛ベースのめっき製品を製造することができる。
【0050】
特定の実施形態において、アニーリングされた鋼板は、保持ゾーンの終わりに、溶融亜鉛めっきされる。亜鉛めっき温度は、典型的には440~480℃の範囲であり、例えば450~470℃である。特定の実施形態では、亜鉛めっき工程は、例えば
図2に示すような連続亜鉛めっきライン(CGL)の第2段階アニーリング工程の一部として実施されることができる。このCAL+CGL工程は、亜鉛又は亜鉛合金をベースとする溶融亜鉛めっきされた製品を製造するために用いられることができるし、亜鉛めっきの後に、鉄-亜鉛めっき製品を製造するために再加熱されることができる。任意選択的なニッケルベースのめっき工程は、亜鉛めっき特性を向上させるために、CAL工程とCGLの工程との間に行うことができる。第2段階で連続亜鉛めっきラインを使用すると、GEN3(Generation 3)のめっき製品の製造において、CAL+CAL+EGルートを使用する場合と比べて生産効率が向上する。
【0051】
亜鉛めっきされた製品又は亜鉛基合金が溶融めっきされた製品は、
図3に示すように、2段階アニーリングを単一ラインで行うことができるように特別に設計されたCGLで製造されることもできる。この場合、溶融亜鉛めっきは任意選択的であってよい。さらに、本発明において記載しためっき無しの第3世代鋼を製造するために、2段階の熱プロセスを組み合わせた単一の製造設備を特別に設計して構築することもできる。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0053】
<実施例1>
表2の試料No.1の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。得られた製品のミクロ組織を
図5及び
図6に示している。
図5は、市販のEDAX方位像顕微鏡ソフトウェアを使用したEBSD技術により、暗いフェライト粒子と明るいオーステナイト粒子を示している。
【0054】
<実施例2>
表2の試料No.2の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。得られた製品のミクロ組織を
図11に示している。試料No.2の機械的特性は表2に記載されている。
オーステナイトの結晶粒度分布は
図9に示され、
フェライトの結晶粒度分布は
図10に示されている。オーステナイトの平均結晶粒径は1ミクロン未満であり、フェライトの平均結晶粒径は10ミクロン未満である。
【0055】
ミクロ組織は、平均粒径が約5ミクロンのフェライトを約80体積パーセントと、実質的に等軸晶で平均粒径が約0.5ミクロンの残留オーステナイトを約10体積パーセントと、平均粒径が約5ミクロンのフレッシュマルテンサイトを約10体積パーセントと、を含む。試料No.1の機械的特性は表2に記載されている。
【0056】
<実施例3>
表2の試料No.3の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図2に示される2段階アニーリング工程を行なった。得られた製品のミクロ組織を
図12及び
図13に示している。
図13において、オーステナイトは色が明るく、フェライトは色が暗い。試料No.3の機械的特性は表2に記載されている。
【0057】
<実施例4>
表2の試料No.4の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図3に示される2段階アニーリング工程を行なった。得られた製品のミクロ組織を
図14に示している。
図14において、オーステナイトは色が明るく、フェライトは色が暗い。試料No.4の機械的特性は表2に記載されている。
【0058】
<実施例5>
表2の試料No.5の組成を有する冷間圧延鋼板を、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。得られた製品のミクロ組織を
図12及び
図13に示している。試料No.5の機械的特性は表2に記載されている。
【0059】
<実施例6>
表2の試料No.6の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。試料No.6の機械的特性は表2に記載されている。
図7は、表2の試料No.6の組成を有する鋼について、
図1に示される2段階アニーリング工程が行なった鋼のミクロ組織を示す光学像である。
図7中、写真の暗い領域はフェライト粒であり、明るい領域はオーステナイト粒である。
図8は、
図7に示すオーステナイト粒のアスペクト比を示すグラフである。
図7の光学画像は、市販のソフトウェアによる画像解析を用いてオーステナイト粒のアスペクト比を決定するのに用いられた。
図7は、オーステナイト粒の平均アスペクト比が3:1
より小さいことを示している。
【0060】
<実施例7>
表2の試料No.7の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図2に示される2段階アニーリング工程を行なった。試料No.7の機械的特性は表2に記載されている。
【0061】
<実施例8>
表2の試料No.8の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図3に示される2段階アニーリング工程を行なった。試料No.8の機械的特性は表2に記載されている。
【0062】
実施例1~8の鋼のUTS値は、700~1,100MPaの範囲であった。
【0063】
<比較例1~4>
表2の試料No.C1~C4の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。試料No.C1~C4の機械的特性は表2に記載されている。比較例1~4の鋼のUTS値は700MPa未満であった。
【0064】
<比較例5~8>
表2の試料No.C5~C8の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。試料No.C5~C8の機械的特性は表2に記載されている。比較例1~4の鋼のUTS値は1,100MPaを超えていた。
【0065】
<比較例9~11>
表2の試料No.C9~C11の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図1に示される2段階アニーリング工程を行なった。但し、第2のアニーリングの均熱温度又は保持温度は、本発明の好ましい範囲から外れていた。試料No.C9~C11の機械的特性は表2に記載されている。
【0066】
<比較例12>
表2の試料No.C12の組成を有する冷間圧延鋼板に、
図2に示される2段階アニーリング工程を行なった。但し、第2のアニーリングの保持温度は、本発明の好ましい範囲から外れていた。試料No.C12の機械的特性は表2に記載されている。
【表2-1】
【表2-2】
【0067】
図15は、実施例1~8の試料1~8及び比較例C1~C12の試料C1~C12について、全伸び(TE)と極限引張強さ(UTS)をプロットしたものである。25,000のUTS-TEに対応する線の概略が、
図15に描かれている。これに示されるように、本発明に基づいて製造された高強度鋼板サンプルは、比較例の試料と比べて強度と伸びの組合せにすぐれている。すなわち、本発明の実施例は、高いUTS値と高い全伸びが観察される。試料1~試料8の鋼は、自動車及び他の産業にとって非常に好ましい第3世代の先進高強度鋼のカテゴリーに分類される。
【0068】
<実施例9>
CAL+CAL工程又はCAL+CGL工程のどちらかを使用して、以下の表3のM1~M5で示される試料について、工場実験を行なった。試料M1、M2及びM5については、
図1に示すCAL+CALの処理時間と温度を用いた。試料M3及びM4については、
図2に示すCAL+CGLの処理時間と温度を使用した。
【表3】
【0069】
図16は、工場実験材料の強度-伸びバランスを示しており、全てが25,000の最小UTS-TEを満たしている。供試材料のラムダ値は、20%を超える値を示した。
【0070】
本明細書で使用される「含む(including, comprising)」「含有する(containing)」などの用語は、非限定(open-ended)の語であって、この出願の中では、記載されていない元素、材料、相又は方法の段階の追加の存在を排除しないものと理解される。本明細書で使用される「からなる(consisting of)」の用語は、特定されていないあらゆる元素、材料、相又は方法の段階の存在を排除するものと理解される。本明細書で使用される「本質的に…からなる(consisting essentially of)」の用語は、該当する場合は、特定された元素、材料、相又は方法の段階を含み、また、特定されていないあらゆる元素、材料、相又は方法の段階について、発明の基本的又は新規な特徴に重要な影響を及ぼさないものを含むものと理解される。
【0071】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に記載されている。しかし、どの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる若干の誤差を本質的に含む。
【0072】
また、本明細書の中に記載されている全ての数値範囲は、その中に包まれる全てのサブレンジを含むことが意図されていることを理解されるべきである。例えば、「1」~「10」の範囲は、最小値の1と最大値の10との間のサブレンジを含むことが意図されており、最小値が1であるか又は1より大きく、最大値が10であるか又は10より小さい。
【0073】
本出願において、特に明記しない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を含む。また、本出願において、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。これは、「及び/又は」の語が特定の実施形態に明示的に用いられている場合でも、同様である。本願明細書及び特許請求の範囲において、冠詞の「a」、「an」及び「the」については、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0074】
本発明の特定の実施形態を、例示目的で上記で説明したが、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、本発明の詳細の多くの変形を成し得ることは明らかであろう。