(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】神経系の疾患及び障害を治療するための方法並びに組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20221202BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221202BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221202BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221202BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20221202BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20221202BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20221202BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221202BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221202BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4168 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4418 20060101ALI20221202BHJP
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A61K 31/445 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/498 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/451 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4515 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/515 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20221202BHJP
A61K 36/84 20060101ALI20221202BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221202BHJP
【FI】
A61K31/7088 ZNA
A61K48/00
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/20
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K35/76
A61K31/5513
A61K31/165
A61K31/5415
A61K31/5517
A61K31/13
A61K31/137
A61K31/40
A61K31/135
A61K31/472
A61K31/485
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A61K31/4402
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A61K31/4166
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A61K31/475
A61K31/19
A61K31/46
A61K36/84
C12N15/864 100Z
C12N15/12
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2019531607
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(86)【国際出願番号】 US2017049629
(87)【国際公開番号】W WO2018045178
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-25
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボウリー,ハンナ,イー.
(72)【発明者】
【氏名】アストン-ジョーンズ,ギャリー
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/105533(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/161124(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/049252(WO,A1)
【文献】The Journal of neuroscience, 2015, Vol.35, No.4, pp.1343-1353
【文献】Current Biology, 2016.7, Vol.26, pp.2358-2363, Supplemental Information
【文献】Molecular Neurodegeneration, 2015, Vol.10, #47
【文献】Gene, 1998, Vol.211, pp.63-69
【文献】日本老年医学会雑誌, 1985, Vol.22, No.1, pp.40-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00 - 45/08
A61K 48/00
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における神経系の疾患又は障害を治療する方法に用いるための、ウイルスベクターを含む組成物であって、
前記ウイルスベクターは、配列番号5を含むプロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1又は配列番号6によってコードされる3’非翻訳領域を含み、
前記方法は、
a.前記対象の眼に有効量の前記ウイルスベクターを投与する工程;
b.前記DREADDのアゴニストを投与する前に工程(a)のDREADDを発現させる工程;及び
c.発現したDREADDのアゴニストを前記対象に投与する工程
を含み、
前記神経系の疾患又は障害が、うつ病、季節性情動障害、不安、睡眠障害、概日障害、非同期、ストレス障害、
アルツハイマー病、及び注意欠陥多動性障害(ADHD)からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
前記ウイルスベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びそれらのハイブリッドからなる群から選択されるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アゴニストが、クロザピンN-オキシド、DREADDアゴニスト21、サルビノリンB、クロザピン、オランザピン、又はペルラピンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アゴニストが全身又は眼に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記方法が、アカンプロセート、アゴメラチン、アリメマジン、アルプラゾラム、アマンタジン、アンフェタミン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アポモルフィン、アポモルフィン、アリピプラゾール、アセナピン、アトモキセチン、アトロピン、バクロフェン、ベンペリドール、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロマゼパム、ブロモクリプチン、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブプレノルフィン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトバルビタール、カベルゴリン、カルバマゼピン、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、シタロプラム、クロバザム、クロメチアゾール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロラゼペート、クロザピン、シクロバルビタール、シプロヘプタジン、シチシン、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキサンフェタミン、デキサメチルフェニデート、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジサイクロミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ジスルフィラム、ジバルプロックスナトリウム、ドネペジル、ドキサクリウム、ドキセピン、ドキシラミン、デュロキセチン、エダラボン、エナント酸、エスシタロプラム、エスタゾラム、エスゾピクロン、エトスクシミド、フルニトラゼパム、フルオキセチン、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルスピリレン、フルボキサミン、ガバペンチン、ガランタミン、グルテチミド、グリコピロレート、グアンファシン、ハロペリドール、ヘキサメトニウム、塩酸、ヒドロキシジン、イロペリドン、イミプラミン、イプラトロピウム、ラモトリジン、レベチラセタム、レボドパ、レボメプロマジン、レボミルナシプラン、リスデキサンフェタミン、リスリド、リチウム塩、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メカミラミン、メラトニン、メルペロン、メマンチン、メプロバメート、メタンフェタミン、メタドン、メチルフェニデート、ミアンセリン、ミダゾラム、ミルタザピン、モクロベミド、モダフィニル、モデケート(modecate)、マザーワート、ナルメフェン、ナルトレキソン、ニアプラジン、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オムカ(omca)、オンダンセトロン、オルフェナドリン、オキサゼパム、オクスカルバゼピン、オキシトロピウム、オキシブチニン、パリペリドン、パロキセチン、ペンフルリドール、ペントバルビタール、ペラジン、ペルゴリド、ペリシアジン、ペルフェナジン、フェナゼパム、フェネルジン、フェノバルビタール、フェニトイン、ピモジド、ピリベジル、プラミペキソール、プレガバリン、デカン酸プロリキシン、プロメタジン、プロパンテリンブロミド、プロチペンジル、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、ラメルテオン、ラサギリン、レボキセチン、レマセミド、レセルピン、リルゾール、リスペリドン、リバスチグミン、ロピニロール、ロチゴチン、塩化ルビジウム、サフィンアミド、スコポラミン、セコバルビタール、セディテン(sediten)、セレクテン(selecten)、セレギリン、セレギリン、セルチンドール、セルトラリン、セルトラリン、セビノール(sevinol)、シンクアロンエナンタット(sinqualone enantat)、シクアロン(siqualone)、シルトール(sirtal)、ナトリウムオキシベート、バルプロ酸ナトリウム、ソリフェナシン、スタゼピン、ステラジン、スルピリド、スボレキサント、タクリン、テグレトール、テレスミン、テマゼパム、テルフルジン、テトラベナジン、チオリダジン、チオチキセン、チアネプチン、チモニル(timonil)、チオトロピウム、チザニジン、トフィソパム、トルカポン、トルテロジン、トピラメート、トランチン(trancin)、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トリフルオペラズ(trifluoperaz)、トリフルオペラジン、トリフタジン(triftazin)、トリヘキシフェニジル、トリミプラミン、トロピカミド、ツボクラリン、セイヨウカノコソウ、バルプロ酸塩、バルプロ酸、バレニクリン、ベンラファキシン、ビラゾドン、ボルチオキセチン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾルピデム、ゾピクロン、ゾテピン、ズクロペンチキソール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
対象における神経系の疾患又は障害の治療のための、配列番号5を含むプロモーター、DREADD、並びにヌクレオチド配列の配列番号1又は配列番号6によってコードされる3’非翻訳領域を含む、ウイルスベクター
であって、前記神経系の疾患又は障害が、うつ病、季節性情動障害、不安、睡眠障害、概日障害、非同期、ストレス障害、アルツハイマー病、及び注意欠陥多動性障害(ADHD)からなる群から選択される、ウイルスベクター。
【請求項7】
配列番号5を含むプロモーター、DREADD、並びにヌクレオチド配列の配列番号1又は配列番号6によってコードされる3’非翻訳領域を含むウイルスベクター、並びに前記DREADDのアゴニストを含む、
対象における神経系の疾患又は障害の治療に使用するためのキット
であって、前記神経系の疾患又は障害が、うつ病、季節性情動障害、不安、睡眠障害、概日障害、非同期、ストレス障害、アルツハイマー病、及び注意欠陥多動性障害(ADHD)からなる群から選択される、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2016年8月31日出願の米国仮特許出願第62/381,883号の優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2017年8月31日に作成した該ASCIIコピーは、「10491-006090-WO0_Sequence_Listing_Final.txt」という名で、サイズが48,106バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、神経系の疾患及び障害の分野に関する。デザイナードラッグにより排他的に活性化されるプロモーター促進性デザイナー受容体(DREADD)及びDREADDアゴニストを使用して、神経系の疾患又は障害を治療するための方法及び組成物が開示される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
神経系の疾患及び障害は、世界中に罹患率及び死亡率の著しい負担をもたらす。それらは、心理学的介入と組み合わせた場合でさえ、細胞型特異性を欠くため、治療的処置は効果がない場合が多い。したがって、改善された有効な治療的処置が非常に望まれている。
【0005】
本発明は、神経系の疾患及び障害を治療するための細胞特異的アプローチを使用する。光調節に関連する神経学的経路は、デザイナードラッグによって排他的に活性化されるデザイナー受容体(DREADD)を活用することで、網膜を介して制御することができることが判明した。本発明は、DREADD発現について網膜細胞を標的とし、脳へのDREADD注入と関連する神経外科的問題を回避することによって治療的処置を提供する。本発明はまた、青斑核ニューロンの直接的な刺激により生じる場合よりも臨床的に適用可能な処置を可能にする、より生理学的に自然な方法で青斑核の操作を提供するために、自然回路入力による標的神経経路、特に、脳核青斑核の刺激を可能にする。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、対象における神経系の疾患又は障害を治療する方法であって、プロモーター、DREADD、並びに配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる3’非翻訳領域を含む有効量のウイルスベクターを該対象の眼に投与する工程;DREADDのアゴニストを投与する前にDREADDを発現させる工程;並びに発現したDREADDのアゴニストを該対象に投与する工程、を含む方法を含む。
【0007】
一実施形態において、該ウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びそれらのハイブリッドからなる群から選択されるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)であり得る。
【0008】
第2の実施形態において、該ウイルスベクターは、眼内、硝子体内、網膜下、サブ内部境界膜を介するか、又は対象の眼への当技術分野で知られる他の手段によって投与され得る。
【0009】
別の実施形態において、該アゴニストは、クロザピンN-オキシド、DREADDアゴニスト21、サルビノリンB、クロザピン、オランザピン、又はペルラピンであり得る。該アゴニストは、全身又は眼に投与され得る。
【0010】
別の実施形態において、治療される神経系の疾患又は障害は、神経精神障害又は神経変性疾患であり得る。治療すべき神経精神障害は、うつ病、季節性情動障害、不安、非同期を含む睡眠障害及び概日障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含むストレス障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、依存症、てんかん、又は集中治療室(ICU)精神病であり得る。治療すべき神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、又はハンチントン病であり得る。
【0011】
別の実施形態において、神経系の疾患又は障害は、脳血管障害(CVA)又は脳卒中である。
【0012】
別の実施形態において、本発明の方法は、さらに、神経精神障害又は神経変性疾患の治療のための少なくとも1つの追加の治療剤を投与することを含み得る。
【0013】
別の実施形態において、神経精神障害又は神経変性疾患の治療のための少なくとも1つの追加の治療剤は、アカンプロセート、アゴメラチン、アリメマジン、アルプラゾラム、アマンタジン、アンフェタミン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アポモルフィン、アポモルフィン、アリピプラゾール、アセナピン、アトモキセチン、アトロピン、バクロフェン、ベンペリドール、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロマゼパム、ブロモクリプチン、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブプレノルフィン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトバルビタール、カベルゴリン、カルバマゼピン、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、シタロプラム、クロバザム、クロメチアゾール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロラゼペート、クロザピン、シクロバルビタール、シプロヘプタジン、シチシン、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキサンフェタミン、デキサメチルフェニデート、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジサイクロミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ジスルフィラム、ジバルプロックスナトリウム、ドネペジル、ドキサクリウム、ドキセピン、ドキシラミン、デュロキセチン、エダラボン、エナント酸、エスシタロプラム、エスタゾラム、エスゾピクロン、エトスクシミド、フルニトラゼパム、フルオキセチン、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルスピリレン、フルボキサミン、ガバペンチン、ガランタミン、グルテチミド、グリコピロレート、グアンファシン、ハロペリドール、ヘキサメトニウム、塩酸、ヒドロキシジン、イロペリドン、イミプラミン、イプラトロピウム、ラモトリジン、レベチラセタム、レボドパ、レボメプロマジン、レボミルナシプラン、リスデキサンフェタミン、リスリド、リチウム塩、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メカミラミン、メラトニン、メルペロン、メマンチン、メプロバメート、メタンフェタミン、メタドン、メチルフェニデート、ミアンセリン、ミダゾラム、ミルタザピン、モクロベミド、モダフィニル、モデケート(modecate)、マザーワート、ナルメフェン、ナルトレキソン、ニアプラジン、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、(オムカ(omca))、オンダンセトロン、オルフェナドリン、オキサゼパム、オクスカルバゼピン、オキシトロピウム、オキシブチニン、パリペリドン、パロキセチン、ペンフルリドール、ペントバルビタール、ペラジン、ペルゴリド、ペリシアジン、ペルフェナジン、フェナゼパム、フェネルジン、フェノバルビタール、フェニトイン、ピモジド、ピリベジル、プラミペキソール、プレガバリン、デカン酸プロリキシン、プロメタジン、プロパンテリンブロミド、プロチペンジル、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、ラメルテオン、ラサギリン、レボキセチン、レマセミド、レセルピン、リルゾール、リスペリドン、リバスチグミン、ロピニロール、ロチゴチン、塩化ルビジウム、サフィンアミド、スコポラミン、セコバルビタール、セディテン(sediten)、セレクテン(selecten)、セレギリン、セレギリン、セルチンドール、セルトラリン、セルトラリン、セビノール(sevinol)、シンクアロンエナンタット(sinqualone enantat)、シクアロン(siqualone)、シルトール(sirtal)、ナトリウムオキシベート、バルプロ酸ナトリウム、ソリフェナシン、スタゼピン、ステラジン、スルピリド、スボレキサント、タクリン、テグレトール、テレスミン、テマゼパム、テルフルジン、テトラベナジン、チオリダジン、チオチキセン、チアネプチン、チモニル(timonil)、チオトロピウム、チザニジン、トフィソパム、トルカポン、トルテロジン、トピラメート、トランチン(trancin)、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トリフルオペラズ(trifluoperaz)、トリフルオペラジン、トリフタジン(triftazin)、トリヘキシフェニジル、トリミプラミン、トロピカミド、ツボクラリン、セイヨウカノコソウ、バルプロ酸塩、バルプロ酸、バレニクリン、ベンラファキシン、ビラゾドン、ボルチオキセチン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾルピデム、ゾピクロン、ゾテピン、ズクロペンチキソール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される神経薬物である。
【0014】
本発明はまた、網膜細胞内でプロモーター活性を保持する配列番号5、配列番号5の断片、又は配列番号5と少なくとも約75%の同一性を有する配列番号5の変異体を含む単離核酸プロモーターを含む。
【0015】
本発明はまた、対象における神経系の疾患又は障害の治療のための、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含むウイルスベクターの使用を含む。
【0016】
一実施形態において、該ウイルスベクターを使用することによって治療される神経系の疾患又は障害は、神経精神障害又は神経変性疾患であり得る。治療すべき神経精神障害は、うつ病、季節性情動障害、不安、非同期を含む睡眠障害及び概日障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含むストレス障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、依存症、てんかん、又は集中治療室(ICU)精神病であり得る。
【0017】
第2の実施形態において、該ウイルスベクターを使用することによって治療される神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、又はハンチントン病であり得る。
【0018】
別の実施形態において、該ウイルスベクターを使用することによって治療される神経系の疾患又は障害は、脳血管障害(CVA)又は脳卒中である。
【0019】
本発明はまた、プロモーター、DREADD、並びに配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされる3’非翻訳領域を含むウイルスベクター、並びにDREADDのアゴニストを含むキットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】暗闇での示した日数後の網膜における興奮性DREADD(G(q))又はGFP(対照)を発現するラットの平均体重変化(n=7)のグラフを提供する。
*は、p<0.05を示す。
【
図2】硝子体内注入(IVI)による網膜細胞におけるDREADDの発現及び機能を示す。
図2Aは、フラットマウント網膜におけるDREADDの発現(矢印)を示す。
図2Bは、視交叉上核(矢印)におけるDREADD末端輸送の発現を示す(矢印)。
図2Cは、腹腔内注入(i.p)によって投与されたCNOが、網膜で阻害性hM4Di DREADDを発現する動物において網膜電図(ERG)の振幅の大きさを縮小したことを示す。
図2Dは、CNO含有点眼薬によって投与されたCNOが、同様に網膜電図(ERG)の振幅を減少させたことを示す。
【
図3】光欠乏誘発性抑うつ様行動の発生を防止する網膜細胞のDREADD受容体媒介性活性化を示す。
図3Aは、hM3Dq-hSyn活性化が、常に暗い(DD)照明条件によって誘発された相対体重減少を防止することを示す。
図3Bは、サッカリン嗜好試験によって測定した場合、網膜細胞のDREADD受容体媒介性活性化がヘドニック様行動の低下をもたらすことを示す。
図3Cは、強制水泳試験(FST)(C)によって測定した場合のうつ様行動の低下を示す。
図3Dは、DD-hM3Dq-hSynの活性化が不安に似ていると一般的に解釈される行動に影響を与えなかったことを示す。強制水泳試験中の糞便数に関しては、影響はない。
図3Eは、高架式十字迷路(EPM)アッセイ中に測定された行動に対して影響がないことを示す。
図3Fは、運動活性に対して影響がないことを示す。略語:慢性的に暗い飼育(DD);対照ウイルスを網膜細胞で発現させた状態での慢性的に暗い飼育(DD-GFP);慢性的に暗い中での網膜細胞のDREADD受容体媒介性活性化(DD-hM3Dq)。
【
図4】常に暗い中での網膜細胞のDREADD媒介性活性化が青斑核におけるアポトーシスを防止することを示す。
図4Aは、慢性的に暗い飼育(DD-対照)が青斑核においてアポトーシスをもたらすことを示す。
図4Bは、対照ウイルスを網膜細胞で発現させた状態での慢性的に暗い飼育(DD-GFP)が青斑核においてアポトーシスをもたらすことを示す。アポトーシスは、青斑核(灰色影付き)内でのPARPのp85断片を認識するアポトーシスのインサイチュマーカー(
図4A及び
図4Bの矢印)を使用して測定される。
図4Cは、慢性的に暗い中での網膜細胞のDREADD受容体媒介性活性化(DD-hM3Dq)が、hSynプロモーターを用いて、標準的な明/暗条件で飼育した対照動物と同様のレベルまで青斑核におけるアポトーシスを防止することを示す(DL-対照 -
図4D)。青斑核境界内のPARPのp85断片を認識するアポトーシスのインサイチュマーカーを用いて測定した場合に、任意の蛍光強度がある(
図4Dの矢印)。
図4Eは、DD-対照、DD-GFP、DD-hM3Dq及びDL-対照の蛍光強度測定値の比較を示す。
【
図5】硝子体内注入(IVI)後のメラノプシン(+)細胞におけるPACAPプロモーター促進性DREADD発現を示す。矢印は、メラノプシンに対して免疫反応性を示すPACAP-hM3Dq陽性細胞を示す。
【
図6】PACAP特異的プロモーターによって促進されるPACAP細胞のDREADD活性化が、うつ病に関連する体重減少を防止することを示す。略語:対照ウイルスを網膜細胞で発現させた状態での慢性的に暗い飼育(DD-GFP);慢性的に暗い中での、特異的PACAPプロモーターによって促進されるPACAP細胞のDREADD受容体媒介性活性化(DD-PACAP)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
定義
本発明がより容易に理解できるように、特定の技術用語及び科学用語を具体的に以下で定義する。特にこの文書の他の場所で定義されていない限り、使用される全ての他の技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0022】
細胞又は受容体に適用される「活性化」、「刺激」、及び「処理」は、特に文脈で又は明示的に断らない限り、例えば、リガンドでの細胞若しくは受容体の活性化、刺激、又は処理と同じ意味を有し得る。
【0023】
「リガンド」は、天然及び合成のリガンド、例えば、サイトカイン、サイトカイン改変体、アナログ、ムテイン、及び抗体に由来する結合化合物を包含する。「リガンド」はまた、小分子、例えば、サイトカインのペプチド模倣体及び抗体のペプチド模倣体を包含する。「活性化」は、内部メカニズムによって、並びに外部因子又は環境因子によって調節される細胞活性化を指すことができる。例えば、細胞、組織、器官、又は生物の「応答」は、生化学的又は生理学的挙動、例えば、生物学的区画内での濃度、密度、接着、若しくは移動、遺伝子発現の速度、又は分化の状態の変化を包含し、その変化は、活性化、刺激、若しくは処理と、又は遺伝的プログラミングなどの内部機構と相関している。
【0024】
分子の「活性」は、リガンド若しくは受容体への分子の結合;触媒活性;遺伝子発現又は細胞のシグナル伝達、分化、若しくは成熟を刺激する能力;抗原活性;他の分子の活性の調節などを説明するか、又は指すことができる。分子の「活性」はまた、細胞間相互作用の調節若しくは維持における活性、例えば、接着、又は細胞の構造、例えば、細胞膜又は細胞骨格の維持における活性を指すことができる。
【0025】
ヒト、獣医、又は研究の対象に適用される「投与」及び「処置」は、治療的処置、予防措置又は防止措置、研究用途及び診断用途を指す。ヒト、獣医、若しくは研究の対象、又は細胞、組織、若しくは器官に適用される「処置」は、ヒト若しくは動物対象、細胞、組織、生理学的区画、又は生理学的流体に適用される標的AAVウイルスベクターのいずれかのトランスフェクション、プロモーターDREADD構築物、又は記載される類似の組成物の送達を包含し得る。
【0026】
「投与」及び「治療」は、例えば、治療方法、薬物動態方法、診断方法、研究方法、及び実験方法を指すことができる。細胞の処理は、細胞への試薬の接触、並びに細胞と接触している流体への試薬の接触を包含する。
【0027】
「投与」及び「処理」はまた、例えば、細胞の、試薬、診断用結合化合物による、又は別の細胞によるインビトロ及びエクスビボでの処理を意味し得る。
【0028】
「治療する」又は「治療」は、1以上の神経系の疾患若しくは障害の症状を有するか、又は神経系疾患若しくは障害を有することが疑われているか、又は神経系の疾患若しくは障害を獲得する危険性が上昇しているか、又は記載される別の障害、すなわち、神経変性障害のうちの1以上を有する対象若しくは患者への内部又は外部からの、AAVウイルスベクターのいずれかを含有する組成物などの治療剤の投与、プロモーターDREADD構築物若しくは記載される類似の組成物の送達を指し、そのための薬剤は治療活性を有する。
【0029】
用語「予防」は、病態、例えば、神経系の疾患又は障害を発症する危険性がある対象の予防的処置であって、該対象が該病態を発症する可能性を減少させる予防的処置を指す。
【0030】
用語「対象」及び「患者」は、本明細書で互換的に使用される。用語「対象(複数可)」は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス)並びに霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジー及びヒトなどのサル)、並びに例えば、ヒトを含む哺乳類などの動物を指す。
【0031】
一般的には、該薬剤は、任意の臨床的に測定可能な程度までそのような症状(複数可)の退縮を誘発するか、又は進行を阻害するかにかかわらず、治療される対象若しくは集団における1以上の神経系の疾患又は障害の症状を軽減するのに有効な量で投与される。任意の特定の神経系の疾患又は障害の症状を軽減するのに有効な治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢、及び体重、並びに対象において所望の応答を誘発する薬物の能力などの要因に応じて変化し得る。神経系の疾患又は障害の症状が軽減されているかどうかは、一般的には、その症状の重症度又は進行状態を評価するために、医師又は他の熟練した医療従事者によって使用される任意の臨床的測定により評価することができる。本発明(例えば、治療方法又は製品)の実施形態は、標的の神経系の疾患又は障害の症状(複数可)を軽減するのに全ての対象には有効ではない可能性があるが、スチューデントt検定、カイ2乗検定、マン及びホイットニーによるU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンケーレ-テルプストラ検定及びウィルコクソン検定などの当技術分野で公知の任意の統計的検定によって判定された場合、統計学的に有意な数の対象において標的の神経系の疾患又は障害の症状(複数可)を軽減するはずである。
【0032】
「単離核酸分子」は、単離されたポリヌクレオチドが天然に見出されるポリヌクレオチドの全て又は一部と関連しないゲノム、mRNA、cDNA、若しくは合成起源又はそれらのいくつかの組み合わせのDNA又はRNAを意味する。
【0033】
本開示の目的のために、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は、無傷の染色体を包含しないことを理解すべきである。指定された核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、指定された配列に加えて、最大10若しくは最大20若しくはそれ以上の他のタンパク質若しくはその一部若しくは断片のコード配列を含むか、又は列挙された核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含むか、かつ/又はベクター配列を含むことができる。
【0034】
語句「制御配列」は、特定の宿主生物において作用可能に連結したコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に適する制御配列は、例えば、プロモーター、任意選択で、オペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを使用することが知られている。
【0035】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されている。プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。又は、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、「作動可能に連結される」とは、連結されているDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には、隣接した読み取り位相であることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接する必要はない。連結は、都合の良い制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、従来の慣行に従って使用される。
【0036】
使用する用語「組換え細胞」は、生物学的に活性のあるポリペプチドの転写又はmRNAなどの生物学的に活性のある核酸の生成をもたらすDNAセグメントなどの外因性DNAセグメントが導入された細胞を指す。
【0037】
用語「ベクター」は、適切な制御エレメントと結合した時に複製可能であり、細胞間に遺伝子配列を転送することができるプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝的要素を含む。したがって、この用語は、クローニング及び発現ビヒクル、並びにウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態において、有用なベクターは、転写される核酸セグメントが、プロモーターの転写制御下に置かれているベクターであると企図される。
【0038】
「プロモーター」は、遺伝子の特定の転写を開始するのに必要な、細胞の合成機構、又は導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指す。語句「作動可能に配置された」、「作動可能に連結された」、「制御下」、又は「転写制御下」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼの開始及び遺伝子の発現を制御するために、核酸に関して正しい位置及び配向にあることを意味する。用語「発現ベクター又は構築物」は、核酸コード配列の一部又は全てが転写され得る核酸を含有する任意の種類の遺伝子構築物を意味する。いくつかの実施形態において、発現は、例えば、転写された遺伝子から生物学的に活性のあるポリペプチド生成物又は阻害性RNA(例えば、shRNA、miRNA)を作製するための核酸の転写を含む。
【0039】
用語「アゴニスト」は、受容体に結合し、受容体媒介性応答の誘導などの固有の効果を有する物質、例えば、リガンド、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、脂質、抗体、抗体断片、巨大分子、又は小分子を意味する。例えば、アゴニストは、受容体の活性を刺激、増加、活性化、促進、強化、又は上方制御し得る。特定の実施形態において、アゴニストはリガンドである。
【0040】
「薬学的に許容される」は、動物、より具体的には、ヒトでの使用について、米国連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に列挙されていることを示す。
【0041】
「担体」は、例えば、本発明の活性薬剤が投与される希釈剤、アジュバント、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、可溶化剤(例えば、ポリソルベート80)、乳化剤、緩衝剤(例えば、トリスHCl、酢酸塩、リン酸塩)、抗菌剤、増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)、賦形剤、補助剤又はビヒクルを指す。薬学的に許容される担体は、石油、動物、植物又は合成起源のものを含む、水及び油などの無菌の液体であり得る。水又は水性生理食塩溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液は、担体として、特に注入用溶液のために使用され得る。適切な医薬担体は、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,PA)による「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」;Gennaro,A.R.,Remington:薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy),(Lippincott,Williams及びwilkins);Liberman et al.,編集、医薬品剤形(Pharmaceutical Dosage Forms),Marcel Decker,ニューヨーク州ニューヨーク;及びKibbe et al.,編集、医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients),米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association),ワシントンに記載されている。
【0042】
化合物又は医薬組成物の「治療有効量」は、特定の障害若しくは疾患及び/又はその症状を予防、阻害、又は治療するのに有効な量を指す。例えば、「治療有効量」は、対象における神経系の疾患又は障害を調節するのに十分な量を指し得る。
【0043】
核酸
本発明はまた、DREADD配列をコードする特定の構築物及び核酸を含む。これらの構築物及び配列は、特定の実施形態において有用であり得るプロモーターDREADD配列、すなわち、PACAP-hM3D(Gq)-mCherry(配列番号1)、TAC-1-hM4D(Gi)-mCherry(配列番号2)、PRSx8-HA-hM3D(Gq)(配列番号3)、PRSx8-HA-hM4D(Gi)(配列番号4)、PACAP-hM3D(Gq)(配列番号6)、PRSx8-hM3D(Gq)(配列番号7)、PRSx8-hM4D(Gi)(配列番号8)、TAC-1-hM4D(Gi)(配列番号9)、TAC-1-hM3D(Gq)-mCherry(配列番号10)及びPACAP-hM4D(Gi)-mCherry(配列番号11)を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、該DREADD配列をコードする構築物及び核酸は、フルオロフォア、例えば、配列番号1のmCherryを含む。DREADDの発現は、蛍光マーカー、例えば、GFP、tdTomato、又はmCherryでタグ付けされている場合に、うまく検出することができる。
【0045】
網膜細胞でプロモーター活性を保持する配列番号5、配列番号5の断片、又は配列番号5と少なくとも約75%の同一性を有する配列番号5の変異体を含む単離核酸プロモーターも含まれる。このプロモーターは、PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド)プロモーターと命名されている。
【0046】
表1は、プロモーターDREADD構築物及びPACAPプロモーターのヌクレオチド配列を提供する。
【表1】
【0047】
好ましくは、核酸は、低い、中程度又は高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。第1の核酸分子は、第1の核酸分子の一本鎖形態が温度及び溶液イオン強度の適切な条件下で第2の核酸分子にアニールできる場合に、第2の核酸分子に「ハイブリダイズ可能」である(例えば、上記のSambrook et al.,を参照されたい)。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。一般的な低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、55℃、5×SSC、0.1%SDSを含み、ホルムアミドを含まないか、又は42℃で30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDSを含む。一般的な中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、42℃で5×SSC又は6×SSC及び0.1%SDSを含む40%ホルムアミドである。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、42℃又は、必要に応じてより高い温度(例えば、57℃、59℃、60℃、62℃、63℃、65℃又は68℃)で50%ホルムアミド、5×SSC又は6×SSCである。一般に、SSCは、0.15MのNaCl及び0.015Mのクエン酸ナトリウムである。ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチは起こり得るが、2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とする。核酸をハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、当技術分野において周知の核酸の長さ及び相補性の程度、変数に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性又は相同性の程度が大きいほど、核酸がハイブリダイズし得るストリンジェンシーは高くなる。長さが100ヌクレオチドを超えるハイブリッドについては、融解温度を計算するための式が導かれている(上記のSambrook et al.,9.50~9.51を参照されたい)。より短い核酸、例えば、オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(上記のSambrook et al.,11.7~11.8を参照されたい)。
【0048】
デザイナードラッグによって排他的に活性化されるデザイナー受容体(DREADD)
神経系の疾患及び障害を治療するための方法並びに組成物が提供される。本方法は、網膜によって開始される脳経路を選択的に制御するために、デザイナードラッグによって排他的に活性化されるデザイナー受容体(DREADD)として知られる化学遺伝学的ツールの使用を用いる。脳へのDREADD注入に関連する脳神経外科的問題は、DREADD発現の標的として網膜を使用することによって回避することができる。
【0049】
視交叉上核(SCN)は、網膜から非画像形成ビジュアル信号を受信する。これらの信号は、その後、覚醒の概日調節のための回路の形成と共に、青斑核(LC)への概日情報を中継する背内側視床下部(DMH)に送信される。この回路を破壊すると、LCニューロン及び皮質ノルアドレナリン作動性LC繊維が変性し、認知欠損、意識喪失、並びに睡眠障害及び概日障害を含むがこれらに限定されない、気分障害及び他の神経障害につながる。
【0050】
上記経路は、覚醒及び気分の光調節(PRAM)経路と呼ばれ得る。この経路の崩壊は、ラットにおける抑うつ様行動につながる。うつ病は、概日活動の変更、例えば、概日リズムの振幅及び位相遅れの鈍化、コア温度の上昇、並びにノルアドレナリン及びコルチゾール血漿濃度の位相前進振動と関連している。うつ病はまた、睡眠の中断、並びに睡眠の調節不全、例えば、季節性情動障害及び短日の長さの照明スケジュールと関連している。
【0051】
DREADDの網膜発現は、硝子体内注入(IVI)の後に実証されている。DREADDの発現は、概日リズムを制御し、気分、注意及び認知処理にも影響する脳の領域である視交叉上核(SCN)内の網膜神経節細胞(RGC)及びRGC繊維において示されている。網膜におけるDREADD発現の機能はまた、DREADDアゴニストのクロザピンNオキシド(CNO)の送達後に、網膜電図(ERG)を用いて確認されている。より臨床的に有用な投与技術である全身投与と点眼をした場合のCNO効力を比較した。重要なことに、点眼によるCNOの適用は、全身送達によるCNOの適用と少なくとも同じくらいDREADD機能を引き出すのに成功している。
【0052】
本発明は、DREADDとして知られる受容体のクラスのトランスフェクションを含む、対象における神経系の疾患及び障害を阻害、活性化、治療及び/又は予防する組成物並びに方法を包含する。DREADDは、そうでなければ不活性薬物様小分子によって活性化することができる工学処理されたGタンパク質共役受容体である。この技術は、特定のDREADDのウイルス発現によってニューロン興奮性に局所的かつ時間特異的減少又は増加(例えば、hM3Dq又はhM4Di)を達成するための化学的手法と遺伝学的手法の組み合わせを有する(Katzel et al.,(2014) Nat.Commun.,5:3847;Mahler et al.,(2014) Nat.Neurosci.,17:577-85;Pei et al.,(2008) Physiology 23:313-21;Ferguson et al.,(2011) Nat.Neurosci.,14:22-24;Fortress,A.M. et al.,(2015) J.Neurosci.,35(4),1343-1353;Vazey,E.M. et al.,(2014).Proc.Natl.Acad.Sci.,111(10),3859-3864;前述の参考文献の各々は参照により組み込まれる)。特定の実施形態において、本方法は、DREADDをコードする核酸分子を投与し、対象にDREADDのアゴニストを投与することを含む。
【0053】
神経及び非神経細胞においてニューロン発火を高め、Gqシグナル伝達を活性化するために、hM3Dq DREADDが一般的に使用される(Alexander et al.,(2009) Neuron 63(1):27-39;Armbruster(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.,104(12):5163-8)。hM3Dqは、非定型抗精神病薬クロザピンの薬理学的に不活性な代謝物であるクロザピンN-オキシド(CNO)によって活性化することができる(Armbruster(2007) Proc.Natl.Acad.Sci.,104(12):5163-8);Roth et al.,(1994) J.Pharmacol.Exp.ther.268,1403-1410)。
【0054】
hM4Di受容体は、Giシグナル伝達カスケード及びGIRKチャネルに通常は結合する改変ヒトムスカリン受容体であり、アセチルコリン又は他の内因性化合物の影響を受けない(Pei et al.,(2008) Physiology 23:313-21)。しかしながら、この改変ヒトムスカリン受容体は、そうでなければ薬理学的に不活性なリガンドであるクロザピンN-オキシド(CNO)によって強く活性化される。さらに、特異性は、DREADDの領域特異的及び細胞型特異的発現によって達成され、ニューロン興奮性の目的のかつ時間的に限られた抑制を可能にする。
【0055】
本発明は、特に、例えば、うつ病などの神経系の疾患及び障害を治療するために、脳の活動及び機能に影響を与えるポータルとして眼を使用する。ノルアドレナリン作動性青斑核ニューロンの活性を操作し、PRAM経路及びその関連経路を制御するために、眼へのDREADD注入を用いる脳の操作は、当技術分野で提案も、教示もされなかった。同様に、網膜神経節細胞の特定のサブセットにおいてDREADD発現を促進するためのPACAPプロモーターの使用は、当技術分野で教示も、提案もされなかった。自然回路入力を介して青斑核ニューロンの活動を操作及び調節するためのPRAM経路の網膜刺激の使用は、青斑核ニューロンにおけるDREADDの直接発現による直接刺激の従来の方法を用いて生じる場合よりも生理学的及び臨床的に許容される青斑核活動パターンを可能にする。本発明はさらに、眼内で発現するDREADD受容体を刺激する方法として点眼薬の使用を提供し、この技術は、当技術分野で教示も、提案もされていない。
【0056】
したがって、本発明は、治療目的のために異常な神経機能を制御するための、遺伝的にコードされ、高度に選択的な「ロックアンドキー」手法を提供する。アゴニストの全身又は局所送達を介するDREADDの活性化は、ニューロンにおいて神経活動亢進、並びにアデニリルシクラーゼ及びcAMPレベルを減衰する。DREADDは、そのアゴニストによって用量依存的に活性化され、それによって、神経機能の柔軟な調節を可能にすることができる。
【0057】
対象にDREADDアゴニストを投与する前に、DREADDの網膜発現が生じた時を判断するためのいくつかの技術がある。1つの技術では、医師は、DREADDの発現を検出するために、SPECTRALIS(登録商標)OCTプラットフォームを使用し、光干渉断層撮影(OCT)と呼ばれる技術を用いて進めることができる。蛍光マーカー、例えば、GFP、tdTomato、又はmCherryでタグ付けされている場合に、DREADDの発現を正常に検出することができる。その結果、DREADD発現は、DREADDアゴニストの投与前に監視することができる。第2の技術では、DREADDのアゴニスト依存性活性化は、網膜電図を用いて分析することができる。第3の技術では、陽電子放射断層撮影(PET)を用いて、[11C]アゴニストなどの放射性標識アゴニストの静脈内投与後のDREADD発現を検出することができる。
【0058】
一実施形態において、該DREADDアゴニストは、対象の眼へのウイルスベクターの投与直後に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0059】
別の実施形態において、該DREADDアゴニストは、対象の眼へのウイルスベクターの投与後1日目に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0060】
さらに別の実施形態において、該DREADDアゴニストは、対象の眼へのウイルスベクターの投与後3週目、好ましくは4週目に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0061】
別の実施形態において、該DREADDアゴニストは、対象の眼へのウイルスベクターの投与前に、投与と同時に、又は投与後の時点で予防的に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0062】
別の実施形態において、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む記載のウイルスベクターは、抗炎症剤と同時投与することができ、抗炎症剤は、全身注入コルチコステロイド、硝子体内注入ケトロラク、硝子体内注入ジクロフェナク又は他の臨床的に許容される抗炎症剤から選択され得る。
【0063】
本発明の方法はまた、前述の障害のいずれかを治療するためのアカンプロセート、アゴメラチン、アリメマジン、アルプラゾラム、アマンタジン、アンフェタミン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アポモルフィン、アポモルフィン、アリピプラゾール、アセナピン、アトモキセチン、アトロピン、バクロフェン、ベンペリドール、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロマゼパム、ブロモクリプチン、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブプレノルフィン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトバルビタール、カベルゴリン、カルバマゼピン、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、シタロプラム、クロバザム、クロメチアゾール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロラゼペート、クロザピン、シクロバルビタール、シプロヘプタジン、シチシン、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキサンフェタミン、デキサメチルフェニデート、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジサイクロミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ジスルフィラム、ジバルプロックスナトリウム、ドネペジル、ドキサクリウム、ドキセピン、ドキシラミン、デュロキセチン、エダラボン、電気けいれん療法、エナント酸、エスシタロプラム、エスタゾラム、エスゾピクロン、エトスクシミド、フルニトラゼパム、フルオキセチン、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルスピリレン、フルボキサミン、ガバペンチン、ガランタミン、グルテチミド、グリコピロレート、グアンファシン、ハロペリドール、ヘキサメトニウム、塩酸、ヒドロキシジン、イロペリドン、イミプラミン、イプラトロピウム、ラモトリジン、レベチラセタム、レボドパ、レボメプロマジン、レボミルナシプラン、リスデキサンフェタミン、リスリド、リチウム塩、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メカミラミン、メラトニン、メルペロン、メマンチン、メプロバメート、メタンフェタミン、メタドン、メチルフェニデート、ミアンセリン、ミダゾラム、ミルタザピン、モクロベミド、モダフィニル、モデケート(modecate)、マザーワート、ナルメフェン、ナルトレキソン、ニアプラジン、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オムカ(omca)、オンダンセトロン、オルフェナドリン、オキサゼパム、オクスカルバゼピン、オキシトロピウム、オキシブチニン、パリペリドン、パロキセチン、ペンフルリドール、ペントバルビタール、ペラジン、ペルゴリド、ペリシアジン、ペルフェナジン、フェナゼパム、フェネルジン、フェノバルビタール、フェニトイン、ピモジド、ピリベジル、プラミペキソール、プレガバリン、デカン酸プロリキシン、プロメタジン、プロパンテリンブロミド、プロチペンジル、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、ラメルテオン、ラサギリン、レボキセチン、レマセミド、レセルピン、リルゾール、リスペリドン、リバスチグミン、ロピニロール、ロチゴチン、塩化ルビジウム、サフィンアミド、スコポラミン、セコバルビタール、セディテン(sediten)、セレクテン(selecten)、セレギリン、セレギリン、セルチンドール、セルトラリン、セルトラリン、セビノール(sevinol)、シンクアロンエナンタット(sinqualone enantat)、シクアロン(siqualone)、シルトール(sirtal)、ナトリウムオキシベート、バルプロ酸ナトリウム、ソリフェナシン、スタゼピン、ステラジン、スルピリド、スボレキサント、タクリン、テグレトール、テレスミン、テマゼパム、テルフルジン、テトラベナジン、チオリダジン、チオチキセン、チアネプチン、チモニル(timonil)、チオトロピウム、チザニジン、トフィソパム、トルカポン、トルテロジン、トピラメート、トランチン(trancin)、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トリフルオペラズ(trifluoperaz)、トリフルオペラジン、トリフタジン(triftazin)、トリヘキシフェニジル、トリミプラミン、トロピカミド、ツボクラリン、セイヨウカノコソウ、バルプロ酸塩、バルプロ酸、バレニクリン、ベンラファキシン、ビラゾドン、ボルチオキセチン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾルピデム、ゾピクロン、ゾテピン、ズクロペンチキソール又は他の神経弛緩薬、抗うつ薬剤又は薬物療法剤を含む、神経系の疾患又は障害の治療のための少なくとも1つの他の治療剤を投与することを含むことができる。
【0064】
特定の実施形態において、該DREADD核酸及び/又はDREADDアゴニストは、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を有する組成物として送達される。
【0065】
いくつかの実施形態において、神経系の疾患又は障害は、神経精神障害である。個人は、米国精神医学会のメンタルヘルスの診断及び統計マニュアル(DSM-5)に記載の基準を使用して神経精神障害を有すると特定され得る。DSM-5は、神経精神障害として分類される障害を識別する。神経精神障害の例としては、うつ病、季節性情動障害、不安、睡眠障害及び概日障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含むストレス障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、依存症、てんかん、及び集中治療室(ICU)精神病が挙げられる。
【0066】
別の実施形態において、睡眠障害は、タイムゾーンを横切る空の旅による疲労、不眠、及び他の症状を引き起こす一時的な障害である非同期(「時差ぼけ」)である。これは、体内時計の破壊である概日リズム睡眠障害と考えられている。
【0067】
いくつかの実施形態において、神経系の疾患又は障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンチントン病を含む神経変性疾患である。
【0068】
別の実施形態において、神経系の疾患又は障害は、脳血管障害(CVA)又は脳卒中である。DREADD核酸及び/又はDREADDアゴニストは、脳血管障害(CVA)又は脳卒中の症状を軽減するために対象に投与され得る。これらの症状は、意識、歩行、話すこと、及び理解に問題が残る対象、並びに顔、腕、若しくは足の麻痺又はしびれを有する対象を含む。
【0069】
別の実施形態において、DREADD核酸及び/又はDREADDアゴニストは、対象に投与され得る一方で、該対象は、神経系の疾患又は障害のための追加の治療方法で治療される。これらの追加の治療方法には、認知行動療法、光療法、及び電気けいれん療法が含まれるが、これらに限定されない。例えば、対象には、神経精神障害のための光線療法を施しながら、DREADDアゴニストを投与することができる。併用治療法は、光線療法の有効性の増強、並びに/又は光線療法プロトコルの頻度及び投薬量の減少をもたらし得る。
【0070】
表2には、神経系の疾患及び障害、影響を受けた脳領域、治療、及び予測される結果が記載されている。
【表2】
【0071】
本発明の核酸は、任意の公知の方法によって、細胞、例えば、ニューロンに送達され得る。例えば、核酸は、合成送達システム、リポソーム、ナノ粒子、又はウイルスベクターを介して送達することができる。DREADDをコードする核酸分子は、発現ベクター、特に、アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクター内に含有され得る。核酸分子(又はベクター)は、標的部位、例えば、マイクロインジェクションによって、直接送達され得る。例えば、核酸分子又はベクターは、例えば、注入によって、眼内空間及び/又は網膜に投与され得る。眼内注入は、硝子体内注入、サブ内部境界膜注入、及びサブ網膜注入を含み得る。
【0072】
ウイルスベクターの例としては、限定されないが、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、例えば、複製欠損単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスのベクターが挙げられる。特定の実施形態において、該ベクターはAAVベクターである。該AAVベクターは、任意のAAV血清型のものであり得る。例えば、該AAVベクターは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びそれらのハイブリッドであり得る。例えば、AAVベクターは、2、3、4、5、又はそれ以上の血清型の組合せハイブリッドであり得る。AAVベクターは、全部又は一部を欠失したAAV野生型遺伝子の1以上を有することができる。特定の実施形態において、該AAVベクターはAAV2である。
【0073】
上記で説明したように、DREADDは、そうでなければ不活性薬物様小分子によって活性化される工学処理されたGタンパク質共役受容体である(参照により本明細書に組み込まれるUrban et al.,(2015) Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,55:399-417に概説されている)。DREADDの作製方法は当技術分野で知られている(例えば、Dong et al.,(2010) Nat.Protoc.,5(3):561-73を参照されたい)。
【0074】
特定の実施形態において、該DREADDは、ムスカリン受容体(例えば、ヒトのムスカリン受容体)に基づいている。別の特定の実施形態において、該DREADDは、KORD(カッパオピオイド受容体DREADD(例えば、ヒトKOR)である。例えば、該KORDは、Gタンパク質共役(例えば、Gi共役)カッパオピオイド受容体DREADDであり得、その不活性リガンド又はアゴニストはサルビノリンB(salB)である。特定の実施形態において、該DREADDはGiと共役している。
【0075】
特定の実施形態において、該DREADDは、hM4Di(ヒトM4ムスカリン性コリン作動性Gi共役DREADDである。特定の実施形態において、該DREADDは、2つの点変異:Y113での置換(例えば、Y113C)及びA203での置換(例えば、A203G)を含むヒトムスカリンアセチルコリン受容体M4(例えば、GenBankアクセッション番号NP_000732、遺伝子ID:1132)である。PCT公開番号WO 2015/136247(参照により本明細書に組み込まれる)はまた、hMD4iをコードする核酸配列を提供する。hM4Diコードするプラスミドは、プラスミド45548(Addgene,Cambridge,MA,www.addgene.org/45548)として市販されている。
【0076】
特定の実施形態において、該DREADDはGqと共役している。特定の実施形態において、該DREADDは、Gq共役ヒトM3ムスカリン受容体(hM3Dq)である(例えば、Alexander et al.,(2009) Neuron 63(1):27-39;Armbruster et al.,(2007) Proc.Natl.Acad.Sci.,104(12):5163-5168;Alexander et al.,(2009) Neuron 63(1):27-39を参照されたい)。hM3Dqをコードするプラスミドは、プラスミド44361(Addgene,Cambridge,MA,www.addgene.org/44361)として市販されている。
【0077】
特定の実施形態において、該アゴニストは、クロザピンN-オキシド、DREADDアゴニスト21(Tocris Bioscience,Bristol,UK;11-(1-ピペラジニル)-5H-ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン)、サルビノリンB、クロザピン、オランザピン、又はペルラピン(Tocris Bioscience,Bristol,UK;6-(4-メチル-1-ピペラジニル)-11H-ジベンズ[b,e]アゼピン);Chen et al.,(2015) ACS Chem.Neurosci.,6(3):476-84)である。
【0078】
DREADDをコードする核酸は、ニューロン特異的プロモーターの制御下にあり得る。特定の実施形態において、ニューロン特異的プロモーターはシナプシンである(例えば、Kugler et al.,(2003)Gene Ther.,10:337-47)。シナプシンプロモーター(例えば、ヒトシナプシンプロモーター)は、ニューロンの大部分においてDREADD(例えば、hM4D(Gi)又はhMD3(Dq))の生成を促進する。
【0079】
特定の実施形態において、該ニューロン特異的プロモーターは、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)プロモーター、メラノプシンプロモーター、又はSCNに突出する網膜神経細胞で発現するプロモーターである。
【0080】
別の実施形態において、該ニューロン特異的プロモーターはPRSx8である。PRSx8は、ヒトDBHプロモーターの上流調節部位に基づいており、アドレナリン作動性ニューロンにおける高レベルの発現を促進する。
【0081】
さらに別の実施形態において、該ニューロン特異的プロモーターは、プレプロタキキニン-1プロモーター(TAC-1)である。
【0082】
いくつかのプロモーター促進性DREADDの核酸配列が記載されている。それらには、PACAP-hM3D(Gq)-mCherry(配列番号:1)、TAC-1-hM4D(Gi)-mCherry(配列番号2)、PRSx8-HA-hM3D(Gq)(配列番号3)、PRSx8-HA-hM4D(Gi)(配列番号4)、PACAP-hM3D(Gq)(配列番号6)、PRSx8-hM3D(Gq)(配列番号7)、PRSx8-hM4D(Gi)(配列番号8)、及びTAC-1-hM4D(Gi)(配列番号9)、TAC-1-hM3D(Gq)-mCherry(配列番号10)及びPACAP-hM4D(Gi)-mCherry(配列番号11)が含まれるが、これらに限定されない。DREADDのアゴニストは、他の受容体(例えば、選択的アゴニスト)を上回って、投与されたDREADD受容体に優先的に結合し、活性化する。不活性であるか、又はDREADDを刺激する以外にはほとんど或いはまったく生物学的影響を及ぼさないDREADDアゴニストを使用することが望ましい。例えば、該アゴニストは、DREADDのリガンドであり得る。
【0083】
特定の実施形態において、該アゴニストは、クロザピンN-オキシド(CNO)又はサルビノリンB(salB)である。該DREADDアゴニストは、対象に全身(例えば、経口、局所(例えば、皮膚へ)送達されるか、又は眼に直接(例えば、注入又は点眼薬)送達され得る。
【0084】
医薬組成物及び投与
該組成物は、眼、経口、非経口、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、局所、吸入、経皮、肺内、直腸内、筋肉内、及び鼻腔内投与を含む任意の適切な手段によって投与され得る。
【0085】
特定の一実施形態において、該核酸組成物は、注入(例えば、網膜への微量注入、硝子体内注入など)によって投与される。
【0086】
マウスの眼へのDREADD投与の例については、記載されている(Li et al.,(2016).Proc.Natl.Acad.Sci.,113(7):1937-1942。この論文では、Li et al.,は、Park et al.,(2008) Science 322(5903):963-966に記載の方法を用いて、DREADDを発現するAAVベクター(Gq/11シグナル伝達を選択的に活性化するための変異M3ムスカリン性Gタンパク質共役受容体(GPCR)hM3Dq)をマウスの眼に注入した。LiのGq/11共役デザイナーGPCRは、その天然のリガンド(アセチルコリン)によって活性化され得なかったが、クロザピンN-オキシド(CNO)、そうでなければ薬理学的に不活性な化合物によって活性化されるようになった(Farrell et al.,(2013) Brain Res 1511:6-20)。簡単に説明すると、マウスをケタミン及びキシラジンで麻酔し、該ベクターを、ハミルトンマイクロシリンジと連結されたガラスマイクロピペットを用いて硝子体に注入した。マイクロピペットを、鋸状縁のすぐ後ろの周辺網膜に挿入し、レンズへの損傷を避けるために意図的に角度を付けた。
【0087】
別の特定の実施形態において、該アゴニストを含む組成物は、全身(例えば、経口)、局所(例えば、皮膚に)又は眼に(例えば、点眼薬を介して)投与される。
【0088】
該DREADDアゴニスト、例えば、クロザピンN-オキシド、DREADDアゴニスト21、サルビノリンB、クロザピン、オランザピン、又はペルラピン、及び担体を含む組成物は、本発明、特に、眼内投与、特に、眼への局所投与に適した組成物、例えば、滅菌点眼薬又は軟膏に包含される。特定の実施形態において、該組成物は、眼と生理学的に適合性のあるpH(例えば、約4~約8、約5.5~約8、又は約6.0~約7.5の範囲のpH)を有する水性製剤である。
【0089】
特定の実施形態において、該組成物は、眼内投与に適する等張性及び生理学的特性を有する水性製剤である。該組成物はまた、眼における化合物の滞留時間を増加させ、化合物の持続放出を提供し、かつ/又は毒性を回避し、眼の忍容性を増大させるように改変され得る。
【0090】
特定の実施形態において、該組成物の浸透圧は、生理学的浸透圧(例えば、0.9%生理食塩水)と近似する。限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、デキストロース及び/又はマンニトールなどの化合物が添加され得る。特定の実施形態において、該組成物の浸透圧は、約150~約450mOsm又は約250~約350mOsmである。
【0091】
特定の実施形態において、該組成物はさらに、眼を癒し、組成物の表面張力を低減し、濡れ性を向上させ、かつ/又は粘度を(例えば、約10~約100又は約25~約50センチポアズの粘度まで)高める化合物を含んでよく、そのような薬剤は、限定されないが、ポリオール(例えば、チロキサポール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース)、デキストラン、ゼラチン、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)、ポリソルベート80、ポビドン、カルボマー、及び多糖類/グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)を含む。
【0092】
特定の実施形態において、該組成物は酸化防止剤を含む。特定の実施形態において、該組成物は、防腐剤(例えば、四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、セトリミド、臭化ベンゾドデシニウム及び塩化ベンゾキソニウム)、チオサリチル酸のアルキル水銀塩、パラベン、キレート剤、クロロブタノール、ホウ酸、ソルビン酸、及びフェニルエタノールなど)を含む。
【0093】
一般に、該組成物の薬学的に許容される担体は、希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体の群から選択される。該組成物は、様々な緩衝剤含有物(例えば、トリスHCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤;界面活性剤及び可溶化剤(例えば、ポリソルベート80)などの添加剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)及び増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含むことができる。該組成物はまた、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリラクチド/グリコリド共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の粒状製剤に、又はリポソームに組み込むことができる。そのような組成物は、本発明の医薬組成物の成分の物理的状態、安定性、インビボ放出の速度、及びインビボクリアランスの速度に影響を及ぼし得る(例えば、レミントンの薬学及びレミントン:薬学の科学と実践(Remington’s Pharmaceutical Sciences and Remington: The Science and Practice of Pharmacy)を参照されたい)。本発明の医薬組成物は、例えば、液体形態で調製することができるか、又は乾燥粉末形態(例えば、後の再構成のための凍結乾燥された形態)であり得る。
【0094】
記載される治療剤は、一般に医薬製剤として患者に投与される。用語「患者」は、ヒト又は動物対象を指す。本発明の組成物は、医師又は獣医師の指導の下、治療的又は予防的に使用され得る。
【0095】
本発明の薬剤を含む組成物は、都合のよいことに、任意の薬学的に許容される担体(複数可)での投与用に製剤化することができる。選択される媒体中の薬剤の濃度は変更してよく、該媒体は、医薬製剤の所望の投与経路に基づいて選択され得る。任意の従来の媒体又は薬剤が投与される薬剤と不適合である場合を除いて、医薬製剤におけるその使用が企図される。
【0096】
特定の患者への投与に適している本発明による薬剤の用量及び投薬レジメンは、患者の年齢、性別、体重、一般的な医学的状態、及び治療又は予防のために薬剤が投与される特定の病態及びその重篤度を考慮して医師によって決定され得る。医師は、投与経路、医薬担体、及び薬剤の生物活性も考慮し得る。適切な医薬製剤の選択はまた、選択される投与様式に依存する。
【0097】
本発明の医薬製剤は、均一性及び投与の容易さのために、投与単位形態で製剤化され得る。投与単位形態は、治療を受けている患者に適する医薬製剤の物理的に別個の単位を指す。各投薬量は、選択される医薬担体と関連して所望の効果をもたらすように計算された量の活性成分、例えば、DREADDアゴニストを含有すべきである。
【0098】
適切な投薬単位を決定するための手順は、当業者によく知られている。例えば、投与単位は、対象の体重に基づいて比例して増減し得る。当技術分野で知られているように、特定の病態(神経系の疾患又は障害)の軽減又は予防に適する濃度は、投薬濃度曲線計算によって決定することができる。
【0099】
一実施形態において、該治療剤、例えば、DREADDアゴニストの濃度は、対象の種に応じて0.1mg/kg~100mg/kgの範囲である。
【0100】
DREADDの投与後、該治療剤、例えば、DREADDアゴニストを含む医薬製剤は、病的症状が低減又は軽減されるまで適切な間隔で投与することができ、その後、投薬量を維持レベルまで低減することができる。
【0101】
DREADDアゴニストの最初の投与は、ウイルスベクターの眼内又は硝子体内投与直後に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0102】
別の実施形態において、該DREADDアゴニストは、ウイルスベクターの眼内又は硝子体内投与後1日目に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0103】
さらに別の実施形態において、該DREADDアゴニストは、ウイルスベクターの眼内又は硝子体内投与後3週目、好ましくは4週目に投与することができ、該ウイルスベクターは、プロモーター、DREADD、及びヌクレオチド配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11によってコードされる3’非翻訳領域を含む。
【0104】
該DREADDアゴニストを投与するための適切な時間は、当技術分野で公知の3つの方法によって決定され得る。第1の方法は、光干渉断層撮影(OCT)を使用してDREADD発現を可視化する。第2の方法は、DREADDのアゴニスト依存性活性化中の網膜電図波の分析によるものである。第3の方法は、「11C」アゴニストなどの放射性標識アゴニストの静脈内投与後に陽電子放出断層撮影(PET)を使用することによって生じる。アゴニストの最適な第1の投与は、DREADD核酸分子の投与後3~4週の範囲内であり得ると予想される。
【0105】
別の実施形態において、該治療剤、例えば、DREADDアゴニストを含む医薬製剤は、適切な日々の間隔、例えば、1日あたり少なくとも1回、1日あたり少なくとも2回、1日あたり少なくとも3回、又は神経系の疾患又は障害の病理学的症状が低減又は軽減されるまで投与され得る。
【0106】
治療剤、例えば、DREADDアゴニストの投与の適切な日々の間隔は、患者の状態、例えば、神経系の疾患又は障害の重症度に依存し得る。
【0107】
例えば、記載される特定の製剤の毒性及び治療的、予防的な効力は、インビトロ、細胞培養物、エクスビボ、又は実験動物などにおいて、標準的な薬学的手順によって決定することができる。これらの研究から得られたデータは、ヒトで使用するための投薬量範囲の製剤化に使用することができる。投薬量は、投与形態及び投与経路に依存して変化し得る。投薬の量及び間隔は、治療有効量又は予防有効量を送達するのに十分である有効成分のレベルに、個々に調節され得る。
【0108】
キット
本発明はまた、薬学的に許容される担体及びDREADアゴニストを含むが、これらに限定されない1以上の追加の成分と関連して、説明したウイルスベクター、プロモーター、及びDREADDを含むが、これらに限定されない1以上の成分を含むキットを提供する。該ウイルスベクター、プロモーター、DREADD組成物及び/又はDREADアゴニストは、純粋な組成物として、又は医薬組成物中の薬学的に許容される担体と組み合わせて製剤化することができる。
【0109】
キットはまた、DREADDの核酸、タンパク質、又はタンパク質断片のレベルの上昇を決定するための説明書と共に、プライマー、緩衝剤、及びプローブを含み得る。
【0110】
一実施形態において、キットは、1つの容器内にウイルスベクター、プロモーター、本発明のDREADD組成物又はその医薬組成物を含み、別の容器(例えば、滅菌したガラス又はプラスチックバイアル)内にDREADDアゴニスト又はその医薬組成物を含む。
【0111】
該キットが対象への非経口投与用の医薬組成物を含む場合、該キットは、そのような投与を行うための装置を含むことができる。例えば、該キットは、上述したように、1以上の皮下注入針又は他の注入装置を含むことができる。
【0112】
該キットは、該キット内に医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書を含むことができる。一般に、そのような情報は、同封された医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用する際に患者及び医師を助ける。例えば、本発明の組み合わせに関する以下の情報:薬物動態、薬力学、臨床研究、有効性パラメーター、適応症及び用法、禁忌、警告、注意事項、有害反応、過剰投与、適切な投薬量及び投与、供給される方法、適切な保存条件、参考文献、製造元/販売情報並びに特許情報が添付文書に供給され得る。
【0113】
一般的な方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,Fritsch及びManiatis(1982 & 1989 第2版、2001 第3版)、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook及びRussell(2001) 分子クローニング(Molecular Cloning)、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993) 組換えDNA(Recombinant DNA)、第217巻,Academic Press,San Diego,CA)に記載されている。標準的な方法はまた、細菌細胞におけるクローニング及びDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞及び酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質及びタンパク質発現(第3巻)、及びバイオインフォマティクス(第4巻)について記載しているAusbel et al.,(2001) 分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第1~4巻、John Wiley and Sons社、New York,NYに見られる。
【0114】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化を含むタンパク質精製のための方法が記載されている(Coligan et al.,(2000) タンパク質科学の現在のプロトコル(Current Protocols in Protein Science)、第1巻、John Wiley and Sons社、New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質生成、タンパク質のグリコシル化について記載されている(例えば、Coligan et al.,(2000) タンパク質科学の現在のプロトコル(Current Protocols in Protein Science)、第2巻、John Wiley and Sons社、New York;Ausubel et al.,(2001) 分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology、第3巻、John Wiley and Sons社、NY,NY,ページ16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich社 (2001) ライフサイエンス研究のための製品(Products for Life Science Research),St. Louis,MO;ページ45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001) BioDirectory, Piscataway,N.J.,PP.384-391を参照されたい)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の生成、精製、及び断片化について記載されている(Coligan et al.,(2001) 免疫学における現在のプロトコル(Current Protocols in Immunology)、第1巻、John Wiley and Sons社、New York;Harlow及びLane(1999) 抗体の使用(Using Antibodies)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY;Harlow及びLane,上記)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coligan et al.,(2001) 免疫学における現在のプロトコル(Current Protocols in Immunology)、第4巻、John Wiley社、New York)を参照されたい)。
【0115】
実施例
実施例1
網膜における興奮性hM3Di DREADD
体重減少は、ヒトにおけるうつ病及び動物におけるうつ様行動の共通の特徴である(米国精神医学会、DSM-5、2013;Liu et al.,Behavior.Brain Res.,305:148-156,2016)。うつ病に関連する体重減少に対するDREADD活性化の効果をラットで研究した。
【0116】
hM3Dq(G(q))DREADD(AAV-hSyn-hM3Di)又は対照ベクター(hSyn-GFP)をコードするヒトシナプシンプロモーター(hSyn)を有するAAVベクターを、硝子体内注入(IVI)によってラットに投与した。hM3Di DREADDの発現のために4週間そのままにした後、ラットを1日24時間、全暗で飼育した。全暗暴露は、動物にうつ様行動をもたらす環境条件である(Gonzalez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,105(12):4898-903,2008)。hM3Di DREADDのみを発現する動物で網膜細胞を活性化するためにアゴニストCNOを1日1回投与した。
【0117】
図1は、全暗飼育の最初の3日間、全ての動物における体重減少を示す。その後の4日間で、hM3D1 DREADD活性化網膜を有する動物は体重減少から回復したが、hSyn-GFP対照ベクターを投与した動物は体重を減らし続けた。体重減少からの回復は、hM3Di DREADD活性化網膜が、常に暗い中での飼育によって誘発されるうつ病関連行動を減少させたことを示した。
【0118】
実施例2
硝子体内注入による網膜細胞でのDREADDの発現及び機能
図2は、DREADD投与後4週間のDREADD発現を示す。ラットに、AAV-hSyn-hM4Diを硝子体内投与した。
図2Aは、網膜細胞におけるDREADDのトランスフェクションを示す。
図2Bは、視交叉上核へのDREADD末端輸送を示す。DREADD発現の確認後に、網膜電図検査(ERG)を行った。
図2Cは、CNOアゴニストの(腹腔内注入による)投与後20分の時点でのERG波の阻害を示し、網膜の活動の減少を示す。
図2Dは、点眼薬でのDREADD活性化を示す。点眼薬を投与し、その後、ERG読み取り値を10分及び20分の時点で記録した。全身送達と同様に、点眼薬は、両方の時点で、網膜細胞において機能を低下させた。
【0119】
実施例3
網膜細胞のDREADD活性化は光欠乏誘発性うつ様行動の発症を予防する
hSynプロモーターを有するhM3Dq(G(q))をコードするAAVベクター(AAV-hSyn-hM3Di)又は対照ベクター(hSyn-GFP)を硝子体内注入(IVI)によってラットに投与するか、又は注入しなかった。hM3Di DREADDの発現のために4週間そのままにした後に、ラットを1日24時間、全暗で飼育した。全暗曝露は、動物にうつ様行動をもたらす環境条件である(Gonzalez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,105(12):4898-903,2008)。hM3Di DREADDのみを発現する動物で網膜細胞を活性化するためにアゴニストCNOを1日1回投与した。
【0120】
図3は、光欠乏誘発性抑うつ様行動の発生を防止する網膜細胞のDREADD活性化を示す。
図3Aは、全暗飼育の最初の8週間の全ての動物における体重変化の割合を示す。予想通り、GFP動物は体重を失い、対照動物は体重を増やせず、hM3Dq動物は体重が増加した。体重減少からの回復は、DREADD活性化網膜が、常に暗い中での飼育によって誘発されるうつ病関連行動を減少させたことを示す。他のうつ病様行動の行動の程度を測定した。サッカリン嗜好試験は、対照動物及びGFP動物がhM3Dq動物よりもサッカリンを好まず(
図3B)、hM3Dq動物は、両方の対照群よりも強制水泳試験中によく泳ぎ、あまり不動にならなかった(
図3C)ことを示し、hM3Dq動物においてうつ様行動の欠如を示した。該構築物は不安様行動を誘発せず(
図3D及び
図3E)、一般的な運動行動には影響しなかった(
図3F)。
【0121】
実施例4
常に暗い中での網膜細胞のDREADD活性化は青斑核におけるアポトーシスを防止する
hSynプロモーターを有するhM3Dq(G(q))をコードするAAVベクター又は対照ベクター(GFP)のいずれかをラットの3群に硝子体内注入(IVI)により投与するか、又は注入しなかった(DD-対照)。興奮性DREADDの発現を可能にするために4週間後に、1日24時間、全暗でラットを飼育した。アゴニストCNOは、hM3DqとGFPの両方の動物に1日1回投与し、G(q)動物のみにおいて網膜細胞を活性化させた。比較として、ラットの4群に、標準的な明/暗条件で飼育した(DL-対照)。飼育期間後、脳を切片にし、チロシン水酸化物(TH)で免疫組織化学により染色し、青斑核の境界を画定した。鈍い灰色;
図4Dに示す例示的な青斑核の境界、及びPARPのp85断片、アポトーシス(明るい灰色)のインサイチュマーカー。
図4は、常に暗い中での網膜細胞のDREADD活性化が青斑核のアポトーシスを防止することを示す。アポトーシスは、唯一、DD-対照及びDD-GFP動物(網膜活性化のないもの)で観察された。アポトーシスは、DD-Hm3Dq及びDL-対照動物(日々網膜が活性化されるもの)において観察されなかった。アポトーシスの量を、p85 PARP染色によって生成された蛍光の強度を測定することによって定量した(
図4F)。
【0122】
実施例5
硝子体内注入(IVI)後のメラノプシン(+)細胞におけるPACAP-DREADD発現
非トランスジェニックモデルにおける本質的に感光性の網膜神経節細胞(ipRGC)を特異的に標的化するために利用可能なメラノプシン系薬剤の非存在下で、メラノプシン発現網膜細胞で同時発現する下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)(Hannibal J Neurosci.,2002)を用いて、メラノプシン免疫反応性細胞における興奮性DREADD(PACAP-Hm3Dq)を促進するためのPACAPプロモーターを作製した。
【0123】
網膜を、mCherry(この構築物ではhM3Dq遺伝子に融合した蛍光タグ)とメラノプシンの蛍光免疫組織化学により二重染色した。両方のチャンネルからの画像は共局在していた。重複している細胞は、hM3Dq及びメラノプシンの共発現を示す。
図5A-
図5C。ほとんど全てのPACAP-Hm3Dq(+)細胞は、共局在によって評価されるように、メラノプシンに対して免疫反応性を示し、PACAPプロモーターがメラノプシン細胞におけるDREADDの発現を選択的に促進することができることを示す。
【0124】
実施例6
PACAP-特異的プロモーターによって促進されるPACAP細胞のDREADD活性化はうつ病関連体重減少を防ぐ
それらの網膜で発現した興奮性PACAP促進DREADDを有する動物をDD-PACAPと命名し、それらの網膜で発現した非活性化対照ウイルスを有する動物をDD-GFPと命名した。動物においてうつ様行動をもたらすことが知られる環境条件である全暗で、全ての動物を1日24時間飼育した(Gonzalez及びAston-Jones PNAS.2008)。G(q)動物のみにおいて網膜細胞を活性化するために、アゴニストCNOを1日1回投与した。
【0125】
図6は、全暗飼育の最初の8週間のDD-GFP動物における体重減少を示す。仮定されるように、PACAP促進DREADD(DD-PACAP)で活性化された網膜を有する動物は、体重が増加した。したがって、PACAP(+)網膜細胞のDREADD活性化は、常に暗い中での飼育によって誘発されるうつ病関連行動を著しく低下させた。
【0126】
本発明は、上記の特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。実際、記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく行うことができ、かつ添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0127】
本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列又はGeneIDエントリー)、特許出願、又は特許が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により組み込まれる。参照により組み込まれるこのステートメントは、出願人によって、米国特許法37 C.F.R.§1.57(b)(1)に従って、それぞれ及び全ての個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列又はGeneIDエントリー)、特許出願、又は特許に関連することが意図され、そのような引用が参照により組み込まれる専用のステートメントにすぐ隣接していない場合であっても、その各々は米国特許法37 C.F.R.§1.57(b)(2)に準拠して明確に識別される。もしあれば、参照により組み込まれる専用のステートメントの明細書内への包含は、参照により組み込まれるこの一般的なステートメントを全く弱めない。本明細書では、参考文献の引用は、参考文献が適切な先行技術であるという承認として意図するものではなく、またこれらの出版物若しくは文書の内容又は日付に関して認めるものではない。
【配列表】