IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧 ▶ パナソニック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図1
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図2
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図3
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図4
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図5
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図6
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図7
  • 特許-回路装置、及び温度検出システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】回路装置、及び温度検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/24 20060101AFI20221202BHJP
   G08C 25/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G01K7/24 A
G08C25/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019534038
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2018027413
(87)【国際公開番号】W WO2019026656
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2017151645
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】石川 善隆
(72)【発明者】
【氏名】小泉 賢二
(72)【発明者】
【氏名】大森 力
(72)【発明者】
【氏名】森本 直久
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-164509(JP,A)
【文献】特開2010-054688(JP,A)
【文献】特開2001-024293(JP,A)
【文献】特開2010-249687(JP,A)
【文献】特開2000-307403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の温度を検出するための温度検出素子と、外部信号線と外部信号グランド線を介して接続される回路装置であって、
前記外部信号線と前記外部信号グランド線が接続されるコネクタと、
前記コネクタを介して前記外部信号線に接続される内部信号線と、
前記コネクタを介して前記外部信号グランド線に接続される内部信号グランド線と、
前記内部信号線と前記内部信号グランド線に接続され、前記対象物の温度を検出する制御回路と、
前記コネクタから見て、前記内部信号線の最前段および前記内部信号グランド線の最前段の少なくとも一方に挿入される高周波フィルタと、
を備え
前記外部信号線および前記外部信号グランド線は、ワイヤーハーネスで構成され、
前記内部信号線は、ストリップライン又はマイクロストリップラインで構成され、
前記内部信号グランド線は、グランドプレーンで構成される、
ことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記高周波フィルタは、前記コネクタの近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記高周波フィルタは、チップビーズであることを特徴とする請求項1または2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記高周波フィルタは、ダンピング抵抗であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路装置。
【請求項5】
対象物の温度を検出するための温度検出素子と、
前記温度検出素子の一端に接続される外部信号線と、
前記温度検出素子の他端に接続される外部信号グランド線と、
前記温度検出素子と、前記外部信号線と前記外部信号グランド線を介して接続される回路装置と、を備え、
前記回路装置は、
前記外部信号線と前記外部信号グランド線が接続されるコネクタと、
前記コネクタを介して前記外部信号線に接続される内部信号線と、
前記コネクタを介して前記外部信号グランド線に接続される内部信号グランド線と、
前記内部信号線と前記内部信号グランド線に接続され、前記対象物の温度を検出する制御回路と、
前記コネクタから見て、前記内部信号線の最前段および前記内部信号グランド線の最前段の少なくとも一方に挿入される高周波フィルタと、を含み、
前記外部信号線および前記外部信号グランド線は、ワイヤーハーネスで構成され、
前記内部信号線は、ストリップライン又はマイクロストリップラインで構成され、
前記内部信号グランド線は、グランドプレーンで構成される、
ことを特徴とする温度検出システム。
【請求項6】
前記温度検出素子と並列接続されたコンデンサをさらに備えることを特徴とする請求項に記載の温度検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の温度を検出するための回路装置、及び温度検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の温度を検出する際、サーミスタを使用することが多い。サーミスタ素子は対象物の表面または近傍に設置され、ワイヤーハーネスを介して回路基板に接続される。例えば対象物が電池の場合、サーミスタで検出される温度は、高温異常または低温異常の検出に使用されるだけでなく、SOC(State Of Charge)、SOH(State Of Health)または内部抵抗算出時の温度補正にも使用される。従って、サーミスタの検出値には高い精度が要求される。サーミスタの検出精度を向上させるにはノイズ耐性を高めることが重要となる。
【0003】
ノイズ耐性を測定するためにEMC(Electro-Magnetic Compatibility)試験が行われる。EMC試験では、試験品に外部から強力なノイズ(一般的には、シャーシグランドを基準としたコモンモードノイズ)が印加され、サーミスタの検出値が変動するか試験される。サーミスタの検出値が変動した場合において、サーミスタを固定抵抗に付け替えると検出値の変動が収まる場合がある。この場合、基板側の検出回路がノイズによって誤検知しているのではなく、サーミスタ側にノイズが侵入し、サーミスタの抵抗値が下がることで検出値の変動が生じていることになる。サーミスタは高周波電流が流れると発熱し、抵抗値が下がる特性を持つ。外部から印加されたノイズに起因する高周波電流がサーミスタ素子に流れ込むと、サーミスタ素子が発熱し、サーミスタ素子の抵抗値が下がる。
【0004】
サーミスタのノイズ対策として、サーミスタ素子の直近にノイズフィルタを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、量産されているサーミスタの電装品内部に部品を追加したり、ワイヤーハーネスの途中に部品を設けるのはコスト増を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-8431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したサーミスタの検出値の変動問題に関して、これまで回路基板の外に不具合箇所があることから、基板内の対策では改善できないと考えられてきた。これまでの対策は、サーミスタ素子に接続されるハーネスの引き回しを変え、ハーネスのアンテナ特性を調整するというものが中心であった。この方法は試行錯誤の連続となることが多く、対策期間の長期化の原因となっていた。
【0007】
また、ハーネスのアンテナ特性の調整ができない場合は、ハーネスにフェライトコア等の高価な外付け部品を使う必要があり、大きなコスト増の原因となっていた。また、サーミスタハーネスの引き回しを変更するには、システムを一度分解し、引き回しを変更する必要があり、評価を行うだけでも非常に時間がかかっていた。また、検証した効果も、ハーネスの引き回しによるもののため、製造ばらつきによって影響を受け、試作終盤に不具合を再発させるリスクがあった。なお、以上の議論はサーミスタの代わりに、熱電対などの他の温度検出素子を使用する場合にも当てはまる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、温度検出素子のノイズ耐性を低コストで簡単に高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回路装置は、対象物の温度を検出するための温度検出素子と、外部信号線と外部信号グランド線を介して接続される回路装置であって、前記外部信号線と前記外部信号グランド線が接続されるコネクタと、前記コネクタを介して前記外部信号線に接続される内部信号線と、前記コネクタを介して前記外部信号グランド線に接続される内部信号グランド線と、前記内部信号線と前記内部信号グランド線に接続され、前記対象物の温度を検出する制御回路と、前記コネクタから見て、前記内部信号線の最前段および前記内部信号グランド線の最前段の少なくとも一方に挿入される高周波フィルタと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度検出素子のノイズ耐性を低コストで簡単に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る温度検出システムの構成を示す図である。
図2図2(a)、(b)は、回路装置の内部信号線と内部信号グランド線間の電気力線と、外部信号線と外部信号グランド線間の電気力線を模式的に描いた図である。
図3図3(a)、(b)は、コモンモードノイズがノーマルモードノイズに変換される原理を説明するための図である。
図4】本発明の変形例1に係る温度検出システムの構成を示す図である。
図5】本発明の変形例2に係る温度検出システムの構成を示す図である。
図6】本発明の変形例3に係る温度検出システムの構成を示す図である。
図7】本発明の変形例4に係る温度検出システムの構成を示す図である。
図8】本発明の変形例5に係る温度検出システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る温度検出システム1の構成を示す図である。温度検出システム1は、回路装置10とサーミスタ素子T1を備え、対象物2の温度を検出するためのシステムである。サーミスタ素子T1は、対象物2の表面または近傍に設置される。対象物2は本実施の形態では、車両に搭載される駆動用電池(トラクションバッテリ)を想定する。駆動用電池は、複数の電池セルが直列または直並列接続されて構成される。電池セルには、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を使用することができる。
【0014】
サーミスタ素子T1と回路装置10は、外部信号線20sと外部信号グランド線20sgを介して接続される。外部信号線20sと外部信号グランド線20sgはワイヤーハーネスで構成される。当該ワイヤーハーネスの一端はサーミスタ素子T1の両端に接続され、当該ワイヤーハーネスの他端は回路装置10のコネクタ13に接続される。当該ワイヤーハーネスの他端にはオス型のコネクタが装着されており、回路装置10のメス型のコネクタ13に嵌合されて接続される。
【0015】
駆動用電池、サーミスタ素子T1、外部信号線20s、外部信号グランド線20sg、及び回路装置10は、外装ボックスにそれぞれ絶縁された状態で収納される。外装ボックスは、金属などの導電性の筐体で構成されており、車両内の所定の箇所に固定される。当該導電性の筐体がシャーシグランド30gになっている。
【0016】
回路装置10は、基板上に種々の電子部品を搭載した電子回路である。本実施の形態では、回路装置10の電源は、車両内の補機バッテリから供給される。一般的に補機バッテリには、12V出力の鉛電池が使用される。回路装置10はマイクロコントローラ11を備える。マイクロコントローラ11の電源端子には、補機バッテリから供給される電圧(例えば、12V)をレギュレータ(不図示)で降圧した制御電源電圧(例えば、3~5V)が印加される。
【0017】
マイクロコントローラ11のアナログ入力ポートと、コネクタ13の外部信号線20sが接続された端子との間が内部信号線12sで接続される。内部信号線12sは、ストリップライン又はマイクロストリップラインで構成される。マイクロコントローラ11のグランド端子と、コネクタ13の外部信号グランド線20sgが接続された端子との間が内部信号グランド線12sgで接続される。内部信号グランド線12sgは、グランドプレーンで構成される。内部信号グランド線12sgは、補機バッテリのマイナス配線に接続され、基板のグランド電位になっている。
【0018】
内部信号線12sは、第2抵抗R2を介して制御電源電圧にプルアップされている。マイクロコントローラ11のアナログ入力ポートから見て最前段にローパスフィルタが接続される。具体的にはマイクロコントローラ11のアナログ入力ポートに第1抵抗R1が接続され、当該アナログ入力ポートと内部信号グランド線12sgとの間に第1コンデンサC1が接続される。なお、上記実施形態では、マイクロコントローラ11のアナログ入力ポートから見て最前段にローパスフィルタが接続される構成となっているが、ローパスフィルタは必ずしも設けなくてもよい。
【0019】
マイクロコントローラ11から見て上記ローパスフィルタの次段に、π型フィルタが接続される。π型フィルタは、内部信号線12sに挿入された第1インダクタL1の前後に、第2コンデンサC2と第3コンデンサC3を並列に接続した構成である。さらにπ型フィルタの次段に第4コンデンサC4を並列に接続して、ノイズの減衰効果を強化している。π型フィルタは入力側のインピーダンスと出力側のインピーダンスがともに高い場合に適したフィルタである。なお、上記実施形態では、マイクロコントローラ11から見て上記ローパスフィルタの次段に、π型フィルタが接続される構成となっているが、π型フィルタは必ずしも設けなくてもよい。
【0020】
以下、第1チップビーズB1及び第2チップビーズB2が接続される前の状態を考える。上述のようにサーミスタ素子T1は、高周波電流が流れることにより発熱し、抵抗値が下がる特性を持つ。EMC試験では、シャーシグランド30gを基準としたコモンモードノイズが試験品に印加される。コモンモードノイズ自体はサーミスタ素子T1に電位差を与えないため、それ自体が問題を起こすことはない。ただし、基板とハーネス等、構造上の違いによって、特性インピーダンスが不連続となる箇所が生じた場合、コモンモードノイズがノーマルモードノイズに変換され、外部信号線20sと外部信号グランド線20sg間に電位差が発生し、高周波電流がサーミスタ素子T1に流れる。
【0021】
図2(a)、(b)は、回路装置10の内部信号線12sと内部信号グランド線12sg間の電気力線と、外部信号線20sと外部信号グランド線20sg間の電気力線を模式的に描いた図である。上述のように本実施の形態では、内部信号線12sはストリップライン又はマイクロストリップラインで構成され、内部信号グランド線12sgはグランドプレーンで構成される。一方、外部信号線20s及び外部信号グランド線20sgは、平行2線またはツイスト線のワイヤーハーネスで構成される。このように基板の内と外で配線の物理的な構造が異なる。即ち、配線間の金属的な結合状態が異なる。従って、内部信号線12sと内部信号グランド線12sg間の特性インピーダンスZ1と、外部信号線20sと外部信号グランド線20sg間の特性インピーダンスZ2にも差異が生じる。
【0022】
図3(a)、(b)は、コモンモードノイズがノーマルモードノイズに変換される原理を説明するための図である。図3(a)に示すように、内部信号線12sとシャーシグランド30g間のノイズVC1と、内部信号グランド線12sgとシャーシグランド30g間のノイズVC2は本来、コモンモードノイズになり、サーミスタ素子T1の検出信号に影響を与えないはずである。
【0023】
しかしながら上記配線構造の違いにより、コネクタ13の近傍で、内部信号線12sと内部信号グランド線12sg間の特性インピーダンスZ1と、外部信号線20sと外部信号グランド線20sg間の特性インピーダンスZ2に差異が発生する。これにより図3(b)に示すように、コモンモードノイズ(VC1、VC2)がノーマルモードノイズ(VN)に変換される。このノーマルモードノイズ(VN)により、サーミスタ素子T1に高周波電流が流れ、サーミスタ素子T1が自己発熱し、抵抗値が下がる。これによりサーミスタ素子T1の両端電圧が低下し、検出値に誤差が発生する。
【0024】
上記図1では、ノーマルモードノイズ(VN)による高周波電流がサーミスタ素子T1に流れ込むことを抑制するため、コネクタ13から見て、内部信号線12sの最前段および内部信号グランド線12sgの最前段にそれぞれ、第1チップビーズB1および第2チップビーズB2を挿入している。チップビーズ(フェライトビーズ)は、インダクタと抵抗の性質を合わせ持つ素子であり、低周波領域ではインダクタ特性が強くなり、高周波領域では抵抗特性が強くなる。従って、直流成分および低周波成分を減衰させずに高周波ノイズを除去することができる。
【0025】
第1チップビーズB1および第2チップビーズB2は、コネクタ13の近傍に配置されることが好ましい。コモンモードノイズからノーマルモードノイズへの変換はコネクタ13の近傍で発生するため、チップビーズB1、B2をコネクタ13に近い位置に配置するほど、ノイズ低減効果が大きくなる。また、第1チップビーズB1および第2チップビーズB2には、広帯域タイプのビーズを使用することが好ましい。幅広い周波数を試験するEMC試験では、広帯域タイプのビーズを使った方が広い周波数帯域で安定したノイズ低減効果を得ることができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、内部信号線12sの構成として、ストリップライン又はマイクロストリップラインを例示しているが、必ずしもこの構成に限る必要はない。内部信号線12sと内部信号グランド線12sg間の特性インピーダンスの差異が生じるような構成であれば、内部信号線12sの最前段および内部信号グランド線12sgの最前段にそれぞれ、第1チップビーズB1および第2チップビーズB2を挿入することで、ノイズ低減効果を得ることができる。
【0027】
図4は、本発明の変形例1に係る温度検出システム1の構成を示す図である。図1に示した回路構成では内部信号線12sと内部信号グランド線12sgの両方に、第1チップビーズB1及び第2チップビーズB2を挿入する例を説明した。この点、片方だけに挿入した場合でも、一定の効果が得られる。図4では内部信号線12s側だけにチップビーズB1を挿入する例を示しているが、内部信号グランド線12sg側だけにチップビーズB2を挿入してもよい。どちら側に挿入しても、図3(b)に示したような、コネクタ13の近傍で発生するノイズ電流がサーミスタ素子T1に流れ込むことを抑制する効果が得られる。
【0028】
図5は、本発明の変形例2に係る温度検出システム1の構成を示す図である。図6は、本発明の変形例3に係る温度検出システム1の構成を示す図である。図1図4に示した回路構成では、コネクタ13の近傍で発生するノイズ電流を抑制する高周波フィルタとしてチップビーズを使用する例を説明した。この点、チップビーズの代わりにダンピング抵抗を使用してもよい。ダンピング抵抗は抵抗値が低い抵抗であり、電流を抑制する効果がある。ただし、チップビーズと異なり、直流成分および低周波成分の電流にも抑制効果が働く。
【0029】
図5では内部信号線12sと内部信号グランド線12sgの両方に、第1ダンピング抵抗Rd1及び第2ダンピング抵抗Rd2をそれぞれ挿入している。図6では、内部信号線12s側だけにダンピング抵抗Rd1を挿入する例を示している。なお、内部信号グランド線12sg側だけにダンピング抵抗Rd2を挿入してもよい。
【0030】
図7は、本発明の変形例4に係る温度検出システム1の構成を示す図である。変形例4では、回路装置10内のコネクタ13の近傍にチップビーズ又はダンピング抵抗を挿入する代わりに、サーミスタ素子T1と並列に第5コンデンサC5を接続する。第5コンデンサC5はサーミスタ素子T1内に封入される。第5コンデンサC5をサーミスタ素子T1側に追加することにより、コネクタ13の近傍で発生するノイズ電流が第5コンデンサC5を介して、サーミスタ素子T1をバイパスすることができる。
【0031】
図8は、本発明の変形例5に係る温度検出システム1の構成を示す図である。変形例5では、回路装置10内のコネクタ13の近傍に第1チップビーズB1及び第2チップビーズB2を挿入しつつ、サーミスタ素子T1と並列に第5コンデンサC5を接続する。なお回路装置10側の構成は、図4図6に示した変形例1-3の構成であってもよい。
【0032】
以上説明したように本実施の形態によれば、コネクタ13の近傍にチップビーズ又はダンピング抵抗を挿入することにより、サーミスタ素子T1のノイズ耐性を低コストで簡単に高めることができる。サーミスタ素子T1のノイズ対策としては、サーミスタ素子の両端子の直近にインダクタを設けることも考えられる(例えば、上記特許文献1参照)。しかしながら、量産されているサーミスタの電装品内部に部品を追加したり、ハーネスの途中に部品を設けるのはコスト増を招く。上記図1図4図6の構成では、基板内の追加部品のみで済むため、より安価にノイズ低減効果を得ることができる。
【0033】
また、サーミスタ素子の両端子の直近にインダクタを設ける構成では、電装品内部の実装エリアが小さい箇所に2個の部品を追加する必要がある。これに対して、上記図7図8の構成では、1個のコンデンサの追加により同等の効果が得られるため、より安価にノイズ低減効果を得ることができる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0035】
上述の実施の形態では回路装置10において、マイクロコントローラ11とコネクタ13間にローパスフィルタとπ型フィルタを接続する例を説明した。この点、ローパスフィルタを省略することも可能である。またπ型フィルタの代わりに、LCフィルタなどの他の種類のフィルタを接続してもよい。
【0036】
また上述の実施の形態では、対象物2として駆動用電池の温度を検出する例を想定したが、カーエアコンのコンプレッサ等、他の発熱源の温度検出にも適用可能である。またサーミスタの代わりに熱電対を使用してもよい。
【0037】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0038】
[項目1]
対象物(2)の温度を検出するための温度検出素子(T1)と、外部信号線(20s)と外部信号グランド線(20sg)を介して接続される回路装置(10)であって、
前記外部信号線(20s)と前記外部信号グランド線(20sg)が接続されるコネクタ(13)と、
前記コネクタ(13)を介して前記外部信号線(20s)に接続される内部信号線(12s)と、
前記コネクタ(13)を介して前記外部信号グランド線(20sg)に接続される内部信号グランド線(12sg)と、
前記内部信号線(12s)と前記内部信号グランド線(12sg)に接続され、前記対象物(2)の温度を検出する制御回路(11)と、
前記コネクタ(13)から見て、前記内部信号線(12s)の最前段および前記内部信号グランド線(12sg)の最前段の少なくとも一方に挿入される高周波フィルタ(B1 and/or B2)と、
を備えることを特徴とする回路装置(10)。
これによれば、コネクタ(13)の近傍で発生する高周波ノイズ電流を抑制することができる。
[項目2]
前記高周波フィルタ(B1 and/or B2)は、前記コネクタ(13)の近傍に配置されることを特徴とする項目1に記載の回路装置(10)。
これによれば、コネクタ(13)の近傍でコモンモードノイズからノーマルモードノイズに変換されるノイズを効果的に抑制することができる。
[項目3]
前記高周波フィルタ(B1 and/or B2)は、チップビーズ(B1 and/or B2)であることを特徴とする項目1または2に記載の回路装置(10)。
これによれば、直流成分および低周波成分を減衰させずに高周波ノイズを抑制することができる。
[項目4]
前記高周波フィルタ(Rd1 and/or Rd2)は、ダンピング抵抗(Rd1 and/or Rd2)であることを特徴とする項目1または2に記載の回路装置(10)。
これによれば、より低コストで高周波ノイズを抑制することができる。
[項目5]
前記外部信号線(20s)および前記外部信号グランド線(20sg)は、ワイヤーハーネスで構成され、
前記内部信号線(12s)は、ストリップライン又はマイクロストリップラインで構成され、
前記内部信号グランド線(12sg)は、グランドプレーンで構成される、
ことを特徴とする項目1から4のいずれかに記載の回路装置(10)。
これによれば、回路装置(10)と対象物(2)の配置を柔軟に調整できるとともに、基板の動作を安定化させることができる。
[項目6]
対象物(2)の温度を検出するための温度検出素子(T1)と、
前記温度検出素子(T1)の一端に接続される外部信号線(20s)と、
前記温度検出素子(T1)の他端に接続される外部信号グランド線(20sg)と、
前記温度検出素子(T1)と、前記外部信号線(20s)と前記外部信号グランド線(20sg)を介して接続される回路装置(10)と、を備え、
前記回路装置(10)は、
前記外部信号線(20s)と前記外部信号グランド線(20sg)が接続されるコネクタ(13)と、
前記コネクタ(13)を介して前記外部信号線(20s)に接続される内部信号線(12s)と、
前記コネクタ(13)を介して前記外部信号グランド線(20sg)に接続される内部信号グランド線(12sg)と、
前記内部信号線(12s)と前記内部信号グランド線(12sg)に接続され、前記対象物(2)の温度を検出する制御回路(11)と、
前記コネクタ(13)から見て、前記内部信号線(12s)の最前段および前記内部信号グランド線(12sg)の最前段の少なくとも一方に挿入される高周波フィルタ(B1 and/or B2)と、を含む、
ことを特徴とする温度検出システム(1)。
これによれば、コネクタ(13)の近傍で発生する高周波ノイズ電流が抑制された、温度検出システム(1)を構築することができる。
[項目7]
前記温度検出素子(T1)と並列接続されたコンデンサ(C5)をさらに備えることを特徴とする項目6に記載の温度検出システム(1)。
これによれば、温度検出素子(T1)に侵入する高周波ノイズをコンデンサ(C5)でバイパスさせることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 温度検出システム、 2 対象物、 T1 サーミスタ素子、 10 回路装置、 11 マイクロコントローラ、 12s 内部信号線、 12sg 内部信号グランド線、 13 コネクタ、 20s 外部信号線、 20sg 外部信号グランド線、 30g シャーシグランド、 R1 第1抵抗、 R2 第2抵抗、 C1 第1コンデンサ、 C2 第2コンデンサ、 C3 第3コンデンサ、 C4 第4コンデンサ、 C5 第5コンデンサ、 L1 第1インダクタ、 B1 第1チップビーズ、 B2 第2チップビーズ、 Rd1 第1ダンピング抵抗、 Rd2 第2ダンピング抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8