(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】データ受信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 7/033 20060101AFI20221202BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
H04L7/033
H04L25/02 V
H04L25/02 R
(21)【出願番号】P 2019540808
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2018027208
(87)【国際公開番号】W WO2019049524
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2017174289
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 智一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 秀和
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 英雄
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-111487(JP,A)
【文献】特開2012-080337(JP,A)
【文献】特表2012-507204(JP,A)
【文献】特開2002-044063(JP,A)
【文献】特開2004-135318(JP,A)
【文献】特開2016-092445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/033
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したシリアルデータから、該シリアルデータの立ち上がりのタイミングで値が反転する第1の信号と、該シリアルデータの立ち下がりのタイミングで値が反転する第2の信号と、を生成する信号生成部と、
前記信号生成部が生成した前記第1の信号および前記第2の信号
のそれぞれに対して個別に位相検出を行う位相検出部を備えてクロック再生を行うクロック再生部と、
を備
え、
各前記位相検出部は、前記第1の信号または前記第2の信号を入力するフリップフロップ回路を備え、
前記フリップフロップ回路は、前記第1の信号または前記第2の信号とクロック信号とを入力する第1のDラッチ回路と、前記クロック信号を所定時間遅延させる遅延器と、前記第1のDラッチ回路の出力と前記遅延器の出力とを入力するとともに前記第1のDラッチ回路とは異なる方向のクロック信号の遷移において前記第1のDラッチ回路の出力を取り込む第2のDラッチ回路と、を備える、
データ受信装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記シリアルデータの立ち上がりのタイミングで自身の出力を反転させて前記第1の信号を生成する第3のDラッチ回路と、前記シリアルデータの立ち下がりのタイミングで自身の出力を反転させて前記第2の信号を生成する第4のDラッチ回路と、を備える、請求項1に記載のデータ受信装置。
【請求項3】
前記シリアルデータの符号が遷移
しないタイミングで前記第
3のDラッチ回路及び前記第
4のDラッチ回路のリセットを解除するリセット解除回路をさらに備える、請求項
2に記載のデータ受信装置。
【請求項4】
各前記位相検出部のそれぞれの前記フリップフロップ回路の出力信号の排他的論理和演算を行って前記クロック信号に同期した前記シリアルデータを生成する排他的論理和回路を更に備える、請求項1に記載のデータ受信装置。
【請求項5】
各前記位相検出部による位相検出の結果に基づいて駆動するチャージポンプをさらに備える、請求項
1に記載のデータ受信装置。
【請求項6】
前記チャージポンプの出力に応じて電圧制御発振器の駆動電圧を生成するループフィルタをさらに備える、請求項5に記載のデータ受信装置。
【請求項7】
前記シリアルデータは映像データである、請求項1に記載のデータ受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ受信装置及びデータ送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量のデータを高速に伝送するために、クロック信号を伴わないシリアルデータ通信が広く使用されている。シリアルデータ通信を実現する装置として、1対の信号線を用いて信号を伝送する装置がある(例えば特許文献1等参照)。また、シリアルデータ通信を実現する装置には、クロック再生(CDR、Clock Data Recovery)回路が広く用いられている(例えば非特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Hogge,CP著、「A Self Correcting Clock Recovery Circuit」、Journal of Lightwave Technology、LT第3巻、第6号、1985年12月、p.1312-1314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリアルデータを送信するデータ送信装置と、シリアルデータを受信するデータ受信装置は、動作速度の向上や消費電力の低減などを図ることにより、通信品質の向上が求められる。
【0006】
そこで、本開示では、シリアルデータの送受信の際の通信品質の向上を図ることが可能な、新規かつ改良されたデータ受信装置及びデータ送信装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、受信したシリアルデータから、該シリアルデータの立ち上がりのタイミングで値が反転する第1の信号と、該シリアルデータの立ち下がりのタイミングで値が反転する第2の信号と、を生成する信号生成部と、前記信号生成部が生成した前記第1の信号および前記第2の信号を用いてクロック再生を行うクロック再生部と、を備える、データ受信装置が提供される。
【0008】
また本開示によれば、第1のデジタル信号と、前記第1のデジタル信号と逆方向に伝送される第2のデジタル信号とが伝送される同一の伝送路からの前記第1のデジタル信号を受信する受信回路と、前記第2のデジタル信号を送信する送信回路と、前記第2のデジタル信号を減衰させるフィルタ回路と、を備える、データ送受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本開示によれば、通信品質の向上を図ることが可能な、新規かつ改良されたデータ受信装置及びデータ送受信装置を提供することが出来る。
【0010】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】代表的なCDR回路の構成例を示す説明図である。
【
図2】D型フリップフロップの構成及び動作タイミングを示す説明図である。
【
図3】D型フリップフロップの構成及び動作タイミングを示す説明図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の構成例を示す説明図である。
【
図5】フリップシンボル生成器110の機能を説明するための説明図である。
【
図6】フリップシンボル生成器110の構成例を示す説明図である。
【
図7】フリップシンボル生成器110の構成例を示す説明図である。
【
図8】フリップシンボル生成器110の構成例を示す説明図である。
【
図9】同実施形態に係るホッジの位相検出器120のD型フリップフロップの回路構成を示す説明図である。
【
図10】同実施形態に係るホッジの位相検出器120のデータの遷移例を示す説明図である。
【
図11】同実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の変形例を示す説明図である。
【
図12】同実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の変形例を示す説明図である。
【
図13】同実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の全体構成例を示す説明図である。
【
図14】本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200の構成例を示す説明図である。
【
図15】同実施形態における下りの信号と上りの信号の周波数成分の例を示す説明図である。
【
図16】同実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200のより具体的な回路構成例を示す説明図である。
【
図17】上り信号送信回路の構成例を示す説明図である。
【
図18】上り信号送信回路の構成例を示す説明図である。
【
図19】上り信号送信回路の構成例を示す説明図である。
【
図20】上り信号送信回路の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施の形態
1.1.概要
1.2.構成例
2.第2の実施の形態
2.1.概要
2.2.構成例
3.まとめ
【0014】
<1.第1の実施形態>
[1.1.概要]
本開示の第1の実施形態について詳細に説明する前に、本開示の第1の実施形態に至る概要を説明する。
【0015】
大容量のデータを高速に伝送するために、クロック信号を伴わないシリアルデータ通信が広く使用されている。シリアルデータ通信を実現する装置として、1対の信号線を用いて信号を伝送する装置がある。
【0016】
シリアルデータを受信する受信装置では、クロック再生(CDR、Clock Data Recovery)回路が広く用いられている。
図1は、代表的なCDR回路の構成例を示す説明図である。
図1に示したCDR回路10は、ホッジの位相検出器を使用したものであり、ホッジの位相検出器11と、チャージポンプ(CP+、CP-)12、13と、ループフィルタ(LF)14と、電圧制御発振器(VCO)15と、を備える。
【0017】
ホッジの位相検出器11は、第1のD型フリップフロップ(DFF)11a、第2のD型フリップフロップ11b、入力されるシリアルデータと、第1のDFF11aの出力との論理不一致を検出する第1の排他的論理和回路(EXOR)11c、第1のDFF11の出力と第2のDFF11bの出力の論理不一致を検出する第2のEXOR11dを備える。
【0018】
第1のEXOR11cの出力はアップ信号UPとして、ループフィルタ(LF)14に電流を充電するチャージポンプ(CP+)12を駆動し、第2のEXOR11dの出力はダウン信号DOWNとしてLF14から電流を放電するチャージポンプ(CP-)13を駆動する。
【0019】
LF14は、チャージポンプ出力電流を積分・平滑化してVCO15の入力信号を生成する。VCO15は入力信号に応じた周波数のクロックを発生する。VCO15の発生したクロックは、インバータ16を通じてCDR回路10の再生クロック(Recovered Clock)となり、第2のDFF11bの出力がリタイミングデータ(Retimed Serial Data)となる。
【0020】
このようなCDR回路は、入力信号のタイミングゆらぎ(ジッタ)に対応してクロック周波数を信号に合わせて追随させる構成となっている。このジッタ耐力を確保するためには、正常な位置からクロックがずれた場合であっても、CDR回路が正常に動作する必要がある。このため、CDR回路のデータの入り口の初段のフリップフロップは、クロックが正常な位置(例えば、信号の中心位置)から外れた位置となった場合であっても、正常に信号をラッチする必要がある。従ってCDR回路のフリップフロップは、受信する信号の1ビットの周期より桁違いに小さなSETUP/HOLDタイミングでも、正常に動作することが要求され、フリップフロップの特性が受信装置全体の性能の制約となる。
【0021】
図2は、初段のD型フリップフロップ11aの構成及び動作タイミングを示す説明図である。D型フリップフロップは、
図2に示したように2段のDラッチ回路で構成される。ClockがLowの状態で初段のDラッチ回路が出力したデータを、ClockがHighに遷移するタイミングで2段目のDラッチ回路が取り込んで出力する。Clockの立ち上がりエッジから、データの出力までの時間をアクセス時間と呼ぶ。
【0022】
このようなフリップフロップ回路での、クロック遷移に近いところでデータ遷移が発生した場合の挙動の一例を説明する。
図3は、D型フリップフロップの構成及び動作タイミングを示す説明図であり、クロック遷移に近いところでデータ遷移が発生した場合のD型フリップフロップの挙動を示すものである。クロック遷移とデータ遷移のタイミングが近い場合、初段のDラッチ回路がラッチする信号の遷移が完全に完了する前に、ラッチがホールド状態に移行してしまう。初段のDラッチ回路のラッチが不完全であるために、2段目のDラッチ回路の駆動力が不足してしまう。従って、クロック遷移に近いところでデータ遷移が発生すると、アクセス時間が顕著に増加してしまう。
【0023】
シリアル受信回路の初段のフリップフロップ回路は、ラッチ前後の信号の遅延をXOR回路によって検出して位相ずれを検知する構造となっている。従って、アクセス時間のずれたそのままシリアル受信回路の位相誤差となり、シリアル受信回路の受信性能の悪化に繋がる。このように、小さなSETUP/HOLD領域を伝送データレートに対して可能な限り小さくすることが求められる。
【0024】
この点がシリアル受信回路の動作上限速度を制約し、ジッタ耐性を劣化させてしまっている。また、初段のフリップフロップ回路に高速な回路を用いると消費電力の増大にも繋がる。
【0025】
そこで本件開示者は、上述した点に鑑み、シリアルデータを受信するデータ受信装置において、動作速度の向上や消費電力の低減などを図ることにより、通信品質を向上させることを目的とする技術について鋭意検討を行った。その結果、本件開示者は、以下で説明するように、シリアルデータを受信するデータ受信装置において、動作速度の向上や消費電力の低減などを図ることにより、通信品質を向上させることが可能な技術を考案するに至った。
【0026】
以上、本実施形態の概要について説明した。続いて、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置の構成例を説明する。
【0027】
[1.2.構成例]
図4は、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の構成例を示す説明図である。以下、
図4を用いて本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の構成例について説明する。
図4に示したシリアルデータ受信装置100は、例えば、シリアルデータ伝送技術を用いたデジタル映像・音声データの送受信を行うシステムで用いられる装置である。シリアルデータ受信装置100は、例えば、デジタル映像・音声データとして、24ビット階調VGA(Video Graphics Array)、WVGA(Wide VGA)、SVGA(Super VGA)、XGA(eXtended Graphics Array)、WXGA(Wide XGA)、SXGA(Super XGA)、UXGA(Ultra XGA)等の動画像を受信する。
【0028】
図4に示したように、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100は、フリップシンボル生成器110と、ホッジの位相検出器120、130と、チャージポンプ141、142、143、144と、ループフィルタ(LF)150と、電圧制御発振器(VCO)160と、を含んで構成される。
【0029】
フリップシンボル生成器110は、Dラッチ回路111、112を有する。フリップシンボル生成器110は、入力されるシリアルデータから2種類の信号を生成して出力する。1つは、シリアルデータの立ち上がりのタイミングで0と1とが反転する信号であり、もう1つは、シリアルデータの立ち下がりのタイミングで0と1とが反転する信号である。前者をRISE-EDGE FIPPED SIMBOLとし、後者をFALL-EDGE FIPPED SIMBOLとする。
図5は、フリップシンボル生成器110の機能を説明するための説明図である。
図5には、フリップシンボル生成器110に入力されるシリアルデータの一例と、そのシリアルデータによりフリップシンボル生成器110が生成するRISE-EDGE FIPPED SIMBOL及びFALL-EDGE FIPPED SIMBOLが示されている。
【0030】
図6は、フリップシンボル生成器110の構成例を示す説明図である。フリップシンボル生成器110は、
図6に示したように、D型フリップフロップ回路113、114を備えることで実現することが出来る。言い換えれば、
図6に示したフリップシンボル生成器110は、入力シリアルデータをクロックとして扱った、1/2分周器を2つ組み合わせた構成である。この場合、このD型フリップフロップ回路113、114の動作クロックレートは、シリアルデータのビットレートの半分となる。さらに、D型フリップフロップ回路113、114は、自分が出力する信号の反転信号を取り込めれば良いので、SETUP/HOLDに対する余裕が常に確保される。よって、このD型フリップフロップ回路113、114に対する動作クロック要求及びSETUP/HOLD要求は、共に大きく緩和できる。
【0031】
D型フリップフロップ回路113、114は、それぞれDラッチ回路2つで構成される。
図7は、フリップシンボル生成器110の構成例を示す説明図である。
図7は、
図6に示したフリップシンボル生成器110を、Dラッチ回路115a、115b、116a、116bで置き換えたものである。この
図7の回路におけるDラッチ回路115a、116aと、115b、116bとは、それぞれ同じ動きをしているのでまとめることができる。
図8は、フリップシンボル生成器110の構成例を示す説明図である。
図8は、
図7に示したフリップシンボル生成器110を、Dラッチ回路111、112で置き換えたものである。
【0032】
本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100は、フリップシンボル生成器110を設けていることで、入力シリアルデータからRISE-EDGE FIPPED SIMBOL及びFALL-EDGE FIPPED SIMBOLを生成することが出来る。これらの信号は、ビットが1または0の連続符号数の最小値が2であるという特徴を有する。従って、これらの信号同士の排他的論理和をとると、元の信号または元の信号の0/1を反転した信号のどちらかを得ることができる。信号が反転しているかどうかは、Dラッチ回路111、112がラッチしている初期状態と、入力シリアルデータの初期値に依存する。従って、信号の極性を固定したいのであれば、入力シリアルデータがHighまたはLowのタイミングで、フリップシンボル生成器110のDラッチ回路111、112のリセットを解除するリセット解除回路を用いても良い。
【0033】
ホッジの位相検出器120、130は、それぞれ、入力されるデータとクロックとの位相差を検出する。ホッジの位相検出器120は、立ち上がりエッジ型の第1のD型フリップフロップ(DFF)121a、立ち下がりエッジ型の第2のD型フリップフロップ121b、入力されるシリアルデータと、第1のDFF121aの出力との論理不一致を検出する第1の排他的論理和回路(EXOR)121c、及び、第1のDFF121aの出力と第2のDFF121bの出力の論理不一致を検出する第2のEXOR121dを備える。
【0034】
同様に、ホッジの位相検出器130は、立ち上がりエッジ型の第3のD型フリップフロップ(DFF)131a、立ち下がりエッジ型の第4のD型フリップフロップ131b、入力されるシリアルデータと、第3のDFF131aの出力との論理不一致を検出する第3の排他的論理和回路(EXOR)131c、及び、第3のDFF131aの出力と第4のDFF131bの出力の論理不一致を検出する第4のEXOR131dを備える。
【0035】
本実施形態に係るホッジの位相検出器120、130のD型フリップフロップは、それぞれ、初段のD型フリップフロップ回路におけるDラッチ回路間に遅延を挿入していることを特徴とする。
図9は、本実施形態に係るホッジの位相検出器120のD型フリップフロップの回路構成を示す説明図である。
図9では本実施形態に係るホッジの位相検出器120のD型フリップフロップのみを示しているが、ホッジの位相検出器130のD型フリップフロップについても同様である。
図9に示したように、本実施形態に係るホッジの位相検出器120のD型フリップフロップ121aは、Dラッチ回路122、123と、遅延素子124と、からなる。
【0036】
図10は、本実施形態に係るホッジの位相検出器120のデータの遷移例を示す説明図である。EDGE FIPPED SIMBOLの値のデータ遷移のタイミングと、VCO160の出力のデータ遷移のタイミングとが近い場合であっても、遅延素子124により、Dラッチ回路123に送られるVCO160の出力が所定時間遅延される。従って、Dラッチ回路122がプリラッチしたデータがHOLD状態になっても、Dラッチ回路123がラッチしたデータはすぐにはHOLD状態にならず、遅延素子124による所定時間の遅延の後にDラッチ回路123がラッチしたデータがHOLD状態になる。本実施形態に係るホッジの位相検出器120、130は、遅延素子124があることによって、入力クロックとデータの遷移タイミングが近い場合にも、出力側のDラッチ回路123の入力が安定してから動作開始できるため、安定したアクセスタイミングを得ることが出来る。
【0037】
図9に示した本実施形態に係るホッジの位相検出器120は、入力シリアルデータが、例えばビット0、ビット1、ビット0とクロック毎にデータ遷移すると、遅延素子123の挿入により、2段目のDラッチ回路122が2回目の遷移を拾ってしまい、期待する動作が出来ない。しかし本実施形態では、フリップシンボル生成器110によりビットが1または0の連続符号数の最小値が2であるという特徴を有する信号が生成される。従って、本実施形態に係るホッジの位相検出器120は、フリップシンボル生成器110が生成する信号により期待する動作が可能となる。
【0038】
第1のEXOR121cの出力はアップ信号UPとして、LF150に電流を充電するチャージポンプ(CP+)141を駆動し、第2のEXOR121dの出力はダウン信号DOWNとしてLF150から電流を放電するチャージポンプ(CP-)142を駆動する。
【0039】
また、第3のEXOR131cの出力はアップ信号UPとして、LF150に電流を充電するチャージポンプ(CP+)143を駆動し、第4のEXOR131dの出力はダウン信号DOWNとしてLF150から電流を放電するチャージポンプ(CP-)144を駆動する。
【0040】
LF150は、チャージポンプ出力電流を積分・平滑化してVCO160の入力信号を生成する。VCO160は入力信号に応じた周波数のクロックを発生する。VCO160の発生したクロックは、インバータ151を通じて、シリアルデータ受信装置100の再生クロック(Recovered Clock)となる。また、各位相検出器120、130から出力されるRetimeされた信号データ同士の排他的論理和を第5のEXOR121eで取ることで、入力データもしくは入力データの反転信号を得られる。Retimeしたデータが反転しているかどうかは、一度ロックが完了したのちは変化することが無い。よって、信号が反転しているかどうかは、信号内に信号が反転しているかどうかわかる特異なパターンを挿入して判別し、後段のロジックで修正することもできる。
【0041】
本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の変形例を示す。
図11は、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の変形例を示す説明図である。
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、ホッジの位相検出器120、130に用いられるD型フリップフロップ回路が、いずれも立ち上がりエッジ型となっている。また、
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、
図4に示したVCO160の替わりにVCO160’が設けられた構成となっている。また
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、D型フリップフロップ回路161、162、163、164と、排他的論理和回路(EXOR)165、166と、がさらに設けられている。
【0042】
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、ホッジの位相検出器120、130に用いられるD型フリップフロップ回路が、いずれも立ち上がりエッジ型となっていることで、VCO160’のクロック周波数をVCO160のクロック周波数の半分にしている。VCO160’のクロック周波数をVCO160のクロック周波数の半分にしていることで、
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、
図4に示したシリアルデータ受信装置100より消費電力をさらに削減している。なお、VCO160’のクロック周波数をVCO160のクロック周波数の半分とする代わりに、90度ずれた2相クロックが必要となる。VCO160’は、第1のD型フリップフロップ121aと、第2のD型フリップフロップ121bとには、それぞれ位相が90度ずれたクロックを供給する。第1のD型フリップフロップ121cと、第2のD型フリップフロップ121dとに対しても同様である。
【0043】
D型フリップフロップ回路161、162は、ホッジの位相検出器120の出力を交互にラッチする。例えば、D型フリップフロップ回路161は奇数番目のホッジの位相検出器120の出力をラッチし、D型フリップフロップ回路162は偶数番目のホッジの位相検出器120の出力をラッチする。同様に、D型フリップフロップ回路163、164は、ホッジの位相検出器130の出力を交互にラッチする。例えば、D型フリップフロップ回路163は奇数番目のホッジの位相検出器130の出力をラッチし、D型フリップフロップ回路164は偶数番目のホッジの位相検出器130の出力をラッチする。
【0044】
EXOR165は、D型フリップフロップ回路161、163の出力の排他的論理和をとることで、奇数番目のデータのRetimeされたシリアルデータを出力する。EXOR166は、D型フリップフロップ回路162、164の出力の排他的論理和をとることで、奇数番目のデータのRetimeされたシリアルデータを出力する。
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、このような構成を有することでEXOR165、166をデータレートで駆動する必要がなくなり、さらに高速化に貢献できる。
【0045】
本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の変形例を示す。
図12は、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の変形例を示す説明図である。
図12に示したシリアルデータ受信装置100は、ホッジの位相検出器120、130に用いられるD型フリップフロップ回路が、いずれも立ち上がりエッジ型となっている。また、
図11に示したシリアルデータ受信装置100は、
図4に示したVCO160であり、単相のクロックを出力する。そして
図12に示したシリアルデータ受信装置100は、LF150から電流を放電するチャージポンプ(CP-)142’、144’の駆動力を、チャージポンプ(CP-)142、144の駆動力の半分としている。
【0046】
このように、チャージポンプ(CP-)142’、144’の駆動力を、チャージポンプ(CP-)142、144の駆動力の半分とすることで、VCO160の消費電力をさらに削減することが出来る。従って、
図12に示したシリアルデータ受信装置100は、消費電力をさらに抑えてシリアルデータを受信することが可能となる。
【0047】
本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の全体構成例を示す。
図13は、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の全体構成例を示す説明図である。
図13は、本実施形態に係るシリアルデータ受信装置100の全体構成例は、
図11に示した構成に、デシリアライザ170と、極性検出部180と、を加えたものである。
【0048】
デシリアライザ170は、EXOR165、166から出力される、Retimeされた信号データを、VCO160’から出力されるクロックを用いて、所定のビット数を有するパラレルのデータ及びパラレルのクロックに変換する。極性検出部180は、極性検出器181と、加算器182と、を備え、デシリアライザ170から出力されるパラレルのデータ及びパラレルのクロックを用いて極性を検出する。
【0049】
以上説明したように本開示の第1の実施形態に係るシリアルデータ受信装置100は、シリアルデータの受信の際に、高速動作を可能とし、またジッタ耐性を向上させ、さらにはシリアルデータの受信時における消費電力を低減することができる。
【0050】
<2.第2の実施形態>
[2.1.概要]
続いて、本開示の第2の実施形態について詳細に説明する前に、本開示の第2の実施形態に至る概要を説明する。
【0051】
従来、シリアル転送を用いて高速にデータ通信する装置が実現されている。例えば、このような装置として、1対の信号線を用いて差動信号を伝送する装置が実現されている(例えば、特開2013-187584号公報など参照)。この1対の信号線を用いた差動信号の伝送では、送信側の機器(ソース機器)から受信側の機器(シンク機器)へ差動信号を用いた高速なデータ転送が行われる。また、この伝送では、シンク機器からソース機器へのデータの伝送は、差動信号が伝送される1対の信号線を経由した同相信号の送受信により行われる。また、特開2013-187584号公報で開示されている技術では、伝送路にAC結合を備えていることで、差動信号を下りのデータ伝送とし、同相信号を上りのデータ伝送とする装置における利便性を向上させている。
【0052】
一方、特開2013-187584号公報で開示されている技術は、下りが差動信号、上りが同相信号に限定されており、差動と同相の違いを使って信号分離をすることが前提となっている。そのため、例えば上り下りとも同相信号となるような同軸ケーブルを伝送路に使うことができない。昨今、データ通信用の伝送路として差動のSTP(シールデットツイストペア)ケーブルの他に、同軸で安価なCOAX(コアキシャル)ケーブルを使用するケースが増えている。このようなケーブルを使用できないと、シリアル転送を用いたデータ通信において用途が限られてしまう。また、特開2013-187584号公報で開示されている技術は、上りデータのスタート時に充電パターンを必要としており、上りデータの帯域を狭めてしまっていた。
【0053】
そこで本件開示者は、上述した点に鑑み、差動ケーブルだけで無く同軸ケーブルも使用することで用途を広範化することが出来ると共に、上りデータの帯域を有効に利用することが出来る技術について鋭意検討を行った。その結果、本件開示者は、以下で説明するように、差動ケーブルだけで無く同軸ケーブルも使用することで用途を広範化することが出来ると共に、上りデータの帯域を有効に利用することが出来る技術を考案するに至った。
【0054】
以上、本実施形態の概要について説明した。続いて、本実施形態に係るシリアルデータ送受信システムの構成例を説明する。
【0055】
[2.2.構成例]
図14は、本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200の構成例を示す説明図である。以下、
図14を用いて本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200の構成例について説明する。なお、
図14では、シリアルデータ送受信システム200のデータ送信側の機器(ソース機器300)およびデータ受信側の機器(シンク機器400)においてデータの伝送に係わる機能構成のみを示し、その他は省略して示す。
【0056】
本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200は、例えば、シリアルデータ伝送技術を用いたデジタル映像・音声データの送受信を行うシステムである。本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200は、デジタル映像・音声データとして、24ビット階調VGA(Video Graphics Array)、WVGA(Wide VGA)、SVGA(Super VGA)、XGA(eXtended Graphics Array)、WXGA(Wide XGA)、SXGA(Super XGA)、UXGA(Ultra XGA)等の動画像を伝送する。
【0057】
図14に示したように、本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200は、ソース機器300と、シンク機器400と、を含んで構成される。シリアルデータ送受信システム200は、1対の信号線(伝送路500)を介した信号によりデータをシリアル転送するものであり、ソース機器300と、シンク機器400と、伝送されるデータの経路である伝送路500とを備える。以下の説明では、ソース機器300からシンク機器400の方向を下り、シンク機器400からソース機器300の方向を上りとする。以下では、下り信号は一般的に映像信号等を扱い、上り信号は制御信号等の低速な信号を扱うケースで説明する。伝送路500としてはシールデッドペアケーブルが用いられうる。ここで、ソース機器300とシンク機器400とを接続する伝送路500には差動ケーブルが用いられてもよく、同軸ケーブルが用いられてもよい。従って、シリアルデータ送受信システム200は、下りが差動信号、上りが同相信号となる信号だけでなく、上り下りとも同相信号となるような信号も伝送されうる。
【0058】
ソース機器300の構成を説明する。ソース機器300は、下り送信処理部310と、差動ドライバ320と、ローパスフィルタ(LPF)330と、上り受信処理部340と、を含んで構成される。
【0059】
下り送信処理部310は、ソース機器300からシンク機器400に送信するデータを決定し、その決定したデータを差動ドライバ320に供給するものである。例えば、下り送信処理部310は、データ(下りデータ)をシンク機器400に送信する場合には、伝送するためのクロックである送信クロック(図では、Tclkと表す)に下りデータを同期させ、この同期させた下りデータを差動ドライバ320に供給する。なお、
図14では、下り送信処理部310に下りデータを供給するための信号線(信号線319)と、下り送信処理部310に送信クロックTCLKを供給するための信号線(信号線318)とが示されている。また
図14では、下り送信処理部310からデータを差動ドライバ320に供給するための信号線(信号線317)が示されている。
【0060】
また、下り送信処理部310は、信号線341を介して参照クロック送信命令が上り受信処理部340から供給された場合には、送信クロックTCLKをN分周したクロックを、参照クロック(REF)として差動ドライバ320に供給する。
【0061】
差動ドライバ320は、下り送信処理部310から供給された信号を1対の信号線(伝送路500)でシリアル転送するために差動信号を生成するものである。この差動ドライバ320は、互いに逆位相となる対の信号(差動信号)を生成し、その生成した信号を、
伝送路500を介してシンク機器400に供給する。
【0062】
LPF330は、差動ドライバ320から出力される信号を減衰させて、伝送路500を通じてシンク機器400から伝送されてくる信号を通過させるフィルタである。
図14では、LPF330を通過した信号を上り受信処理部340に供給するための信号線(信号線331)が示されている。本実施形態では、ソース機器300からシンク機器400へ伝送される下りの信号と、シンク機器400からソース機器300へ伝送される上りの信号とで、周波数帯を変えている。従って、LPF330は、シンク機器400からソース機器300へ伝送される上りの信号を通過させ、ソース機器300からシンク機器400へ伝送される下りの信号を減衰させる特性を有している。
【0063】
図15は、本実施形態における下りの信号と上りの信号の周波数成分の例を示す説明図である。このように、本実施形態では、
図15に示したように、下りの信号と上りの信号とは、周波数帯が重ならないような周波数成分としている。なお本実施形態では、下りの信号を高周波として上りの信号を低周波としているが、本開示は係る例に限定されるものでは無い。
【0064】
上り受信処理部340は、LPF330を通過した信号を解析し、その解析結果を出力するものである。例えば、上り受信処理部340は、LPF330を通過した信号が上りの信号のデータ(ここでは、ユーザーデータと称する)である場合には、ソース機器300におけるユーザーデータを使用する回路(図示せず)に、信号線343を介してユーザーデータを供給する。また、上り受信処理部340は、LPF330を通過した信号が、参照クロックを要求する信号(ここでは、参照クロック要求信号(REFREQ)と称する)である場合には、参照クロック送信命令を、信号線341を介して下り送信処理部310に供給する。また
図14には、上り受信処理部340から上りデータClkを出力するための信号線(信号線342)が示されている。
【0065】
上り受信処理部340の構成は特定のものに限定されないが、例えば、LPF330を通過した信号と、所定の電位である参照電位とを比較し、その比較結果と、ソース機器300において発生させた所定のクロックとを比較することでデータを検出する機能を有するように構成される。
【0066】
続いてシンク機器400の構成を説明する。シンク機器400は、差動レシーバ410と、下り受信処理部420と、上り送信処理部430と、差動ドライバ440と、ハイパスフィルタ(HPF)450と、とを備える。
【0067】
差動レシーバ410、伝送路500を介して供給され、ハイパスフィルタ450を通過した差動信号を受信するものである。この差動レシーバ410は、ソース機器300の差動ドライバ320が送信した差動信号を受信して、受信した信号を下り受信処理部420に、信号線411を介して供給する。
【0068】
下り受信処理部420は、差動レシーバ410から供給された信号を解析し、その解析結果を出力するものである。例えば、下り受信処理部420は、下りデータが差動信号で伝送された場合には、その下りデータを、シンク機器400における下りデータを使用する回路(図示せず)に信号線421を介して供給する。また、下り受信処理部420は、参照クロックの受信が必要である場合には、参照クロック要求信号(REFREQ)の送信を実行するための信号(参照クロック要求送信命令)を、上り送信処理部430に信号線423を介して供給する。
【0069】
さらに、下り受信処理部420は、参照クロックを受信した場合には、下り受信処理部420が下りデータを検出する際に用いるクロック(基準クロック)を参照クロックに同期させる。なお、下り受信処理部220は、送信クロック(TCLK)を、シンク機器400における送信クロック(TCLK)を使用する回路(図示せず)に信号線422を介して供給する。
【0070】
下り受信処理部420の構成は特定のものに限定されないが、例えば、一例として上述した第1の実施形態で説明したシリアルデータ受信装置100の構成を適用することが出来る。下り受信処理部420として、上述のシリアルデータ受信装置100の構成を適用することで、シンク機器400は、シリアルデータの受信の際に、高速動作を可能とし、またジッタ耐性を向上させ、さらにはシリアルデータの受信時における消費電力を低減することができる。
【0071】
上り送信処理部430は、シンク機器400からソース機器300に送信するデータを決定し、その決定したデータを差動ドライバ440へ供給するものである。例えば、上り送信処理部430は、参照クロック要求送信命令が下り受信処理部420から供給されている場合には、参照クロック要求信号(REFREQ)を差動ドライバ440に信号線331を介して供給する。
【0072】
また、上り送信処理部430は、参照クロック要求送信命令が供給されていない場合において、送信対象のデータ(ユーザーデータ)が供給された場合には、ユーザーデータを差動ドライバ440に供給する。この場合において、上り送信処理部430は、上り方向のデータ送信のためのクロックである上り送信クロック(図では、上りデータClkと表す)にユーザーデータを同期させ、この同期させたユーザーデータを差動ドライバ440に供給する。なお、
図14では、上り送信処理部430にユーザーデータを供給するための信号線499と、上り送信処理部430に上りデータClkを供給するための信号線498とが示されている。また上り送信処理部430は、上りデータのスタート時に、特開2013-187584号公報で開示されている技術のように充電パターンを送信することを妨げるものでは無い。
【0073】
差動ドライバ440は、上り送信処理部430から供給された信号を1対の信号線(伝送路500)を介して転送するために差動信号を生成するものである。差動ドライバ440は、生成した差動信号を、伝送路500を介してソース機器300のLPF330に供給する。
【0074】
HPF450は、差動ドライバ440から出力される信号を減衰させて、伝送路500を通じてソース機器300から伝送されてくる信号を通過させるフィルタである。上述したように、本実施形態では、ソース機器300からシンク機器400へ伝送される下りの信号と、シンク機器400からソース機器300へ伝送される上りの信号とで、周波数帯を変えている。従って、HPF450は、シンク機器400からソース機器300へ伝送される上りの信号を減衰させ、ソース機器300からシンク機器400へ伝送される下りの信号を通過させる特性を有している。
【0075】
図14に示したシリアルデータ送受信システム200で伝送される映像信号はピクセルクロック(ドットクロックやシフトクロックと呼ばれることもある)に対し、24ビット等の信号がパラレルに入力され、それらをシリアル信号に変換し伝送される。その場合、映像信号はピクセルクロックの逓倍の信号となる。つまり、解像度が低い場合はこのピクセルクロックが小さく、逓倍された信号成分も低周波となることがある、この場合、下り信号である映像信号と上り信号とで周波数成分が近くなると、高精度なフィルタを使用することで信号を分離することになる。
【0076】
そこで本実施形態では、そのような場合を考慮し、下り信号は固定の伝送レートにして、この下り信号に映像信号を格納して送ってもよい。このようにすることで、上り信号と下り信号それぞれの伝送レートが固定となり、周波数差をつけることができる。上り信号と下り信号に周波数差を付けることで、例えばLPF330やHPF450に簡易な構成のものを用いることが出来る。簡易な構成とは、例えば、抵抗素子と容量素子のみで構成出来るものなどを指すが、本開示はもちろんこれに限定するものではない。
【0077】
図16は、本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200のより具体的な回路構成例を示す説明図である。
【0078】
差動ドライバ320(下り信号送信回路)は差動回路である。下り信号送信回路の出力は50Ωの抵抗R1、R2で終端されている。そして、伝送路500を介して差動レシーバ410(下り信号受信回路)にて50Ωの抵抗R3、R4で終端されている。この50Ωの抵抗の前段に、例えば180pFの容量素子C1、C2が入っており、これが第1のハイパスフィルタの構成となっている。さらにその先に直流成分をカットするための容量素子C3、C4が入っており、これが第1のハイパスフィルタの構成となっている。これらのハイパスフィルタにより、シンク機器400からソース機器300へ伝送される上り信号を減衰させる。
【0079】
差動ドライバ440(上り信号送信回路)の後段には、フェライトビーズ(FB)441、442が設けられている。フェライトビーズ(FB)461、462はインダクタ素子であってもよい。フェライトビーズ(FB)441、442は、高周波でインピーダンスが高く、低周波でインピーダンスが低い素子であり、上り信号送信回路側の負荷の影響を小さくするために挿入されているものである。
【0080】
上り信号送信回路はチャージポンプ構成であり、電流源441、442、443、444を、スイッチ445、446、447、448によるスイッチングで電流を出力したり引いたりする構成を有している。スイッチ445、446、447、448は、例えば後述するようにMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられうる。また上り信号送信回路は、電流が切れた際にDC位置を定めるために、電源を分圧するための抵抗素子R11、R12、R13、R14を設けている。これらの電流が伝送路500を介して、下り信号送信回路の50Ω負荷に流れ、電圧が変化する。
【0081】
下り信号受信回路側は、容量値が低い容量素子C3、C4が接続されているため、低周波成分に対してはインピーダンスが高いため、電流は殆ど流れない。また上り信号受信回路には、下り信号も入力されてしまうため、前段にLPF330を入れて、下り信号成分を減衰させ、上り信号のみを受信できる構成にしている。
【0082】
上り信号受信回路は、さらに正相側にDCオフセットをつけてもよい。正相側にDCオフセットをつけることで、上り信号受信回路は、上り信号が無い時にはHighまたはLowレベルを出力できるようにすることができる。このDCオフセットは、微小なノイズ等により、無信号時に出力をトグルさせない役目を担っている。例えば、高速の下り信号が伝送路500で伝送される際に、周波数同期させるために参照クロックを起動シーケンスの初めに必要とする場合がある。
【0083】
この参照クロック要求は上り信号を使ってシンク機器400の側から送るが、信号が無い時をこの参照クロック要求とする場合に、ノイズ等でトグルしてしまうと参照クロック要求がソース機器300の側に届かず、同期が取れず通信ができないといった状態になってしまう恐れがある。別の構成として、上り信号に特殊な符号等を入れ、その符号が届かないことを参照クロック要求とする等、他の方法もあり得るが、このDCオフセットを付与することで、システムをより簡易化することが可能となる。
【0084】
スイッチ445、446、447、448は、所定のタイミングでオン、オフするスイッチである。そのようなスイッチとして、例えばMOSFETが用いられうる。これらのスイッチ445、446、447、448のオン、オフのタイミングを変えることで、すなわち、電流源441、442、443、444のオン、オフのタイミングを変えることで、差動通信だけでなく、同相通信や、DC結合での同相通信が可能となる。また、スイッチ445、446、447、448のオン、オフのタイミングを変えることで、伝送路500が差動ケーブルだけでなく同軸ケーブルであっても対応可能となる。
【0085】
スイッチ445、446、447、448のデューティ比は、略50%であることが好ましい。デューティ比が50%以外の値となると、上り信号送信回路からの信号線の電圧が、電源電圧またはグランド(GND)に近付く。上り信号送信回路からの信号線の電圧が、電源電圧またはグランド(GND)に近付ことにより、電流源441、442、443、444が破綻することになる。
【0086】
なお、上述した回路定数は一例であり、抵抗やコンデンサについては、ソース機器300とシンク機器400との間で伝送路を使って通信したい信号の特性に応じて、様々な回路定数のものを用いることができることは言うまでもない。
【0087】
上り信号送信回路の具体例を示す。
図17~
図20は、上り信号送信回路の構成例を示す説明図である。
図17は、AC結合で差動通信の場合の上り信号送信回路の構成例であり、
図18は、AC結合で同相通信の場合の上り信号送信回路の構成例であり、
図19は、DC結合で同相通信の場合の上り信号送信回路の構成例であり、
図20は、AC結合で同軸通信の場合の上り信号送信回路の構成例である。
【0088】
図17に示した上り信号送信回路は、スイッチ445、448はHighの状態でオンとなり、Lowの状態でオフとなる。スイッチ446、447はLowの状態でオンとなり、Highの状態でオフとなる。すなわち、差動信号が上り信号送信回路から出力されることになる。
【0089】
図18に示した上り信号送信回路は、スイッチ445、446はHighの状態でオンとなり、Lowの状態でオフとなる。スイッチ447、448はLowの状態でオンとなり、Highの状態でオフとなる。すなわち、同相信号が上り信号送信回路から出力されることになる。
【0090】
図19に示した上り信号送信回路は、スイッチ445、446は常にオフの状態であり、スイッチ447、448はLowの状態でオンとなり、Highの状態でオフとなる。すなわち、同相信号が上り信号送信回路から出力されることになる。
【0091】
図20に示した上り信号送信回路は、スイッチ445、448はHighの状態でオンとなり、Lowの状態でオフとなる。スイッチ446、447はLowの状態でオンとなり、Highの状態でオフとなる。また
図20に示した例では同軸通信であるため、伝送路では1本の信号線で信号が送られることになる。
【0092】
このように、スイッチ445、446、447、448のオン、オフ特性を、伝送路500で伝送される信号に応じて変化させることで、上り信号送信回路は様々な伝送路に対応することが可能となる。
【0093】
以上説明したように、本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200は、差動ケーブルだけで無く同軸ケーブルも使用することで用途を広範化することが出来ると共に、上りデータの帯域を有効に利用することが出来る。従って、本開示の第2の実施形態に係るシリアルデータ送受信システム200は、伝送路500として様々なケーブルを用いることが可能となり、差動ケーブルのみしか伝送路に使うことが出来なかったシリアルデータ送受信システムに比べ、汎用性を飛躍的に高めることが可能となる。
【0094】
<3.まとめ>
以上説明したように本開示の第1の実施の形態によれば、シリアルデータを受信するデータ受信装置において、動作速度の向上や消費電力の低減などを図ることにより、通信品質を向上させることが可能なシリアルデータ受信装置100が提供される。
【0095】
また、以上説明したように本開示の第2の実施の形態によれば、差動ケーブルだけで無く同軸ケーブルも使用することで用途を広範化することが出来ると共に、上りデータの帯域を有効に利用することが出来るシリアルデータ送受信システム200が提供される。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0098】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
受信したシリアルデータから、該シリアルデータの立ち上がりのタイミングで値が反転する第1の信号と、該シリアルデータの立ち下がりのタイミングで値が反転する第2の信号と、を生成する信号生成部と、
前記信号生成部が生成した前記第1の信号および前記第2の信号を用いてクロック再生を行うクロック再生部と、
を備える、データ受信装置。
(2)
前記クロック再生部は、前記第1の信号及び前記第2の信号のそれぞれに対して個別に位相検出を行う位相検出部を備える、前記(1)に記載のデータ受信装置。
(3)
各前記位相検出部は、前記第1の信号または前記第2の信号を入力するフリップフロップ回路を備え、
前記フリップフロップ回路は、前記第1の信号または前記第2の信号と、クロック信号とを入力する第1のDラッチ回路と、前記クロック信号を所定時間遅延させる遅延器と、前記第1のDラッチ回路の出力と、前記遅延器との出力を入力する第2のDラッチ回路と、を備える、前記(2)に記載のデータ受信装置。
(4)
各前記位相検出部は、前記シリアルデータの符号が遷移するタイミングで前記第1のDラッチ回路及び前記第2のDラッチ回路のリセットを解除するリセット解除回路をさらに備える、前記(3)に記載のデータ受信装置。
(5)
各前記位相検出部による位相検出の結果に基づいて駆動するチャージポンプをさらに備える、前記(2)~(4)のいずれかに記載のデータ受信装置。
(6)
前記チャージポンプの出力に応じて電圧制御発振器の駆動電圧を生成するループフィルタをさらに備える、前記(5)に記載のデータ受信装置。
(7)
前記シリアルデータは映像データである、前記(1)~(6)のいずれかに記載のデータ受信装置。
(8)
第1のデジタル信号と、前記第1のデジタル信号と逆方向に伝送される、前記第1のデジタル信号と異なる周波数帯域を有する第2のデジタル信号とが伝送される同一の伝送路からの前記第1のデジタル信号を受信する受信回路と、
前記第2のデジタル信号を送信する送信回路と、
前記第2のデジタル信号を減衰させるフィルタ回路と、
を備える、データ送受信装置。
(9)
前記送信回路は、前記第1のデジタル信号と同相信号である前記第2のデジタル信号を送信する、前記(8)に記載のデータ送受信装置。
(10)
前記送信回路は、前記第1のデジタル信号と差動信号である前記第2のデジタル信号を送信する、前記(8)に記載のデータ送受信装置。
(11)
前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号は固定の伝送レートで伝送される、前記(8)~(10)のいずれかに記載のデータ送受信装置。
(12)
前記送信回路は、前記第2のデジタル信号のデューティ比を略50%で伝送する、前記(8)~(11)のいずれかに記載のデータ送受信装置。
(13)
前記送信回路は、前記第2のデジタル信号の送信に先立って所定の充電パターンを送信する、前記(8)に記載のデータ送受信装置。
(14)
前記受信回路は、正相側に直流成分のオフセットを付与する、前記(8)~(13)のいずれかに記載のデータ送受信装置。
(15)
前記伝送路で伝送されるデータは映像データである、前記(8)~(14)のいずれかに記載のデータ送受信装置。
(16)
前記映像データの送信元の装置である、前記(15)に記載のデータ送受信装置。
(17)
前記映像データの受信先の装置である、前記(15)に記載のデータ送受信装置。
【符号の説明】
【0099】
100 シリアルデータ受信装置
200 シリアルデータ送受信システム
300 ソース機器
400 シンク機器