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特許7186718製品中の核生成を誘発するフリーズドライヤ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】製品中の核生成を誘発するフリーズドライヤ及び方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/06 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
F26B5/06
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019555846
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018060206
(87)【国際公開番号】W WO2018193100
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】17167643.0
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519363007
【氏名又は名称】ゲア ライオファイル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ボイトラー,トーマス ハインリヒ ルートヴィヒ
(72)【発明者】
【氏名】ボッケム,マリオン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,カロリン
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502932(JP,A)
【文献】特表2001-525049(JP,A)
【文献】特表2007-524066(JP,A)
【文献】特開2016-125731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007454(US,A1)
【文献】特開平11-264659(JP,A)
【文献】特開平06-180181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーズドライの対象となる水性製品(44)における核生成を誘発するためのフリーズドライヤ(1)であって、
蒸気及び前記製品(44)を格納するように適合された製品チャンバ(12)と、
前記製品チャンバ(12)に隔離弁(36)を介してガス輸送式に接続された凝縮チャンバ(16)であって、ガスポンプ(18)を備える凝縮チャンバ(16)と、
前記製品チャンバ(12)を、少なくとも1つの冷却装置(22)であって、前記蒸気が前記製品チャンバから前記冷却装置(22)を通じて第1ガス流方向(斜線入り矢印)に吸引されると氷晶を生成するように適合された少なくとも1つの冷却装置(22)に接続するガス伝送ライン(20)と、を備え、
前記フリーズドライヤ(1)は、前記冷却装置(22)内で前記氷晶を生成した後に、前記ガス伝送ライン(20)を通じてフラッシングガスを前記第1ガス流方向と逆向きの第2ガス流方向(白い矢印)に運んで、それによって前記氷晶を前記冷却装置(22)から前記製品チャンバ(12)へと取り込んで、その中の前記製品(44)の核生成を誘発するように適合され、
前記冷却装置(22)を含む前記ガス伝送ライン(20)が、少なくとも前記凝縮チャンバ(16)によって前記ガスポンプ(18)から分離され、前記凝縮チャンバ(16)は、
前記第1ガス流方向への前記吸引中の前記吸引蒸気のためのガス通路と、
前記第2ガス流方向への前記輸送中の前記フラッシングガスのためのガス通路及び/又はガス貯蔵部と、を提供することを特徴とするフリーズドライヤ(1)。
【請求項2】
前記ガス伝送ライン(20)は、前記第1ガス流方向と前記第2ガス流方向の切り替え中に閉じるように適合された少なくとも第1弁(V1)を含む、請求項1に記載のフリーズドライヤ。
【請求項3】
前記第1弁(V1)は、前記冷却装置(22)と前記凝縮チャンバ(16)との間に配置される、請求項2に記載のフリーズドライヤ。
【請求項4】
前記凝縮チャンバ(16)は、少なくとも第2弁(V2)を通じてフラッシングガス、例えば乾燥空気又は窒素等の供給源に、前記フラッシングガスを前記ガス通路及び/又はガス貯蔵部に提供するために接続される、請求項1~3のいずれか1項に記載のフリーズドライヤ。
【請求項5】
前記ガス伝送ライン(20)は、前記凝縮チャンバ(16)と前記冷却装置(22)との間に配置されたガスフィルタ(34)を含み、任意選択により、前記ガスフィルタ(34)と前記凝縮チャンバ(16)との間に配置された第3弁(V3)も含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のフリーズドライヤ。
【請求項6】
前記冷却装置(22)は前記製品チャンバ(12)に直接接続され、何れの弁又はポートとも相互接続されない、請求項1~5のいずれか1項に記載のフリーズドライヤ。
【請求項7】
前記冷却装置(22)は、内側冷却表面(24)を有する少なくとも1つの管状パイプ(21)を含み、そこに前記氷晶が形成され、その表面はパイプ空洞(26)を取り囲み、前記管状パイプ(21)は反対側の端を有し、少なくとも一方の端は前記ガス伝送ライン(20)に接続されて、その一部を形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載のフリーズドライヤ。
【請求項8】
前記冷却装置(22)は、前記ガス伝送ライン(20)の中に平行に及び/又は直列に配置された複数の管状パイプ(21)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のフリーズドライヤ。
【請求項9】
前記冷却装置(22)又は前記ガス伝送ライン(20)に、前記冷却装置(22)の上流又は下流での清浄な水蒸気注入のための第4弁(V4)を含むガス入口(32)が設けられる、請求項1~8のいずれか1項に記載のフリーズドライヤ。
【請求項10】
フリーズドライの対象となる製品中に核生成を誘発するための請求項1~9のいずれか1項に記載のフリーズドライヤの使用において、
a)前記製品チャンバ(12)内の前記製品(44)を過冷却状態まで冷却するステップと、
b)ガスポンプ(18)を使って、蒸気を前記ガス伝送ライン(20)を介して前記製品チャンバ(12)から第1ガス流方向(斜線入り矢印)に前記冷却装置(22)を通り、その後、前記凝縮チャンバ(16)を通って吸引し、その間に前記冷却装置(22)内の前記蒸気を冷却することによって、その中で氷晶を生成しているステップと、
c)フラッシングガスを前記第1ガス流方向とは反対の第二ガス流方向(白い矢印)に、前記凝縮チャンバ(16)から前記ガス伝送ライン(20)を介して前記冷却装置(22)を通り、前記製品チャンバ(12)の中へと運び、前記冷却装置(22)からの前記氷晶が前記製品チャンバ(12)へと流され、その中の前記製品の制御された核生成が誘発されるようにするステップと、によって特徴付けられ、
前記ステップa)、b)、及びc)は、フリーズドライプロセスの一部として前記製品の昇華が起こる前に実行される、使用。
【請求項11】
フリーズドライヤの中でのフリーズドライの対象となる水性製品(44)の制御された核生成を誘発する方法において、
a)前記フリーズドライヤの製品チャンバ(12)内の前記製品を過冷却状態まで冷却するステップと、
b)蒸気を前記製品チャンバ(12)から前記ガス伝送ライン(20)を介して第1ガス流方向(斜線入りの矢印)に冷却装置(22)を通り、フリーズドライヤの凝縮チャンバ(16)を通って吸引し、その間に前記冷却装置(22)の中の前記蒸気を冷却することによって、その中で氷晶を生成しているステップと、
c)フラッシングガスを前記第1ガス流方向とは反対の第2ガス流方向(白い矢印)に、前記凝縮チャンバ(16)から前記ガス伝送ライン(20)を介して、前記冷却装置(22)を通って前記製品チャンバ(12)の中へと運び、前記冷却装置(22)からの氷晶が前記製品チャンバ(12)の中へと流されて、その中の前記製品の制御された核生成が誘発されるようにするステップと、を含み、
前記ステップa)、b)、及びc)は、前記フリーズドライヤの中でのフリーズドライプロセスの一部として前記製品の昇華が起こる前に行われる、方法。
【請求項12】
前記凝縮チャンバ(16)から前記ガス伝送ライン(20)を介して運ばれる前記フラッシングガスが、前記凝縮チャンバ(16)と前記冷却装置(22)との間の前記ガス伝送ライン(20)内に配置されたガスフィルタ(34)によりろ過されることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記製品チャンバ(12)から吸引された前記蒸気が、前記凝縮チャンバ(16)に前記ガス伝送ライン(20)とは別の真空ライン(30)を介して接続されたガスポンプ(18)を使って吸引されることをさらに含む、請求項11~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記製品チャンバ(12)と前記凝縮チャンバ(16)を接続する隔離弁(36)をさらに含み、この隔離弁(36)は、少なくともステップb)の間に閉じられ、及び/又は前記隔離弁(36)がステップc)の間に閉じられ、及び/又は前記隔離弁(36)がステップb)の前にも閉じられる、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくともステップa)、b)、c)及び昇華中の真空乾燥とは別のステップにおいて、少なくとも前記冷却装置(22)が、動作後に、その中に高温スチームを運ぶことによって殺菌されることをさらに含み、好ましくは、前記製品チャンバ(12)及び前記ガス伝送ライン(20)も又、そのように殺菌される、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却装置(22)の冷却表面(24)の温度が、ステップb)中に、任意選択によりステップb)の前にも、-30℃~-90℃、好ましくは-50℃~-70℃の範囲であることをさらに含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップc)中に、制御された、規定量の無菌水が、好ましくは水蒸気の形態で前記冷却装置(22)へと、任意選択により第4弁(V4)を介して、前記ガス伝送ラインを通って導入されることをさらに含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップc)において乾燥フラッシングガスが、任意選択により第2弁(V2)を通じて適用され、前記乾燥フラッシングガスは、ステップc)中に前記凝縮チャンバ(16)内の凝縮コイル(50)により冷却されることをさらに含む、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品、すなわち水性製品、例えば生物由来製品、医薬品、及び/又は化粧品等の液体製品で満たされたバイアル又はシリンジ中の核生成を誘発するフリーズドライヤ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥は、フリーズドライとも呼ばれ、生物由来製品及びその他の水含有製品を乾燥するための、科学的及び工業的に重要なプロセスである。これはバイオ医薬品及び生物製剤の調製に広く使用されており、なぜなら、それによって不安定な生体分子の保管安定性を増大させ、好都合の保管及び輸送形式を提供し、再溶解後に、製品を使用可能な状態のその当初の製剤形態で速やかに送達できるからである。
【0003】
液体を含む製品、例えば液体医薬品又は栄養は、フリーズドライヤの製品チャンバ内でフリーズドライされる。典型的に、医薬液体製品はバイアルに充填され、それが製品チャンバ内のスタック式のプレート又は棚に載せられる。製品チャンバは凝縮チャンバに接続され、凝縮コイルが製品チャンバ及びその中の液体製品を低温まで、すなわち0℃未満に冷却する。冷却された製品チャンバは凝縮器の凝縮チャンバを通じて排気されて、約三重点未満の範囲、すなわち10mbar未満の低圧及び約-40℃未満とされ、それによって製品チャンバから吸引された湿気が凝縮し、その一部は凝縮チャンバ内の凝縮コイル上で氷となり、製品が乾燥され、すなわち乾燥した内容物の周囲及び内部の水分が、製品の周囲の加熱システムを使って凍結状態から蒸気の状態へと直接昇華させられる。従来の工業用のバッチ及び連続フリーズドライプロセス中、凝縮チャンバと製品チャンバとの間に隔離弁が提供され、この弁はこの乾燥プロセス中に一般に開いた状態に保たれ、昇華した蒸気がバイアルから凝縮コイル上で凝縮されるべく凝縮チャンバへと通過できる。フリーズドライヤの中には、フリーズドライ動作中に凝縮液除去サイクルが可能なものがあり、それによれば、凝縮チャンバのある部分が仕切られて、1つ又は複数の隔離弁を使って閉じられ、凝縮コイルの外面がクリーニングされる。
【0004】
液体製品の場合、有効なフリーズドライは、より均一な製品を生成するための製品の均一な初期凍結から始まるが、それは、過冷及び核生成温度が製品パラメータ、例えばケーク抵抗、比表面積、及び残留水分に影響を与えるからである。したがって、過冷溶液の制御された、すなわち誘導された、実質的に同時の均一な氷核生成が、科学及び工業的製薬会社の高い関心を集めている。その標準的な氷点を超える液体は、その周囲に結晶構造が形成されて固体を作り得る種晶又は核が存在すると結晶化する。そのような核がないと、結晶の均一な核生成が発生する、すなわち液体が過冷状態となる温度までずっと液相を保持することができる。氷晶核生成又は核生成は、自発的な氷結晶形成のプロセスであり、その性質上、異物の存在により刺激されることが多い。しかしながら、工業的薬剤生産において、無菌及び清浄度の要求を考えると、このような異物の使用は容認できない。
【0005】
Fakultaet fuer chemie und Pharmazie der Ludwig-Maximilians-Universitaet, Muenchen, 2014の博士論文、“Cyclodextrins as Excipients in drying of Proteins and Controlled Nucleation in Freeze Drying”, Chapter III,“Controlled Ice Nucleation in Pharmaceutical Freeze-drying”の中で、Reimund Mechanel Geidoblerは今日利用可能な各種の核生成技術の詳細な概要を提示しており、その中には、a)氷霧、すなわち超低温ガスにより作られる小さい氷の小滴、b)急減圧、c)超音波、d)真空誘起表面氷結、e)ギャップフリージング、f)電子凍結、g)温度急冷凍結、h)予冷却棚、i)機械的攪拌を利用する核生成が含まれている。しかしながら、著者が述べているように、これらの多く、すなわちa)氷霧、c)超音波、d)真空誘発表面凍結、f)電子凍結、h)予冷却棚、i)機械的攪拌は工業規模のプラントに拡張するのは難しい。さらに、III.3.2.2において、著者は、製品を冷却すること、製品チャンバを低圧まで、ただし三重点を超えない程度まで減圧し、その後、凝縮チャンバの逃し弁又は放出弁を使って与圧窒素ガスを取り入れることによって凝縮器内で大気圧まで加圧することを含む氷核生成方法を提案している。それによって、ここでは氷晶という氷の粒子が凝縮器の表面に形成された霜から放出され、開いた隔離弁を介して製品チャンバの中へと運ばれ、その際、これらは製品と接触すると液体から固体への相変化をトリガする。しかしながら、このような氷核生成の方法は、GMP(適正製造基準)要求事項に基づく工業的医薬品生産の分野に直接適用することはできない。フリーズドライヤ自体の凝縮チャンバは必要なレベルまでクリーニングすることは不可能であると分類されており、したがって、その中で生成される氷晶は何れの液体医薬製品に含めるためにも使用できない。
【0006】
国際公開第2015138005号、米国特許第9435586号、米国特許第9470453号、国際公開第2014028119号のすべてに、フリーズドライヤにおける製品の核生成の制御方法が記載されている。国際公開第2014028119号の方法は、製品をある温度及び圧力に保持し、製品チャンバとは分離され、そこに蒸気ポートにより接続された凝縮チャンバの内面にある量の凝縮霜を生成することを含み、凝縮チャンバの圧力は製品チャンバ内のそれより高い。蒸気ポートを開いて空気擾乱を生じさせ、それが凝縮霜を氷晶へと破砕し、これらが過冷却製品の中に急速に入り、その均一な核生成が起こる。凝縮チャンバは、(国際公開第2014028119号の図1参照)フリーズドライプロセスの昇華中の凝縮に使用されるものと同じで、蒸気ポートが隔離弁であるか、又は(図2及び3を参照)独自の別々の核生成弁[124]を有する別々の核生成種晶発生チャンバ[110]の何れかである。この文献に記載されているように、チャンバ[110]内では強力なガス擾乱を生じさせて、その中の壁の内面上に緩い状態で凝縮した霜を除去する。したがって、ここで開示されている方法又はフリーズドライヤは工業プロセスには適さず、それは、大型のフリーズドライヤの場合、氷晶をバイアル中に均等に流し込むために必要な大量の空気流は、核生成種晶発生チャンバと製品チャンバとの間で蒸気ポートが開放されたときに、非常に大きいため、実際にはバイアルを吹き倒すかもしれず、それが粉砕し、又は相互にぶつかって損傷を与えるリスクがある。
【0007】
欧州特許第3093597号も又、フリーズドライヤ自体(図1)の凝縮チャンバ内又は別の氷チャンバ(図2)内の何れかで氷粒子を生成する方法を提案しており、これは製品チャンバ及び、それぞれを排気するための真空ポンプに接続される。図2において、別の氷チャンバと液体製品を含む製品チャンバは、ガス通過ラインを介して直接接続されている。真空ポンプは、冷却氷チャンバを介して製品チャンバを排気する。それによって、湿気のある空気が製品チャンバ及び、液体製品を含むバイアルの中のガスから抽出されて、バイアルからの、及び製品チャンバからの水分が氷チャンバ内で氷晶を形成する。
【0008】
製品チャンバ及び氷チャンバ内の圧力が低いため、弁を開くことにより、外部貯蔵部からのガス、例えば空気や窒素が氷チャンバ内に吸引され、このガスが氷晶を氷チャンバから製品チャンバへと逆流させて、製品の均一な核生成を生じさせる。凝縮チャンバは、図2のこのプロセスに関与しない。このプロセスは工業用のフリーズドライヤに直接適用できないが、それは次の2つの欠点による:1)4~12m又はそれ以上の範囲の大型工業用製品チャンバを核生成するために必要なガスの体積と生成される氷晶の量から、より大型の別々の氷チャンバが必要となること、2)ガス通路とより大きな装置をフリーズドライヤの外に提供することにより、これらの新たな部品にGMP要求事項に基づく別々の承認と分類が必要となるほか、これらが製品チャンバに直接接続されるため、真空気密状態で提供しなければならないことである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点を軽減させて、特に工業規模のフリーズドライヤ内だけでなく、GMP要求事項に基づくフリーズドライヤにも適した、製品、特に液体製品の制御された氷晶誘発核生成を可能にすることである。
【0010】
本発明のフリーズドライヤは、特許請求項1~8の何れかにより、又その使用は請求項9により定義される。本発明の方法は、請求項10~15の何れかにより定義される。
【0011】
フリーズドライの対象となる水性製品中の核生成を誘発するためのフリーズドライヤが提供され、これは、蒸気と製品を格納するように適合された製品チャンバと、製品チャンバに隔離弁を通じてガス輸送式に接続された凝縮チャンバであって、ガスポンプが提供された凝縮チャンバと、製品チャンバを、少なくとも1つの冷却装置であって、前記蒸気が製品チャンバから冷却装置を通じて第1ガス流方向に吸引されると氷晶を生成するように適合された少なくとも1つの冷却装置に接続するガス伝送ラインと、を含み、フリーズドライヤは、冷却装置内で氷晶を生成した後に、ガス伝送ラインを通じてフラッシングガスを前記第1ガス流方向と逆向きの第2ガス流方向に運んで、それによって氷晶を冷却装置から製品チャンバへと取り込んで、その中の製品の核生成を誘発するように適合されている。上述のこのような特徴は、欧州特許第3093597号の図2において開示されているフリーズドライヤの中にあると言われうる。
【0012】
本発明によれば、フリーズドライヤは、冷却装置を含むガス伝送ラインが、少なくとも凝縮チャンバによってガスポンプから分離され、凝縮チャンバは、第1ガス流方向への吸引中の吸引蒸気のためのガス通路と、第2ガス流方向への輸送中のフラッシングガスのためのガス通路及び/又はガス貯蔵部を提供することをさらに含む。
【0013】
これは、幾つかの主な利点を提供する:
第一に、凝縮チャンバ内に収容されるガスの量が、凝縮チャンバ内のフラッシングガスの通過及び/又は貯蔵の後に、氷晶を冷却装置から製品チャンバへと流すのに十分であることである。別のガス貯蔵部を提供する必要がない。
第二に、氷晶が、好ましくは、GMP用語で製品接触面と考えられ、高レベルであるが、製品接触面として定義される棚等程高くない衛生的デザインを必要とする製品チャンバから発せられる湿気から形成されること。氷晶は凝縮チャンバ内で生成されず、これによって、氷晶を形成するための、同じ製品液体が製品内に逆流する点から、プロセスの衛生が大幅に改善される。
出願人は、本発明により、第3利点は、a)冷却装置の下流に比較的大量のフラッシングガスを有すること、b)冷却装置が比較的小さい装置の中に格納されること、及びc)より小さい直径の装置がより大きい容積の製品チャンバに接続され、及び/又はその中で終わることの複合的な効果でありうることに気付いた。その結果、出願人は、冷却装置の内部での氷晶に対する有効な取込み動作が実現されるだけでなく、製品チャンバ内部での氷晶の非常に有効な分布も実現でき、製品チャンバ内に高圧の風が発生しないと考える。それは、ガス伝達ラインの小さい直径と製品チャンバの大きい容積との間で得られた比により、流入時のフラッシングガスの擾乱を減少させ、しかも十分の量の氷晶を取り込むのに十分な量のガスを冷却装置を通って吸引するような圧力差を生じさせる、ということであってよい。
ある有利な実施形態において、凝縮チャンバをフラッシングガスのためのガス通路又はガス貯蔵部として使用することにより、凝縮チャンバの冷却設備であって、ある有利な実施形態において、すでにその中に存在する冷却リブを含む冷却設備を使って、フラッシングガスをさらに冷却すること、すなわちフラッシングガスが、製品チャンバへと流される予定の、冷却装置内の氷晶を溶解させるリスクを下げることができる。
【0014】
ある実施形態において、「水性製品」とは、その最も広い意味で、すなわち、何れかの構造、細胞、細隙、及び/又は表面が流体の形態の、すなわち気体又は液体である水を含む生物学的、化学的、天然製品を含むと定義される。水性製品の好ましい下位群は、例えば溶液中の液体の水性製品、例えば液体の医薬品、液体の化粧品、液体の食料又は飼料、液体の栄養補助食品、液体の化学薬品、液体の添加物その他である。
【0015】
ある実施形態において、「蒸気」とは、水蒸気で飽和した気体の水蒸気含有量に関する所定の体積%の水蒸気を含む気体の体積と定義され、これは5vol%より大きく、好ましくは10vol%より大きく、より好ましくは25vol%より大きく、さらにより好ましくは50vol%より大きく、最も好ましくは75vol%より大きいという範囲である。水蒸気vol%のこの定義は本明細書全体を通じて使用される。
【0016】
ある実施形態において、「フラッシングガス」とは、所定の体積%の乾燥気体を含む気体の体積、すなわち50vol%未満、好ましくは40vol%未満、より好ましくは30vol%未満、さらにより好ましくは20vol%未満、最も好ましくは10vol%未満、特に4vol%未満の範囲の水蒸気を含む気体と定義される。幾つかの適当な乾燥気体は空気、窒素、又はその他である。
【0017】
凝縮チャンバに接続されたガスポンプは、典型的に真空ポンプであり、好ましくはフリーズドライ中の昇華中に排気するために使用されるものと同じガスポンプである。「真空」という用語は、本明細書においては、大気圧未満、すなわち1000mbar未満の圧力と理解される。
【0018】
「弁」とは、本明細書において、真空、大気圧、わずかな超過圧力等の様々な圧力で動作する、フリーズドライヤで使用するためのあらゆる適当な管開閉装置、すなわちダイアフラム弁、ポート、逆止弁と理解されたい。
【0019】
凝縮チャンバは、第1ガス流方向への吸引中に吸引される蒸気のためのガス通路を提供する。好ましくは、凝縮チャンバ内にすでにあるガスと、ガス伝送ラインを介して凝縮チャンバを通って吸引された蒸気は、同じガスポンプによって凝縮チャンバにわたって吸引される。それにより、製品チャンバ、冷却装置、ガス伝送ライン、及び凝縮チャンバ内では、好ましくは少なくとも製品チャンバ内で約30~6mbarの圧力レベルが実現されるまで、圧力低下が起こる。
【0020】
さらに、凝縮チャンバは、第2ガス流方向に運ばれたフラッシング空気のための、この量のフラッシングガスが冷却装置中の氷晶を取り込むために使用されるときのガス通路及び/又はガス貯蔵部を提供し、好ましくは、凝縮チャンバは、ガス伝送ラインの第1弁を開く前のフラッシングガス貯蔵部として機能し、貯蔵されているフラッシングガスは冷却装置内での有効なフラッシングと取込み動作のために大気圧程度又はそれより高い圧力レベルに到達する。
【0021】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、ガス伝送ラインは少なくとも第1弁を含み、これは冷却装置と凝縮チャンバとの間に配置され、第1ガス流方向と第2ガス流方向を切り替えるときに閉じるように適合される。第1弁をそこに提供することにより、この第1弁を開くまで凝縮チャンバをフラッシングガスの貯蔵部として使用でき、その後は、凝縮チャンバはガス通路と、好ましくはガス貯蔵部の両方を提供する。第1弁が提供されていない場合、フリーズドライヤの凝縮チャンバはガス通路のみとして機能する。切り替え中、好ましくは、第5弁は閉じ、ガスポンプが止まったときに凝縮チャンバ内で得られた低圧を保持する。代替案において、第1弁は冷却装置と製品チャンバとの間に位置付けられる。
【0022】
さらに、本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、フラッシングガス供給部が提供され、すなわち、凝縮チャンバは少なくとも第2弁を通じてフラッシングガス、例えば乾燥空気又は窒素等の供給源に、前記フラッシングガスを前記ガス通路及び/又はガス貯蔵部に提供するために接続される。50vol%未満、好ましくは40vol%未満、より好ましくは30vol%未満、さらにより好ましくは20vol%未満、最も好ましくは10vol%未満の範囲の水蒸気を含む気体として定義される乾燥空気は、外部の周囲大気から、又は加圧空気若しくは窒素容器から直接提供されてもよい。乾燥空気のこの供給と閉じた前記第1弁は有利であり、それは、これによって圧力差が生じ、すなわち凝縮チャンバ内の圧力が、この段階では約30~5mbarの範囲の低圧であるべき製品チャンバ内の圧力より高くなるからである。凝縮チャンバ内で適当な圧力差に到達した、例えば大気圧、又は約950mbarから大気圧を上回るまでの範囲内、例えば最高1800mbarの圧力に到達したところで第1弁を再び開くと、この圧力差が、このようにして凝縮チャンバ内に貯蔵されていたフラッシングガスが、ガス伝送ラインの中及び冷却装置を通るように吸引され、又は運ばれ、フラッシングガスはその中の氷晶を取り込んでそれを製品チャンバへ運び、製品を核生成することを確実にする。
【0023】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、隔離弁は製品チャンバから蒸気を吸引している間及び冷却装置の中にフラッシングガスを運んでいる間に閉じるように適合されている。それによって、蒸気がガス伝送管を通って第1ガス流方向に確実に吸引され、それが容易にされ、フラッシングガスが冷却装置を通って第2ガス流方向に確実に運ばれ、それが容易にされる。
【0024】
本発明によるフリーズドライヤのある実施において、ガス伝送ラインは、凝縮チャンバと冷却装置との間に配置されたガスフィルタを含む。主な利点は、ガスフィルタが、フラッシングガスが第2ガス流方向に運ばれている間に、凝縮チャンバから発生するあらゆる塵埃、氷霧、及び/又は氷晶を除去できることである。これにより、承認されない核生成のための核が製品の中に落下して核生成するリスクが低減し、この核は、衛生面から、それに適した冷却装置の中で生産されることが承認されない。別の利点は、冷却装置内で生成された氷晶が蒸気の中で第1ガス流方向を辿り、凝縮チャンバの中に溜まるリスクも低減することである。任意選択により、ガス伝送ラインは又、ガスフィルタと凝縮チャンバとの間に配置された第3弁も含む。それによって、ガスフィルタを挟む圧力差を制御された状態に保つことができるため、ガスフィルタの完全性を向上させることができる。これは、第1弁が閉じているときに第3弁を閉じ、第1弁が開いているときに第3弁を開くことによって制御できる。
【0025】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、冷却装置は製品チャンバに直接接続され、すなわち何れの弁又はポートとも相互接続されない。それによって、冷却装置の内部空間が製品チャンバ内と同じ圧力に確実に保持される。これによって、内部で生成された氷晶が、フラッシングガスがそれを運ぶ間にそれにぶつかり、取り込む前に緩むリスクが低くなることが確実になる。
【0026】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、冷却装置は製品チャンバの一部を形成する。それによって、冷却装置は部分的又は全体的に真空の承認済み製品チャンバの境界の中に提供できる。これには、GMP部品としての別の分類が必要となりうる。
【0027】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、冷却装置は、内側冷却表面を有する少なくとも1つの管状パイプを含み、そこに氷晶が形成され、その表面はパイプの空洞を取り囲み、管状パイプは反対側の端を有し、少なくとも一方の端はガス伝送ラインに接続されて、その一部を形成する。それによって、GMPフリーズドライプラントの一部としてすでに承認された、例えば衛生パイプと呼ばれる直径2インチの管状パイプがこのような冷却装置の中に直接適用されてよい。これは、冷却装置のGMP承認を受けやすくする。さらに、フラッシングガスがこのような管状パイプの冷却表面上に形成された氷晶を通過するように運ばれると、このガスは容易に氷晶を取り込み、すなわち氷晶をそのような表面から緩めてはぎ取ることができる。管状パイプがそのようなGMP承認済みの衛生パイプである場合、特定の品質の冷却表面の平滑さが適用され、それによって氷晶を取り込みやすくなる。冷媒、すなわち熱伝達流体とも呼ばれる冷却流体は好ましくは、冷却表面をその外側から熱伝導式に取り囲み、冷却空間内のガスを冷やす。
【0028】
その好ましい実施形態において、冷却装置は、ガス伝送ラインの中に平行に及び/又は直列に配置された複数の管状パイプを含む。これにより冷却力が高まり、冷却装置の冗長性がさらに増大し、それによって生成される氷晶の量が増える。管状パイプは、平行若しくは混合された構成で、又はより大型のフリーズドライヤの場合に有利でありうる交互の構成で提供されてよく、使用される寸法は複数の管状チューブの導入に容易に対応する。より小型のフリーズドライヤの場合、管状パイプの平行又は混合構成が、よりコンパクトな冷却装置にとって有利でありうる。
【0029】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、冷却装置又はガス伝送ラインにはガス入口が設けられ、これは冷却装置の下流又は上流での水蒸気注入のための第4弁を含む。それにより、より多くの量の蒸気が冷却装置に到達するという点で、冷却装置内で適切な量の氷晶をさらに確実に生成できる。このような水蒸気は蒸気であってよく、又は業界でのいわゆるクリーンスチームサプライであってもよく、これは無菌の清浄な水を気体又は蒸気の形態で提供する。有利な実施形態において、第4弁を通じてプロセスに加えられる水の量は、正確な規定量の投入によって、又は測定によって制御することが可能である。
【0030】
本発明によるフリーズドライヤのある実施形態において、これは、フリーズドライの対象となる製品中に以下のステップによって核生成を誘発するために使用される:
a)製品チャンバ内の製品を過冷却状態まで冷却するステップと、
b)ガスポンプを使って、蒸気をガス伝送ラインを介して製品チャンバから第1ガス流方向に冷却装置を通り、その後、凝縮チャンバを通って吸引し、その間に冷却装置内の蒸気を冷却することによって、その中で氷晶を生成しているステップと、
c)フラッシングガスを第1ガス流方向とは反対の第二ガス流方向に、凝縮チャンバからガス伝送ラインを介して冷却装置を通り、製品チャンバの中へと運び、冷却装置からの氷晶が製品チャンバへと流され、その中の製品の制御された核生成が誘発されるようにするステップであり、上記のステップa)、b)、及びc)はフリーズドライプロセスの一部として製品の昇華が起こる前に実行される。
【0031】
フリーズドライヤの中でのフリーズドライの対象となる水性製品の制御された核生成を誘発する本発明の方法によれば、それは:
a)フリーズドライヤの製品チャンバ内の製品を過冷却状態まで冷却するステップと、b)蒸気を製品チャンバからガス伝送ラインを介して第1ガス流方向に冷却装置を通り、フリーズドライヤの凝縮チャンバを通って吸引し、その間に冷却装置の中の蒸気を冷却することによって、その中で氷晶を生成しているステップと、c)フラッシングガスを前記第1ガス流方向とは反対の第2ガス流方向に、凝縮チャンバからガス伝送ラインを介して、冷却装置を通って製品チャンバの中へと運び、冷却装置からの氷晶が製品チャンバの中へと流されて、その中の製品の制御された核生成が誘発されるようにするステップと、を含み、上記のステップa)、b)、及びc)は、フリーズドライヤの中でのフリーズドライプロセスの一部として製品の昇華が起こる前に行われる。
【0032】
それによって、フリーズドライヤの有効な使用と核生成の方法が提案され、これは、先行技術の前述の欠点を解決する。これは、工業用の種類とサイズのフリーズドライヤのほか、実験室用の、より小型のフリーズドライヤに直接適用可能である。これは、GMP要求事項が適用されるフリーズドライプラントでの使用も可能であり、それは、ガス伝送ライン及び冷却装置がすでに実装された構成要素であり、GMP要求事項に基づいて承認され得るからである。GMPではここでは核生成のための核として使用される氷晶として十分に高いレベルまで無菌にできないと分類される凝縮チャンバ内では、核生成のための氷晶が生成されない。その代わりに、滅菌製品チャンバから発せられる蒸気の形態の清浄な無菌の湿気が氷晶生成のために使用される。
【0033】
本発明により、これまでの方法には以下のような欠点があることがわかる:冷却装置内の氷晶を取り込むために強力な風が必要であるが、製品を物理的に動かすほど強力であってはならない。氷霧(氷晶ではない)の使用は、製品の核生成を均一に分布させにくいことがわかっており、強力な風又は擾乱を使ってもうまくいかず、これは、すると氷霧がバイアルの側面と製品チャンバの内面に付着するからである。取込みに必要な強力な風は、例えば国際公開第2014028119号又は欧州特許第3093597号により提案されている、より小型の氷チャンバの容積では実現できない。これらの何れも、貯蔵/通路として凝縮チャンバを使用したときに提供されるような大量のフラッシングガスを使って小さい容積の氷生成器から取り込むことを提案していない。又、出願人による試験中に、有効な取込みは、冷却装置の容積と凝縮チャンバの容積との比が0.15m/5~8m=0.02~0.03の、約10~12mの製品チャンバの容積で実現できることがわかった。
【0034】
方法と使用のステップは、必要に応じて複数回実行されてよい。しかしながら、核生成サイクルは1回だけ行い、それによってフリーズドライヤを、例えば上述の比で、必要な数の氷晶が生成されて取り込まれ、製品チャンバ内のすべての製品に均一で十分な核生成が生じるような寸法とすることが好ましい。
【0035】
幾つかの実施形態において、氷晶が含まれる冷却装置が凝縮チャンバからのガスで流される前に、排気された凝縮チャンバは、好ましくは乾燥空気又は窒素を使って加圧される。それによって、依然として排気された状態の製品チャンバと加圧又は通気された凝縮チャンバとの間に圧力差が生じる。この圧力差により、乾燥ガスが凝縮チャンバから冷却装置を通って高速で流れ、氷の粒子を製品チャンバへと流す。製品チャンバはそれによって、5秒未満、好ましくは2~3秒未満で約100~300mbarまで再加圧される。
【0036】
本発明の方法は、従来のフリーズドライ中に液体製品を加熱し、昇華させるために製品チャンバが排気される前の、過冷却製品の核生成によって製品の素早く均一な凍結を誘発するための事前ステップである。蒸気は、製品の昇華によるのではなく、製品チャンバから吸引され、冷却装置の中で冷却されて、その中に氷晶を生成する。その後、ガスが凝縮チャンバから冷却装置を通って吹き込まれ、それによって氷晶がはがされて製品チャンバへと流され、そこで液体製品と接触して核生成が誘発される。
【0037】
本発明による方法のある実施形態において、それは、凝縮チャンバからガス伝送ラインを介して運ばれるフラッシングガスが、凝縮チャンバと冷却装置との間のガス伝送ライン内に配置されたガスフィルタによりろ過されることをさらに含む。ガスフィルタは、フラッシングガスを第2ガス流方向に運んでいる間に凝縮チャンバから発するすべての粒子、氷霧、及び/又は氷晶を除去することができる。これによって、何れかの承認されていない核生成のための核が製品の中に落下して核生成されるリスクが低減し、この核は、衛生面から、それに適した冷却装置内で生成されることが承認されない。
【0038】
本発明による方法のある実施形態において、それは、製品チャンバから吸引された蒸気が、凝縮チャンバにガス伝送ラインとは別の真空ラインを介して接続されたガスポンプを使って吸引されることをさらに含む。フリーズドライ中に排気のためにすでに存在するものと同じガスポンプを使用することには、別のGMP承認を必要とせず、直接ガス伝送ライン上にあるポンプを必要とせず、工業用フリーズドライヤをより複雑にしないという利点がある。又、プラント全体のコストも削減される。
【0039】
本発明による方法のある実施形態において、それは、製品チャンバと凝縮チャンバを接続する隔離弁をさらに含み、この隔離弁は、少なくともステップb)の間に閉じられる。そのようにして、製品チャンバからの蒸気は、開いた隔離弁を介してではなく、ガス伝送ラインとその中の冷却装置のみを介して吸い出される。
【0040】
本発明による方法のある実施形態において、それは、隔離弁がステップc)の間に閉じられることをさらに含む。このようにして、最大量のフラッシングガスが冷却装置内の最大量の氷晶を取り込むためにガス伝送ラインを通じて運び戻される。本発明による方法のある実施形態において、それは、隔離弁がステップb)の前に閉じられることをさらに含む。すると、製品を過冷却状態まで冷却するステップは、直接的なトレイ冷却を通じて実現される。
【0041】
本発明による方法のある実施形態において、それは、ステップc)の前の、凝縮チャンバをフラッシングガスの貯蔵部として充填するための充填ステップ中に、凝縮チャンバに、乾燥大気又は窒素の供給源からのフラッシングガスを第2弁を通じて提供することをさらに含む。それによって、すでに利用可能なフリーズドライヤの構成部品、すなわち凝縮チャンバを貯蔵部として、及びステップc)ではフラッシングガスのガス通路として使用して、十分な量のフラッシングガスが核生成のために提供される。
【0042】
本発明による方法のある実施形態において、それは、少なくともステップa)、b)、c)及び昇華中の真空乾燥とは別のステップにおいて、少なくとも冷却装置が、動作後に、その中に高温スチームを運ぶことによって殺菌されることをさらに含む。冷却装置の好ましい実施形態においては管状の内側パイプがそのような殺菌プロセスに適したGMP承認を受けたパイプであることを考慮して、GMP承認を受けたフリーズドライヤの従来の高温スチーム殺菌がここで使用されてよい。好ましくは、製品チャンバ及びガス伝送ラインも又、これらもGMP承認を受けている場合、そのように殺菌される。
【0043】
本発明による方法のある実施形態において、それは、ステップa)がステップb)の前又はその最中に行われることをさらに含む。時間を節約するために、隔離弁を閉じた状態で、ステップa)及びb)を同時に実行できる。そうでなければ、隔離弁を開いてまずステップa)を実行し、その後、隔離弁を閉じてステップb)を実行できる。
【0044】
本発明による方法のある実施形態において、それは、冷却装置の冷却表面の温度が、ステップb)中に、任意選択によりステップb)の前及び/又は後に、-30℃~-90℃、好ましくは-50℃~-70℃の範囲であることをさらに含む。それによって、この冷却表面上の氷晶としての霜の有効な形成が確実に起こる。
【0045】
本発明による方法のある実施形態において、ステップc)中に、制御された、規定量の無菌水が、好ましくは水蒸気の形態で冷却装置へと、任意選択により第4弁を介して、ガス伝送ラインを通って導入されることをさらに含む。それによって、冷却装置内で発生した氷晶の少なくとも最低量が製品チャンバに導入されるように制御することが可能である。
【0046】
本発明による方法のある実施形態において、それは、ステップa)、b)、及びc)が実行された後でのみ、凝縮チャンバが製品をフリーズドライするために冷却されることをさらに含む。それによって、核生成終了後前に凝縮チャンバの何れかの内面上に何れかの氷晶が形成されるリスクを最小限にすることができる。
【0047】
本発明による方法のある実施形態において、ステップc)において乾燥フラッシングガスが適用され、ステップc)中に凝縮チャンバ内で前記乾燥フラッシングガスが冷却される。任意選択により、乾燥ガスは第2弁を通じて導入される。乾燥フラッシングガスは、例えば乾燥空気又は窒素であってもよい。フラッシングガスを冷却することにより、フラッシングガスが冷却装置内の氷晶の何れかを溶解させるあらゆるリスクが回避される。好ましくは、乾燥ガスは、氷晶を形成せずに-40℃まで冷却するのに十分に乾燥している。
【0048】
以下に、本発明の実施形態を下記のような図面を参照しながら説明するが、図中、同じ参照番号は同じ特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明によるフリーズドライヤのある実施形態の概略レイアウトを示す。
図2】冷却装置の第1実施形態の断面図を示す。
図3a】冷却装置の第2実施形態の、その長さ方向の側面図を示す。
図3b】冷却装置の第2実施形態の、その長さ方向の側面図を示す。
図4a】冷却装置の第3実施形態の、外側パイプのある場合の3D図を示す。
図4b】冷却装置の第3実施形態の、外側パイプのない場合の3D図を示す。
図5a】冷却装置の第4実施形態の、外側パイプのある場合の3D図を示す。
図5b】冷却装置の第4実施形態の、外側パイプのない場合の3D図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1にフリーズドライヤが示され、これは製品チャンバ12を含み、そこにスタック式の棚40、42が格納され、その上に液体製品を収容したバイアル44が配置されている。凝縮チャンバ16は、ガス通路を介して製品チャンバ12に直接接続される。隔離弁36が既知の方法で、ガス通路を開閉するためにキノコ弁の形態で提供され、ここでは隔離弁36は閉じた状態に示されている。凝縮チャンバ16は凝縮コイル50を含み、その中を冷却流体が通ってもよく、小さい矢印が凝縮チャンバ16内に含まれる何れかのガスの蒸気の凝縮を実現するために冷却流体が冷却パイプの端52に出入りすることを示すことを参照されたい。それによって、フリーズドライヤは、1)加熱/冷却システム46を使って製品を凍結させることと、2)1~10mbar程度のほぼ真空の低圧まで排気させ、加熱/冷却システム46を使ってバイアル44中の製品を均一に加熱している間に、凍結製品中の水を三重点で昇華させることを含む従来のフリーズドライサイクルで動作させることができる。しかしながら、凍結及び乾燥の前に、液体製品のフリーズドライの分野では、核生成の誘発を提供することが望まれている。
【0051】
図1には、本発明の1つの実施形態による、製品中の核生成を誘発するためのフリーズドライヤが示されており、このフリーズドライヤは、製品チャンバ12と凝縮チャンバ16をガス輸送式に接続するガス伝送ライン20を含む。これは、蒸気が製品チャンバ12から凝縮チャンバ16へとガス伝送ライン20を介して、斜線入りの矢印で示される第1ガス流方向に輸送できることを示している。乾燥空気等のフラッシングガスも又、凝縮チャンバ16からガス伝送ライン20に沿って製品チャンバ12へと、白い矢印により示される、第1ガス流方向と反対向きの第2ガス流方向に輸送され、又は運搬できる。
【0052】
ガス伝送ライン20は冷却装置22を含む。図1において、冷却装置22はフリーズドライヤの上部分に提供されている。しかしながら、冷却装置は又、そのどの面にも、フリーズドライヤの底部にも、さらには製品チャンバの一体部分としてガス伝送ライン20に接続されても提供されてよい。ガス伝送ライン20は又、ガスフィルタ34と、ガス伝送ライン20を開閉するように適合された第一及び第3弁V1、V3も含む。第1ガス流方向に関して、冷却装置22は、製品チャンバ12の下流であり、且つ第1弁V1の上流に配置され、ガスフィルタ34は冷却装置22及び第1弁V1の下流であり、且つ凝縮チャンバ16の上流に配置され、第3弁V3はガスフィルタ34と凝縮チャンバ16との間に配置され、第1弁V1は冷却装置22とガスフィルタ34との間に配置される。
【0053】
有利な点として、追加の蒸気ガス入口32がガス伝送ライン20に接続されて、製品チャンバ内の、及び製品からの蒸発による蒸気が冷却装置22内で必要な量の氷晶を生成するのに不十分である場合に、追加の水蒸気を冷却装置22に供給する。ガス入口32は、ガス入口32を開閉するための第4弁V4を含む。追加の水蒸気は、その中でさらに氷晶を発生させるために、好ましくは水蒸気が第1ガス流方向に流れるときにその上流端において冷却装置22に注入されてよい。
【0054】
凝縮チャンバ16は、乾燥ガス入口弁V2、すなわち凝縮チャンバ16を乾燥ガス、例えば乾燥空気又は窒素の供給源に接続するための第2弁を有する。第2弁V2は、凝縮チャンバ16の中に貯蔵される、又はそれを通過するフラッシングガスを提供する。第2弁V2は、乾燥ガス供給源(図示せず)である、周囲の大気又は加圧窒素ガス容器又はその他を閉じ、又はその中へと開放するためのものである。真空ポンプの形態のガスポンプ18は、第5弁V5を含む真空ライン30を介して凝縮チャンバ16に接続される。
【0055】
以下に、本発明による製品の制御された核生成を誘発する方法の実施形態を説明する。
【0056】
溶液中のワクチン等の液体製品を含むバイアル44が、製品チャンバ12内のトレイ又は棚40、42上に載せられる。チャンバ12とその内容物は、従来の方法で事前に殺菌されてもよい。製品チャンバ12と凝縮チャンバ16との間の隔離弁36は、本発明の方法のすべてのステップ中に閉じたままであってもよく、又は製品を過冷却状態に冷却している間に開いたままとされてもよい。
【0057】
冷却装置22のその内側冷却表面(詳しくは後述する)上の温度は、-30℃~-90℃の範囲の、好ましくは-50℃~-70℃の範囲の温度まで下げられる。
【0058】
製品チャンバ12内の製品の冷却は、隔離弁36を閉じ、加熱/冷却システム46によって液体製品を含むバイアル44が載せられている棚40、42を介して直接、過冷却状態まで、大気圧(海抜ゼロメートル)で、製品が核生成を誘発されずに凍結しない約0℃以下の温度で冷却することによって行われる。製品を過冷却状態に保持できる温度は又、フリーズドライされる製品の種類と構成にも依存する。過冷却状態は好ましくは、すべての製品において均一な温度が確実に得られるようにするために、製品チャンバ内にあるバイアル又は容器の数と大きさに応じて、約10~180分の範囲の時間である所定の時間にわたり保持されてよい。
【0059】
大気圧(海抜ゼロメートル)での液体製品の幾つかの例は以下のとおり:
-5%ショ糖液は、-6℃又はそれよりわずかに高い温度に到達するまで過冷却される。
-3%マンニトール液は、-7℃又はそれよりわずかに高い温度に到達するまで過冷却される。
-1%NaCl、3%マンニトール液は、-8℃又はそれよりわずかに高い温度に到達するまで過冷却される。
【0060】
換言すれば、製品の過冷却状態が生じさせられる。液体溶液において、これは多くの場合、-5℃~-10℃の範囲内の温度で、大気圧で起こる。この温度範囲は又、生物製剤及びバイオ医薬品等のその他の水分含有量の多い製品、例えば凝固因子、細胞培養ワクチン、免疫グロブリン、生物工学製品、モノクローナル抗体成長因子、サイトカイン、遺伝子組み換えワクチン、たんぱく質、コラーゲンその他にも適用される。核生成を誘発するためのフリーズドライヤと方法は、その他の水分を多く含む製品、例えば魚介類、スープ、果物、食肉その他にも応用可能であってよい。
【0061】
次に、隔離弁36は閉じられるか、又は閉じたままとされる。すると、製品チャンバ12からの蒸気は、ガスポンプ18を使ってガスフィルタ34及び凝縮チャンバ16を経て別の真空ライン30にわたり排気されることによって、ガス伝送ライン20を介して冷却装置22の中へと吸引されて、その中で氷晶が生成される。あるいは、蒸気は製品を過冷却状態まで冷却している間に製品チャンバ12から引き出されてもよい。製品チャンバ内では低圧、すなわち30mbar未満の範囲に到達する。これは、弁V1、V3、V5を開き、弁V2及び隔離弁36を閉じた状態で、ガスを製品チャンバ12からガス伝送ライン20を介して、又真空ポンプ18によって凝縮チャンバ16を通って吸引することによって実現される。
【0062】
冷却装置22で氷晶を生成するために製品チャンバ12から吸引される蒸気の発生源は:
a)バイアル44内の液体製品の自然蒸発、
b)バイアル44間及び製品チャンバ12内の残留湿気又は湿気を含んだガス
である。
【0063】
任意選択により、この吸引中に、弁V4を開いてガス入口32から冷却装置22の中又はその上流に清浄な水蒸気を注入することにより、湿気を含んだガスを追加で注入してもよい。
【0064】
好ましくは、凝縮チャンバ16は、冷却装置22内で氷晶を形成するために製品チャンバ12から蒸気を吸引している間に冷却せず、凝縮チャンバ16内では氷晶が形成されないようにする。
【0065】
冷却装置22内で十分な氷晶が形成されたら、第1弁V1及び第3弁V3が閉じられ、冷却装置22のその冷却空間内で製品チャンバ12内と同じ圧力レベルが保たれる。あるいは、第1弁V1又は第3弁V3の何れかが閉じられる。
【0066】
第2弁V2が開かれて、窒素(図示せず)が凝縮チャンバ16内に供給され、大気圧に到達するまで満たされ、その後、第2弁V2が再び閉じられる。
【0067】
第1弁V1及び第3弁V3が、同時に、又は好ましくは第1弁V1の次に弁V3の順に開かれ、それによって凝縮チャンバ16から製品チャンバ12へのガス伝送ライン20を通じた通路が開かれる。第5弁V5を閉じて、ガスポンプ18を保護し、凝縮チャンバ16の内部を低圧に保つことができるが、この弁V5は任意選択による。ここで生じた、10mbar未満の圧力の製品チャンバと大気圧以上の凝縮チャンバ16との圧力差によって、凝縮チャンバ16内に含まれる乾燥フラッシングガスの強力な流れがガス伝送ライン20に沿って冷却装置22を通り、製品チャンバ12へと運ばれることになる。この冷却装置22を通るフラッシングガスの流れは、冷却表面24から氷晶をはぎ取り、これらを製品チャンバ12の中へと流す。液体製品は氷晶と接触すると、その過冷却温度によって核生成を開始し、これは均一に、又試験結果が示しているように、実質的に即座に同時に行われ、それによって製品が一貫して均一に凍結し、その結果、フリーズドライヤの所有者又はオペレータに均一な品質及びより長い保管安定性を示す高品質の乾燥製品が提供される。
【0068】
ガス伝送ライン20に沿って移動している間に、乾燥フラッシングガスはガスフィルタ34を通過して、凝縮チャンバ16からフラッシングガスを介していかなる汚染物も取り込まれないようにされ、それによって製品及び製品チャンバの衛生と無菌状態が保たれる。フラッシングガスによる液体製品の汚染は、特にGMP条件下では回避する必要がある。
【0069】
核生成が開始したら、第1弁V1及び第3弁V3(ここでも同様に、あるいはV1又は弁V3)が閉じられ、隔離弁36が開かれる。真空ポンプ18を使って製品チャンバ12及び凝縮チャンバ16内が真空にされ、その間に凝縮チャンバ16が冷却されて、液体製品の従来のフリーズドライプロセスに対応する方法で手順が進められる。
【0070】
図2は、冷却装置22の第1実施形態を示す。冷却装置22の構成要素は管状パイプ、すなわちパイプの長軸Aの周囲に内側空間26を含む長い円筒形の内側パイプ21である。パイプ21は、ガス伝送ライン20の断面に対応する断面を有する。有利な実施形態において、それはガス伝送ライン20の一体部分を形成し、ある実施形態において、それは長さ500mmのGMP承認されたタイプの直径2インチ径パイプである。内側パイプ21は反対側にある2つの端23、25を有し、その各々は、図示されるように、機械的に、又は溶接により、ガス伝送ライン20のそれぞれの部分に接続される。あるいは、これらの端23、25のうちの一方だけがガス伝送ライン20に接続され、もう一方の端は製品チャンバ12に接続されるか、又はある実施形態において、内側パイプ21はガス伝送ライン20の一体部分を形成するか、若しくはそのパイプ部分を形成する。蒸気は、内側パイプ21の内側空間26の内部でガス伝送ライン20を通って第1ガス流方向に流れる、又は運ばれる際、第2端25から冷却装置22に入り、第1端23から出る。冷却装置22は内側空間26を取り囲む冷却表面24を含み、冷媒が冷却表面24の背後を流れるときに冷却を行い、より詳しくは後述のとおりである。それによって、ガス中の蒸気はこの表面24上で水滴として凝縮し、この小滴は表面24から引き続き冷却されることによって氷晶となる。
【0071】
フラッシングガスが第1ガス流方向と反対の第2ガス流方向に入ると、フラッシングガスは第1端23から内側パイプ21に入り、前記内側空間26の中で内側パイプを通って流れ、第2端25から出て、そこから製品チャンバ12へと運ばれる。内側パイプ21は内側空間26を取り囲み、その中で蒸気は氷晶として堆積し、フラッシングガスが堆積した氷晶に沿って、その内部で流れる。内側空間26は内側パイプ21の内面である冷却表面24により取り囲まれる。内側パイプ21を通って流れるとき、ガスは冷却表面24に沿って流れ、これがガスから熱エネルギーを受け取ってそれを冷却する。冷却表面24は、少なくとも核生成プロセス中は連続的に冷却されたままとなる。あるいは、冷却表面24は、蒸気が入り、凝縮して氷晶となった後までのみ冷却されてもよい。
【0072】
内側冷却空間26の冷却表面に触れて吸引される蒸気から受け取られた熱エネルギーは、様々な代替案に応じてそこから案内されてよい。図2は、内側パイプ21を取り囲み、液体窒素等の冷媒がその中を通過する外側空間28を画定する外側円筒パイプ27を示している。冷媒は内側パイプ21の外表面29に沿って運ばれ、そこでこれは内側パイプ21及びその中の蒸気からそれぞれ熱エネルギーを引き出す。熱エネルギーは冷媒が外側空間28の中を続き流れることにより、継続的にそこから案内される。冷媒は、図示されていない冷媒ポンプを使って、入口ポート28aから外側空間28に入り、出口ポート28bを通って外側空間28から出る。
【0073】
図3A及び3Bは、冷却装置22の第2実施形態を示す。2つの冗長的な冷却コイル285a、285bが円周方向に、内側パイプ21の長さ方向に沿って中央に提供された除き窓SGのそれぞれの側に1つずつの2つの螺旋コイルの形状で提供される。2つのコイル285a、285bは、外側パイプ27(図3A及び3Bでは図示せず)と内側パイプ21との間の外側空間28内に提供される。しかしながら、当業者であれば、その知識を応用して、そのようなコイルを1つのみ、又はそのようなコイルを3つ以上提供することができる。少なくとも2つの冷却コイルを提供することにより、これらの一方が故障しても冷却装置22は依然として冷却装置22内に冷却表面24を提供する。
【0074】
図4a及び4bは、冷却装置22の第3実施形態を示す。図4aは、冷却装置22の封入された状態を示しており、この場合、外側空間28は外側パイプ27により取り囲まれている。図4bは、外側パイプ27を取り外した冷却装置22を示し、冷却装置22のさらに詳細部分を示している。
【0075】
図4a及び4bに示されるように、冷却コイル285a、285bの1つ又は複数は、内側パイプ21と外側パイプ27(図4Bでは図示せず)との間に配置された外側空間28内に配置されてよい。冷媒は冷却コイル285a、285bの中を、好ましくは連続的に流れ、それによって内側パイプ21の中にガスがあるとこれを連続的に冷却する。熱伝達媒体は、有利な態様として、外側パイプ27と内側パイプ21との間の外側空間28内に提供され、冷却コイル285a、285bを取り囲む。熱伝達媒体は、シリコーンオイルであってよい。
【0076】
冷却コイル285a、285bには、好ましくは内側パイプ21の長軸Aに平行に配置された長さ方向のコイル要素が提供される。2つの長さ方向のコイル要素56は、円周方向に相互隣り合わせに配置され、その反対側の長さ方向においても同様である。隣接するコイル要素56は、それらの接続端においてU字型の要素58により接続される。それによって、冷媒は内側パイプ21に沿って、螺旋コイルの場合の円周方向ではなく(図3A及び3B参照)、内側パイプ21に平行な長さ方向に案内される。これによって、内側パイプ21に沿って、その長さ全体にわたり均一な温度分布が実現され、その結果、熱伝達が改善される。
【0077】
冗長性は、少なくとも2つの別々の冷却コイル285a、285bを提供することによって実現される。異なる冷却コイル285a、285bの長さ方向のコイル要素56は、好ましくは隣接して配置され、それによって異なるコイル285a、285bの長さ方向のコイル要素は円周方向に交互となる。その結果、冷却分布が改善され、あるコイル回路が故障しても、それぞれ残りの回路により均一な冷却分布を実現できる。
【0078】
図5A及び5Bは、冷却装置22の第4実施形態を示す。外側空間28は熱伝達媒体入口62に接続され、フィルタ60に接続される。シリコーンオイル等の熱伝達媒体は、例えばガス伝送ライン20及び内側パイプ22の殺菌時等の加熱中に膨張することが多い。フィルタ60は水分フィルタであり、空間28から自由に空気を出し入れし、湿った空気を逆に吸引することによって媒体内に水分が入るリスクを伴わない。図5Aは冷却装置の封入された状態を示し、この場合、外側空間28は外側パイプにより取り囲まれている。図5Bは、外側パイプを外した冷却装置22を示し、冷却コイルの配置をよりよく示しており、これらは図4B及び4Bに示される実施形態と同じである。さらに、温度プローブ64が提供され、これは熱伝達媒体の温度を調節し、制御する。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B