(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】糖カルボニルの水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させる方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/85 20060101AFI20221202BHJP
C07C 47/19 20060101ALI20221202BHJP
C07C 45/86 20060101ALI20221202BHJP
A23L 5/48 20160101ALI20221202BHJP
【FI】
C07C45/85
C07C47/19
C07C45/86
A23L5/48
(21)【出願番号】P 2019556364
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 CA2018050741
(87)【国際公開番号】W WO2018191826
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-06-15
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515228003
【氏名又は名称】ケリー ルクセンブルク エス.アー.エール.エル.
【氏名又は名称原語表記】Kerry Luxembourg S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】17 rue Antoine Jans Luxembourg L-1820 GRAND DUCHY OF LUXEMBOURG
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ピスコーズ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】マイエルスキ,ピョートル
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110079(JP,A)
【文献】特表2012-528711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0022912(US,A1)
【文献】国際公開第2005/044917(WO,A1)
【文献】米国特許第05756140(US,A)
【文献】米国特許第05393542(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/00
C07C 47/00
A23L 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド、ヒドロキシアセトアルデヒド、及び糖の熱分解によって調製される他のカルボニル化合物を含有する水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させる方法であって、前記方法が、
a)システインを前記水溶液に添加すること;及び
b)前記水溶液を、前記ホルムアルデヒド及び前記システインがメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持して前記水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成すること;
を含み、
c)ホルムアルデヒドの前記最終濃度は、前記水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の50%以下であり、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記最終濃度は、前記水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の50%以上である、前記方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒドの前記最終濃度は、ホルムアルデヒドの前記初期濃度の50%よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホルムアルデヒドの前記最終濃度は、ホルムアルデヒドの前記初期濃度の10%よりも低い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ヒドロキシアセトアルデヒドの前記最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記初期濃度の50%よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒドロキシアセトアルデヒドの前記最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記初期濃度の80%よりも高い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液は、初期量のホルムアルデヒドを有し、所定量のシステインが前記水溶液に添加され、前記初期量のホルムアルデヒドに対する前記溶液に添加されるシステインの前記量のモル比は、1:2~1:10の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モル比は、1:3~1:5の範囲内である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記糖の熱分解によって調製される他のカルボニル化合物は、グリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールのうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液は、初期濃度のグリオキサール、初期濃度のピルバルデヒド、初期濃度のアセトール、最終濃度のグリオキサール、最終濃度のピルバルデヒド及び最終濃度のアセトールを有し;グリオキサールの前記最終濃度は、グリオキサールの前記初期濃度の50%以上であり、ピルバルデヒドの前記最終濃度は、ピルバルデヒドの前記初期濃度の50%以上であり、アセトールの前記最終濃度は、アセトールの前記初期濃度の50%以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
食料を褐変させる方法であって、
a)糖の熱分解によって調製されるカルボニル化合物の水溶液を調製することであって、前記糖の熱分解によって調製されるカルボニル化合物は、ホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドを含み、前記水溶液は、初期濃度のホルムアルデヒド及び初期濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを有する、前記調製すること;
b)システインを前記水溶液に添加すること;
c)前記水溶液を、前記ホルムアルデヒド及び前記システインがメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持して前記水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成することであって、ホルムアルデヒドの前記最終濃度は、ホルムアルデヒドの前記初期濃度の50%以下であり、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記初期濃度の50%以上である、前記生成すること;及び
d)前記食料の存在下で前記最終濃度のホルムアルデヒドを有する前記水溶液を加熱して前記食料を褐変させること
を含む、前記方法。
【請求項11】
ホルムアルデヒドの前記最終濃度は、ホルムアルデヒドの前記初期濃度の10%よりも低い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒドロキシアセトアルデヒドの前記最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記初期濃度の80%よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
糖の熱分解によって調製されるカルボニル化合物の水溶液であって、前記糖の熱分解によって調製されるカルボニル化合物は、ホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドを含み、前記水溶液は、ホルムアルデヒドの初期濃度の50%以下である最終濃度のホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の50%以上である最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを有し、前記最終濃度のホルムアルデヒド及び前記最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドは、
a)システインを前記水溶液に添加すること;及び
b)前記水溶液を、前記ホルムアルデヒド及び前記システインがメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持して前記水溶液中に前記最終濃度のホルムアルデヒド及び前記最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成すること;
によって生成される、前記水溶液。
【請求項14】
ホルムアルデヒドの前記最終濃度は、ホルムアルデヒドの前記初期濃度の10%よりも低い、請求項13に記載の
水溶液。
【請求項15】
ヒドロキシアセトアルデヒドの前記最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの前記初期濃度の80%よりも高い、請求項13に記載の
水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された実施形態は、低下した濃度のホルムアルデヒドを有する水溶液を提供する方法、より具体的には、低下した濃度のホルムアルデヒドを有する水溶液であって、その水溶液がヒドロキシアセトアルデヒド及び他の糖カルボニル化合物を含む、水溶液を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖(グルコースなど)の熱分解は、ヒドロキシアセトアルデヒド(グリコールアルデヒドとも称される)を含む溶液を製造するために有用であることが示されている既知の反応である。例えば、米国特許第7,094,932号に示されるように、グルコースの熱分解は、ヒドロキシアセトアルデヒドを含む水溶液の商業的に有用な収率を提供し得る。これらの水溶液は、食品産業において、天然の褐変剤(例えば、肉、魚、及びベーカリー品物用)として、香味剤前駆体として、タンパク質性架橋剤として及び抗菌性溶液として有用であり得る。
【0003】
グルコースの熱分解中に、ホルムアルデヒドが望ましくない副生成物として生成される。ホルムアルデヒドは、ガス状ホルムアルデヒドがヒトに対する有害物質であることがよく知られているので、食品産業で使用されることが意図されているヒドロキシアセトアルデヒドを含む水溶液中では特に望ましくない。
【0004】
米国特許出願第2016/0002137号は、ヒドロキシアセトアルデヒドを含む溶液からホルムアルデヒドを除去する1つの方法を教示している。その方法は、アルコール及び触媒の存在下で反応蒸留を使用して、ヒドロキシアセトアルデヒドを含む溶液からホルムアルデヒドを除去し、ここでホルムアルデヒドは選択的にアセタール化される。反応蒸留の生成物は実質的にホルムアルデヒドを含まないが、反応蒸留中に形成したホルムアルデヒドアセタールは、その後のヒドロキシアセトアルデヒドのエチレングリコールへの接触水素化において生成物溶液を使用する前に、生成物溶液から別々に除去しなければならない。
【0005】
したがって、糖カルボニルを含む水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させる改良された方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、ホルムアルデヒド、ヒドロキシアセトアルデヒド及び他の糖カルボニルを含有する水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させる方法が提供される。その方法は、アミノ酸を水溶液に添加すること;及びその水溶液を、ホルムアルデヒド及びアミノ酸がメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持して水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成することを含む。ホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低く、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低くない。
【0007】
その方法の別の態様では、ホルムアルデヒドの最終濃度は、ホルムアルデヒドの初期濃度の50%よりも低い。
【0008】
その方法の別の態様では、ホルムアルデヒドの最終濃度は、ホルムアルデヒドの初期濃度の10%よりも低い。
【0009】
その方法の別の態様では、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の50%よりも高い。
【0010】
その方法の別の態様では、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の80%よりも高い。
【0011】
その方法の別の態様では、アミノ酸は、グリシン及びシステインのうちの1つである。
【0012】
その方法の別の態様では、アミノ酸は、システインである。
【0013】
その方法の別の態様では、水溶液は、初期量のホルムアルデヒドを有し、所定量のアミノ酸が水溶液に添加され、初期量のホルムアルデヒドに対する溶液に添加されるアミノ酸の量のモル比は、1:2~1:10の範囲内である。
【0014】
その方法の別の態様では、モル比は、1:3~1:5の範囲内である。
【0015】
その方法の別の態様では、他の糖カルボニルは、グリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールのうちの1つ以上をさらに含む。
【0016】
その方法の別の態様では、水溶液は、初期濃度のグリオキサール、初期濃度のピルバルデヒド、初期濃度のアセトール、最終濃度のグリオキサール、最終濃度のピルバルデヒド及び最終濃度のアセトールを有し;グリオキサールの最終濃度は、グリオキサールの初期濃度よりも実質的に低くなく、ピルバルデヒドの最終濃度は、ピルバルデヒドの初期濃度よりも実質的に低くなく、アセトールの最終濃度は、アセトールの初期濃度よりも実質的に低くない。
【0017】
別の態様では、食料を褐変させる方法が提供される。その方法は、糖の熱分解によって糖カルボニルの水溶液を調製することであって、糖カルボニルは、ホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドを含み、水溶液は、初期濃度のホルムアルデヒド及び初期濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを有する、調製すること、アミノ酸を水溶液に添加すること、水溶液を、ホルムアルデヒド及びアミノ酸がメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持して水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成することであって、ホルムアルデヒドの最終濃度は、ホルムアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低く、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低くない、生成すること、及び食料の存在下で最終濃度のホルムアルデヒドを有する水溶液を加熱して食料を褐変させることを含む。
【0018】
その方法の別の態様では、ホルムアルデヒドの最終濃度は、ホルムアルデヒドの初期濃度の10%よりも低い。
【0019】
その方法の別の態様では、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の80%よりも高い。
【0020】
その方法の別の態様では、アミノ酸は、グリシン及びシステインのうちの1つである。
【0021】
その方法の別の態様では、アミノ酸は、システインである。
【0022】
別の態様では、糖の熱分解によって調製される糖カルボニルの水溶液が提供される。その糖カルボニルは、ホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドを含む。その水溶液は、ホルムアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低い最終濃度のホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低くない最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを有する。最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドは、アミノ酸を水溶液に添加すること及びその水溶液を、ホルムアルデヒド及びアミノ酸がメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持して水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成することによって生成される。
【0023】
その溶液の別の態様では、ホルムアルデヒドの最終濃度は、ホルムアルデヒドの初期濃度の10%よりも低い。
【0024】
その溶液の別の態様では、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の80%よりも高い。
【0025】
その溶液の別の態様では、アミノ酸は、システインである。
【0026】
追加の態様は、以下の記載の観点から明らかである。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示のためにのみ与えられ、それは、様々な変更及び改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるからであることが理解されるべきである。
【0027】
詳細な説明
1つ以上の実施形態の例を提供するために様々な方法が以下に記載される。以下に記載される実施形態は、いかなる特許請求された実施形態をも限定するものではなく、いかなる特許請求された実施形態も、以下に記載されるものとは異なる方法をカバーし得る。特許請求された実施形態は、以下に記載されるいずれか1つの方法の特徴の全てを有する方法、または以下に記載される方法の複数または全てに共通する特徴に限定されない。本文書で特許請求されていない以下に開示される任意の実施形態は、別の保護手段、例えば、継続特許出願の主題であり得、出願人、発明者または所有者は、本文書におけるその開示によって任意のそのような実施形態を放棄することも、ディスクレームすることも、公衆に捧げることも意図していない。
【0028】
本明細書において、「メイラード反応」という用語は、アミノ酸と還元糖との間の化学反応を指す。食品業界では、メイラード反応は、非酵素的褐変の形態として使用されており、糖-カルボニル化合物のカルボニル基がタンパク質中のアミノ酸の求核アミノ基と反応して、不十分に特性化された分子の複雑な混合物を形成する。食品加工用途では、不十分に特性化された分子の複雑な混合物は、様々な匂い、色及び香味の原因となり得る。メイラード反応は、数十の化合物を含む食品及び生物薬剤製品に影響を及ぼす一連の連続反応を含み得る。そのプロセスにおいて、何百もの異なる香味剤化合物が作り出され得る。これらの化合物は、その後、分解してより新たな香味剤化合物などを形成する。食品の各々の種類は、メイラード反応の間に形成される非常に独特な一連の香味剤化合物を有する。香味剤の科学者が長年にわたって様々な香味剤を製造するのに使用してきたものはこれらの同じ化合物である。
【0029】
一例では、メイラード反応は、アミノ酸のアミノ基と反応する糖のカルボニル基から始まり、N-置換グリコシルアミン及び水を生成する。次いで、不安定なグリコシルアミンは、アマドリ転位を受け、アマドリ化合物(例えば、ケトサミン)を形成する。アマドリ転位は、アルドースのN-グリコシドまたはグリコシルアミンの対応する1-アミノ-1-デオキシ-ケトースへの酸または塩基触媒による異性化または転位反応を表す有機反応である。メイラード反応機構に戻ると、アマドリ転位を受けるとケトサミンがさらに反応するいくつかの方法がある。例えば、ケトアミンは2つの水分子及びレダクトンを生成する。代替的に、ジアセチル、アスピリン、ピルバルデヒド及び他の短鎖糖カルボニル加水分解分裂生成物が形成され得る。さらに代替的に、褐色の含窒素ポリマー及びメラノイジンが生成され得る。メラノイジンは、食品の褐色着色の原因となる、複雑であまり特性化されていない窒素含有水溶性コポリマーである。具体的には、メラノイジン色素は、例えば、燻製した、焼いた、ローストした及び/またはグリル焼きした食品の褐変の異なる色調の原因となる。食品の各々の種類は、非常に独特な一連の香味剤化合物を有し、異なる一連のメラノイジンが食品の種類に基づいてメイラード反応の間に形成される。
【0030】
本明細書において、用語「糖カルボニル化合物」または「糖カルボニル」は、限定されるものではないが、ホルムアルデヒド、ヒドロキシアセトアルデヒド、グリオキサール、ピルバルデヒド(メチルグリオキサールとも称される)及びアセトールなどの低分子量カルボニル化合物を指す。
【0031】
本出願は、糖カルボニルを有する水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させるためにメイラード反応を使用する方法を記載する。
【0032】
一実施形態では、水溶液は、初期濃度のホルムアルデヒドを有する。参考のため、ホルムアルデヒドは、以下の式Iによって表される:
【化1】
【0033】
水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度は、1~6重量%の範囲内であり得る。実施形態では、ホルムアルデヒドは、水溶液の総重量の2~6重量%の範囲内、より具体的には3~6重量%の範囲内の初期濃度を有する。
【0034】
初期濃度のホルムアルデヒドは、アミノ酸を溶液に添加し、その溶液を、メイラード反応が起こり、水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒドを生成するための継続時間、所定温度で維持する。
【0035】
水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低い。本明細書において、溶質の最終濃度が溶質の初期濃度よりも「実質的に低い」とは、溶質の最終濃度が溶質の初期濃度の50%以下であることを指す。
【0036】
実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の50%未満であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の40%未満であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の30%未満であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の20%未満であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の10%未満であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の5%未満であり得る。
【0037】
実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液の総重量の0~2重量%の範囲内、より具体的には0~1重量%の範囲内であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液の総重量の0.5重量%未満であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終濃度は、水溶液の総重量の0.2重量%未満であり得る。
【0038】
水溶液はまた、ヒドロキシアセトアルデヒドなどの糖カルボニルを含む。参考のため、ヒドロキシアセトアルデヒドは、以下の式IIによって表される:
【化2】
【0039】
水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度は、4~50重量%の範囲内であり得る。実施形態では、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度は、水溶液の総重量の20~30重量%の範囲内、より具体的には24~26重量%の範囲内であり得る。
【0040】
水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度は、アミノ酸を水溶液に添加し、その水溶液を、メイラード反応が起こり、水溶液中に最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成するための継続時間、所定温度で維持することによって実質的に低下しない。
【0041】
水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低くない。本明細書において、溶質の最終濃度が溶質の初期濃度よりも「実質的に低くない」とは、溶質の最終濃度が溶質の初期濃度の50%以上であることを意味する。
【0042】
実施形態によれば、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の50%よりも高い場合がある。別の実施形態では、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の60%よりも高い場合がある。別の実施形態では、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度の70%よりも高い場合がある。別の実施形態では、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度の80%よりも高い場合がある。
【0043】
実施形態では、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、水溶液の総重量の4~50重量%の範囲内、より具体的には18~30重量%の範囲内、より具体的には20~25重量%の範囲内であり得る。
【0044】
実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの初期量に対する水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期量のモル比は、10:1~2:1の範囲内、より具体的には5:1~3:1の範囲内であり得る。別の実施形態では、水溶液中のホルムアルデヒドの最終量に対する水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの最終量のモル比は、少なくとも50:1であり得る。
【0045】
実施形態によれば、糖カルボニルには、ホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒド以外の糖カルボニルが含まれ得る。例えば、糖カルボニルは、グリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールのうちの1つ以上をさらに含み得る。グリオキサールは、水溶液の総重量の0.5~5重量%の範囲内、より具体的には1~5重量%の範囲内の初期濃度を有し得る。ピルバルデヒドは、水溶液の総重量の0~5重量%の範囲内、より具体的には0~2重量%の範囲内の初期濃度を有し得る。アセトールは、水溶液の総重量の0~5重量%の範囲内、より具体的には0~3重量%の範囲内の初期濃度を有し得る。グリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールは、組み合わさって、水溶液の総重量の1~20重量%の範囲内、より具体的には1~15重量%の範囲内、より具体的には1~10重量%の範囲内の組み合わされた初期濃度を有し得る。
【0046】
実施形態によれば、水溶液中のグリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールの初期濃度の各々は、アミノ酸を溶液に添加し、その溶液を、メイラード反応が起こり、水溶液中にグリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールの各々の最終濃度を生成するための継続時間、所定温度で維持することによって実質的に低下しない。
【0047】
実施形態では、水溶液中のグリオキサールの最終濃度は、水溶液の総重量の1~5重量%の範囲内、より具体的には2~5重量%の範囲内であり得る。水溶液中のピルバルデヒドの最終濃度は、水溶液の総重量の0~5重量%の範囲内、より具体的には0~2重量%の範囲内であり得る。水溶液中のアセトールの最終濃度は、水溶液の総重量の0~5重量%の範囲内、より具体的には0~3重量%の範囲内であり得る。グリオキサール、ピルバルデヒド及びアセトールは、組み合わさって、水溶液の総重量の1~10重量%の範囲内、より具体的には2~8重量%の範囲内の水溶液中の組み合わされた最終濃度を有し得る。
【0048】
実施形態では、水溶液は、水溶液の総重量の10~90重量%の範囲内、より具体的には50~70重量%の範囲内の初期濃度及び水溶液の総重量の10~90重量%の範囲内、より具体的には50~70重量%の範囲内の最終濃度を有する水をさらに含み得る。
【0049】
先に記載したように、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度を低下させるために、アミノ酸が水溶液に添加される。
【0050】
水溶液に添加されるアミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群から選択され得る。一実施形態では、アミノ酸は、グリシン及びシステインからなる群から選択される。別の実施形態では、アミノ酸は、グリシン及びシステインの1つであり得る。別の実施形態では、アミノ酸は、システインであり得る。
【0051】
実施形態では、アミノ酸は、アミノ酸とホルムアルデヒドとの間でメイラード反応を生じさせるのに十分な量で水溶液に添加される。一例では、水溶液に添加されるアミノ酸の量は、水溶液の総重量の1~5重量%の範囲内、より具体的には2~4重量%の範囲内である。別の例では、水溶液に添加されるアミノ酸の量は、水溶液中のホルムアルデヒドの量に対する水溶液に添加されるアミノ酸の量のモル比が1:2~1:10の範囲内になるようなものである。別の例では、水溶液に添加されるアミノ酸の量は、水溶液中のホルムアルデヒドに対する水溶液に添加されるアミノ酸のモル比が1:3~1:5の範囲内になるようなものである。
【0052】
アミノ酸を水溶液に添加した後、アミノ酸とホルムアルデヒドとの間のメイラード反応から得られる水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させるのに十分な継続時間、所定温度で水溶液を維持する。混合すると、アミノ酸は水溶液に溶解し得る。
【0053】
実施形態では、アミノ酸とホルムアルデヒドとの間のメイラード反応の結果として水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させるために、水溶液の温度は、約15℃~30℃の範囲内(例えば、室温)、より具体的には約18℃~22℃の範囲内で維持され得る。
【0054】
別の実施形態では、アミノ酸とホルムアルデヒドとの間のメイラード反応の結果として水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させるために、水溶液の温度は、0~96時間、より具体的には48~96時間の範囲内の継続時間、維持され得る。
【0055】
実施形態では、水溶液に添加されるアミノ酸の量は、水溶液中のホルムアルデヒドの初期量に対する水溶液に添加されるアミノ酸の量のモル比が1:2~1:10の範囲内、より具体的には1:3~1:5の範囲内となるようなものである。
【0056】
実施形態では、メイラード反応の後、水溶液はメラノイジンをさらに含み得る。メラノイジンはメイラード反応の生成物である。メラノイジンの構造は、これらの不均一なマクロ分子化合物を個別に特性化することができないため、不十分に定義されている。メラノイジンは、メイラード反応の高分子で着色した最終生成物を含む。メラノイジンは、反応物及びそれらの調製の条件に依存して構造が変化するフラン環及び窒素含有コポリマーを含み得る。メラノイジンは、ローストされた、焼かれた、トーストされた、グリル焼きされた、焦がされたまたは褐変した食品の褐色または赤色の原因であり得、また、醤油、蜂蜜、ワイン、ビール及びコーヒーなどの多くの食事用液体でよく見られる。メラノイジンは、メイラード反応の過程で起こる環化、脱水、逆アルドール反応、転位、異性化、縮合によって形成され得る。
【0057】
一例では、メイラード反応の後、水溶液は、0~20重量%の範囲内、より具体的には約8~15重量%の範囲内の濃度を有するメラノイジンを含み得る。別の実施形態では、メイラード反応の後、水溶液中のホルムアルデヒドの初期濃度が約4重量%であり、水溶液中のヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度が約25重量%であった場合、水溶液は、約8~15重量%の範囲内の濃度を有するメラノイジンを含み得る。
【0058】
別の実施形態では、メイラード反応の後、水溶液は、赤色を有し得る。任意に、水溶液の赤色は、限定されるものではないが、活性炭もしくはイオン交換樹脂の適用、膜分離、ナノ濾過または逆浸透などの任意の既知の技術によって除去され得る。
【0059】
別の実施形態では、低下した濃度のホルムアルデヒドを有する水溶液を提供した後、その水溶液は、食料を褐変させるのに使用され得る。本明細書において、食料という用語は、食品として消費されるのに好適な物質を指す。
【0060】
実施形態では、食料は、食料を褐変させるのに十分な継続時間、所定温度で水溶液の存在下で食料を加熱することによって褐変され得る。
【0061】
食料を褐変させる方法の実施形態では、糖カルボニルの水溶液は、糖の熱分解によって調製され得る。糖カルボニルは、ホルムアルデヒド及びヒドロキシアセトアルデヒドを含み、水溶液は、先に記載したように、初期濃度のホルムアルデヒド及び初期濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを有する。アミノ酸が水溶液に添加され、水溶液は、ホルムアルデヒド及びアミノ酸がメイラード反応に従って反応するのに十分な継続時間、所定温度で維持されて、先に記載したように、水溶液中に最終濃度のホルムアルデヒド及び最終濃度のヒドロキシアセトアルデヒドを生成する。ホルムアルデヒドの最終濃度は、ホルムアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低く、ヒドロキシアセトアルデヒドの最終濃度は、ヒドロキシアセトアルデヒドの初期濃度よりも実質的に低くない。
【0062】
実施形態では、最終濃度のホルムアルデヒドを有する水溶液は、食料の存在下で60~150℃の範囲内の温度に加熱され得る。別の実施形態では、食料は、加熱された水溶液に添加され得る一方で、その水溶液は、食料を調理するのに十分な継続時間、所定温度で維持される。実施形態では、継続時間は2~5分の範囲内であり得る。
【0063】
実施形態では、最終濃度のホルムアルデヒドを有する水溶液中で食料を加熱することは、食料の外表面に褐色がかった色を生成し得るか、または他の手段によって褐変溶液を外部に適用する。
【0064】
実施形態では、食料は、肉(例えば、ソーセージ、ベーコンなど)魚、または焼かれた品物(例えば、ベーカリーまたはペーストリーの品物)から選択され得る。
【実施例】
【0065】
以下の実施例では、液体生成物をHPLC分析(Agilent、1200シリーズ)によって定量した。30℃で動作するBioRad Aminex HPX-87Hカラムで被検物質を分離した。溶離液は、0.6mL/分の流速での0.005Mの水性H2SO4であった。標準試料に対してWaters 410RI検出器を使用して被験物質を定量した。
【0066】
実施例1
ホルムアルデヒドがヒドロキシアセトアルデヒドを有する溶液中にある場合のアミノ酸とホルムアルデヒドとの間の反応性を実証するために、1.5モルのシステイン(Aldrich-Sigmaの製品)を、3.5モルのヒドロキシアセトアルデヒド及び約2.5のpHを有する1モルのホルムアルデヒドを含む市販の褐変溶液(Azelisによって流通したScanGold(登録商標))に添加した。
【0067】
室温(例えば、約15~30℃)で3日後、得られた水溶液の試料を分析してその組成を決定した。
【0068】
得られた水溶液中にホルムアルデヒドは存在せず、0.5モル未満のヒドロキシアセトアルデヒドが存在していた。メラノイジンの形成も実証された。得られた水溶液は、褐変反応で予想されるように暗赤色の外観を有し、刺激性ではなかった。
【0069】
実施例2
ホルムアルデヒドがヒドロキシアセトアルデヒド及び他の糖カルボニル化合物を有する溶液中にある場合のアミノ酸とホルムアルデヒドとの間の反応性を実証するために、約4.5重量%のホルムアルデヒド及び約30%のヒドロキシアセトアルデヒドを含む市販の溶液に、得られる水溶液中でシステインが3.6重量%の濃度を有するように添加した。溶液を十分に可溶化するまで混合した。
【0070】
室温(例えば、約15~30℃)で24時間後、得られた溶液のホルムアルデヒド濃度は1.5重量%であり、得られた溶液のヒドロキシアセトアルデヒド濃度は依然として20重量%を超えていた。
【0071】
上記の結果を再計算すると、およそ1モルのシステイン(分子量121.16g/mol)が、約4モルのホルムアルデヒド(分子量30.031g/mol)と、他のカルボニルのいくらかの損失を伴って反応するのに必要とされることが分かる。
【0072】
実施例3
別の例では、4.14重量%のシステインを3.18重量%のホルムアルデヒドを有する溶液に添加した。他のカルボニル化合物は存在しなかった。4日後、白色結晶が出現したが、溶液は透明で無色のままであった。溶液のホルムアルデヒド濃度は2.12重量%に低下した。褐変反応は起こらなかった。システイン及びホルムアルデヒドの重量百分率ならびにシステイン及びホルムアルデヒドの分子量(上記で提供)に基づいて、0.034モルのシステインが0.033モルのホルムアルデヒドと反応した(例えば、約1:1のモル比)ことが決定された。
【0073】
実施例4
別の例では、システインを4.0重量%で糖-カルボニルを含有する市販の水性溶液(Azelisによって流通したScanGold(登録商標))に添加した。溶液の初期水濃度は65重量%であった。
【0074】
システインと市販の溶液との間の反応によって生成した生成物を室温で保存し、様々な時間間隔で再分析した。結果を表1に提供する。
【表1】
【0075】
試料の色は経時的に暗くなって暗赤色となった。4日後、生成物中のヒドロキシアセトアルデヒドの濃度は安定し、ホルムアルデヒドの刺激臭は減少した。
【0076】
実施例5
様々なアミノ酸を約4.0重量%の量で表2に提供される組成を有する市販の水溶液に添加した:
【表2】
【0077】
本明細書に記載の実施例で使用されたアミノ酸の全てはSigma-Aldrichから入手した。
【0078】
表3(以下)に列挙されたアミノ酸の各々の添加後の市販の溶液の生成物を室温で4日間保持し、分析してその中のヒドロキシアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの濃度を決定した。結果を表3に提供する:
【表3】
【0079】
生成物溶液中のグリオキサール、メチルグリオキサール及びアセトール濃度は、4日の期間にわたって元々の市販の溶液から有意に変化しなかったことが留意されるべきである。ヒドロキシアセトアルデヒド、グリオキサール、メチルグリオキサール及びアセトールの存在下では、チロシンは別として、試験したアミノ酸の全ては、生成物溶液のホルムアルデヒド濃度に影響を及ぼし、褐色/赤色コポリマーの形成に寄与した。システインは、ホルムアルデヒド濃度の最も効率的な還元剤であるように思われた。
【0080】
実施例6
別の例では、24.9重量%のヒドロキシアセトアルデヒド、3.0重量%のホルムアルデヒド、2.2重量%のグリオキサール、1.5重量%のメチルグリオキサール及び1.4重量%のアセトールを含む溶液に様々な量のシステイン(水溶液の重量百分率として表4に示されている)を添加した。試料は約3日間反応した。結果を表4に示す。
【表4】
【0081】
結果は、生成物水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させ、水溶液中の他の糖-カルボニルの濃度を保持(例えば、実質的に保持)する特定量のシステインが、元の水溶液中のホルムアルデヒドの4モルごとに1モルのシステインであった先の実施例2の知見を確認するように思われる。3.8重量%のシステインを有する試料は、0.04重量%未満のホルムアルデヒドを含有していたことがさらに留意されるべきである。
【0082】
表4で認められるように、試料溶液のいくつかは、メイラード反応後に赤色を有する。赤色は、限定されるものではないが、活性炭もしくはイオン交換樹脂の適用、膜分離、ナノ濾過及び/または逆浸透などの任意の適切な既知の技術によって除去され得る。
【0083】
実施例7
別の例では、実施例6に記載したものと同様の試験を別のアミノ酸:グリシンを用いて行った。
【0084】
グリシンが添加された初期の水溶液は、25.5重量%のヒドロキシアセトアルデヒド、3.4重量%のホルムアルデヒド、2.0重量%のグリオキサール及び1.4重量%のアセトールの組成を有していた。試料は約3日間反応した。結果を表5に示す。
【表5】
【0085】
表4及び5に示された結果を比較すると、グリシンはホルムアルデヒドと反応して生成物水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を低下させるが、グリシンとホルムアルデヒドとの間の反応は、システインとホルムアルデヒドとの間の反応ほど効率的ではない。生成物水溶液からのホルムアルデヒドの実質的な除去を達成するために(例えば、水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を<0.2重量%に低下させるために)、システインよりおよそ2倍多いグリシンが使用された。
【0086】
表6は、ヒドロキシアセトアルデヒドの希釈溶液を用いた試料の4つの例を示している。これらの試料中の水濃度は約90重量%である。様々な重量百分率のグリシンを以下に示すように混合/溶解した。
【表6】
【0087】
表6の溶液は、約1モルのグリシン(mw約75)が約1.3モルのホルムアルデヒドと反応する一方で、約0.65モルのヒドロキシアセトアルデヒドを犠牲にすることを示している。したがって、システインについては実施例6に示されたものより多くのヒドロキシアセトアルデヒドが犠牲される。
【0088】
実施例8
3.8重量%のシステインを含有し、25倍に希釈した、実施例1から得られた沸騰ヒドロキシアセトアルデヒド/ホルムアルデヒド溶液に生のポークソーセージ(Maple Leaf Co.の製品)を入れた。その溶液はおよそ3日間熟成させてから、ポークソーセージに適用した。
【0089】
沸騰溶液中でおよそ2分後、ソーセージを取り出し、視覚的に検査した。ソーセージは褐色の「ローストされた」色であり、消費できる状態であった。ソーセージの全体的な見た目及び味は非常に良好であった(例えば、ソーセージは記述できない肉の香味を有していた)。
【0090】
これらのソーセージの外観を、生のポークソーセージを茹でる伝統的な方法と比較するために、同じ種類の生のポークソーセージ(Maple Leaf Co.の製品)を沸騰水中でのみ、再度2分間調製した。
【0091】
沸騰水から取り出したのち、ソーセージの外観及び味を検査した。沸騰水からのソーセージの外観及び味は、システインと混合した市販の溶液中で茹でたソーセージの外観及び味と比較すると劣っていた。水だけで茹でたソーセージは、やや味が薄いと記述され、それらは、実施例1から得られた溶液中で茹でたソーセージの褐色の「ローストされた」色を有していなかった。
【0092】
上記の説明は、1つ以上の方法または系の例を提供するが、当業者によって解釈されるように、他の方法または系が特許請求の範囲内にあり得ることが理解される。