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特許7186724パイプラインのリハビリテーションにおいて使用するための継手要素およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】パイプラインのリハビリテーションにおいて使用するための継手要素およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/28 20060101AFI20221202BHJP
   B29C 63/22 20060101ALI20221202BHJP
   F16L 23/032 20060101ALI20221202BHJP
   F16L 47/14 20060101ALI20221202BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
F16L33/28
B29C63/22
F16L23/032
F16L47/14
F16L1/00 K
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019560627
(86)(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 NL2018050051
(87)【国際公開番号】W WO2018139923
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】2018224
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521317472
【氏名又は名称】パイプ-アクア-テック・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アナンデ・ベルフマン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・マドレネル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウテル・アルベルト・アリー・リーデイク
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・バッゲン
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-000952(JP,A)
【文献】特開平07-266447(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133393(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0119813(US,A1)
【文献】特開2015-003470(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1755184(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02602097(EP,A2)
【文献】独国特許出願公開第102008063651(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
F16L 23/032-23/036
F16L 33/28
F16L 47/00-47/26
B29C 63/00-63/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナを用いたパイプラインのリハビリテーションにおいて使用するための継手要素であって、強化繊維および樹脂組成物からなる複合物を備える継手要素において、当該継手要素の第1のパーツが、強化繊維と実質的に完全に硬化された樹脂組成物を含み、当該継手要素の第2のパーツが、当該継手要素と前記ライナの少なくとも一部との間に機能的接合部を形成するために、前記ライナを由来とする硬化性樹脂組成物を受容るドライ強化繊維を含み、当該継手要素の境界層が、前記第2のパーツの強化繊維および前記第1のパーツの樹脂を含むことにより前記第1のパーツおよび前記第2のパーツを構造的に連結していることを特徴とする、継手要素。
【請求項2】
前記第1のパーツの強化繊維は、使用される材料および/または材料形態において、前記第2のパーツの強化繊維とは異なることを特徴とする、請求項1に記載の継手要素。
【請求項3】
前記第2のパーツの強化繊維の材料形態は、表面を含み、前記強化繊維は、前記表面外である方向へと延在していることを特徴とする、請求項2に記載の継手要素。
【請求項4】
前記境界層は、前記第1のパーツの強化繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項5】
前記境界層は、接着剤を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項6】
当該継手要素が、反応性部分を含むように、部分的に硬化された熱硬化性樹脂組成物を含む第3のパーツをさらに備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項7】
前記第1のパーツの反応性および/または単量体組成は、前記第3のパーツの反応性および/または単量体組成とは異なることを特徴とする、請求項6に記載の継手要素。
【請求項8】
当該継手要素は、周方向体を備え、前記周方向体の外方周方向シェルが前記第1のパーツを形成し、前記周方向体の内方周方向シェルが前記第2のパーツを形成することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項9】
前記外方周方向シェルと前記内方周方向シェルとの間に配置された周方向シェルが、第3のパーツを形成していることを特徴とする、請求項8に記載の継手要素。
【請求項10】
当該継手要素の周方向シェルの任意の一方が、当該継手要素の実質的に全周にわたり延在していることを特徴とする、請求項8または9に記載の継手要素。
【請求項11】
部分的に硬化された熱硬化性樹脂組成物が、Bステージのものであることを特徴とする、請求項6~10のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項12】
前記第1のパーツは、当該継手要素の全体にわたり連続的であり、当該継手要素に対して寸法安定性を与え、前記第2のパーツを支持していることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項13】
パイプライン・システムの別の構成要素に対して結合するためのフランジを備えていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の継手要素。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の継手要素を製造するための方法であって、型を用意するステップと、前記型の表面上にドライ強化繊維を適用して前記第2のパーツを形成するステップと、前記第2のパーツの周囲において強化繊維および樹脂組成物を組合せることによって前記継手要素の前記第1のパーツを形成するステップであって、これにより前記第1のパーツの樹脂が前記第2のパーツの強化繊維に部分的に含浸されるステップと、熱硬化性樹脂組成物を実質的に完全に硬化された段階へと硬化するステップと、を含んでなることを特徴とする、継手要素を製造するための方法。
【請求項15】
強化繊維および熱硬化性樹脂組成物を組合せることによって前記継手要素の前記第1のパーツを形成するステップは、前記樹脂組成物で前記強化繊維を含浸させ、前記型の上に含浸された前記強化繊維をフィラメント・ワインディングすることにより実施されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
強化繊維および硬化性樹脂組成物からなる管状ライナを用いてパイプラインをリハビリテーションする方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の継手要素を前記パイプラインの端部と同軸整列状態に設けるステップと、前記継手要素の少なくとも前記第2のパーツに対する加圧下において前記ライナの一部を設けるステップと、前記ライナの前記硬化性樹脂組成物を硬化するステップであって、これによりライナの硬化性樹脂組成物が前記第2のパーツの前記ドライ強化繊維によって受容されて、前記継手要素とライナパーツとの間に機能的接合部を形成する、および/または硬化性樹脂組成物が前記第2のパーツに対して適用され共硬化されることにより前記機能的接合部を形成する、ステップと、を含んでなることを特徴とする、パイプラインをリハビリテーションする方法。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の継手要素とパイプラインをリハビリテーションするためのライナとの接合体アセンブリであって、前記継手要素の第2のパーツおよび前記ライナのエッジパーツが、結合可能エリアにおいて重畳し、実質的に完全に硬化されて機能的接合部を形成していることを特徴とする、接合体アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナを用いたパイプラインのリハビリテーションにおいて使用するための継手要素に関する。さらに、本発明は、この継手要素を製造するための方法に関する。別の態様では、本発明は、強化繊維および硬化性樹脂組成物からなる管状ライナを用いてパイプラインをリハビリテーションするための方法と、継手要素とパイプラインをリハビリテーションするためのライナとの接合体アセンブリとに関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維および硬化性樹脂組成物を含むライナを用いたパイプラインの現場内部被覆は、損傷を被ったパイプラインのリハビリテーションにおいてますます利用されている。典型的な一方法は、ポリエステル、ガラス繊維布、もしくは樹脂含浸に適した複数の他の材料から作製された樹脂含浸複合材料チューブを用意すること、このチューブを反転させること、および/または損傷した管内にこのチューブを引き込むことを伴う。ライナは、例えば水圧または空気圧を利用して反転され得る。例えば高温水、UV光、雰囲気硬化、または蒸気が、比較的密着的な、好ましくは継ぎ目なしのおよび耐腐食性の交換パイプ(CIPP(現場硬化パイプ(cured in place pipe)とも呼ばれる)の形成を期待して、樹脂を硬化させライナを固化させるための媒体として後に使用され得る。
【0003】
CIPPは、例えばマンホールまたは他の掘削穴などにより与えられる上流アクセス点から損傷したパイプ内に設置され得る。かかるアクセス点では、ライナは、例えば別のライナ、既存のパイプ(セグメント)、弁、またはポンプなどに連結されることが必要となる。
【0004】
別のパイプ(セグメント)の別のライナにライナを連結するために、ライナは、継手要素を備える必要がある。これは、典型的には、損傷した親管の自由端部に対して鋼フランジを溶接し、前記鋼フランジにライナを連結することによって実施される。しかし、この手順は、多大な時間を要するものであり、ライナと、フランジと、パイプとの間における確実な連結を確保するためには専門作業員による実行が必要となる。
【0005】
国際公開第2016/133393号(特許文献1)は、ライナを用いたパイプラインのリハビリテーションにおいて使用するための継手要素を開示している。この継手要素の第1のパーツが、強化繊維と実質的に完全に硬化された樹脂組成物とを含み、継手要素の第2のパーツが、強化繊維と部分的に硬化されたまたはBステージの樹脂組成物とを含む。第2のパーツは、結合可能表面として使用されるが、継手要素の外部の原料を由来とするいかなる硬化性樹脂組成物も受容することができない。さらに、第1のパーツおよび第2のパーツは、継手要素の厚さ方向に延在する強化繊維を介して前記厚さ方向において構造的に連結されない。したがって、継手要素は層間剥離を被りやすい。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0119813号明細書(特許文献2)は、プレプレグラミネート中の強化繊維の一部を露出させるための方法を教示している。この方法では、ゲルが、露出されることとなるこの部分において樹脂と置き換えられるように使用される。硬化後に、ゲルは、除去されて、繊維露出した部分が残る。この露出部分は、2つのラミネートの露出部分同士を接触させ、前記パーツ間に接着剤を導入することにより、結合可能表面として使用される。かように形成された接合部の強度は、接着剤の強度により限定される。さらに、この既知の方法は、後に除去が必要となるゲルの使用を必要とする。したがって、露出された繊維は、作製時のような純粋な「ドライ」繊維ではなく、残留したゲル粒子および/またはプリプレグ樹脂を含む場合がある。また、サイズ剤および結合剤などの強化繊維の表面コーティングは、結合強度を低下させ得るゲルの存在により影響を被る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/133393号
【文献】米国特許出願公開第2014/0119813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パイプラインのリハビリテーション・プロセス中においては即座に、およびリハビリテーション済みのパイプの耐用期間中においては長期的に、ライナを別のライナに対してまたは継手要素に対して連結するためのより効率的かつ信頼性の高い方法を提供し、それによりこの連結によって先行技術の方法の欠点を緩和またはさらには防止することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、請求項1に記載のライナ用の継手要素が提供される。この継手要素は、強化繊維および樹脂組成物からなる複合物を備え、継手要素の第1のパーツが、強化繊維と実質的に完全に硬化された樹脂組成物を含み、継手要素の第2のパーツが、継手要素とライナの少なくとも一部との間に機能的接合部を形成するために、任意にはライナを由来とする硬化性樹脂組成物を受容し得るドライ強化繊維を含み、継手要素の境界層が、第1のパーツおよび第2のパーツを構造的に連結する。
【0010】
本発明の継手要素は、現場で(原位置で)硬化され得るものであり、最後の継手が硬化された場合に、含浸されたライナとの接合部を形成することができる。実際に、この継手要素は、少なくとも2つのパーツを、すなわち継手要素に対して形状を与える第1の固体(硬化)パーツと、例えば継手要素の内方表面に設けられる第2のパーツとを有し、この第2のパーツによりライナとの構造的接合が助長される。ライナを継手要素と共に好ましくは原位置で硬化した後には、ライナと継手要素との間に強力な接合部が得られる。これは、結果として一体化された継手要素を備えるライナをもたらす。このようにして、継手要素とライナとの間の良好な接着が実現される。これは、典型的にはパイプ・リハビリテーションにおいて使用されるライナが硬化後に収縮する傾向を有し、これが構成要素(パイプ、継手要素、ライナ)間における層間剥離を結果としてもたらす恐れがあるため、重要となる。
【0011】
本発明の継手要素は、強化繊維がドライである第2のパーツを提供する。これらの強化繊維の特性は、好ましくは、繊維製造業者により繊維に対して与えられた任意の加工助剤および接着助剤を含む「作製直後のままの状態」である。
【0012】
本発明の第2の態様は、強化繊維および硬化性樹脂組成物からなる管状ライナを用いてパイプラインをリハビリテーションするための方法を提供する。この方法は、本発明による継手要素をパイプラインの端部と同軸整列状態に設けるステップと、継手要素の少なくとも第2のパーツに対する加圧下においてライナの一部を設けるステップと、ライナの硬化性樹脂組成物を硬化するステップであって、これによりライナの硬化性樹脂組成物が第2のパーツのドライ強化繊維によって受容されて、継手要素とライナパーツとの間に機能的接合部を形成する、および/または硬化性樹脂組成物が第2のパーツに対して適用され共硬化されることにより機能的接合部を形成する、ステップとを含む。
【0013】
本発明の第3の態様では、継手要素とパイプラインをリハビリテーションするためのライナとの接合体アセンブリが提供される。継手要素の第2のパーツおよびライナのエッジパーツが、結合可能エリアにおいて重畳し、実質的に完全に硬化されて機能的接合部を形成する。
【0014】
形状において限定されるものではないが、本発明の継手要素の適切な例としては、継手、フランジ、エルボ、およびT字セクション等が含まれる。本発明の一実施形態は、パイプライン・システムの別の構成要素に対する結合のためのフランジを備える継手要素を提供する。
【0015】
本発明の一実施形態は、第1のパーツの強化繊維が、使用される材料および/またはその材料の形態において第2のパーツの強化繊維とは異なる継手要素を提供する。
【0016】
熱硬化性複合物は、典型的には接着剤結合によりまたはボルト締めなどの機械接合により他のものに対して付着されるが、これらの接着剤結合および機械接合はいずれも欠点を有する。接着結合は、コストが高く、場合によっては環境に対して危険であり、接着による結合品質は、プロセスパラメータの変化に対して一般的に影響を被りやすい。実際に、接着結合の品質は、表面特性および職人の技術により左右されるため、ライナおよび継手要素などの複合物同士の接合方法としてやや不確実なものとなる。余剰材料が追加され、表面処理は一般的に多大な時間を要し、状況に左右される。他方において、ボルト締めは、連結されることとなる物に穴を形成するため、これが応力集中および場合によっては恒久的な故障をもたらす。本発明による継手要素は、容易な可搬性を有し、さらに機能的に接合されたアセンブリを作製するためにライナ(の結合可能表面)に対して原位置にて接合され得る結合可能表面を提供する。
【0017】
継手要素とライナとの間の機能的接合部は、要素およびライナのアセンブリが、その設計または使用の目的である重要な機能の中の少なくとも1つに関して有用なものになるのを可能にする接合部を表すように意図される。2つの典型的な機能的接合部は、液密性または気密性をもたらす構造的接合部および封止接合部である。
【0018】
継手要素とライナとの間の構造的接合部は、接合体アセンブリの加重支持能力に対して寄与する、および継手要素とライナとの間で機能的荷重を伝達することが可能な接合部を表すように意図される。機能的荷重は、設計荷重、主荷重、およびアセンブリの構造的一体性を確保するために伝達される必要のある他の予想される荷重であってもよいが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、第2のパーツの強化繊維の材料形態が、表面を備え、その繊維が、表面外である方向へと延在する、継手要素が提供される。前記表面を画定する強化繊維の平面状材料形態としては、平行配向された単一繊維、2つ以上の線維方向を有する織成繊維、ランダム配向された繊維マット、および/またはフェルトが含まれるが、それらに限定されない、ただし後者が好ましい。
【0020】
本発明による継手要素中の境界層は、以降でさらに明らかにされる継手要素の製造方法に少なくとも部分的に依拠する任意の考えられ得る方法において提供されてもよい。本発明の継手要素の一実施形態は、境界層が第1のパーツの強化繊維を含むことを特徴とする。別の実施形態では、境界層は、第2のパーツの強化繊維を含む。さらに別の有用な実施形態は、継手要素に関し、境界層は接着剤を含む。この実施形態では、第2のパーツは、接着剤により第1のパーツに対して結合され得る。
【0021】
特に好ましい一実施形態は、境界層が、第2のパーツの強化繊維と、第1のパーツに由来する樹脂組成物とを含む継手要素を提供する。かかる継手要素は、特に強力かつ耐久性の高い界面強度を有する。接着剤が、第1のパーツの樹脂の代替として追加されてもよく、または第1のパーツの樹脂に加えて追加されてもよい。
【0022】
本発明の別の実施形態では、第3のパーツを備える継手要素が提供される。この第3のパーツは、反応性部分を含むように、部分的に硬化された熱硬化性樹脂組成物を備える。継手要素の第1のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、実質的に完全に硬化され、これにより所望の機械特性を有する固体の第1のパーツを有する継手要素を提供し、また継手要素の第1のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、容易に取り扱われる、および搬送される、等となる。継手要素は、その結合可能な第3のパーツを提供することにより、必要とされる場合にはいつでもライナなどの他の物に対して接合され得る。第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物が、部分的に硬化されるにすぎず、したがって反応性部分を備えるため、この第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、別のパーツまたはライナに対して結合されることにより対応する反応性部分との間に機能的接合部を形成することが可能である。かかる結合は、硬化された熱硬化複合物とその表面に塗布された接着剤層との間の結合などの二次結合により実現されるものよりも強力となり得る。
【0023】
本発明によれば、第1の熱硬化性樹脂組成物は、実質的に完全に硬化される。実質的に完全に硬化された第1の熱硬化性樹脂組成物は、第1の熱硬化性樹脂組成物の供給業者により推奨される硬化サイクルにしたがって、または同様の結果を生じる硬化サイクルにしたがって得ることが可能である。後硬化が適用されてもよい。
【0024】
「実質的な」または「実質的に」という表現は、本願のコンテクストにおいては、示される特性の少なくとも70%を、より好ましくは示される特性の少なくとも80%を、さらにより好ましくは示される特性の少なくとも90%を、最も好ましくは示される特性の少なくとも95%を意味する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、やはり反応性部分を備えるように部分的に硬化される。部分的硬化は、ゼロ硬化状態とも完全硬化状態とも異なる任意の硬化度合いとして定義される。熱硬化性樹脂組成物の硬化度合いは、周知の標準的慣例に従って確立され得る。適切かつ広く利用される技術は、示差走査熱量測定(DSC)を利用してエンタルピー(の変化)を測定する。硬化の度合いまたは程度は、完全反応(実質的な完全硬化または100%の硬化度合い)のエンタルピーの合計変化と比較した場合の、発生したエンタルピー変化として定義される。硬化反応の完了に伴われるエンタルピーの合計変化は、低温から熱劣化の開始付近の温度までの低速温度傾斜を利用することにより決定される。第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物の硬化度合いを定義することは、第2のパーツからのかかる樹脂の試料を採取することと、低温からこの熱硬化性樹脂の熱劣化の開始付近の温度までの低速温度傾斜を利用してエンタルピーの残差変化を決定することとを伴う。この場合に、硬化度合いは、樹脂の合計エンタルピー変化に対する、合計エンタルピー変化から残差エンタルピー変化を減算したものの比率として定義される。DSCは、硬化度合いの、したがって熱硬化性樹脂組成物の部分硬化状態の決定における技術的選択肢であるが、例えば動的機械分析(DMA)などの他の技術が利用されてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態は、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物が、Bステージのものである継手要素を提供する。本明細書において使用される場合の「Bステージ」という表現は、熱硬化性樹脂組成物の部分硬化(部分架橋)が発生していることを示す。熱硬化性樹脂組成物の「Bステージ」は、当業者には周知であり、材料が加熱された場合に軟化し、特定の液体と接触状態になった場合に膨張するが、完全には溶融または溶解し得ない特定の熱硬化性樹脂の反応における中間ステージによって定義される。Bステージでは、熱硬化性樹脂は、粘着性表面を呈し得るが、これは必須ではない。本発明の継手要素の第3のパーツ同士は、接合され加熱されることにより、これらの第3のパーツ中の熱硬化性樹脂組成物をさらに硬化させ、前記第3のパーツと第1のパーツおよび/または第2のパーツなどの別のパーツとの間の一次結合を生じさせ得る。
【0027】
本発明による継手要素の本実施形態は、第1の実質的に完全に硬化されたパーツと、部分的に硬化された熱硬化性樹脂を含む第3のパーツとを備える。かかる実施形態の作製において、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物の恒久硬化を回避しつつ、第1の熱硬化性樹脂組成物を硬化するために注意が必要となる。この目的を達成する1つの方法は、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物が、ある硬化温度を有し、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物の硬化温度よりも低い温度において、第1のパーツの熱硬化性樹脂組成物の反応性が第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物の反応性よりも高い継手要素の一実施形態により提供される。
【0028】
この実施形態の第3のパーツは、ある特定の時間間隔にわたり結合可能表面を提供する。結合可能表面を提供する時間フレームは、継手要素が保管される温度を含む複数のパラメータに依拠する。第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物の硬化を遅延させるためには、継手要素は、硬化反応が開始される温度未満の温度にて保管されなければならない場合がある。かかる保管温度は、0℃未満であり得る。
【0029】
継手要素の有用な一実施形態では、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、-10℃の温度にて安定的となる。かかる実施形態では、樹脂は、少なくとも1日の間、より好ましくは少なくとも1週間の間、さらにより好ましくは少なくとも1か月の間、さらにより好ましくは少なくとも3か月の間、および最も好ましくは少なくとも6か月の間、-10℃の温度において実質的に硬化しない(硬化度合いが変化しない)。
【0030】
他の有用な実施形態では、第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、-5℃の温度にて、より好ましくは0℃の温度にて、さらにより好ましくは5℃の温度にて、さらにより好ましくは10℃の温度にて、さらにより好ましくは15℃の温度にて、および最も好ましくは室温にて安定的である。室温は、15~40℃の間の温度を意味する。
【0031】
本発明の継手要素の一実施形態では、第1のパーツおよび第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物が、異なる硬化度合いを有する。かかる相違は、第1の樹脂組成物および第3の樹脂組成物が同一の構成成分(例えば単量体および硬化剤)を含むが、異なる度合いに硬化されていることにより生じ得る。本発明の別の実施形態では、第1の熱硬化性樹脂組成物の単量体組成が、第3の熱硬化性樹脂組成物の単量体組成とは異なる継手要素が提供される。これらの両樹脂組成物の異なる構成成分により、この物における反応性および硬化度合いの直接的な調整が可能となる。かかる実施形態は、第1のパーツの反応性および/または単量体組成が第3のパーツの反応性および/または単量体組成とは異なる継手要素を提供し得る。
【0032】
有用な一実施形態は、第3のパーツが境界層を備える継手要素を提供する。
【0033】
継手要素の合計体積に対する継手要素の第1のパーツおよび第2のパーツの体積パーセンテージは、広い範囲内で選択され得る。例えば、継手要素の第2のパーツは、継手要素の90体積%を備える。複合継手要素の好ましい一実施形態では、継手要素の第2のパーツは、継手要素の最大で60体積%を、より好ましくは継手要素の最大で50体積%を、さらにより好ましくは継手要素の最大で40体積%を、さらにより好ましくは継手要素の最大で30体積%を、さらにより好ましくは継手要素の最大で20体積%を、および最も好ましくは継手要素の最大で10体積%を備える。この場合に、好ましくは、継手要素の第1のパーツは残りの体積を占める。他の実施形態では、継手要素の第2のパーツは、継手要素の少なくとも5体積%を、およびより好ましくは継手要素の少なくとも10体積%を備える。
【0034】
本発明による複合継手要素の一実施形態では、第1のパーツは、要素の全体にわたり連続的であり、要素に対して寸法安定性を与え、第2のパーツを支持する。連続的な第1のパーツは、要素の全体にわたり非間断的に延在する第1のパーツを意味する。しかし、かかる第1のパーツは、第1のパーツにおいて要素の一端部から要素の対向側端部まで非間断的に延在するラインが存在し得る限りにおいては、穴等を局所的に備えてもよい。
【0035】
この実施形態における継手要素の硬化済みの第1のパーツは、要素に対して形状安定性を与え、それによりドライの第2のパーツまたはオプションの部分的に硬化された第3のパーツを有する場合であっても輸送および取り扱いが可能となる。第1の硬化サイクル(または作製ステップ)の後に、要素の形状は、(実質的に)画定され、取り扱われることとなる追加の支持構造体を必要としない。これに加えて、継手要素上にライナを硬化するまたはオプションの第3のパーツを硬化する場合などの後の硬化サイクルのためのツールが、要素の第1のパーツの形状安定性により、簡素化またはさらには省くことが可能となる。
【0036】
特に有用な一実施形態は、周方向体を備え、この周方向体の外方周方向シェルが第1のパーツを形成し、この周方向体の内方周方向シェルが第2のパーツを形成する、またはその逆である、継手要素により提供される。本発明のかかる実施形態は、ある厚さを有する複合要素を提供し、第2のパーツは、前記厚さの一部にわたり延在する。この実施形態は、要素の一方の側に結合可能表面を、および要素の対向側に固体の実質的に完全に硬化された表面を提供する。
【0037】
別の実施形態は、外方周方向シェルと内方周方向シェルとの間に配置された周方向シェルが、第3のパーツを形成する継手要素に関する。
【0038】
継手要素の周方向シェルの中の任意の1つが、継手要素の周囲の一部のみにわたり延在してもよいが、実際の実施形態は、継手要素の周方向シェルの中の任意の1つが、継手要素の実質的に全周にわたり延在する継手要素を提供する。
【0039】
本発明による継手要素の熱硬化性樹脂組成物は、多様な入手可能な熱硬化性樹脂組成物の中から選択され得る。オプションの第3のパーツの熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは安定的な部分硬化状態で入手可能である。本発明の一実施形態では、この熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール類、ポリウレタン、もしくはビスマレイミド樹脂/硬化剤混合物、または熱硬化性ウレタンをベースとする2成分系などのそれらの組合せを含む、継手要素が提供される。エポキシおよび/または不飽和ポリエステル樹脂/硬化剤混合物が、特に好ましい。
【0040】
ライナと、ライナの自由端部に装着された本発明の継手要素とのアセンブリが、パイプラインのリハビリテーションにおいて有利に使用され得る。本発明の一実施形態では、継手要素は、ライナの自由エッジのための保護パーツをさらに備える。
【0041】
好ましい継手要素は、この保護パーツが、例えば溶接連結などによりライナと連結する点を特徴とする。しかし、保護パーツとライナの自由エッジとの間の連結は、例えば接着剤結合によってなど他の方法で実現されてもよい。一実施形態では、継手要素の保護パーツは、ライナの自由端部を封止するためにライナに対して溶接され得る熱硬化インサートを備える。
【0042】
第1のパーツおよび第2のパーツを有する継手要素とライナとの接合により、結果として、第2のパーツが任意にはライナ自体を由来とする硬化性樹脂組成物を備え、第2のパーツの硬化性樹脂組成物の硬化サイクルが達成された後に、要素とライナとの間の化学接合(またはより具体的には架橋接合)がもたらされ得る。一般的には、かかる接合体アセンブリにおける2つの界面、すなわち第1のパーツと第2のパーツとの間の第1の境界層と、要素の第2のパーツとライナ表面との間の第2の界面とを特定することが可能である。第1の界面は、継手要素の第1のパーツが実質的に完全に硬化され、一方で第2のパーツがドライに留まる場合に発生する。この境界層は、これらの両パーツ間の連結部を提供する。継手要素とライナとの接合は、ライナおよび継手要素の第2のパーツの表面同士を接触させ、共硬化して接合部を形成することによって達成され得る。
【0043】
本発明の第4の態様は、継手要素を製造するための方法を提供する。この方法は、型を用意するステップと、型の表面上にドライ強化繊維を適用して第2のパーツを形成するステップと、第2のパーツの周囲において強化繊維および樹脂組成物を一体化することにより継手要素の第1のパーツを形成するステップと、熱硬化性樹脂組成物を実質的に完全に硬化されたステージへと硬化するステップとを含む。
【0044】
強化繊維は、任意の既知の方法で熱硬化性樹脂組成物と一体化され得る。適切な例としては、強化繊維が例えばブラシまたはローラなどを用いて手作業により熱硬化性樹脂組成物で含浸されるハンドレイアップ、熱硬化性樹脂が強化繊維を用意された閉鎖された型内に射出または吸収されるRTMなどの樹脂注入法、または真空注入、強化繊維が熱硬化性樹脂槽を通しておよびその後加熱されたダイを通して送られる引抜成形、熱硬化性樹脂が回転型内に送られ、遠心力により型内に用意された強化繊維に押し通される回転成形、およびフィラメント・ワインディングが含まれるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態による方法は、第1の熱硬化性樹脂組成物および任意の第3の熱硬化性樹脂組成物で強化繊維を含浸させ、要素の形状を画定するマンドレル上に用意された第1のパーツ上に対してこの含浸された強化繊維をフィラメント・ワインディングするおよび/またはこの含浸された強化繊維をダイに通して引き抜くことにより、強化繊維と第1の熱硬化性樹脂組成物および任意には第3の熱硬化性樹脂組成物とを一体化して、継手要素の第1のパーツおよび任意の第3のパーツを形成する。代替的には、強化繊維と、第1の熱硬化性樹脂組成および任意には第3の熱硬化性樹脂組成とは、第1の熱硬化性樹脂組成物および任意の第3の熱硬化性樹脂組成物で強化繊維を含浸させ、要素の形状を画定するマンドレル上にこの含浸された強化繊維をフィラメント・ワインディングし、適用された第1のパーツおよび任意の第3のパーツの上に対してドライ強化材の第1のパーツを適用することにより、一体化されて、継手要素の第1のパーツおよび任意の第3のパーツを形成してもよい。
【0045】
この方法の実際の一実施形態では、第1の熱硬化性樹脂組成物および任意には第3の熱硬化性樹脂組成物で強化繊維を含浸させることは、第1の熱硬化性樹脂槽および第2の熱硬化性樹脂槽を用意し、前記槽のそれぞれに強化繊維を通して送ることにより実施される。第1の熱硬化性樹脂組成物を備える槽に通して強化繊維を送ることにより、第1のパーツが生成され、第3の熱硬化性樹脂組成物を備える槽に通して強化繊維を送ることにより、継手要素の任意の第3のパーツが生成される。
【0046】
本発明の他の有用な実施形態は、強化繊維と第1の熱硬化性樹脂組成物および任意の第3の熱硬化性樹脂組成物とを一体化して継手要素の第1のパーツおよび任意の第3のパーツを形成することが、真空注入または樹脂トランスファ成形(RTM)により第1の熱硬化性樹脂組成物および任意の第3の熱硬化性樹脂組成物で強化繊維を含浸させることによって実施される、方法に関する。
【0047】
したがって、本発明の一実施形態は、強化繊維と熱硬化性樹脂組成物とを一体化して継手要素の第1のパーツおよび任意には第3のパーツを形成することが、樹脂組成物で強化繊維を含浸させ、型上にこの含浸された強化繊維をフィラメント・ワインディングすることによって実施される、方法に関する。
【0048】
別の実施形態は、第3のパーツが、厚さの一部が樹脂組成物で含浸されたドライ強化材を備える半含浸強化材を型上に適用し、繊維および樹脂組成物を適用して第1のパーツを形成することによって製造される、方法に関する。
【0049】
本発明による複合継手要素は、金属インサート、発泡体コアもしくはハニカムコア、本発明によるものと異なる他の方法により結合された熱可塑性フィルムもしくは熱硬化性フィルム、またはかかる継手要素の一体部分として組み込まれ得る任意の他の材料などの、他の構成要素を備えてもよい。
【0050】
以下、添付の図面を参照として、本発明を例としてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の一実施形態による継手要素の概略斜視図である。
図2】ライナとの接合組立状態における図1の継手要素の概略断面図である。
図3】本発明による継手要素を使用した管状ライナを用いたパイプラインのリハビリテーション方法の一実施形態の部分の概略図である。
図4A】本発明による継手要素を使用した管状ライナを用いたパイプラインのリハビリテーション方法の一実施形態の別の部分の概略図である。
図4B】本発明による継手要素を使用した管状ライナを用いたパイプラインのリハビリテーション方法の一実施形態の別の部分の概略図である。
図4C】本発明による継手要素を使用した管状ライナを用いたパイプラインのリハビリテーション方法の一実施形態の別の部分の概略図である。
図5A】第1のパーツ、第2のパーツ、および任意には第3のパーツを示す、本発明による継手要素の一実施形態の壁部部分の概略図である。
図5B】第1のパーツ、第2のパーツ、および任意には第3のパーツを示す、本発明による継手要素の一実施形態の壁部部分の概略図である。
図5C】第1のパーツ、第2のパーツ、および任意には第3のパーツを示す、本発明による継手要素の一実施形態の壁部部分の概略図である。
図5D】第1のパーツ、第2のパーツ、および任意には第3のパーツを示す、本発明による継手要素の一実施形態の壁部部分の概略図である。
図5E】第1のパーツ、第2のパーツ、および任意には第3のパーツを示す、本発明による継手要素の一実施形態の壁部部分の概略図である。
図6】本発明による継手要素を製造するための方法の種々の実施形態の概略図である。
図7】本発明によるリハビリテーション済みパイプライン・セクションの一部の一実施形態の概略図である。
図8A】既知のリハビリテーション済みパイプライン・セクションの概略断面図である。
図8B】本発明の一実施形態による右側の改良されたリハビリテーション済みパイプライン・セクションの概略断面図である。
図9A】本発明の一実施形態による継手要素の概略断面図である。
図9B図9Aの継手要素とそれに対して連結されたライナとのアセンブリの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による継手要素1の斜視図が示される。この継手要素1は、例えばガラス繊維強化された不飽和ポリエステルなどの、強化繊維および樹脂組成物を含む複合体材料から作製され、強化繊維および実質的に完全に硬化された樹脂組成物からなる第1のパーツ11を備える。継手要素1の第2のパーツ12は、結合可能表面を形成するドライ強化繊維を含む。そのため、この第2のパーツは、継手要素1中に樹脂組成物を実質的に含まない、すなわち作製直後のままの状態である。継手要素1は、周方向体を備え、その外方周方向シェルが第1のパーツ11を形成し、内方周方向シェルが第2のパーツ12を形成する。継手要素1のこれらの両周方向シェルは、周方向14において継手要素1の実質的に全周13にわたり延在する。第2のパーツ12の内方表面121が、ライナ2の外方表面21との接触のために使用可能である(図2)。第1のパーツ11の表面と第2のパーツ12の表面との間に位置する継手要素1の境界層15が、第1のパーツ11と第2のパーツ12とを構造的に連結する。この境界層15は、例えば硬化前の第1のパーツ11を由来とする樹脂により形成されることが可能であり、ドライ強化繊維からなる第2のパーツ12に部分的に含浸される。
【0053】
図2は、損傷したパイプ(セクション)をリハビリテーションするためにライナ2を用いた連結状態にある継手要素1を示す。ライナ2は、典型的には例えば不飽和ポリエステル樹脂で含浸されたフェルトなどの、強化繊維および樹脂組成物の複合物を備える。ライナの外方表面21が、継手要素1の内方表面121に接触される。要素1の第2のパーツ12は、継手要素1とライナ2の少なくとも一部分との間に機能的接合部を形成するために、未硬化のまたは部分的に硬化されたライナ2を任意に由来とする硬化性樹脂組成物を受容し得る。また、これを目的とした別個の硬化性樹脂組成物を第2のパーツ12に備えることが可能である。
【0054】
有利には、継手要素1は、図3および図4に示すように、損傷したパイプ(セクション)3のリハビリテーションにおいて使用される。
【0055】
図3を参照として、損傷したパイプライン3に対する継手要素1の設置を説明する。第1のステップは、典型的には、パイプ3へのアクセスを可能にする穴4を地面に掘削することを含む。次いで、リハビリテーションされることとなるパイプ3が切断される(左上の図)。バッキングフランジ5が、パイプ3の周囲に配置され、穴4の壁部に対接した状態でパイプ3上に設置される(右上の図)。本発明による継手要素1は、パイプ3の端部面が継手要素1の端部面に対接するように既存のパイプ3と同軸状に配置される(中段左の図)。継手要素1は、中段右の図に示すように、ツール6を用いてこの位置に固定される。次いで、ライナ2が、用意され、反転されすなわち継手要素1を通して引かれ、ライナ2の外方表面21と継手要素1の内方表面121との間の良好な接触が実現されるように内部から加圧される(左下の図)。次いで、ライナ2の樹脂組成物が、継手要素1と共に硬化されて、これらの両者間に強力な接合部を形成する。高温水、UV光、雰囲気硬化、または蒸気が、ライナ2の樹脂組成物に応じた硬化を実現するために利用され得る。硬化すると、ライナ2は、必要に応じてトリミングされてもよく、任意にはツール6の除去後に使用可能な状態となる(左下の図)。継手要素1の端部面フランジ部分は、別のパイプセグメントおよび/または別のパイプセグメント上に設けられた別の継手要素1に対する連結のために使用され得る。
【0056】
図4A図4Cは、既存のパイプライン3を修復するために利用される上述のリハビリテーション方法の一部を示す。この方法では、ポリエステル/繊維ガラス布からまたは樹脂含浸に適した複数の他の材料から作製されたフェルト管の形態の樹脂で飽和された未硬化または部分硬化したライナ2が、反転され損傷したパイプ3内へと引き込まれる。ライナ2は、水圧または空気圧7を利用して反転され得る。継手要素1が、パイプ3の端部面に対接して設けられる。ライナ2は、要素1の第1のパーツ11の内方表面121にて継手要素1に接触するまで、パイプ3の内部で膨張および前進される。このプロセスにおいて、ドライ強化材のみを含む継手要素1の第1のパーツ11は、ライナ2を由来とする樹脂で少なくとも部分的に含浸される。次いで、含浸された第1のパーツ11およびライナ2は、例えば高温水、UV光、雰囲気温度、および/または蒸気を適用することによって共硬化される。硬化後には、リハビリテーション済みのパイプ・システム中の他の構成要素に対して連結するために使用することの可能なフランジを有する、密着的な継ぎ目なしの耐腐食性交換パイプ31が形成される。フランジ(継手要素1の端部面)を他の構成要素(図示せず)に対する連結に対して使用可能にするために、ライナ2は、図4Cに示すようにトリミングされてもよい。
【0057】
継手要素1と共にライナ2を硬化した後には、強力な接合部がこれらの両者間に実現される。この結果として、一体化された継手要素1とライナ2のアセンブリが得られる。継手要素1とライナ2との間の良好な接着は、ライナ2が硬化時または硬化後に継手要素1から離れて収縮する傾向を有するため、構造的一体性の理由から重要となる。そのような収縮する傾向は、結果としてライナ2と継手要素1との間の層間剥離をもたらす恐れがある。
【0058】
図5A図5Eは、本発明のコンテクストにおいて許容し得る接合部をもたらす複数の構成を示す。
【0059】
図5Dおよび図5Eは、継手要素1が、未硬化またはBステージの樹脂を含む内方表面121(ライナ2に対して最も近いという意味)を有する構成を示す。表面121は、Bステージ樹脂およびフェルトを備える第3のパーツ16により画定される。この表面は、ライナ2の外方表面と共に硬化されて、図の右側に示すように両構成要素の樹脂組成物同士の間に化学結合部(例えば架橋により得られた)を形成し得る。この実施形態では、接合部の強度は、樹脂組成物の化学適合性および化学特性に依拠し得る。図5Dでは、未硬化またはBステージの樹脂が、フェルト中に提供され、境界層15が、硬化済みパーツ11(例えば硬化済み樹脂中に埋設されたガラス繊維)とパーツ16との間に存在する。図5Eでは、未硬化またはBステージの樹脂が、フェルトの厚さの一部のみにわたりフェルト中に提供され、フェルトの別の厚さ部分は、硬化済みパーツ11(例えば硬化済み樹脂中に埋設されたガラス繊維)とパーツ16との間に境界層15を形成する。
【0060】
図5Aおよび図5Bは、継手要素1がドライ強化繊維のみを含む内方表面121(ライナ2に対して最も近いという意味)を有する、改良された構成を示す。表面121は、図示する実施形態ではフェルトを備える第2のパーツ12により画定される。好ましくは面外方向において繊維を有する、内方に配設されたドライ強化材パーツ12は、例えばフェルトまたはガラス繊維から作製されてもよく、継手要素1の硬化済みパーツ11に対してしっかりと接合される。設置中に、ドライパーツ12は、ライナ2で使用された樹脂と同一の樹脂または適合性を有する樹脂で含浸される。この樹脂は、ライナ2を由来とするものであることが可能であり、または別個に適用され得る。硬化後に、パーツ12は、ライナ2および継手要素1のパーツ11の両方に対してしっかりと装着されることになり、それにより接合部の強度が改善される。図5Aでは、フェルトは、その厚さの一部のみにわたりドライ繊維を含み(パーツ12を形成し)、フェルトの厚さの別の部分が、硬化済みパーツ11(例えば硬化済み樹脂中に埋設されたガラス繊維)とパーツ12との間の境界層15を形成する。図5Bでは、フェルトは、その厚さの一部のみにわたりドライ繊維を含み(パーツ12を形成し)、フェルトの厚さの別の部分が、接着剤を用意することにより硬化済みパーツ11(例えば硬化済み樹脂中に埋設されたガラス繊維)とパーツ12との間の境界層15を形成する。
【0061】
最後に、図5Cは、上述の両機構を組み合わせた混成構成を示す。この実施形態では、フェルトは、その厚さの一部のみにわたりドライ繊維を含み(パーツ12を形成し)、フェルトの厚さの別の部分が、Bステージ樹脂の第3のパーツ16を備える。この境界層は、硬化済みパーツ11、パーツ16とパーツ12の間に存在する。この実施形態では、継手要素1は、ドライ強化繊維のみを含む内方表面121(ライナ2に対して最も近いという意味)を有する。表面121は、図示する実施形態ではフェルトを備える第2のパーツ12により画定される。
【0062】
図6は、継手要素1の可能な作製方法を示す。この図に示すように、継手要素1は、種々の方法で作製することが可能である。実際的な1つの製造方法は、未硬化パーツ11を得るためにマンドレル上に樹脂含浸された強化繊維をフィラメント・ワインディングすることを含み、この場合のマンドレルは、フェルトなどのドライ強化材を事前に備えたものである。しかし、継手要素1は、RTMなどの複数の他の方法で作製することが可能であり、ドライパーツ11の強化材料は、ガラス繊維または他の材料であることがやはり可能である。図6に示す流れ図は、継手要素1を作製する方法に関するいくつかの例を提示する。
【0063】
図7図8、および図9を参照として、本発明の継手要素1の別の実施形態を開示する。図7に示すように、CIPPライナ2は、一般的には構造層20(例えばフェルトおよび/またはガラス繊維材料の形態)から作製され、その構造層20の厚さ部分21は、樹脂飽和されてもよく、すなわち内方側部上においてコーティング層22として知られる熱可塑性層を備える。かかるライナ2は、複数の機能を組み合わせ得る。ライナ2は、ライナ2を設置する最中には膨張可能ブラダとして機能してもよく、液密表面を形成してもよく、使用される樹脂組成物中の化学物質が例えば飲料水などのパイプライン3中を通過する媒体中に移動することを防いでもよい。
【0064】
既知の問題は、ライナ2の設置およびトリミングの後に、ライナ構造層(20、21)の前方側部が、水と直接接触状態になり、これにより、結果として漏れおよび機械的な問題がもたらされる恐れがある点である。したがって、図8Bに示すように、ライナ2の前方側部エッジ23に対する、ゴムシール30を備えるシールが提供される。
【0065】
継手要素1の改良された一実施形態は、例えばその前方側部にて継手要素の周方向溝中に設けられた例えばリングの形態のインサート19を備える。以下に示すように、一例の実施形態は、熱可塑性封止要素31がコーティング層22に対して一方の端部パーツ31aで、およびインサート19に対して別の端部パーツ31bで溶接され得るような、熱可塑性インサート19を備える。これは、継手要素1とライナ2との間に容易かつ信頼性の高いシールを形成する。
【符号の説明】
【0066】
1 継手要素
2 ライナ、CIPPライナ
3 パイプライン、パイプ、パイプセクション
4 穴
5 バッキングフランジ
6 ツール
7 空気圧
11 第1のパーツ
12 第2のパーツ
13 全周
14 周方向
15 境界層、境界薄層
16 第3のパーツ
19 インサート、熱可塑性インサート
20 構造層、ライナ構造層
21 外方表面、厚さ部分、ライナ構造層
22 コーティング層
23 前方側部エッジ
30 ゴムシール
31 耐腐食性交換パイプ、熱可塑性封止要素
31a 端部パーツ
31b 端部パーツ
121 内方表面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B