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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 11/00 20060101AFI20221202BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20221202BHJP
   F21S 41/141 20180101ALI20221202BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20221202BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20221202BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20221202BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221202BHJP
【FI】
B60Q11/00 610B
B60Q11/00 625
B60Q11/00 630
F21S41/675
F21S41/141
F21S41/33
B60Q1/04 D
F21W102:00
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019564708
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2019000299
(87)【国際公開番号】W WO2019139021
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018002789
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018017325
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】柳津 翔平
(72)【発明者】
【氏名】市川 知幸
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104319(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018128(WO,A1)
【文献】特開2015-153657(JP,A)
【文献】特開2015-168305(JP,A)
【文献】特開2014-041803(JP,A)
【文献】特開2004-134147(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04-1/20,11/00
H05B 45/00-45/60
47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光源を含み、前記半導体光源の出射光を灯具前方で走査する走査型光源と、
前記走査型光源の走査と同期して、前記半導体光源の点消灯を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、(i)点灯から消灯への切換の直前、および(ii)消灯から点灯の切換の直前の少なくとも一方を判定タイミングとして、異常の有無を判定し、
前記制御装置は、
前記半導体光源の点消灯を指示する指示信号を生成する点消灯制御部と、
前記半導体光源が実際に点灯状態であるか消灯状態であるかを示す検出信号を生成する検出回路と、
前記判定タイミングにおける、前記指示信号と前記検出信号の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定する判定部と、
を含み、
前記点消灯制御部および前記判定部はマイコンに実装され、
前記マイコンは、自身が出力する前記指示信号を遷移させる直前に割り込み信号を発生し、前記割り込み信号が発生したタイミングにおける前記指示信号と前記検出信号の一致、不一致にもとづいて異常の有無を判定することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
半導体光源を含み、前記半導体光源の出射光を灯具前方で走査する走査型光源と、
前記走査型光源の走査と同期して、前記半導体光源の点消灯を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、(i)点灯から消灯への切換の直前、および(ii)消灯から点灯の切換の直前の少なくとも一方を判定タイミングとして、異常の有無を判定し、
前記制御装置は、
前記半導体光源の点消灯を指示する指示信号を生成する点消灯制御部と、
前記半導体光源が実際に点灯状態であるか消灯状態であるかを示す検出信号を生成する検出回路と、
前記判定タイミングにおける、前記指示信号と前記検出信号の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定する判定部と、
を含み、
前記点消灯制御部はマイコンに実装され、前記判定部の機能が、前記マイコンの外部のハードウェアで実装され、
前記判定部は、
前記指示信号を遅延させる遅延回路と、
前記遅延回路による遅延後の前記指示信号と前記検出信号との一致、不一致を示す信号を出力する論理ゲートと、
前記指示信号のエッジのタイミングで前記論理ゲートの出力をラッチするフリップフロップと、
を含むことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
前記走査型光源は、前記半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査する反射体をさらに含み、
前記制御装置は、1走査周期において最初に発生した点灯から消灯への切換の直前と、最初に発生した消灯から点灯の切換の直前を、前記判定タイミングとすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記反射体によって反射される光が配光パターンの左端および右端を同時照射しないように、1走査周期において1回、消灯期間が挿入されることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記制御装置は、前記半導体光源と並列に設けられたバイパススイッチを含み、
前記検出回路は、前記半導体光源の両端間電圧と所定のしきい値を比較可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記検出回路は、ベースエミッタ間またはゲートソース間に前記半導体光源の両端間電圧が印加された検出トランジスタを含み、前記検出信号は、前記検出トランジスタのオン、オフに応じていることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがってハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADB機能を実現する方式として、アレイ方式とスキャン方式が知られている。アレイ方式は、スクリーンを複数の領域に分割し、各領域を照射する光源を点消灯させることにより、所望の配光パターンを形成する。アレイ方式は、形成可能な配光パターンの空間分解能が、光源の個数によって制約されるという問題がある。
【0005】
一方、スキャン方式は、周期運動を繰り返すリフレクタ(ブレード)に光を入射し、リフレクタの位置に応じた角度で光源からの光を反射して反射光を車両前方で走査する。光源の点消灯を、リフレクタの位置に応じて変化させることで、車両前方に、所望の配光パターンを形成することができる。スキャン方式は、配光パターンの空間分解能を、アレイ方式に比べて飛躍的に高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO/2016/104319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両用灯具では、光源の故障、配線の断線やショートを検出する機能(異常検出機能)が求められる。本発明者らは、スキャン方式の異常検出機能について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0008】
簡単のため、ある配光パターンを長時間にわたり固定的に生成するものとする。アレイ方式では、複数の光源それぞれの点灯/消灯状態、あるいは点灯状態における輝度は一定である。したがって異常判定を長い時間をかけて行うことができる。
【0009】
スキャン方式において、スキャン周波数を200Hzとした場合、1周期は5msとなる。たとえば、配光パターンの中に20%の消灯領域が含まれる場合、光源は、4msの間、点灯し、1msの間、消灯することとなる。つまり1msという短時間の間に異常を検出しなければならない。
【0010】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、異常を検出可能なスキャン方式の車両用灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源を含み、半導体光源の出射光を灯具前方で走査する走査型光源と、走査型光源の走査と同期して、半導体光源の点消灯を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、(i)点灯から消灯への切換の直前、および(ii)消灯から点灯の切換の直前の少なくとも一方を判定タイミングとして、異常の有無を判定する。
【0012】
本発明の別の態様も車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源を含み、半導体光源の出射光を灯具前方で走査する走査型光源と、走査型光源の走査と同期して、半導体光源の点消灯を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、半導体光源の点消灯を指示する指示信号を生成する点消灯制御部と、半導体光源が実際に点灯状態であるか消灯状態であるかを示す検出信号を生成する検出回路と、指示信号が示す状態と検出信号が示す状態の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定する判定部と、を含む。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、スキャン方式の車両用灯具において、異常を確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る車両用灯具を模式的に示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る車両用灯具を備える灯具システムのブロック図である。
図3図3(a)、(b)は、図2の車両用灯具の動作を説明するタイムチャートである。
図4】第1構成例に係る車両用灯具のブロック図である。
図5】検出回路およびバイパススイッチの構成例を示す回路図である。
図6図6(a)、(b)は、第2、第3構成例に係る車両用灯具の一部のブロック図である。
図7図7(a)、(b)は、点消灯制御と判定タイミングを説明するタイムチャートである。
図8】実施の形態2に係る車両用灯具を備える灯具システムのブロック図である。
図9図9(a)~(c)は、車両用灯具の異常検出に関するタイムチャートである。
図10】第1構成例に係る車両用灯具のブロック図である。
図11】検出回路およびバイパススイッチの構成例を示す回路図である。
図12】異常判定部の構成例を示す回路図である。
図13図12の異常判定部の正常時の動作波形図である。
図14図12の異常判定部の負荷ショート時の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態(特に実施の形態1)は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源を含み、半導体光源の出射光を灯具前方で走査する走査型光源と、走査型光源の走査と同期して、半導体光源の点消灯を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、(i)点灯から消灯への切換の直前、および(ii)消灯から点灯の切換の直前の少なくとも一方を判定タイミングとして、異常の有無を判定する。
【0017】
点灯、消灯の指示が発生した後、それに応答して実際に半導体光源の状態が安定化するまでには遅延が存在する。また半導体光源の状態を監視する回路が安定するまでにも遅延が存在する。この実施の形態によれば、点灯状態と消灯状態を切り替えた直前を判定タイミングとすることで、半導体光源や制御装置が安定した状態にもとづいて、異常を検出することができる。なお「直前」は、処理に支障が無い範囲においてある程度の幅を有していてよい。
【0018】
制御装置は、半導体光源の点消灯を指示する指示信号を生成する点消灯制御部と、半導体光源が実際に点灯状態であるか消灯状態であるかを示す検出信号を生成する検出回路と、判定タイミングにおける、指示信号と検出信号の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定する判定部と、を含んでもよい。
【0019】
点消灯制御部および判定部はマイコンに実装されてもよい。マイコンは、自身が出力する指示信号を遷移させる直前に割り込み信号を発生し、そのときの、指示信号と検出信号の一致、不一致にもとづいて異常の有無を判定してもよい。これにより追加のハードウェアを少なくでき、コストを下げることができる。
【0020】
走査型光源は、半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査する反射体をさらに含んでもよい。制御装置は、1走査周期において最初に発生した点灯から消灯への切換の直前と、最初に発生した消灯から点灯の切換の直前を、判定タイミングとしてもよい。これにより、マイコンの負荷を軽減できる。
【0021】
反射体によって反射される光が配光パターンの左端および右端を同時照射しないように、1走査周期において1回、消灯期間が挿入されてもよい。これにより、配光パターンにかかわらず、毎走査周期に、必ず異常の判定を行うことができる。
【0022】
制御装置は、半導体光源と並列に設けられたバイパススイッチを含んでもよい。検出回路は、半導体光源の両端間電圧と所定のしきい値を比較可能に構成されてもよい。バイパススイッチがオンのとき半導体光源は消灯し、このときの半導体光源の両端間の電圧は実質的にゼロである。反対にバイパススイッチがオフのとき半導体光源は点灯し、このとき半導体光源の両端間には、非ゼロの順電圧が発生する。両端間電圧としきい値を比較することにより、点灯期間中の不点灯、あるいは消灯期間中の点灯を検出できる。
【0023】
検出回路は、ベースエミッタ間またはゲートソース間に半導体光源の両端間電圧が印加された検出トランジスタを含み、検出信号は、検出トランジスタのオン、オフに応じていてもよい。これにより、電圧コンパレータなどを用いずに、簡素な構成で検出信号を生成できる。
【0024】
本明細書に開示される一実施の形態(特に実施の形態2)もまた、車両用灯具に関する。
車両用灯具は、半導体光源を含み、半導体光源の出射光を灯具前方で走査する走査型光源と、走査型光源の走査と同期して、半導体光源の点消灯を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、半導体光源の点消灯を指示する指示信号を生成する点消灯制御部と、半導体光源が実際に点灯状態であるか消灯状態であるかを示す検出信号を生成する検出回路と、指示信号が示す状態と検出信号が示す状態の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定する判定部と、を含んでもよい。
【0025】
判定部は、指示信号が示す状態と検出信号が示す状態が不一致のときアサートされる仮判定信号を生成する論理ゲートを含んでもよい。
【0026】
判定部は、マスク時間より短い仮判定信号のアサートをマスクするマスク回路をさらに含んでもよい。
【0027】
判定部は、仮判定信号のアサートを、一走査周期より長いホールド期間の間、保持するホールド回路をさらに含んでもよい。
【0028】
判定部は、仮判定信号のアサートが、所定の判定時間にわたり持続すると、異常状態と本判定してもよい。
【0029】
本判定の機能は、点消灯制御部とともにマイコンに実装されてもよい。
【0030】
制御装置は、半導体光源と並列に設けられたバイパススイッチを含んでもよい。検出回路は、半導体光源の両端間電圧と所定のしきい値を比較可能に構成されてもよい。
【0031】
検出回路は、ベースエミッタ間またはゲートソース間に半導体光源の両端間電圧が印加された検出トランジスタを含み、検出信号は、検出トランジスタのオン、オフに応じてもよい。
【0032】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る車両用灯具1を模式的に示す斜視図である。図1の車両用灯具1は、スキャン方式のADB機能を有し、車両前方に多様な配光パターンを形成する。車両用灯具1は主として、走査型光源10、投影レンズ120および制御装置200を備える。
【0037】
走査型光源102は光源110を含み、光源110の出射光を車両前方で走査する。光源110は複数個、設けてもよいが、ここでは理解の容易化、説明の簡素化のため、1個の光源110の場合を説明する。光源110には、LED(発光ダイオード)あるいはレーザダイオードなどの半導体光源を用いることができる。走査型光源10は、光源110に加えて、リフレクタ(ブレードともいう)100を有する。リフレクタ100は光源110の出射光L1を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光L2を車両前方で水平方向(図中、H方向)に走査する。本実施の形態では、リフレクタ100は、図示しないモータのロータに取り付けられており、回転運動を行なう。ある時刻においてリフレクタ100への入射光L1は、リフレクタ100の位置(ロータの回転角)に応じた反射角で反射し、車両前方に照射領域300を形成する。照射領域300は、水平方向(H方向)、垂直方向(V方向)それぞれに所定の幅を有している。
【0038】
リフレクタ100が回転することで、反射角が変化し、照射領域300の位置(走査位置)が水平走査(H方向)される。この動作を高速に、たとえば50Hz以上で繰り返すことで、車両前方には配光パターン310が形成される。
【0039】
制御装置200は、所望の配光パターン310が得られるように、走査型光源10の走査と同期して、具体的にはリフレクタ100の周期運動と同期しながら、光源110の点消灯を制御する。それにより照度が非ゼロの範囲(点灯領域RON)と、照度がゼロの範囲(消灯領域ROFF)が形成される。配光パターン310は、点灯領域RONと消灯領域ROFFの組み合わせである。なお制御装置200は、点灯領域RONにおいて光源110の光量を変化させてもよい。
【0040】
続いて、車両用灯具1の制御装置200の構成を説明する。図2は、実施の形態1に係る車両用灯具1を備える灯具システム2のブロック図である。灯具システム2は、ECU4および車両用灯具1を備える。ECU4は、車両側に搭載されてもよいし、車両用灯具1に内蔵されてもよい。
【0041】
走査型光源10は、光源110およびリフレクタ100に加えて、モータ130を備える。リフレクタ100はモータ130などの位置決め装置に取り付けられており、モータ130の回転によって、リフレクタ100への出射光L1の入射角(および反射角)が変化し、反射光L2が車両前方で走査される。ECU4は、カメラ情報S1や車両情報S2を受ける。ECU4は、カメラ情報S1にもとづいて、車両前方の状況、具体的には対向車、先行車の有無、歩行者の有無等を検出する。またECU4は、車両情報S2にもとづいて、現在の車速、操舵角などを検出する。ECU4はこれらの情報にもとづいて、車両前方に照射すべき配光パターンを決定し、配光パターンを指示する情報(配光パターン情報)S3を車両用灯具1に送信する。
【0042】
制御装置200は、配光パターン情報S3にもとづいてリフレクタ100の回転と同期しながら光源110のオン、オフを制御する。たとえば制御装置200は主として、点灯回路220、点消灯制御部210、位置検出器202、異常判定部230、を備える。
【0043】
位置検出器202は、リフレクタ100の位置、言い換えれば現在のビームの走査位置を検出するために設けられる。位置検出器202は、リフレクタ100の所定の基準箇所が所定位置を通過するタイミングを示す位置検出信号S4を生成する。たとえば基準箇所は、2枚のリフレクタ100の端部(区切れ目)であってもよいし、各ブレードの中央であってもよく、任意の箇所とすることができる。
【0044】
リフレクタ100を回転させるモータ130には、ホール素子が取り付けられていてもよい。この場合、ホール素子からのホール信号は、ロータの位置、すなわちブレードの位置に応じた周期波形となる。位置検出器202は、ホール信号の極性が反転するタイミングを検出してもよく、具体的には一対のホール信号を比較するホールコンパレータで構成してもよい。
【0045】
点消灯制御部210は、リフレクタ100の運動と同期して、光源110のオン、オフを指示する指示信号S7を生成する。指示信号S7は、オン、オフを示す2値であり、たとえばハイがオンに、ローがオフに対応する。
【0046】
点灯回路220は、定電流ドライバを含むことができ、所定の電流レベルに安定化された駆動電流ILEDを生成する。点灯回路220は、指示信号S7に応じて、光源110に供給する駆動電流ILEDをスイッチングすることが可能に構成される。
【0047】
異常判定部230は、車両用灯具1の異常を検出する。検出対象とする異常の種類は特に限定されないが、たとえば、光源110のショート、オープン、配線のショート、オープン、点灯回路220自体の故障や異常の少なくともひとつを含むことができる。
【0048】
たとえば点灯回路220は、光源110が点灯しているか、消灯しているかを示す検出信号S8を生成可能に構成されている。たとえば、実際に点灯している状態では検出信号S8はハイ、消灯している状態では検出信号S8はローをとるものとする。点消灯の検出方法は特に限定されない。
【0049】
車両用灯具1が正常に動作しているとき、指示信号S7と検出信号S8のレベルは一致する。反対に異常が生じていれば、指示信号S7と検出信号S8のレベルは不一致である。そこで異常判定部230は、2つの信号S7,S8の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定することができる。2つの信号S7,S8の一致、不一致の状態(もしくはそれを示す信号)に、符号S10を付す。
【0050】
異常判定部230は、(i)点灯から消灯への切換の直前、および(ii)消灯から点灯の切換の直前の少なくとも一方を判定タイミングとして、異常の有無を判定する。以下ではそれらの両方を判定タイミングとして説明する。点消灯制御部210は、点灯、消灯の切換(すなわち指示信号S7の遷移)の直前おいてアサート(たとえばハイ)されるタイミング信号S9を生成し、異常判定部230に供給してもよい。
【0051】
以上が車両用灯具1の構成である。続いてその動作を説明する。図3(a)、(b)は、図2の車両用灯具1の動作を説明するタイムチャートである。図3(a)は、正常時の動作を示す。
【0052】
時刻tに、指示信号S7がハイに遷移し、消灯から点灯への切換が指示される。これに応答して、点灯回路220は、駆動電流ILEDを光源110に供給して、光源110を点灯させる。光源110が点灯すると、検出信号S8がハイに遷移する。
【0053】
時刻tに、指示信号S7がローに遷移し、点灯から消灯への切換が指示される。これに応答して、点灯回路220は、駆動電流ILEDを遮断し、光源110を消灯させる。光源110が消灯すると、検出信号S8がローに遷移する。
【0054】
図3(a)に示すように、検出信号S8は指示信号S7に対して遅延する。したがって点消灯の切換直後は回路が正常であったとしても、検出信号S8と指示信号S7の間に不一致が生ずる場合がある。もし点消灯の切換直後に異常判定を行うとすれば、回路が正常であるにもかかわらず、異常と誤判定することとなる。
【0055】
この問題を解決するアプローチとして、遅延に起因する不一致期間(ハッチングを付す)をマスクする方法も考えられる。ただしこのマスク処理には、回路面積が大きなフィルタ回路やタイマーなどが必要となるであろう。
【0056】
これに対して、本実施の形態では、点消灯の切換の直前を判定タイミングとしている。ある切換の直前のタイミングは、前回の切換から最も時間が経過しているため、回路の状態は安定している。したがって回路の応答遅延の影響を受けにくく、正確な判定が可能となる。
【0057】
図3(b)は、点灯指示を与えたにもかかわらず、光源110が点灯しない状況を示す。時刻tに、指示信号S7がハイに遷移し、消灯から点灯への切換が指示される。点灯回路220は、駆動電流ILEDを光源110に供給しようとするが、光源110は点灯できず、したがって検出信号S8はローを維持する。その結果、消灯期間の間、指示信号S7と検出信号S8は不一致となる。
【0058】
時刻tに指示信号S7がローに遷移し、消灯から点灯への切換が指示される。その直前の時刻tが判定タイミングとなる。判定タイミングtにおいて、2つの信号S7,S8は不一致であるから、異常と判定される。
【0059】
以上が車両用灯具1の動作である。この車両用灯具1によれば、点灯状態と消灯状態を切り替えた直前を判定タイミングとすることで、半導体光源110や制御装置200が安定した状態にもとづいて、異常を検出することができる。
【0060】
この方式では、フィルタやタイマーなどが不要であり、小さい回路規模で、正確に異常を検出できる。
【0061】
本発明は、図2のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0062】
図4は、第1構成例に係る車両用灯具1のブロック図である。図4には、異常判定に関連するブロックのみを示すこととし、それ以外のモータ130や位置検出器202は省略している。
【0063】
図4において、光源110は、個別に点灯、消灯が制御可能な複数(ここでは2個)の光源110_1,110_2を含む。2つの光源110_1,110_2は直列に接続される。制御装置200は、2個の光源110_1,110_2の点灯、消灯を、リフレクタの動きと同期して独立に切換可能である。
【0064】
点灯回路220は、定電流コンバータ222、バイパススイッチSWB_1,SWB_2、検出回路224_1,224_2を備える。定電流コンバータ222は、たとえば降圧コンバータ(Buckコンバータ)あるいは昇降圧コンバータであり、その出力電流I OUTをフィードバックにより所定の電流量に安定化する。
【0065】
バイパススイッチSWB_1,SWB_2は、2個の光源110_1,110_2と並列に設けられる。バイパススイッチSWB_i(i=1,2)がオフの状態では、定電流コンバータ222の出力電流IOUTが光源110_iに駆動電流ILEDiとして供給され、光源110_iは点灯する。
【0066】
バイパススイッチSWB_i(i=1,2)がオンの状態では、定電流コンバータ222の出力電流IOUTは、バイパススイッチSWB_iに迂回して流れ、したがって光源110_iへの駆動電流ILEDiが遮断され、光源110_iは消灯する。
【0067】
検出回路224_i(i=1,2)は、対応する光源110_iが実際に点灯しているか否かを検出し、検出信号S8_iを生成する。具体的には検出回路224は、対応する光源110の両端間電圧と所定のしきい値Vthを比較可能に構成される。光源110が消灯した状態では、両端間電圧は実質的にゼロであり、点灯した状態では、順電圧Vfとなる。したがってしきい値Vthは、0<Vth<Vfを満たすように規定すればよい。
【0068】
図2の点消灯制御部210および異常判定部230は、光源110ごとに設けられ、光源ごとに異常の有無が判定される。図4では、点消灯制御部210および異常判定部230は、マイコン250に実装され、したがって点消灯制御部210および異常判定部230の機能はソフトウェアプログラムによって規定される。符号252_1,252_2は、同じ機能が、光源ごとに実装されることを示す。
【0069】
光源110_1およびブロック252_1に着目する。マイコン250(異常判定部230_1)は、自身が出力する指示信号S7_1と、検出回路224_1から供給される検出信号S8_1を受け、それらの一致、不一致を検出可能である。マイコン250(点消灯制御部210_1)は、指示信号S7_1を遷移させる直前に、割り込み信号(上述のタイミング信号S9に相当)を発生し、そのときの、指示信号S7_1と検出信号S8_1の一致、不一致にもとづいて異常の有無を判定する。光源110_2、ブロック252_2も同様である。
【0070】
点消灯制御部210、異常判定部230の機能をマイコン250にソフトウェアで実装することにより、部品点数を減らすことができる。
【0071】
図5は、検出回路224およびバイパススイッチSWBの構成例を示す回路図である。バイパススイッチSWBは、MOSトランジスタ262と、インタフェース回路264を含む。MOSトランジスタ262のソースは対応する光源110のカソードと接続され、ドレインは対応する光源110のアノードと接続される。インタフェース回路264はレベルシフタであり、指示信号S7を適切にレベルシフトし、MOSトランジスタ262のゲート信号を生成する。
【0072】
検出回路224は、検出トランジスタ266およびインバータ268を含む。検出トランジスタはPNP型バイポーラトランジスタであり、ベースエミッタ間に光源110の両端間電圧が印加される。光源110に駆動電流ILEDが供給されて発光状態となると、順電圧Vfがベースエミッタ間に印加され、検出トランジスタ266がオンとなり、コレクタ電流が流れる。インバータ268は、検出トランジスタ266に流れるコレクタ電流を受け、ハイ・ロー2値の検出信号S8に変換する。検出信号S8は、検出トランジスタ266のオン、オフに応じている。
【0073】
図6(a)は、第2構成例に係る車両用灯具1の一部のブロック図である。この構成例では、異常判定部230の機能の一部が、ハードウェアで実装される。具体的には、指示信号S7と検出信号S8の一致、不一致を判定する機能が、論理ゲート270(たとえばXORゲート)で構成される。論理ゲート270の出力は、一致、不一致を示す判定信号S10となる。判定信号S10はマイコン250に入力される。点消灯制御部210が指示信号S7を遷移させる直前のタイミングで、割り込みが発生する。異常判定部230は、割り込みのタイミングでピンに入力される判定信号S10を取得し、異常の有無を判定することができる。
【0074】
図6(b)は、第3構成例に係る車両用灯具1の一部のブロック図である。この構成例では、異常判定部230の機能が、ハードウェアで実装される。点消灯制御部210が生成する指示信号S7は、遅延回路272を経て、バイパススイッチSWBに供給される。したがって遅延後の指示信号S7’が、点消灯の切換を指示する信号となる。
【0075】
論理ゲート270は、指示信号S7’と検出信号S8の一致・不一致を示す判定信号S10を生成する。フリップフロップ(あるいはラッチ)274は、判定信号S10を、遅延前の指示信号S7のタイミングでラッチする。指示信号S7は、遅延後の指示信号S7’よりも前に遷移するため、点消灯の切換直前の判定タイミングを規定するタイミング信号S9として用いることができる。図6(b)の構成では、消灯から点灯への切換のみが監視対象となるが、指示信号S7のネガエッジに応じた信号を、フリップフロップ274のゲートに供給すれば、点灯から消灯への切換も監視対象とすることができる。
【0076】
続いて、判定タイミングの設定例を説明する。図2に示すように、走査型光源10は、複数のリフレクタ100を含み、それらの間には、隙間が設けられる。この場合、光源110の出射光が隙間を跨いで2枚のリフレクタ100に当たると、配光パターンの左端と右端が同時照射されることとなり、光源の点消灯制御が複雑化し、あるいは配光パターンが乱れる要因となる。そこで点消灯制御部210は、リフレクタ100によって反射される光が配光パターンの左端および右端を同時照射しないように、1走査周期において1回、消灯期間(強制消灯期間という)を挿入することとする。この例では、強制消灯期間は、光源110の出射光が2枚のリフレクタ100に同時に当たらないように設けられる。
【0077】
図7(a)、(b)は、点消灯制御と判定タイミングを説明するタイムチャートである。Tは走査周期である。走査周期と走査周期の境界を跨いで、強制消灯期間Tが挿入され、指示信号S7はローとなる。
【0078】
強制消灯期間Tを挿入することで、図7(a)に示すように、配光パターンによらずに、1走査周期に必ず1回、点灯から消灯への切換と、消灯から点灯への切換が発生することとなる。したがってそれらの切換の直前を判定タイミングとすることで、確実な異常検出が可能となる。
【0079】
図7(b)に示すように、配光パターンによっては、強制消灯期間T以外に、1回、あるいは複数回の消灯期間Tが発生する。この場合において、S9’に示すように、すべての点消灯の切換を判定対象としてもよいが、マイコン250の負荷が重くなりすぎる場合もある。
【0080】
そこで、S9”として示すように、1走査周期Tにおいて最初に発生した点灯から消灯への切換の直前と、最初に発生した消灯から点灯の切換の直前を、判定タイミングとしてもよい。これにより1走査周囲Tに含まれる消灯期間Tの数が増えた場合にも、マイコン250の負荷の増加を抑制できる。
【0081】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係る車両用灯具1を備える灯具システム2のブロック図である。灯具システム2は、ECU4および車両用灯具1を備える。ECU4は、車両側に搭載されてもよいし、車両用灯具1に内蔵されてもよい。
【0082】
走査型光源10は、光源110およびリフレクタ100に加えて、モータ130を備える。リフレクタ100はモータ130などの位置決め装置に取り付けられており、モータ130の回転によって、リフレクタ100への出射光L1の入射角(および反射角)が変化し、反射光L2が車両前方で走査される。ECU4は、カメラ情報S1や車両情報S2を受ける。ECU4は、カメラ情報S1にもとづいて、車両前方の状況、具体的には対向車、先行車の有無、歩行者の有無等を検出する。またECU4は、車両情報S2にもとづいて、現在の車速、操舵角などを検出する。ECU4はこれらの情報にもとづいて、車両前方に照射すべき配光パターンを決定し、配光パターンを指示する情報(配光パターン情報)S3を車両用灯具1に送信する。
【0083】
制御装置200は、配光パターン情報S3にもとづいてリフレクタ100の回転と同期しながら光源110のオン、オフを制御する。たとえば制御装置200は主として、点灯回路220、点消灯制御部210、位置検出器202、異常判定部230、を備える。
【0084】
位置検出器202は、リフレクタ100の位置、言い換えれば現在のビームの走査位置を検出するために設けられる。位置検出器202は、リフレクタ100の所定の基準箇所が所定位置を通過するタイミングを示す位置検出信号S4を生成する。たとえば基準箇所は、2枚のリフレクタ100の端部(区切れ目)であってもよいし、各ブレードの中央であってもよく、任意の箇所とすることができる。
【0085】
リフレクタ100を回転させるモータ130には、ホール素子が取り付けられていてもよい。この場合、ホール素子からのホール信号は、ロータの位置、すなわちブレードの位置に応じた周期波形となる。位置検出器202は、ホール信号の極性が反転するタイミングを検出してもよく、具体的には一対のホール信号を比較するホールコンパレータで構成してもよい。
【0086】
点消灯制御部210は、リフレクタ100の運動と同期して、光源110のオン、オフを指示する指示信号S7を生成する。指示信号S7は、オン、オフを示す2値であり、たとえばハイがオンに、ローがオフに対応する。
【0087】
点灯回路220は、定電流ドライバを含むことができ、所定の電流レベルに安定化された駆動電流ILEDを生成する。点灯回路220は、指示信号S7に応じて、光源110に供給する駆動電流ILEDをスイッチングすることが可能に構成される。
【0088】
異常判定部230は、車両用灯具1の異常を検出する。検出対象とする異常の種類は特に限定されないが、たとえば、光源110のショート、オープン、配線のショート、オープン、点灯回路220自体の故障や異常を含むことができる。
【0089】
たとえば点灯回路220は、光源110が実際に点灯しているか、消灯しているかを示す検出信号S8を生成可能に構成されている。たとえば、実際に点灯している状態では検出信号S8はハイ、消灯している状態では検出信号S8はローをとるものとする。点消灯の検出方法は特に限定されない。
【0090】
異常判定部230は、指示信号S7が示す状態(点灯・消灯)と検出信号S8(点灯・消灯)が示す状態の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定する。本実施の形態では、車両用灯具1が正常に動作しているとき、指示信号S7と検出信号S8のレベルは一致する。反対に異常が生じていれば、指示信号S7と検出信号S8のレベルは不一致である。そこで異常判定部230は、2つの信号S7,S8の一致、不一致にもとづいて、異常の有無を判定することができる。
【0091】
図9(a)~(c)は、車両用灯具1の異常検出に関するタイムチャートである。2つの信号S7,S8の一致、不一致の状態(もしくはそれを示す仮判定信号)に、符号S10を付す。仮判定信号(仮判定状態)S10は、一致のとき(つまり正常であるとき)にロー、不一致のとき(つまり異常であるとき)にハイとなる。
【0092】
図9(a)は、正常状態を示す。正常状態では、常に点灯信号S7と検出信号S8の論理レベルは一致する。なお詳しくは後述するが、点灯信号S7が変化してから、実際に光源110の状態が変化し、検出信号S8の値が安定化するまでにはある遅延が存在するが、ここではそのような遅延は無視している。
【0093】
図9(b)は、点灯指示を与えたときに点灯しない異常状態を示す。このような異常モードは、負荷(すなわち光源110)のショートによって発生しうる。
【0094】
図9(c)は、消灯指示を与えたときに消灯しない異常状態を示す。このような異常モードは、点消灯を制御するためのスイッチや回路の異常によって発生しうる。
【0095】
以上が車両用灯具1の動作である。この車両用灯具1によれば、時々刻々と現れる点灯期間、消灯期間ごとに、常に、指示信号S7と検出信号S8の一致・不一致を監視し続けることにより、光源110や点灯回路220において生じうる異常を高速かつ確実に検出できる。
【0096】
本発明は、図8のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0097】
図10は、第1構成例に係る車両用灯具1のブロック図である。図10には、異常判定に関連するブロックのみを示すこととし、それ以外のモータ130や位置検出器202は省略している。
【0098】
図10において、光源110は、個別に点灯、消灯が制御可能な複数(ここでは2個)の光源110_1,110_2を含む。2つの光源110_1,110_2は直列に接続される。制御装置200は、2個の光源110_1,110_2の点灯、消灯を、リフレクタの動きと同期して独立に切換可能である。
【0099】
点灯回路220は、定電流コンバータ222、バイパススイッチSWB_1,SWB_2、検出回路224_1,224_2を備える。定電流コンバータ222は、たとえば降圧コンバータ(Buckコンバータ)あるいは昇降圧コンバータであり、その出力電流I OUTをフィードバックにより所定の電流量に安定化する。
【0100】
バイパススイッチSWB_1,SWB_2は、2個の光源110_1,110_2と並列に設けられる。バイパススイッチSWB_i(i=1,2)がオフの状態では、定電流コンバータ222の出力電流IOUTが光源110_iに駆動電流ILEDiとして供給され、光源110_iは点灯する。
【0101】
バイパススイッチSWB_i(i=1,2)がオンの状態では、定電流コンバータ222の出力電流IOUTは、バイパススイッチSWB_iに迂回して流れ、したがって光源110_iへの駆動電流ILEDiが遮断され、光源110_iは消灯する。
【0102】
検出回路224_i(i=1,2)は、対応する光源110_iが実際に点灯しているか否かを検出し、検出信号S8_iを生成する。具体的には検出回路224は、対応する光源110の両端間電圧と所定のしきい値Vthを比較可能に構成される。光源110が消灯した状態では、両端間電圧は実質的にゼロであり、点灯した状態では、順電圧Vfとなる。したがってしきい値Vthは、0<Vth<Vfを満たすように規定すればよい。
【0103】
点消灯制御部210は、光源110_1,110_2それぞれに対する指示信号S7_1,S7_2を生成する。点消灯制御部210は、マイコン250に実装され、したがって点消灯制御部210の機能はソフトウェアプログラムによって規定される。
【0104】
異常判定部230は、第1論理ゲート232_1,232_2、第2論理ゲート234、マスク回路236、ホールド回路238、本判定処理部240を備える。
【0105】
第1論理ゲート232_1,232_2は、光源110_1,110_2に対応する。論理ゲート232_i(i=1,2)は、対応する検出信号S8_iと対応する指示信号S7_iの一致、不一致を示す仮判定信号S10_iを生成する。たとえば論理ゲート232は、XOR(排他的論理和)ゲートを用いることができ、仮判定信号S10_iは、2つの入力の論理レベルが一致のときロー、不一致のときハイとなる。以下では、仮判定信号S10の不一致に対応する状態をアサート、一致に対応する状態をネゲートともいう。
【0106】
第2論理ゲート234は、2つの仮判定信号S10_1,S10_2を論理演算して、1系統にまとめる。第2論理ゲート234は、仮判定信号S10_1,S10_2の少なくとも一方がアサートされると、その出力S11をアサートし、仮判定信号S10_1,S10_2の両方がネゲートであるとき、その出力S11はネゲートである。
【0107】
マスク回路236は、1系統にまとめられた仮判定信号S11のノイズを除去する。具体的には、マスク回路236は、マスク時間より短い仮判定信号S11のアサートをマスクする。マスク時間は、指示信号S7に対する検出信号S8の遅延を考慮して定めればよく、数十ms~1ms程度とするとよい。マスク回路236によって、遅延に起因する誤検知を防止できる。マスク回路236は、ローパスフィルタや遅延回路で構成することができ、その構成は特に限定されない。
【0108】
ホールド回路238は、マスク回路236を経た仮判定信号S12のアサートを、一走査周期(たとえば5ms)より長いホールド期間にわたり保持する。一走査周期の間に、必ず点灯期間と消灯期間が含まれるような制御が行われる場合、ホールド回路238を設けることにより、サイクルごとに異常の判定が解除されるのを防止できる。ホールド期間は、たとえば数十msとすることができる。ホールド回路238は、フィルタ回路やワンショット回路で構成でき、その構成は特に限定されない。
【0109】
本判定処理部240は、仮判定信号S13のアサートが所定の判定時間にわたり持続すると、異常状態と本判定する。判定時間は、ホールド時間より長く規定され、たとえば数百ms~数千msとすることができる。
【0110】
図11は、検出回路224およびバイパススイッチSWBの構成例を示す回路図である。バイパススイッチSWBは、MOSトランジスタ262と、インタフェース回路264を含む。MOSトランジスタ262のソースは対応する光源110のカソードと接続され、ドレインは対応する光源110のアノードと接続される。インタフェース回路264はレベルシフタであり、指示信号S7を適切にレベルシフトし、MOSトランジスタ262のゲート信号を生成する。
【0111】
検出回路224は、検出トランジスタ266およびインバータ268,270を含む。検出トランジスタはPNP型バイポーラトランジスタであり、ベースエミッタ間に光源110の両端間電圧が印加される。光源110に駆動電流ILEDが供給されて発光状態となると、順電圧Vfがベースエミッタ間に印加され、検出トランジスタ266がオンとなり、コレクタ電流が流れる。インバータ268は、検出トランジスタ266に流れるコレクタ電流を受け、ハイ・ロー2値の信号に変換する。インバータ270は、インバータ268の出力を反転し、検出信号S8を生成する。検出信号S8は、検出トランジスタ266のオン、オフに応じており、点灯のとき検出信号S8はハイ、消灯のとき検出信号S8はローである。
【0112】
図12は、異常判定部230の構成例を示す回路図である。仮判定信号S10は異常状態においてアサートされる信号であり、図12においてアサート(不一致)はハイ、ネゲート(一致)はローである。第2論理ゲート234は、NORゲートであり、複数の仮判定信号S10の少なくともひとつがアサート(ハイ)のときに、その出力はアサート(ロー)となる。
【0113】
マスク回路236は、キャパシタを用いたフィルタである。キャパシタC11の一端は接地される。トランジスタTr11は、第2論理ゲート234の出力S11がネゲート(すなわちハイ、正常状態)であるときにオンとなり、キャパシタC11を充電する。
【0114】
トランジスタTr11は、第2論理ゲート234の出力S11がアサート(すなわちロー、異常状態)であるときにオフとなる。このとき、キャパシタC11は抵抗R11,R12を介して放電され、緩やかに低下していく。抵抗R11、R12およびキャパシタC11によって、上述のマスク時間が規定される。
【0115】
キャパシタC11の電圧Dは、抵抗R11,R12によって分圧され、トランジスタTr12のベースに入力される。
【0116】
正常状態においてトランジスタTr11がオンすると、キャパシタC11の電圧Dが上昇し、トランジスタTr12にコレクタ電流が流れ、ノイズマスク後の仮判定信号S12はローとなる。
【0117】
反対に、異常状態がマスク時間にわたり持続すると、キャパシタC11の電圧Dが低下し、トランジスタTr12のコレクタ電流が遮断され、仮判定信号S12がハイとなる。
【0118】
ホールド回路238の初段のトランジスタTr21,抵抗R21,R22はインバータを形成しており、仮判定信号S12が反転される。異常状態において仮判定信号S12がハイとなると、トランジスタTr22にコレクタ電流が流れ、キャパシタC21が充電され、キャパシタC21の電圧Eが瞬時に上昇する。正常状態において仮判定信号S12がローのとき、トランジスタTr22はオフであり、キャパシタC21は、抵抗R23,R24を介して緩やかに放電され、キャパシタC21の電圧Eが緩やかに低下する。抵抗R23、R24およびキャパシタC12によって、上述のホールド時間が規定される。キャパシタC12の電圧Eは、抵抗R23,R24によって分圧され、トランジスタTr23のベースに入力される。
【0119】
図13は、図12の異常判定部230の正常時の動作波形図である。時刻tより前において指示信号S7はローであり、消灯期間である。消灯期間において、バイパススイッチSWBのMOSトランジスタ(図11の262)がゲートソース間電圧Vgsはハイであり、MOSトランジスタ262はオンしており、そのドレインソース間電圧Vdsはゼロ付近となっている。
【0120】
時刻tに指示信号S7がハイに遷移し、点灯期間に移行する。バイパススイッチSWBのMOSトランジスタ262のゲートソース間電圧Vgsが低下し、MOSトランジスタ262がターンオフする。これにより、MOSトランジスタ262のドレインソース間電圧Vdsが増大し、時刻tに、光源110のしきい値電圧Vfを超えると、光源110に駆動電流ILEDが流れはじめ、点灯する。
【0121】
時刻tの直後の期間(t~t)、検出信号Bは消灯を示すハイであり、したがって仮判定信号Cは、回路が正常であるにもかかわらず、一時的に不一致を示すハイ(アサート)となる。ただし一時的な仮判定信号Cのアサートは、マスク回路236に規定したマスク時間より短い。したがってキャパシタC11の電圧Dの低下幅は小さく、トランジスタTr12はオンを維持する。マスク回路236の出力S12はローのままであるから、キャパシタC21の電圧Eも0Vを維持しつづけ、ホールド回路238の出力Fは正常を示すハイを維持する。時刻tに指示信号S7がローに遷移する。その後の動作も同様である。
【0122】
図14は、図12の異常判定部230の負荷ショート時の動作波形図である。時刻tより前は正常であり、その動作は図13と同様である。
【0123】
時刻tに、光源110_1のショートが発生する。そうすると、検出信号Bがローとなり、仮判定信号Cが不一致を示すハイとなる。時刻tに、仮判定信号Cのハイ期間がマスク時間を超えると、仮判定信号S12がハイ(アサート)となる。仮判定信号S12のアサートに応答して、キャパシタC21の電圧Eが上昇し、異常検出信号Fはローとなる。その後、キャパシタC21の電圧Eは時間ともに緩やかに低下していく。
【0124】
時刻tに、指示信号Aがローとなると、仮判定信号Cは一致を示すローに戻る。時刻tに指示信号Aがハイとなり、マスク時間経過後の時刻tに仮判定信号S12が再びアサートされる。このアサートに応答して、キャパシタC21が再び充電され、電圧Eがハイに戻る。キャパシタC21の電圧Eが高い状態では、異常検出信号Fはローを維持し続ける。
【0125】
時刻tに、正常状態に復帰する。やがてキャパシタC21の電圧Eが低下し、トランジスタTr23がオフすると、異常検出信号Fはハイに戻る。
【0126】
以上、本発明について、いくつかの実施の形態を参照して説明した。この実施の形態1は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0127】
(第1変形例)
検出回路224をフォトダイオードで構成し、光源110の発光の有無を直接的に監視してもよい。
【0128】
(第2変形例)
実施の形態では2枚のリフレクタ100の場合を説明したが、ブレードの枚数は限定されず、1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。また実施の形態では、リフレクタ100を回転運動させる場合を説明したが、リフレクタ100は往復運動させてもよい。
【0129】
(第3変形例)
光源110としては、LEDの他に、LD(レーザダイオード)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの半導体光源を用いてもよい。
【0130】
(第4変形例)
走査型光源10の構成にもさまざまな変形例が存在する。実施の形態では、反射体としてブレード型を採用したが、それに限定されない。たとえばポリゴンミラーやガルバノミラーを用いてもよいし、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャンミラーを用いてもよい。
【0131】
(第5変形例)
走査型光源10は反射型に限定されず、光源110の向きをアクチュエータによって変化させてもよい。
【0132】
(第6変形例)
実施の形態2に関連して、点灯状態を、指示信号S7と検出信号S8の同一レベルに、消灯状態をそれらの別の同一レベルに割り当てたがその限りでない。たとえば、光源の点灯状態を、指示信号S7と検出信号S8の異なるレベルに割り当ててもよく、この場合には、2つの信号の比較結果が不一致であるときに正常、一致であるときに異常と判定すればよい。
【0133】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0134】
1 車両用灯具、 2 灯具システム、 4 ECU、 10 走査型光源、 100
リフレクタ、 110 光源、 120 投影レンズ、 130 モータ、 200 制御装置、 202 位置検出器、 210 点消灯制御部、 220 点灯回路、 222 定電流コンバータ、 224 検出回路、 230 異常判定部、 232 第1論理ゲート、 234 第2論理ゲート、 236 マスク回路、 238 ホールド回路、 240 本判定処理部、 250 マイコン、 SWB バイパススイッチ、 262 MOSトランジスタ、 264 インタフェース回路、 224 検出回路、 266 検出トランジスタ、 268 インバータ、 270 論理ゲート、 230 異常判定部、 300 照射領域、 310 配光パターン、 S1 カメラ情報、 S2
車両情報、 S3 配光パターン情報、 S4 位置検出信号、 S7 指示信号、 S8 検出信号、 S10 仮判定信号。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、車両用灯具に利用できる。
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