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  • 特許-自動二輪車用タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20221202BHJP
   B60C 11/11 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/03 300C
B60C11/11 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019569626
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003733
(87)【国際公開番号】W WO2019151505
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018016986
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】松田 光之
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-071711(JP,A)
【文献】特開2005-193784(JP,A)
【文献】特開2015-134578(JP,A)
【文献】特開2013-035537(JP,A)
【文献】特開2012-030615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318675(US,A1)
【文献】特開2008-120351(JP,A)
【文献】特開2012-136186(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187295(WO,A1)
【文献】特開2015-113085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成されたトレッド部を備えた、回転方向が指定された自動二輪車用タイヤにおいて、
前記トレッド部のタイヤ赤道上に形成された中央ブロックからなる中央ブロック列と、該中央ブロック列よりもタイヤ幅方向外側に形成された中間ブロックからなる少なくとも1列の中間ブロック列と、タイヤ幅方向において最外のブロックとなるショルダーブロックからなるショルダーブロック列と、を有し、
前記中央ブロックと、前記中間ブロック列のうちタイヤ幅方向最も内側の中間ブロック列を構成する中間ブロックとが、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向において離間しており、
前記ショルダーブロックよりも回転方向後着側に位置する前記中間ブロックほど、タイヤ幅方向最外端部がタイヤ幅方向内側であり、
前記中間ブロック列が2列であり、タイヤ幅方向内側の第1の中間ブロック列を構成する中間ブロックのタイヤ赤道側の壁部、タイヤ幅方向外側の第2の中間ブロック列を構成する中間ブロックのタイヤ赤道側の壁部、および前記ショルダーブロックのタイヤ赤道側の壁部が凹状であり、
前記第1の中間ブロック列を構成する中間ブロックにおいて、タイヤ赤道側の壁部における回転方向先着側端部と回転方向後着側端部とを結んだ直線L1と、タイヤ赤道側の壁部における回転方向後着側端部とタイヤ赤道側の壁部の前記L1から最も遠い点とを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ1、前記第2の中間ブロック列を構成する中間ブロックにおいて、タイヤ赤道側の壁部における回転方向先着側端部と回転方向後着側端部とを結んだ直線L2と、タイヤ赤道側の壁部における回転方向後着側端部とタイヤ赤道側の壁部の前記L2から最も遠い点とを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ2、前記ショルダーブロックにおいて、タイヤ赤道側の壁部における回転方向先着側端部と回転方向後着側端部とを結んだ直線L3と、タイヤ赤道側の壁部における回転方向後着側端部とタイヤ赤道側の壁部の前記L3から最も遠い点とを結んだ線と、のなす角のうち小さい方を
θ3、としたとき、下記式(1)、
θ1>θ2>θ3 (1)
で表される関係を満足することを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称す)に関し、詳しくは、トラクション性能を確保しつつ、従来よりも、旋回時のグリップ性が向上した自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
砂地や泥濘地等の不整地での走行を目的とした、不整地走行用の自動二輪車用タイヤは、トレッド部に複数のブロックを配したブロックパターンが採用されている。今日、このようなタイヤにおいて、様々なトレッドパターンが提案されている。例えば、特許文献1では、直進トラクション性能を向上させると共に、旋回性能をも向上させた自動二輪車用タイヤが提案されている。
【0003】
具体的には、トレッド部に設けたブロックを、中央ブロック、中間ブロック、ショルダーブロックと分け、中央ブロックの直進トラクション性を高めるために、中央ブロックを、周方向に垂直なエッジを持ち、かつ、タイヤ幅方向に対して幅広としており、また、旋回時のグリップ性を高めるために、中央ブロックおよび中間ブロックのタイヤ周方向に対する重なり合い部分を無くした自動二輪車用タイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-113111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日、不整地での使用を目的としたモトクロスおよびエンデューロ用のタイヤにおいては、直進トラクション性および旋回時のグリップ性に対する要望がさらに高まっており、さらなる改良が求められているのが現状である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、トラクション性能を確保しつつ、従来よりも、旋回時のグリップ性が向上した自動二輪車用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、タイヤ赤道上に形成された中央ブロックと、中央ブロックよりもタイヤ幅方向外側に形成された中間ブロックと、タイヤ幅方向において最外のブロックとなるショルダーブロックとを有するタイヤにおいては、中央ブロックと中間ブロックとのタイヤ周方向およびタイヤ幅方向における配置位置を適正化することで、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の自動二輪車用タイヤは、環状に形成されたトレッド部を備えた、回転方向が指定された自動二輪車用タイヤにおいて、
前記トレッド部のタイヤ赤道上に形成された中央ブロックからなる中央ブロック列と、該中央ブロック列よりもタイヤ幅方向外側に形成された中間ブロックからなる少なくとも1列の中間ブロック列と、タイヤ幅方向において最外のブロックとなるショルダーブロックからなるショルダーブロック列と、を有し、
前記中央ブロックと、前記中間ブロック列のうちタイヤ幅方向最も内側の中間ブロック列を構成する中間ブロックとが、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向において離間しており、
前記ショルダーブロックよりも回転方向後着側に位置する前記中間ブロックほど、タイヤ幅方向最外端部がタイヤ幅方向内側であり、
前記中間ブロック列が2列であり、タイヤ幅方向内側の第1の中間ブロック列を構成する中間ブロックのタイヤ赤道側の壁部、タイヤ幅方向外側の第2の中間ブロック列を構成する中間ブロックのタイヤ赤道側の壁部、および前記ショルダーブロックのタイヤ赤道側の壁部が凹状であり、
前記第1の中間ブロック列を構成する中間ブロックにおいて、タイヤ赤道側の壁部における回転方向先着側端部と回転方向後着側端部とを結んだ直線L1と、タイヤ赤道側の壁部における回転方向後着側端部とタイヤ赤道側の壁部の前記L1から最も遠い点とを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ1、前記第2の中間ブロック列を構成する中間ブロックにおいて、タイヤ赤道側の壁部における回転方向先着側端部と回転方向後着側端部とを結んだ直線L2と、タイヤ赤道側の壁部における回転方向後着側端部とタイヤ赤道側の壁部の前記L2から最も遠い点とを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ2、前記ショルダーブロックにおいて、タイヤ赤道側の壁部における回転方向先着側端部と回転方向後着側端部とを結んだ直線L3と、タイヤ赤道側の壁部における回転方向後着側端部とタイヤ赤道側の壁部の前記L3から最も遠い点とを結んだ線と、のなす角のうち小さい方を
θ3、としたとき、下記式(1)、
θ1>θ2>θ3 (1)
で表される関係を満足することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トラクション性能を確保しつつ、従来よりも、旋回時のグリップ性が向上した自動二輪車用タイヤを提供することができる。本発明のタイヤは、泥濘地を含む不整地での使用を目的としたモトクロスおよびエンデューロ用のタイヤに好適に用いることができ、特に、リアタイヤに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一好適な実施の形態に係る自動二輪車用タイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1に示される自動二輪車用タイヤのX-X線における断面図である。
図3】本発明の一好適な実施の形態に係る自動二輪車用タイヤの中間ブロックおよびショルダーブロックの平面図であり、(a)は第1の中間ブロック、(b)は第2の中間ブロック、(c)はショルダーブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の自動二輪車用タイヤについて、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一好適な実施の形態に係る自動二輪車用タイヤのトレッド部の展開図であり、図2は、図1に示される自動二輪車用タイヤのX-X線における断面図である。ここで、図中の矢印は回転方向であり、走行中、タイヤは矢印側から接地することになる。本発明の自動二輪車用タイヤ1は、環状に形成されたトレッド部10と、トレッド部10の両側に連なるサイドウォール部20およびビード部30を有する。また、本発明のタイヤ1は、トレッド部10のタイヤ赤道CL上に形成された中央ブロック11と、中央ブロック11よりもタイヤ幅方向外側に形成された中間ブロック12と、タイヤ幅方向において最外のブロックとなるショルダーブロック13と、を有している。
【0013】
図示する本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤ1においては、中央ブロック11は、タイヤ幅方向の長さが異なる2種の中央ブロック11Aと中央ブロック11Bとからなっており、これらが中央ブロック列を形成している。中間ブロック12は、タイヤ幅方向における位置が異なる2種のブロックからなっており、タイヤ幅方向内側の第1の中間ブロック12Aと、タイヤ幅方向外側の第2の中間ブロック12Bとが、それぞれ中間ブロック列を形成している。また、タイヤ幅方向において最外のブロックとなるショルダーブロック13がショルダーブロック列を形成している。そして、中央ブロック11、第1の中間ブロック12A、第2の中間ブロック12B、およびショルダーブロック13は、タイヤ周方向に沿って所定の間隔で全周にわたって配置されている。さらに、図示例においては、中央ブロック11は、タイヤ赤道CLを挟んで線対称形状に形成されており、タイヤ幅方向の長さがタイヤ周方向よりも長く、タイヤ幅方向外側端部が僅かに回転方向側へ傾斜するように角度がつけられた多角形状とされている。さらにまた、図示例においては、中間ブロック12A、12Bおよびショルダーブロック13についても、タイヤ赤道CLを挟んで線対称形状となるように形成されている。
【0014】
本発明のタイヤ1においては、中央ブロック11と、中間ブロック列のうちタイヤ幅方向最も内側の中間ブロック列を構成する中間ブロック12Aとが、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向において離間している。自動二輪車用のタイヤは、大きく倒しこまない旋回時において、中間ブロック12Aの接地時、中央ブロック11も同時に接地しており、この時、中央ブロック11が前後方向の力は負担し、中間ブロック12Aは横方向の力を負担すると考えられる。ここで、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向において、中央ブロック11と中間ブロック12Aとが重なり合っていると、中央ブロック11と中間ブロック12Aとが同一平面と化してしまい、中間ブロック12Aのタイヤ赤道CL側の壁部が、横方向に対するエッヂ効果を、十分に発揮できなくなってしまう。
【0015】
そこで、本発明のタイヤ1には、タイヤ周方向において、中央ブロック11Aと中間ブロック12Aとのタイヤ周方向の間隔W1、中央ブロック11Bと中間ブロック12Aとのタイヤ周方向の間隔W2、中央ブロック11Aと中間ブロック12Aとのタイヤ幅方向の間隔W3、中央ブロック11Bと中間ブロック12Aとのタイヤ幅方向の間隔W4を設け、中央ブロック11と中間ブロック列のうちタイヤ幅方向最も内側の中間ブロック列を構成する中間ブロック12Aとが、タイヤ周方向にもタイヤ幅方向にも重なり合わない構成としている。図示例においては、タイヤ幅方向の長さが長い中央ブロック11Aと、第1の中間ブロック12Aとの間に、間隔W1、W2、W3、W4が設けられている。これにより、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向のエッジ成分の重なり合いを抑えて、直進トラクション性を確保しながら、従来よりも旋回時のグリップ性を向上させている。好ましくは、全ての中間ブロックが、中央ブロック11とタイヤ周方向およびタイヤ幅方向において離間している。なお、中間ブロック列が1列しか設けられていない場合は、この中間ブロック列が、タイヤ幅方向最も内側の中間ブロック列となる。
【0016】
本発明のタイヤ1においては、トラクション性を確保するためには、W1およびW2は、7~15mmであることが好ましい。また、旋回時のグリップ性を向上させるためには、W3およびW4は、4~18mmであることが好ましい。
【0017】
本発明のタイヤ1においては、ショルダーブロック13よりも回転方向後着側に位置する中間ブロック12ほど、タイヤ幅方向最外端部がタイヤ幅方向内側であることが好ましい。すなわち、図示するように、ショルダーブロック13よりも回転方向後着側の中間ブロック12Bのタイヤ幅方向最外端部は、ショルダーブロック13のタイヤ幅方向最外端部よりもタイヤ幅方向内側であり、さらに回転方向後着側の中間ブロック12Aのタイヤ幅方向最外端部は、中間ブロック12Bのタイヤ幅方向最外端部よりもタイヤ幅方向内側であることが好ましい。このような構成とすることで、本発明の効果をより良好に得ることができる。
【0018】
また、本発明のタイヤ1においては、図示するように、中間ブロック12のタイヤ赤道CL側の壁部が、凹状であることや、ショルダーブロック13のタイヤ赤道CL側の壁部が、凹状であることが好ましい。このように、中間ブロック12やショルダーブロック13のタイヤ赤道CL側の壁部を凹状とすることで、直線状の場合と比較して、横方向の力を効果的に受けることができ、よりグリップ性能を向上させることができる。例えば、中間ブロック列のうちタイヤ幅方向最も内側の中間ブロック列を構成する中間ブロック12Aのタイヤ赤道CL側の壁部を凹状とすることで、小キャンバー領域から中キャンバー領域でのコーナリンググリップ性能を向上させることができる。なお、本発明のタイヤ1においては、凹状の形状については特に制限はなく、例えば、図示するような、タイヤ赤道CL側の壁部が2本の直線状の壁部からなる構造であってもよく、これ以外にも、回転方向先着側端部と回転方向後着側端部をと結ぶ円弧状でもよく、矩形状であってもよい。
【0019】
本発明のタイヤ1においては、図示するように、中間ブロック12が、タイヤ幅方向における位置が異なる2種のブロック12A、12Bからなり、タイヤ幅方向内側の第1の中間ブロック12Aのタイヤ赤道CL側の壁部、タイヤ幅方向外側の第2の中間ブロック12Bのタイヤ赤道CL側の壁部、およびショルダーブロック13のタイヤ赤道CL側の壁部が、全て凹状であることが、より好ましい。
【0020】
図3は、本発明の一好適な実施の形態に係る自動二輪車用タイヤの中間ブロックおよびショルダーブロックの平面図であり、(a)は第1の中間ブロック、(b)は第2の中間ブロック、(c)はショルダーブロックを示す。本発明のタイヤ1においては、図示するように、中間ブロック列を2列とし、第1の中間ブロック12Aにおいて、タイヤ赤道CL側の壁部における回転方向先着側端部12Aaと回転方向後着側端部12Abとを結んだ直線L1と、回転方向後着側端部12Abとタイヤ赤道CL側の壁部のL1から最も遠い点12Acとを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ1、第2の中間ブロック12Bにおいて、タイヤ赤道CL側の壁部における回転方向先着側端部12Baと回転方向後着側端部12Bbとを結んだ直線L2と、回転方向後着側端部12Bbとタイヤ赤道CL側の壁部のL2から最も遠い点12Bcとを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ2、ショルダーブロック13において、タイヤ赤道CL側の壁部における回転方向先着側端部13aと回転方向後着側端部13bとを結んだ直線L3と、回転方向後着側端部13bとタイヤ赤道CL側の壁部のL3から最も遠い点13cとを結んだ線と、のなす角のうち小さい方をθ3、としたとき、下記式(1)、
θ1>θ2>θ3 (1)
で表される関係を満足することが好ましい。
【0021】
すなわち、中間ブロック12を2列として、中間ブロック12およびショルダーブロック13の全てのブロックのタイヤ赤道CL側の壁部を凹状とし、かつ、タイヤ幅方向外側に向かうにつれ、ブロックのタイヤ赤道CL側の壁部の凹状の角度θ1、θ2およびθ3を順次小さくすることが好ましい。このような構成とすることで、タイヤ赤道CLに近い第1の中間ブロック12Aが横方向の力を十分に受け止め、グリップ性能を確保することができる。他方、第2の中間ブロック12B、ショルダーブロック13と、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて壁部の凹状の傾斜を小さくすることで、中キャンバー領域から大キャンバー領域でのコーナリング時に横方向の力を逃がすことができ、タイヤを滑らせることが可能になる。
【0022】
このような効果を良好に得るためには、θ1、θ2およびθ3は、
6°≦θ1≦12°
3°≦θ2≦8°
1°≦θ3≦5°
であることが好ましい。
【0023】
また、本発明のタイヤ1においては、タイヤ周方向に対する直線L1の角度θa、タイヤ周方向に対する直線L2の角度θb、およびタイヤ周方向に対する直線L3の角度θcについて、下記式(2)、
θc>θb>θa (2)
で表される関係を満足することが好ましい。すなわち、タイヤ幅方向外側に配置されるブロックほど、タイヤ赤道CL側の壁部のタイヤ周方向に対する傾斜を大きくすることが好ましい。かかる関係を満足することで、タイヤ赤道CLに近い第1の中間ブロック12Aが横方向の力を十分に受け止め、よりグリップ性能を向上させることができ、第2の中間ブロック12B、ショルダーブロック13と、ショルダー側に向かうにつれ、タイヤ赤道CL側の壁部のタイヤ周方向に対する傾斜を大きくすることで、より横方向の力を逃がすことができ、タイヤを滑らせることが可能になる。好適には、
0°≦θa≦7°
5°≦θb≦10°
8°≦θc≦15°
である。
【0024】
本発明のタイヤ1においては、トレッド部10に配置されたブロックが、上記関係を満足することのみが重要であり、これにより本発明の所期の効果を得ることができ、それ以外のタイヤ構造や材質等の条件については、特に制限されるものではない。本発明のタイヤについて、一好適な実施の形態として、2列の中間ブロック列を有するタイヤ1を用いて説明してきたが、中間ブロック列の数はこれに限られるものではない。例えば、中間ブロック12として、第2の中間ブロック12Bのタイヤ幅方向外側に、第3の中間ブロック、第4の中間ブロック等を設け、中間ブロック列を3列や4列としてもよい。また、中間ブロック列は1列であってもよい。
【0025】
また、図示例においては、タイヤ赤道CL近傍に、タイヤ赤道CLを挟んで線対象形状となるように、2種の凹部14a、14bがタイヤ周方向に沿って所定の間隔で全周にわたって配置されている。この凹部14a、14bは、図示例においては、タイヤ幅方向外側が回転方向側に向かって傾斜している。さらに、図示例においては、各ブロック11、12A、12B、13に、凹部14cが設けられている。図示例においては、全てのブロックに凹部14cが設けられているが、本発明のタイヤ1においては、一部のブロックのみに凹部を設けてもよい。さらにまた、本発明のタイヤ1においては、中央ブロック11、中間ブロック12、ショルダーブロック13の高さ、凹部14a、14b、14cの深さについても特に制限はなく、目的に応じて、適宜設計することができる。
【0026】
また、本発明のタイヤ1は、少なくとも1枚のカーカスプライを骨格とし、トレッド部10におけるカーカスプライのタイヤ半径方向外側には、少なくとも1層のベルト層を配置することができる。このベルト層は、例えば、周方向に螺旋状に巻回されたゴム被覆コードからなるスパイラルベルト層とすることができる。また、ビードコアのタイヤ半径方向外側にはビードフィラーを配置することもできる。ベルト層を構成する補強材としては、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド(商品名:ケブラー)、スチール等が挙げられる。中でも、芳香族ポリアミドやスチールは高温時においても伸長せずにトレッド部分の膨張を抑制することができる。
【0027】
さらに、本発明のタイヤ1の骨格をなすカーカスプライは、比較的高弾性のテキスタイルコードを互いに平行に配列してなる。カーカスプライの枚数は、1枚でも2枚でもよく、3枚以上でもかまわない。カーカスプライの両端部は、ビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止しても、両側からビードワイヤで挟み込んで係止してもよく、いずれの固定方法を用いてもよい。また、タイヤの最内層にはインナーライナーを配置することができる。
【0028】
さらにまた、本発明のタイヤ1においては、トレッド部10のトレッド表面側のキャップゴムとトレッド底面側のベースゴムとからなる2層構造とし、キャップゴムとベースゴムの硬度が異なるものとしてもよい。トレッドゴムを硬度の異なるキャップゴムとベースゴムの2層構造とすることで、路面コンディションに応じて、硬いキャップゴムと軟らかいベースゴムとの組み合わせ、または軟らかいキャップゴムと硬いベースゴムとの組み合わせ、といったようにブロック全体の剛性を変えることなく、必要な特性の確保が可能となる。なお、キャップゴムおよびベースゴムの硬度は、常法に従い、ゴム組成物やその充填剤を適宜選択することで実現することができる。
【0029】
本発明のタイヤ1は、トラクション性能を確保しつつ、従来よりも、旋回時のグリップ性が向上しているため、泥濘地を含む不整地での使用を目的としたモトクロスおよびエンデューロ用のタイヤに好適に用いることができる。特に、リアタイヤとして好適である。
【実施例
【0030】
以下、本発明のタイヤを、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1~4および参考例>
中央ブロック、第1の中間ブロック、第2の中間ブロックおよびショルダーブロックを有する、図1に示すタイプのタイヤを、タイヤサイズ:140/80-18M/Cにて作製する。中央ブロック11Aと中間ブロック12Aとのタイヤ周方向の間隔W1、中央ブロック11Bと中間ブロック12Aとのタイヤ周方向の間隔W2、中央ブロック11Aと中間ブロック12Aとのタイヤ幅方向の間隔W3、中央ブロック11Bと中間ブロック12Aとのタイヤ幅方向の間隔W4、凹状の角度θ1、θ2、θ3は、下記表1に示すとおりである。
【0031】
<比較例1>
中央ブロック、第1の中間ブロック、第2の中間ブロックおよびショルダーブロックを有するが、中央ブロックおよび第1の中間ブロックが、タイヤ周方向において重複すること以外は、実施例1~5と同様なタイプのタイヤを作製する。中央ブロック11Aと中間ブロック12Aとのタイヤ周方向の間隔W1、中央ブロック11Bと中間ブロック12Aとのタイヤ周方向の間隔W2、中央ブロック11Aと中間ブロック12Aとのタイヤ幅方向の間隔W3、中央ブロック11Bと中間ブロック12Aとのタイヤ幅方向の間隔W4、凹状の角度θ1、θ2、θ3は、下記表1に示すとおりである。
【0032】
得られたタイヤにつき、トラクション性能およびグリップ性能について、下記の手順にて評価を行う。なお、オフロード用のタイヤにおいては,オンロード用のタイヤのように、コーナリング時にきっちり路面をとらえて旋回するのではなく,タイヤを滑らせて車体の向きを素早く変える必要がある。オフロードバイクは、サーキットのような緩いコーナーを曲がることはほとんどなく、狭い場所での急な方向転換が求められるためである。そのため、車体をあまり倒しこまない領域でのコーナリングはグリップが重視され、車体を倒しこんでのコーナリングは滑りが重視される。そこで、下記の評価項目であるグリップ性能および操縦性能は、それぞれ、中間ブロックの評価およびショルダーブロックの評価となる。
【0033】
<トラクション性能>
各タイヤを装着した車両でトラクション性能を評価する。トラクション性能はドライバーのフィーリングで評価する。評価結果は、参考例のタイヤにおける評価を100とした指数にて表示する。得られた結果を表1に併記した。なお、トラクション性能は、指数が100以上であれば、十分な性能を発揮することができる。
【0034】
<グリップ性能>
各タイヤを装着した車両でウェット路面を走行することにより行う。グリップ性能はドライバーのフィーリングで評価する。評価結果は、参考例のタイヤにおける評価を100とした指数にて表示する。得られた結果を表1に併記する。
【0035】
<操縦性能>
各タイヤを装着した車両でウェット路面における操縦性(滑り)を評価する。操縦性は、タイヤが大きく倒れこんだ時の指数であり、ドライバーのフィーリングで評価する。評価結果は、参考例のタイヤにおける評価を100とした指数にて表示する。得られた結果を表1に併記する。
【0036】
【表1】
【0037】
表1より、本発明のタイヤは、トラクション性能を確保しつつ、従来よりも、旋回時のグリップ性が向上していることがわかる。
【符号の説明】
【0038】
1 自動二輪車用タイヤ(タイヤ)
10 トレッド部
11 中央ブロック
12 中間ブロック
13 ショルダーブロック
14 凹部
20 サイドウォール部
30 ビード部
図1
図2
図3