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特許7186740DCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法
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  • 特許-DCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】DCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20221202BHJP
   H02P 7/29 20160101ALI20221202BHJP
【FI】
H02P7/06 G
H02P7/29 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020046545
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021151019
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀樹
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-034471(JP,A)
【文献】特開平03-032388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 25/08-25/098
H02P 29/00-31/00
H02P 7/00
H02P 7/03-7/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCブラシモータのコイルにモータ電流を供給する駆動回路と、
前記DCブラシモータを起動した後、所定の期間が経過した後に前記モータ電流の上限を設定する制限値を段階的に低下させ、前記モータ電流が前記制限値によって制限される状態になったことを検知する制御回路と、
を具備することを特徴とするDCブラシモータの駆動装置。
【請求項2】
前記駆動回路のスイッチング素子のオン/オフを制御するPWM信号を供給するPWM制御回路を備えることを特徴とする請求項1に記載のDCブラシモータの駆動装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記駆動回路のスイッチング素子に生じた電圧降下の値に基づいて前記モータ電流を検出することを特徴とする請求項2に記載のDCブラシモータの駆動装置。
【請求項4】
DCブラシモータを起動するステップと、
前記DCブラシモータの起動から所定の期間が経過した後に、前記DCブラシモータのコイルに供給されるモータ電流の上限を設定する制限値を段階的に低下させるステップと、
前記モータ電流が前記制限値によって制限される状態になったことを検出するステップと、
を有するDCブラシモータの駆動方法。
【請求項5】
前記モータ電流が制限された時の前記制限値を記録するステップと、
前記記録された制限値の内の特定の値を基礎データとして記録するステップと、
前記モータ電流が制限された時の前記制限値と前記基礎データとを比較し、その比較結果に応じて前記DCブラシモータの状態を判定するステップを有することを特徴とする請求項4に記載のDCブラシモータの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、DCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに供給される出力電流を検出して、モータや負荷機械の劣化による異常を検出する技術が開示されている。モータの異常は長年の経時変化による劣化の場合が多い。ユーザにとっては、モータの劣化の判定が難しい場合が有る。一方、モータの劣化をユーザに適宜示すことで、利便性が高まる。DCブラシモータは、起動時にラッシュ電流が発生する等の特有な特性を有する。DCブラシモータの特性を踏まえ、劣化に伴う異常な状態を容易に検出することが出来るDCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-158086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、DCブラシモータの劣化を容易に検出することが出来るDCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、DCブラシモータの駆動装置は、DCブラシモータのコイルにモータ電流を供給する駆動回路と、前記DCブラシモータを起動した後、所定の期間が経過した後に前記モータ電流の上限を設定する制限値を段階的に低下させ、前記モータ電流が前記制限値によって制限される状態になったことを検知する制御回路と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態のDCブラシモータの駆動装置を示す図。
図2】DCブラシモータの駆動装置の駆動方法を説明する為の図。
図3】DCブラシモータの駆動方法を説明するためのフローチャート。
図4】DCブラシモータの駆動方法を説明するための他のフローチャート。
図5】DCブラシモータのモータ電流を検知する一つの実施形態を示す図。
図6】DCブラシモータの駆動装置の劣化状態を検出する他の駆動方法を説明する為の図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるDCブラシモータの駆動装置、及び駆動方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のDCブラシモータの駆動装置の構成を示す図である。図1の駆動装置は、駆動回路10、電圧検出回路20、30、逆電圧検出回路21、31、PWM制御回路40、制御ロジック回路50、タイミングコントローラ60、70、及び電流方向セレクト回路61、71を有する。
【0009】
駆動回路10は、ロータ100に設けられたコイル101に、ブラシ102、103を介してモータ電流Iを供給する。図1のモータ電流Iは、ブラシ102側からブラシ103側に供給される場合を示している。駆動回路10は、Hブリッジ回路を構成するPMOS型のトランジスタ11、13、NMOS型のトランジスタ12、14を有する。トランジスタ11~14はそれぞれ、寄生ダイオード11D~14Dを有する。トランジスタ11のドレインとトランジスタ12のドレインの接続点はブラシ102に接続される。トランジスタ13のドレインとトランジスタ14のドレインの接続点はブラシ103に接続される。駆動回路10には、電源110によってモータ電圧VMが供給される。
【0010】
制御ロジック回路50は、電流方向セレクト回路61、71及びタイミングコントローラ60、70から供給される信号に応答してPWM制御回路40を制御する。制御ロジック回路50は、電圧回路111から供給される参照電圧Vrefを用いてモータ電流Iの上限値を設定するリミット値を生成する。制御ロジック回路50は、例えば、参照電圧Vrefの値をA/D変換し、所定の係数による演算を行ってリミット値に対応する電圧を生成する。リミット値とリミット値に対応して生成された電圧の値は、内蔵するメモリ(図示せず)に保存される。制御ロジック回路50は、電流方向セレクト回路61、71を介して供給される電圧検出回路20、30及び逆電圧検出回路21、31の検出電圧とリミット値に対応する電圧を比較する。制御ロジック回路50は、その比較結果に応じてPWM信号のデューティ比を制御する信号をPWM制御回路40に供給する。制御ロジック回路50は、例えばマイクロコンピュータ(microcomputer)で構成することが出来る。
【0011】
PWM制御回路40は、制御ロジック回路50から制御信号が供給されると、制御信号に応じてデューティ比を調整したPWM信号を出力する。PWM制御回路40は、11~14の各ゲートにPWM信号を供給し、トランジスタ11~14のオン/オフを制御する。これにより、PWM制御回路40は、モータ電流Iの制御を行い、ロータ100の回転方向、及び、回転速度を制御する。
【0012】
電圧検出回路20、30は、ソース電圧を基準にしたトランジスタ12、14のソース・ドレイン間電圧を検出する。トランジスタ12、14のソース・ドレイン間電圧は、モータ電流Iに応じてトランジスタ12、14のオン抵抗によって生じる電圧降下である。従って、電圧検出回路20は、ブラシ103側からブラシ102側に流れるモータ電流Iによって生じたトランジスタ12の電圧降下を検出する。また、電圧検出回路30は、ブラシ102側からブラシ103側に流れるモータ電流Iによって生じたトランジスタ14の電圧降下を検出する。トランジスタ12、14における電圧降下はモータ電流Iに応じて生じる為、トランジスタ12、14における電圧降下の値に基づいてモータ電流Iを検出することが出来る。
【0013】
逆電圧検出回路21、31は、ドレイン側を基準にしてトランジスタ12、14のソース・ドレイン間電圧を検出する。すなわち、逆電圧検出回路21、31は、ソースからドレインに流れる逆方向のドレイン電流によってソース・ドレイン間に生じた逆電圧を検出する。例えば、モータ電流Iの上限値を制限する制御において、モータ電流Iがゼロを下回り、ロータ100の回転が逆方向に加速される場合が有る。制御ロジック回路50は、逆電圧検出回路21、31が逆電圧を検知した場合にPWM制御回路40を制御し、ロータ100の回転が逆方向に加速される状態を防止する。以降、ロータ100の回転数をモータの回転数と呼ぶ場合が有る。
【0014】
電流方向セレクト回路61、71は、タイミングコントローラ60、70の制御に応じて、電圧検出回路20、30、逆電圧検出回路21、31の検出電圧を制御ロジック回路50に供給する。タイミングコントローラ60、70は、トランジスタ12、14のソース側を基準にした電圧を検出する場合には電圧検出回路20、30を選択し、トランジスタ12、14のドレイン側を基準にした電圧を検出する場合には逆電圧検出回路21、31を選択する。
【0015】
タイミングコントローラ60は、電流方向セレクト回路61が電圧検出回路20、逆電圧検出回路21の検出電圧を制御ロジック回路50に供給するタイミング、及び、制御ロジック回路50がモータ電流Iのリミット値を変化させるタイミングを制御する。同様に、タイミングコントローラ70は、電流方向セレクト回路71が電圧検出回路30、逆電圧検出回路31の検出電圧を制御ロジック回路50に供給するタイミング、及び、制御ロジック回路50がモータ電流Iのリミット値を変化させるタイミングを制御する。例えば、表示装置120に、制御ロジック回路50が検出したモータの劣化状態を表示する。尚、モータ電流Iのリミット値を変化させるタイミングは、制御ロジック回路50において設定しても良い。
【0016】
本実施形態の駆動方法を、図2を用いて説明する。図2(A)は、DCブラシモータに劣化が生じていない初期段階の駆動方法を説明する為の図である。例えば、劣化が生じていない出荷時に行い、基礎データを取得する。以降、DCブラシモータを、単にモータと呼ぶ場合が有る。横軸は時間を示す。実線130はモータ電流のリミット値、実線140はモータの回転数、実線150はモータ電流Iを示す。モータの起動時には、コイル101に逆起電力が発生しない為、電源電圧VMがそのままコイル101に印加されラッシュ電流が流れる。その後、モータの回転数に応じてコイル101に生じる逆起電力によってモータ電流Iの値は減少し、安定する。尚、モータ起動時のリミット値は、例えば、想定されるラッシュ電流の上限値よりも高い基準値に設定する。
【0017】
モータ電流Iが安定したタイミングt1で、リミット値を基準値からV3に低下させる。すなわち、モータ電流Iの上限値を、リミット値V3によって制限する状態にする。ラッシュ電流の期間は、例えば、モータ電流Iが、起動時から破線155で示す予め設定したしきい値Ithよりも低下するまでとすることが出来る。しきい値Ithに対応した電圧を制御ロジック回路50に保存しておき、検出電圧と比較する。これにより、モータ電流Iがしきい値Ithまで低下したタイミングt1を検出することが出来る。尚、モータ電流Iが安定化した状態においては、モータの回転数も安定化する。従って、モータの回転数が安定化したタイミング、あるいは、モータ電流Iとモータの回転数の両方が安定化したタイミングを、タイミングt1としても良い。モータの回転数は、タコメータ(図示せず)を用いて検出し、検出結果を制御ロジック回路50に供給する構成とすることが出来る。
【0018】
制御ロジック回路50は、検出電圧とリミット値V3に対応する電圧値とを比較して、モータ電流Iがリミット値V3に達するか否かを検出する。比較の結果、モータ電流Iがリミット値V3に達しない為、制御ロジック回路50は、タイミングt2においてリミット値V2に下げる。モータ電流Iがリミット値V2に達していない為、制御ロジック回路50は、タイミングt3においてリミット値V1に下げる。比較の結果、モータ電流Iがリミット値V1に達した為、下段に示すリミット検出信号がHレベルになる。制御ロジック回路50は、モータ電流Iがリミット値V1によって制限される定電流動作になる様にPWM制御回路40を制御する。
【0019】
制御ロジック回路50は、リミット値V1に応じてPWM信号のディユーティ比を調整する制御信号をPWM制御回路40に供給する。PWM制御回路40は、リミット値V1に応じてデューティ比が調整されたPWM信号を駆動回路10に供給する。駆動回路10のトランジスタ11~13のオン/オフは、リミット値V1に応じてデューティ比が調整されたPWM信号によって制御される。これにより、リミット値V1で制御される定電流動作が行われる。制御ロジック回路50において検出電圧とリミット値V1に対応する電圧とを比較することによってリミット値V1による定電流動作が行われていることを検出することが出来る。モータの回転数は、リミット値V1で制限されるモータ電流Iに連動して変化する。
【0020】
続いて、タイミングt4で、リミット値V2に上げる。モータ電流Iはリミット値V2より低い為、タイミングt4でリミット検出信号はLレベルになり、リミット値V1による定電流動作は終了する。続いて、タイミングt5において、リミット値V3に上げる。リミット値を、モータ電流Iに対して十分余裕を持ったリミット値V3にすることで、負荷変動によるモータ電流Iの変動を許容する。これにより、モータの回転数が負荷変動に追従する安定したモータ駆動に移行させることができる。
【0021】
定電流動作が行われたリミット値V1、及び、タイミングt3は、劣化が生じていないモータの駆動状態を示す基礎データとなる。また、タイミングt4で定電流動作が終了したことを検出した場合には、例えば、無負荷状態におけるモータの実際の使用電流がリミット値V1とV2の間であることが把握できる。劣化が生じていないモータの実際の使用電流の基礎データとなる。
【0022】
図2(B)は、図2(A)の駆動方法で取得した基礎データとの比較によって、モータの劣化の状態を検出する駆動方法を説明する為の図である。実線131はモータ電流Iのリミット値、実線141はモータの回転数、実線152はモータ電流Iを示す。破線151は、図2(A)の実線150に対応する。また、各タイミングt1~t5は、図2(A)のタイミングt1~t5に対応する。
【0023】
図2(A)と同様に、モータの回転数が安定したタイミングt1で、リミット値を基準値からV3に低下させる。リミット値V3の状態で、制御ロジック回路50は、駆動回路10で定電流動作が行われているか否かを検出する。モータ電流Iは、リミット値V3よりも小さい為、リミット値V3による定電流動作は行われていないと判定される。従って、下段に示すリミット検出信号はLレベルになる。
【0024】
続いて、タイミングt2でリミット値V2に低下させる。図示の例では、劣化によりモータ電流Iが増えているため、モータ電流Iはリミット値V2に達している。この為、リミット値V2で制御される定電流動作が行われ、モータ電流Iは減少する。タイミングt2でリミット検出信号はHレベルとなる。すなわち、劣化が生じていないモータにおいて定電流動作が行われたタイミングt3よりも前のタイミングt2において定電流動作が行われる。
【0025】
続いて、タイミングt3で、リミット値V1に低下させる。モータ電流Iは、リミット値V1に達しているため、リミット値V1による定電流動作が行われる。リミット検出信号は、Hレベルを維持する。続いて、タイミングt4で、リミット値V2に上げる。モータ電流Iは、リミット値V2に達しているため、リミット値V2による定電流動作が行われる。リミット検出信号は、Hレベルを維持する。続いて、タイミングt5において、リミット値V3に上げる。モータ電流Iはリミット値V3に達しない為、リミット値V3による定電流動作は行われず、リミット検出信号はLレベルになる。モータの回転数は、リミット値V1、V2で制限されるモータ電流Iに連動して変化する。
【0026】
モータに劣化が生じている場合には、モータ電流Iが増加する。従って、劣化が生じていないモータの駆動状態を示す基礎データと比較することで、モータの劣化の程度を把握することが出来る。例えば、劣化がない状態の場合には、モータはリミット値V2においては定電流動作が行われない。これに対し、劣化が進んだ場合には、モータはリミット値V2において定電流動作が行われる。従って、劣化がない場合に定電流動作となる基礎データのリミット値V1と使用を開始してから定電流動作が行われるリミット値V2とを比較することでモータの劣化状態を把握することが出来る。また、リミット値に達したか否かは、リミット検出信号がHレベルになったか否かによってデジタル的に判定することが出来る為、モータの劣化状態の判断が容易である。更に、リミット検出信号を表示装置120に表示することで、モータの劣化の状態をユーザに知らせることが出来る。
【0027】
尚、実施形態においては、リミット値を基準値から段階的に低下させたが、リミット値、リミット値を段階的に変化させるステップ数、あるいは、リミット値を変化させるタイミングを適宜設定することで、汎用性を高めることが出来る。更に、モータの起動時に基礎データとの比較を自動的に行い、その結果を表示装置120に表示することで、モータの劣化情報をユーザに対してタイムリに通知することが出来る。
【0028】
図3は、図2(A)に示すモータの駆動方法を説明するためのフローチャートである。モータを起動する(S301)。起動時に生じるラッシュ電流の期間が経過した場合(S302:Yes)には、モータの回転数が安定したか否かを判定する(S303)。例えば、図示しないタコメータからの信号により、モータの回転数が安定したか否かを判定する。ラッシュ電流の期間が経過していない場合(S302:No)には、ラッシュ電流の期間が経過するのを待つ。
【0029】
モータの回転数が安定した場合(S303:Yes)には、モータ電流Iがリミット値に達することはないか判定する(S304)。モータの回転数が安定しない場合(S303:No)には、モータの回転数が安定するまで待つ。モータ電流Iがリミット値に達する場合(S304:No)には、リミット値に達しない状態になるまで待つ。
【0030】
モータ電流Iがリミット値に達しない場合(S304:Yes)には、リミット値を下げる(S305)。下げたリミット値を用いてモータ電流Iの検出を行い、リミット検出信号の出力の有無を判定する(S306)。リミット検出信号が出力されない場合(S306:No)、すなわち、リミット検出信号がLレベルの場合には、リミット値を下げる(S305)。
【0031】
リミット検出信号が出力された場合(S306:Yes)、すなわち、リミット検出信号がHレベルの場合には、リミット値による定電流動作が行われたか否かを判定する(S307)。リミット値による定電流動作が行われない場合(S307:No)には、リミット値を下げる(S305)。リミット値による定電流動作が行われた場合(S307:Yes)には、その時のリミット値V1を記録する(S308)。
【0032】
続いて、リミット値を上げ(S309)、リミット検出信号の出力の有無を判定する(S310)。リミット検出信号が出力されない場合(S310:No)には、その時のリミット値V2を記録する(S311)。リミット検出信号が出力された場合(S310:Yes)には、リミット値を上げる(S309)。
【0033】
リミット値V2を記録(S311)した後、リミット値を更に上げる(S312)。既述した様に、リミット値V2に対して十分に余裕を持たせたリミット値V3に上げる。これにより、モータ電流Iがリミット値に制限されない通常の駆動状態に移行させることが出来る。
【0034】
尚、ラッシュ電流の期間が経過した後にリミット値をアナログ的に下げ、モータ電流Iが反応した時のリミット値を記録しても良い。検出電圧とリミット値に対応する電圧とを制御ロジック回路50において比較し、リミット検出信号を検出することでモータ電流Iが反応したリミット値を検知することが出来る。
【0035】
図4は、図2(B)の駆動方法に基づくフローを示す。尚、図3の駆動方法で取得したリミット値V1~V3、及びタイミングt1~t5のデータは、例えば、制御ロジック回路50に保存されている。モータを起動し(S401)、ラッシュ電流の期間が経過したか否かを判定する(S402)。ラッシュ電流の期間が経過した場合(S402:Yes)には、モータの回転数が安定したか否かを判定する(S403)。ラッシュ電流の期間が経過していない場合(S402:No)には、ラッシュ電流の期間が経過するのを待つ。
【0036】
モータの回転数が安定した場合(S403:Yes)には、モータ電流Iがリミット値に達することがないか判定する(S404)。モータの起動時のリミット値は、例えば、基準値に設定されている。モータ電流Iがリミット値に達する場合(S404:No)には、リミット値に達しない状態になるまで待つ。モータの回転数が安定しない場合(S403:No)には、モータの回転数が安定するまで待つ。
【0037】
モータ電流Iがリミット値に達することがない場合(S404:Yes)には、タイミングt1、t2において段階的にリミット値をV3、V2に下げ、タイミングt3でリミット値V1にする(S405)。リミット検出信号が検出され(S406:Yes)、リミット値V1による定電流動作が行われた場合(S407:Yes)には、リミット値V2に上げる(S408)。リミット値をV2に上げ、リミット検出信号が出力されるか否かを検出することによりモータの劣化状態を判定することが出来る。リミット検出信号が検出されない場合(S406:No)、及び、定電流動作が行われない場合(S407:No)には、非劣化状態であることを知らせる(S411)。
【0038】
リミット検出信号が出力された場合(S409:Yes)には、劣化状態であることを知らせる(S410)。例えば、表示装置120に、劣化が生じていることを表示する。リミット検出信号が検出されない場合(S409:No)には、非劣化状態であることを知らせる(S411)。
【0039】
続いて、リミット値を上げる(S412)。リミット値をリミット値V2に対して十分に余裕を持たせたリミット値V3に上げる。これにより、モータ電流Iがリミット値に制限されない通常の駆動状態に移行させることが出来る。
【0040】
尚、S402~S404の判定を行うこと無く、タイミングt1においてリミット値V3で、リミット検出信号が出力されるか否かの判定(S406)を行ってもよい。また、常時ではなく負荷の変動が少ないモータの起動時の安定した状態で判定してもよい。例えば、起動からタイミングt5までの短い時間内で効率的にモータの劣化状態を判定してもよい。
【0041】
劣化が生じていないモータの場合には、リミット値V1でリミット検出信号が検出されるのに対して、劣化が進んだモータの場合には、リミット値V1、V2でリミット検出信号が出力される。制御ロジック回路50は、基礎データと検出データとの比較によりモータの劣化状態の判定を行う。モータ起動時に基礎データと検出データとの比較を自動的に行い、その結果を表示装置120に表示することで、モータの劣化状況をユーザにタイムリに通知することが出来る。
【0042】
尚、リミット検出信号が出力された場合(S409:Yes)に、劣化を知らせる(S410)と共に、モータの駆動動作を停止させる制御を行っても良い。モータ駆動を自動的に停止させることで、劣化したモータを使用することによる消費電力の増加を抑制することが出来る。また、モータのメンテナンスが必要であることを表示装置120に表示して、ユーザの注意を喚起しても良い。
【0043】
図5は、駆動回路10の他の構成例を示す図である。図5の駆動回路10は、トランジスタ12、14のソースと接地間に接続された抵抗80を有する。抵抗80には、モータ電流Iが、トランジスタ12又は14を介して供給される。従って、抵抗80に生じた電圧降下は、モータ電流Iに応じた電圧となる。抵抗80に生じた電圧降下の値を制御ロジック回路50に供給することで、モータ電流Iを検出することが出来る。
【0044】
図6は、モータの劣化状態を検出する他の駆動方法を説明する為の図である。横軸に時間、縦軸にはリミット値、及びモータ電流Iを示す。破線132は、リミット値の基準値を示す。図2の基準値に対応する。破線153は、図2(A)の実線150に対応し、劣化が生じていないモータのモータ電流Iを示す。実線154は、図2(B)の実線152に対応し、劣化が進んだモータのモータ電流Iを示す。
【0045】
図6では、起動時において、基準値より低い、実線133が示すリミット値V10に設定する。すなわち、リミット値V10によりラッシュ電流を制限する。
【0046】
リミット値V10で制限されたモータ電流Iは、コイル101の逆起電力の作用により減少する。モータの劣化が進んだ場合には、劣化が進んでいない場合に比べてモータ電流Iが大きくなる。従って、モータの劣化の進行状態により、モータ電流Iが減少して実線134で示す、比較の為に設定した参照値V11の値になるまでの時間に差が生じる。例えば、モータに劣化が生じている場合には、劣化が生じていない場合よりも参照値V11まで低下するタイミングが遅くなる。従って、モータ電流Iが参照値V11まで低下するタイミングを制御ロジック回路50によって計測し、モータの劣化状態を検出することが出来る。例えば、制御ロジック回路50は、タイミングt10を基礎データの参照時間とし、タイミングt10とタイミングt11の時間差が所定のしきい値時間よりも長くなった場合にモータの劣化が進んでいると判断する。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10 駆動回路、20、30 電圧検出回路、21、31 逆電圧検出回路、40 PWM制御回路、50 制御ロジック回路、100 ロータ、101 コイル、102、103 ブラシ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6