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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】乗員下肢拘束装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/206 20110101AFI20221202BHJP
   B60R 21/045 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B60R21/206
B60R21/045
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020112195
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022011206
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 瞬
(72)【発明者】
【氏名】田口 博之
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
(72)【発明者】
【氏名】中村 順一
(72)【発明者】
【氏名】牧岡 孝行
(72)【発明者】
【氏名】中島 豊
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188206(JP,A)
【文献】特開平11-139233(JP,A)
【文献】特開2003-306114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0062264(US,A1)
【文献】特表2001-519745(JP,A)
【文献】特開2015-189333(JP,A)
【文献】特開2003-220920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方座席に乗車している乗員の下肢を拘束する乗員下肢拘束装置であって、
車両の衝突発生時に、インストルメントパネルの下面から乗員の下肢方向に向かって突出する拘束用パネルと;
前記拘束用パネルを前記インストルメントパネルから離脱させる第1の方向に移動させる第1の機構と;
前記拘束用パネルを前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる第2の機構とを備え、
前記第1の方向は、前記インストルメントパネルの前記下面と概ね直交する方向であり、
前記第2の方向は、前記拘束用パネルの上方部分が乗員から離れるように当該拘束用パネルを回動させ、当該拘束用パネルの水平方向に対する傾斜角度を大きくする方向であることを特徴とする乗員下肢拘束装置。
【請求項2】
前記第1の機構がエアバッグであり、
前記第2の機構がピストンであることを特徴とする請求項に記載の乗員下肢拘束装置。
【請求項3】
前記第1の機構及び前記第2の機構が、前記拘束用パネルの背面側において膨張展開する単一のエアバッグであり、
前記エアバッグの展開形状によって前記拘束用パネルの移動を制御可能に構成されたことを特徴とする請求項に記載の乗員下肢拘束装置。
【請求項4】
前記エアバッグは、展開した状態における前記インストルメントパネルの下面からの距離が、上方部分よりも下方部分の方が大きいことを特徴とする請求項に記載の乗員下肢拘束装置。
【請求項5】
前記第1の機構がピストンであり、
前記第2の機構がエアバッグであることを特徴とする請求項に記載の乗員下肢拘束装置。
【請求項6】
前記拘束用パネルは、当該装置の作動前の状態においては、前記インストルメントパネルの下面の一部を構成することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の乗員下肢拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインストルメントパネルの内部に収容され、車両衝突発生時に乗員の下肢を拘束する乗員下肢拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の事故発生時に乗員や歩行者を保護するために複数のエアバッグを当該車両に設けるようになってきている。エアバッグ装置の種類としては、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネル(ドア)との間で展開するサイドエアバッグ、前席に着座している乗員の下肢を保護するニーエアバッグなどがある。
【0003】
ニーエアバッグは、運転席においては、ステアリングコラムの下、助手席では、通常はグローブボックスの下、すなわち、何れの場合もインストルメントパネルの下に配置される。このようなニーエアバッグは、乗員の膝、大腿及び腰の負傷のリスクを大幅に低減するとともに、乗員の腰を適切な位置に保つことで、フロントエアバッグによる乗員の頭部や胸部の保護機能を最大限に発揮させる補助的な機能もある。
【0004】
車両前席の乗員の下肢を拘束する場合、インストルメントパネルの下側(裏側)からエアバッグを展開させ、あるいは、パネル状の部材を乗員の下肢に向かって突出させる方法が提案されている。ところで、インストルメントパネルの下面は、乗員側が高く、車両進行方向に向かって低くなるように傾斜しているが、その傾斜が水平に近く寝た状態になると、エアバッグやパネルの乗員の下肢を拘束する部分(面)が下を向いてしまい、乗員の下肢との接触面積が小さくなり、乗員の前方への移動を十分に拘束できない恐れがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、乗員の下肢との接触面積を大きくすることで、確実に乗員の前方移動を拘束可能な乗員下肢拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1の態様)
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車両の前方座席に乗車している乗員の下肢を拘束する乗員下肢拘束装置であって、車両の衝突発生時に、インストルメントパネルの下面から乗員の下肢方向に向かって突出する拘束用パネルと;前記拘束用パネルが突出した後に、当該拘束用パネルを開裂させて膨張・展開することで乗員の下肢を保護するエアバッグと;前記拘束用パネルを前記インストルメントパネルから離脱させる第1の機構とを備える。そして、展開した前記エアバッグを車幅方向(側方)から観たときに、当該エアバッグの乗員側の保護面の上部が、前記インストルメントパネルの下面と平行な面に対して乗員から離れる方向に傾斜するように構成する。
【0007】
ここで、拘束用パネルが「インストルメントパネルから離脱」とは、拘束用パネルがインストルメントパネルから物理的に完全に分離されることではなく、拘束用パネルはインストルメントパネルから飛び出すが、何らかの部材によって拘束用パネルとインストルメントパネルが連結された状態を維持する意味である。例えば、拘束用パネルの背面にエアバッグの先端部分を連結させ、当該装置の作動時に拘束用パネルが適切なストロークで乗員の下肢を拘束する構造とする。
【0008】
また、拘束用パネルを「移動させる」とは、当該パネルをスライドさせたり、回動(スイング)させたり、回転させたりする動作を含むものである。
【0009】
更に、「エアバッグの乗員側の保護面の上部が、前記インストルメントパネルの下面と平行な面に対して乗員から離れる方向に傾斜する」とは、例えば、エアバッグの乗員側表面を板として考えたときに、上側が車両進行方向に向かって立ち上がるような状態と解釈することができる。実際には、エアバッグの保護面は硬質な板状ではないため、凹凸が存在するが、全体的な形状として傾斜するという意味である。
【0010】
本発明の第1の態様においては、拘束用パネルとエアバッグを用いて乗員の下肢を保護する構造であるため、乗員の下肢の保護範囲を適宜調整することが容易となる。特に、展開したエアバッグの乗員側の保護面の上部が、インストルメントパネルの下面と平行な面に対して乗員から離れる方向に傾斜するように構成しているため、進行方向における保護面(エアバッグの表面)の投影面積を増大させることができ、乗員の保護範囲(面積)を大きくすることができる。
【0011】
(第2の態様)
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様は、車両の前方座席に乗車している乗員の下肢を拘束する乗員下肢拘束装置であって、車両の衝突発生時に、インストルメントパネルの下面から乗員の下肢方向に向かって突出する拘束用パネルと;前記拘束用パネルを前記インストルメントパネルから離脱させる第1の方向に移動させる第1の機構と;前記拘束用パネルを前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる第2の機構とを備える。ここで、前記第1の方向は、前記インストルメントパネルの前記下面と概ね直交する方向とし、前記第2の方向は、前記拘束用パネルの上方部分が乗員から離れるように当該拘束用パネルを回動させ、当該拘束用パネルの水平方向に対する傾斜角度を大きくする方向とする。
【0012】
本態様の第2の態様においては、第1の機構によって拘束用パネルを第1の方向に移動させるとともに、第2の機構によって当該拘束用パネルを第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる構造を採用するため、インストルメントパネルから突出する拘束用パネルの向きを適切な向きに設定することができる。
【0013】
前記第1の方向は、前記インストルメントパネルの下面と概ね直交する方向とすることができる。このように、拘束用パネルをインストルメントパネルの下面から垂直に押し出すことが、構造としても動作としてもシンプルとなる。
【0014】
前記第2の機構は、前記拘束用パネルの上方部分を乗員から離れる方向に回動させ、当該拘束用パネルの水平方向に対する傾斜角度を大きくするように設定することができる。拘束用パネルの上方部分を立てるように回動させることにより、乗員側(後方)から拘束用パネルを見た時に、当該パネルの投影面積が大きくなり、広い範囲で乗員の下肢と接触することなり、乗員の下肢を確実に拘束することができる。
【0015】
前記第1の機構をエアバッグとし、前記第2の機構がピストンとすることができる。エアバッグの展開方向の前方(乗員側)は、広い面積で拘束用パネルと連結させることができるため、当該パネルを確実に移動させることが可能となる。
【0016】
前記第2の機構は、前記拘束用パネルを前記第2の方向に押すピストンとすることができる。ピストンは、拘束用パネルを押し出す方向とストロークを精密に設定することができるため、当該パネルの傾斜角度(姿勢)を容易に調整することができる。
【0017】
前記第1の機構及び前記第2の機構を、前記拘束用パネルの背面側において膨張展開する単一のエアバッグとすることができる。この場合、前記エアバッグの展開形状によって前記拘束用パネルの移動を制御する。
【0018】
このように、ピストン等の機構を用いることなく、単一のエアバッグのみで拘束用パネルの移動制御を行うことで、駆動機構を簡素化することができる。
【0019】
前記エアバッグは、展開した状態における前記インストルメントパネルの下面からの距離が、上方部分(L1)よりも下方部分(L2)の方が大きくなるように設定することが好ましい。ここで、「距離」とは、インストルメントパネルの下面に直交する方向の距離である。
【0020】
あるいは、前記第1の機構をピストンとし、前記第2の機構をエアバッグとすることができる。
【0021】
前記拘束用パネルは、当該装置の作動前の状態においては、前記インストルメントパネルの下面の一部を構成することができる。これによって、フットウェルの上部に突出した部分が形成されず、車室内の意匠性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。
図2図2(A)は、本発明の第2~4実施例に係る乗員下肢拘束装置の基本的なコンセプトを示すものであり、当該装置が搭載された車両の内部を示す側面図である。なお、図2(B)は、(A)の一部(拘束用パネル周辺)を示している。
図3図3は、本発明の第2実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。
図4図4は、本発明の第3実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。
図5図5は、本発明の第4実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1~第4実施例について、第1の態様と第2の態様とに分けて説明する。なお、図1図5において、同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0024】
[第1の態様]
(第1実施例)
本発明の第1の態様は、第1実施例として具現化される。第1実施例に係る乗員下肢拘束装置は、車両の前方座席に乗車している乗員の下肢を拘束する乗員下肢拘束装置であって、車両の衝突発生時に、インストルメントパネル12の下面12aから乗員の下肢方向に向かって突出する拘束用パネル14と;拘束用パネル14が突出した後に、当該拘束用パネル14を開裂させて膨張・展開することで乗員の下肢を保護するエアバッグ17と;拘束用パネル14をインストルメントパネル12から離脱させる第1の機構(ピストン20)とを備えている。
【0025】
展開したエアバッグ17を車幅方向(側方)から観たときに、当該エアバッグ17の乗員側の保護面17aの上部が、インストルメントパネル12の下面12aと平行な面P1に対して乗員から離れる方向に傾斜するように構成されている。
【0026】
拘束用パネル14には、エアバッグ17によって開裂される脆弱部が形成されている。本実施例においては、正面衝突等の事象が発生したときに、ピストン20によって拘束用パネル14がインストルメントパネル12から離脱するように駆動され、その後、エアバッグ17が拘束用パネル14を開裂して乗員側に展開することになる。なお、ピストン20の駆動とエアバッグ17の展開とのタイミングは、概ね同時とすることができ、ピストン20によって拘束用パネル14の駆動が完了する直前にエアバッグ17が拘束用パネル14から飛び出すように構成することもできる。
【0027】
本実施例においては、拘束用パネル14は、当該装置の作動前の状態においては、インストルメントパネル12の下面12aの一部を構成するものである。これによって、フットウェル内に突出した部分が形成されず、車室内の意匠性を損なうことがない。
【0028】
インストルメントパネル12は、一般的には樹脂から成形され、運転席においては、ステアリングコラムの下側に位置し、助手席では、通常はグローブボックスの下側に位置する。本発明に係る乗員下肢拘束装置は、インストルメントパネルから12の内部に収容される。
【0029】
インストルメントパネル12の下面12aの傾斜角度は、車両によって様々であるが、図1に示すように、下面12aが水平に近い状態まで寝たタイプの場合には、本発明は特に有効となる。インストルメントパネル12の下面12aが垂直に近づく方向に立っていれば、従来の単純なニーエアバッグであっても乗員Pの下肢を拘束することは比較的容易であるが、インストルメントパネル2の下面12aが寝ている(水平に近い状態)の場合には、エアバッグによる実際の保護面積が小さくなり、乗員の下肢を十分に拘束することが困難となる。
【0030】
拘束用パネル14は、乗員P側から見た時に、例えば、横長の長方形状に成形することができ、パネル表面で乗員の下肢を支える(拘束する)ことが可能に構成されている。なお、拘束用パネル14は、インストルメントパネル12から完全に分離されるものではなく、他の部材によって連結されることになる。
【0031】
本発明の第1の態様においては、拘束用パネル14とエアバッグ17を用いて乗員の下肢を保護する構造であるため、乗員の下肢の保護範囲を適宜調整することが容易となる。特に、展開したエアバッグ17の乗員側の保護面17aの上部が、インストルメントパネル12の下面12aと平行な面P1に対して乗員から離れる方向に傾斜するように構成しているため、進行方向における保護面17a(エアバッグ17の表面)の投影面積を増大させることができ、乗員の保護範囲(面積)を大きくすることができる。
【0032】
[第2の態様]
本発明の第2の態様は、第2実施例~第4実施例において具現化される。
【0033】
図2は、本発明の第2の態様に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両の内部を示す側面図であり、本発明の第2の態様の基本的なコンセプトを示すものである。
【0034】
本発明の第2の態様は、車両の前方座席に乗車している乗員Pの下肢を拘束する乗員下肢拘束装置であって、車両の衝突発生時に、インストルメントパネル12の下面12aから乗員Pの下肢方向に向かって突出する拘束用パネル14と;拘束用パネル14をインストルメントパネル12から離脱させる第1の方向D1に移動させる第1の機構と;拘束用パネル14を第1の方向D1とは異なる第2の方向D2に移動させる第2の機構とを備えている。
【0035】
インストルメントパネル12は、一般的には樹脂から成形され、運転席においては、ステアリングコラムの下側に位置し、助手席では、通常はグローブボックスの下側に位置する。本発明に係る乗員下肢拘束装置は、インストルメントパネルから12の内部に収容される。
【0036】
インストルメントパネル12の下面12aの傾斜角度は、車両によって様々であるが、図1に示すように、下面12aが水平に近い状態まで寝たタイプの場合には、本発明は特に有効となる。インストルメントパネル12の下面12aが垂直に近づく方向に立っていれば、従来の単純なニーエアバッグであっても乗員Pの下肢を拘束することは比較的容易である。
【0037】
拘束用パネル14は、乗員P側から見た時に、例えば、横長の長方形状に成形することができ、パネル表面で乗員の下肢を支える(拘束する)ように構成されている。なお、拘束用パネル14は、インストルメントパネル12から完全に分離されるものではなく、他の部材によって連結されることになる。後に実施例として説明するが、例えば、拘束用パネル14の背面にエアバッグの先端部分を連結させ、当該装置の作動時に拘束用パネル14が適切なストロークで乗員の下肢を拘束する構造となっている。
【0038】
第1の方向D1は、インストルメントパネル12の下面12aに概ね直交する方向であり、この方向に拘束用パネル14がスライドするイメージである。なお、第1の方向D1は厳密な直線的な方向とは限らず、拘束用パネル14を概ね平行に押し出すような方向と言うこともできる。第2の方向D2は、必ずしも直線的な方向とは限らず、拘束用パネル14をスイングさせるような回転要素を含んだ方向と捉えることができる。
また、第1の方向D1及び第2の方向D2への拘束用パネル14の移動は、極めて短い時間で行われるものであり、且つ複合的なものであり、概ね同時に行われると考えることができる。
【0039】
本発明においては、拘束用パネル14を第1の方向D1に移動させるとともに、第1の方向D1とは異なる第2の方向D2に移動させる構造を採用するため、インストルメントパネルから突出する拘束用パネルの向きを適切な向きに設定することができる。
【0040】
なお、拘束用パネル14の第1の方向D1への移動を第2の方向D2への移動に先行して実施した場合には、拘束用パネル14を速やかに乗員の下肢付近に到達させることができる。一方、拘束用パネル14の第2の方向D1への移動を第1の方向D2への移動に先行して実施した場合には、拘束用パネル14の拘束面を速やかに乗員の下肢側に向けることが可能となる。
【0041】
(第2実施例)
図3は、第2実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。本実施例においては、拘束用パネル14は、当該装置の作動前の状態においては、インストルメントパネル12の下面12aの一部を構成するものである。これによって、フットウェル内に突出した部分が形成されず、車室内の意匠性を損なうことがない。
【0042】
本実施例に採用される第1の機構は、拘束用パネル14を第1の方向D1に押し出すエアバッグ18である。エアバッグ18は、インストルメントパネル12の内部に収容されたインフレータ(図示せず)から供給される膨張ガスによって、膨張・展開する。エアバッグ18の展開方向の前部(乗員側)は、広い面積で拘束用パネル14と連結させることができるため、当該パネル14を確実に乗員側に移動させることができる。
【0043】
本実施例に採用される第2の機構は、拘束用パネル14を第2の方向D2に押すピストン20である。ピストン20の先端は、拘束用パネル14の下端部付近に連結されており、例えば、空気の圧力を利用してピストンロッドを伸長させる構造となっている。
【0044】
なお、第1の方向D1は厳密な直線的な方向とは限らず、拘束用パネル14を概ね平行に押し出すような方向と言うこともできる。また、第2の方向D2については、ピストン20の駆動方向と考えると直線的だが、拘束用パネル14の移動方向という意味では、当該拘束用パネル14をスイングさせるような回転要素を含んだ方向といえる。
また、第1の方向D1及び第2の方向D2への拘束用パネル14の移動は、極めて短い時間で行われるものであり、且つ複合的なものであり、概ね同時に行われると考えることができる。
【0045】
ピストン20は、拘束用パネル14の下端部分を乗員側に押し出すことにより、拘束用パネル14の上方部分を乗員から離れる方向に回動させ、当該拘束用パネル14の水平方向に対する傾斜角度を大きくするように設定することができる。拘束用パネル14の上方部分を立てるように回動させることにより、乗員側(後方)から拘束用パネル14を見た時に、当該パネルの投影面積が大きくなり、広い範囲で乗員の下肢と接触することなり、乗員の下肢を確実に拘束することができる。
【0046】
(第3実施例)
図4は、第3実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。本実施例も、上述した第1実施例と同様に、拘束用パネル14は、当該装置の作動前の状態においては、インストルメントパネル12の下面12aの一部を構成する。
【0047】
本実施例に採用される第1の機構及び第2の機構は、拘束用パネル14の背面側において膨張展開する単一のエアバッグ22である。そして、エアバッグ22の展開形状によって拘束用パネル14の移動を制御可能となっている。すなわち、エアバッグ22は、展開した状態において、インストルメントパネル12の下面12a、又は下面12aの延長線上から上方部分までの距離L1よりも下方部分までの距離L2の方が大きくなるように設定されている。
【0048】
エアバッグ22の展開形状の制御は、エアバッグ22を構成するパネル(生地)の形状を工夫することによって容易に達成可能である。すなわち、エアバッグ22の下方部分の方が上方部分よりも容量を大きくしたり、下方部分を乗員側に突出するような形状とすることができる。
【0049】
なお、本実施例においては、第1の方向D1と第2の方向D2を明確に区別することは困難である。すなわち、第1及び第2の方向D1,D2は複合的なものであり、拘束用パネル14による第1及び第2の方向D1,D2への移動は概ね同時に行われる。
【0050】
(第4実施例)
図5は、第4実施例に係る乗員下肢拘束装置が搭載された車両内部を示す側面図であり、当該装置が作動した状態を示す。本実施例も、上述した第1及び第2実施例と同様に、拘束用パネル14は、当該装置の作動前の状態においては、インストルメントパネル12の下面12aの一部を構成する。
【0051】
本実施例に採用される第1の機構は、拘束用パネル14を第1の方向D1に押し出すピストン24である。ピストン24の先端は、拘束用パネル14の中央付近に連結されており、例えば、空気の圧力を利用してピストンロッドを伸長させる構造となっている。
【0052】
一方、本実施例に採用される第2の機構は、拘束用パネル14を第2の方向D2に押すエアバッグ26である。エアバッグ26は、インストルメントパネル12の内部に収容されたインフレータ(図示せず)から供給される膨張ガスによって、膨張・展開する。
【0053】
なお、第1の方向D1及び第2の方向D2への拘束用パネル14の移動は、極めて短い時間で行われるものであり、且つ複合的なものであり、概ね同時に行われると考えることができる。
【0054】
エアバッグ26は、拘束用パネル14の上方部分を乗員から離れる方向に回動させ、当該拘束用パネル14の水平方向に対する傾斜角度を大きくするように設定することができる。拘束用パネル14の上方部分を立てるように回動させることにより、乗員側(後方)から拘束用パネル14を見た時に、当該パネルの投影面積が大きくなり、広い範囲で乗員の下肢と接触することなり、乗員の下肢を確実に拘束することができる。
【0055】
本発明の第2の態様の別の例として、第1の機構及び第2の機構の両方をピストンによって構成したものが考えられる。この場合、第1のピストンの先端を拘束用パネル14の中心付近に連結して、第1の方向D1に押し出し、第2のピストンの先端を拘束用パネル14の下端付近に連結して、当該拘束用パネル14を回動させることができる。あるいは、第1のピストンの先端に第2のピストンの後端を連結する構造とし、第1のピストンの駆動方向D1に対して第2のピストンの駆動方向D2を屈曲させることが考えられる。
【0056】
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。
図1
図2
図3
図4
図5