(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】有機化合物におけるまたは関する改善
(51)【国際特許分類】
A61K 31/728 20060101AFI20221202BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221202BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221202BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221202BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221202BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221202BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221202BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221202BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221202BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61K31/728
A61K8/73
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/48
A61K45/00
A61K47/26
A61P1/02
A61P31/04
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020510570
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2018072514
(87)【国際公開番号】W WO2019038261
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】スキャンドレア,アマンディネ
(72)【発明者】
【氏名】レイナート,ロマン
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/144613(WO,A1)
【文献】中国特許第106309471(CN,B)
【文献】国際公開第2015/158550(WO,A1)
【文献】特開平03-090016(JP,A)
【文献】特表2009-544603(JP,A)
【文献】特表2009-513492(JP,A)
【文献】特表2017-511343(JP,A)
【文献】米国特許第05925626(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第03144012(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02614812(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02545925(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/121611(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/728
A61K 8/73
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/48
A61K 45/00
A61K 47/26
A61P 1/02
A61P 31/04
A61Q 11/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸を含む口腔ケア組成物であって、
ヒアルロン酸が100~300kDaの平均分子量を有する低分子量ヒアルロン酸および20~50kDaの平均分子量を有する中間分子量ヒアルロン酸を含む、前記口腔ケア組成物。
【請求項2】
ヒアルロン酸が無溶媒
で、溶液
として、懸濁液として、カプセル化
形態において、またはミセル化形態において提供され
るか、
または粒子の表面上に吸収されるか、さもなければ分配される、請求項
1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
さらに殺菌剤、収斂剤、止血剤、口腔悪臭中和剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分をさらに含む、請求項1
または2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのチモールグリコシド、およびとりわけチモールα-グリコシドをさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
0.1~1.0%(w/v)の濃度における、より好ましくは0.2~0.5%(w/v)の濃度におけるヒアルロン酸を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
低分子量ヒアルロン酸が0.5%(w/v)の濃度において使用され、中間分子量ヒアルロン酸が0.2%(w/v)の濃度において使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、口腔粘膜の修復を促進することおよび/またはバイオフィルム形成を減少させることに有用である、ヒアルロン酸を含む口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
口腔ケアは、口を清潔におよび無疾患に保つ行為である。これは典型的には定期的な、口腔およびとりわけ歯のブラッシング、すすぎおよび洗浄を含む。口腔衛生を定期的に完了することは、歯の疾患が生じることを防ぐことができるので、重要である。最も一般的な歯の疾患は、虫歯(dental decay)(また齲蝕(dental caries)としても知られる)、歯肉炎および歯周炎である。
【0003】
我々の歯を手入れすることが健康でいるために不可欠であることは、広く受け入れられている。歯科衛生の欠如は次第に歯痛、虫歯(tooth decay)、歯牙欠損、および最終的に、治療介入(intervention)なしに、より深刻な全身の健康問題にさえ導き得るということがよく知られている。不十分な口腔衛生と関連する明らかな身体的健康問題に加えて、我々の歯の外観および我々の雰囲気、ならびに我々の社会的なおよび精神的な幸福の関係はおそらくあまり評価されていない。良好な歯の質は自信とより笑う意欲とを引き出すため我々の雰囲気に巨大な影響(impact)を有し得る。
【0004】
最近では、練り歯磨き、口内洗浄液、チューイングガム、口腔スプレー、およびより多くのものを含む、多様な口腔ケア消費者製品が入手可能である。洗浄は別として、これらの製品はまた、例えばリフレッシュまたはホワイトニングなど他の効果を与え得る。
口腔組織は頻繁に、咀嚼、スピーチ、呼吸、中咽頭を通した細菌侵入、栄養摂取、外部環境、等々の多くのストレスの供給源に暴露される。これらの因子は、口腔創傷治癒を遅延させおよび感染のリスクを増大させる。
【0005】
口腔粘膜損傷は、しばしば歯磨き、プラーク除去、咀嚼、スピーチ、潰瘍、または外科手術(例として、歯科インプラントを配置するかまたは抜歯のための)に関する。さらにまた、口内洗浄液などの、口腔歯科衛生用品の過剰な使用は口腔組織の崩壊を増大させ得る。
【0006】
WO 2004/056346は、創傷管理(management)するための方法および組成物、ここで後者は、キレート剤、pH緩衝剤、抗菌剤、ビタミンE、担体および界面活性剤を含む、を開示する。他のものの中で、口腔粘膜の創傷を修復するための洗口液が開示される。
EP 1 908 457は、上皮の病変を処理するためのヒアルロン酸の塩に基づく組成物を開示する。
【0007】
ヒアルロン酸は、結合組織の基本の構成要素である、酸性非硫化ムコ多糖である。ヒトおよび動物において、ヒアルロン酸は、結合組織にのみではなくガラス体液、房水などの重要な生体液に、および臍帯にも存在する:それは毒性がなく、ヒトまたは動物の使用にとって禁忌はない。
【0008】
ヒアルロン酸は天然の物質から、例えば雄鶏の鶏冠から抽出によって得ることができ、または生命工学的方法によって生産できる。それは、その生産の方法に依存して、15’000kDaに至り得る広い分子量分布を有する。ヒアルロン酸は、ヒトの治療においておよび化粧品においてナトリウムまたはカリウム塩として使用されることが知られている:ヒアルロン酸の外来性の適用は、結合器官に好ましい有益な効果を有し、およびまたヒアルロナーゼを生産する病原菌によって誘発される炎症性プロセスを減少させるかまたは除外するのに有効であり、それは炎症性構成要素の分解を促進し、過剰なキャピラリー浸透性を減らし、組織修復プロセスを加速し、およびフリーの水がその分子構造に代謝的に結合することによって抗浮腫形成(antiedematogenic)作用を発現する。
【0009】
化粧品の分野において、ヒアルロン酸は、その爽快にさせ、強壮効果の、皮膚修復の、および保湿特性のために使用される。
EP0138572は組織創傷の治癒における使用のための約50~約100kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸画分の使用を開示する。
【0010】
EP 0 444 492は、口腔粘膜の炎症性の状態の処置および予防のための高分子量(88~4’000kDaの間)のヒアルロン酸の使用を説明する。
健康な口腔菌叢は、典型的には700より多い細菌種から構成される。細菌の分布は口腔(oral cavity)の表面に依存する:歯周の、歯肉の、歯垢、口蓋、唾液等々。大抵、ストレプトコッカス(Streptococcus spp.)は最も優勢な細菌である。あるエリアにおいて、主に歯の裂溝、歯肉縁の上および下の歯垢において、ストレプトコッカスが通常みられたが、ストレプトコッカスは口腔細菌叢の一過的な居住者に過ぎない。他のものの中で、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は口腔(oral cavity)内に見られる。これは、健康な大人の歯のある口腔において約24~84%の、および入れ歯をかぶせている人口の約48%の発生率で、口腔(oral cavity)の、一過的であるが、高頻度の細菌常在者である。
【0011】
口腔感染は、おそらく、様々な供給源からの交差感染を通して生じる。それらは口角炎、耳下腺炎、またはブドウ球菌粘膜炎などの病状を引き起こし得る。それらのエリアにおいて、黄色ブドウ球菌が見いだされた。
本発明の目的は、口腔組織を保護し、さらに創傷治癒する改善した口腔ケア組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の概要
第一の側面において、本発明は、500kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸を含む口腔ケア組成物を提供する。
驚くべきことに、低および中間分子量のヒアルロン酸は、バイオフィルムに対する口腔組織修復および保護において極めて有効であるということが見出された。
第二の側面において、本発明は本発明に従う口腔ケア組成物を口腔表面に適用することによって、口腔表面上のバイオフィルム形成を減少させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【0014】
本発明の詳細な記載
本発明は、ヒアルロン酸が500kDa未満の平均分子量を有する、ヒアルロン酸を含む口腔ケア組成物を提供する。
本開示を通して、用語「平均分子量」は、他に言及しない限り、重量平均分子量を指すことを意味する。
用語「口腔ケア組成物」は、本明細書に使用されるとき、口に取り込んで様々な利益を送達するように設計される非食品組成物を指す。「口腔ケア組成物」は、すぐに使える消費者製品だけでなく、消費者製品の前駆体(例として、使用前に希釈されることが必要であるストック溶液)およびかかる消費者製品の活性な部分をも含む。本質的に、口腔(oral cavity)の処置に適し且つ有用である任意の組成物はこの用語によって包含される(covered)ことを意味する。
【0015】
かかる組成物は、歯磨き剤、口内洗浄剤、口内スプレーおよびうがい組成物、ブレスストリップス(breath strips)(口腔(oral cavity)において風味材料または息清涼剤などの活性剤をそこへ投与するために置かれる可食フィルム)、およびチューインガムを含む。
用語「歯磨き剤」は、本明細書に使用されるとき、他に特定されない限り、練り歯磨き、口腔ケアゲルまたは液体を意味する。歯磨き剤組成物は単一の相の組成物であってもよく、またはそれは2以上の別の歯磨き剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨き剤組成物は、深いストライプの入った、表面にストライプが入った、多層化された、ペーストを囲むゲルを有する、またはそれらの任意の組み合わせなどの、任意の所望される形態であってよい。
【0016】
口腔ケア製品は、例えば、練り歯磨き、洗口液、口内洗浄剤、およびチューインガム、キャンディー、トローチ、可食フィルム、および口腔スプレーを含む、持ち歩くことができる「出先での」口腔悪臭制御製品を含む。上述の口腔ケア製品のための製剤は、当該技術分野において周知である。口腔ケア製品は、例えば、活性界面剤、乳化剤、溶媒、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、抗菌剤、酵素、植物油または鉱油、脂肪、タンパク質、可溶化剤、糖誘導体、ビタミン、ソルビトールを含むポリオール、有機酸、人工甘味料、ポリマー、増粘剤、チューインガムのガムベース、フッ素化合物を含む口腔ケア活性体、および亜鉛塩(例えばグルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛)を含む賦形剤を含む。いくつかの口腔ケア製品は、アルコール、とりわけ低級アルコール(C1~C4)を含む。
【0017】
低および中間分子量の両方のヒアルロン酸は、未処理の粘膜と比較して、処置の24h後の口腔粘膜修復を促進することができるということが見出された。その効果は、損傷の完全な回復に結びつく創傷治癒の能動機構を含む。損傷後の再上皮形成を評価するために前もって作成した実験の詳細な記載を以下の例1~4に見出すことができる。
それと比較して、高分子量(1’000~1’400kDa)のヒアルロン酸は皮膚表面上の膜を形成することによる組織修復への機械的な効果(mechanic effect)を単に実証した。
【0018】
その結果として、本発明の口腔ケア組成物は500kDa未満の、より好ましくは400kDa未満の、およびさらにより好ましくは300kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
本発明の口腔ケア組成物はまた増強された粘膜の感触の良い特性を提供するということもまた見出した。とりわけ、歯茎の滑らかさが改善され、組成物は「健康な感触」を提供した。
【0019】
比較試験(以下の例11参照)において、本発明の口腔ケア組成物は、より心地よく、より清潔な、およびより少ない乾燥感を与える、およびそれらがヒトの口および歯茎の手入れをしているに感じると受け取られた。ヒアルロン酸の組み込みは、練り歯磨きの味に有利な効果を有し、それらの苦みを少なくし、より甘くしおよびしょっぱさを少なくする。それらはまたより少ない泡立ちで、より少ないヒリヒリ、およびより少ない乾燥、ならびにより清潔な感触を与えるように感じられた。
【0020】
本発明の口腔ケア組成物は、とりわけ亜鉛塩を含むものにおいて、減少した収斂性を提示するということを見出した。亜鉛塩は、一般に、口腔ケア製剤において使用され、多くの場合において関連した収斂性による口腔ケア消費者にある問題になると考えられる。本明細書に定義されるとおり、ヒアルロン酸を組み込むことによって、練り歯磨き、口腔洗浄剤、および他の口腔ケア製品の収斂性および/または乾燥効果は減少させられるかまたは完全に除外されさえし得る。
【0021】
好ましくは、本発明の口腔ケア組成物は少なくとも約5kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
平均分子量の好ましい範囲は、低分子量ヒアルロン酸の約20~約50kDaおよび中間分子量ヒアルロン酸の約100~約300kDaのである。
低分子量ヒアルロン酸は、口腔粘膜修復を促進するために特に有効であるということを見出した。
【0022】
その結果として、好ましい態様において、本発明の口腔ケア組成物は本発明の口腔ケア組成物は約80kDa未満の、好ましくは約10~約65kDaの、および最も好ましくは約20~約50kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
低分子量ヒアルロン酸の生物学的活性は、細胞粘着(密着結合 (ZO-1/オクルディン)の発現を増大させること)、膨らませること(plumping)(I型コラーゲンの酸性を促進させること)、水和(皮膚の水含有量を増大させること)、機械的特性(硬度および弾力性の改善)、および皮膚浸透(有意な皮膚浸透(120μM))に関する。
【0023】
中間分子量ヒアルロン酸はまた細菌付着およびコロニー化口腔粘膜モデルからの組織中へのそれらの浸透を減少させるということを見出した。走査型電子顕微鏡によるバイオフィルム分析は、中間分子量ヒアルロン酸で処理された口腔粘膜がより少ない細菌クラスターを表し、および浮遊性表現型から、マトリックス多糖類産生により観察されたバイオフィルムへの切り替えを遮蔽したことを示した。よって、中間体分子量ヒアルロン酸は、口腔粘膜の組織修復を促進するだけでなく、病原性細菌からのバイオフィルム形成を妨げる。
【0024】
その結果として、好ましい態様において、本発明の好ましい口腔ケア組成物は、約80~約500kDaの、好ましくは約90~約400kDaの、および最も好ましくは約100~約300kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
中間分子量のヒアルロン酸の生物学的活性は、抗菌防御(in vitroおよびex vivoでのTRL2およびTRL4に依存するデフェンシン産生を増大すること;E.Coliの細菌阻害による皮膚の免疫を制御すること)、細胞増殖および遊走(細胞増殖および遊走(角化細胞および繊維芽細胞)を促進させること)、および皮膚浸透(皮膚中への有意な浸透(40μM))に関する。
【0025】
行われた実験の詳細な結果は以下の例5~9に記載されている。要するに、中間分子量のヒアルロン酸が、
-コロニー化なしでTEERレベルを回復させる(関門機能)
-総細菌カウントを減少させる(-50%;細菌増殖)
-RHOにおける細菌侵入を限定する(細菌浸透)
-細菌における浮遊性表現型を保存する(バイオフィルム形成)
-バイオフィルム形成を阻害する(多糖のマトリックス;バイオフィルム形成)
ことが見いだされた。
【0026】
概して、中間体分子量ヒアルロン酸は口腔組織修復を活発にブーストし、および細菌性バイオフィルムに対して効果的な保護を示すことができるので、それが口腔ケア適用に最良であったということが見出された。したがって、特に好ましい態様に従って、本発明の口腔ケア組成物は中間分子量のヒアルロン酸を含み、およびとりわけ約100~約300kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
【0027】
本発明の口腔ケア組成物において、ヒアルロン酸は当業者に公知である任意の好適な形態において提供されてよい。とりわけ、それは無溶媒、溶液または懸濁液として、カプセル化またはミセル化形態において、粒子表面上に吸収されるか、またはさもなければ分散されて提供されてよい。ヒアルロン酸が無溶媒の形態において使用される場合、それは典型的には、口腔ケア組成物に直接に組み込まれ得る粉末である。代わりに、ヒアルロン酸は溶液または懸濁液の形態、好ましくは水性またはアルコール性溶液または懸濁液の形態で使用されてもよい。ヒアルロン酸はまた、カプセル化またはミセル化形態において提供されてもよく、好ましくはスラリーの形態にある。代わりに、ヒアルロン酸は粒子表面上に、例えば二酸化チタン上に吸収されるか、またはさもなければ分散されてもよい。
【0028】
本発明の口腔ケア組成物は、さらに他の活性成分、および当業者に一般に公知である添加剤を含んでもよい。とりわけ、それはさらに殺菌剤、収斂剤、止血剤、口腔悪臭中和剤、およびそれらの混合物を含んでもよい。
本発明の口腔ケア組成物は、優勢なフレーバーまたは臭気を使用することによって、口腔悪臭、またはむしろその知覚をマスクするために、強烈なフレーバーを含有してもよく、一方悪臭は存在するままであるが、組み合わせにおいて検出可能性は少ない。例えば、JP2004018431は、ミントオイル、または口臭に対する活性を知られている、ミント植物に含まれていることが知られている化合物(例えばメントール)をマスキングフレーバー化合物との組み合わせにおいて含む、様々なフレーバー組成物を記載している。
【0029】
本発明の口腔ケア組成物はまた、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、およびクロルヘキシジンなどの古典的な抗細菌剤を含んでもよい。また、天然の成分またはフレーバー化合物の抗細菌効果が使用されてもよい。これらは例えば、チモール、ウィンターグリーンオイル、メチルサリチラート、ユーカリプトールおよびミントオイルおよびミント植物において生じる化合物、とりわけメントールを含む。さらに悪臭中和効果を有することが知られている天然の成分は、パセリ、イオノン(アルファ―イオノン、ベータ-イオノン、ガンマ-イオノン、ジヒドロイオノン、アルファ-メチルイオノン、イロン)と亜鉛塩との組み合わせ、特定の高級アルコール(とりわけノナノール)とC1~C4アルコールとのの組み合わせを含む(WO99/51093)。
【0030】
代替物は、ほぼ元のままである(largely intact)口腔細菌を取り除く手段によって、反応性の高い化学物質によって悪臭を放つ揮発性物質を化学的に捕捉することによって、口腔悪臭物質を減少させるべきである。例えば、緑茶抽出物に含有されるものなどのポリフェノール性化合物または亜鉛塩は、揮発性の硫黄化合物を捕捉するために使用されてもよい。さらに化学的なアプローチは、酸化剤を適用することによって悪臭を放つ硫黄揮発性物質を分解するべきである。
【0031】
別のアプローチは、悪臭を放つ硫黄揮発性物質がそもそも形成されないように、関係のある細菌の酵素(単数または複数)の酵素的な阻害による。例えば、ある植物の抽出物(トマト、ガンビールノキ、キラヤサポナリア、ハマメリスバージニアナ、ビワ、スギナ、セイヨウサンザシ、カキノキ、ウコン、イチョウ、緑茶、紅茶、および/またはウーロン茶)は、MeSHを発生させるメチオニナーゼ(Methioninase)を阻害するために使用され得る。
【0032】
本発明の口腔ケア組成物はまた、オクタ-2イノイック酸メチルエステル、ノン-2-イノイック酸メチルエステル、オクタ-2-エノイック酸エチルエステル、オクタ-2-エノイック酸メチルエステル、ノン-2-エノイック酸メチルエステル、ヘキサ-2-エノイック酸エチルエステル、ヘキサ-2-エノイック酸メチルエステル、ノン-2-イノイック酸エチルエステル、ノン-2-エノイック酸エチルエステル、ヘプタ-2-エノイック酸エチルエステル、およびヘプタ-2-エノイック酸メチルエステルからなる群から選択される口腔悪臭中和活性体を含んでもよい。
本発明の口腔ケア組成物は、さらにイオノン、アルファイオノン、ベータイオノン、亜鉛塩、ポリフェノール化合物、および抗細菌剤からなる群から選択される1以上の活性体を含んでもよい。
【0033】
抗細菌剤は、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、ポリヘキシジンビグアニド、クロルヘキシジン、および抗細菌フレーバー材料からなる群から選択されてもよい。抗細菌フレーバー材料は、とりわけチモール、カルバクロール、オイゲノール、イソオイゲノール、シンナムアルデヒド、メントールを含む。フレーバー材料は、それらの成分を含む精油の形態において提供されてもよい。好ましい精油、タイム、オレガノ、クローブ、シナモンリーフ、シナモンバーク、パセリシード、パセリリーフ、ミント、スペアミント、およびペパーミントからの油を含む。
有用なポリフェノール化合物は、例えば、ガラート構造部分を含むもの、とりわけエピガロカテキンガラートである。これらは、特定の天然の成分の形態、とりわけ緑茶およびその抽出物であってよく、例えばエピガロカテキンガラートにおいて強化されている(enriched)緑茶抽出物。とりわけ、粒子形態におけるOMCフレーバーは、OMCフレーバー組成物を噴霧乾燥すること、およびそれを緑茶粒子と混合して緑茶およびOMCフレーバー組成物の乾燥ブレンドの形態にすることによって形成されてもよい。その結果得られる微粒子の材料はOMC生成物製剤に容易に混ぜられ得る。
【0034】
本発明の口腔ケア組成物はさらに、5-イソプロピル-2-メチル-フェノール、オクタン-1-オール、3,7-ジメチル-オクタ-6-エン-1-オール、3,7-ジメチル-オクタン-1-オール、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-3-エノール、3,7-ジメチル-オクタ-2,6-ジエン-1-オール、2-(4-メチル-シクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-オール、3,7-ジメチル-オクタ-1,6-ジエン-3-オール、ノナ-2,4-ジエナール、ノン-2-エナール、2,6,6-トリメチル-シクロヘキサ-1-エンカルボアルデヒド、3-(4-イソプロピル-フェニル)-2-メチル-プロピオンアルデヒド、4-イソプロペニル-シクロヘキサ-1-エンカルボアルデヒド、5-メチル-2-フェニル-ヘキサ-2-エナール、4-メトキシ-ベンズアルデヒド、2,6-ジメチル-ヘプタ-5-エナール、デカ-2-エナール、フェニル-アセトアルデヒド、2-フェニル-プロピオンアルデヒド、3,7,11-トリメチル-ドデカ-1,3,6,10-テトラエン、3,7-ジメチル-オクタ-1,3,6-トリエン、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン、1-メチル-4-(5-メチル-1-メチレン-ヘキサ-4-エニル)-シクロヘキセン、1-イソプロピル-4-メチルベンゼン、デカ-3-エン-2-オン、3-メチル-2-ペンチル-シクロペンタ-2-エノン、6-メチル-へプタ-3,5-ジエン-2-オン、酢酸オクチルエステル、酢酸オクタ-2-エニルエステル、2-メチル-ブタ-2-エノン酸ヘキサ-3-エニルエステル、酢酸ノニルエステル、酢酸へプチルエステル、酪酸3-フェニル-アリルエステル、酢酸1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルエステル、酢酸4-アリル-2-メトキシ-フェニルエステル、酢酸1-メチル-1-(4-メチル-シクロヘキサ-3-エニル)-エチルエステル、酢酸2-イソプロペニル-5-メチル-シクロヘキシルエステル、5-オクチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、1,1-ジメトキシ-3,7-ジメチル-オクタ-2,6-ジエン、1-アリル-4-メトキシ-ベンゼン、6-ヘキシル-テトラヒドロ-ピランー2-オン、3-ブチル-3H-イソベンゾフラン-1-オン、2-ペンチル-フラン、(2E、5E/Z)-5,6,7-トリメチルオクタ-2,5-ジエン-4-オン、4-メチル-デカ-3-エン-5-オール、1-シクロプロピルメチル-4-メトキシ-ベンゼン、オリガヌム精油、ガルバヌム精油、アオモジ果実精油、タジェット精油、ジャスミンアブソリュート、ラベンダー精油、ラバンジン精油、ローズマリー精油、およびベチバー精油からなる群から選択される1以上の活性体を含んでもよい。
【0035】
特定の抗菌フレーバーを有する酵素阻害口腔悪臭中和物質の組み合わせは、特に有益であることが見いだされ、および高度に有効な且つ心地よく味わうこと(tasting)の両方をもたらすということが見いだされた。結果的に、本発明の口腔ケア組成物は、さらに総フレーバー成分の50%まで、または90%(w/w)までの、メントール、チモール、オイゲノール、5-イソプロピル-2-メチル-フェノール、オクタン-1-オール、3,7-ジメチル-オクタ-6-エン-1-オール、3,7-ジメチル-オクタン-1-オール、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-3-エノール、3,7-ジメチル-オクタ-2,6-ジエン-1-オール、2-(4-メチル-シクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-オール、および3,7-ジメチル-オクタ-1,6-ジエン-3-オールからなる群から選択される抗細菌特性を有する1以上のフレーバーを含んでもよい。化合物は純粋な化合物の形態において、または天然の成分(例えば、ミントオイル、ペパーミントオイル、またはメントールのためのスペアミントオイルまたはチモールのためのタイムオイルなどの、植物からの精油)の形態において添加することができる。
【0036】
例として、練り歯磨き組成物はさらに練り歯磨きにおいて一般的に使用される他の化合物、例えば口腔消毒剤、研磨剤、保湿剤、洗浄剤、バインダー、起泡剤、甘味剤、防腐剤、緩衝剤、フレーバーおよび冷却剤をさらに含んでもよく、当業者に知られた手順に従って調製されてもよい。
本発明の口腔ケア組成物はまた、口腔ケア組成物と共に従来使用されている1以上のさらなる成分または賦形剤、例えばフレーバー化合物、賦形剤、溶媒、清涼感のある口の感触のための冷却剤および/または当該技術分野において一般的に使用される他の助剤を含んでもよい。
【0037】
公知のフレーバー成分の例は、FEMAから入手可能なおよびFEMAによって公開された、および1965年から現在までの全てのFEMA GRAS(一般に安全であるとみなされる)の刊行物、例として2003年に公開されたGRAS 21、またはAllured Publishing Inc.によって公開された、Allured's Flavor and Fragrance Materials 2004を含む、FEMA(Flavour and Extracts Manufactures Association of the United States)の刊行物または編集物の1つにおいて見いだされてもよい。
【0038】
口腔ケア製品の公知の賦形剤の例は、Gaffar, Abdul, Advanced Technology, Corporate Technology, Department of Oral Care, Colgate-Palmolive Company、Piscataway, NJ, USA. 編集者(単数または複数): Barel、Andre O.;Paye、Marc;Maibach、Howard I.,Handbook of Cosmetic Science and Technology (2001)、p.619 - 643、出版社: Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y、and in Cosmetics: Science and technology, 2nd edition, p.423 - 563, M.S. Balsam and E. Sagarin、Wiley Interscience、1972において見出してもよい。
【0039】
冷却材の特別の例は、これらに限定されないが、メントール、メントン、イソプレゴール、N-エチルp-メンタンカルボキシアミド(WS-3)、N,2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミド(WS-23)、メチルラクタート、メントングリセリンアセタール(Frescolat(登録商標)MGA)、モノ-メンチルスクシナート(Physcool(登録商標))、モノ-メンチルグルタラート、O-メンチルグリセリン(CoolAct(登録商標)10)、2-sec-ブチルシクロヘキサノン(Freskomenthe(登録商標))および2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(2-ピリジン-2-イル-エチル)-アミドを含んでもよい。さらに冷却剤の例は、例として、参照として組み込まれるWO2006/125334およびWO2005/049553において見いだされ得る。
【0040】
好ましい態様において、本発明の口腔ケア組成物はさらに少なくとも1つのチモールグリコシド、およびとりわけ、チモールa-グルコシドを含む。同日に出願された対応する英国特許出願は、参照によってここに組み込まれる。チモールグリコシドは、長く続く消毒効果を提供し、チモールとの比較において好み(liking)を改善した。さらにまた、それらの水溶性は、優位にチモールの水溶性より良好である。
【0041】
本発明の口腔ケア組成物は、有効になる濃度においてヒアルロン酸を含むべきである。とりわけ、口腔ケア組成物は少なくとも0.1%(w/v)の濃度において、より好ましくは少なくとも0.2%(w/v)の濃度においてヒアルロン酸を含んでもよい。好ましい態様において、口腔ケア組成物は、0.1~1.0%(w/v)の濃度において、より好ましくは0.2~0.5%(w/v)の濃度においてヒアルロン酸を含む。より高い濃度がまた可能であるが、コストの増加につながる。低分子量ヒアルロン酸が0.5%(w/v)の濃度において使用されること、および中間分子量ヒアルロン酸が0.2%(w/v)の濃度において使用されることが特に好ましい。
【0042】
本開示を通して、他に言及しない限り、濃度は体積あたりの重量バーセント(%w/v)として示される。
さらなる側面において、本発明はまた、口腔粘膜修復を促進するための口腔ケア組成物を提供する。該組成物は、好ましくは500kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
【0043】
より好ましくは、口腔粘膜修復を促進するための口腔ケア組成物は、約10~約400kDaの、より好ましくは約20~約300kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。とりわけ、口腔粘膜修復を促進するための口腔ケア組成物は、約20~約50kDa(低分子量ヒアルロン酸)の、または約100~約300kDa(中間分子量ヒアルロン酸)の平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。低分子量ヒアルロン酸が特に好ましい。
よって、本発明はまた粘膜修復を促進するための口腔ケア組成物の製造のための500kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸の使用を指す。
【0044】
さらなる側面において、本発明はまた、口腔粘膜修復を促進する方法、とりわけ非治療的なものを提供する。該方法は、本発明に従う口腔ケア組成物の口腔粘膜への適用に関連する(involves)。
さらなる側面において、本発明はまた、バイオフィルム形成を減少させる口腔ケア組成物を提供する。外組成物は好ましくは500kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。
【0045】
より好ましくは、バイオフィルム形成を減少させるための口腔ケア組成物は、約10~約400kDaの、より好ましくは約20~約300kDaの平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。とりわけ、口腔粘膜修復のための口腔ケア組成物は約20~約50kDa(低分子量ヒアルロン酸)の、または約100~約300kDa(中間分子量ヒアルロン酸)の平均分子量を有するヒアルロン酸を含む。中間分子量ヒアルロン酸は特に好ましい。
【0046】
よって、本発明はまた、バイオフィルム形成を減少させるための口腔ケア組成物の製造のための500kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸の使用を指す。
【0047】
さらなる側面において、本発明はまた、口腔表面上のバイオフィルム形成を減少させる方法、とりわけ非治療的なものを提供する。該方法は、本発明に従う口腔ケア組成物の口腔表面への適用に関連する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0048】
本発明をさらに以下の非限定的な例によってさらに説明する:
例1 ヒアルロン酸を用いたサンプルの調製および処理
実験は再構築ヒト口腔上皮(RHO)上で行われた。
実験室に到着後即時に、滅菌したエアフローキャビン下でアガロース栄養溶液からRHOを取り除いた。事前に室温の1mlの維持培地で満たした6ウェルプレートにインサートを迅速にセットした。ウェルを37℃、5%CO2および飽和した湿度で一晩インキュベーターにセットした。
次の日にガラスキャピラリーで損傷を行った。
その後、RHOサンプルを低(20~50kDa)、中間(100~300kDa)または高(1’000~1’400kDa)分子量を有するヒアルロン酸を含有する溶液で処理した。未処理のRHOは処理なしのコントロールとして使用された。
【0049】
例2 TEER(Trans Epithelial Electrical Resistance:経上皮電気抵抗)による損傷後の再上皮化の査定
この査定のためのRHOサンプルを例1の手順に従って調製した。ヒアルロン酸での処理後24時間、経上皮電気抵抗(TEER)を以下のとおり測定した:
0.5mLの生理学的生理食塩水溶液を、5mlの生理食塩水溶液も含有する6ウェルプレートにセットされた組織上に直接適用した。Millicell-ERS電圧計(範囲0~20kΩ)の2つの電極を、組織の両側の2つのコンパートメントにセットし、電束が組織を通過するようにした。測定の結果はディスプレイ上に直接表した。
【0050】
各組織に対し3つの測定を組織内のばらつき(variability)のために行った。ブランク値(組織無しのインサート)をサンプル値(3測定からの平均)から差し引いた。その後、結果を組織表面(0.5cm
2)の大きさを考慮して正した:
結果を
図1に示す。
図1からわかるとおり、ヒアルロン酸で処理されたサンプルに対して測定されたTEER値は、損傷後に処理されなかったコントロールサンプルに対してより有意に高い。
TEERは皮膚障壁機能を反映する。
要するに、低および中間分子量のヒアルロン酸は、損傷前の値に至る点まで損傷後の障壁機能を改善したということがわかった。理論に縛られることなく、障壁機能の改善は、ヒアルロン酸によって引き起こされる組織修復の増大のためであると信じられる。
【0051】
例3 走査型電子顕微鏡(X10000)による損傷後の再上皮化の査定
この査定のためのRHOサンプルを例1の手順に従って調製した。
ヒアルロン酸での処理後24h、リン酸緩衝食塩水(PBS)中2.5%グルタルアルデヒドに浸漬、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液、pH7.4で洗浄し、および次いで同じ緩衝液(室温にて2h)、1%四酸化オスミウム(OsO4)への浸水によって、走査型電子顕微鏡(SEM)のためのサンプルが即時に固定された。サンプルを室温で高い等級のエタノール、およびヘキサメチルジシラザン中において一晩脱水した。
サンプルを、SEMコーティングユニットE5100を限定したPolaron Equipmentを用いる金の層で覆われた、カーボンタブを有するピン上にセットし、次いで観察および写真撮影のためのSEM Zeiss Sigma電子顕微鏡へと移動した。10000x拡大を行った。
【0052】
結果を以下の図に示す:
図2:時間T0hで、損傷無しのコントロール
図3:時間T24hで、損傷無しのコントロール
図4:損傷および低分子量ヒアルロン酸(20-50kDa;0.5%)で処理の後、時間T24hで;
図5:損傷、および中間分子量ヒアルロン酸(10~300kDa;0.2%)で処理後、時間T24hで;および
図6:損傷、中間分子量ヒアルロン酸(1’000~1’400kDa;0.2%)で処理後、時間T24hで。
【0053】
図4から見られるとおり、低分子量ヒアルロン酸は、創傷の回復に導いた。多くの新しい細胞外マトリックス(ECM)繊維がほとんど完全に創傷を覆った。微絨毛が存在し(青矢印)、組織の保湿に関してホメオタシス回復を示した。概して、組織修復の良好な進行を観察された。
図5から見られるとおり、中間分子量のヒアルロン酸は扁平細胞を創傷の近くへの移動を引き起こす。これらの細胞は、再増殖およびマトリックス繊維の橋の形成に関与する。概して写真は組織修復の能動プロセスを示した。
それとは対照的に、
図6から見られるとおり、修復プロセスは有意に高分子量ヒアルロン酸に対して有意に少なく進行する(advance)。代わりにフィルム形成が観察された。
【0054】
例4 ZO-1およびインテグリンB1上の免疫組織化学による損傷後の再上皮化の査定
この査定のためのRHOサンプルは例1の手順に従って調製された。
曝露(少なくとも一晩)の終わりに、組織サンプルを緩衝10%ホルマリンに固定した。サンプルをパラフィンブロックに含め、5μmの切片を調製した。これらのスライドをヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
使用された技術は、蛍光染料と化学的に連結した(conjugated)特異的な抗体を結合することにより、細胞または組織切片における特異的なタンパク質または抗原の可視化のために許容する。間接的な免疫蛍光染色は、蛍光色素で標識された2次抗体が1次抗体を認識するために使用される、手順である。免疫蛍光染色は、スライドおよび組織切片上に固定された細胞上で遂行され得る(perform)。サンプルを染色する免疫蛍光は、蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡下で調べられる。両方の免疫学的局在決定はスライドにおいて実証され、ここで第1および第2抗体は生理食塩水溶液によって置き換えられる。
【0055】
以下の抗体が使用された:
ZO-1:PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)において4℃で一晩インキュベートのために5μg/mlで希釈された、ウサギのポリクローナル抗体(Invitrogen、61-7300);およびAlexa Fluor 555ロバ抗ウサギ (Invitrogen、A31572)における2次抗体。核を(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)(Dapi)で染色した。
INTEGRIN(ITGB1):PBS中における1%BSAにおいて室温での2hインキュベーションのため2μg/mlで希釈した、マウスモノクローナル抗体抗インテグリンベータ1(Abcam、ab3167);およびAlexa Fluor 488ヤギ抗マウス(Invitrogen、A10680)における2次抗体。核をDapiで染色した。
【0056】
スライスをLeica DM 2500 FLUO顕微鏡下で調べ、Leica LAS softwareによって分析した。
結果を
図7に示す。
例1からのコントロールが無損傷組織コントロールとして使用された。
「損傷された」は、正常な創傷治癒がいかなる処理もなしに行われたサンプルを指す。損傷は、正常な創傷治癒プロセスに対応する、ITGB1およびZO-1発現を増大させるということを見出した。
【0057】
低分子量ヒアルロン酸を用いたインキュベーションは、創傷治癒プロセスにおける2つの極めて重要な役者であるZO-1およびインテグリンベータ1の過剰発現を誘引した。これらの結果は、組織修復プロセスが、損傷されたコントロールと比較してブーストされるということを示唆する。
中間分子量のヒアルロン酸を用いて得られた効果は、これが排他的にインテグリンベータ1の過剰発現による創傷治癒プロセスをブーストすることを示した。これらの効果は、低分子量ヒアルロン酸を用いたものよりもはっきりしない。
したがって、低および中間分子量のヒアルロン酸は創傷治癒の能動機構を誘導し、インテグリンB1およびZO-1の過剰発現に関連する。
【0058】
例5 再構築ヒト口腔上皮(RHO)サンプルの培養
実験室に到着後即時に、滅菌したエアフローキャビン下でアガロース栄養溶液からRHOを取り除いた。事前に室温の1mlの抗生物質を含有する維持培地で満たした6ウェルプレートにインサートを迅速にセットした。ウェルを37℃、5%CO2および飽和した湿度で一晩インキュベーターにセットした。
プロトコルは、細菌負荷のための二重の組織上およびさらなる形態学的分析のための単一組織上で行われた(SEM、H&E)。
黄色ブドウ球菌 MRSA ATCC 33591は、栄養ブロス(nutrient broth)に37℃で撹拌下、溶解され、培養された。
【0059】
30μLの、中間分子量のヒアルロン酸溶液(0.2%w/v)またはクロロヘキシジン(CHL)0.2%(ポジティブコントロール)は、夫々、局所的にRHOサンプルに適用され、24h培養された。次いで製品の残りの体積は上皮表面からマイクロピペットにより取り除かれた。
次いで、RHOサンプルを黄色ブドウ球菌細菌懸濁液とコロニー化し(O.D.0.1 約106UFC/組織)、それを局所的に4h適用した。4h後、残存する黄色ブドウ球菌溶液を取り除き、RHO組織サンプルを37°C、5%CO2で16h培養した。
【0060】
例6 TEER(Trans Epithelial Electrical Resistance:経上皮電気抵抗)によるバイオフィルム形成の査定
この査定のためのサンプルを例5の手順に従って調製した。
TEERを以下に記載する通り測定した:
0.5mLの生理学的生理食塩水溶液を、5mlの生理食塩水溶液も含有する6ウェルプレートにセットされた組織上に直接適用した。
Millicell-ERS電圧計(0-20kΩの範囲)の2つの電極を、組織の両側の2つのコンパートメントにセットし、電束が組織を通過するようにした。
各組織サンプルに対し3つの測定を組織内のばらつきのために行った。
【0061】
ブランク値(組織無しのインサート)をサンプル値(3測定からの平均)から差し引いた。その後この結果を組織表面(0.5cm
2)の大きさを考慮して正した:
結果を
図8に示す:
黄色ブドウ球菌によるコロニー化は、TEERのわずかな増加を誘引した。理論に縛られることなく、RHOの厚さはコロニー形成により増大すると想定される。
CHLで処理されたサンプルに関して、TEERは減少し、障壁機能が変化したことを意味する(場合によっては毒性による)。
中間分子量ヒアルロン酸の添加はTEERに影響を与えなかった;結果はコントロールと同様であった。
要するに、中間分子量のヒアルロン酸は細菌の成長を制限し、障壁機能に影響を与えなかった。
【0062】
例7 細菌カウントによるバイオフィルム形成の査定
この査定のためのサンプルを例5の手順に従って調製した。
頂点、基底外側、およびホモジネート区画上の細菌カウントを行うために、以下の手順を使用した:
-基底外側の区画のために:各ウェルから培地1mlをサンプリングした。
-頂点区画のために、例6に従うTEER測定からのサンプルを使用した:各サンプルは500μlの生理学的生理食塩水溶液を含有した。これらのサンプルは、前もって2ml/ウェルの生理食塩水溶液で満たされ、40kHzで7分間超音波浴に置かれた、新しい6ウェルプレートに移された。超音波後、500μlの生理食塩水溶液を頂点区画のためにサンプリングし、およびRHO組織を200μlの生理食塩水溶液で2回リンスした。次いで溶液の総量(900μl)を採取した頂点区画を得るために一緒に溜めた。
-ホモジネート区画のために:滅菌したメスの刃をインサートから組織を採取するために、および少なくとも10分間滅菌された蒸留水において調製された500μLの0,5%Triton X-100溶液を含有するエッペンドルフチューブにそれらをセットするために使用している。
【0063】
3つの区画の細菌カウントは、各区画の懸濁液(各希釈に対して1つ10μlの滴)の適切な10倍希釈をセットしている、栄養寒天プレート上で行われた。37℃での1日のインキュベーション後、コロニーを視覚的に数えた。
細菌カウントの結果は、
図9(頂点区画)および
図10(ホモジネート組織)に示される。
黄色ブドウ球菌によるコロニー化は頂点およびホモジネート区画の両方において細菌カウントの増大を誘発した。
【0064】
CHLを用いた処理は強い殺菌特性を示した。
ヒアルロン酸を用いた処理は、頂点およびホモジネート区画の両方において約50%の細菌カウントの減少へと導いた。よって、それは細菌増殖に影響を与えおよび細菌付着および侵入を制限した。
要するにヒアルロン酸は、細菌侵入に対する良好な保護を起こすことができた。
【0065】
例9:走査型電子顕微鏡によるバイオフィルムの可視化
この実験のためのサンプルを例5の手順に従って調製した。
処理後、SEMのためのサンプルをPBS中の2.5%グルタルアルデヒドへの浸水によって即時に固定した。スライドを0.065Mリン酸緩衝液において3回洗浄し、次いで0.064Mでリン酸緩衝液中1%OsO中(pH7.4)にセットした。サンプルを段階的なシリーズのエタノールを通して脱水し、次いでCO2 liquid Bemar SPC 1500装置において臨界点乾燥した。サンプルをスタブ上にのせ、金で手塗りし(hand painted)、Cambridge Mark 250 SEMで観察した。10000x拡大を行った。
【0066】
結果を以下の図に示す:
図11:コロニー化なしのコントロール
図12:4h後黄色ブドウ球菌を用いてコロニー化
図13:4h後の時間で、黄色ブドウ球菌を用いてコロニー化および中間分子量ヒアルロン酸(100~300kDa;0.2%w/v)を用いて処理
図11は、細菌のコロニー化なしの再構築ヒト口腔上皮(RHO)を示す。
図12は、クラスターおよび浮遊性形態学におけるコロニーを示す。細菌は多糖類マトリックスを製造し、浮遊性からバイオフィルム表現型に変換し始める。
図13は、より少ないコロニーがクラスターおよび浮遊性形態学にあることを示す。細菌はバイオフィルム形成を妨げる。多糖類マトリックスが見えない。よって、浮遊性表現型が、保存される。
【0067】
例10:口腔粘膜におけるヒアルロン酸の沈殿
ヒアルロン酸ありおよびなしの口内洗浄液が、以下のプロトコルに従って3人のボランティアで試験された:
未処理の粘膜をサンプリング
30秒間、水20mlで口をリンスする
30秒間、基本的な口内洗浄液(ヒアルロン酸なし)で処理
粘膜をサンプリング
30秒間、水20mlで口をリンスする
30秒間、本発明に従う0.5%(w/v)のヒアルロン酸を含有する口内洗浄液で処理
粘膜をサンプリング
30秒間、水20mlで口をリンスする
30秒間、本発明に従う0.5%(w/v)のヒアルロン酸を含有する口内洗浄液で処理
粘膜をサンプリング
【0068】
15秒間滅菌された植菌ループを用いて口内粘膜をそぐことによってサンプルを採取し、ループをガラススライド上の水50μlに洗い落した(scrub)。
ガラススライドを37℃で1時間、換気したオーブンにおいて乾燥した。沈殿をメタノールで20分間室温で固定化した。次いで、超過分を取り除き、およびガラススライドを室温にて乾燥した。ヒアルロン酸をアルシアンブルーを用いて30分間室温で染色し、染料を数回水でリンスした。刃が乾燥したとき、写真を光学顕微鏡x20によって撮影し、定性的に分析した。
【0069】
ボランティア1に対し、基本の口内洗浄液とおよび未処理の条件と比較して、0.5%ヒアルロン酸を含有する口内洗浄液でヒアルロン酸染色の増大が観察された。1%のヒアルロン酸で、染色の強い増大があり、このボランティアの口内粘膜上にヒアルロン酸の堆積を証明した。
ボランティア2に対し、染色がより軽く、しかしまた口内洗浄液におけるヒアルロン酸の濃度と相互に関連する染色の増大があった。
ボランティア3に対し、未処置条件における口内粘膜上のヒアルロン酸のレベルは、他の2人のボランティアに対してよりも有意に高かった。この染色は水リンスおよび基本的な口内洗浄液を用いた処理後減少し、しかし口内洗浄液を含有するヒアルロン酸を用いた処理後のヒアルロン酸染色の増大が再びあった。
【0070】
例11:練り歯磨きの評価
3つの練り歯磨き製剤は、完全に回転した、完全なブロックデザインを有するシークエンシャルモナディック製品配置を使用する33人の訓練されていないパネリストによって試験された。
3つの練り歯磨き製剤は、ブラインドコードされ、夫々、0%ヒアルロン酸、0.5%ヒアルロン酸、および1.0%ヒアルロン酸を含有した。各パネリストは、各練り歯磨きをただ1度だけ試験した。ブラッシングは90秒まで継続した。各ブラッシングの後、パネリストは標準的な非公開の尺度での回想アンケートを完了した。
結果を
図14および15に示した。
【0071】
図14から見られるとおり、ヒアルロン酸を含有する練り歯磨きは、ヒアルロン酸なしのものよりも、より苦みが少なく、より甘くおよびよりしょっぱさが少ないと評価された。それらはまたより少ない泡立ちで、より少ないヒリヒリ、およびより少ない乾燥、ならびにより清潔な感触を与えるように感じた。
図15は、異なる製品のより明確な見識を示す。とりわけ、ヒアルロン酸を含有する練り歯磨きは、口の中により心地よい感触を有すること、より清潔な感触を与えること、それらがその歯茎の手入れをしているようにより感じること、より心地よい感覚を与えること、より少ない苦みを有すること、それらが口の手入れをしているようにより感じること、および口のより少ない乾燥感覚を残すことを見出した。