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  • -六フッ化モリブデンの製造方法及び製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】六フッ化モリブデンの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/04 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
C01G39/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020511062
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019013914
(87)【国際公開番号】W WO2019189715
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018069232
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】澁澤 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】河原 研次
(72)【発明者】
【氏名】埴谷 大地
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103449525(CN,A)
【文献】特開平01-234301(JP,A)
【文献】特開2000-072442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00
49/10-99/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応器の上流側に設けられたフッ素(F)ガス導入口、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口を含む六フッ化モリブデン製造装置において、金属モリブデンとフッ素(F)ガスとを接触させる工程を含む六フッ化モリブデンを製造する方法であって、金属モリブデンを載せる固定床を傾斜配置し、当該傾斜配置した固定床の鉛直方向における低位置側にフッ素ガス導入口を設けたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記固定床の傾斜角度が0.1~20°である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応器内の温度を50~700℃に設定する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素(F2)ガスを前記固定床の傾斜面の上方から反応器内に流入させる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
未反応のフッ素(F2)ガス及び六フッ化モリブデンガスを含む反応生成物のガスを、反応生成物ガス排出口に設けたコンデンサーを通過させることにより、反応生成物のガスから六フッ化モリブデン及びフッ素(F2)ガスを分離する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
コンデンサーの温度が35~214℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
コンデンサーの温度が35~50℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
反応器、反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応器の上流側に設けられたフッ素(F)ガス導入口、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口を含む六フッ化モリブデン製造装置であって、前記固定床を傾斜配置し、当該傾斜配置した固定床の鉛直方向における低位置側にフッ素ガス導入口を設けたことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記固定床の傾斜角度が0.1~20°である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
フッ素(F2)ガス導入口が前記固定床の傾斜面の上方に設けられている、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
反応生成物ガス排出口に、反応生成物のガスから六フッ化モリブデン及びフッ素(F2)ガスを分離するためのコンデンサーが接続されている、請求項8~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
反応生成物ガス排出口に、六フッ化モリブデンと未反応フッ素(F2)ガスを分離するための冷却捕集器が接続されている、請求項8~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
反応器材質がニッケル単体、ニッケル合金、オーステナイト系ステンレス、又はこれらの組み合わせから形成される、請求項8~12のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の六フッ化モリブデンを収率良く製造する方法及びその方法を実施するための反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
六フッ化モリブデンは、半導体デバイスの高集積化・高速化、低電力化等を担う低抵抗且つ高融点の配線材料の原料として期待されている。六フッ化モリブデンは、一般的にモリブデンの単体金属とフッ素(F2)ガスとを接触させる方法で製造される。フッ素(F2)ガスは毒性が高く、未反応のフッ素(F2)ガスは除害処理が必要となるために、六フッ化モリブデンの製造の際には、単体金属の原料の量に応じた一定量のフッ素(F2)ガスを効率よく使用する必要がある。
【0003】
モリブデンのフッ化物としては、一フッ化物(MoF)に始まり、六フッ化物(MoF6)までフッ素原子の数が一つずつ増えた形で存在する。上記の製法にはフッ素(F2)ガスを安全に取り扱うためにフッ素(F2)ガスを大過剰に反応させるべきではない。このために、生成物には未反応の単体金属及び一フッ化物から五フッ化物の中間体が不純物として混入するという問題がある。このような不純物は、六フッ化物製品の純度の低下をもたらすのみならず、反応装置内部に堆積して反応系の閉塞や反応装置のメンテナンスの問題を引き起こす。五フッ化モリブデン(最終中間体)及び六フッ化モリブデン(生成物)の沸点は、それぞれ常圧で214℃及び35℃であることから、反応器出口にコンデンサーを設置することにより、沸点の違いを利用することで六フッ化モリブデンの高純度ガスとして反応系から回収することができる。
【0004】
モリブデンの単体金属とフッ素(F2)ガスとを効率よく反応させる方法として、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カルシウム(CaF2)などのフッ素(F2)ガスと反応しない固体金属フッ化物をモリブデン単体金属に成形助剤として混入し、原料を成形体の形で供給することが提案されている(特許文献1)。この方法によれば、反応中に成形体の形状が維持されるので、金属単体の微粉体がガスとして反応系から回収される生成物に混入する問題が解消される。しかし、特許文献1では、中間体の残留の問題は言及されておらず、また成形体を製造する作業や反応後に成形体を処分する作業があり、製造工程が複雑になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-234301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述した従来の問題点を解消した高純度の六フッ化モリブデンを収率良く製造する方法及びその方法を実施するための反応装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のものを提供する。
[1]
反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応器の上流側に設けられたフッ素(F2)ガス導入口、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口を含む六フッ化モリブデン製造装置において、金属モリブデンとフッ素(F2)ガスとを接触させる工程を含む六フッ化モリブデンを製造する方法であって、金属モリブデンを載せる固定床を傾斜させたことを特徴とする方法。
[2]
前記固定床の傾斜角度が0.1~20°である、[1]に記載の方法。
[3]
反応器内の温度を50~700℃に設定する、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
フッ素(F2)ガスを前記固定床の傾斜面の上方から反応器内に流入させる、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
未反応のフッ素(F2)ガス及び六フッ化モリブデンガスを含む反応生成物のガスを、反応生成物ガス排出口に設けたコンデンサーを通過させることにより、反応生成物のガスから六フッ化モリブデン及びフッ素(F2)ガスを分離する、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
コンデンサーの温度が35~214℃である、[5]に記載の方法。
[7]
コンデンサーの温度が35~50℃である、[5]に記載の方法。
[8]
反応器、反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応器の上流側に設けられたフッ素(F2)ガス導入口、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口を含む六フッ化モリブデン製造装置であって、前記固定床を傾斜させたことを特徴とする装置。
[9]
前記固定床の傾斜角度が0.1~20°である、[8]に記載の装置。
[10]
フッ素(F2)ガス導入口が前記固定床の傾斜面の上方に設けられている、[8]または[9]に記載の装置。
[11]
反応生成物ガス排出口に、反応生成物のガスから六フッ化モリブデン及びフッ素(F2)ガスを分離するためのコンデンサーが接続されている、[8]~[10]のいずれかに記載の装置。
[12]
反応生成物ガス排出口に、六フッ化モリブデンと未反応フッ素(F2)ガスを分離するための冷却捕集器が接続されている、[8]~[11]のいずれかに記載の装置。
[13]
反応器材質がニッケル単体、ニッケル合金、オーステナイト系ステンレス、又はこれらの組み合わせから形成される、[8]~[12]のいずれかに記載の装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高純度の六フッ化モリブデンを収率良く製造できる。より詳細には、金属単体の量に応じた一定量のフッ素(F2)ガスを無駄なく反応させることができる。このため、未反応のフッ素(F2)ガスが生じにくく、除害処理するフッ素(F2)ガスの量も少なく、経済的に有利である。また、反応装置内部に中間体(MoF、MoF2、MoF3、MoF4及びMoF5)が残留しないので、反応系の閉塞がなく、反応装置のメンテナンスのコストも低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の作用効果を説明するための図である。
図2】実施例で使用した装置の概要を示す図である。
図3】実施例1における反応器内の温度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(作用)
図1は本発明の六フッ化モリブデン製造装置の概要を示す図である。
本発明の装置は、反応器、反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応器の上流側に設けられたフッ素(F2)ガス導入口、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口を含む。本発明の特徴は、前記固定床を傾斜させたことにある。原料のモリブデン金属は、フッ素(F2)ガスと接触することで、MoF、MoF2、MoF3、MoF4及びMoF5の中間体を経て生成物であるMoF6に転化される。ここで、最終中間体のMoF5の常圧での融点は67℃であり、沸点は214℃である。またMoF6の融点は17℃であり沸点は35℃である。100℃以上になる反応器内部では、MoF、MoF2、MoF3及びMoF4は固体であるが、MoF5は液体および気体として反応器内を流動する。原料のフッ素化が進行してMoF5が生成すると、液体のMoF5は傾斜した固定床を流れ、上流のフッ素(F2)入口付近の固定床表面に薄い液層を形成する。この液層がフッ素(F2)ガスと効率よく反応してMoF6となり、MoF6は気体であることから、反応生成物ガス排出口から反応器外へと流れ出る。反応器内部の比較的高温となっている部位ではMoF5は気体となっているが、気体のMoF5は同じく気体であるフッ素(F2)ガスと均一に混ざりやすく、MoF6が効率良く生成する。このように、本発明者らは、反応器内部の固定床をわずかに傾斜させることにより、MoF6が効率良く生成することを見出した。
【0011】
(六フッ化モリブデン製造装置)
本発明の装置の概要は前述したとおりであるが、反応器は、反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応器の上流側に設けられたフッ素(F2)ガス導入口、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口を含む。反応器及び固定床の材質は、フッ素(F2)ガスが腐食性なので、通常、ニッケル単体、ニッケル合金(インコネル、モネル、ハステロイなど)、オーステナイト系ステンレスなどまたはこれらの組み合わせから形成される。
【0012】
前記固定床の傾斜角度は、0.1~20°であることが好ましく、0.1~10°であることがより好ましく、1~5°であることがさらに好ましい。
【0013】
反応器内の温度を好ましくは50~700℃、より好ましくは70~400℃、さらに好ましくは100~200℃に設定する。このような反応温度の調節は、例えば、反応器の周りに冷却水を循環させることなどによって行うことができる。
【0014】
中間体のMoF5の液体の薄い層にフッ素(F2)ガスが効率良く接触できるように、フッ素(F2)ガス導入口は固定床の上方に設けて、フッ素(F2)ガスが固定床を降下するように、配置することが好ましい。また、反応器の上流から下流に向けて一定の気流を生じさせるために、反応器の最上流にフッ素(F2)ガス導入口を設けることができる。
【0015】
フッ素(F2)ガス導入口から反応器内に導入されたフッ素(F2)ガスは、反応生成物ガス排出口に向かって流れ、固定床の金属モリブデンと接触、反応する。反応の結果生じたMoF、MoF2、MoF3及びMoF4は反応温度では固体であるが、未反応のフッ素(F2)ガス、MoF5及びMoF6は気体であるため、反応生成物ガス排出口から反応器外へ流れ出る。反応効率を高めるために、必要に応じて、反応器内には、N2、He、Arなどの不活性ガスから構成されるキャリアガスをフッ素(F2)ガス導入口から反応生成物ガス排出口に向かって混合してもよい。この場合、キャリアガスとフッ素(F2)ガスとの体積比は、好ましくは9:1~0:10、より好ましくは1:9~0:10となるようにキャリアガスとフッ素(F2)ガスを導入する。反応生成物ガス排出口には、反応生成物のガスから六フッ化モリブデン及びフッ素(F2)ガスを分離するためのコンデンサーが接続されている。前述したように、最終中間体の五フッ化モリブデン(MoF5)の常圧での沸点は214℃であり、六フッ化モリブデン(MoF6)の沸点は35℃である。このため、コンデンサーの温度が35~214℃であり、好ましくは35~67℃である。
【0016】
反応生成物のガスから分離された六フッ化モリブデン及びフッ素(F2)ガスは、さらに六フッ化モリブデンを液化することにより、フッ素(F2)ガス(沸点:-188℃)と分離する。分離したフッ素(F2)ガスは、リサイクルのため2つ目の反応器に導入して反応させるか、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などを含むアルカリスクラバーを使用して中和させて除去し除害処理を行う。その他、乾式除害装置を使用することもできる。
【0017】
(金属モリブデン原料)
金属モリブデン原料は、当業界で六フッ化モリブデンの製造に使用されているものを特に制限なく使用できる。具体的には、粉末状、粒状、棒状などの形態のものを使用できる。金属モリブデン粉末を使用する場合、取り扱いの容易さの観点から粒径が1~50μm、嵩密度が1~2のもの、特に粒径が2~4μm、嵩密度が1.3~1.5のものを使用することが好ましい。粒状の金属モリブデンを使用する場合、取り扱いの容易さ及び反応効率の観点から粒子の最大径が3~10cmのものを使用することが好ましい。棒状の金属モリブデンを使用する場合、取り扱いの容易さ及び反応効率の観点から縦方向の寸法が1~5cm、横方向の寸法が1~2000cmのものを使用することが好ましい。
【実施例
【0018】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の例に限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
図2に、実施例で使用した六フッ化モリブデン製造装置の概要を示す。図2の装置は、フッ素化剤であるフッ素(F2)ガスを収容したフッ素(F2)ボンベA、長手方向に延びるフッ素(F2)ガス流路を規定する反応器B、フッ素(F2)ボンベと反応器とを接続するフッ素(F2)ガス供給配管、反応器の上流側に設けられたフッ素(F2)ガス導入口(図1には3つの導入口が設けられている。)、反応器の下流側に設けられた反応生成物ガス排出口(図1には排出口にコンデンサーCが設けられている。)、反応器内部にあって反応器の上流側から下流側にわたって延在する金属モリブデンを載置するための固定床、反応生成物ガス排出口よりも下流に配置された六フッ化モリブデン捕集器D、フッ素(F2)ガスの漏洩を防ぐための除害装置E(アルカリスクラバーなど)を含む。固定床はニッケル(Ni)ボートFからなる。固定床には、1°の傾斜があり、上流側が下流側よりも低くなっている。原料のモリブデン金属(粒径:2~4μm、嵩密度:1.3~1.5)は、ニッケル(Ni)ボート内に置かれた。原料のモリブデン金属はフッ素(F2)ガスと接触することで、MoF、MoF2、MoF3、MoF4及びMoF5の中間体を経て生成物であるMoF6に転化される。原料のモリブデン金属はフッ素(F2)ガスと接触すると発熱するが、反応器内部の温度が400℃を超えないようにフッ素(F2)ガス導入量を調整した。反応器内の反応に使用する領域は60℃以上に維持されるようにし、発生熱量に応じて160℃の蒸気から冷水を反応器周囲のジャケットに流した。100℃以上になる反応器内部では、MoF、MoF2、MoF3及びMoF4は固体であるが、MoF5は液体である。原料のフッ素化が進行してMoF5が生成すると、液体のMoF5は傾斜したニッケル(Ni)ボート内を流れ、上流のフッ素(F2)入口付近のニッケル(Ni)ボート表面に薄い液層を形成した。この液層がフッ素(F2)ガスと効率良く反応してMoF6となり、MoF6は気体であるため、反応生成物ガス排出口から反応器外へと流れ出た。反応器内部の比較的高温となっている部位ではMoF5は気体として存在しているが、気体のMoF5は同じく気体であるフッ素(F2)ガスと均一に混ざりやすく、MoF6が効率良く生成した。反応終了後、反応器内部に残留物がなく、効率良く反応を行うことができた(収率90.3%)。このような効率の良い反応の進行は、図3に示す反応器内の温度の経時変化からも読み取れた。即ち、フッ素(F2)ガス導入開始後に発熱反応により反応器内の温度は400℃付近まで急激に上昇し、その後、生成した中間体は効率良くMoF6までフッ素化されたので、反応温度は原料及び中間体の消費に伴い緩やかに減少した。
【0020】
(比較例1)
固定床であるニッケル(Ni)ボートを水平(傾斜0°)に保った以外は実施例1と同様に行った。反応器内部の温度が400℃を超えないようにフッ素(F2)ガスの流量を調整して加えたが、フッ化モリブデン中間体が効率良く反応せずに発熱反応にむらがあり、フッ素(F2)ガスの流量を変えて温度調整することが困難であった。反応終了後、反応器内部には、固体及び液体の残留物がみられた(収率71.1%)。
【0021】
試験結果を下記表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例1と比較例1とを比較すると、反応器内部の固定床をわずか1°傾斜させた実施例1では、収率が90.3%と高く、生成物のMoF6の純度も99.9%と高く、反応終了後に反応器内部に中間体(MoF、MoF2、MoF3、MoF4及びMoF5)が残留していないことが観察された。一方、反応器内部の固定床を水平に保った比較例1では、生成物のMoF6の純度は99.8%と高いものの、収率は71.1%と低く、反応終了後に反応器内部に中間体(MoF、MoF2、MoF3、MoF4及びMoF5)が残留していた。このように、本発明者らは、本発明によれば、反応器内部の固定床をわずかに傾斜させ、生成物出口にコンデンサーを備えることにより、MoF6が高純度で効率よく製造できることを見出した。しかも、本発明によれば、反応終了後に、反応器内に反応中間体の残留物がなく、装置のメンテナンスも容易であることがわかった。
図1
図2
図3