(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】時計用補正装置
(51)【国際特許分類】
G04B 19/02 20060101AFI20221202BHJP
G04B 19/253 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G04B19/02 A
G04B19/253 M
(21)【出願番号】P 2020520766
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018078100
(87)【国際公開番号】W WO2019081253
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-19
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】502383535
【氏名又は名称】リシュモン アンテルナシオナル ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ビュルメズ
(72)【発明者】
【氏名】セベリン ドンゼ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-106271(JP,A)
【文献】特開昭59-83080(JP,A)
【文献】特開2013-142701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力(5)、第2の入力(9)及び出力(13)を有する差動歯車(3)を備える時計用補正装置(1)であり、
前記第1の入力(5)は、時計のムーブメントによって駆動されるように配置され、
前記第2の入力(9)は、制御部材(19)から延在し、前記制御部材(19)と前記第2の入力(9)との間の運動学的連結を設けることができ、前記運動学的連結を破ることができるクラッチ(21)を備える補正歯車列(11)と運動学的に連結され、
前記出力(13)は、前記時計のムーブメントの表示装置を駆動するように配置され、前記出力(13)の角位置は、前記第1の入力(5)の角位置及び前記第2の入力(9)の角位置の関数として定められ、
前記
時計用補正装置(1)は、更に前記第2の入力(9)と両方向制御可能に連結されたメモリカム(23)を備え、
前記メモリカム(23)は、前記制御部材(19)と前記第2の入力(9)との間の前記運動学的連結が破られているときに前記メモリカム(23)を少なくとも1つの所定の角位置に保つ傾向がある弾性部材(31)が供給する戻り力を受け、
前記弾性部材(31)は、更に前記
時計用補正装置(1)の動作時に前記運動学的連結が設けられているときに前記第2の入力(9)が前記制御部材(19)の制御下で回転できるように配置され、
前記
時計用補正装置(1)は、前記メモリカム(23)が前記少なくとも一つの所定の角位置に存在するときに、前記出力(13)の前記角位置に対して補正している間の前記第2の入力(9)の回転が相殺されるように配置される、時計用補正装置(1)。
【請求項2】
前記補正歯車列(11)が、前記メモリカム(23)と前記制御部材(19)との間に運動学的に位置するクラッチ(21)を備える、請求項1に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項3】
前記メモリカム(23)が、前記
補正歯車列(11)の一部を形成し、または前記
補正歯車列(11)の他の単一の車輪と噛み合う車輪(27)に回転固定される、請求項1または2に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項4】
前記弾性部材(31)が、前記制御部材(19)の並進変位の制御下で変位するように配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項5】
前記第1の入力(5)は、サンピニオン(7)に回転固定され、
前記第2の入力(9)は、前記サンピニオン(7)と係合する少なくとも1つのサテライトピニオン(17)を備えるサテライトホルダであり、
前記出力(13)は歯付きのリングギア(15)を備え、前記リングギア(15)の内歯は前記
少なくとも1つのサテライトピニオン(17)と噛み合う、請求項1~4のいずれか一項に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項6】
前記出力(13)は、通常の動作モードで24時間ごとに1回転するように配置される、請求項5に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項7】
前記第1の入力(5)は、通常の動作モードで12時間ごとに1回転するように配置される、請求項5又は6に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項8】
前記出力(13)は、少なくとも1つの駆動歯(37)を有する少なくとも1つの板(13a、13b)を備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項9】
前記出力(13)は、パーペチュアルカレンダ装置を含むプログラムホイール(33)と協働するように配置される複数の歯付き板(13a、13b)を備える、請求項5~8のいずれか一項に記載の時計用補正装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の補正装置(1)を備える時計のムーブメント。
【請求項11】
請求項10に記載のムーブメントを備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計学の分野に関する。より詳細には、本発明は時計用の補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在時刻表示だけでなく、日付、曜日、月又は年などの他の情報を表示する装置を備える時計では、この装置によって表示される情報をユーザが設定できるようにするための補正装置が必要である。この設定は、設定軸、専用軸、又は1つ以上の押しボタン等の他の専用手段によって行うことができる。これらの補正装置の中には、例えば、表示装置の作動が発生する深夜ごろに手動補正が行われる場合に、動きを損傷する可能性のあるトルクを加えることによって、動きに損傷を与えるおそれのあるものがある。
【0003】
この理由から、特許文献1は、補正装置の一部を形成する差動歯車の手段によって、ムーブメントをカレンダディスプレイ装置に連結することを提案している。この差動装置の第1の入力はムーブメントによって駆動され、第2の入力は設定軸のような外部制御部材によって駆動され、出力は次に、カレンダディスプレイを駆動する。作動歯車の介在によって、補正中にムーブメントの要素に損傷トルクを与えることはなく、表示装置を適切な方法で配置すれば、この補正は両方向に行うことができる。
【0004】
パーペチュアルカレンダのような幾つかの複雑な表示装置では、情報がリンクされた幾つかの表示(例えば、日付、月、年、月相等)の存在、これらの情報の各項目の表示の同期は、装置が情報を正しく表示するために、また表示が正しい瞬間に進むために重要である。
【0005】
ムーブメントがある時間停止されたとき、これらの情報のいくつかの補正を実行し、ひいては、それらの同期を再確立することがしばしば必要である。
【0006】
しばしば適用される1つの解決策は、押しボタンまたは補正器に関連するサブディスプレイ(日付、月、日、月、年、月相など)のそれぞれに専用の補正手段を提供することである。したがって、各押しボタンは対応するサブディスプレイに作用し、これは、機構を補正するいくつかの動作を要求する。しかしながら、これらの補正器は典型的には一方向に作用し、従って、他の方向における1つのステップの補正を得るために、補正の方向における残りのサイクルを通過することが必要であり、このことは、ディスプレイ装置の構造に応じて、下流のサブディスプレイを誤って調整するおそれがある。このような場合、下流のサブディスプレイも順番に補正されなければならない。
【0007】
特許文献2(EP0191921)は、カレンダデータの補正が設定軸によって行われるパーペチュアルカレンダを提案することにより、この問題に対する解決策を記述している。従って、情報の各項目を非同期化することは不可能である。しかしながら、ムーブメントの運動学は、一方向の補正のみを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】仏国特許第2541005号明細書
【文献】欧州特許第0191921号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点が少なくとも部分的に克服される時計を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より具体的には、本発明は、第1の入力、第2の入力及び出力を有する差動歯車を備える時計用補正装置に関する。
【0011】
前記作動歯車の第1の入力は、時計のムーブメントによって駆動されるように配置され、例えば、ムーブメントによって、12時間に1回転の速度で直接駆動される。
【0012】
第2の入力は、制御部材から延在し、制御部材と前記第2の入力との間の運動学的連結を設けることができ、運動学的連結を遮ることができるクラッチを備える補正歯車列と運動学的に連結される。
【0013】
出力は、時計のムーブメントの表示装置を駆動するように配置され、出力の角位置は、前記第1の入力の角位置及び前記第2の入力の角位置の関数として定められ、したがって出力のそれぞれは出力の角位置に対して寄与する。
【0014】
本発明によれば、前記補正装置は、更に第2の入力と両方向制御可能に(desmodromically)連結されたメモリカムを備える。このメモリカムは、制御部材と第2の入力との間の運動学的連結が破られているときに、すなわち補正が行われていないときにメモリカムを少なくとも1つの所定の角位置に保つ傾向がある、ばね等の弾性部材が供給する戻り力を受ける。弾性部材は、補正時に運動学的連結が設けられているときに第2の入力が制御部材の制御下で回転でき、これにより関連する表示装置の補正を可能にする。
【0015】
最後的に、補正装置は、メモリカムが少なくとも一つの所定の角位置に存在するときに、出力の角位置に対して補正している間の第2の入力の回転が相殺されることを確保するように、特に関係するギア比に関して配置される。言い換えれば、制御部材と第2の入力との間の運動学的連結が破られているとき、メモリカムの所定の角位置は、第2の入力を「ニュートラルの」位置に戻す。
【0016】
補正中、第2の入力の角位置は、第1の入力によって定められる角位置に加えられるか、またはそこから差し引かれることによって、出力の角位置を任意の方法で定めることに寄与する。そのような場合、出力は、第1の入力に対して誤調整され、脱同期化される。メモリカムは、第2の入力と両方向制御可能にリンクされているので、このオフセットに対応する角度偏差を「記憶」するように配置されている。制御部材との運動学的連結が補正の終わりにクラッチ解除されるときに、メモリカム上の戻し力の作用は、この偏差が相殺されるように第2の入力を駆動する。したがって、出力の角位置に対する第2の入力の寄与は、前記入力を対応する角位置に設定することによって無効にされ、出力と第1の入力との間の同期が回復される。その結果、出力による表示装置の駆動は、通常動作中、所望の瞬間に行われる。
【0017】
他の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1の補正装置の等角図であり、補正装置が相互作用する車輪と一緒に示されている。
【
図3】差動歯車の回転軸と交差し、補正軸から延びる平面に沿って切断した、
図2の図である。
【
図5】歯付き板の1つが取り外されている
図4に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の他の詳細は添付の図面を参照して、以下の説明を読むことにより、より明確になるであろう。
【0020】
図1は、非限定的な例として与えられる、本発明による補正装置1の実施形態を示す。この補正装置1は年間カレンダ機構のような任意の特定の表示装置によって表示される情報を補正するように意図されているが、単純な、永続的な、または類似のカレンダにも適用することができる。この補正は、有利には両方向で実行することができる。
【0021】
装置1は差動歯車3を含み、その幾つかの詳細は
図4及び
図5に更に示されている。この差動歯車3は、時計のムーブメントによって駆動されるものである第1の入力5を有している。本実施例のように、装置はベースムーブメント(図示せず)によって駆動されるように意図されたモジュール上に配置することができるが、一体構造への適用も可能である。
【0022】
ムーブメントは、アドホックな角速度(典型的には12時間で1回転)で第1の入力5を駆動することを意図しており、差動歯車3の幾何学的中心に位置するサンピニオン7に回転固定された歯付き車輪の形成をとる。第1の入力5は例えば、ムーブメントの筒車(the hours wheel)と噛み合うことによって、任意の種類の駆動システムによって駆動することができる。今回のケースでは、第1の入力が、ムーブメントの筒車に回転固定され、12時間に1回転の割合で駆動される。しかしながら、他の駆動速度も可能である。
【0023】
差動歯車3はさらに、外歯を備え、複数のサテライトピニオン17が枢動されるサテライトホルダである第2の入力9を備える。複数のサテライトピニオン17は、サンピニオン7と噛み合う。このサテライトホルダメッシュの外歯は、補正軸19の形態で補正部材19と運動学的にクラッチを切れるよう(declutchably)連結された補正歯車列11と噛み合う。この軸19は、巻真(a winding stem)としても機能することができる。
【0024】
代替的に、補正部材は、回転ベゼル又は回転裏蓋のような他の形態をとることができる。当業者は、補正鎖のクラッチとデクラッチを協調させながら、2つの迅速な補正押しボタン、1つはサテライトホルダを前進させ、もう1つはサテライトホルダを後退させるように配置することさえ可能である。
【0025】
差動歯車の出力13は、それぞれが24個の歯を有し、互いに重ね合わされ、例えばキー―キー溝系cの手段によって相互に回転固定された2つの歯付きプレート13a、13bを含む。これらのプレート13a,13bは、サテライトピニオン17と噛み合う内歯を設けたリングギア15に回転固定されている。平面(「平坦な」遊星差動)または空間(「球状の」遊星差動)におけるプレートおよびサテライトピニオンの数およびエピサイクロイド列システム(an epicycloidal train system)におけるそれらの配置は、コンストラクタの必要性に応じて選択することができる。明らかに、他の差動歯車の構造が当業者に入手可能であり、ここで述べることは決して限定的なものではない。
【0026】
この構造により、表示装置の通常動作中、すなわち、ムーブメントが動作し、補正が行われないときには、以下に説明するように、補正歯車列11、従って第2の入力9は静止状態で遮断されたままである。したがって、出力13は、サンピニオン7およびサテライト17によって、もっぱら第1の入力5の回転機能として駆動される。したがって、出力13の回転方向は、第1の入力5の回転方向とは逆であり、差動装置のギア比によって、角速度減速を受ける。この特定のケースには、第1の入力5は12時間で1回転を行い、その出力13とのギア比は0.5である。その結果、出力13は、カレンダ装置を駆動するのに適しているように、24時間で1回転する。この目的のために、上部プレート13aは、前記プレートの他の歯よりも長い駆動歯37を有する。また下部プレート13bは、年間またはパーペチュアルカレンダ装置の駆動に関して一般に知られているように、より長い駆動歯を有し、31日未満の月の月末作動を実行し、および/または別のディスプレイ装置を作動させる。他の回転速度は、もちろん、表示装置及び差動歯車3の構造に応じて可能である。
【0027】
補正中、第1の入力5は運動及び脱進機の作用を受けて(準)固定のままであり、第2の入力9は、補正歯車列11によって伝達される補正軸19の回転に追従して回転する。第2の入力9の回転は、差動装置の中心周りのサテライト17の回転によって、また、(準)固定のままであるサンピニオン7上の差動装置の回動によって、結果的に出力13に伝達される。したがって、第2の入力部9および出力部13の回転方向は同じであるが、図示の実施形態では2/3の比によって、出力部の回転速度は第2の入力部の回転速度よりも小さい。
【0028】
すなわち、事例であり、前提部で述べたように、補正歯車列は補正中にベースムーブメントに何ら影響を及ぼさず、出力13の回転は2つの入力5、9の各々の機能である。典型的な場合には、出力13は、実行する回転毎に、1ステップの速度で表示装置を駆動する。表示装置の構造およびプレート13a、13bの機能として、出力13の完全な回転あたりいくつかの補正ステップを提供することも可能であることに留意されたい。例えば、出力の1回転の各3分の1または4分の1(または他の分割)は、場合に応じて、1つの補正ステップによって表示装置を駆動することができる。
【0029】
補正に続いて、出力13の角度位置が第1の入力5に対して同期されたままとするために、及び、ディスプレイ装置の駆動が正しい瞬間にすなわち真夜中ごろに実行されるために、装置1は補正が終了すると、出力13を補正の前のその最初の角度方向に実質的に戻すことができるようにする手段を備える。
【0030】
このことを行うために、補正歯車列11は、一方では軸19の軸方向位置に従って、補正軸19と第2の入力9との間の運動学的リンクを確立し、これを破ることを可能にするクラッチ21を、他方ではメモリカム23とを備える。
【0031】
クラッチ21は例えば、文献CH 1016に例示されているように、スライディングピニオン及びプルアウト片を有するもの、トグルタイプ、水平クラッチまたは一方向ラチェット等の任意のタイプのものとすることができる。図示されている実施形態では、クラッチが図示されていないプルアウト片によって作動されるスライディングピニオン25を備えている。スライディングピニオン25の軸方向位置は、プルアウト片がステム19に回転リンクされているか否かを定める。クラッチ21を制御するための他の手段は、当業者に入手可能である。
【0032】
メモリカム23は、第2の入力9とデスモドローミックに連結された(desmodromically linked)車輪27に回転可能に固定されている。図示の実施形態では、車輪27が、クラッチ25を第2の入力9にリンクする運動学的チェーンの一部を形成する車輪29と噛み合っている。あるいは、メモリカム23が、この運動学的チェーンの要素に回転固定されて配置され得るか、又は示差歯車3の第2の入力9に組み込まれることができる。また、代替的に、メモリカム23は、それ自体の専用の歯車列によって、前記第2の入力9と連結され得る。
【0033】
メモリカム23の形態は、補正後に利用可能なトルクを最適化するように選択される。多くの場合、片が一定時間停止された後に、表示装置によって提供される表示の進行方向に補正が行われるであろう。他方の方向の補正はより希であり、その結果、メモリカム23は、一方の回転方向において他方よりもより多くのトルクを与えるように配置される非対称の形状を有することができる。しかしながら、対称的なカムまたは他の適切な形状を有するカムを使用することも完全に可能である。
【0034】
片の通常動作中、クラッチ21はデクラッチされ、メモリカム23は、軸19の軸方向位置によってその位置が制御されるばね31によって与えられる戻り力によって位置決めされる。この状態では、ばね31が第1の入力5及び出力13の回転に起因する任意の列トルクに対して補正歯車列11を阻止するのに十分な力をメモリカム23に加えるように配置される。これにより、第2の入力9も所定の角度位置で阻止され、出力13が第1の入力5に同期したままになる。図示の実施形態ではばね31は軸19上に取り付けられているが、当業者は他の構造を利用することができる。また、バネ31を制御部材19とは独立にフレーム要素に取り付けることも可能である。
【0035】
補正中、軸19の軸方向変位は、補正動作を容易にするために、ばね31がメモリカム23により少ない圧力を与えるように、ばね31を上昇させる。差動歯車3の出力13は、軸19の回転の機能として枢動され、軸19が制御できる表示装置を補正することができる。
【0036】
補正中、メモリカム23も回転駆動される。図示の実施形態では、メモリカム23が単一のローブを有するハート型であり、第2の入力9とのそのギア比は、メモリカム23が第2の入力9の角度変位の制御の下で、出力13の1回転あたり1完全回転の速度で旋回するように選択される。この目的のために、第2の入力9と出力13との間のギア比は2/3である(第2の入力9の1.5回転が出力13を1回転だけ駆動することを意味する)ので、第2の入力9とメモリカム23との間のギア比は1.5である。これらの比率は、コンストラクタの必要性に応じて変更することができる。あるいは、メモリカム23が、ローブの数の機能として、例えば、出力13の完全な回転あたり3分の1又は4分の1回転だけ、いくつかのローブを有し、旋回することができる。
【0037】
一般に、第2の入力9は出力13の角度位置へのその寄与が1:1である幾つかの角度配向を有し、これらの位置は、互いから360°以上離れている。このような独特の角度配向は、第2の入力部9と出力部との間のギア比が1:1の場合にのみ生じる。一般的な場合、当業者は戻し力によるメモリカム23の位置決めが第2の入力9の効果を相殺し、ひいては第1の入力5と出力13との間の同期を回復することを保証するために必要なギア比を、Willisの公式を使用してどのように計算するかを知っている。
【0038】
上記に照らして、メモリカム23は、第2の入力9によって提供される出力13の角度位置への寄与を「記憶」することが理解される。
【0039】
ユーザは、補正を行った後、軸19をその初期の軸方向位置に戻し、クラッチ21をデクラッチする。ばね31は再び補正カム23に押し付けられ、これにより今や自由に枢動する補正歯車列11を駆動する傾向にある。第1の入力5は、それを駆動する運動学的チェーンによって(準)阻止されたままであるので、メモリカム23上のばね31によって加えられた戻り力は
図1に示すように、カム23がその初期角度位置に戻るまで、車輪27と補正歯車11の残りを旋回させる。それによって、第2の入力9は出力13の回転の可能な部分へのその寄与が相殺されるように、案内される。したがって、出力13は補正がない場合に有していたであろう角度位置に戻り、その角度位置は再び、第1の入力5によって定められるだけである。換言すれば、出力13は補正中の第1の入力で起こり得る衝撃にもかかわらず、メモリカムの制御下で行われる加算または減算の後に、全回転のみを実行する。パーペチュアルカレンダの状況では、これにより、補正後であっても、月の日のジャンプが真夜中ごろに実行される。
【0040】
図2及び
図3は前記補正装置1の機能性の重要性をより良く示すために、本発明の補正装置1を年間カレンダ装置の運動学的に隣接した構成要素と組み合わせて示す。
【0041】
年間カレンダ装置は、31個の歯を有する日板35と、日板35と同軸の補正板39とを備えるプログラムホイール33を備える。これは、出力の歯付き板13aから延びる作動歯37によって、24時間当たり1ステップで駆動されるように配置されている。歯付きプレート13bは、30日を有する月の終わりにプログラムホイールを1つの追加ステップだけ前進させるために、補正板39の対応する歯と相互作用するいくつかのより長い歯を備える。永久カレンダ装置の場合には、公知の方法で2月の終わりに自動的に補正を行うために、日板35に回転固定され、下板13bと、または板13a、13bに回転固定された追加の板と相互作用する1つ以上の追加の補正板(図示せず)を設けることも可能である。この目的のために、種々の板は、それぞれ、月の日数の機能として、適切な数の歯を有する。単純な日付機構の場合には、補正板39及び板13bを省略することができる。
【0042】
図面の左側には、曜日及び月相41を表示するための機構が配置されており、この機構は、出力13の下板13bによって駆動され、より詳細に説明する必要はない。
【0043】
出力13の板13a、13b及びプログラムホイール33の構造、特に出力13の上部板13aの単一の長い歯37のために、出力13は、プログラムホイール33の補正ステップ毎に完全に1周だけ旋回しなければならないことが理解される。さらに、補正後、出力13がプログラムホイール33に対して不適切に調整される場合、その前進は不適切な瞬間に行われる。
【0044】
その結果、メモリカム13がない場合、ユーザは補正後に出力13を正しい角度方向に戻すことがほとんど不可能であり、このことは、本発明による補正装置1が上述のように自動的に行う。
【0045】
本発明は特定の実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、補正装置1の他の変形および構造が特許請求の範囲に定められる本発明の範囲から逸脱することなく可能である。
【0046】
この点に関して、補正装置は例えば単純な日付の表示部材を直接的又は間接的に駆動することができ、出力13の構造は、それに応じて適合されることに言及することができる。例えば、出力は、日付リングギアを直接的または間接的に駆動するための単一の指を単に支持することができる。
【0047】
さらに、差動歯車に関しては、その出力13が板13a、13b、またはプログラムホイール33、日付ホイール、または表示部材と直接相互作用する同様の要素を直接支持することは必須ではない。実際、出力13は、そのような要素を直接的または間接的に駆動する中間ホイールを次々に駆動する歯付きホイールとすることができる。