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特許7186773化粧組成物を塗布するための個人向けアプリケータを製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】化粧組成物を塗布するための個人向けアプリケータを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/28 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
A45D40/28
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2020521932
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018078756
(87)【国際公開番号】W WO2019077129
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】1759942
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1759943
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ジロン
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ジェヴレ
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527885(JP,A)
【文献】国際公開第2017/053489(WO,A1)
【文献】特開2011-030745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧組成物を唇に塗布するための個人向けアプリケータ(1)を製造するための方法であって、前記個人向けアプリケータが、組成物を付加することができる材料から作られた塗布表面(2)を備え、当該方法が、
a)前記唇の表面の少なくとも一部の形状の3Dスキャンを実行するステップと、
b)少なくとも前記3Dスキャンにより、プリフォームを機械加工することによってまたは付加製造を行うことによって、前記アプリケータ(1)の少なくとも一部または前記アプリケータ(1)の少なくとも一部を製造するのに使用される型を作製するステップと
を含む方法において、
前記唇の自然な前記表面とは異なる再加工済3D表面の生成を含み、前記アプリケータ(1)または前記アプリケータの製造に使用される前記型は、少なくとも部分的に前記再加工済3D表面によって与えられる形状を有する、方法
【請求項2】
前記塗布表面(2)の輪郭は、前記唇の自然な輪郭に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塗布表面(2)の輪郭は、前記唇の自然な輪郭から逸脱する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スキャンされた唇の自然な輪郭とは異なる輪郭を作成するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記再加工済3D表面は、前記アプリケータ(1)が前記唇に通常通りに当てられるときに前記塗布表面(2)と前記スキャンされた唇との間に空間を残すように、前記唇の自然な前記表面から逸脱して前記唇の輪郭の内側に位置する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記再加工済3D表面は、前記スキャンされた唇の自然な輪郭とは異なる唇の輪郭を除いて、前記スキャンによる前記唇の自然な前記表面と一致する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの化粧結果から選択するための選択肢をユーザに与えることを含むステップであって、前記再加工済3D表面が、少なくともこの選択に基づいて生成される、ステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記スキャンされた唇の自然な前記表面、および/または前記アプリケータ(1)によって得られた化粧結果、および/または前記再加工済3D表面を表示するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
オペレータが、3Dスキャンから得られた表面をモデル化し、したがって、前記再加工済3D表面を生成するのを可能にするステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記モデル化は、前記3Dスキャンを表すデータが電気通信ネットワークを介して送信されているワークステーションからのソフトウェアを使用して遠隔で実行される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記唇および/または顔の非対称性の検出するステップと、少なくとも前記検出された非対称性を考慮することによって実行される前記再加工済3D表面を計算するステップとを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記唇の少なくとも1つの画像から前記唇の輪郭を形成するステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記唇の自然な輪郭上にある複数の点を決定するステップと、これらの点間の補間によって前記唇の自然な輪郭を推定するステップとを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記再加工済3D表面の輪郭上にある複数の点を決定するステップと、これらの点間の補間によって前記再加工済3D表面の輪郭の少なくとも一部を生成するステップとを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記唇の前記3Dスキャンから得られた表面の変換済数値コピーを作成し、次いで前記表面とその前記変換済数値コピーとの間の、前記アプリケータ(1)または前記型の平滑化された体積を生成する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アプリケータ(1)には、後部にハンドル(4)が設けられる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アプリケータ(1)は機械加工によって作製される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
機械加工後に得られる形状に応じて多数の中から選択されたプリフォームが、機械加工される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
すでに前記ハンドル(4)を備えるプリフォームが機械加工される、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アプリケータ(1)またはその製造を目的とした前記型は、付加方法によって作製される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記塗布表面(2)は、少なくとも部分的にフロックで覆われる、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記個人向けアプリケータ(1)によって得ることのできるような、前記唇の化粧のシミュレーションによって個人の顔の少なくとも一部を表示するステップを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記3Dスキャンよりも前に、画定された輪郭に応じて組成物を前記唇に塗布する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記輪郭は、前記唇の自然な輪郭に対応する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記輪郭は、作製すべき前記塗布表面(2)の輪郭に対応する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記アプリケータ(1)の前記塗布表面(2)は、前記唇の全体またはほぼ全体に前記組成物を塗布するように構成される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記アプリケータ(1、10)の前記塗布表面(2)は、前記唇の一部のみに前記組成物を塗布するように構成される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記一部は、前記唇の輪郭に対応する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記唇の前記形状をスキャンする前記ステップは、口の周りに広がる皮膚の領域をスキャンすることを含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
唇を美容処理するための方法であって、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法によって得られたアプリケータ(1)を使用して前記唇に化粧組成物を塗布するステップを含む方法。
【請求項31】
前記アプリケータ(1)には、組成物に浸漬させたパッド(7)に接触させることによって組成物が付加される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物は、自己膨張し、膨張するにつれて空間を充填する、請求項から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記アプリケータ(1)は、加熱され、組成物のブロックと接触させることによって組成物が付加される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は接着剤であり、前記方法は、前記唇に塗布される前記接着剤組成物に、第2の化粧組成物を塗布するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は透明である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
異なる形状のキューピッドの弓ならびに/または異なる高さおよび/もしくは異なる幅を作成するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項37】
前記検出は、ソフトウェアを使用して自動的に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項38】
前記唇の自然な輪郭上にある複数の点は、前記唇の少なくとも1つの画像から決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項39】
前記唇の前記形状をスキャンする前記ステップは、鼻、頬、目、または額などの顔の他の領域をスキャンすることを除外する、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧組成物を唇に塗布するための個人向けアプリケータを製造するための方法に関する。本発明はまた、このように製造された個人向けアプリケータと、それを使用する美容処理方法、特に化粧と、に関する。
【背景技術】
【0002】
唇に化粧を施す場合、通常の方法では、紅筆またはリップスティックのスティックなどのアプリケータを使用して被覆組成物および/または着色組成物の膜を塗布し、唇の表面を覆うようにこのアプリケータを唇に沿って移動させる。ユーザは、得られた効果を見ることができるが、その結果に満足できない場合がある。特に、ユーザの唇の形がユーザに適していないと考えている場合、ユーザは結果に失望したままになる。このことは、たとえば、自分の唇が薄すぎるか、広すぎるか、非対称であるか、または顔の形に対する比率が悪いと考えている個人に生じる。
【0003】
組成物を塗布する際に輪郭を変化させることを考えている個人もいるが、唇の自然な輪郭に従わないようにすることは極めて難しい。この問題は、塗布が困難な個人、たとえば、視力または運動能力に問題がある個人では非常に顕著になる。この問題は、リップスティックの色が特に目立ち、特に色が濃く、かつ/または生成物が特に耐摩耗性を有し、たとえば、「長持ちする」と考えられている調合物である場合に顕著になる。したがって、輪郭の修正を試みる際に、おそらく結果が非対称になるか、または自然な輪郭を過度に越えて延び、したがって、結果が魅力的でなくなるか、または場合によっては滑稽になるであろう。
【0004】
いずれの場合も、個人が自分の唇の自然な輪郭に従うかどうかにかかわらず、または唇の輪郭の修正を試みるかどうかにかかわらず、魅力的な結果が実現されない印象により、個人によっては唇に化粧を施すことをあきらめてしまう場合がある。あきらめない人もいるが、上記の問題を回避しようとして化粧を施すのに非常に長い時間がかかる。多くの人は、化粧を除去し施し直すことを連続的に行う必要がある。したがって、この手順には時間がかかり、粘膜に炎症が生じ、ユーザはまれにしか化粧を施さなくなり、ならびに/またはできるだけ最も中間色を選択するようになり、したがって、唇に化粧を施すことの恩恵が低減する。眉毛または頬に化粧を施すときにも、同じ問題が生じる。
【0005】
ユーザは一般に、唇の化粧がきれいに見えることを望むのと同時に、リップスティックのスティックを使用することを好む。残念ながら、リップスティックのスティックを使用することは失敗なしにきれいな輪郭を作るのに適しておらず、ペンシルを使用することは、特に唇の自然な輪郭に従うことを望まない場合には、常に容易であるとは限らない。
【0006】
特許文献1から特許文献17は、塗布表面が口の所定の形状を有するアプリケータをどのように作製するかを説明している。この解決策は、標準的な化粧の見た目を作ることを可能にするが、唇の三次元形態に整合するとは限らず、したがって、被覆されない領域が残るのでいくらか不十分である。
【0007】
1つの方法として、唇をつまんで、生成物が存在する領域と少ししか存在しない他の領域との間で生成物を広げてもよいが、この処置は輪郭を変える傾向がある。その際のリスクとして、この場合も、生成物がキューピッドの弓形にならず、不十分な外観になる。唇の隅およびキューピッドの弓形は実際、唇において、化粧を施し輪郭を形成する上で最も難しい領域である。1つの可能性は、第三者、たとえば、「メークアップアーティスト」とも呼ばれる化粧の専門家に、たとえばタトゥーなどの持続的なマークを残す生成物を使用して輪郭を形成することを依頼することができる。しかし、実際、たいていのユーザは唇の化粧を常に施しておくことを望まないので、この処置を容易に受け入れることはできない。
【0008】
特許文献18は、顔の完全な3Dマスクと、接着剤層と、生成物を転写するための組成物層とを備える、ファンデーション用の化粧アプリケータについて説明している。
【0009】
特許文献19は、第1の要素100を備えるアプリケータについて説明しており、第1の要素100の形状は、ターゲット構造の3Dスキャンから決定され、活性薬剤も、ターゲット構造の診断スキャンに基づいてアプリケータ上に配置される(図、1ページの最終段落、15ページの23~26行目、2ページの18行目および19行目、13ページの23行目から14ページの7行目までの節を参照されたい)。活性薬剤は、リップスティックであってもよく、要素100上に事前に配置されてもよく、またはユーザによって要素100に塗布されるのに適した形態で供給されてもよい。要素100は、従来の機械加工方法または付加製造方法を使用して製造されてもよい。
【0010】
特許文献20は、ユーザの口のマニュアルインプレッションから型を作製し、この型に基づいて、唇の輪郭用のアプリケータを作製することについて説明している。フォームは、再加工して欠陥を除去することができる。アプリケータは、生成物を塗布すべき表面の残りをユーザに示すように、唇の輪郭のみにリップスティックを塗布するために使用される。
【0011】
特許文献21は、爪の3Dスキャンからの3D印刷によって型を製造することによる擬似爪の作製について説明している。
【0012】
特許文献22は、唇の画像を使用して、唇の形状特性およびサイズ特性に従って唇を分類するための方法であって、化粧情報を生成して、既定の基準および画像から抽出された情報に基づいて二次元における被写体の唇を補正することができる方法を開示している。
【0013】
特許文献23は、個人の顔を覆うように顔の上に固定されることを目的とし、個人の顔の形状に整合する形状の内面を有する、顔処理マスクに関する。この製造方法は、個人の顔の三次元画像から得られたデータを使用する。
【0014】
非特許文献1は、3Dスキャンを使用してユーザの唇のプロファイルを取得した後、3D印刷によって作製された型からリップスティックの個人向けブロックを得る方法について説明している。この方法の主な欠点は、唇に繰り返し塗布することによってこのアプリケータの形状が崩れ、化粧を施す際の精度に悪影響が及ぶ傾向があることである。さらに、ブロックを皮膚上に移動させることによって生じる剪断運動なしに生成物のブロックからの転写を実現することは困難である。
【0015】
唇の個人の形態に適したアプリケータを作製するための特許文献24から特許文献27には他の解決策が記載されている。このことを実現するために、一般的に補正された唇の輪郭の記録からユーザの唇のインプレッションが作製され、次いで、アプリケータとして使用されるカウンターモールドが作製される。ユーザは、生成物を、唇に塗布する前にカウンターモールド内に配置する。別の方法として、生成物を多数の穴を介してカウンターモールド内に送り込む。この解決策は、特に塗布の綺麗さおよび速度に関する進歩となるものであるが、理想的な化粧の塗布を可能にするものではない。
【0016】
これらの解決策のうちのどちらの場合も、アプリケータがユーザに迅速に利用可能になることはない。特に化粧後の唇の形状を変えたい場合だけでなく、視覚もしくは運動能力に問題があるかまたは経験のない個人の場合に、アプリケータを迅速に利用可能にできると、ユーザが1回以上の試験を実施することによって結果を検査できるようになるので、このことは重要である。このことの必要性は、ユーザが自分に最も適した解決策に向かって複数回にわたって少しずつ試したい例ではさらに増す。たとえば、ユーザが輪郭に関していくつかの異なる考えを有し、いくつかの結果を試すことを望む例では、いくつかのアプリケータを有すると有利である場合がある。
【0017】
新しいアプリケータを要求し迅速に取得することが可能であることも魅力的である。実際、旅行時には、個人は化粧品の一部を携行するのを忘れることがある。その結果、いつもの見た目にすることを望む個人は、化粧を施さないか、それとも近くの販売店で入手可能な生成物を使用して化粧を施すかを選択する必要があるので厄介な状況に陥る。入手可能な生成物を使用して化粧を施す場合、個人向けアプリケータを入手できず、リップスティックのスティックまたはブラシアプリケータなどの従来の生成物に頼る必要があり、首尾よく化粧の見た目を実現できない恐れがある。さらに、人はアプリケータを紛失するかまたは損傷する場合がある。
【0018】
ユーザは、形状が個人向けのものであるにもかかわらず、特に友人またはメークアップアーティストのアドバイスを得るかまたは求めるために、アプリケータ同士を交換するかまたはアプリケータの実演モデルとなることを望む場合がある。アプリケータを共有することを望む個人が近くにいない場合、その時点での唯一の方法は、塗布後に結果の写真を撮り、その個人に送ることである。この方法は近似的なものであり、アドバイスはいくらか不適切になる。したがって、実際の対象物を示すことができると有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】仏国特許第752860号明細書
【文献】米国特許第2279781号明細書
【文献】米国特許第2207959号明細書
【文献】仏国特許第663805明細書
【文献】米国特許第2412073号明細書
【文献】米国特許第3308837号明細書
【文献】米国特許第2735435号明細書
【文献】米国特許第1556744号明細書
【文献】米国特許第2248533号明細書
【文献】米国特許第2416029号明細書
【文献】米国特許第1944691号明細書
【文献】米国特許第1782911号明細書
【文献】米国特許第2554965号明細書
【文献】米国特許第2199720号明細書
【文献】国際公開第2008/013608号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2003/209254号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0322693号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/000208号明細書
【文献】国際公開第2017/053489号パンフレット
【文献】米国特許第2646054号明細書
【文献】仏国特許第3049832号明細書
【文献】欧州特許第1810594号明細書
【文献】欧州特許第2460435号明細書
【文献】国際公開第2013/045332号パンフレット
【文献】仏国特許第2980345号明細書
【文献】国際公開第2013/092726号パンフレット
【文献】仏国特許第2984699号明細書
【非特許文献】
【0020】
【文献】M. Stevicら、"Fabrication of personalised lipstick applicator using 3D printing technology"、2017年の会議"The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、所望の形状に個人向けにされたアプリケータであって、ユーザの顔に応じて、特に唇の理想的な輪郭に従った、忠実で調和のとれた化粧の見た目をもたらすアプリケータを短時間で作製する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、特にこの目的を満たすことを追求し、本発明の態様のうちの1つにおける本発明の主題は、組成物を付加することができる材料から作られた塗布表面を備える、化粧組成物を唇に塗布するための個人向けアプリケータを製造するための方法であって、
a)唇の表面の少なくとも一部の形状の3Dスキャンを実行するステップと、
b)少なくとも前記スキャンにより、プリフォームを機械加工するかまたは付加製造を行うことによって、アプリケータの少なくとも一部またはアプリケータの少なくとも一部を製造するのに使用される型を作製するステップと
を含む方法である。
【0023】
唇の形状をスキャンすることは、口の周りに広がる皮膚の領域をスキャンすることを含んでもよく、好ましくは、鼻、頬、目、または額などの顔の他の領域をスキャンすることを除外する。
【0024】
本発明の態様のうちの別の態様によれば、本発明の主題は、塗布表面を備える、生成物、特に化粧品をケラチン物質、特に唇に塗布するための個人向けアプリケータを製造するための方法であって、
a)個人のケラチン物質の外観を修正する組成物を個人のケラチン物質の表面に塗布するステップと、
b)このように覆われた表面の形状と組成物の位置に関する情報を提供する少なくとも1つの画像との光学的取得を実行するステップと、
c)この取得によって、アプリケータまたはアプリケータの製造を目的とした型を作製するステップと
を含む方法である。
【0025】
この形状は、組成物で覆われた表面を3Dスキャンし、特に前記表面上に構造化光を投影するか、または写真測量による取得を実行することによって取得されてもよい。組成物の位置に関する情報を提供する画像は、たとえば、形状を取得するのに使用されるのと同じデバイスを使用して撮影された個人の口の写真であってもよい。
【0026】
本発明は、ユーザに適するように特注された形態学的アプリケータによって、本格的な品質の化粧の見た目自体を唇の表面上に実現するのを可能にする。
【0027】
本発明による個人向けアプリケータは特に、口を完全に画定し、必要な場合は、口を均一に色付けるのを可能にする。
【0028】
取得、および再加工済表面
アプリケータの塗布表面の輪郭は、唇の自然な輪郭に対応してもよい。
【0029】
代替として、塗布表面の輪郭は、たとえば、欠陥を補正するかまたは化粧後の唇の外観を変えるために、唇の自然な輪郭から逸脱する。
【0030】
前述の方法のいずれも、スキャンされた唇の自然な輪郭とは異なる輪郭、特に異なる形状のキューピッドの弓ならびに/または異なる高さおよび/もしくは異なる幅を作成するステップを含んでもよい。したがって、たとえばリップペンシルを使用して、ユーザに最も適しており、理想的と考えられる形状を有する輪郭を画定することが可能である。この輪郭は、前述の組成物の塗布時に作成され、および/またはソフトウェアを使用して作成されてもよい。
【0031】
したがって、上記の方法のうちのいずれも、特に画像処理ソフトウェアを使用して、表面の形状を取得することによって導出されるデータから、再加工された3D表面を生成することを含むステップを含んでもよい。
【0032】
「再加工された3D表面」によって意味されるのは、取得された形状の自然な表面との比較によって修正された形状および/または輪郭の表面である。
【0033】
上記の方法のうちのいずれも、唇の自然な表面とは異なる再加工された3D表面の生成を含んでもよく、アプリケータまたはアプリケータの製造に使用される型は、少なくとも部分的にこの再加工済表面によって与えられる形状を有する。
【0034】
本発明は、きれいな輪郭を有する化粧結果をもたらし、顔の調和を改善するのを可能にする。本発明はまた、単一のジェスチャーにおいて、任意の場所に、場合によっては鏡なしで、たとえば車内または職場において、化粧を非常に迅速に施す方法を提供する。
【0035】
本発明は、明るい色で、かつ/または長持ちする組成物を危険なしに、場合によっては毎日使用して、化粧を施すのを可能にする。その理由は、この個人向けアプリケータは、既知のアプリケータを使用してこの種の生成物が塗布されたときに生じる障害を回避することを可能にするからである。
【0036】
本発明による個人向けアプリケータは、唇の輪郭を再画定し、再モデル化効果をもたらすのを可能にし、したがって、特に皮膚の老化によって輪郭が曖昧になり、もはやあえて化粧を施さない人によって使用することができる。
【0037】
本発明はまた、他の誰か、たとえば、象徴的な微笑みを有するスターのやり方で唇の化粧を施すことを可能にする。
【0038】
再加工済表面は、アプリケータが唇に通常通りに当てられるときに塗布表面とスキャンされた唇との間に空間を残すように、唇の自然な表面から逸脱して唇の輪郭の内側に位置してもよい。この空間は、以下に詳細に説明するように自己膨張する組成物を収容する働きをしてもよい。
【0039】
再加工済表面は、化粧後の唇の輪郭を修正するために、スキャンされた唇の自然な輪郭とは異なる唇の輪郭を除いて、スキャンによる唇の自然な表面と一致してもよい。
【0040】
3Dスキャンを実行するには、関連するゾーンの体積および寸法を取り込むことのできる任意の3Dスキャナを使用することが可能である。好ましくは、関連するゾーンの色および外観を取り込むこともできる3Dスキャナを使用して、組成物の位置に関する情報を提供する1以上の画像を取得する。
【0041】
3Dスキャンは有利なことに、光の縞を投影することによって生成されるスキャンであるが、任意の他の構造化光が使用可能である。
【0042】
本発明による方法のうちのいずれも、少なくとも2つの化粧結果から選択するための選択肢をユーザに与えることを含むステップを含んでもよく、再加工済表面は、少なくともこの選択に基づいて、たとえば、ソフトウェアを使用して自動的に生成される。
【0043】
上記の方法のうちのいずれも、3Dスキャンから得られた表面、特に表面の輪郭をモデル化し、したがって、再加工済表面を生成するのを可能にすることを含むステップを含んでもよい。このモデル化は、3Dスキャンを表すデータが電気通信ネットワーク、特にインターネットまたはGSM/GPRSを介して送信されているワークステーションからのソフトウェアを使用してリモートに実行されてもよい。このリモートワークステーションは、たとえばメークアップアーティストのリモートワークステーションである。
【0044】
したがって、上記の方法のうちのいずれも、たとえば、インターネットベースのビデオ電話プラットフォームを使用して唇がスキャンされた個人にその人相に応じて提案すべきモデルを提供する第三者とのリモート接続を確立するステップを含んでもよい。
【0045】
上記の方法のうちのいずれも、特にソフトウェアを使用して自動的に、唇および/または顔の非対称性を検出するステップを含んでもよく、再加工済表面の計算は、好ましくは自動的に、少なくとも検出された非対称性を考慮することによって実行されてもよい。
【0046】
上記の方法のうちのいずれも、唇の少なくとも1つの画像から唇の輪郭を、好ましくは自動的に形成するステップを含んでもよい。輪郭形成によって導出され、「スプライン」と呼ばれ、特に少なくとも10個の制御点を有し、より好適には少なくとも20個の制御点を有する曲線が作成されてもよい。オペレータは適切な場合、たとえば、唇の画面上表面を処理することによって、これらの制御点の位置を修正することを許可される。
【0047】
上記の方法のうちのいずれも、特に唇の少なくとも1つの画像から、唇の自然な輪郭上の複数の点を決定し、これらの点間の補間によって唇の自然な輪郭を推定するステップを含んでもよい。
【0048】
上記の方法のうちのいずれも、特に、オペレータが輪郭を通過させたい点をオペレータが視覚的に配置するのを可能にする少なくとも1つの画像から、再加工済表面の輪郭上の複数の点を決定し、これらの点間の補間によって再加工済表面の輪郭の少なくとも一部を生成するステップを含んでもよい。
【0049】
上記の方法のうちのいずれも、スキャンされた唇の自然な表面および/またはアプリケータによって得られた化粧結果および/または再加工済表面を表示するステップを含んでもよい。
【0050】
上記の方法のうちのいずれも、個人向けアプリケータによって得ることのできるような、唇の化粧のシミュレーションによって個人の顔の少なくとも一部を表示するステップを含んでもよい。したがって、アプリケータの対象となる個人は、作業の進行を監視してもよく、したがって、できるだけ早く正しい結果に満足し、必要に応じて補正を要求することができる。
【0051】
組成物の事前塗布
有利なことに、3Dスキャンよりも前に、上述のように、画定された輪郭に応じて組成物を唇に塗布してもよい。この輪郭は、特に唇の自然な輪郭を化粧によって修正することを望まないときには、唇の自然な輪郭に対応してもよい。代替として、この輪郭は、唇の自然な輪郭とは異なる、作製すべき塗布表面の輪郭に対応する。
【0052】
組成物が塗布される表面は、唇の少なくとも一部にわたって広がり、ならびに/または特に、唇の自然な輪郭を補正することが重要であるときには、唇の周りの皮膚の少なくとも一部にわたって広がってもよい。
【0053】
組成物は、唇の輪郭を再画定するように塗布されることが好ましい。
【0054】
この組成物は、皮膚上に少なくとも1つの点において溢れ出てもよい。代替または追加として、組成物は、唇の自然な輪郭から奥まった少なくとも1つの場所に塗布される。組成物は、キューピッドの弓形を再画定し、ならびに/または唇の高さ、唇の幅の修正および/もしくは対称性の補正を行うように塗布されてもよい。
【0055】
組成物は、リップスティック、特に白色のリップスティックであってもよい。そのような色は、形状を取得し、かつ/または特に自動的に輪郭を描けるように組成物の輪郭を視覚化するのをより容易にしてもよい。組成物は、好ましくは、顔の残りの部分との顕著なコントラストを示す色を有し、それによって、組成物が塗布された領域の輪郭を容易に取り込むことができる。組成物は、好ましくは、唇の自然な輪郭を見えなくするのに十分な程度に被覆される。
【0056】
組成物は、好ましくは、艶消しの外観を有し、それによって不要な反射の発生率を低下させる。光沢のある外観を有する組成物が使用される代替形態では、明るさを低減させるために取得時に偏光子などの光学手段が使用されてもよい。また別の代替形態では、唇がタルクなどの艶消し生成物の微細被覆で覆われる。
【0057】
組成物は、一様な被膜として塗布されてもよい。代替として、組成物は、ゾーン、特に唇の輪郭を画定する線に沿って塗布される。
【0058】
組成物は、特に、色を検出できない3Dスキャナを使用する場合に、唇上に形成された境界を形状の取得時に検出可能にするのに十分な厚さに塗布されてもよい。シリコーンペーストなどの、十分な厚さに塗布できる組成物が使用されてもよい。実現すべき化粧の見た目の輪郭に沿って粘着繊維体が貼り付けられてもよい。
【0059】
上記の方法のうちのいずれも、塗布の少なくとも1つのモデルを画面上に表示し、場合によってはモデルを選択するステップであって、組成物が、このモデルに従って塗布される、ステップを含んでもよい。
【0060】
好ましくは、たとえば、販売店または施設にユーザにアドバイスするメークアップアーティストが存在する。メークアップアーティストは有利なことに、メークアップアーティストの専門知識に従って、顔全体に適するように、ユーザの唇に組成物を塗布する。
【0061】
理想的な形状は、化粧の所望の色に依存してもよい。化粧の塗布および除去の回数が多くなるのを避けるために、それぞれに異なる色の化粧における理想的な形状を探す際に、所与の色での化粧の1以上の異なる例の1枚以上の写真が撮られてもよく、次いで画像レタッチソフトウェアを使用して色を変更し、結果が依然として整合していることを確認することができる。整合していない場合、プロセスは最初からやり直される。理想的な形状は、化粧についての所望の仕上げ、個人の技能、個人のヘアスタイル、および部屋の照明に依存することもある。したがって、探索は、それぞれに異なる所望の化粧条件、それぞれに異なる技能レベル、それぞれに異なるヘアスタイル、および/またはそれぞれに異なる室内照明について、実際の条件において、または画像レタッチソフトウェアを使用した連続シミュレーションによって、同様に行われてもよい。
【0062】
第1の組成物を使用して理想的な輪郭を探し、次いでゾーン形状取得により適した第2の組成物を使用することも可能である。その理由は、組成物が、形状取得時に使用される構造化光に対してよりうまく振る舞うか、または組成物を上述のように十分な厚さで塗布することがより容易であるからである。粘着繊維体を使用して、第1の組成物で覆われた領域の輪郭を追跡してもよく、次いで、唇から化粧が除去された後繊維体を使用して形状取得が実行される。第1の組成物によって得られた結果は、写真を撮ることによって記憶されてもよい。
【0063】
各々が独自の経験を有するそれぞれに異なるメークアップアーティストによって理想的な形状を求める様々な試験が実施されてもよい。1人のアーティストが前のアーティストによって行われた作業を利用し、同時に可能な改良点を探してもよい。
【0064】
ユーザは、自分が理想的に見える化粧を自分自身で施し、次いで形状取得態様についてオペレータに頼ってもよい。したがって、形状取得ステップは、後で、理想的な形状が探索された場所以外の場所で行われてもよい。
【0065】
上記の方法のうちのいずれも、個人を組成物の塗布へと導く第三者とのリモート接続を確立するステップを含んでもよい。代替として、電子アシスタントが、特にコンピュータまたはスマートフォン上でユーザを指導する。
【0066】
唇は、個人によって検証された結果に応じて化粧され、次いで化粧が除去されてもよく、次いで、形状取得により適した組成物が、検証されたばかりの輪郭と同じ輪郭に適用され、それによって3Dスキャンを行うことができる。
【0067】
組成物を塗布した後に得られる化粧結果は、有利なことに、表面の形状の光学的取得を進める前に個人によって検証される。
【0068】
上記の方法のうちのいずれも、画像処理を使用することによって組成物で覆われた領域の輪郭を自動的に形成するステップを含んでもよい。次いで、目視検査を行ってこの輪郭形成が正しいことを確認しもよい。
【0069】
上記の方法のうちのいずれも、組成物で覆われた領域の画像内の点を手動で特定し、これらの点から、アプリケータまたは型を作製するのに使用される輪郭を自動的に決定するステップを含んでもよい。
【0070】
アプリケータ製造
CNC工作機(コンピュータ数値制御工作機)または3Dプリンタによって読み取ることのできるファイルが有利なことに生成され、特に、たとえば、クラウド内または中央サーバ上に自動的に記憶して、すべてのユーザアクセスポイント、たとえば、販売店または施設に送ることができる。ファイルは、ユーザに送られてもよい。余分な試験を避けるために、ファイルを採用されないままにしておくことも可能である。
【0071】
有利なことに、唇の3Dスキャンから得られた表面、場合によっては、再加工済表面の変換済数値コピーが作成され、次いで前記表面とその変換されたコピーとの間の、アプリケータまたは型の平滑化された体積が生成されてもよい。代替として、前記表面と標準的なアプリケータ表面との間の、アプリケータまたは型の平滑化された体積、特にいくつかの取得された表面からの学習によって作成された体積が生成される。
【0072】
変形形態では、体積を得るために、Geomagic Wrap 3Dツールボックスによって提供されるようなシェル関数が使用されてもよい。そのような関数は、各ローカルノームに従って一定の厚さの体積を表面から作成する。したがって、この場合、アプリケータの外面は、もはや機能表面のコピーではなく、シェル関数を数学的に生成したものである。
【0073】
アプリケータは、好ましくは、後部にハンドルが設けられる。前記ハンドルは、取外し可能であっても、またはクリップによって取り付けられてもよい。
【0074】
たとえば、メーカーおよび/または所有者を認識できるように、メーカーおよび/または名前などの1以上の異なる符号がアプリケータ上に記されてもよい。
【0075】
アプリケータは、機械加工、好ましくは微細加工によって作製されてもよい。有利なことに、機械加工後に得られる形状に応じて多数の中から、特に自動的に選択されたプリフォームが、機械加工される。これによって製造時間の短縮が可能になる。これらのプリフォームは、たとえば、様々な口を測定するように作られてもよく、それらの口の、機械加工すべき面は、有利なことに、自然な唇の表面積よりも大きい。プリフォームには、裏面がすでに形成されていてもよく、裏面は、ハンドルを有することも有しないこともあり、またはハンドルを裏面に取り付けるためのシステムを有することも有しないこともあり、化粧品を含むことのできるコンパートメントを取り付けるシステムを有することも有しないこともある。
【0076】
選択されるプリフォームは、ユーザの唇のインプレッションから作製されるカウンターモールドに対応してもよい。このインプレッションは、硬化可能な材料を使用して作られてもよい。ユーザの唇は、有利なことに、硬化可能な材料を塗布する間、材料が少なくとも部分的に凝固するまで静止して閉じられたままである。
【0077】
プリフォームの縁部および上面は、アプリケータの塗布表面に対応し、有利なことに、再加工された3D表面によって決定される所望の輪郭に従って、たとえばレーザー、水ジェット、または砥石車によって機械加工される。この整形プロセスは数分しかかからないので、販売店でアプリケータを購入し、待つ必要なしに店を出ることが可能である。したがって、ユーザにいくつかの異なるアプリケータを提供することが可能であり、ユーザはこれらのアプリケータを比較のために試験し、ユーザが好む1以上のアプリケータを選択することができる。
【0078】
アプリケータにハンドルが設けられる場合、有利なことに、すでにハンドルを備えるプリフォームが機械加工される。代替として、プリフォームは、取外し可能なハンドルまたはクリップ留めすることができるハンドルを受け入れることができるように機械加工される。
【0079】
本発明は、必要に応じて、アプリケータを携帯するのを忘れたときに、またはアプリケータを紛失したという理由で、または誰かが他の誰かとアプリケータを共有したいという理由で、アプリケータを遠隔で再生する選択肢を提供する。コンピュータメモリに記憶された3Dファイルを送るか、または送らせ、それによって任意の場所で再生を行えるようにするだけでよい。
【0080】
代替として、アプリケータまたはその製造を目的とした型は、付加方法、特に3D印刷によって、場合によってはプリフォームから作製される。
【0081】
3Dプリンタは繊維体プリンタであってもよい。使用される3Dプリンタは、Zにおける精度として0.5mm、より好適には0.1mm、さらに好適には0.03mmを実現してもよい。
【0082】
3D印刷の場合、印刷は、支持体、またはたとえば、ハンドルを有することも有しないこともあるプリフォーム、ハンドルをプリフォームに取り付けるためのシステムを有することも有しないこともあるプリフォーム、もしくは化粧品を含むことのできるコンパートメントを有することも有しないこともあるプリフォームなどの所定の物体上に行うことができる。
【0083】
好ましくは、アプリケータには、組成物に浸漬させたパッドに接触させることによって完全にまたは部分的に組成物が付加される。パッドは、有利なことに、アプリケータの形状に合うように、塗布表面に接触するようになっている表面がドーム状になっている。代替形態では、アプリケータは、組成物のブロックによって組成物が直接付加され、代替としてフロック型アプリケータを備え、ブラシまたは組成物を含浸させた任意の他の塗布手段を備える。
【0084】
代替として、アプリケータは、唇に塗布されることを目的とした化粧組成物を供給するように設計され、後部に取り付けられたリザーバを備えてもよい。代替として、アプリケータは、後でリザーバ上に取り付けられる。
【0085】
アプリケータの塗布表面は、少なくとも部分的にフロックで覆われてもよい。
【0086】
アプリケータの塗布表面は、アプリケータを剪断運動なしに唇に押し付けることによって、単一のジェスチャーで唇の全体またはほぼ全体に組成物を塗布するように構成されてもよい。
【0087】
アプリケータは、ショアA硬度が30ショアA以上またはより好適には60ショアA以上である材料から作られてもよい。
【0088】
アプリケータは、ブリネル硬度が600HBより低く、またはより好適には150HBよりも低い材料から作られてもよい。
【0089】
製造ステップのシーケンス
輪郭を画定する動作、組成物を塗布する前後に形状を取得する動作、塗布表面を作製する動作、および個人向けアプリケータを製造する動作を、単一の場所において組み合わせることが可能である。
【0090】
その場合、微細加工による製造が特に適している。その理由は、製造がこのように非常に短時間のうちに労力をほとんど必要とせずに実施されるからである。その結果、ユーザが待たされないだけでなく、数人のユーザが同時に対処されて混乱が生じる恐れがなくなる。
【0091】
代替として、ユーザが移動する必要なしに各動作がいくつかの場所で実行される。たとえば、3Dスキャンステップをユーザがいる場所で行うことができる。理想的な輪郭を画定するステップは、美的な選択を助けるためにリモートにおいてメークアップアーティストがいる場所で実行することができる。その場合、メークアップアーティストは、スキャンのファイルを受信し、電子的に送られる画面上モデリングを通していくつかの選択肢をユーザに提供することができる。それによって、対話によるアドバイスが得られ、アプリケータの最良の形状を見つけることが可能になる。
【0092】
再加工済表面は、理想的な形状を画定した後に受信されたファイルからリモートで作製されてもよく、再加工済表面に関する情報を含むファイルは、製造機械が位置する場所ならどこへでも送ることができる。
【0093】
製造は、遠隔ですなわち別の場所で実行されてもよく、オペレータが、個人向けアプリケータをユーザに対して、第1のステップが実行された場所に送るか、または別の住所、たとえば、ユーザの自宅の住所に直接送る。
【0094】
いくつかのアプリケータ製造動作、たとえば、3Dスキャンまたは光学的取得の直後の、特にユーザがいる場所またはその近くでの製造と、予備を利用可能にするための、上記の製造と同時またはその後の1以上の他の製造とを実行することも可能である。第1の製造は、好ましくは、たとえば、低精度機械によって、微細加工によって実施される。第2の製造は、微細加工または3Dプリンタによって特に高生産率で実施されてもよい。アプリケータの第1のバージョンは、基本品質材料、たとえばプラスチックから作られてもよい。アプリケータの第1のバージョンは、数日間のみの試験に使用され、次いで後のバージョンを優先して破棄されることを目的としたものであってもよい。後のバージョンは、より強度の高いプラスチック、金属、またはセラミックなどのより高品質の材料から作られてもよい。
【0095】
ある動作を自律的に実施することも可能である。
【0096】
本発明による様々な個人向けアプリケータをすでに作製したユーザは、新しいアプリケータを作製するための様々な訪問時に記録された様々な3Dファイルの平均または別の組合せを作成してもよい。
【0097】
唇輪郭形成アプリケータ
代替として、個人向けアプリケータの塗布表面は、唇の輪郭に相当する場合がある唇の一部のみに組成物を塗布するように構成される。
【0098】
塗布表面は、唇のキューピッドの弓形、または場合によっては唇の輪郭全体を再生してもよい。その場合、塗布表面は、アプリケータの繊維状部分または中空部分によって少なくとも部分的に画定されてもよい。
【0099】
代替形態では、塗布表面は固体であり、塗布表面の周辺部は、唇の輪郭に化粧を施すことを目的としたものであり、組成物を付加することができる材料であって、塗布表面の残りの部分を作製するのに使用される材料とは異なる材料から作られる。有利なことに、周辺部の材料のみで、充填材料によって生成物を取り込むのに十分な付着力が与えられる。
【0100】
代替として、塗布表面は、その周辺部を除いて、たとえばフロックで被覆される。また別の代替形態では、塗布表面の周辺部を除いて、塗布表面の内側にシリコーンが堆積される。
【0101】
本発明の態様のうちで別の態様による本発明の別の主題は、唇に押し付けられる塗布表面であって、前記唇の輪郭のみを化粧するように前記唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された塗布表面を備える、転写によって化粧組成物を唇に塗布するためのアプリケータである。
【0102】
塗布表面は、アプリケータの繊維状部分または中空部分によって少なくとも部分的に画定されてもよい。
【0103】
塗布表面がアプリケータの繊維状部分によって画定される例では、アプリケータは、後部のハンドルが延在してもよい中央部と、前記中央部から延びて、端部および中央において、それぞれ上唇および下唇の輪郭を形成するアプリケータの2つの部分、すなわち上部および下部を支持する4本のアームと、を備えてもよい。上部および下部は、有利なことに、その端部において当接する。
【0104】
代替形態では、塗布表面は固体であり、塗布表面の周辺部は、唇の輪郭に化粧を施すことを目的としたものであり、組成物を付加することができる材料であって、塗布表面の残りの部分を作製するのに使用される材料とは異なる材料から作られる。
【0105】
代替として、塗布表面は、その周辺部を除いて、フロックで被覆される。また別の代替形態では、塗布表面の周辺部を除いて、塗布表面の内側にシリコーンが堆積される。したがって、フロックおよびシリコーンは、唇の輪郭よりも内側に付加される。
【0106】
塗布表面の形状は、有利なことに、個人の唇の3Dスキャンから作製される。塗布表面は、唇のキューピッドの弓形、または場合によっては唇の輪郭全体を再生してもよい。
【0107】
アプリケータは、組成物を上唇と下唇とに同時に塗布するように構成されてもよい。
【0108】
本発明の態様のうちでまた別の態様によれば、本発明の一主題は、唇に押し付けられる塗布表面であって、前記唇の輪郭のみを化粧するように前記唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された塗布表面を備える、転写によって化粧組成物を唇に塗布するためのアプリケータを製造するための方法であって、
a)3Dスキャンと個人の唇の表面の少なくとも一部の少なくとも1つの画像の取得とを含む光学的取得を実行するステップと、
b)少なくとも前記光学的取得により、プリフォームを機械加工するかまたは付加製造を行うことによって、塗布表面を備えるアプリケータの少なくとも一部またはアプリケータの少なくとも一部を製造するのに使用される型を作製するステップと
を含む方法である。
【0109】
塗布表面の輪郭は、唇の自然な輪郭に対応してもよい。代替として、塗布表面の輪郭は、唇の自然な輪郭から逸脱している。
【0110】
この方法は、スキャンされた唇の自然な輪郭とは異なる再加工された輪郭、特に異なる形状のキューピッドの弓ならびに/または異なる高さおよび/もしくは異なる幅を作成するステップを含んでもよい。
【0111】
この方法は、少なくとも2つの唇輪郭化粧結果から選択するための選択肢をユーザに与えることからなるステップであって、再加工された輪郭を有する表面が、少なくともこの選択に基づいて生成される、ステップを含んでもよい。
【0112】
この方法は、スキャンされた唇の自然な表面および/またはアプリケータによって得られた化粧結果および/または再加工された輪郭を含む表面を表示するステップを含んでもよい。
【0113】
この方法は、オペレータが3Dスキャンから得られた表面をモデル化するのを可能にし、したがって、再加工された輪郭を含む表面を生成することを含むステップを含んでもよい。このモデル化は、3Dスキャンを表すデータが電気通信ネットワーク、特にインターネットまたはGSM/GPRSを介して送信されているワークステーションから実行されてもよい。
【0114】
この方法は、唇および/または顔の非対称を検出し、少なくとも検出された非対称を考慮して再加工された輪郭を含む表面を算出するステップを含んでもよい。
【0115】
この方法は、唇の前記少なくとも1つの取得された画像から唇の輪郭を、好ましくは自動的に形成するステップを含んでもよい。
【0116】
この方法は、特に唇の少なくとも1つの取得された画像から、唇の自然な輪郭上の複数の点を決定し、これらの点間の補間によって唇の自然な輪郭を推定するステップを含んでもよい。
【0117】
この方法は、特に、オペレータが、再加工された輪郭上の複数の点を、これらの点を視覚的に配置するのを可能にする少なくとも1つの画像から決定し、これらの点間の補間によって再加工された輪郭の少なくとも一部を生成するステップを含んでもよい。
【0118】
唇の3Dスキャンから得られた表面の変換済数値コピーが作成されてもよく、次いで前記表面とその変換されたコピーとの間の、アプリケータまたは型の平滑化された体積が生成されてもよい。
【0119】
アプリケータは、後部にハンドルが設けられてもよい。
【0120】
アプリケータは、機械加工によって作製されてもよい。その場合、機械加工後に得られる形状に応じて多数の中から、特に自動的に選択されたプリフォームが、機械加工されてもよい。
【0121】
すでにハンドルを備えるプリフォームを機械加工することが可能である。
【0122】
代替として、アプリケータまたはその製造を目的とした型は、付加方法、特に3D印刷によって作製される。
【0123】
この方法は、アプリケータによって得ることのできるような唇の輪郭の化粧のシミュレーションによって個人の顔の少なくとも一部を表示するステップを含んでもよい。
【0124】
3Dスキャンよりも前に、画定された輪郭に応じて組成物を唇に塗布してもよい。この輪郭は、唇の自然な輪郭に対応してもよい。代替として、この輪郭は、作製すべき塗布表面の輪郭に対応する。
【0125】
唇を美容処理する方法
本発明のさらなる主題は、唇を美容処理し、特に唇に化粧を施す方法であって、上記に定義された方法のうちの一方または他方を使用して得られる、唇に化粧組成物を塗布するための個人向けアプリケータを使用して唇に化粧組成物を塗布することを含む方法である。
【0126】
アプリケータには、好ましくは、組成物に浸漬させたパッドに接触させることによって組成物が付加される。
【0127】
組成物は、自己膨張してもよく、アプリケータが唇に通常通りに当てられたときに、膨張するにつれて、塗布表面と唇との間に残された空間を充填してもよい。それによって、きれいな輪郭を得ることが可能になる。その理由は、生成物が広がる際に、収容され溢れ出ることはできないからである。
【0128】
代替として、アプリケータは、加熱され、特にロウで作られた組成物の成形体と接触させることによって組成物が付加される。それによって、液体生成物ではなくロウベースのリップカラーを使用することが可能になる。第1の用途では、アプリケータは、唇のインプレッションを成形して成形体を得る働きをし、それによって組成物成形体を唇の形状に整形し、その後液体にされたリップスティックの層を取り込むために使用される。
【0129】
また別の代替形態では、組成物は接着剤であり、この方法は、唇に塗布される接着剤組成物に第2の化粧組成物を特に粉末形態で塗布するステップをさらに含む。
【0130】
この組成物は透明であってもよい。アプリケータは、そのような組成物が、その透明度のためにそれほど見やすくないにもかかわらず所望の点により容易に塗布されるようにする。
【0131】
化粧を施して唇の輪郭を形成する方法
本発明のまた別の主題は、唇に化粧を施す方法であって、唇に押し付けられる塗布表面であって、塗布表面に組成物を付加し、塗布表面を唇に押し付けることによって、唇の輪郭のみに化粧を施すように唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された塗布表面を備える、上記で定義されたアプリケータを使用して、唇の輪郭が画定される方法である。
【0132】
そのようなアプリケータは、個人向けであっても個人向けでなくてもよい。そのようなアプリケータは、唇に押し付けられることにより、単一の行為において迅速にかつ正確に化粧によって唇の輪郭を形成するのを可能にする。
【0133】
アプリケータには、特に発泡体で作られた組成物に浸漬させたパッドに接触させることによって組成物が付加されてもよい。
【0134】
アプリケータは、加熱され、組成物成形体に接触させることによって組成物が付加されてもよい。
【0135】
輪郭の内側の空間には、液体、ペースト状、または固体の化粧組成物が充填されてもよい。化粧組成物は、描かれる輪郭と同じ色であってもよい。化粧組成物は、生成物のブロックを唇上に移動させることによって塗布されてもよい。代替形態では、液体化粧組成物が、ブラシまたはフロック型のアプリケータを用いるか、または傾斜端部を有するチューブを使用するか、または塗布用のボールを備えるアプリケータによって塗布される。また別の代替形態では、化粧組成物はペースト状であり、特にパレットに含められ、ブラシまたは指で塗布されてもよい。
【0136】
代替形態では、輪郭の内側に塗布される組成物は輪郭と色が異なり、転写によって塗布される。
【0137】
輪郭を画定するのに使用される塗布表面は、好ましくは、個人の唇の3Dスキャンから得られている。同様に、輪郭の内側に転写によって組成物を塗布するのに使用される表面は、好ましくは個人の唇の3Dスキャンから得られている。
【0138】
適切ならば、唇の輪郭のみに化粧を施すように唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された塗布表面を備えるアプリケータ部と、輪郭の内側に転写によって組成物を塗布するのに使用される表面を有し、個人の唇の3Dスキャンから得られているインサートとを嵌め合わせることができる。次いで、得られたアプリケータを唇に押し付けることができる。インサートには、輪郭を形成するのに使用されるアプリケータ部とは異なる組成物が付加されてもよい。それによって、二生成物式の化粧塗布を実現するのがより容易になる。
【0139】
本発明は、その非限定的実施形態についての以下の詳細な説明を読むことにより、また添付図面を調べることにより、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0140】
図1】本発明による個人向けアプリケータを製造するための方法の例における様々なステップを示す図である。
図2】本発明による唇の再加工された輪郭の画定時に修正することのできるパラメータを示す図である。
図3】組成物の塗布後における唇の表面形状の取得の例を示す図である。
図4】組成物の塗布後における唇の表面形状の取得の例を示す図である。
図5】組成物の塗布後における唇の表面形状の取得の例を示す図である。
図6】組成物の塗布後における唇の表面形状の取得の例を示す図である。
図7】スプライン輪郭形成曲線の作成を示す図である。
図8】再加工済表面の作製の一例を示す図である。
図9図8の表面を使用したアプリケータについての平滑化された体積の作成を示す図である。
図10】個人向けアプリケータのコンピュータシミュレーションを示す図である。
図11】機械加工を使用して本発明によって作製されたアプリケータを示す図である。
図12】微細加工を使用して本発明によるアプリケータを作製するためのプリフォームの一例を示す図である。
図13】3D印刷によって作製されたアプリケータの代替形態を示す図である。
図14A】本発明によるアプリケータの中央平面上の垂直部分断面図である。
図14B】本発明によるアプリケータの中央平面上の垂直部分断面図である。
図15】生成物リザーバを備えるアプリケータの代替形態を示す図である。
図16】本発明によるアプリケータに付加することを目的とした組成物が含浸されたパッドを示す図である。
図17】本発明による個人向けアプリケータを含むボックスを示す図である。
図18】塗布表面が、唇の輪郭のみに化粧を施すように唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された、本発明によるアプリケータの代替形態を示す図である。
図19】塗布表面が、唇の輪郭のみに化粧を施すように唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された、本発明によるアプリケータの代替形態を示す図である。
図20A】唇の輪郭のみに化粧を施すための本発明によるアプリケータの代替形態の中央平面上の垂直部分断面図である。
図20B】唇の輪郭のみに化粧を施すための本発明によるアプリケータの代替形態の中央平面上の垂直部分断面図である。
図20C】唇の輪郭のみに化粧を施すための本発明によるアプリケータの代替形態の中央平面上の垂直部分断面図である。
図20D】唇の輪郭のみに化粧を施すための本発明によるアプリケータの代替形態の中央平面上の垂直部分断面図である。
図21】唇の輪郭のみに化粧を施す本発明によるアプリケータを使用して唇の輪郭に化粧を施した結果の例を示す図である。
図22】本発明によるアプリケータを用いて実現された唇の化粧の写真及び本発明によるアプリケータを用いずに実現された唇の化粧の写真を示す図である。
図23】本発明によるアプリケータおよび接着剤組成物によって実現された唇の化粧を示す図である。
図24】本発明によるアプリケータおよび接着剤組成物によって実現された唇の化粧を示す図である。
図25】本発明によるアプリケータおよび接着剤組成物によって実現された唇の化粧を示す図である。
図26】本発明によるアプリケータおよび接着剤組成物によって実現された唇の化粧を示す図である。
図27】本発明によるアプリケータおよび接着剤組成物によって実現された唇の化粧を示す図である。
図28】本発明による個人向けアプリケータを製造するための方法におけるステップのシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0141】
唇に化粧組成物を塗布するための個人向けアプリケータ1を製造するための本発明による方法の一例における様々なステップを図1に示し、それらのステップについて以下に詳細に説明する。
【0142】
ステップ11の間、ユーザの唇の表面の少なくとも一部の形状の3Dスキャンが、3Dスキャナ31、たとえばArtec 3D "Spider"カラースキャナを使用して得られる。ステップ11の前に、以下に詳しく説明するように、ユーザの唇の少なくとも一部に組成物が塗布されている。3Dスキャンは、唇と、唇の周囲の皮膚の少なくとも一部とを含んでもよい。
【0143】
ステップ12の間、たとえば、GeomagicのWrap型の3Dソフトウェアを使用して、ステップ11で得られたスキャンから3D表面が生成され、CNC工作機、特に微細加工機35または3Dプリンタ32によって読み取ることのできるファイルに記録される。このファイルは、有利なことに、メモリに記憶され、すべてのユーザアクセスポイント、たとえば販売店または施設に送られ、かつユーザに送られてもよい。
【0144】
生成された3D表面は、再加工することができ、唇の自然な表面とは異なってもよい。
【0145】
唇の少なくとも1つの画像に基づいて唇の輪郭を好ましくは自動的に形成することがステップ13において実行されてもよい。
【0146】
ステップ14の間に、唇の3Dスキャンから得られた表面Imの変換済数値コピーCtが作成され、次いで、前記表面Imとその変換されたコピーCtとの間の、アプリケータまたはアプリケータの製造に使用される型の平滑化された体積Vが、図9(a)および図9(b)に示すように生成される。
【0147】
ステップ15の間に、3D表面のファイルから3D印刷または機械加工によって、個人向けアプリケータが作製される。
【0148】
ユーザの顔形状に完全に適合した化粧を実現するのを可能にするアプリケータを作製するために、スキャンされた唇の自然な輪郭とは異なる輪郭が生成されてもよい。
【0149】
したがって、アプリケータ1の塗布表面2の輪郭は、唇の自然な輪郭から逸脱してもよい。図2を見るとわかるように、唇の再加工された輪郭を画定する際に多数のパラメータ、たとえば、キューピッドの弓形ならびに/または上唇および下唇の一方および/もしくは他方についての異なる高さならびに/または異なる幅が修正されてもよい。唇および/または顔の非対称が検出されてもよく、再加工された輪郭では、たとえば、化粧後の唇において対称な外観を再確立するためにこのことが考慮に入れられている。
【0150】
理想的な輪郭を画定するのを助け、関連する領域の輪郭をより容易に取り込むことができるようにするために、唇の外観を修正する組成物がユーザの唇の少なくとも一部に塗布されてもよい。
【0151】
図3の例では、3Dスキャンの前に、唇の少なくとも一部およびユーザの唇の周りの皮膚に、赤いリップスティックが一様な被膜として塗布されている。このリップスティックは有利なことに、唇の輪郭をユーザの選択に応じて再画定するように塗布されている。このリップスティックは、顔の残りの部分と比較して色の目立った違いを示すので、組成物が塗布される領域の輪郭は、3Dスキャナ31によって容易に認識される。組成物は、たとえば、唇の輪郭を画定する線に沿って、一様な被膜とは異なるように塗布されてもよい。図3(b)は、このようにリップスティックで覆われた表面の3D取得を示す。
【0152】
図4における代替形態では、シリコーンペーストが約0.5mmの厚さに塗布されている。それによって、図4(b)を見るとわかるように、色を検出できない3Dスキャナ、たとえば、Geomagic "Capture"3Dスキャナが、組成物が塗布された領域の輪郭を取得するのを可能にする。
【0153】
図5の代替形態では、輪郭の理想的な形状を探すために赤いまたは白いリップスティックが使用されている。色を検出できない3Dスキャナが取得を実行するために、たとえば、直径が0.5mmに等しい粘着繊維体が、リップスティックによって画定された輪郭に沿って使用されている。次いで、3Dスキャンを実行するために唇から化粧が除去されている。
【0154】
図6の代替形態では、白いリップスティックが一様な被膜として塗布されている。白いリップスティックは、顔の残りの部分と比較して色の目立った違いを示すので、組成物が塗布される領域の輪郭は、図6(a)および6(b)を見るとわかるように3Dスキャナ31によって容易に認識される。
【0155】
唇の画像から唇の輪郭を自動的に作成することができ、図7に示すように、多数の制御点、たとえば、20個以上の制御点を有する「スプライン」を生成することが可能である。
【0156】
画像処理を使用して、アプリケータを作製するための領域を分離することが可能である。したがって、図8は、描かれた輪郭の外側の領域が除去された後の取り込まれた領域を示し、これは、作製途中のアプリケータ1の塗布表面2の画像Imに対応する。
【0157】
図10は、図9(b)で見られる体積を作成した後の、本発明による個人向けアプリケータのコンピュータシミュレーションである。この例では、ユーザの名前に対応する特徴的な符号Sdがアプリケータ上に記される。
【0158】
図11の例では、本発明による個人向けアプリケータ1は、ハンドル4を備え、ステップ12において画定された表面に基づいて、前述のように微細加工によって製造されている。ユーザは、たとえば、作業を開始してから5分から15分後に自分のアプリケータを取得し、ただちに使用することができる。
【0159】
微細加工によってアプリケータ1を作製するために使用されるプリフォーム20の一例が図12に示されている。このプリフォームは、上唇に対応する上部キャビティ34と、下唇に対応する下部キャビティ33とを有する。このプリフォーム20は、特に、機械加工後に得られる形状に応じて多数の中から自動的に選択することができる。この場合、コンピュータプログラムが、最終結果に最も適しており、たとえば、材料の必要な除去量が最も少ないプリフォームを示してもよい。プリフォーム20は、使用される材料に適合する任意の技術によって機械加工することができる。
【0160】
図13の代替形態では、個人向けアプリケータ1が、たとえば、ABS繊維体が付加されたUltimaker 3型の3Dプリンタ32を使用して、ステップ12で画定された表面に基づいて3D印刷によって製造されている。ユーザは、たとえば、作業を開始してから約2時間から4時間後に自分のアプリケータを取得し、最初に洗浄した後使用することができる。
【0161】
図14Aは、図13のアプリケータを、口の垂直中央平面に対応する平面上の垂直部分断面図で示す。唇の形状に合った塗布表面2が見える。
【0162】
図14Bの代替形態では、塗布表面2とスキャンされた唇との間に空間Eが残されており、点線で示されている。再加工済表面は、アプリケータが通常通りに唇に押し付けられたときに、唇の輪郭の内側の唇の自然な表面から逸脱する。アプリケータ1は、自己膨張する組成物とともに使用することができ、この組成物は、膨張するにつれて、塗布表面2と唇との間に残された空間Eを充填する。
【0163】
図13の例では、アプリケータ1は、後部にハンドル4を備える。アプリケータは、たとえば、図16を見るとわかるように、アプリケータの形状に容易に適応する発泡体で作られた組成物が含浸されたドーム状パッドに接触させられるようになっている。図17の代替形態では、本発明による個人向けアプリケータ1および組成物が含浸されたパッド7が、たとえば鏡9を含むボックス8において提供される。
【0164】
図示されていない代替形態では、アプリケータ1が加熱され、アプリケータ1を組成物の成形体に接触させることによってアプリケータ1に組成物が付加される。
【0165】
図15の代替形態では、アプリケータ1は、化粧品を含むリザーバ6上に取り付けることができるように作製されている。リザーバ6は、たとえば可撓性のチューブである。しかし、本発明は、ある特定の種類のアプリケータまたはリザーバもしくはパッドに限定されない。
【0166】
図18および図20Aに示す代替形態では、本発明による個人向けアプリケータ10は、上述のように製造され、唇の輪郭のみを化粧するように唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された塗布表面2を有する。関連する例では、塗布表面2はアプリケータ10の繊維状部分によって画定される。この例では、アプリケータ10は、ハンドル4が延在する中央部10aと、前記中央部から延び、端部および中央において、それぞれ上唇および下唇の輪郭を形成するアプリケータ10の上部18および下部19を支持する4本のアーム17とを備える。上部18および下部19は、その端部において当接する。
【0167】
図19および図20Bの代替形態では、塗布表面2はアプリケータ10の中空部分5によって画定される。
【0168】
図20Cの代替形態では、塗布表面2は固体であり、塗布表面2は、その周辺部2aを除いて、フロックで被覆される。
【0169】
図20Dの代替形態では、アプリケータ10は2つの材料で作られ、唇の輪郭を構成することを目的とする、固体塗布表面2の周辺部2aは、組成物を付加することのできる材料から作られ、塗布表面2の内側2bは、組成物を付加する能力が低いか、または場合によってはそのような能力がまったくない異なる材料から作られる。
【0170】
これらのアプリケータ10の輪郭は、上述のように、口の厳密な形状に従うか、または再画定された形状に従うように形成されてもよい。
【0171】
図21(a)は、繊維状個人向けアプリケータ10を使用して唇の輪郭を構成した結果を示す。図21(b)は、中空の個人向けアプリケータ10を使用した結果を示す。これらの2つの例では、ユーザは、組成物が含浸されたパッドを使用して塗布表面2に組成物を付加して塗布表面2を唇に押し付けることによって、アプリケータ10を使用して唇の輪郭を形成している。輪郭は非常にきれいで非常に魅力的である。図示されない代替形態では、輪郭の内側の空間に、輪郭に使用された色と同じ色または異なる色の化粧組成物が充填される。このことを行うために使用されるアプリケータは、有利なことに、本発明による個人向けアプリケータ1であるか、または従来技術によるリップスティックのスティックである。
【0172】
従来技術のリップスティックアプリケータ、たとえばリップスティック型のスティックと本発明による個人向けアプリケータ1とによって得られた唇の化粧結果の比較が図22に示されている。右側に示されている個人向けアプリケータ1によって得られた化粧は高品質であり、輪郭が非常にきれいで非常に魅力的である。唇は、再モデル化されているように見え、よりふっくらして見える。唇の見た目に非常に目立った変化をもたらし、顔の全体的な調和を改善するには、ミリメートルスケールの唇の輪郭の微妙な変化で十分である。
【0173】
図23の例では、第1の組成物、たとえばScrap Cookingによって作られたグルコースシロップが、本発明によるアプリケータ1の塗布表面2に塗布されており、アプリケータ1は次いで、ユーザの唇に塗布するために使用される。このように第1の組成物が被覆された唇に、第2の組成物であるノンパレルシュガーボール、この例ではWonder Cakesによって作られたSilikomart Mini Wonder Pearlsが、ブラシによって塗布される。
【0174】
図24の例では、本発明によるアプリケータ1を使用してユーザの唇にもう一度グルコースシロップが塗布される。このように第1の組成物が被覆された唇に、第2の組成物、この例ではScrap Cookingによって作られた食用イリデッセントブルーパウダーが、ブラシによって塗布される。
【0175】
図25の例では、第1の色のマット液体リップスティックである第1の組成物が、本発明によるアプリケータ10を使用して唇の輪郭に排他的に塗布され、次いで、第1の色とは異なり、検討される例では、より軽い第2の色のマット液体リップスティックである第2の組成物が、前記第2の組成物が含浸されたパッド7によって組成物が付加された本発明によるアプリケータ1を使用して唇全体に塗布される。
【0176】
図26の例では、固体グリース赤色リップスティックである第1の組成物が、本発明によるアプリケータ1の塗布表面2にブラシ2によって塗布されており、アプリケータ1は次いで、ユーザの唇に塗布するために使用される。このように第1の組成物が被覆された唇に、この例ではScrap Cookingによって作られた食用ゴールドグリッターが、ブラシによって塗布される。
【0177】
図27の例では、ADM TronicによるPros-Aid Adhesiveなどの接着剤組成物が、本発明によるアプリケータ10に塗布され、次いで唇の輪郭に排他的に塗布される。次いで、図27(b)を見るとわかるように、このように接着剤組成物が被覆された輪郭に、ブラシによって食用ゴールドリーフが塗布される。第2の組成物、検討される例ではマット液体リップスティックが、前記第2の組成物が含浸されたパッド7によって組成物が付加された本発明によるアプリケータ1を使用して唇全体に塗布される。
【0178】
本発明による個人向けアプリケータは、数回の試みのみの後で一様な結果を非常に迅速に得るのを可能にする。
【0179】
次に、本発明による個人向けアプリケータを製造するための実施方法の様々な例について説明する。
【実施例1】
【0180】
図28に示す第1の例では、個人向けアプリケータを望むユーザが、ユーザのアプリケータを作製することによってユーザを指導するメークアップアーティストがいる販売店または施設に出向く。メークアップアーティストは、赤いリップスティックをユーザの唇に塗布して、唇の輪郭の理想的な形状を探し、たとえば、顔の全体的な調和に関して個人に最も適した唇の輪郭を画定し、ユーザが満足するまでわずかな調整を連続的に施す。このように組成物で覆われた唇の表面の形状の3Dスキャンが、カラー3Dスキャナ31を使用して行われる。3D表面およびアプリケータの体積が、スキャンの結果から生成され、上述のようにメークアップアーティストによって輪郭が画定され、微細加工ツール35を使用してアプリケータ1が製造される。この例が図11に示されている。
【実施例2】
【0181】
この例は、メークアップアーティストが、3Dスキャンが実行される場所とは異なる場所で作業することを除いて前述の例と同一であり、メークアップアーティストが、たとえばユーザの家庭を訪れているか、またはユーザがメークアップアーティストのサロンを訪れている。ユーザは次いで、3D取得およびアプリケータの製造がオペレータによって行われる販売店に出向く。
【実施例3】
【0182】
この例では、メークアップアーティストが、組成物を塗布し、形状の3Dスキャンを得ることによって、唇の輪郭に理想的な形状を見つけた後、それが行われた場所をユーザが、唇に上記のように化粧が施された状態で去り、これを利用して周りの人から意見を収集する。ユーザは次いで、アプリケータを作るかそれとも作らないかの注文をメークアップアーティストに送る。アプリケータを作る場合、メークアップアーティストは対応する3Dファイルを選択された場所に送り、オペレータがアプリケータを作製する。代替として、ユーザは周りの人の意見に依存してメークアップアーティストに変更を施させる。
【実施例4】
【0183】
この例では、理想的な形状を決定するステップは、個人を指導する第三者とのリモート接続を確立することによって、その個人のコンピュータ上で実行される。事前に唇に組成物が塗布されることはなく、理想的な輪郭の探索は、唇の3Dスキャン上でソフトウェアを使用して実行される。ユーザには、いくつかの化粧結果から選択するための選択肢が与えられてもよい。再加工済表面は、この選択肢から生成され、次いでアプリケータが3D印刷を使用して作製される。ユーザは、アプリケータが作製される場所を選択して、そこに出向いて回収してもよい。アプリケータはまた、ユーザの家庭に送られてもよい。
【実施例5】
【0184】
この例では、電子アシスタントが、ユーザをユーザのスマートフォン上で案内して理想的な輪郭を形成する。個人は、3Dスキャンの前に自分の唇に組成物を塗布する。アプリケータ10は、微細加工によって繊維状構造を有するように作製され、図18を見るとわかるように、輪郭のみを化粧するように唇の周辺のみに組成物を塗布するように構成された塗布表面2を有する。
【0185】
言うまでもなく、本発明は、ここまでに記載してきた例示的な実施形態に限定されない。
【0186】
本発明によって製造された個人向けアプリケータは、唇以外のケラチン物質の領域、たとえば目蓋に化粧組成物を塗布するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0187】
1 個人向けアプリケータ、2 塗布表面、2a 周辺部、2b 内側、4 ハンドル、5 中空部分、6 リザーバ、7 パッド、8 ボックス、9 鏡、10 個人向けアプリケータ、10a 中央部、17 アーム、18 上部、19 下部、20 プリフォーム、31 3Dスキャナ、32 3Dプリンタ、33 下部キャビティ、34 上部キャビティ、35 微細加工ツール、Ct 変換済数値コピー、E 空間、Im 表面
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21(a)】
図21(b)】
図22
図23(a)】
図23(b)】
図23(c)】
図23(d)】
図24(a)】
図24(b)】
図24(c)】
図24(d)】
図25(a)】
図25(b)】
図25(c)】
図25(d)】
図26(a)】
図26(b)】
図26(c)】
図26(d)】
図27(a)】
図27(b)】
図27(c)】
図27(d)】
図28