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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20221202BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20221202BHJP
   B60C 11/11 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 E
B60C11/03 C
B60C11/13 C
B60C11/11 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020536414
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2019028128
(87)【国際公開番号】W WO2020031640
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018150852
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 寛通
(72)【発明者】
【氏名】萩原 和将
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-112396(JP,A)
【文献】特開2012-11953(JP,A)
【文献】特開2010-23585(JP,A)
【文献】特開2005-199927(JP,A)
【文献】特開2013-249014(JP,A)
【文献】特開2013-82350(JP,A)
【文献】特開2006-273052(JP,A)
【文献】特開2015-147546(JP,A)
【文献】特許第4272244(JP,B1)
【文献】特開2009-067245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ赤道面を中心とする、タイヤのトレッド踏面のペリフェリに沿うタイヤ幅方向長さの50%の領域であるセンター部に、タイヤ幅方向に延びる複数の幅方向溝及びタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝によって区画された、1つ以上の陸部を有する、回転方向が指定される自動二輪車用タイヤにおいて、
前記陸部の少なくとも1つは、タイヤの周方向断面にて、
前記陸部の前記幅方向溝に面する、タイヤ回転方向における蹴り出し側及び踏み込み側の両側壁と、前記幅方向溝の底部との境界の各々を最短で結ぶ仮想線に対する垂線のうち、前記陸部の表面と、前記蹴り出し側の側壁との境界を通る線分を基準線とするとき、
前記蹴り出し側の側壁の、前記基準線に対する傾斜角度は、前記陸部側に傾斜する向きをマイナスとするとき、-10°以上5°以下であり、
前記蹴り出し側の側壁の前記傾斜角度は、前記垂線のうち、前記陸部の表面と、前記踏み込み側の側壁との境界を通る線分に対する、前記踏み込み側の側壁の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする、自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記陸部の表面は、タイヤ周方向における最大長さが10mm以上55mm以下である、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記蹴り出し側の側壁は、前記タイヤ回転方向における蹴り出し側に前記陸部の外側へ凸となる弧状であり、且つ、前記踏み込み側の側壁は、前記タイヤ回転方向における蹴り出し側に前記陸部の内側へ凸となる弧状である、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記蹴り出し側及び踏み込み側の側壁が弧状である陸部は、前記陸部の全数の30%以上である、請求項3に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記蹴り出し側及び踏み込み側の側壁が弧状である陸部のタイヤ幅方向両側に隣接し、且つ、タイヤ幅方向に延びる複数の幅方向溝及びタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の周方向溝によって区画される、ショルダー陸部が配置され、前記ショルダー陸部の、前記幅方向溝に面する両側壁の少なくとも一方の側壁は、前記蹴り出し側及び踏み込み側の側壁が弧状である陸部の側壁の同一弧上に延在している、請求項3又は4に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記センター部の総面積中における、前記陸部の表面を除く面積の割合は、55%以上70%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
タイヤ周方向のパターンピッチが、12以上である、請求項1~6のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動二輪車用タイヤ、特に、不整地路面及び舗装路面における操縦安定性を損なうことなく、舗装路面での使用における偏摩耗の発生を抑制した自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車用タイヤの中でも、不整地路での走行を主とする使途のタイヤには、不整地路での操縦安定性等の走行性能を確保するため、トレッドに、複数の溝によって区画される複数の陸部が配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された自動二輪車用タイヤは、モトクロスレース等の悪路の走行条件下において、陸部による良好な走行性能を維持するために、陸部の踏み込み側の側壁の傾斜を、蹴り出し側の側壁の傾斜よりも急傾斜とすることによって、陸部の耐久性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-112396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した、不整地路を走行する使途のタイヤであっても、例えば、都市部を走行したり、不整地路の間の舗装路を走行する機会もある。かような使用環境において、特許文献1のタイヤのような、不整地路走行に適した陸部は、特に舗装された路面での使用における偏摩耗の発生が課題となっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、不整地路面及び舗装路面における操縦安定性を損なうことなく、舗装路面での使用における偏摩耗の発生を抑制した自動二輪車用タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、前記課題を解決する手段について鋭意究明したところ、自動二輪車用タイヤは、一般に、四輪車用のタイヤに比べて曲率の大きい半円状の断面を有しているため、舗装路面上を直進する際にはトレッドの中央部が接地し、特に、トレッドの中心部に配置される陸部において、タイヤの周方向一方側に優先摩耗が生じやすいことを新たに知見した。さらに、発明者は、陸部の周方向を横切る向きに延びる側壁の形状を工夫することによって、このような優先摩耗を防止して、偏摩耗の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の自動二輪車用タイヤは、タイヤ赤道面を中心とする、タイヤのトレッド踏面のペリフェリに沿うタイヤ幅方向長さの50%の領域であるセンター部に、タイヤ幅方向に延びる複数の幅方向溝及びタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝によって区画された、1つ以上の陸部を有する、回転方向が指定される自動二輪車用タイヤにおいて、前記陸部の少なくとも1つは、タイヤの周方向断面にて、前記陸部の前記幅方向溝に面する、タイヤ回転方向における蹴り出し側及び踏み込み側の両側壁と、前記幅方向溝の底部との境界の各々を最短で結ぶ仮想線に対する垂線のうち、前記陸部の表面と、前記蹴り出し側の側壁との境界を通る線分を基準線とするとき、前記蹴り出し側の側壁の、前記基準線に対する傾斜角度は、前記陸部側に傾斜する向きをマイナスとするとき、-10°以上5°以下であり、前記蹴り出し側の側壁の前記傾斜角度は、前記垂線のうち、前記陸部の表面と、前記踏み込み側の側壁との境界を通る線分に対する、前記踏み込み側の側壁の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
なお、本明細書における「パターンピッチ」とは、タイヤ周方向に繰り返されるトレッド模様の1単位あたりのタイヤ周方向長さをいい、当該1単位当たりのタイヤ周方向長さがタイヤ周方向で変化する場合は、その平均長さを指すものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、不整地路面及び舗装路面における操縦安定性を損なうことなく、舗装路面での使用における偏摩耗の発生を抑制した自動二輪車用タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるタイヤの、トレッド踏面の一部をタイヤ幅方向へ展開して示している図である。
図2図1のII―II線断面を示す図である。
図3A】タイヤの負荷転動時に、陸部の中央部が接地した状態を示す図である。
図3B図3Aの状態から接地域が移行した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の自動二輪車用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)を、その実施形態を例示して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかるタイヤ1のトレッド踏面2の一部を、タイヤ幅方向へ展開して示している。なお、図示は省略するが、このタイヤ1は、一対のビード部間に跨るカーカスを骨格として、該ビード部のタイヤ径方向外側に一対のサイドウォール部と、該サイドウォール部間に跨るトレッドとを有している。
【0014】
タイヤ1は、図示例の矢印の方向に回転方向が指定されたタイヤである。タイヤ1では、タイヤ赤道面CLを中心とする、タイヤ1のトレッド踏面2のペリフェリに沿うタイヤ幅方向長さw1の50%の領域が、センター部TCである。なお、図示例では、センター部TCよりもトレッド端TE側を、ショルダー部TSとしている。センター部TCには、タイヤ幅方向Wに延びる複数の幅方向溝、図示例では3a及び3bと、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向溝、図示例では、幅方向溝3a及び3bを連通する周方向溝4a、4b、14a及び14bによって区画された、陸部5a及び5bを複数有している。
【0015】
以下、陸部5a及び5bの構成について、陸部5aを典型例として説明する。
【0016】
図2は、図1のII―II線断面図であり、タイヤの周方向Yに沿う断面を示している。図2に示すとおり、陸部5aの幅方向溝3a及び3bに面する、タイヤ回転方向における蹴り出し側の側壁50A及び踏み込み側の側壁50Bと、幅方向溝3a及び3bの底部u1及びu2との境界との各々、境界b1及びb2を最短で結ぶ仮想線L1に対する垂線のうち、陸部5aの表面5sと、側壁50Aとの境界v1を通る線分L2を基準線とするとき、側壁50Aの、線分L2に対する傾斜角度θ1は、陸部5a側に傾斜する向きをマイナスとするとき、-10°以上5°以下である。
【0017】
上記構成による作用は以下の通りである。まず、図3A及び図3Bは、タイヤの負荷転動時の陸部の変形挙動を示している。図3Aに示すとおり、タイヤは、踏み込み後に陸部の中央部が路面に接地し、ここから図3Bに示す状態へと接地域が移行し、最後に陸部が路面から離れる直前の陸部の蹴り出し部分において、斜線で示すようなクラッシング変形が生じる。ここで、クラッシング変形とは、陸部がタイヤ径方向に圧縮されて、トレッドゴムがタイヤ周方向やタイヤ幅方向に膨出する状態であり、蹴り出し部分にタイヤ周方向のクラッシング変形が生じると、クラッシング変形によりはみ出た部分が陸部表面と一緒に摩耗されることにより、陸部に偏摩耗が生じる。これに対し、蹴り出し側の側壁50Aの傾斜角度θ1を5°以下とすることによって、基準線よりも外側に存在するゴムの量が少なくなり、幅方向溝側への膨らみを抑制して、クラッシング変形による膨出部分の優先摩耗を回避することができる。さらに、傾斜角度θ1を-10°以上とすることによって、陸部5aの剛性が十分に維持されるため、路面とのグリップ性を発揮させるとともに、陸部5aに欠けやもげが生じるのを防ぐことができる。傾斜角度θ1を-10°以上とすることによって、さらに、陸部に十分な耐久性をも付与することができる。なお、θ1は、-5°以上4°以下とすることが好ましく、より好適には、-5°以上0°以下とすることがより好ましい。特に、θ1を0°以下とした場合には、クラッシング変形による膨出を効果的に抑えることができる。
【0018】
また、側壁50Aの傾斜角度θ1は、仮想線L1に対する垂線のうち、陸部5aの表面5sと、側壁50Bとの境界v2を通る線分L3に対する、側壁50Bの傾斜角度θ2よりも小さいことが肝要である。上記構成によれば、側壁50Aの傾斜角度によるクラッシング変形の回避による、陸部の偏摩耗抑制の効果を高めることができるとともに、陸部5aに欠けやもげが発生するのを防ぐことができる。
【0019】
特に、舗装路面において、比較的高荷重が負荷された状態での走行時には、クラッシング変形による膨出量も大きくなる傾向があるため、側壁50Aの傾斜角度θ1の数値範囲と、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2との関係を上記のように規定することが有効である。
【0020】
なお、側壁50Bの傾斜角度θ2は、10°以上30°以下であることが好ましい。タイヤ回転方向における踏み込み側の側壁50Bの傾斜角度θ2を、10°以上とすることによって、陸部5aに十分な剛性を付与することができ、30°以下とすることによって、排水性や排土性を発揮させることができる。
【0021】
なお、本実施形態において、陸部5a及び5bの寸法は任意であるが、陸部5aを典型例として、以下に例示する。
【0022】
陸部5aの表面5sは、タイヤ周方向Yにおける最大長さy1が、10mm以上55mm以下であることが好ましい。最大長さy1を10mm以上とすることによって、陸部5aに十分な剛性を付与して、操縦安定性を高めることができ、55mm以下とすることによって、排水性及び排土性を維持することができる。好適には、11mm以上50mm以下であり、より好適には、12mm以上45mm以下である。
【0023】
また、陸部5aのトレッド踏面2のペリフェリに沿う幅方向の最大長さw2は、トレッド踏面2のペリフェリに沿う幅方向長さw1の10%以上40%以下であることが好ましい。最大長さw2を幅方向長さw1の10%以上とすることによって、陸部5aに十分な剛性を付与して、操縦安定性を高めることができ、40%以下とすることによって、舗装路面における排水性を維持することができる。
なお、図示例では、排水性と剛性の均衡の観点から、陸部5aと陸部5bのタイヤ幅方向Wにおける最大長さが異なるが、同一の長さとしてもよい。
【0024】
なお、陸部5aの最大高さh1は、6mm以上9mm以下とすることが好ましい。ここで、陸部5aの最大高さh1とは、底部u1及びu2から、表面5sまでの最大距離を指している。最大高さh1を6mm以上とすることによって、路面とのグリップ力を高めることができ、9mm以下とすることによって、陸部5a及び5bの剛性を高めることができる。より好適には、最大高さh1は、7mm以上9mm以下である。最大高さh1を9mm以下とすることで、陸部5aのクラッシング変形の絶対量を減少させることができる。
【0025】
本発明に係るタイヤにおいて、他の構成は特に限定されないが、本実施形態の例について、図1及び図2を参照してさらに詳述する。
【0026】
図1に示すとおり、蹴り出し側の側壁50Aは、タイヤ回転方向における蹴り出し側に陸部5aの外側へ凸となる孤状であり、且つ、踏み込み側の側壁50Bは、タイヤ回転方向における蹴り出し側に陸部5aの内側へ凸となる孤状であることが好ましい。このような構成によれば、蹴り出し側の側壁50Aにおいては、偏摩耗をより効果的に抑制することができ、さらに、踏み込み側の側壁50Bは、タイヤ回転方向に対して凹となる弧状であり、不整地路面において、路面の土や泥を効果的に捕捉して、路面とのグリップ性を高めることができる。
【0027】
また、図示例において、側壁50Aと側壁50Bとは同一の曲率半径にてタイヤ幅方向Wに延在しているが、異なる曲率半径とすることによって、タイヤ赤道面CLからトレッド端TWに向かってタイヤ周方向Yにおける陸部幅が漸増又は漸減する形状としてもよい。
【0028】
なお、図示例において、陸部5bは、幅方向溝3b及び3aに面している、側壁50C及び50Dを有している。側壁50C及び50Dについても、側壁50A及び50Bと同様に、タイヤ回転方向の蹴り出し側及び踏み込み側の一方側又は両側を、蹴り出し側又は踏み込み側に凸となる孤状とすることができる。なお、陸部5aと同様に、蹴り出し側の側壁50Cを、タイヤ回転方向における蹴り出し側に凸となる孤状とすることが好ましい。
【0029】
側壁が弧状である陸部は、タイヤ1の全周にわたり、センター部TCに配置される陸部の全数のうち、30%以上であることが好ましい。本実施形態において、センター部TCに配置された陸部の全数のうち、側壁50A及び50Bが弧状である陸部5a、及び側壁50C及び50Dが弧状である陸部5bの数の割合が、30%以上であることが好ましい。なお、センター部TCには、陸部5a及び5b以外の陸部が配置されていてもよいが、センター部TCに全体が位置している陸部のみを数に入れて算出するものとする。センター部TCは、特に接地圧が高くなりやすいことから、弧状の側壁を有する陸部を一定以上配することによって、偏摩耗の抑制及び路面とのグリップを高めることが肝要である。上記割合は、40%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは、センター部TCに配置されている陸部5a及び5bの全てを、側壁が弧状の陸部とする。図示例では、センター部TCに全体が位置している陸部は、陸部5a及び5bのみであり、全ての陸部が、側壁が弧状である構成を有している。
【0030】
図1では、ショルダー部TSは、タイヤ幅方向Wに延びる幅方向溝3a及び3bと、タイヤ周方向Yに延びる周方向溝4a、4b、10a及び10bによって区画される、ショルダー陸部6a及び6bを有している。ショルダー陸部6a及び6bは、陸部5aの両側に隣接して配置されている。さらに、ショルダー陸部6a及び6bの幅方向溝3aに面する側壁60A及び側壁60Cは、側壁50Aの同一弧上、即ち弧r1上に延在している。ショルダー陸部6a及び6bの幅方向溝3bに面する側壁60B及び60Dは、側壁50Bの同一弧上、即ち弧r2上に延在している。上記構成によれば、同一弧上の陸部が弧に沿って一体として路面に接地することによって、路面とのグリップ性を向上させることができる。
【0031】
なお、図示例では、ショルダー部TSには、幅方向溝3a及び3bと、タイヤ周方向Yに延びる周方向溝14a、14b、9a及び9bとによって区画される、ショルダー陸部8a及び8bが配置され、さらに、幅方向溝3a及び3bと、タイヤ周方向Yに延びる周方向溝9a及び9bと、トレッド端TEとによって区画される、ショルダー陸部7a及び7bが配置されている。
【0032】
ショルダー陸部6a、6b、7a、7b、8a及び8bの、幅方向溝に面する側壁の形状については特に限定されないが、陸部5a及び5bと同様に、傾斜角度を規定してもよい。
【0033】
ショルダー陸部のうち、ショルダー陸部6a、6b、7a及び7bは、トレッド踏面に、浅溝11a、11b、11c及び11dをそれぞれ備えてもよい。なお、本実施形態において、浅溝とは、最大溝幅が0.1mm以上2.0mm以下、好適には0.5mm以上1.5mm以下であって、最大溝深さが0.1mm以上2.0mm以下、好適には0.2mm以上0.5mm以下である、陸部を区画する溝よりも相対的に小さい溝幅及び溝深さを有する溝を指す。このように、ショルダー陸部の表面に浅溝を設けることによって、舗装路面において、タイヤの使用初期における排水性を向上させることができる。
【0034】
図示するとおり、陸部5a、ショルダー陸部6a及び6bは、操縦安定性の観点から、タイヤ赤道面CLを軸として線対称に配置されており、同様に、陸部5b、ショルダー陸部7a、7b、8a及び8bについても、タイヤ赤道面CLを軸として線対称に配置されているが、赤道面CLを境として、異なる形状及び位相にて配置されていてもよい。
【0035】
また、幅方向溝3aと3bとの間に挟まれる、トレッド端TE間に配置される陸部の数は、1つ以上7つ以下とすることが好ましい。より好ましくは、2つ以上6つ以下であり、さらに好ましくは、3つ以上5つ以下とすることが好ましい。図示例では、幅方向溝3aと3bとの間に挟まれる3つの陸部、陸部5a、6a及び6bが配置されている列と、幅方向溝3bと3aとの間に挟まれる5つの陸部、陸部5b、7a、7b、8a及び8bが配置されている列が示されている。一対の幅方向溝間に存在する陸部の数に下限を設けることによって、路面とのグリップ性を向上させることができるとともに、舗装路面における乗り心地を向上させることができる。さらに、上記した上限を設けることによって、トレッド踏面における排水性及び排土性を発揮させることができる。
【0036】
なお、センター部TCにおいて、トレッド踏面2の平面視での総面積中における、陸部の表面を除く面積の割合は、55%以上70%以下であることが好ましい。図示するとおり、センター部TCには、陸部5a及び5bが配置され、さらに、ショルダー陸部6a、6b、8a及び8bの一部が存在している。センター部TCに一部が存在している陸部については、センター部TCに存在する表面の面積によって、上記面積の割合を算出するものとする。上記のとおり、総面積中における、陸部の表面を除く面積の割合を55%以上とすることによって、不整地路面においても操縦安定性等の走行性能を維持することができ、70%以下とすることによって、舗装路面において路面とのグリップ性を発揮し、操縦安定性を維持することができる。
【0037】
また、タイヤ1では、タイヤ周方向Yにおけるパターンピッチが、12以上であることが好ましい。タイヤ1では、例えば、陸部7a及び7bの幅方向溝3aに面する端縁の最もトレッド端TE側の点P1及びP2を結ぶ線から、タイヤ周方向Yに沿って最初に配置される、陸部7a及び7bの幅方向溝3aに面する端縁の最もトレッド端TE側の点P1´及びP2´を結ぶ線までのタイヤ周方向長さp1が1パターンピッチであり、このようなパターンピッチがタイヤ周方向Yに12以上繰り返されている。このような構成とすることによって、特に舗装路面において路面とのグリップ性を発揮し、操縦安定性を高めることができる。好適には、パターンピッチを14以上とする。
【0038】
なお、本発明におけるタイヤ1のタイヤサイズについて例示するが、このようなタイヤに限られない。タイヤ1は、例えば、総幅80mm以上130mm以下、扁平率70%以上100%以下、及びリム径18インチ以上21インチ以下のタイヤとすることが好ましい。
【0039】
さらに、タイヤ1は、自動二輪車の前輪として装着することが好ましい。自動二輪車の前輪として装着することによって、偏摩耗の抑制効果を高めることができる。
【実施例
【0040】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
タイヤサイズ110/80B19であってセンター部のネガティブ比が65.5%の、発明例タイヤ、比較例タイヤを表1に示す仕様のもと試作し、耐偏摩耗性を評価する。
【0041】
得られた各タイヤを、ホイールに組み込み、内圧220kPaにて排気量1200ccの自動二輪車の前輪に組み込む。また、後輪には従来品のタイヤを用いる。なお、後輪のタイヤサイズは150/70B17、内圧は250kPaである。
【0042】
[耐偏摩耗性]
比較例1、2及び発明例3に係るタイヤを組み込んだ自動二輪車については、この自動二輪車でテストコースを400km走行し、走行終了後のタイヤの、センター部の陸部及びショルダー部の陸部の偏摩耗を、踏み込み側の端縁を基準として、ディプスゲージを設置し、蹴り出し側の端縁の摩耗量を測定した。比較例3、4、発明例1、2、4及び5に係るタイヤを組み込む自動二輪車については、この自動二輪車でテストコースを400km走行し、走行終了後のタイヤの、センター部の陸部及びショルダー部の陸部の偏摩耗を、踏み込み側の端縁を基準として、ディプスゲージを設置し、蹴り出し側の端縁の摩耗量を測定する。結果は、陸部の踏み込み側の基準高さを100として、蹴り出し側の高さを割合によって表す。数値が大きい程、耐偏摩耗性に優れていることを示す。
[操縦安定性]
比較例1、2及び発明例3に係るタイヤを組み込んだ自動二輪車については、5名のテストドライバーによるフィーリング試験により評価した。比較例3、4、発明例1、2、4及び5に係るタイヤを組み込む自動二輪車については、5名のテストドライバーによるフィーリング試験により評価する。評価結果を、○(特に良い)、△(良い)、×(製品基準を満たさない)ものとして表記する。
[耐久性]
比較例1、2及び発明例3に係るタイヤを組み込んだ自動二輪車については、上記耐偏摩耗性の試験におけるテストコース走行後に、ブロックの欠けを評価した。比較例3、4、発明例1、2、4及び5に係るタイヤを組み込む自動二輪車については、上記耐偏摩耗性の試験におけるテストコース走行後に、ブロックの欠けを評価する。ブロックの欠けが生じていないものを○とし、直径3mm以下のブロックの欠けが生じているものを△とし、直径3mm以上のブロックの欠けが生じているものを×として表記する。
【0043】
【表1】
【符号の説明】
【0044】
1:タイヤ、 2:トレッド踏面、 3a、3b:幅方向溝、 4a、4b、14a、14b:周方向溝、 5a、5b:陸部、 5s:踏面、 6a、6b、7a、7b、8a、5b:ショルダー陸部、 9a、9b、10a、10b:周方向溝、 11a、11b、11c、11d:浅溝、 50A、50B、50C、50D、60A、60B、60C、60D:側壁、 u1、u2:底部、 b1、b2:境界、 v1、v2:境界、 L1:仮想線、 L2、L3:線分、 θ1、θ2:傾斜角度、 r1、r2:弧
図1
図2
図3A
図3B