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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20221202BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61B17/32 510
A61B18/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020551728
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2018039208
(87)【国際公開番号】W WO2020084665
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】本間 義則
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/148280(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/012615(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0057084(US,A1)
【文献】国際公開第2017/022747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシャフトと、
前記シャフトの先端から突出する把持部材と、
前記シャフトに回動可能に取り付けられる可動ジョーと、
前記可動ジョーに取り付けられ、前記把持部材とによって生体組織を把持し、前記可動ジョーに対して揺動する揺動部材と、
を備え、
前記可動ジョーは、前記揺動部材の基端部に当接して前記揺動部材の一方の方向への揺動を規制する第1規制面と、
前記揺動部材の前記基端部において前記第1規制面の当接部位とは異なる部位に当接して前記揺動部材の他方の方向への揺動を規制する第2規制面と、
を有し、
前記第2規制面は、前記可動ジョーの内部に設けられた突出部に形成される
ことを特徴とする処置具。
【請求項2】
前記突出部は、いに近づく方向に突出する第1および第2の突出部からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の処置具。
【請求項3】
前記揺動部材は、前記可動ジョーを前記把持部材に近づけた際に、該把持部材と当接するパッド部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の処置具。
【請求項4】
前記把持部材、前記揺動部材及び前記可動ジョーは、前記シャフトの長手方向に対して湾曲している
ことを特徴とする請求項1に記載の処置具。
【請求項5】
前記揺動部材は、基端部において、当該揺動部材の長手方向及び揺動方向に直交する方向に突出した突起を有し、
前記突起が、前記第2規制面に当接するとともに、
前記突起が前記第2規制面に当接した状態において、前記基端部の一部が、前記第1および第2の突出部間に入り込む
ことを特徴とする請求項2に記載の処置具。
【請求項6】
前記パッド部材は、前記揺動部材の基端に達している
ことを特徴とする請求項3に記載の処置具。
【請求項7】
前記揺動部材は、前記可動ジョーを前記把持部材に近づけた際に、該把持部材と当接するパッド部材を有し、
前記パッド部材の幅は、前記第1および第2の突出部間の距離よりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載の処置具。
【請求項8】
超音波振動を発生させる超音波振動子、
をさらに備え、
前記把持部材は、前記超音波振動子が発生させた超音波振動によって前記シャフトの長手方向に振動する
ことを特徴とする請求項1に記載の処置具。
【請求項9】
前記把持部材には、高周波電流が流通し、
前記把持部材と前記揺動部材とは、前記高周波電流を導通させる一対の電極をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の処置具。
【請求項10】
長尺なシャフトと、
前記シャフトの先端から突出する把持部材と、
前記シャフトに回動可能に取り付けられる可動ジョーと、
前記可動ジョーに取り付けられ、前記把持部材とによって生体組織を把持し、前記可動ジョーに対して揺動する揺動部材と、
を備え、
前記可動ジョーは、前記揺動部材の基端部に当接して前記揺動部材の一方の方向への揺動を規制する第1規制面と、
前記揺動部材の前記基端部において前記第1規制面の当接部位とは異なる部位に当接して前記揺動部材の他方の方向への揺動を規制する第2規制面と、
を有し、
前記揺動部材は、前記可動ジョーを前記把持部材に近づけた際に、該把持部材と当接し、かつ、前記揺動部材の基端に達しているパッド部材を有する
ことを特徴とする処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織に超音波エネルギ(超音波振動)を付与する圧電ユニットが設けられ、当該超音波振動の付与により生体組織を処置(接合(若しくは吻合)及び切離等)する処置具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、生体組織を把持する二つの把持部材を備えた処置具が記載されている。処置具では、この二つの把持部材によってエンドエフェクタを構成している。特許文献1において、一方の把持部材には、所定の軸の周りに揺動する揺動部材が設けられている。揺動部材は、当該把持部材の先端部に近接する先端側当て付け面と、当該把持部材の基端部に近接する基端側当て付け面とを有する。特許文献1において、揺動部材は、先端当て付け面または基端側当て付け面で把持部材に当接することによって、揺動範囲が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/148281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
揺動部材において、処置具使用時の揺動部材のガタツキを抑制するためには、先端の当て付け面を回転軸から離すことが好ましい。しかしながら、特に揺動部材の先端側において、揺動部材の当て付け面を回転軸よりも先端側に離してしまうと、処置具先端部が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エンドエフェクタの大型化を抑制しつつ揺動部材のガタツキを抑制することができる処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る処置具は、長尺なシャフトと、前記シャフトの先端から突出する把持部材と、回動可能に取り付けられる可動ジョーと、前記可動ジョーに取り付けられ、前記把持部材とによって生体組織を把持し、前記可動ジョーに対して揺動する揺動部材と、を備え、前記可動ジョーは、前記揺動部材の基端部に当接して前記揺動部材の一方の方向への揺動を規制する第1規制面と、前記揺動部材の前記基端部において前記第1規制面の当接部位とは異なる部位に当接して前記揺動部材の他方の方向への揺動を規制する第2規制面と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記第2規制面は、前記可動ジョーの内部に設けられ、互いに近づく方向に突出する二つの突出部に形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記揺動部材は、前記可動ジョーを前記把持部材に近づけた際に、該把持部材と当接するパッド部材を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記把持部材、前記揺動部材及び前記可動ジョーは、前記シャフトの長手方向に対して湾曲していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記揺動部材は、基端部において、当該揺動部材の長手方向及び揺動方向に直交する方向に突出した突起を有し、前記突起が、前記第2規制面に当接するとともに、前記突起が前記第2規制面に当接した状態において、前記基端部の一部が、前記突出部間に入り込むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記パッド部材は、前記揺動部材の基端に達していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記揺動部材は、前記可動ジョーを前記把持部材に近づけた際に、該把持部材と当接するパッド部材を有し、前記パッド部材の幅は、前記突出部間の距離よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、超音波振動を発生させる超音波振動子、をさらに備え、前記把持部材は、前記超音波振動子が発生させた超音波振動によって前記シャフトの長手方向に振動することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る処置具は、上記発明において、前記把持部材には、高周波電流が流通し、前記把持部材と前記揺動部材とは、前記高周波電流を導通させる一対の電極をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンドエフェクタの大型化を抑制しつつ、先端に設けられる揺動部材のガタツキを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る処置具を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る処置具の先端部分を拡大した図である。
図3図3は、本発明の一実施の形態に係る処置具が備える把持片の構成を示す図である。
図4図4は、図3に示す矢視A1方向からみた把持片の平面図である。
図5図5は、図3に示す把持片の断面図である。
図6図6は、本発明の一実施の形態に係る処置具が備える把持片の構成を示す図であって、揺動部材が第1の規制状態の場合を示す図である。
図7図7は、図6に示す矢視A2方向からみた把持片の平面図である。
図8図8は、本発明の一実施の形態に係る処置具が備える把持片の構成を示す図であって、揺動部材が第2の規制状態の場合を示す図である。
図9図9は、図8に示す矢視A3方向からみた把持片の平面図である。
図10図10は、図9に示すB-B線断面を示す断面図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の変形例に係る処置具を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る処置具について、図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る処置具を示す模式図である。処置具1は、ハウジング2、シャフト3、トランスデューサユニット5、及び、ロッド部材(プローブ)6を備える。シャフト3は、中心軸として長手軸Cを有する。ここで、長手軸Cに沿う方向の一方側が先端側(矢印C1側)であり、先端側と反対側が基端側(矢印C2側)である。
【0020】
ハウジング2は、シャフト3の基端側に連結される。ハウジング2は、長手軸C方向に延設されるハウジング本体7と、ハウジング本体7から長手軸Cに交差する方向に延設されるグリップ8と、を備える。また、ハウジング2には、ハンドル11が回動可能に取付けられる。グリップ8とハンドル11とは、術者が手で持つ部分である。ハンドル11がハウジング2への取付け位置を中心としてハウジング2に対して回動することによって、ハンドル11はグリップ8に対して近づくか、又は遠ざかる。なお、本実施の形態では、ハンドル11は、グリップ8に対して先端側に位置し、かつ、ハンドル11のグリップ8に対する移動方向が長手軸Cに対して略平行であるが、これに限るものではない。例えば、ハンドル11がグリップ8に対して基端側に設けられてもよいし、ハンドル11のグリップ8に対する移動方向が、長手軸Cに対して略垂直であってもよい。
【0021】
また、本実施の形態では、回転部材(回転ノブ)12が、ハウジング本体7に先端側から取付けられる。シャフト3は、先端側から回転部材12の内部に挿入される。シャフト3は、回転部材12に対して固定され、回転部材12と一緒にハウジング2に対して長手軸Cのまわりに回転可能である。
【0022】
トランスデューサユニット5は、トランスデューサケース15及び超音波トランスデューサ16(超音波振動子)を備える。トランスデューサケース15は、ハウジング本体7に基端側から取付けられる。また、トランスデューサケース15には、ケーブル17の一端が接続される。ケーブル17の他端は、エネルギー制御を行う超音波電流供給部30に着脱可能に接続される。超音波トランスデューサ16は、超音波振動を発生させる圧電素子(図示せず)を備え、トランスデューサケース15の内部に配置される。超音波トランスデューサ16は、長手軸Cに沿って延設される。超音波トランスデューサ16は、ハウジング本体7の内部において、基端側からロッド部材6に接続される。なお、ケーブル17の一端がハウジング2に接続される構成としてもよい。
【0023】
ロッド部材6は、超音波振動を伝達する。ロッド部材6は、ハウジング2の内部からシャフト3の内部を通って、長手軸Cに沿って先端側に延設される。ロッド部材6の先端部には、処置部(ロッド処置部)13が設けられる。ロッド部材6は、シャフト3に挿通され、処置部13がシャフト3の先端から突出した状態で配置される。ロッド部材6は、例えばチタン合金やステンレス合金で形成される。ロッド部材6は、把持部材に相当する。
【0024】
また、ハウジング2には、操作ボタン18が取付けられる。操作ボタン18では、術者によって押下されると、超音波電流供給部30から電気エネルギーを出力させる操作指示が入力される。操作ボタン18によって指示入力されると、超音波電流供給部30から超音波トランスデューサ16に、ケーブル17の内部の電気配線(図示せず)等を経由して、例えば所定の周波数の交流電力が電気エネルギーとして供給される。電気エネルギーの供給によって、超音波トランスデューサ16(圧電素子)において、電気エネルギーが超音波振動に変換され、超音波振動が発生する。超音波トランスデューサ16で発生した超音波振動は、ロッド部材6において基端側から先端側へ伝達される。そして、超音波振動は、ロッド部材6の処置部13に伝達される。超音波トランスデューサ16及びロッド部材6は、超音波振動を伝達することにより、所定の周波数範囲のある周波数で振動する。この際、ロッド部材6及び超音波トランスデューサ16の振動方向は、長手軸Cと略平行になる。なお、操作ボタン18に代えて、処置具1とは別体のフットスイッチ等によって操作指示を入力してもよい。
【0025】
シャフト3の先端部には、把持片21が回動可能に取付けられる。シャフト3の内部には、可動部材23が長手軸Cに沿って延設される。可動部材23の先端部は、把持片21に接続される。可動部材23は、ハウジング2の内部まで延設される。ハウジング本体7の内部では、ハンドル11が可動部材23に連結される。ハンドル11がグリップ8に対して近づく、又は遠ざかることによって、可動部材23が長手軸Cに沿って移動する。可動部材23が移動することにより、可動部材23から把持片21に駆動力が作用し、把持片21がシャフト3への取付け位置を中心として回動する。これにより、把持片21が処置部13に対して開くか、又は閉じる。把持片21と処置部13との間が閉じることにより、把持片21と処置部13との間で生体組織等の処置対象が把持される。なお、把持片21の開方向(矢印Y1の方向)及び閉方向(矢印Y2の方向)は、長手軸Cに対して交差する。また、把持片21と処置部13との間が閉じた状態では、把持片21の長手方向は、シャフト3の長手軸Cと略平行になる。ここで、可動部材23がシャフト3の外部に延設されてもよい。可動部材23がシャフト3の外に配設される場合、例えば、可動部材23の内部にシャフト3が延設される。
【0026】
本実施の形態では、処置部13及び把持片21によってエンドエフェクタ10が形成され、エンドエフェクタ10では、処置部13に対して把持片21が開閉可能である。また、エンドエフェクタ10及びロッド部材6は、シャフト3及び回転部材12と一緒に、ハウジング2に対して長手軸Cのまわりに回転可能である。なお、回転部材12を設けずに、シャフト3、エンドエフェクタ10及びロッド部材6がハウジング2に対して固定された構成としてもよい。
【0027】
図2は、本発明の一実施の形態に係る処置具の先端部分を拡大した図である。図3は、本発明の一実施の形態に係る処置具が備える把持片の構成を示す図である。図4は、図3に示す矢視A1方向からみた把持片の平面図である。図5は、図3に示す把持片の断面図である。図5は、長手軸Cと平行、かつ、ロッド部材6及び把持片21を通過する平面を切断面とする断面図である。以下、長手軸Cに対して交差し(略垂直で)、かつ、把持片21の開方向及び閉方向に交差する(略垂直な)方向を、エンドエフェクタ10の幅方向(図2の矢印W1及び矢印W2で示す方向)とする。図3図5は、後述するホルダ部材41が、中立位置に配置されている状態を示している。
【0028】
処置部13は、把持片21に対向する処置面(処置部対向面)25と、処置面25とは反対側を向く背面(処置部背面)27とを有する。処置面25の先端部には、長手軸Cに対して傾斜する処置部傾斜面28が設けられる。処置部傾斜面(ロッド側傾斜面)28は、先端側に向かうにつれて処置部13の背面27側へ向かう状態に、傾斜する。本実施の形態において、処置部傾斜面28は、処置部13の処置面25の先端を形成し、処置面25の先端から基端側に延設される。また、本実施形態では、処置部13の先端部に、エンドエフェクタ10の幅方向について長手軸Cに対して湾曲する態様で延設される湾曲延設部(ロッド湾曲部)29が設けられる。また、把持片21も処置部13と同様に、エンドエフェクタ10の幅方向について長手軸Cに対して湾曲する態様で延設される。
【0029】
把持片21は、処置部13に対向する把持面(把持片対向面)21aと、把持面21aとは反対側を向く背面(把持片背面)21bと、を備える。把持片21では、把持面21aは、把持片21が閉じる側を向き、背面21bは把持片21が開く側(矢印Y2側)を向く。また、把持片21の先端部には、エンドエフェクタ10の幅方向について把持片21の長手方向(長手軸C)に対して湾曲する状態で延設される湾曲延設部(把持片湾曲部)21cが、設けられる。把持片21の湾曲延設部21cは、処置部13の湾曲延設部29に対して対向する状態に、幅方向に湾曲する。
【0030】
把持片21は、例えば金属から形成されるジョー(可動ジョー)31を備える。ジョー31は、シャフト3に回動可能に取付けられる。ジョー31の基端部には、可動部材23の先端部が接続される。ジョー31は、把持片21において基端部から中央部に渡って延設される。
【0031】
また、把持片21は、樹脂製の基端側カバー32及び先端側カバー33を備える。本実施の形態では、ジョー31は、基端側カバー32と一体に設けられる。ジョー31及び基端側カバー32は、例えばインサート成形によって、一体に形成される。ジョー31の外表面の大部分には、基端側カバー32が密着する。上述した構成によって、把持片21の背面21b等において、ジョー31の外表面の大部分は、把持片21の外部に露出せず、把持片21の背面21bの大部分は、基端側カバー32及び先端側カバー33によって形成される。なお、基端側カバー32をジョー31とは別の部材にして、ジョー31の外表面に基端側カバー32が取付けられる構成としてもよい。また、ジョー31の外表面に基端側カバー32を密着させる代わりに、ジョー31の外表面に樹脂コーティングを施してもよい。ここで、上述した基端側カバー32、先端側カバー33及びコーティングの材料は、樹脂に限るものではなく、セラミックスやゴム等を用いてもよい。
【0032】
ジョー31には、把持片21が開く側(矢印Y2の方向)に向かって凹む凹部32aが形成される。凹部32aは、基端側カバー32の基端部から先端部に渡って延設される。この凹部32aは、エンドエフェクタ10の幅方向の把持片21の中央位置を通過する。先端側カバー33の先端部は、把持片21の湾曲延設部21cを形成する。このため、先端側カバー33の先端部は、エンドエフェクタ10の幅方向において、把持片21の長手方向に対して湾曲する態様で延設される。
【0033】
ジョー31には、ホルダ部材41が取付けられる。ホルダ部材41は、図2に示す支持ピン42によってジョー31に取り付けられる。ホルダ部材41は、例えば金属を用いて形成され、把持片21において基端部から先端部に渡って延設される。ホルダ部材41の先端側の外表面であって、背面21b側の外表面は、先端側カバー33に覆われている。また、ホルダ部材41は、把持面21aの一部を形成する。また、ホルダ部材41の先端部は、把持片21の湾曲延設部21cを形成する。このため、ホルダ部材41の先端部は、エンドエフェクタ10の幅方向について把持片21の長手方向に対して湾曲する態様で延設される。また、ホルダ部材41は、基端側カバー32及び先端側カバー33(又はジョー31)の凹部に挿入された状態で、ジョー31に取付けられる。
【0034】
ホルダ部材41は、支持ピン42を中心軸としてジョー31及び基端側カバー32に対して揺動する。ホルダ部材41は、揺動部材に相当する。また、支持ピン42は、エンドエフェクタ10の幅方向に延びている。このため、ホルダ部材41は、エンドエフェクタ10の幅方向に延びる揺動軸Xを中心軸として、ジョー31に対して揺動する。この際、先端側カバー33は、ホルダ部材41に連動して揺動する。また、支持ピン42は、把持片21の長手方向(長手軸C方向)において、把持片21の中間部に位置する。
【0035】
ホルダ部材41がジョー31に対して略平行に延設される中立位置(図3図5参照)において、ホルダ部材41は、基端側カバー32および先端側カバー33の凹部(例えば凹部32aの凹底面32b(図5参照))との間に隙間を有し、凹底面32bと接触しない。
【0036】
また、ジョー31は、長手軸C方向の長さにおいて、支持ピン42を基点として基端側(矢印C2側)の長さが、先端側(矢印C1側)の長さと比して長い。なお、基端側カバー32においても同様の長さの関係を有している。ここで、ホルダ部材41は、長手軸C方向の長さにおいて、支持ピン42を基点とする基端側の長さと先端側の長さとが概ね等しい。支点(支持ピン42)が中心近傍にあるため、ホルダ部材41はスムーズに回動することができる。
【0037】
図6は、本発明の一実施の形態に係る処置具が備える把持片の構成を示す図であって、揺動部材が第1の規制状態の場合を示す図である。図7は、図6に示す矢視A2方向からみた把持片の平面図である。図6、7は、ホルダ部材41が、図5に示す矢印X1方向に揺動した場合を示す図である。
【0038】
図8は、本発明の一実施の形態に係る処置具が備える把持片の構成を示す図であって、揺動部材が第2の規制状態の場合を示す図である。図9は、図8に示す矢視A3方向からみた把持片の平面図である。図10は、図9に示すB-B線断面を示す断面図である。図8~10は、ホルダ部材41が、図5に示す矢印X2方向に揺動した場合を示す図である。
【0039】
中立位置から揺動方向の一方側(矢印X1側)へホルダ部材41が揺動すると、支持ピン42より先端側において、ホルダ部材41が処置部13に近づく。そして、支持ピン42より基端側の部位においてホルダ部材41の第1当て付け面43がジョー31の第1規制面34に当接する(図6及び図7参照)。第1当て付け面43が第1規制面34に当接した状態(第1の規制状態)において、揺動方向の一方側へのホルダ部材41の揺動が規制される。
【0040】
一方、中立位置から揺動方向の他方側(矢印X2側)へホルダ部材41が揺動すると、支持ピン42より基端側において、ホルダ部材41が処置部13に近づく。そして、支持ピン42より先端側の部位においてホルダ部材41の第2当て付け面44がジョー31の第2規制面35に当接する(図8図10参照)。ここで、第2規制面35は、二つの規制面(規制面35a、35b)をからなる。規制面35a、35bは、ジョー31の内部において互いに近づく方向に突出する二つの突出部(突出部351、352)にそれぞれ形成される。規制面35a、35bは、ジョー31の内面において、互いに近づく方向に突出する突起の上面に相当する。第2当て付け面は、二つの規制面(規制面35a、35b)に当接する位置に設けられる二つ当て付け面(当て付け面44a、44b)からなる。当て付け面44a、44bは、ホルダ部材41の本体を構成する本体部443の基端部の側面において、幅方向にそれぞれ突出する突起441、442の下面に相当する。第2当て付け面44が第2規制面35に当接した状態(第2の規制状態)において、揺動方向の他方側へのホルダ部材41の揺動が規制される。
ここで、突出部351、352の先端部には、突起441、442との不要な干渉を抑制するため、少なくとも突起441、442と接触する側の端部が面取りされていることが好ましい。
【0041】
本実施の形態において、ホルダ部材41の揺動範囲を規制する第1規制面34及び第2規制面35は、ともにジョー31の基端側に設けられる。加えて、第1規制面34及び第2規制面35は、把持片21の長手方向の基端側に設けられており、支持ピン42から離れた位置に配置されている。支持ピン42から離れた位置でホルダ部材41の揺動を規制することによって、把持片21の各部材の公差のバラツキに因る揺動(長手軸Cに対する角度)の変動を小さくすることができる。
【0042】
また、ホルダ部材41は、基端部がT字状をなしており(図4参照)、第1の規制状態から第2の規制状態に遷移する過程、又はその逆の過程において、基端部の一部が突出部351、352の間に入り込む。突出部351、352の間にホルダ部材41の一部が入り込むホルダ収容部353を設ける構成とすることによって、限られた空間で、ジョー31の十分なストローク量を確保することができる。
なお、突出部351、352及び本体部443が不要に干渉することを抑制するため、両者の間には隙間が形成されていることが好ましい。この隙間は、例えば0.05mm以上0.5mm以下である。この際、隙間が大きすぎると、エンドエフェクタ10の小型化を妨げることになる。
【0043】
また、ホルダ部材41には、パッド部材51が取付けられる(図4及び図5参照)。パッド部材51は、把持片21の把持面21aの一部を形成する。パッド部材51は、ホルダ部材41と一緒に、揺動軸Xを中心軸としてジョー31に対して揺動する。パッド部材51は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂材料から形成される。パッド部材51は、ロッド部材6の処置部13との間の摩擦による摩耗を極力抑制し、耐熱性を有する材料で形成される。また、パッド部材51は、電気的に絶縁性を有することが好ましい。
【0044】
パッド部材51は、幅が、突出部351、352間の距離よりも小さい。このため、パッド部材51は、例えば、ホルダ部材41が第1の規制状態から第2の規制状態に遷移する際に、突出部351、352の間(ホルダ収容部353)に入り込む。突出部351、352の間にパッド部材51が入り込む構成とすることによって、限られた空間で、ジョー31の十分なストローク量を確保することができる。
【0045】
パッド部材51は、先端部が、把持片21の長手方向に対して傾斜する傾斜面51aしている。この傾斜面51aは、先端側に向かうにしたがって処置部13側へ向かう。処置部13の処置部傾斜面28は、パッド部材51と対向する。そして、パッド部材51の当接面が処置部13の処置面25に当接した状態では、傾斜面51aが処置部傾斜面28に当接する。なお、パッド部材51が処置部13に当接した状態において、傾斜面51aが処置部傾斜面28に対して略平行になることが好ましい。また、傾斜面51aは、パッド部材51の当接面の傾斜面51a以外の部位に比べて、処置部13側に突出する。
【0046】
ホルダ部材41は、把持片21が開く側に向かって凹む凹部41aを備える。凹部41aは、把持片21の基端部から先端部に渡って延設される。本実施の形態では、ホルダ部材41の先端部が把持片21の長手方向に対して湾曲する態様で延設されるため、凹部41aの先端部も、把持片21の長手方向に対して湾曲する状態で延設される。また、凹部41aは、エンドエフェクタ10の幅方向の中央位置を通過する。パッド部材51は、この凹部41aに挿入された状態で、ホルダ部材41に固定される。パッド部材51は、係止や接着等によってホルダ部材41に固定される。
【0047】
ここで、ガタを抑制するには、なるべく支持ピン42から離れた位置に規制面を設ける方が望ましい。しかしながら、ホルダ部材41の先端に規制面を設けようとするとエンドエフェクタ10の先端部分が大きくなってしまう。繊細な処置を行うには、エンドエフェクタ10の先端が小さいことが好ましい。
【0048】
以上説明した実施の形態では、把持片21の基端側に設けた第1規制面34及び第2規制面35によって、ホルダ部材41の揺動を規制する構成とした。さらに、本実施の形態では、第1規制面34及び第2規制面35を、ホルダ部材41の揺動の中心軸となる支持ピン42から離れた位置、換言すれば、ホルダ部材41の基端部に設けられた当て付け面(第1当て付け面43、第2当て付け面44)に当接する位置に配置した構成となっている。本実施の形態によれば、把持片21の基端側においてホルダ部材41の揺動範囲を規制することによって、第1規制面34及び第2規制面35が支持ピン42から離れた位置に配設され、ホルダ部材41(揺動部材)のガタツキを抑制することができる。
【0049】
また、上述した実施の形態では、ジョー31の長手軸C方向の長さにおいて、支持ピン42を基点として基端側(矢印C2側)の長さが、先端側(矢印C1側)の長さと比して長くすることによって、エンドエフェクタ10の大型化、特に先端部の大型化を抑制することができる。
【0050】
一方、ジョーの回動範囲の規制部をジョーの先端側と基端側の両方に設け、回転軸を基点として長手軸方向の長さが先端側の方が短い構造の場合、規制位置の精度の確保が困難であり、回転幅にばらつきを生じやすくなる。また、ジョーの先端側を長くすると、規制位置の精度を確保することはできるものの、先端部が大型化してしまう。そこで、本実施の形態のようにジョー31の基端側にのみ規制部を設ける構造とすることによって、精度の確保し、先端部の大型化を抑制できる。
【0051】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含み得るものである。上述した実施の形態では、処置具1は、生体組織に対して超音波振動を付与する構成としていたが、これに限らず、超音波振動の他、高周波エネルギーや熱エネルギーを付与する構成を採用してもよいし、超音波振動、高周波エネルギー、及び熱エネルギーを選択的に付与できる構成としてもよい。
【0052】
図11は、本発明の実施の形態の変形例に係る処置具を示す模式図である。例えば、高周波エネルギーを付与する構成とする場合は、トランスデューサユニット5およびロッド部材6に代えて、高周波発生ユニット5Aおよびロッド部材6Aを設けて、ロッド部材6Aに高周波エネルギーとして高周波電流を伝達させる。具体的に、処置具1Aは、ハウジング2、シャフト3、高周波発生ユニット5A、及び、ロッド部材(プローブ)6Aを備える。高周波発生ユニット5Aは、ケース15Aを備える。ケース15Aは、ハウジング本体7に基端側から取付けられる。また、ケース15Aには、ケーブル17Aの一端が接続される。ケーブル17Aの他端は、電気エネルギーの供給を行う高周波電流供給部31に着脱可能に接続される。この場合、ケーブル17Aとロッド部材6Aとの間、及び、ケーブル17Aとハウジング本体7との間には、図示しないリード線がそれぞれ配設され、ロッド部材6A先端の処置部13Aと、ホルダ部材41とに高周波電流が流れる。処置部13A及びホルダ部材14は、高周波電流を導通させる一対の電極として機能する。この処置具1Aでは、処置部13A及びホルダ部材14に高周波電流を流すことによって、処置対象を処置する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる処置具は、エンドエフェクタの大型化を抑制しつつ揺動部材のガタツキを抑制するのに有用である。
【符号の説明】
【0054】
1、1A 処置具
2 ハウジング
3 シャフト
5 トランスデューサユニット
5A 高周波発生ユニット
6、6A ロッド部材
7 ハウジング本体
8 グリップ
11 ハンドル
12 回転部材
13、13A 処置部
15 トランスデューサケース
16 超音波トランスデューサ
17、17A ケーブル
18 操作ボタン
21 把持片
31 ジョー
32 基端側カバー
33 先端側カバー
34 第1規制面
35 第2規制面
41 ホルダ部材
42 支持ピン
43 第1当て付け面
44 第2当て付け面
51 パッド部材
351、352 突出部
441、442 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11