(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】電磁波発生装置及び電磁波発生システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20221202BHJP
H03B 7/08 20060101ALI20221202BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20221202BHJP
H01L 29/88 20060101ALI20221202BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G01N21/3581
H03B7/08
H01L29/88
H01L29/06 601W
(21)【出願番号】P 2020553919
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042275
(87)【国際公開番号】W WO2020090782
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2018203595
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「電子デバイスを用いたテラヘルツイメージングセンサーの研究開発と応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138902(JP,A)
【文献】特表2008-520984(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170425(WO,A1)
【文献】特開2016-080686(JP,A)
【文献】特開2016-080452(JP,A)
【文献】特開2010-048721(JP,A)
【文献】特開2013-190350(JP,A)
【文献】特開2017-191017(JP,A)
【文献】特開2016-121921(JP,A)
【文献】特表2008-500541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0172374(US,A1)
【文献】国際公開第2013/046249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
H01L 21/329
H01L 29/06
H01L 29/88
H03B 7/08
H03K 3/282
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、
を備え、
少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含
み、
前記電磁波発生素子の発振周波数は、70GHz以上10THz以下とされている、
電磁波発生装置。
【請求項2】
少なくとも1個の前記グループに含まれるすべての前記電磁波発生素子は、それぞれ異なる発振周波数で発振する前記電磁波発生素子とされている、
請求項1に記載の電磁波発生装置。
【請求項3】
前記複数の電磁波発生素子にバイアス電圧を印加する電圧印加部を備え、
少なくとも1個の前記グループは、同じバイアス電圧が印加されると同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含んでおり、
前記電圧印加部は、前記少なくとも2個の前記電磁波発生素子が互いに異なる発振周波数で発振するように、前記少なくとも2個の前記電磁波発生素子に異なるバイアス電圧を印加する、
請求項1に記載の電磁波発生装置。
【請求項4】
前記異なる発振周波数の最大値と最小値との差は、1GHz以上100GHz以下とされている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振する前記グループの発振開始タイミングがm-1番目に発振する前記グループの発振終了タイミングと同時又は後になるように、前記複数の電磁波発生素子を発振させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項6】
複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、
を備え、
少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含み、
前記制御部は、前記複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振する前記グループの発振開始タイミングがm-1番目に発振する前記グループの発振終了タイミングよりも前になるように、前記複数の電磁波発生素子を発振させる、
電磁波発生装置。
【請求項7】
複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、
を備え、
少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含み、
前記複数の電磁波発生素子は、直線方向に沿って並べられており、
前記グループは、前記複数の電磁波発生素子のうち連続して並ぶ複数の前記電磁波発生素子の組合せで構成されている、
電磁波発生装置。
【請求項8】
前記電磁波発生素子は、共鳴トンネルダイオードとされている、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の電磁波発生装置と、
複数のグループに分けられている複数の電磁波検出素子をグループ単位でタイミングをずらしながら作動させ、前記複数の電磁波発生素子が発生した電磁波を検出する電磁波検出装置と、
を備える電磁波発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波発生装置及び電磁波発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばX線検査装置のように、電磁波を利用して非破壊検査等を行う装置が知られている。このような装置は、電磁波を送信する送信器と、電磁波を受信する受信器とを備え、送信器から被検査物に向けて電磁波を送信し、被検査物で透過又は反射した信号を受信器で受信して、被検査物の存在を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、上記のような装置において、電磁波にテラヘルツ波を利用することの期待が高まりつつある。テラヘルツ波を発生させる電磁波発生素子としては、例えば共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode、以下、RTDという。)が知られている。RTDのような電磁波発生素子は、バイアス電圧を印加することにより入力される電力に対して、出力される(或いは発生する)電磁波の電力への変換効率が低く、且つ、1素子当たりの出力が小さい。そのため、非破壊検査等の技術への利用を想定した場合、複数の電磁波発生素子を同時に発振させて総出力を大きくする必要がある。これに伴い、総出力を大きくするために同時に発振させる電磁波発生素子の数量を多くするほど、同時に消費される電力が大きくなる。
【0004】
本発明が解決しようとする課題としては、複数の電磁波発生素子を備えた電磁波発生装置において、電磁波の発生動作時の瞬間最大消費電力を低減することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、
複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、を備え、
少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含み、
前記電磁波発生素子の発振周波数は、70GHz以上10THz以下とされている、電磁波発生装置である。
請求項6に記載の発明は、
複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、
を備え、
少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含み、
前記制御部は、前記複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振する前記グループの発振開始タイミングがm-1番目に発振する前記グループの発振終了タイミングよりも前になるように、前記複数の電磁波発生素子を発振させる、電磁波発生装置である。
請求項7に記載の発明は、
複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、
を備え、
少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含み、
前記複数の電磁波発生素子は、直線方向に沿って並べられており、
前記グループは、前記複数の電磁波発生素子のうち連続して並ぶ複数の前記電磁波発生素子の組合せで構成されている、電磁波発生装置である。
【0006】
請求項9に記載の発明は、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電磁波発生装置と、
複数のグループに分けられている複数の電磁波検出素子をグループ単位でタイミングをずらしながら作動させ、前記複数の電磁波発生素子が発生した電磁波を検出する電磁波検出装置と、
を備える電磁波発生システムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
【
図1】第1実施形態の電磁波発生システムの概略図である。
【
図2】第1実施形態の電磁波発生装置及び制御装置の概略図である。
【
図3】第1実施形態の電磁波発生部の概略図である。
【
図4】第1実施形態の電磁波検出装置を構成する電磁波検出部の概略図である。
【
図5】第1実施形態の電磁波発生システムを用いて測定対象物を測定している状態を示す概略図である。
【
図6】第1実施形態の電磁波発生システムの動作時における、複数のグループに分けられた複数のグループの発振動作のタイミングチャートである。
【
図7】第2実施形態の電磁波発生部の概略図である。
【
図8】第3実施形態の各グループの電磁波発生素子から発生する各電磁波の波形を示す図である。
【
図9】第4実施形態の各グループに含まれ同等の発振周波数を有するすべての電磁波発生素子に、それぞれ異なるバイアス電圧を印加した場合の各電磁波発生素子の発振周波数を示す。
【
図10】第1変形例の電磁波発生システムの動作時における、各グループの発振動作のタイミングチャートである。
【
図11】第2変形例の電磁波発生システムの動作時における、各グループの発振動作のタイミングチャートである。
【
図12】第3変形例の電磁波発生システムの動作時における、各グループの発振動作のタイミングチャートである。
【
図13】第4変形例の電磁波発生部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪概要≫
以下、本発明の一例である、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態並びに複数の変形例について図面を参照しながら説明する。なお、参照するすべての図面では同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付し、明細書では適宜説明を省略する。
【0010】
≪第1実施形態≫
以下、第1実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の電磁波発生システム10(
図1及び
図5参照)の機能及び構成について説明する。次いで、本実施形態の電磁波発生システム10の動作について説明する。次いで、本実施形態の効果について説明する。
【0011】
<第1実施形態の電磁波発生システムの機能及び構成>
図1は、本実施形態の電磁波発生システム10の概略図である。
図5は、本実施形態の電磁波発生システム10を用いて測定対象物MOを測定している状態を示す概略図である。電磁波発生システム10は、電磁波発生装置20と、電磁波検出装置30と、制御装置40(制御部の一例)とを備えている。電磁波発生システム10は、一例として、測定対象物MOに向けて電磁波発生装置20に電磁波Wを発生させ、測定対象物MOを透過又は反射した電磁波Wを電磁波検出装置30に検出させ、制御装置40に測定対象物MOの形状等を解析させる機能を有する。
【0012】
〔電磁波発生装置及び制御装置〕
図2は、電磁波発生装置20及び制御装置40の概略図である。電磁波発生装置20は、電磁波発生部22と、バイアス電圧生成部24(以下、電圧生成部24という。)とを備えている。電磁波発生部22は電圧生成部24に接続され、電圧生成部24は制御装置40に接続されている。
【0013】
(電磁波発生部)
図3は、電磁波発生部22の概略図である。電磁波発生部22は、基板22Aと、複数の電磁波発生素子22Bとを有している。
基板22Aは、
図3に示されるように、一例として、長尺とされている。以下の説明では、基板22Aの長手方向(直線方向の一例)をX方向とし、短手方向をY方向とし、厚み方向をZ方向とする。基板22Aは、複数の電磁波発生素子22Bを実装するため及び電圧生成部24の出力端子(図示省略)を接合するための配線パターンが形成された、いわゆるプリント配線基板とされている。
【0014】
本実施形態における、複数の電磁波発生素子22Bの数量Nは、一例として、100個とされている。ここで、複数の電磁波発生素子22Bに含まれる各電磁波発生素子を、電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、・・・、22B98、22B99、22B100とする。そして、電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、・・・、22B98、22B99、22B100は、
図3に示されるように、X方向の一端側から他端側に亘ってこれらの記載順で並べられた状態で、基板22Aの一方の面に実装されている。
本実施形態の説明では、便宜上、数量Nを100個としたが、数量Nは3個以上であれば100個でなくてもよい。例えば、数量Nは、3個以上100個よりも少なくてもよいし、100個よりも多くてもよい。
なお、電磁波発生部22は、電磁波発生システム10の動作時に、制御装置40に制御されて、Y方向の定められた範囲を移動可能とされている(
図5参照)。そのため、電磁波発生装置20は、電磁波発生部22を移動させるための駆動機構(図示省略)を備えている。
【0015】
複数の電磁波発生素子22Bは、それぞれ、テラヘルツ波を発生させる素子とされている。そして、複数の電磁波発生素子22Bは、一例として、それぞれ300GHz前後の中心周波数(以下、本明細書では発振周波数という。)の電磁波Wを発生させる共鳴トンネルダイオードとされている。なお、複数の電磁波発生素子22Bは、テラヘルツ波を発生させる素子であれば、共鳴トンネルダイオードでなくてもよい。
【0016】
ここで、テラヘルツ波とは、ミリ波よりも短波長で赤外線よりも長波長の電磁波と言われている。テラヘルツ波は、光波及び電波の両方の性質を兼ね備えていた電磁波であり、例えば、布、紙、木、プラスチック、陶磁器等を透過し(又は透過し易く)、金属、水等は透過しない(又は透過し難い)という性質を有する。一般的に、テラヘルツ波の周波数は1THz前後(波長は300μm前後に相当)の電磁波とも言われているが、その範囲について一般的に明確な定義はない。そこで、本明細書では、テラヘルツ波の波長の範囲を70GHz以上10THz以下の範囲と定義する。
なお、前述のとおり、本実施形態の複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数は、一例として300GHz前後とされている。ただし、発振周波数がテラヘルツ波帯の周波数であれば、すなわち、発振周波数が70GHz以上10THz以下の範囲内であれば、複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数は、300GHz前後でなくてもよい。
【0017】
本実施形態の複数の電磁波発生素子22Bは、
図3に示されるように、一例として、複数(20個)のグループに分けられている。本実施形態では、20個に分けられた各グループを、X方向の一端側から多端側に亘って並べられている順に、第1グループG1、第2グループG2、第3グループG3、・・・、第18グループG18、第19グループG19、第20グループG20とする。各グループは、一例として複数(5個)の電磁波発生素子22Bの組合せで構成されている。複数の電磁波発生素子22Bを複数のグループに分けることの技術的意義については、後述する本実施形態の電磁波発生システム10の動作の説明の中で説明する。
なお、本実施形態の説明では、便宜上、複数のグループの数nを20個、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bの数量を5個としている。ただし、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bの数量が2個以上であれば、複数のグループの数nは20個でなくてもよい。
【0018】
第1グループG1を構成するすべての電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、22B04、22B05は、一例として、それぞれ、310GHz、290GHz、300GHz、308GHz、292GHzの発振周波数で発振する素子とされている。すなわち、第1グループG1の電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、22B04、22B05は、同じバイアス電圧が印加されると、それぞれ異なる発振周波数で発振するようになっている。また、第1グループG1を構成するすべての電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、22B04、22B05の発振周波数の平均値は300GHz、発振周波数の最大値は310GHz、発振周波数の最小値は290GHzとされている。すなわち、第1グループG1の発振周波数の最大値と最小値との差は、20GHz(=310GHz-290GHz)である。
【0019】
ここで、第2グループG2~第20グループG20の各グループの場合も、第1グループの場合と同様に、それぞれのグループを構成するすべての電磁波発生素子22Bがそれぞれ異なる発振周波数で発振する素子で構成されている。ただし、第2グループG2~第20グループG20の各グループにおける発振周波数の平均値及び最大値と最小値との差は、第1グループG1の場合と同じでなくてもよい。具体的には、各グループの発振周波数の平均値が一例として300GHz前後であればよく、各グループの発振周波数の最大値と最小値との差が一例として1GHz以上100GHz以下であればよい。
【0020】
(バイアス電圧生成部)
次に、電圧生成部24について
図2を参照しながら説明する。
電圧生成部24は、制御装置40に制御されて、複数の電磁波発生素子22Bが発振するためのバイアス電圧を複数の電磁波発生素子22Bに印加する機能を有する。電圧生成部24は、個別電源部2401、2402、2403、・・・、2498、2499、24100で構成されている。そして、個別電源部2401、2402、2403、・・・、2498、2499、24100は、それぞれ、電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、・・・、22B98、22B99、22B100に接続されている。すなわち、本実施形態の電圧生成部24は、電磁波発生部22の電磁波発生素子22B01、22B02、22B03、・・・、22B98、22B99、22B100に、個別にバイアス電圧を印加するようになっている。なお、本実施形態の個別電源部2401、2402、2403、・・・、2498、2499、24100は、制御装置40に制御されることで、同じ大きさのバイアス電圧をそれぞれ定められたタイミングで出力するように設定されている(
図6参照)。
【0021】
(制御装置)
次に、制御装置40について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
制御装置40は、電磁波発生装置20を制御する機能と、電磁波検出装置30を制御する機能と、電磁波検出装置30による電磁波Wの検出結果等に基づいて測定対象物MOの形状等を解析する機能とを有する。制御装置40は、記憶部42を有している。記憶部42には、制御装置40が電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30を制御して、測定対象物MOの測定動作を行うための制御プログラムCPが記憶されている。制御装置40は、制御プログラムCPに従い電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30を制御して、測定対象物MOの測定動作を行うようになっている。制御装置40の具体的な機能については、後述する本実施形態の電磁波発生システム10の動作の説明の中で説明する。
【0022】
〔電磁波検出装置〕
次に、電磁波検出装置30について
図1及び
図4を参照しながら説明する。
電磁波検出装置30は、
図1に示されるように、電磁波発生装置20が測定対象物MOに向けて発生させ、測定対象物MOを透過又は反射した電磁波Wを検出する機能を有する。
【0023】
電磁波検出装置30は、
図4に示されるように、一例として、電磁波検出部32と、駆動機構(図示省略)とを備えている。電磁波検出部32は、長尺な基板34と、複数の電磁波検出素子36とを有している。長尺な基板34は、プリント配線基板とされて、その長手方向をX方向に沿わせた状態で、電磁波発生部22に対向して配置されている(
図1及び
図5参照)。複数の電磁波検出素子36は、基板34におけるX方向の一端側から他端側に亘って並べられた状態で、基板34における電磁波発生部22に向く面に実装されている。すなわち、電磁波検出部32は、電磁波発生部22と同じ方向に沿った状態で、電磁波発生部22に対向している。複数の電磁波検出素子36の数量は、複数の電磁波発生素子22Bの数量Nと同じ数量、すなわち、本実施形態の場合は100個とされている。
【0024】
また、複数の電磁波検出素子36は、
図4に示されるように、複数(20個)のグループに分けられている。本実施形態では、20個に分けられた各グループを、X方向の一端側から多端側に亘って並べられている順に、第1グループH1、第2グループH2、第3グループH3、・・・、第18グループH18、第19グループH19、第20グループH20とする。各グループは、一例として複数(5個)の電磁波検出素子36の組合せで構成されている。なお、本実施形態の説明では、複数の電磁波検出素子36の数量を複数の電磁波発生素子22Bの数量Nと同じ100個としたが、複数の電磁波発生素子22Bの数量Nと同じ数量であれば100個でなくてもよい。複数の電磁波検出素子36を複数のグループに分けることの技術的意義については、後述する本実施形態の電磁波発生システム10の動作の説明の中で説明する。
【0025】
複数の電磁波検出素子36は、一例として、複数の電磁波発生素子22Bが発生する電磁波Wを検出可能な共鳴トンネルダイオードとされている。ただし、テラヘルツ波を検出可能な素子であれば、複数の電磁波検出素子36は共鳴トンネルダイオードでなくてもよい。
【0026】
駆動機構(図示省略)は、電磁波発生システム10の動作時に、制御装置40に制御されて、電磁波検出部32をY方向の定められた範囲で移動させる機能を有する(
図5参照)。
【0027】
以上が、第1実施形態の電磁波発生システム10の機能及び構成についての説明である。
【0028】
<第1実施形態の電磁波発生システムの動作>
次に、本実施形態の電磁波発生システム10の動作(測定対象物MOの測定動作)について、
図1~
図6を参照しながら説明する。以下の説明では、測定対象物MOの一例を紙製の封筒に収容されている金属製部材(図示省略)とする。
なお、初期状態では、電磁波発生部22と電磁波検出部32とは、Z方向において互いに対向しつつ、Y方向の定められた位置(Y方向に移動可能な範囲のうちY方向の一端となる位置)に位置している。
図5は、電磁波発生部22及び電磁波検出部32が初期状態での位置に位置している状態を示した図である。
【0029】
最初に、測定者は、
図1に示されるように、電磁波発生装置20と電磁波検出装置30との間に、測定対象物MOをセットする。この場合、測定対象物MOは、その厚み方向Z方向(電磁波発生部22と電磁波検出部32との対向方向)に沿わせた状態で配置される。次いで、測定者が電磁波発生システム10の動作スイッチ(図示省略)をオンにすると、制御装置40は、記憶部42に記憶されている制御プログラムCPに従い、電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30の制御を開始する。制御開始後の電磁波発生システム10は、以下のように作動する。
【0030】
まず、制御装置40は、電圧生成部24の個別電源部2401~2405を制御して、個別電源部2401~2405に同じ大きさのバイアス電圧を定められた期間出力させる(
図1及び
図6参照)。これに伴い、電磁波発生部22の第1グループG1を構成する電磁波発生素子22B01~22B05は、それぞれ、310GHz、290GHz、300GHz、308GHz、292GHzの発振周波数で定められた期間発振する(
図3参照)。これに伴い、第1グループG1から発生した電磁波Wは、Z方向における電磁波検出部32側に向けて出射される(
図1参照)。そして、第1グループG1から発生した電磁波Wのうち金属製部材に入射した電磁波Wは金属製部材に反射され、封筒のみに入射した電磁波WはZ方向に沿って封筒を透過する(
図1参照)。
また、制御装置40は、第1グループG1の発振期間中、電磁波検出部32の第1グループH1を構成する5個の電磁波検出素子36を制御して、第1グループH1を構成する5個の電磁波検出素子36に封筒を透過した電磁波Wを検出させる(
図1及び
図4参照)。そして、制御装置40は、電磁波検出部32の第1グループH1が検出した電磁波Wに関する情報を、電磁波検出部32から制御装置40に送信させる。送信された電磁波Wに関する情報は、記憶部42に記憶される。
【0031】
次いで、制御装置40は、電圧生成部24の個別電源部2406~2410を制御して、個別電源部2406~2410に同じ大きさのバイアス電圧を定められた期間出力させる(
図1及び
図6参照)。これに伴い、電磁波発生部22の第2グループG2を構成する電磁波発生素子22B06~22B10は、それぞれ、異なる発振周波数で定められた期間発振する。
また、制御装置40は、第2グループG2の発振期間中、電磁波検出部32の第2グループH2を構成する5個の電磁波検出素子36を制御して、第2グループH2を構成する5個の電磁波検出素子36に封筒を透過した電磁波Wを検出させる(
図1及び
図4参照)。そして、制御装置40は、電磁波検出部32の第2グループH2が検出した電磁波Wに関する情報を、電磁波検出部32から制御装置40に送信させる。送信された電磁波Wに関する情報は、記憶部42に記憶される。
【0032】
次いで、制御装置40は、電磁波発生部22の第3グループG3~第20グループG20がそれぞれ電磁波検出部32の第3グループH3~第20グループH20とともに、前述の第1グループG1及び第2グループG2と同様の動作を行わせる。すなわち、制御装置40は、電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30を制御して、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる(
図6参照)。これに伴い、制御装置40の記憶部42には、測定対象物MOにおけるY方向の初期位置での電磁波Wに関する情報が記憶される。以下の説明では、制御装置40によりY方向の定められた位置で複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる動作を、基本スキャン動作という。なお、この場合、電磁波検出装置30は、制御装置40により、複数の電磁波検出素子36をグループ単位でタイミングをずらしながら作動させて、複数の電磁波発生素子22Bが発生した電磁波Wを検知する。
【0033】
ここで、本実施形態の基本スキャン動作を別言すると、以下のとおりに定義することができる。すなわち、基本スキャン動作とは、複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振するグループの発振開始タイミングがm-1番目に発振するグループの発振終了タイミングと同時になるように、制御装置40が複数の電磁波発生素子22Bを発振させる動作である。
【0034】
次いで、制御装置40は、電磁波発生装置20の駆動機構及び電磁波検出装置30の駆動機構を制御して、電磁波発生部22及び電磁波検出部32をそれぞれY方向の一端側から他端側に定められた距離移動させる。その後、制御装置40は、電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30を制御して、電磁波発生部22及び電磁波検出部32に基本スキャン動作を行わせる。
【0035】
次いで、制御装置40は、さらに、電磁波発生部22及び電磁波検出部32をそれぞれY方向の一端側から他端側に定められた距離移動させ、電磁波発生部22及び電磁波検出部32に基本スキャン動作を行わせる。制御装置40は、電磁波発生部22及び電磁波検出部32の移動と、基本スキャン動作とを、電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30に繰り返し行わせる。そして、電磁波発生部22及び電磁波検出部32のY方向に移動可能な範囲のうちのY方向の他端となる位置での基本スキャン動作が終了すると、制御装置40は、電磁波発生部22及び電磁波検出部32を初期位置(
図5参照)に移動させる。
【0036】
Y方向の他端となる位置での基本スキャン動作が終了すると、制御装置40の記憶部42には、各基本スキャン動作後に電磁波検出部32から送信された電磁波Wに関する情報(Y方向の各位置での一次元の情報)が記憶される。制御装置40は、制御プログラムCPに従い、Y方向の各位置での一次元の情報を組み合わせて、Y方向の移動範囲での二次元の像に変換する。その結果、紙製の封筒のうち、金属製部材が収容されている部分と、金属製部材が収容されていない部分とが例えば2値化された像としてモニター(図示省略)に表示される。以上のようにして、測定対象物MOの形状(本実施形態の場合は金属製部材の形状)が解析される。
その後、制御装置40が駆動機構により電磁波発生部22及び電磁波検出部32を初期位置に移動させると、本実施形態の電磁波発生システム10の測定対象物MOの測定動作が終了する。
【0037】
以上が、第1実施形態の電磁波発生システム10の動作についての説明である。
【0038】
<第1実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果(第1~第6の効果)について図面を参照しながら説明する。
【0039】
〔第1の効果〕
第1の効果は、複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることの効果である。
例えば、複数の電磁波発生素子22Bのすべてを同時に発振させる形態の場合、電磁波の発生動作時の瞬間最大消費電力(瞬間的に消費される消費電力の最大値)はすべての電磁波発生素子22Bの消費電力の和となる。
これに対して、本実施形態の電磁波発生装置20は、複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる(
図3及び
図6参照)。そのため、本実施形態の電磁波発生装置20の場合、瞬間最大消費電力は各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bの消費電力の和となる。
したがって、本実施形態の電磁波発生装置20は、複数の電磁波発生素子22Bのすべてを同時に発振させる形態に比べて、電磁波の発生動作時の瞬間最大消費電力を低減することができる。これに伴い、本実施形態の電磁波発生システム10は、測定対象物MOの測定動作時の瞬間最大消費電力を低減することができる。
なお、本効果は、複数の電磁波発生素子22Bがいわゆるテラヘルツ波を発振する素子である場合により顕著となる。
【0040】
〔第2の効果〕
第2の効果は、同じグループに含まれる少なくとも1個の電磁波発生素子22Bが他の電磁波発生素子22Bと異なる発振周波数で発振することの効果である。
例えば、各グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する形態の場合、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wはコヒーレントな関係を有する。そのため、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wは干渉し易い。
これに対して、本実施形態の各グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bは、互いに異なる発振周波数を有する(
図3参照)。
したがって、本実施形態の電磁波発生装置20は、グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する構成に比べて、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wが干渉しない(又はし難い)。
なお、本効果を説明するために、比較対象とされた「グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する形態」であっても、第1の効果を奏する構成といえる。この点から、「グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する構成」は、本発明の技術的範囲に含まれるといえる。
【0041】
〔第3の効果〕
第3の効果は、同じグループに含まれる複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数の最大値と最小値との差が1GHz以上100GHz以下とされていることの効果である。
第2の効果の比較形態はすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で発振するため、複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数の最大値と最小値との差が0GHz(<1GHz)である。この比較形態の場合は、前述のとおり、電磁波Wが干渉する虞がある。
また、複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数の最大値と最小値との差が100GHzよりも大きい形態の場合、電磁波検出部32での電磁波Wの検出精度が低くなる。
これに対して、本実施形態の場合、同じグループに含まれる複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数の最大値と最小値との差が1GHz以上100GHz以下とされている。
したがって、本実施形態は、複数の電磁波発生素子22Bの発振周波数の最大値と最小値との差が1GHz未満の形態に比べて電磁波Wの干渉が起こり難く、100GHzよりも大きい形態に比べて、電磁波検出部32での電磁波Wの検出精度が高い。
【0042】
〔第4の効果〕
第4の効果は、電磁波発生部22の各グループは複数の電磁波発生素子22Bのうち連続して並ぶ複数の電磁波発生素子22Bの組合せで構成されていることの効果である。
本実施形態の場合、各グループの複数の電磁波発生素子22Bは、それぞれがX方向に沿って連続して並んでいる(
図3参照)。別言すると、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bは、塊となって電磁波Wを発生する。
したがって、本実施形態の電磁波発生装置20は、例えば、X方向に沿って不連続に並んでいる形態(例えば、
図13の第3変形例を参照)に比べて、測定対象物MOに複数の電磁波発生素子22Bから出射する電磁波Wを集中して入射させることができる。これに伴い、本実施形態の電磁波発生システム10は、測定対象物MOの測定精度が高い。
【0043】
以上が、第1実施形態の効果についての説明である。そして、以上が、第1実施形態についての説明である。
【0044】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態について
図7を参照しながら説明する。本実施形態については、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成要素等については同じ名称、符号等を用いることにする。
【0045】
本実施形態の電磁波発生システム10Aは、電磁波発生装置20Aの電磁波発生部22が有する複数の電磁波発生素子22Bのグループ分けの点で、第1実施形態の場合と異なる。具体的には、
図7に示されるように、第1グループG1におけるX方向の他端側端部の電磁波発生素子22Bが第2グループG2におけるX方向の一端側端部の電磁波発生素子22Bを兼ねている。同じように、第2グループG2におけるX方向の他端側端部の電磁波発生素子22Bが第3グループG3におけるX方向の一端側端部の電磁波発生素子22Bを兼ねている。すなわち、第mグループ(mは1以上の自然数)の一部の電磁波発生素子22Bは、第(m+1)グループの一部の電磁波発生素子22Bを兼ねている。以上が、本実施形態における第1実施形態の場合(
図3参照)と異なる部分についての説明である。
【0046】
以上のような構成のため、本実施形態の場合の各グループのX方向の一端部の電磁波発生素子22B及び他端部の電磁波発生素子22Bは、第1実施形態の場合と異なり、2倍の期間電磁波Wを発生する。そのため、本実施形態の場合、各グループの繋ぎ目(境界)部分の電磁波Wの検出精度を高くすることができる。
本実施形態のその他の効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0047】
以上が、第2実施形態についての説明である。
【0048】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態について
図8を参照しながら説明する。本実施形態については、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成要素等については同じ名称、符号等を用いることにする。
【0049】
本実施形態の電磁波発生システム10Bは、電磁波発生装置20Bの電磁波発生部22の各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bがすべて同等の発振周波数を有する。そのうえで、本実施形態の場合、制御装置40は、各グループのすべての電磁波発生素子22Bをそれぞれ異なる位相で発振させる。以上が、本実施形態における第1実施形態の場合と異なる部分についての説明である。なお、本明細書において、「同等の発振周波数」とは、一例として、発振周波数Aに対して、発振周波数Aの99.5%以上100.5%以下の範囲の周波数を意味する。
【0050】
ここで、第1実施形態の効果の説明のうち第2の効果の比較形態とされた「グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する形態」の場合、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wは干渉し易い。
これに対して、本実施形態の場合、同じグループのすべての電磁波発生素子22Bはそれぞれ同等の発振周波数を有するものの、それぞれ異なる位相で発振する。
図8の位相差を表すグラフは、一例として、第1グループG1を構成する電磁波発生素子22B01~22B05をモデルとしたグラフである。
したがって、本実施形態の電磁波発生装置20Bは、グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する形態に比べて、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wが干渉し難い(又は干渉しない)。
本実施形態のその他の効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0051】
以上が、第3実施形態についての説明である。
【0052】
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態について
図9を参照しながら説明する。本実施形態については、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成要素等については同じ名称、符号等を用いることにする。
【0053】
本実施形態の電磁波発生システム10Cは、電磁波発生装置20Cの電磁波発生部22の各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bがすべて同等の発振周波数を有する。すなわち、本実施形態の複数の電磁波発生素子22Bは、同じバイアス電圧が印加されると同等の発振周波数で発振する。
また、本実施形態の電磁波発生システム10Cの電磁波発生装置20Cの電圧生成部24(
図2を援用して参照)は、制御装置40に制御され、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bにそれぞれ異なるバイアス電圧を印加する。ここで、本実施形態における電圧生成部24は、電圧印加部の一例である。以上が、本実施形態における第1実施形態の場合と異なる部分についての説明である。
【0054】
ここで、第1実施形態の効果の説明のうち第2の効果の比較形態とされた「グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で位相差無しで発振する形態」の場合、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wが干渉し易い。
図9のグラフにおける標準値とは、一例として第1グループG1のすべての電磁波発生素子22B01~22B05の標準に発振周波数(定められたバイアス電圧を印加した場合の発振周波数)を示す。
これに対して、本実施形態の場合、制御装置40に制御された電圧生成部24は、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bにそれぞれ異なるバイアス電圧を印加する。その結果、複数の電磁波発生素子22Bは、それぞれ異なる発振周波数で発振する。
図9のグラフにおける各電磁波発生素子22B01~22B05の棒で示される値は、それぞれに異なるバイアス電圧が印加された場合の発振周波数を示す。
したがって、本実施形態の電磁波発生装置20Cは、グループに含まれるすべての電磁波発生素子22Bが同等の発振周波数で発振する形態に比べて、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wが干渉し難い(又は干渉しない)。
本実施形態のその他の効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0055】
以上が、第4実施形態についての説明である。
【0056】
以上のとおり、本発明について特定の実施形態を一例として説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0057】
例えば、第1実施形態の説明では、電磁波発生システム10が、一例として、電磁波Wを用いて測定対象物MOの形状等を解析する装置であるとした。しかしながら、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることで電磁波を発生させる形態であれば、電磁波発生システムは測定対象物MOの形状等を解析する装置でなくてもよい。例えば、各種センサー、トモグラフィその他のシステムであってもよい。以上の変形例は、第2~第4実施形態にも適用できる。
【0058】
また、第1実施形態の説明では、複数の電磁波発生素子22Bが分けられた複数のグループにおいて、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bの数量はそれぞれ同数量として説明した。しかしながら、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bの数量は同数量でなくてもよい。以上の変形例は、第2~第4実施形態にも適用できる。
【0059】
また、第1実施形態では、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bを発振させる期間(定められた期間)が同じ長さの期間であるかの如く説明した(
図6参照)。しかしながら、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることで電磁波を発生させる形態であれば、各グループの発振期間は異なる長さの期間としてもよい。以上の変形例は、第2~第4実施形態にも適用できる。
【0060】
また、第1実施形態の説明では、制御装置40が電磁波発生装置20及び電磁波検出装置30とは別の構成要素であるとした。しかしながら、制御装置40を構成する構成要素のうち、電磁波発生装置20を制御する構成要素を電磁波発生装置20の一部とみなし、電磁波検出装置30を制御する構成要素を電磁波検出装置30の一部とみなしてもよい。以上の変形例は、第2~第4実施形態にも適用できる。
【0061】
また、第1実施形態の説明では、複数の電磁波発生素子22Bで構成されるすべてのグループがそれぞれ異なる発振周波数を有する電磁波発生素子22Bの組合せであるとした。
しかしながら、すべてのグループのうち少なくとも1個のグループに異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の電磁波発生素子22Bが含まれている形態(図示省略)は、第2の効果の説明における比較形態に比べて、電磁波Wが干渉し難いといえる。
したがって、すべてのグループのうち少なくとも1個のグループに異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の電磁波発生素子22Bが含まれている形態(図示省略)は、本発明の技術的範囲に属する形態である。
【0062】
また、第3実施形態の説明では、電磁波発生部22の各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bがすべて同等の発振周波数を有するとした。そのうえで、第3実施形態では、制御装置40が各グループのすべての電磁波発生素子22Bをそれぞれ異なる位相で発振させるとした。
しかしながら、電磁波発生部22の各グループのうち少なくとも1個のグループが同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の電磁波発生素子22Bを含み、この少なくとも2個の電磁波発生素子22Bをそれぞれ異なる位相で発振させる形態(図示省略)は、第3実施形態の比較形態に比べて、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wが干渉し難い(又は干渉しない)。
したがって、電磁波発生部22の各グループのうち少なくとも1個のグループが同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の電磁波発生素子22Bを含み、この少なくとも2個の電磁波発生素子22Bをそれぞれ異なる位相で発振させる形態(図示省略)は、本発明の技術的範囲に属する形態である。
【0063】
また、第4実施形態の説明では、電磁波発生装置20Cの電磁波発生部22の各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bがすべて同等の発振周波数を有し、電圧生成部24は、当該複数の電磁波発生素子22Bにそれぞれ異なるバイアス電圧を印加するとした。
しかしながら、少なくとも1個のグループが同じバイアス電圧が印加されると同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の電磁波発生素子を含んでおり、前記電圧印加部が少なくとも2個の電磁波発生素子が互いに異なる発振周波数で発振するように、少なくとも2個の電磁波発生素子に異なるバイアス電圧を印加する形態(図示省略)は、第4実施形態の比較形態に比べて、各電磁波発生素子22Bから出射した電磁波Wが干渉し難い(又は干渉しない)。
したがって、少なくとも1個のグループが同じバイアス電圧が印加されると同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の電磁波発生素子を含んでおり、前記電圧印加部が少なくとも2個の電磁波発生素子が互いに異なる発振周波数で発振するように、少なくとも2個の電磁波発生素子に異なるバイアス電圧を印加する形態(図示省略)は、本発明の技術的範囲に属する形態である。
【0064】
また、第1実施形態の説明では、複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振するグループの発振開始タイミングがm-1番目に発振するグループの発振終了タイミングと同時になるとした(
図6参照)。そして、第1実施形態では、各グループの発振開始タイミングと発振終了タイミングとを
図6のような関係にすることを、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることの一例とした。
しかしながら、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることの一例は、例えば、
図10に示される第1変形例のような形態であってもよい。すなわち、複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振するグループの発振開始タイミングがm-1番目に発振するグループの発振終了タイミングの後になるようにしてもよい。第1変形例の場合であっても、第1実施形態の場合と同様の効果を奏する。
【0065】
また、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることの一例は、例えば、
図11に示される第2変形例のような形態であってもよい。すなわち、複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振するグループの発振開始タイミングがm-1番目に発振するグループの発振終了タイミングよりも前になるようにしてもよい。第1変形例の場合であっても、第1実施形態の場合と同様の効果を奏する。また、第2変形例の場合、第1~第4実施形態及び第1変形例に比べて、発振動作(測定動作)を短い期間で終了させることができる点で有効といえる。
【0066】
また、複数の電磁波発生素子22Bをグループ単位でタイミングをずらしながら発振させることの一例は、例えば、
図12に示される第3変形例のような形態であってもよい。すなわち、第1実施形態、第1変形例及び第2変形例の発振のタイミングを組合せた形態であってもよい。
【0067】
また、第1実施形態の説明では、電磁波発生部22の各グループは複数の電磁波発生素子22Bのうち連続して並ぶ複数の電磁波発生素子22Bの組合せで構成されているとした(
図3参照)。
しかしながら、複数の電磁波発生素子22Bが少なくとも2つ以上のグループに分けられていれば、各グループを構成する複数の電磁波発生素子22Bの組合せは連続して並んでいなくてもよい。例えば、
図13に示される第3変形例のように、1つのグループを構成する複数の電磁波発生素子22Bが不連続に並んでいてもよい。
【0068】
この出願は、2018年10月30日に出願された日本出願特願2018-203595号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
上記の実施の形態の一手段または全手段は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1.複数のグループに分けられている複数の電磁波発生素子と、
前記複数の電磁波発生素子をグループ単位でタイミングをずらしながら発振させる制御部と、
を備える電磁波発生装置。
2.前記制御部は、前記複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振する前記グループの発振開始タイミングがm-1番目に発振する前記グループの発振終了タイミングと同時又は後になるように、前記複数の電磁波発生素子を発振させる、
上記1に記載の電磁波発生装置。
3.前記制御部は、前記複数のグループの数をn個とした場合に、m番目(mは2以上n以下の自然数)に発振する前記グループの発振開始タイミングがm-1番目に発振する前記グループの発振終了タイミングよりも前になるように、前記複数の電磁波発生素子を発振させる、
上記1に記載の電磁波発生装置。
4.前記電磁波発生素子の発振周波数は、70GHz以上10THz以下とされている、
上記1~3のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
5.少なくとも1個の前記グループは、異なる発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含んでいる、
上記1~4のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
6.少なくとも1個の前記グループに含まれるすべての前記電磁波発生素子は、それぞれ異なる発振周波数で発振する前記電磁波発生素子とされている、
上記1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
7.前記異なる発振周波数の最大値と最小値との差は、1GHz以上100GHz以下とされている、
上記5又は6に記載の電磁波発生装置。
8.少なくとも1個の前記グループは、同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含んでおり、
前記制御部は、前記少なくとも2個の前記電磁波発生素子をそれぞれ異なる位相で発振させる、
上記1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
9.少なくとも1個の前記グループに含まれるすべての前記電磁波発生素子は、それぞれ同等の発振周波数で発振する前記電磁波発生素子とされ、
前記制御部は、すべての前記電磁波発生素子のうちの少なくとも2個の前記電磁波発生素子をそれぞれ異なる位相で発振させる、
上記1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
10.前記複数の電磁波発生素子にバイアス電圧を印加する電圧印加部を備え、
少なくとも1個の前記グループは、同じバイアス電圧が印加されると同等の発振周波数で発振する少なくとも2個の前記電磁波発生素子を含んでおり、
前記電圧印加部は、前記少なくとも2個の前記電磁波発生素子が互いに異なる発振周波数で発振するように、前記少なくとも2個の前記電磁波発生素子に異なるバイアス電圧を印加する、
上記1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
11.前記複数の電磁波発生素子は、直線方向に沿って並べられており、
前記グループは、前記複数の電磁波発生素子のうち連続して並ぶ複数の前記電磁波発生素子の組合せで構成されている、
上記1~10のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
12.前記電磁波発生素子は、共鳴トンネルダイオードとされている、
上記1~11のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
13.上記1~12のいずれか1つに記載の電磁波発生装置と、
複数のグループに分けられている複数の電磁波検出素子をグループ単位でタイミングをずらしながら作動させ、前記複数の電磁波発生素子が発生した電磁波を検出する電磁波検出装置と、
を備える電磁波発生システム。
【符号の説明】
【0069】
10 電磁波発生システム
10A 電磁波発生システム
10B 電磁波発生システム
10C 電磁波発生システム
20 電磁波発生装置
20A 電磁波発生装置
20B 電磁波発生装置
20C 電磁波発生装置
22 電磁波発生部
22A 基板
22B 電磁波発生素子
24 電圧生成部
30 電磁波検出装置
32 電磁波検出部
34 基板
36 電磁波検出素子
40 制御装置(制御部の一例)
42 記憶部
CP 制御プログラム
MO 測定対象物