IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧 ▶ アイユーシーエフ−エイチワイユー(インダストリー−ユニバーシティー コーオペレイション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー)の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】無機電解液を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0563 20100101AFI20221202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221202BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20221202BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221202BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20221202BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221202BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221202BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20221202BHJP
   H01M 50/437 20210101ALI20221202BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20221202BHJP
   H01M 10/36 20100101ALN20221202BHJP
【FI】
H01M10/0563
H01M10/052
H01M4/583
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M50/437
H01M50/44
H01M10/36 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020563715
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2019008670
(87)【国際公開番号】W WO2020013667
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0081308
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507107394
【氏名又は名称】アイユーシーエフ-エイチワイユー(インダストリー-ユニバーシティー コーオペレイション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー)
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒョン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ギル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ボム-ヨン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン-ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ア-ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ヒェ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホ-ジェ・ジュン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062890(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0035970(KR,A)
【文献】米国特許第05601951(US,A)
【文献】特表2011-507171(JP,A)
【文献】特開昭63-143759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 4/00- 4/62
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜及び二酸化硫黄系無機電解液を含み、
前記正極は、正極活物質として、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO、LiNi1-x-y-zCoM1M2(M1及びM2は、互いに独立的に、Al、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg、Moまたはこれらの二種以上であり、x、y及びzは、互いに独立に酸化物組成元素の原子分率であって、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、0≦x+y+z<1である。)またはこれらの二種以上の活物質粒子を含み、
前記負極は、負極活物質としてチタン酸化物(TiO,0<x<2)がコーティングされた炭素材を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記チタン酸化物は、TiO、TiO0.5、TiO0.68、TiO1.3、TiO1.5、TiO1.7、TiO1.9またはこれらの二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記チタン酸化物は、炭素材の含量を基準として0.5~20重量%でコーティングされることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記チタン酸化物は、炭素材の含量を基準として0.5~10重量%でコーティングされることを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記炭素材が、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、グラフェン、繊維状炭素またはこれらの二種以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記チタン酸化物(TiO,0<x<2)でコーティングされた炭素材は、チタン酸化物前駆体を溶媒に分散させてゾル溶液を得、前記ゾル溶液と炭素材を反応させてゾル-ゲル反応を誘導した後、熱処理を行うことで得られることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記チタン酸化物前駆体が、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトラクロライド、チタンエトキシドまたはこれらの二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記二酸化硫黄系無機電解液は、二酸化硫黄(SO)及びリチウム塩を含むことを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム塩は、LiAlCl、LiGaCl、LiBF、LiBCl、LiInClまたはこれらの二種以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記二酸化硫黄(SO)は、二酸化硫黄系無機電解液中に、リチウム塩1モルを基準として1~6モルで含まれる、請求項8または9に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記分離膜は、ガラス繊維材質であることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レート特性が向上した、無機電解液を含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2018年7月12日出願の韓国特許出願第10-2018-0081308号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関わる技術開発と需要が増加するにつれ、再充電が可能であり、小型化及び大容量化が可能な二次電池の需要が急増している。また、二次電池の中でも、高いエネルギー密度及び電圧を有するリチウム二次電池が商用化して広く使われている。
【0004】
通常、リチウム二次電池は、相異なる電位を有する二つの電極及び前記二つの電極の間に電気的短絡を防止するための分離膜を介在した後、前記二つの電極にリチウムイオンを伝達する電解質を注入することで製造される。このようなリチウム二次電池の電解質としては、多くの場合リチウム塩を有機溶媒に溶解した液体電解質が使用されている。
【0005】
一方、最近、リチウム二次電池は、高温及び過充電のような限界状況で発火、爆発などの安全性の問題から、可燃性及び引火性の有機溶媒を使用しない電池設計の必要性が大きくなりつつあり、これによって不燃性電解質である二酸化硫黄無機電解液の研究が盛んである。
【0006】
また、二酸化硫黄系無機電解液は、有機電解液に比べて7倍程度高いイオン伝導度(約78~80mS/cm)を示し、高レート特性面においても有利であると見込まれる。
【0007】
但し、前記二酸化硫黄系無機電解液は、リチウム二次電池に主に使われる疎水性の炭素材負極に対する濡れ性が十分ではなく、リチウムイオンの拡散速度が低下し、これによって高レートの充放電時において炭素材負極へのリチウムイオンの挿入及び放出が円滑でないことから充放電効率が低下する恐れがあり、改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、二酸化硫黄系無機電解液を炭素材負極と共に適用するに際し、向上した高レート充放電特性を有するリチウム二次電池を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一面によれば、第1様態において、正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜及び二酸化硫黄系無機電解液を含み、前記負極は、負極活物質としてチタン酸化物(TiO,0<x<2)がコーティングされた炭素材を含むリチウム二次電池が提供される。
【0010】
本発明の第2様態によれば、第1様態において、前記チタン酸化物は、TiO、TiO0.5、TiO0.68、TiO1.3、TiO1.5、TiO1.7、TiO1.9またはこれらの二種以上の混合物を含むリチウム二次電池が提供される。
【0011】
本発明の第3様態によれば、前記第1様態または第2様態において、前記チタン酸化物は、炭素材の含量を基準として0.5~20重量%または0.5~10重量%または1~5重量%でコーティングされるリチウム二次電池が提供される。
【0012】
本発明の第4様態によれば、前記第1様態から第3様態のいずれか一様態において、前記炭素材が、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、グラフェン、繊維状炭素またはこれらの二種以上の混合物を含むリチウム二次電池が提供される。
【0013】
本発明の第5様態によれば、前記第1様態から第4様態のいずれか一様態において、前記二酸化硫黄系無機電解液は、二酸化硫黄(SO)及びリチウム塩を含むリチウム二次電池が提供される。
【0014】
本発明の第6様態によれば、前記第1様態から第5様態のいずれか一様態において、前記チタン酸化物(TiO,0<x<2)でコーティングされた炭素材は、チタン酸化物前駆体を溶媒に分散させてゾル溶液を得、前記ゾル溶液と炭素材を反応させてゾル-ゲル(sol-gel)反応を誘導した後、熱処理を行うことで得られるリチウム二次電池が提供される。
【0015】
本発明の第7様態によれば、前記第1様態から第6様態のいずれか一様態において、前記チタン酸化物前駆体としては、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトラクロライド、チタンエトキシドまたはこれらの二種以上の混合物であるリチウム二次電池が提供される。
【0016】
本発明の第8様態によれば、前記第1様態から第7様態のいずれか一様態において、前記リチウム塩は、LiAlCl、LiGaCl、LiBF、LiBCl、LiInClまたはこれらの二種以上の混合物を含むリチウム二次電池が提供される。
【0017】
本発明の第9様態によれば、前記第1様態から第8様態のいずれか一様態において、前記二酸化硫黄(SO)は、二酸化硫黄系無機電解液中に、リチウム塩1モルを基準として1~6モル含まれるリチウム二次電池が提供される。
【0018】
本発明の第10様態によれば、前記第1様態から第9様態のいずれか一様態において、前記分離膜は、ガラス繊維材質であるリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリチウム二次電池は、二酸化硫黄系無機電解液と共にチタン酸化物がコーティングされた炭素材を含む負極を適用することで、前記チタン酸化物が炭素材負極の無機電解液の濡れ性(wettability)及び表面電荷の伝達反応を向上させて炭素材/無機電解液の界面抵抗を最小化し、高レート充放電特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0021】
本発明の一実施形態は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜、及び二酸化硫黄系無機電解液、を含むリチウム二次電池に関する。
【0022】
本発明のリチウム二次電池に適用された二酸化硫黄系無機電解液は、二酸化硫黄及びリチウム塩を含み、前記リチウム塩は、LiAlCl、LiGaCl、LiBF、LiBCl、LiInClまたはこれらの二種以上の混合物であり得る。前記リチウム塩は、固体状態で存在するが、SOガスが注入さると、液状に変わる。本発明の具体的な一実施様態において、前記SOガスは、密閉した容器に連結されているテフロン(登録商標)ホースをバルブ開閉によって注入するに際し、1.2バールの圧力で注入し得る。例えば、前記二酸化硫黄系無機電解液は、LiAlCl(またはAlClとLiClとの混合物)にSOガスを注入する方法で得ることができる。本発明の具体的な一実施様態でリチウム塩1モルを基準としてSOは1~6モル、詳しくは、1~3モルで使用され得る。
【0023】
このような二酸化硫黄系無機電解液は、不燃性の特性によって、二次電池が高温や過充電などの環境に露出しても発火及び爆発などの危険を避けることができ、可燃性の有機電解液よりも高い安全性を確保することができる。しかし、前記二酸化硫黄系無機電解液は、リチウム二次電池に主に使用される疎水性の炭素材負極に対する濡れ性が十分ではなくて、リチウムイオンの拡散速度が低下し、これによって、高レート充放電に際し、炭素材負極へのリチウムイオンの挿入及び放出が円滑ではなくて充放電効率が低下してしまう恐れがある。
【0024】
そこで、本発明のリチウム二次電池は、安全性に有利な二酸化硫黄系無機電解液を適用すると共に、負極活物質としてチタン酸化物(TiO,0<x<2)でコーティングされた炭素材が使用された負極を含むことを特徴とする。
【0025】
具体的に、前記チタン酸化物(TiO,0<x<2)でコーティングされた炭素材は、チタン酸化物前駆体を溶媒に分散させてTiOゾル溶液を得て、前記ゾル溶液と炭素材とを反応させてゾル-ゲル(sol-gel)反応を誘導した後、反応溶液を約70℃のウォーターバスで撹拌しながら溶媒を気化させた後、生成した粉末を窒素(N)雰囲気下で400~500℃で熱処理することで得される。
【0026】
この際、前記溶媒としては、エチルアルコール、水、テトラハイドロフランまたはこれらの二種以上の混合物が使われ得る。また、前記チタン酸化物前駆体としては、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトラクロライド、チタンエトキシドまたはこれらの二種以上の混合物が使われ得る。
【0027】
このような一連の過程によって、チタン酸化物(TiO,0<x<2)が炭素材の表面にコーティングされた粉末が得られ、これを負極活物質として使うことができる。
【0028】
前記炭素材は、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、グラフェン(graphene)、繊維状炭素、またはこれらの二種以上の混合物であり得る。
【0029】
前記チタン酸化物(TiO,0<x<2)は、具体的にTiO,TiO0.5,TiO0.68,TiO1.3,TiO1.5,TiO1.7,TiO1.9またはこれらの二種以上の混合物であり得る。このようなチタン酸化物(TiO,0<x<2)は、親溶媒性を示して電解液に対する濡れ性が優秀である。また、二酸化チタン(TiO)が、バンドギャップエネルギーが3.2eVである絶縁体であって電気伝導性が低いことに対し、前記チタン酸化物(TiO,0<x<2)は二酸化チタンよりも低いバンドギャップエネルギーを有し、電気伝導性が優秀である。
【0030】
したがって、前記チタン酸化物は、炭素材電極に含まれたときに親溶媒性によって炭素材電極の電解液に対する濡れ性を向上させることができ、低いバンドギャップエネルギーによって電極表面における電荷の伝達反応を向上させることができ、これによって、リチウムイオンの拡散速度が改善されてリチウム二次電池の高レート充放電を可能にする。
【0031】
前記チタン酸化物は粒子状であり得、チタン酸化物及び炭素材の粒径の割合は、1:1000~1:6000、詳しくは1:2000~1:3000であり得る。例えば、前記炭素材が球状であると共に、10~50μm、詳しくは15~30μmの平均粒径を有する二次粒子形態の天然黒鉛である場合、前記チタン酸化物は1~30nm、詳しくは5~15nmの平均粒径を有し得る。この際、前記平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定法で測定され得る。
【0032】
前記チタン酸化物のコーティング量は、炭素材の総量を基準として0.5~20重量%、詳しくは0.5~10重量%、特に1重量%であり得、前記コーティング量の範囲を満たすとき、活物質である炭素材の重量当たりの十分な容量の発現が可能である。即ち、チタン酸化物は、活物質ではなく濡れ性の効果を付与するためのコーティング剤であるため、活物質の容量発現のためには前記範囲を満たすことが有利である。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記負極は、前述したようなチタン酸化物がコーティングされた炭素材を負極活物質として使用し、これをバインダーと共に溶媒に混合して得た負極スラリーを集電体の少なくとも一面に塗布した後、乾燥及び圧延して製造することができる。この際、前記乾燥は、100~150℃の温度で1~24時間行われ得る。また、負極スラリーの製造時、導電材をさらに使ってもよい。
【0034】
前記負極は、前記のような炭素材の外にも、必要に応じて負極活物質として、Si、SiO、SiOなどのようなSi系物質;Sn、SnO、SnOなどのようなSn系物質;またはこれらの二種以上の混合物を含み得る。炭素材を含む負極活物質は、負極スラリーの総重量を基準として80重量%~99重量%で含まれ得る。
【0035】
前記バインダーは、活物質と導電材、またはこれらと集電体との結合に役立つ成分であって、通常、負極スラリー組成物の総重量を基準として0.1~20重量%で含まれる。このようなバインダーの例としては、ポリビニルリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HEP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。前記カルボキシメチルセルロース(CMC)は、スラリーの粘度を調節する増粘剤として使われ得る。
【0036】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの伝導性素材などが使われ得る。前記導電材は、負極スラリー組成物の総重量を基準として0.1~20重量%で添加され得る。
【0037】
前記溶媒は、水またはNMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含み得、前記負極スラリーが負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材などを含むとき、望ましい粘度になる量で使われ得る。例えば、負極スラリー中の固形分の濃度が50~95重量%、望ましくは70~90重量%になるように含まれ得る。
【0038】
前記集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われ得る。前記集電体の厚さは特に制限されないが、通常適用される3~500μmの厚さを有し得る。
【0039】
また、前記負極スラリーのコーティング方法は、当該分野で通常使用される方法であれば、特に限定されない。例えば、スロットダイを用いたコーティング法を用いることができ、その外にも、メイヤーバーコーティング法、グラビアコーティング法、浸漬コーティング法、噴霧コーティング法などを用い得る。
【0040】
本発明のリチウム二次電池において、前記正極は、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒を混合してスラリーを製造した後、これを集電体の少なくとも一面に塗布した後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0041】
前記正極活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO、LiNi1-x-y-zCoM1M2(M1及びM2は、互いに独立的に、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg、Moまたはこれらの二種以上であり、x、y及びzは、互いに独立に酸化物組成元素の原子分率であって、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、0≦x+y+z<1である。)またはこれらの二種以上の活物質粒子を含み得る。
【0042】
一方、導電材、バインダー、溶媒及び集電体は、前記負極に関わる説明と同一である。
【0043】
本発明のリチウム二次電池において、前記分離膜は、正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用される。分離膜の気孔直径は、通常0.01~10μmであり、厚さは、通常5~300μmである。
【0044】
前記分離膜は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜、通常の多孔性不織布、例えば、ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使い得る。特に、ガラス繊維からなる分離膜が二酸化硫黄系無機電解液の電解液の濡れ性の面で優秀であり、電池の内部抵抗を減少させて容量発現及び寿命維持率を確保するのに有利である。
【0045】
本発明の二次電池は、小型デバイスの電源に使われる電池セルに使用できるだけでなく、複数の電池セルを含む中・大型電池モジュールに単位電池としても望ましく使用可能である。前記中・大型デバイスの望ましい例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどが挙げられる。
【0046】
以上、本発明を限定された具現例によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0047】
実施例1:
チタンブトキシド10ml及びチタンイソプロポキシド10mlをエチルアルコール100mlに分散させた後、常温で30分間撹拌し、TiO,TiO0.5、TiO0.68、TiO1.3、TiO1.5、TiO1.7及びTiO1.9の混合物形態であるTiO(0<x<2)のゾル溶液を得た。前記ゾル溶液に平均粒径が20μmである二次粒子形態の天然黒鉛を添加し、1~2時間の間、ゾル-ゲル(sol-gel)反応を誘導した。一定量の反応溶液を約70℃のウォーターバスで撹拌しながら溶媒を気化させた後、生成された粉末を窒素雰囲気下で500℃で熱処理を行った。このようにして、平均粒径10nmのブラックチタン酸化物TiO(0<x<2)が天然黒鉛の含量を基準として1%の量で表面コーティングされた天然黒鉛粉末を得た。
【0048】
負極活物質としてチタン酸化物(TiO,0<x<2)がコーティングされた炭素材、より具体的には、前記得られたブラックチタン酸化物(TiO,0<x<2)がコーティングされた天然黒鉛と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを96:2:2の重量比で脱イオン水に分散させて得た負極スラリーを、厚さ11μmの銅ホイルの一面にコーティングし、130℃で1時間乾燥した後に圧延することで負極を製造した。
【0049】
分離膜としては、ガラス繊維材質の分離膜であって、ADVANTEC社GC-50製品のガラス繊維分離膜(重量48g/m,厚さ190μm,名目上の孔径(pore size)0.5μm)を用いた。
【0050】
前記負極と相手電極であるリチウム金属ホイルとの間に前記ガラス繊維材質の分離膜を介在して電極組立体を得て、電池ケースに収納した。続いて、密閉した容器内のAlCl及びLiClの混合物に、SOガスを約1.2バールで注入して二酸化硫黄系無機電解液であるLiAlCl-3SOの無機電解液を得、得られた無機電解液を前記電池ケース内に注入し、リチウム二次電池(2032 coin cell)を製造した。
【0051】
実施例2:
負極の製造時、負極活物質としてブラックチタン酸化物(TiO,0<x<2)が5%の量で表面コーティングされた天然黒鉛を使用することを除いては、実施例1と同様の工程でリチウム二次電池を製造した。
【0052】
比較例1:
負極の製造時、負極活物質としてブラックチタン酸化物(TiO,0<x<2)がコーティングされていない天然黒鉛を使用することを除いては、実施例1と同様の工程でリチウム二次電池を製造した。
【0053】
実験例1:充放電試験
前記製造されたリチウム二次電池に対して充放電を行った。この際、充電は、0.005Vの電圧まで1C レート(rate)の電流密度で、放電は同じ電流密度で2Vの電圧まで行い、このような充放電を100回施した。
【0054】
また、前記のような充放電を行いながら、二次電池の界面抵抗を常温及び常圧の条件で測定した。具体的に、界面抵抗の測定は、周波数が異なる微小な交流信号を電池セルに付与してインピーダンスを計測することで二次電池の抵抗を分離する電気化学インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy,EIS)を用いて行った。
その結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から分かるように、二酸化硫黄系無機電解液と共にチタン酸化物がコーティングされた天然黒鉛が適用された実施例1及び2の二次電池は、コーティングしていない天然黒鉛が適用された比較例1に比べて、1C放電容量が2倍程度高いことから、高レート特性が改善しており、界面抵抗の減少においても優秀な結果を示した。このような結果は、天然黒鉛にチタン酸化物のコーティングで無機電解液の濡れ性及び電極表面における電荷伝達反応が向上して得られたと考えられる。
【0057】
一方、比較例1で容量維持率が125.4%に増加したことは、非コーティング天然黒鉛の無機電解液に対する濡れ性が低く、これによってサイクルが進むにつれ、発現されていなかった天然黒鉛の容量が発現したことに起因したと考えられる。したがって、比較例1の二次電池は、初期効率面においては、不利であると予測される。
【0058】
これに対し、実施例1及び2の二次電池は、安定的な容量維持率を示した。