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特許7186805風力タービンのロータブレードおよび風力タービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】風力タービンのロータブレードおよび風力タービン
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/04 20060101AFI20221202BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
F03D1/04 Z
F03D1/06 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020569976
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019069351
(87)【国際公開番号】W WO2020016351
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】102018117398.9
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516129275
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】メッシング, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ステムベルグ, ヨッヘン
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0328693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0204306(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0140856(US,A1)
【文献】特開2017-089526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0361952(US,A1)
【文献】特開2014-070638(JP,A)
【文献】特開2016-041916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/04
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン用の吸引側と圧力側を備えたロータブレード(1)であって、
-前記ロータブレード(1)をロータハブに接続するためのハブ領域(I)のロータブレード根元部(2)と、
-前記ロータブレード根元部(2)とは反対側に配置された先端領域(II)のロータブレード先端部(3)と、
-前記ロータブレード根元部(2)と前記ロータブレード先端部(3)との間に配置された少なくとも1つの渦発生器(9)と、
を備え、
少なくとも1つの渦発生器(9)は、長さ(L)および高さ(H)を有するスワール要素(10,11)を含み、これらは、ロータブレードの長手方向に隣り合って配置され、それぞれの場合において、前記ロータブレード(1)の主流方向(SR)に対してある角度で配向され、ロータブレードの長手方向において、前記スワール要素(10,11)は、互いに横方向の間隔(D,D)を有し、
前記渦発生器(9)は、前記スワール要素(10,11)が前記ロータブレード(1)の主流方向(SR)に対してある角度で配向され、それぞれが、実質的に互いに対称な向きになるように対で配置され、横方向の間隔(D,D )は、実質的に同じ角度で隣り合って配置された前記スワール要素(10,11)の間で決定される、少なくとも1つのベースプレート(13)を含み、
前記スワール要素(10,11)の形状は、前記スワール要素(10,11)の配置と前記ロータブレード根元部(2)との間のそれぞれの距離(R)に応じて変化するとともに、前記スワール要素(10,11)の形状の変化は、前記ロータブレード(1)の主流方向(SR)に対する角度に対する横方向の間隔(D,D )の比率(V)に起因し、これは、距離(R)の増加とともに距離(R)の関数として増加する
ロータブレード(1)。
【請求項2】
前記スワール要素(10,11)の形状の変化は、長さ(L)に対する横方向の間隔(D,D)の比(V)に起因し、これは、距離(R)の関数として決定される、
請求項1に記載のロータブレード(1)。
【請求項3】
前記スワール要素(10,11)の形状の変化は、高さ(H)に対する横方向の間隔(D,D)の比(V)に起因し、これは、距離(R)の関数として決定される、
請求項1または2に記載のロータブレード(1)。
【請求項4】
長さ(L)に対する横方向の間隔(D,D)の比率、および/または高さ(H)に対する横方向の間隔(D,D)の比率は、距離(R)の増加とともに増加する、
請求項2または3に記載のロータブレード(1)。
【請求項5】
前記スワール要素(10,11)の長さ(L)および/または高さ(H)および/または取り付け角度は、実質的に一定である、
請求項に記載のロータブレード(1)。
【請求項6】
前記スワール要素(10,11)は、実質的に三角形またはフィン形状のプロファイルを有する、
請求項1からのいずれか1つに記載のロータブレード(1)。
【請求項7】
前記スワール要素(10,11)の形状の変化は、前記ロータブレード(1)の表面から離れた実質的に同じ方向に向けられた2つの前記スワール要素(10,11)の先端同士の横方向の間隔(D,D)の比率(V)に起因し、これは距離(R)の関数として決定される、
請求項1からのいずれか1つに記載のロータブレード(1)
【請求項8】
ロータを備えた風力エネルギー設備であって、
前記ロータは、請求項1からのいずれか1つに記載の少なくとも1つのロータブレード(1)を有する、
風力エネルギー設備。
【請求項9】
風力タービンを最適化するための方法であって、前記風力タービンは風力タービンのための吸引側および圧力側を備えたロータブレード(1)を有し、前記ロータブレードは、
-前記ロータブレード(1)をロータハブに接続するためのハブ領域(I)のロータブレード根元部(2)と、
-前記ロータブレード根元部(2)とは反対側に配置された先端領域(II)のロータブレード先端部(3)と、
-前記ロータブレード根元部(2)と前記ロータブレード先端部(3)との間に配置された少なくとも1つの渦発生器(9)と、
を備え、
少なくとも1つの前記渦発生器(9)は、前記ロータブレードの長手方向に互いに隣接して配置され、それぞれ前記ロータブレード(1)の主流方向(SR)に対してある角度をもって配向された、長さ(L)および高さ(H)を有するスワール要素(10,11)を含み、
前記スワール要素(10,11)は互いに横方向の間隔(D,D)を有し、
前記渦発生器(9)は、前記スワール要素(10,11)が前記ロータブレード(1)の主流方向(SR)に対してある角度で配向され、それぞれが、実質的に互いに対称な向きになるように対で配置され、横方向の間隔(D,D )は、実質的に同じ角度で隣り合って配置された前記スワール要素(10,11)の間で決定される、少なくとも1つのベースプレート(13)を含み、
前記スワール要素(10,11)の形状は、前記スワール要素(10,11)の配置から前記ロータブレード根元部(2)までのそれぞれの距離(R)に応じて変化するとともに、前記スワール要素(10,11)の形状の変化は、前記ロータブレード(1)の主流方向(SR)に対する角度に対する横方向の間隔(D,D )の比率(V)に起因し、これは、距離(R)の増加とともに距離(R)の関数として増加する
方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンのロータブレードに関する。本発明はまた、ロータブレード用の渦発生器、風力タービン、および風力タービンを最適化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンのロータ用のロータブレードは一般的に知られている。このようなロータブレードは、特別な空力要件を可能にするプロファイル(断面プロファイル)を備えている。
ロータブレードの空力特性に影響を与えるために、ロータブレードの断面プロファイルに、表面に垂直に延びる複数のスワール要素を含む渦発生器を提供することが知られている。渦発生器は、流れの分離に対する抵抗を増加させるように、ロータブレードの表面上に乱流の局所領域を生成するのに役立つ。この目的のために、渦発生器-壁に近いロータブレード上で流れを旋回させ、その結果、壁の近くと壁から離れた流れの層の間の運動量の交換が大幅に増加し、壁の近くの境界層の流速が増加する。壁の近くで速度が増加するため、流れはロータブレードの表面でのより長い距離にわたる圧力の上昇に打ち勝つことができる。
【0003】
欧州特許出願第3 309 388号明細書は、冒頭で述べたタイプのロータブレードと風力タービンを開示している。欧州特許出願第3 309 388号明細書は、ロータブレードをロータハブに取り付けるためのハブ領域のロータブレード根元部と、先端領域のロータブレード根元部とは反対側を向いて配置されているロータブレード先端部とを有する風力タービン用の、吸引側および圧力側を持つロータブレードを記載している。ロータブレードは、複数の構造的に同一の渦発生器がロータブレードの長手方向に断面的に隣り合って配置されている断面プロファイルを有する。渦発生器は、長さと高さのあるスワール要素で構成されており、ペアで並べて配置されている。スワール要素は、いずれの場合も、ロータブレードの主流方向に対してある角度で配向されており、同じ角度で配置されたスワール要素は、互いに一定の横方向の間隔を有する。
【0004】
渦発生器およびスワール要素を備えた風力タービン用のロータブレードは、米国特許出願公開第2014/0328692号明細書、米国特許出願公開第2014/0328693号明細書、米国特許第9,869,297号明細書、および国際公開第2010/033018号からも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願第3 309 388号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0328692号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0328693号明細書
【文献】米国特許第9,869,297号明細書
【文献】国際公開第2010/033018号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
渦発生器を備えたそのようなブレードセクションでは、ロータブレードは通常、渦発生器が不要なブレードセクションよりも、後縁で初めて流れの分離が発生する迎え角の限界が大幅に大きくなる。渦発生器は、その作用の結果として、必然的にロータブレードのプロファイル表面でより大きな皮膚摩擦抗力を引き起こす、つまり、断面プロファイルの抗力係数が大幅に増加し、その結果、揚抗比(lift-to-drag ratios)、比率、揚力係数と抗力係数の比率は増加し、場合によっては減少する。抗力係数の増加または揚抗比の減少は、設置の歩留まりに悪影響を及ぼす。この点で、揚抗比または抗力係数の出力への影響は、ロータブレード根元部からロータブレード先端部に向かって増加し続けている。ロータブレード上の位置がロータブレード根元部からロータ先端の方向に離れるほど、風力タービンの出力と歩留まりにとって、より重要な小さな抗力係数または大きな揚抗比が重要になる。さらに、渦発生器は、騒音放出の増加に寄与する可能性がある。
【0007】
本発明は、前述の問題を排除または少なくとも低減するという目的に基づいており、特に、ハブ領域における迎え角の大きな変動に対する補償および先端領域の大きな揚抗比によって特徴付けられるロータブレードを特定することを目的としている。
ロータブレードに関しては、この目的は、請求項1に記載のロータブレードによって達成される。本発明はまた、請求項10に記載の渦発生器、請求項11に記載の風力タービン、および請求項12に記載の風力タービンを最適化するための方法にも通じる。
【0008】
請求項1によれば、風力タービン用の吸引側および圧力側を備えたロータブレードが提供され、ロータブレードは、ロータブレードをロータハブに接続するためのハブ領域のロータブレード根元部と、ロータブレード根元部とは反対側に配置された先端領域(II)のロータブレード先端部と、ロータブレード根元部(2)とロータブレード先端部(3)との間に配置された少なくとも1つの渦発生器と、を備え、少なくとも1つの渦発生器(9)は、長さおよび高さを有するスワール要素を含み、これらは、ロータブレードの長手方向において隣り合って配置され、それぞれの場合において、ロータブレードの主流方向に対してある角度で配向されている。ロータブレードの長手方向において、スワール要素は、互いに横方向の間隔を有し、スワール要素の形状は、スワール要素の配置とロータブレード根元部との間のそれぞれの距離に応じて変化する。
【0009】
本発明は、風力タービンが定常状態の動作点で動作することはできず、むしろ異なる影響を受け、その結果、空力動作点が連続的に変化するという考察に基づいている。ロータブレードの断面プロファイルに対する迎え角は、風力タービンの運転中に恒久的に変化する。特に、入射流乱流などのパラメータは、下部境界層の水平および垂直せん断と空気密度は、迎え角分布に影響を与える。ロータブレードを超えて、この場合、これらのパラメータへの変更の影響は不均一である。例えば、小規模な入射流の乱流と空気密度の変化により、高速回転速度が低下し、先端領域よりもハブ領域では迎え角が大きく変化する。
【0010】
順に、パッシブ流量測定器を使用する場合には、渦発生器の配置によって構成されるように、従来技術と比較して流れに影響を与える測定の複雑さを増すために、スワール要素の配置とロータブレード根元部との間のそれぞれの距離に応じてスワール要素の形状が変化する。ロータブレード根元部までの間隔に応じたスワール要素の形状の適応は、ハブ領域と先端領域との間のロータセクションのそれぞれの場合に優勢なロータブレードでの境界条件への有利な適応を可能にする。スワール要素の形状を距離に応じて変更することで、さまざまな揚力係数と揚抗比を実現することができる。これらのプロファイル係数特性は、特に、渦発生器のスワール要素の寸法を変更することで達成され、ロータブレードの要件を正確に満たす。
【0011】
好ましくは、スワール要素は、対で、ロータブレードの主流方向に対してある角度で配向され、ロータブレードは、それぞれ、実質的に反対方向に形成され、横方向の間隔は、実質的に同じ角度で隣り合って配置されたスワール要素間で決定される。スワール要素のペアワイズ配置は、特に、反対方向に回転する渦が互いに隣接して生成されることにより、特に効果的な渦の生成を確実にする。もちろん、対になって形成されていない2つの個別に設計されたスワール要素間の横方向の間隔を使用することも可能である。
【0012】
好ましくは、スワール要素の形状の変化は、スワール要素の長さに対する横方向の間隔の比率に起因する可能性があり、その比率は、距離の関数として決定される。この場合、長さの減少または同じ向きのスワール要素間の間隔の増加による、ロータの根元からの距離の増加に伴う比率の増加は、揚抗比を改善させ、最大到達可能迎え角の減少をもたらす。スワール要素の長さに対する横方向の間隔の比率が小さい場合、ハブ領域で大きな最大迎え角が許容される。
【0013】
さらに、スワール要素の形状の変化は、高さに対する横方向の間隔の比率に起因する可能性があり、この比率は、同様に距離の関数として決定される。これ応じて、ロータの根元からの距離に依存する方法での比率の変更、この場合はスワール要素の高さの変更または同じ向きのスワール要素間の間隔の変更により、揚抗比の改善を支持する達成可能な最大迎え角の適応が可能になる。
【0014】
ハブ領域の長さに対する横方向の間隔の比率が比較的小さいため、風力タービンの運転中の迎え角の大きな変動を、流れの分離を減らしてカバーすることができる。そこでは、不利な揚抗比が設備の歩留まりにとって二次的に重要である。さらに外側では、そこでは、操作によって引き起こされる迎え角の変動も減少するが、これはその後、大きな揚抗比が歩留まりに及ぼす影響が連続的に増加するため、長さまたは高さに対する横方向の間隔の比率の増加に伴って発生する最大許容迎え角の低下が許容される。
【0015】
好ましくは、スワール要素の形状の変化は、ロータブレードの主流方向に対する角度に対する横方向の間隔の比率に起因し、この比率は、距離の関数として決定される。
形状の変化の異なる形態は、個別に、独立して、または互いに組み合わせて提供することができる。
特に、スワール要素の長さに対する横方向の間隔の比率および/またはスワール要素の高さに対する横方向の間隔の比率は、距離の増加とともに増加してもよいし、および/またはスワール要素の設置角度に対する横方向の間隔の比率は、距離の増加とともに増加してもよい。設置角度は、特に主流方向に対するスワール要素の角度として理解されるべきである。
【0016】
好ましくは、スワール要素は、実質的に三角形またはフィンのようなプロファイルを有していてもよい。
好ましくは、スワール要素の長さおよび/または高さおよび/または取り付け角度は、実質的に一定であってもよい。次に、幾何学的変化は、好ましくは、隣接するスワール要素間の横方向間隔の変化を介して実現されてもよい。その結果、ただ1つのタイプのスワール要素を使用することが可能であり、本発明による利点はまだ達成されていない。さらに、スワール要素を混合することによる建設現場でのエラーおよび誤った取り付けの事例の低減、および製造中の利点が達成される。これは、例えば、射出成形プロセスを使用して、スワール要素を製造するために1つの工具を提供するだけでよいからである。特に好ましくは、前述のように、スワール要素は、共通のベースとペアで、例えば、射出成形部品として一体で提供される。
【0017】
特に好ましくは、特にペアのスワール要素は同一である、すなわち、ロータブレードの長さにわたって同一の長さ、高さ、および取り付け角度を有する。複数のタイプのスワール要素が存在することも考えられ、スワール要素間の間隔は、ロータブレード根元部からの距離が増加するにつれて増加することが好ましい。
好ましくは、スワール要素の形状の変化は、スワール要素の、ロータブレードの表面からの距離における先端の内角に対する横方向の間隔の比率に起因する可能性があり、この比率は、距離の関数として決定される。先端の内角により、どれだけの高さであるか、つまり、ロータブレードの表面に垂直な範囲でどれだけ大きいか、を説明することができ、スワール要素は、つまり、特に、実質的に三角形またはフィン形状のプロファイルの場合には、ロータブレードの表面の平面内において、その長さに関連する。
さらに、少なくとも1つの渦発生器は、スワール要素が対に配置されている少なくとも1つのベースプレートを含んでいてもよい。その結果、異なるロータセクションに対して、そのスワール要素が、個々のロータセクションに適合された、長さに対する横方向の間隔および/または高さに対する横方向の間隔の比を有する渦発生器を生成することが可能である。
【0018】
本発明によれば、風力タービンのロータブレード用の渦発生器も提案されており、渦発生器は、前縁および後縁を備えたベースプレートを有し、前縁は、ロータブレード上の意図された方向において前縁の方向であり、後縁は、ロータブレード上で意図された方向における後縁の方向を向いており、このようにして、ベースプレートの方向は、ロータブレード根元部からロータブレード先端部に固定され、複数のスワール要素がベースプレート上に配置されている。ベースプレート上のスワール要素の形状は、スワール要素の配置とロータブレード根元部との間のそれぞれの距離に応じて変化する。
【0019】
スワール要素は、好ましくは対に配置され、特に好ましくは、複数の対がベースプレート上に配置される。
ベースプレートまたはその前縁および後縁の方向は、必ずしもロータブレードの長手方向に完全に平行である必要はない。例えば、ベースプレートはまた、ロータブレードの後縁に平行であるように、または特定の角度、例えば、長手方向および/または後縁に対して最大20°、好ましくは10°未満で傾斜するように構成されてもよい。
【0020】
本発明によれば、上記の実施形態のうちの少なくとも1つによる1つまたは複数のロータブレードおよび/または本発明による少なくとも1つの渦発生器を備えた風力タービンも提案される。特に提案されるのは、3つのロータブレードを有する風力タービンであって、その各ロータブレードは、上記の実施形態のうちの1つに従って設計されている。
最後に、本発明によれば、風力タービンを最適化するための方法が提案され、ここで、風力タービンは、風力タービン用に、吸引側および圧力側を備えたロータブレードを有し、ロータブレードは、ロータブレードをロータハブに取り付けるためのハブ領域のロータブレード根元部と、ロータブレード根元部とは反対側に配置された先端領域のロータブレード先端部と、ロータブレード根元部とロータブレード先端部との間に配置された少なくとも1つの渦発生器とを備えている。少なくとも1つの渦発生器は、ロータブレードの長手方向に隣り合って配置され、それぞれの場合において、ロータブレードの主流方向に対してある角度で配向された、長さおよび高さを有するスワール要素を含む。ここで、スワール要素は、互いに横方向の間隔を有する。この方法は、スワール要素の形状が、スワール要素の配置とロータブレード根元部との間のそれぞれの距離に応じて変化する。
【0021】
さらなる例および利点は、添付の図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】風力タービンの概略図。
図2】ロータブレードの概略図。
図3】渦発生器の概略図。
図4】渦発生器を備えたプロファイルの迎え角に対する揚力係数の2つの概略曲線を示す図。
図5】渦発生器を備えたプロファイルの迎え角に対する揚力比の2つの概略曲線を示す図。
図6】ロータブレードの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、基礎103上に建てられたタワー102を有する風力タービン100を示している。基礎103の反対側に位置する上端において、ロータハブ106およびそれに取り付けられたロータブレード1を有するロータ105を備えたナセル104(機械ハウジング)が配置され、これらのロータブレードは、さらなる図を参照してより詳細に説明される。ロータ105は、機械的仕事を電気エネルギーに変換する目的で、ナセル104の内部で発電機に結合されている。ナセル104は、タワー102上に回転可能に取り付けられ、その基礎103は、必要な安定性を提供する。
【0024】
図2は、一実施形態のロータブレード1の概略図を示している。ロータブレード1は、一端にロータブレード根元部2を有し、それとは反対側にロータブレード先端部3を有する。ロータブレード根元部2において、または一般に、ロータブレード根元部2に近い領域において、ロータブレード1は、大きなプロファイル深さを有する。対照的に、ロータブレード先端部3では、プロファイルの深さは非常に小さい。プロファイルルートとも呼ばれるロータブレード根元部2から進むと、プロファイルの深さは、ブレード内部領域で増加した後、この例では中央領域4まで大幅に減少する。分割点(ここには示されていない)は、中間領域4に提供されてもよい。中間領域4からロータブレード先端部3まで、プロファイル深さはほぼ一定であるか、またはプロファイル深さの減少が大幅に減少する。ロータブレード1は、例えば、実質的に凸状の負圧側7と、例えば、実質的に凹状の圧力側と、前縁5および後縁6を有する。圧力側および/または負圧側はまた、真っ直ぐであってもよく、別の形であってもよい。ロータブレード1の全長は8で示されている。
【0025】
図2の図はさらに、ロータブレード1の負圧側7に配置された渦発生器9を示している。渦発生器9は、一対で隣り合って配置されたスワール要素10,11を備えている。それぞれのスワール要素10,11は、前縁5と後縁6との間に断面的に延在し、それぞれの場合、スワール要素10,11の対が、前縁5から後縁6まで広がるプロファイルを有するように、流れがその周りを通過するロータブレード1の主流方向SRに対してある角度で配向される。
【0026】
この例では、スワール要素10,11は、ロータブレード1の表面に対して垂直に延在し、スワール要素10,11とロータブレード1の表面との間の直角以外の角度であってもよい。実施例の渦発生器9は、負圧側7に配置されて示されているが、圧力側の渦発生器9は、代替的または追加的であってもよい。
スワール要素10,11は、ロータハブまたはロータブレード根元部2から距離Rに配置されている。ロータブレード根元部2から進むと、ロータブレード1のハブ領域Iは、実質的に中央領域4まで延びる。ロータブレード1の先端領域IIは、実質的に中央領域4からロータブレード先端部3まで延びる。
【0027】
図3は、斜視図における渦発生器9の実施形態の概略図を示している。渦発生器9は、ロータブレード1の表面への渦発生器9の取り付けに役立つ少なくとも1つのベースプレート13を有していてもよい。ベースプレート13は、前縁14と後縁15とを有する。前縁14は、ロータブレード1に取り付けられた位置で、前縁5に面し、後縁15は、後縁6に面する。この例では、実質的に三角形またはフィン状の輪郭を有するそれぞれのスワール要素10,11が延伸する。
【0028】
スワール要素10,11は、それぞれ高さHを有し、高さプロファイルはベースプレート13の後縁15の方向に最大値まで増加し、前縁14と後縁15との間、またはロータブレード平面内にあるそれぞれのスワール要素10,11の範囲を示す長さLを有する。
それぞれの場合にペアで隣り合って配置されたスワール要素10,11は、主流方向SRに対してある角度で傾斜して配置されており、前縁14から進んで、隣接するスワール要素10,11の拡大プロファイルが後縁15まで確立されている。隣り合って配置された2つのスワール要素10,11は、主流方向SRに対して実質的に対称な向きを有し、すなわち、対に配置されたスワール要素10,11のうちの1つのスワール要素10は、
ロータブレードの長手方向の外側、および別のスワール要素11は、ロータブレードの長手方向の内側をそれぞれ向いている。実質的に同じ方向に向けられた2つのスワール要素10または11の2つの先端間の横方向の間隔は、参照記号DまたはDによって示される。
【0029】
渦発生器は、一般に、スワール要素は主流方向に対してある角度で傾斜して配置されているため、同じ横方向の間隔で配置された渦発生器のスワール要素が境界層の流れの渦に影響を与えるという点で、流れに影響を与えるための受動的な尺度を形成する。渦発生器は、壁の近くにあるロータブレード上の流れを旋回させ、その結果、壁の近くと壁から離れた流れの層の間の運動量の交換が大幅に増加し、壁の近くの境界層の流速が増加する。壁の近くで流速が増加するため、流れは、ロータブレードの表面でのより長い距離にわたる圧力の増加を克服することができる。これにより、流れの分離に対する抵抗が増加する。
【0030】
風力タービンは、定常状態の動作点では動作せず、常にさまざまな影響を受け、その結果、ロータブレード1の空気力学動作点が連続的に変化する。ブレード半径にわたるロータブレード1の迎え角αは、設備の動作中に連続的に変化する。特に、入射流の乱流、下部境界層の水平および垂直方向のせん断、空気密度などのパラメータは、最も重要なパラメータだけに言及すると、ロータブレード1の迎え角分布に影響を与える。この点で、小規模な入射流の乱流または空気密度の変化は、高速回転速度の低下をもたらし、それは、内部領域、すなわち、例えば、ロータブレード1の外側領域よりもロータブレード1のハブ領域Iから中間ドル領域4まで、すなわち、ロータブレード1の中間領域4から先端領域IIまでで、より大きく変化する迎え角αにつながる。よって、ロータブレード1の外側領域よりもロータブレード1の内側領域での動作中の迎え角αに対して、より大きな予備が提供される。したがって、渦発生器9は、特に、ロータブレードの内側領域で使用される。渦発生器9は、流れの分離に対する抵抗の増加を通じて、揚力と迎え角との間に比例関係がある、いわゆる線形分岐と呼ばれるロータブレード1のプロファイルの使用領域を長くする。
【0031】
さらに、ロータブレード根元部2からロータブレード1のロータブレード先端3まで、揚抗比εまたは抗力係数Cwの力に対する影響はますます増大している。ロータブレード根元部2からの距離が大きくなるにつれて、設備の出力と歩留まりが小さな抗力係数Cwまたは大きな揚抗比εを達成することが不可欠である。
風力タービンの信頼性の高い操作のために、補償は、ロータブレード1の内部領域における迎え角の大きな変動に対して提供されなければならず、これは、その上に配置された渦発生器9を有するロータブレード1によって保証される。渦発生器9を使用する場合の揚抗比εの減少の不利な点は、揚抗比εが設置歩留まりに及ぼす影響はロータブレード1の内側領域では無視できるため、設置歩留まりに対する揚抗比εの影響が無視できるので、ロータブレード1の内部領域で許容できる。ロータブレード1の位置が外側に行くほど、カバーしなければならない迎え角範囲が小さくなり、風力タービンの降伏に対する揚力対抗力比εの影響が大きくなる。これらの状況を考慮して、スワール要素10,11の寸法決定は、スワール要素10,11の配置とロータブレード根元部2との間のそれぞれの距離Rに依存する方法で実現される。これは、ロータハブまたはロータブレード根元部2からの距離Rが増加するにつれて、スワール要素10,11の幾何学的寸法高さH、長さL、および/または横方向間隔Dが変化することを意味する。
【0032】
ここで、横方向間隔D対高さHまたは横方向間隔D対長さLの比Vは変化し、横方向間隔D対高さHまたは横方向間隔D対長さLの比Vは、距離Rの増加とともに増加する。ロータハブ領域Iでは、高さHに対する横方向間隔Dまたは長さLに対する横方向間隔Dの小さな比率Vが選択され、その結果、流れの分離なしに風力タービンの運転中の迎え角の大きな変動をカバーすることが可能である。対照的に、距離Rが大きくなると、高さHに対する横方向の間隔Dまたは長さLに対する横方向の間隔Dの比率Vの増加に伴って発生する最大許容迎え角の減少は許容される。これは、ロータハブからの距離Rが増加すると、操作によって引き起こされる迎え角の変動も減少するためであり、これは、大きな揚抗比が歩留まりに及ぼす影響が連続的に増加することで対応される。
【0033】
代替の実施形態では、スワール要素10,11が主流方向SRに対して配置される角度γは、同様にまたは代替的に、ロータハブまたはロータブレード根元部2からの距離Rの増加に伴って変化する。主流方向SRに対する角度は、距離Rの増加とともに小さくなる。
図4および図5は、それぞれ、いずれの場合も、横方向の間隔Dと高さHの2つの異なる比率Vについて、渦発生器9を備えたロータブレード1の迎え角αに対する揚力係数Cと揚力比εの2つの曲線16,17,18,19を示している。曲線16および18は、高さHに対する横方向間隔Dの第1の比率Vについて決定され、一方、曲線17および19は、高さHに対する横方向間隔Dの第2の比率Vについて決定され、横方向の間隔Dは横方向の間隔Dよりも大きい。
【0034】
図4で比較した曲線16と17から、最大揚力係数Cは、高さHに対する横方向の間隔Dの比率Vが増加するにつれて減少することが分かる。対照的に、図5で比較した曲線18と19は、広い迎え角範囲で達成可能な最大揚力比εが増加することを示している。その結果、ロータブレード1のハブ領域Iにおけるスワール要素10,11の横方向間隔D対高さHまたはHまたは横方向間隔D対長さLの比Vが小さく、大きい最大迎え角αになるように選択されると、ロータブレード1のこのプロファイルセクションでは許容されるが、これは揚抗比εの低下に関連し、横方向の間隔Dと高さHまたはHの比、または横方向の間隔Dと長さLの比がブレード先端3に向かって増加すると、最大到達迎え角αが減少し、揚抗比εが改善される。
【0035】
図6は、スワール要素10,11の対の間の間隔が、ロータブレード根元部2からの距離の増加とともに増加するロータブレード1を概略的に示している。スワール要素10,11は、実質的に同一、すなわち、角度があり、ロータブレードの長手方向の全距離にわたって同じ高さHと長さLを持つように取り付けられている。
特にペアで提供される1つのタイプのスワール要素10,11のみを使用することにより、スワール要素10,11を混同して誤って取り付けるリスクが低減されるため、例えば、建設現場での取り付けを単純化することができる。また、例えば、射出成形技術を用いた製造の場合、必要な製造工具は1つだけであるため、製造技術の面での利点がそれに関連している。さらに、図6の実施形態は、それに関連する利点を達成しながら、記載された他のすべての幾何学的変形と組み合わせることができる。
【0036】
風力タービンに衝突する突風、すなわち、入射流の速度の変化は、これが作動している間、ロータブレード1での有効迎え角の変化を引き起こす。有効迎え角は、円周速度と流入風速のベクトル加算から生じる。したがって、円周速度と風速の比率によって、入射流の速度の変化が有効迎え角の大きな変化と小さな変化のどちらにつながるかが決まる。
ロータブレード根元部2では、円周速度に対する入射流速度が速いため、突風により有効迎え角が大きく変化する。ロータ先端3付近の外側のブレードでは、円周速度が数桁高く、それに関連する入射流速度がそれに応じて大幅に低い場合、同じ突風によって有効迎え角がわずかに変化するだけである。
【0037】
このため、可能な限り最大の迎え角の予備力をもたらすように、内側ブレード上に渦発生器9を構成する必要がある。これはまた、可能な限り分離のない所望のプロファイル極性によって表現することができ、渦発生器9の間の間隔が比較的小さい場合である。結果として生じる追加の抗力およびそれから生じる揚抗性能の低下は、低い円周速度での風力タービンの出力にとってほとんど重要ではない。
【0038】
ロータ先端3付近の外側ブレードでは、記載されている理由により、追加の迎え角予備力を減らす必要がある。また、高い円周速度が発生するロータブレード1の過度に大きな抗力は、ロータブレード根元部2よりもロータ出力に著しく大きな悪影響を与えるであろう。したがって、この地域では、渦発生器9の間の間隔を大きくすることが好ましく、その結果、抗力が小さいため、揚力対抗力の性能が向上し、失速点までの迎え角の広がりがわずかに減少する。
【0039】
代替的または追加的に、外側に向かってより小さな渦発生器9を使用することもまた好都合であって、特に、渦発生器9が外側に向かってサイズが小さくなったとしても、外側に向かって間隔を拡大することと組み合わせることが好ましい。特に好ましくは、渦発生器9は、3から5つの利用可能な異なるサイズの渦発生器9から選択されるので、例えば、保管および取り付けの場合の複雑さは、管理可能なままである。
【0040】
発生する騒音については、風にさらされる渦発生器9の数が多いほど、生成されるノイズの量が多いほど、さらに、風速が高いほど、個々の渦発生器9によって生成される騒音の量が大きくなる場合がある。したがって、音響の観点から、ロータブレード根元部2と比較して、外側に向かう渦発生器9の密度も低いことが好ましい。
ロータブレード1のブレード設計では、目的はまた、半径全体の誘導係数に対して1/3の電力最適値を維持することでもある。遅い速度のため、これは、プロファイルの深さを増やすことによってのみ、ロータブレード根元部2の領域で可能になる。これは、輸送上の理由から限られた範囲でのみ可能であるか、揚力係数を増やすことによってのみ可能である。したがって、ロータブレード根元部2で最大深度が制限された出力最適ロータは、常に、ルート領域で可能な限り最大の揚力係数が達成されるように設計する必要がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6