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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/00 20060101AFI20221202BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A62C3/00 J
A62C35/02 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021019657
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2019185825の分割
【原出願日】2016-03-24
(65)【公開番号】P2021073020
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】溝口 浩一郎
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108185(JP,A)
【文献】中国実用新案第201441767(CN,U)
【文献】特表2007-510485(JP,A)
【文献】特開平11-173648(JP,A)
【文献】特開平07-255869(JP,A)
【文献】特開平06-137626(JP,A)
【文献】特開2010-042141(JP,A)
【文献】特開平11-267240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00-33/00
A62C 2/00, 3/00,27/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の防護区画から消火剤ガスを排出するための第一ダクトおよび第二ダクトと、
前記第一ダクトおよび前記第二ダクトとは別に前記防護区画の上面に設けられ、火災時に発生する煙を排出する排煙ダクトと、
前記防護区画外に設けられる複数のガス貯蔵容器と、
複数の前記ガス貯蔵容器に接続される集合管と、
前記集合管に接続され、複数の前記ガス貯蔵容器から前記防護区画へ消火剤ガスを送るための経路である配管と、
複数の前記ガス貯蔵容器に設けられた減圧弁と、
前記減圧弁に接続されて複数の前記ガス貯蔵容器から前記集合管への消火剤ガスの供給を制御する制御部とを備え、
前記防護区画には電子機器が設けられており、消火のために水を用いることができず、
消火剤ガスを用いて消火を行い、
前記防護区画は第一避圧口および前記第一避圧口とは異なる位置に設けられた第二避圧口とを有し、前記第一ダクトは前記第一避圧口に接続され、前記第二ダクトは前記第二避圧口に接続され、前記第一ダクトおよび前記第二ダクトの前記第一避圧口および前記第二避圧口側の端部には、ダンパが設けられており、前記ダンパが開閉することで前記第一ダクトおよび前記第二ダクトと前記防護区画とが連通および遮断され、前記第二ダクトが設けられる前記防護区画の面に消火剤ガスを前記防護区画に放出するための噴射ノズルが設けられ、
前記建物の側面に前記第一ダクトの出口が設けられ、前記建物の上面に前記第二ダクトの出口が設けられる、ガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガス系消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス系消火設備は、たとえば特開2014-108185号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-108185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス系消火設備では防護区画から消火剤ガスを十分に排出できないという問題があった。そこで、この発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、防護区画から消火剤ガスを排出しやすいガス系消火設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従ったガス系消火設備は、建物内の防護区画から消火剤ガスを排出するための第一ダクトおよび第二ダクトを備え、第一ダクトは建物側面から排気し、第二ダクトは建物上面から排気する。
【0006】
このように構成されたガス系消火設備では、第一ダクトは建物側面から排気し、第二ダクトは建物上面から排気する。そのため建物上面側が強風環境下でも建物側面の第一ダクトから消火剤ガスを排気でき、建物側面側が強風環境下でも建物上面の第二ダクトから消火剤ガスを排気できる。その結果、防護区画から消火剤ガスを排出しやすい。なお、建物側面とは建物の下部から上部に延びる面をいう。建物の上面とは、上記の側面の上側に設けられる面をいう。
【0007】
好ましくは、ガス系消火設備は、防護区画から煙を排出する排煙ダクトをさらに備え、第二ダクトは排煙ダクトに接続されて排煙ダクトを経由して建物上面から排気する。この場合、第二ダクトの長さを短くすることができる。
【0008】
好ましくは、第二ダクトが排煙ダクトに接続される部分よりも排煙ダクトの上流側に設けられた送風機をさらに備える。この場合、煙を排出する工程では送風機を駆動させる。送風機は第二ダクトが排煙ダクトに接続される部分よりも排煙ダクトの上流側に設けられるため、送風機が故障したとしても第二ダクトから排煙ダクトを経由して消火剤ガスを排出することができる。
【0009】
好ましくは、ガス系消火設備は、第二ダクトが排煙ダクトに接続される部分よりも排煙ダクトの下流側に設けられた送風機と、送風機をバイパスするように排煙ダクトに設けられたバイパス路をさらに備える。この場合、バイパス路が設けられるため、送風機が故障したとしても第二ダクトから排煙ダクトを経由して消火剤ガスを排出することができる。
【0010】
好ましくは、消火剤ガスが防護区画に導入されると送風機を停止される制御部をさらに備える。
【0011】
好ましくは、ガス系消火設備は、建物の上面に設けられて第二ダクトの出口を覆う防風装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明に従えば、防護区画から消火剤ガスを確実に排気することが可能なガス系消火設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に従ったガス系消火設備の模式図である。
図2図1中のII-II線に沿った断面図である。
図3】建物に設けられた実施の形態1に従ったガス系消火設備の模式図である。
図4】建物上面の一例を示す図である。
図5】建物上面の一例を示す図である。
図6】建物に設けられた実施の形態2に従ったガス系消火設備の模式図である。
図7】建物に設けられた実施の形態3に従ったガス系消火設備の模式図である。
図8】建物に設けられた実施の形態4に従ったガス系消火設備の模式図である。
図9】建物に設けられた実施の形態5に従ったガス系消火設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰り返さない。また、各実施の形態を組み合わせることも可能である。
【0015】
(実施の形態1)
本発明者は、従来の問題点、すなわち、ガス系消火設備において消火剤ガスの排出において排出が困難となるという問題について分析した。その結果、建物の外部が強風雰囲気であれば消火剤ガスを排出することが困難になること、建物の上面と側面の両方において強風となることは稀であることを見出した。
【0016】
そのため、建物の側面から消火剤ガスを排気する第一ダクトと、建物の上面から消火剤ガスを排気する第二ダクトとを設けることで、上記問題を解決できることを見出した。
【0017】
図1は、実施の形態1に従ったガス系消火設備の模式図である。図2は、図1中のII-II線に沿った断面図である。主として図1および図2で示すように、ガス系消火設備90は、防護区画1内へ消火剤ガスを送る配管3と、防護区画1に接続されて消火剤ガスを排出するための第一ダクト2および第二ダクト102とを備える。
【0018】
防護区画1は、ビルなどの建物200に設けられる部屋である。電子機器が設けられている部屋では、消火のために水を用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行う。噴射ノズル4から消火剤ガスを防護区画1に放出して、不活性の消火剤ガスを防護区画1に充満させて酸素濃度を減少させることで消火することが可能である。消火剤ガスとしては、窒素、アルゴンなどの不活性ガスおよびハロゲン系のガスが用いられる。
【0019】
第一ダクト2および第二ダクト102は、防護区画1の消火剤ガスを防護区画1から放出するためのガス経路である。第一ダクト2および第二ダクト102は、中空であり角型および丸型のいずれであってもよい。防護区画1の避圧口1a,101aで第一ダクト2および第二ダクト102の端部には、ダンパ12,112が設けられており、ダンパ12,112が開閉することで第一ダクト2および第二ダクト102と防護区画1とが連通および遮断される。ダンパ12,112は実線で記載されている位置から点線で記載されて
いる位置まで回動可能である。この実施の形態では防護区画1に2本のダクトのみが設けられているが、3本以上のダクトが設けられていてもよい。
【0020】
第一ダクト2は、入口(避圧口1a)から出口2aまで延びている。第二ダクト102は入口(避圧口101a)から出口102aまで延びている。
【0021】
配管3は、防護区画1外に配置されているガス貯蔵容器5から防護区画1へ消火剤ガスを送るための経路である。ガス貯蔵容器5には、減圧弁(圧力調整器)50が設けられており、減圧弁50を通過した消火剤ガスが配管3および噴射ノズル4を経由して防護区画1へ放出される。
【0022】
複数のガス貯蔵容器5に集合管17が接続されている。集合管17には、各々のガス貯蔵容器5から消火剤ガスが供給される。集合管17、減圧弁50またはガス貯蔵容器5のいずれかには、ガス貯蔵容器5から集合管17への消火剤ガスの供給を制御する制御部15が接続されている。この実施の形態では、複数のガス貯蔵容器5を用いているが、1つのみのガス貯蔵容器5を用いてもよい。この場合、集合管17は不要である。ガス貯蔵容器5に配管3が接続される。
【0023】
図3は、建物に設けられた実施の形態1に従ったガス系消火設備の模式図である。図3で示すように、建物200の側面201に第一ダクト2の出口2aが設けられる。建物200の上面202に第二ダクト102の出口102aが設けられる。
【0024】
建物200には、第一ダクト2および第二ダクト102とは別に排煙ダクト301が設けられている。排煙ダクト301は、建物200の側面201および上面202のいずれから煙を排出してもよい。排煙ダクト301は火災時に発生する煙を排出する。
【0025】
図4および図5は、建物上面の一例を示す図である。図4で示すように上面202が段差を有していてもよい。上面202は、第一面202aおよび第二面202bを有しており、第一面202aおよび第二面202bのいずれもが水平面である。第一面202aよりも低い部分に第二面202bが設けられている。第二面202bに出口が設けられる。第一面202aと第二面202bを比較すると、第二面202bは強風環境下にさらされにくい。その結果、第二面202bに出口を設けることが好ましい。
【0026】
図5で示すように、上面202が傾斜していてもよい。上面202が傾斜面であれば、上面202が水平面である場合(図3参照)と比較して、上面202において特定の方向からの風が弱まる。その結果、出口102aから消火剤ガスを排出しやすくなる。
【0027】
このように構成されたガス系消火設備90では、建物200の側面201に設けられた出口2aおよび上面202に設けられた出口102aから消火剤ガス(例えばN)を放出する。建物200が強風環境下におかれている場合であっても、側面201および上面202のいずれもが強風環境下にあることは少ない。その結果、強風環境にない出口から消火剤ガスを排出することができるので、防護区画1内の消火剤ガスを第一ダクト2および第二ダクト102のいずれかから消火剤ガスを排出することが可能である。
【0028】
(実施の形態2)
図6は、建物に設けられた実施の形態2に従ったガス系消火設備の模式図である。図6で示すように、実施の形態2に従ったガス系消火設備では、第二ダクト102が排煙ダクト301に接続されている点で、実施の形態1に従ったガス系消火設備90と異なる。
【0029】
なお、この実施の形態は排煙ダクト301の出口301aは建物200の上面202に
設けられているが、必ずしも上面202に設けられている必要はない。建物200側面201に出口301aが設けられていてもよい。
【0030】
排煙ダクト301内を矢印301bで示すように煙が流れる。第二ダクト102内を矢印102bで示すように消火剤ガスが流れる。ガス系消火設備90は、防護区画1から煙を排出する排煙ダクト301をさらに備え、第二ダクト102は排煙ダクト301に接続されて排煙ダクト301を経由して建物200の上面202から排気する。
【0031】
このように構成された実施の形態2に従ったガス系消火設備90では、建物200の上面202に排煙ダクト301の出口301aが設けられている場合には、実施の形態1と同様の効果がある。さらに、第二ダクト102が排煙ダクト301に接続されるため、実施の形態1と比較して、第二ダクト102の長さを短くすることができる。
【0032】
建物200の上面202に排煙ダクト301の出口が設けられていない場合であっても、実施の形態1と比較して、第二ダクト102の長さを短くすることができる。
【0033】
(実施の形態3)
図7は、建物に設けられた実施の形態3に従ったガス系消火設備の模式図である。図7で示すように、第二ダクト102の出口102aには防風装置250が設けられている。防風装置250は、筒状の側面252と、側面252との間に隙間253を隔てて配置される上面251とを有する。隙間253から矢印102bで示すように消火剤ガスが排出される。なお、第一ダクト2は必ずしも設けられなくてもよい。ガス系消火設備90は、建物200の上面202に設けられて第二ダクト102の出口102aを覆う防風装置250をさらに備える。
【0034】
このように構成された実施の形態3に従ったガス系消火設備では、出口102aが防風装置250で覆われているため、上面202が強風環境下であっても、出口102aが強風環境下にならないため、消火剤ガスを排出することが可能となる。なお、第一ダクト2が設けられていなくてもこの効果を奏することができる。
【0035】
防風装置250の形状は、図7で示すものに限られず、出口102aが強風の影響を受けることを防止できる形状であればよい。防風装置250は、出口102aを覆い、防風装置250を構成する部材に隙間253が設けられていればよい。
【0036】
(実施の形態4)
図8は、建物に設けられた実施の形態4に従ったガス系消火設備の模式図である。図8で示すように、実施の形態4に従ったガス系消火設備90では、排煙ダクト301に送風機310が設けられている。送風機310の下流側に合流点109が設けられている。合流点109では、排煙ダクト301に第二ダクト102が接続されている。送風機310が駆動することで送風機310を経由して矢印301bで示す方向に煙が排出される。
【0037】
送風機310は制御部15によって制御される。消火剤ガスが防護区画1に導入されたのちに送風機310を駆動させると、消火剤ガスが矢印301bで示すように排出される。これを防止するために、制御部15は防護区画1に消火剤ガスが導入されると送風機310の運転を停止する。その結果、消火剤ガスは防護区画1に滞留し、余剰の消火剤ガスが第一ダクト2および第二ダクト102から排出される。なお、必ずしも第一ダクト2は設けられていなくてもよい。ガス系消火設備90は、第二ダクト102が排煙ダクト301に接続される合流点109よりも排煙ダクト301の上流側に設けられた送風機310をさらに備える。
【0038】
この実施の形態4でも、実施の形態2と同様に第二ダクト102を短くすることが可能である。さらに、合流点109が送風機310の下流側に設けられているため、送風機310が停止した場合であっても、防護区画1内の消火剤ガスを第二ダクト102および排煙ダクト301を経由して排出することができる。
【0039】
(実施の形態5)
図9は、建物に設けられた実施の形態5に従ったガス系消火設備の模式図である。図9で示すように、実施の形態5に従ったガス系消火設備90では、排煙ダクト301に送風機310が設けられている。送風機310の上流側に合流点109が設けられている。合流点109では、排煙ダクト301に第二ダクト102が接続されている。送風機310と並列にバイパス路311が設けられている。送風機310が駆動することで送風機310を経由して矢印301bで示す方向に煙が排出される。
【0040】
送風機310は制御部15によって制御される。消火剤ガスが防護区画1に導入されたのちに送風機310を駆動させると、消火剤ガスが矢印301bで示すように排出される。これを防止するために、制御部15は防護区画1に消火剤ガスが導入されると送風機310の運転を停止する。その結果、消火剤ガスは防護区画1に滞留し、余剰の消火剤ガスが第一ダクト2、第二ダクト102およびバイパス路311から排出される。なお、必ずしも第一ダクト2は設けられていなくてもよい。ガス系消火設備90は、第二ダクト102が排煙ダクト301に接続される合流点109よりも排煙ダクト301の下流側に設けられた送風機310と、送風機310をバイパスするように排煙ダクト301に設けられたバイパス路311をさらに備える。
【0041】
この実施の形態5でも、実施の形態2と同様に第二ダクト102を短くすることが可能である。さらに、合流点109が送風機310の上流側に設けられているが、バイパス路311が存在するため、送風機310が停止した場合であっても、防護区画1内の消火剤ガスを第二ダクト102、排煙ダクト301およびバイパス路311を経由して排出することができる。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、ガス系消火設備の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 防護区画、1a,101a 避圧口、2 第一ダクト、2a,102a 出口、3
配管、4 噴射ノズル、5 ガス貯蔵容器、12,112 ダンパ、15 制御部、16 調整弁、17 集合管、50 減圧弁、90 ガス系消火設備、102 第二ダクト、200 建物、201 側面、202 上面、301 排煙ダクト、310 送風機、311 バイパス路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9