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  • 特許-車両制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021057057
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154157
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 淳喜
(72)【発明者】
【氏名】植野 眞之
(72)【発明者】
【氏名】小池 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勇太朗
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-40377(JP,A)
【文献】特開平4-46857(JP,A)
【文献】特開2016-20201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の目標制動値に応じた制動力を発生する制動装置を備えた車両の作動を制御する車両制御装置であって、
複数の制動要求値の入力に対して所定の調停処理を行うことにより、前記目標制動値を決定し、決定した前記目標制動値を前記制動装置に出力する目標制動値決定装置と、
前記制動要求値として、前記車両の運転者による制動操作に応じた操作制動要求値を、前記目標制動値決定装置に出力する制動操作要求値入力部と、
前記制動要求値として、前記制動操作要求値との合算対象である第1制動要求値と、前記制動操作要求値との合算対象ではない第2制動要求値とを、前記目標制動値決定装置に出力する制動要求値管理装置と、
を備え、
前記目標制動値決定装置は、前記調停処理として、前記操作制動要求値と前記第1制動要求値とを合算した合算制動要求値と、前記第2制動要求値とを比較して、前記目標制動値を決定する処理を行う
車両制御装置。
【請求項2】
前記目標制動値決定装置は、前記調停処理において、前記合算制動要求値と前記第2制動要求値とのうちの大きい方を、前記目標制動値として決定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第1制動要求値は、前記車両に備えられた動力源の制御のために設定され、
前記第2制動要求値は、前記車両に備えられた運転支援機能の制御のために設定される
請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の運転支援アクチュエータが格納された運転支援ECUと加減速ECUとブレーキECUとをCANバスで接続し、ブレーキECUからブレーキ油圧回路にホイールシリンダ圧の指令値を出力して、ブレーキの状態を制御するようにした車両制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記車両制御装置において、加減速ECUは、運転支援ECUから送信される目標加速度、ブレーキECUから送信されるブレーキのドライバ操作加速度、及び車両諸元等を考慮してブレーキ要求の指令値を決定し、ブレーキ要求の指令値をブレーキECUに出力する。そして、ブレーキECUは、ブレーキ要求の指令値に応じて、ブレーキアクチュエータを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-279983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両制御装置においては、複数の運転支援アクチュエータ及び運転者の操作によるブレーキ要求の調停が加減速ECUにより行われ、調停により決定された最終的なブレーキ要求の指令値がCANバスを介してブレーキECUに送信される。そのため、調停によりブレーキ要求の指定値が決定されてから、ブレーキアクチュエータが指定値に応じた制動力を発揮するまでの間に、CANバスの通信による遅れが生じて、車両における制動制御の応答性が低下するという不都合がある。
本発明はかかる背景に鑑みてなれたものであり、車両における制動制御の応答性が低下することを抑制した車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための態様として、所定の目標制動値に応じた制動力を発生する制動装置を備えた車両の作動を制御する車両制御装置であって、複数の制動要求値の入力に対して所定の調停処理を行うことにより、前記目標制動値を決定し、決定した前記目標制動値を前記制動装置に出力する目標制動値決定装置と、前記制動要求値として、前記車両の運転者による制動操作に応じた操作制動要求値を、前記目標制動値決定装置に出力する制動操作要求値入力部と、前記制動要求値として、前記制動操作要求値との合算対象である第1制動要求値と、前記制動操作要求値との合算対象ではない第2制動要求値とを、前記目標制動値決定装置に出力する制動要求値管理装置と、を備え、前記目標制動値決定装置は、前記調停処理として、前記操作制動要求値と前記第1制動要求値とを合算した合算制動要求値と、前記第2制動要求値とを比較して、前記目標制動値を決定する処理を行う車両制御装置が挙げられる。
上記車両制御装置において、前記目標制動値決定装置は、前記調停処理において、前記合算制動要求値と前記第2制動要求値とのうちの大きい方を、前記目標制動値として決定する構成としてもよい。
【0006】
上記車両制御装置において、前記第1制動要求値は、前記車両に備えられた動力源の制御のために設定され、前記第2制動要求値は、前記車両に備えられた運転支援機能の制御のために設定される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
上記車両制御装置によれば、車両における制動制御の応答性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車両制御装置、及び車両制御装置が搭載された車両の構成図である。
図2図2は、制動要求値の調停処理の第1のフローチャートである。
図3図3は、制動要求値の調停処理の第2のフローチャートである。
図4図4は、制動制御の応答性の低下を抑制する効果を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.車両制御装置と車両の構成]
図1を参照して、本実施形態の車両制御装置10、及び車両制御装置10が搭載された車両1の構成について説明する。車両制御装置10は、CAN(Controller Area Network)-BUS5により接続された制動要求値管理ECU(Electronic Control Unit)40、及び制動ECU50と、ブレーキペダル70の踏込み量を検出するブレーキペダルセンサ71とにより構成されている。制動要求値管理ECU40は本開示の制動要求値管理装置に相当し、制動ECU50は本開示の目標制動値決定装置に相当する。ブレーキペダルセンサ71は、本開示の制動操作要求値入力部に相当する。
【0010】
車両1には、CAN-BUS5により制動要求値管理ECU40及び制動ECU50と接続された動力源ECU20及び運転支援ECU30が備えられている。さらに、車両1には、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、及び右後輪2RRにそれぞれ設けられた左前ブレーキ3FL、右前ブレーキ3FR、左後ブレーキ3RL、及び右後ブレーキ3RRに、電動アクチュエータによるトルクを出力して、これらのブレーキを作動させる電動サーボブレーキシステム60が備えられている。電動サーボブレーキシステム60と、左前ブレーキFL、右前ブレーキ3FR、左後ブレーキ3RL、及び右後ブレーキ3RRとにより、本開示の制動装置が構成される。以下では、左前ブレーキFL、右前ブレーキ3FR、左後ブレーキ3RL、及び右後ブレーキ3RRをまとめて、ブレーキ3とも称する。
【0011】
動力源ECU20、運転支援ECU30、制動要求値管理ECU40、及び制動ECU50は、図示しないプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等により構成された制御ユニットである。動力源ECU20は、メモリに保存された制御用プログラムをプロセッサにより実行することによって、ストール協調制御部21、及び満充電加圧制御部22として機能する。
【0012】
ストール協調制御部21は、ストール協調制御を実行して、ブレーキ3に対する制動要求値(トルク値)である第1制動要求値Tr1R_aを、CAN―BUSを介して制動要求値管理ECU40に送信する。ストール協調制御は、坂道で駆動トルクと勾配をつり合わせて車両1を停車させている間に、モータ(図示しない)の保護にために、アクセルペダル(図示しない)の操作で勾配と釣り合わせた場合に、ブレーキ3による制動に持ち替える制御である。
【0013】
満充電加圧制御部22は、満充電加圧制御を実行して、ブレーキ3に対する制動要求値(トルク値)である第1制動要求値Tr1R_bを、CAN-BUSを介して制動要求値管理ECU40に送信する。満充電加圧制御は、車両1に搭載されたバッテリ(図示しない)が満充電状態であって、アクセルペダルのオフに応じた回生制動ができない場合に、ブレーキ3の制動力を増加させる制御である。
【0014】
運転支援ECU30は、メモリに保存された制御用プログラムを実行することにより、ACC(Adaptive Cruise Control)制御部31、及びCMBS(Collision Mitigation Brake System)制御部32として機能する。ACC制御部31は、ACC制御を実行して、必要な制動力を生じさせるためのブレーキ3に対する制動要求値(トルク値)である第2制動要求値Tr2R_aを、CAN-BUS5を介して制動要求値管理ECU40に出力する。ACC制御は、車両1を、前走車との車間距離を一定に保ちながら追従走行させる制御である。
【0015】
CMBS制御部32は、CMBS制御を実行して、必要な制動力を生じさせるためのブレーキ3に対する制動要求値(トルク値)である第2制動要求値Tr2R_bを、CAN-BUS5を介して制動要求値管理ECU40に出力する。CMBS制御は、車両1に備えられたレーダー(図示しない)により先行車を監視し、追突の危険が生じた場合に、運転者に対し警告音・シートベルト引きこみ・インパネ内表示等で知らせ、追突回避が不可能と判断した場合はブレーキを作動させる制御である。
【0016】
制動要求値管理ECU40は、メモリに保存された制御用プログラムを実行することにより、第1制動要求値決定部41、及び第2制動要求値決定部42として機能する。第1制動要求値決定部41は、動力源ECU20から送信される第1制動要求値Tr1R_a、Tr1R_bのうちのトルク値が大きい方を、制動ECU50に送信する第1制動要求値Tr1Rとして決定する。
【0017】
第2制動要求値決定部42は、運転支援ECU30から送信される第2制動要求値Tr2R_a、Tr2R_bのうちのトルク値が大きい方を、制動ECU50に送信する第2制動要求値Tr2Rとして決定する。
【0018】
制動ECU50は、メモリに保存された制御用プログラムをプロセッサにより実行することによって、要求値合算部51、及び目標値決定部52として機能する。制動ECU50には、ブレーキペダルセンサ71により検出されるブレーキペダル70の操作量に応じた操作制動要求値(トルク値)TrSが入力される。要求値合算部51は、制動要求値管理ECU40から送信される第1制動要求値Tr1Rと操作制動要求値TrSとを加算して、合算制動要求値TrAを算出する。
【0019】
目標値決定部52は、制動要求値管理ECU40から送信される第2制動要求値Tr2Rと、合算制動要求値TrAとのうち、トルク値が大きい方を、目標制動値TrCとして決定する。そして、制動ECU50は、目標制動値TrCを電動サーボブレーキシステム60に出力する。電動サーボブレーキシステム60は、目標制動値TrCにより指示されるトルクで電動アクチュエータを作動させることにより、ブレーキ3を作動させて車両1を制動する。
【0020】
[2.制動要求値の調停処理]
図2図3に示したフローチャートに従って、制動ECU50により実行される制動要求値の調停処理について説明する。制動ECU50は、車両1の使用中に、制動要求値の調停処理を繰り返し実行する。図2のステップS1で、要求値合算部51は、操作制動要求値TrSが入力されているか否かを判断する。そして、要求値合算部51は、操作制動要求値TrSが入力されているときは図3のステップS30に処理を進め、操作制動要求値TrSが入力されていないときはステップS2に処理を進める。
【0021】
ステップS2で、要求値合算部51は、第1制動要求値Tr1Rを受信しているか否かを判断する。そして、要求値合算部51は、第1制動要求値Tr1Rを受信しているときはステップS10に処理を進め、第1制動要求値Tr1Rを受信していないときにはステップS3に処理を進める。ステップS3で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているときはステップS13処理を進め、第2制動要求値Tr2Rを受信していないときはステップS4に処理を進める。
【0022】
ステップS4で、目標値決定部52は、目標制動値TrCをゼロに設定する。次のステップS5で、目標制動値TrCを電動サーボブレーキシステム60に出力する。これにより、電動サーボブレーキシステム60によって、目標制動値TrCに応じたトルクが、電動アクチュエータによりブレーキ3に出力される。また、ステップS13で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを目標制動値TrCとしてステップS5に処理を進める。
【0023】
ステップS10で、要求値合算部51は、第1制動要求値Tr1Rを目標制動値TrCとする。続くステップS11で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているときはステップS12に処理を進め、第2制動要求値Tr2Rを受信していないときにはステップS15に処理を進める。
【0024】
ステップS12で、目標値決定部52は、合算制動要求値TrAが第2制動要求値Tr2R以上であるか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、合算制動要求値TrAが第2制動要求値Tr2R以上であるときはステップS15に処理を進め、合算制動要求値TrAが第2制動要求値Tr2R未満であるときはステップS13に処理を進める。ステップS13で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを目標制動値TrCとしてステップS5に処理を進める。また、ステップS15で、目標値決定部52は、合算制動要求値TrAを目標制動値TrCとしてステップS5に処理を進める。
【0025】
図3のステップS30で、要求値合算部51は、第1制動要求値Tr1Rを受信しているか否かを判断する。そして、要求値合算部51は、第1制動要求値Tr1Rを受信しているときはステップS50に処理を進め、第1制動要求値Tr1Rを受信していないときはステップS31に処理を進める。ステップS31で、目標値決定部52は、操作制動要求値TrSを合算制動要求値TrAとして、ステップS32に処理を進める。
【0026】
ステップS32で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているときはステップS33に処理を進め、第2制動要求値Tr2Rを受信していないときにはステップS40に処理を進める。
【0027】
ステップS33で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rが合算制動要求値TrA以上であるか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rが合算制動要求値TrA以上であるときはステップS34に処理を進め、第2制動要求値Tr2Rが合算制動要求値TrA未満であるときにはステップS40に処理を進める。ステップS34で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを目標制動値TrCとして、図1のステップS5に処理を進める。また、ステップS40で、合算制動要求値TrAを目標制動値TrCとして、図2のステップS5に処理を進める。
【0028】
ステップS50で、要求値合算部51は、操作制動要求値TrSと第1制動要求値Tr1Rとを加算して、合算制動要求値TrAを求める。続くステップS51で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを受信しているときはステップS52に処理を進め、第2制動要求値Tr2Rを受信していないときにはステップS60に処理を進める。
【0029】
ステップS52で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rが合算制動要求値TrA以上であるか否かを判断する。そして、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rが合算制動要求値TrA以上であるときはステップS53に処理を進め、第2制動要求値Tr2Rが合算制動要求値TrA未満であるときにはステップS60に処理を進める。
【0030】
ステップS53で、目標値決定部52は、第2制動要求値Tr2Rを目標制動値TrCに設定して図2のステップS5に処理を進める。また、ステップS60で、目標値決定部52は、合算制動要求値TrAを目標制動値TrCとして図2のステップS5に処理を進める。
【0031】
ここで、図4は、図1に示した構成の車両制御装置10により、上述した制動要求値の調停処理を行った場合の効果を説明したタイミングチャートである。図4は時間軸tにより、t1で、制動要求値管理ECU40から制動ECU50への第2制動要求値Tr2Rの送信が開始された場合を説明している。
【0032】
図4において、aは制動要求値管理ECU40からの第2制動要求値Tr2Rの送信の有無を示しており、bは制動ECU50による第2制動要求値Tr2Rの認識の有無を示している。制動要求値管理ECU40は、t1で第2制動要求値Tr2Rの送信を開始し、制動ECU50は、CAN-BUS5による遅れ時間Dtが経過したt2で第2制動要求値Tr2Rを受信している。t2から、制動ECU50は、第2制動要求値Tr2Rを認識する。
【0033】
t2では、合算制動要求値TrAが第2制動要求値Tr2Rを上回っているため、目標値決定部52は、合算制動要求値TrAを電動サーボブレーキシステム60に出力する。そして、t3で、操作制動要求値TrSの減少により、合算制動要求値TrAが第2制動要求値Tr2Rよりも小さくなり、これに応じて、目標値決定部52は、目標制動値TrCを合算制動要求値TrAから第2制動要求値Tr2Rに変更して、目標制動値TrCを電動サーボブレーキシステム60に出力する。
【0034】
この場合、合算制動要求値TrAの算出と、調停処理による目標制動値TrCの変更が、CAN-BUSによる通信を伴うことなく、制動ECU50内で行われるため、運転支援ECU30によるACC制御又はCMBS制御により必要となった制動力を、速やかに確保することができる。
【0035】
[3.他の実施形態]
上記実施形態では、制動装置として、電動サーボブレーキシステム60を示したが、油圧によりブレーキ3を作動させる制動装置であってもよい。油圧によりブレーキ3を作動させる制動装置を対象とする場合は、制動要求値はトルクではなく油圧による要求値となる。また、制動ECU50から制動装置に出力される目標制動値も油圧の指示値となる。
【0036】
上記実施形態では、本開示の動力源の制御として、ストール協調制御と満充電加圧制御を例示したが、操作制動要求値と合算される制動要求を出力する他の制御であってもよい。また、本開示の運転支援制御として、ACC制御とCMBS制御を例示したが、車両1の制動制御を伴う運転支援制御であってもよい。
【0037】
なお、図1は、本願発明の理解を容易にするために、車両1と車両制御装置10の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、車両制御装置10の構成を他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図4に示した各構成要素による処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0038】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0039】
(構成1)所定の目標制動値に応じた制動力を発生する制動装置を備えた車両の作動を制御する車両制御装置であって、複数の制動要求値の入力に対して所定の調停処理を行うことにより、前記目標制動値を決定し、決定した前記目標制動値を前記制動装置に出力する目標制動値決定装置と、前記制動要求値として、前記車両の運転者による制動操作に応じた操作制動要求値を、前記目標制動値決定装置に出力する制動操作要求値入力部と、前記制動要求値として、前記制動操作要求値との合算対象である第1制動要求値と、前記制動操作要求値との合算対象ではない第2制動要求値とを、前記目標制動値決定装置に出力する制動要求値管理装置と、を備え、前記目標制動値決定装置は、前記調停処理として、前記操作制動要求値と前記第1制動要求値とを合算した合算制動要求値と、前記第2制動要求値とを比較して、前記目標制動値を決定する処理を行う車両制御装置。
構成1の車両制御装置によれば、制動要求値の調停処理を、制動要求値管理装置ではなく目標制動値決定装置で行うことにより、制動要求値管理装置と目標制動値決定装置間での目標制動値の入出力に要する時間によって、車両の制動制御の応答性が低下することを抑制することができる。
【0040】
(構成2)前記制動調停装置は、前記調停処理において、前記合算制動要求値と前記第2制動要求値とのうちの大きい方を、前記目標制動値として決定する構成1に記載の車両制御装置。
構成2の車両制御装置によれば、合算制動要求値及び第2制動要求値の増大を速やかに目標制動値に反映させて、車両の制動制御を実行することができる。
【0041】
(構成3)前記第1制動要求値は、前記車両に備えられた動力源の制御のために設定され、前記第2制動要求値は、前記車両に備えられた運転支援機能の制御のために設定される構成1又は構成2に記載の車両制御装置。
構成3の車両制御装置によれば、動力源の制御により必要となった制動力、或いは運転支援機能の制御により必要になった制動力を、速やかに目標制動値に反映させて、車両の制動制御を実行することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…車両、5…CAN-BUS、10…車両制御装置、20…動力源ECU、21…ストール協調制御部、22…満充電加圧制御部、30…運転支援ECU、31…ACC制御部、32…CMBS制御部、40…制動要求値管理ECU(制動要求値管理装置)、41…第1制動要求値決定部、42…第2制動要求値決定部、50…制動ECU(目標値決定装置)、51…要求値合算部、52…目標値決定部、60…電動サーボブレーキシステム、70…ブレーキペダルセンサ、71…ブレーキペダルセンサ(制動操作要求値入力部)。
図1
図2
図3
図4