(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8234 20060101AFI20221202BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20221202BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20221202BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20221202BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20221202BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
H01L27/088 A
H01L27/088 331E
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H02J50/20
H02J7/00 301E
(21)【出願番号】P 2021204563
(22)【出願日】2021-12-16
(62)【分割の表示】P 2020154722の分割
【原出願日】2015-02-13
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2014026312
(32)【優先日】2014-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】桃 純平
(72)【発明者】
【氏名】栗城 和貴
(72)【発明者】
【氏名】郷戸 宏充
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0058029(US,A1)
【文献】特開2011-101458(JP,A)
【文献】特開2005-109616(JP,A)
【文献】特開平02-178818(JP,A)
【文献】特開2004-045913(JP,A)
【文献】特開2009-003874(JP,A)
【文献】特開2012-257447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0293893(US,A1)
【文献】特開2014-030192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0009270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/088
H01L 29/786
H01L 21/8234
H02J 50/20
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御モジュールと、通信モジュールと、を有し、
前記制御モジュールは、
CPUと、
前記CPUに電力を供給する機能を有する第1の二次バッテリーと、
前記第1の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第1のレギュレータと、を有し、
前記通信モジュールは、
通信回路と、
前記通信回路に電力を供給する第2の二次バッテリーと、
前記第2の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第2のレギュレータと、を有し、
前記通信モジュールのオン状態またはオフ状態は、前記制御モジュールによって制御される電子機器。
【請求項2】
制御モジュールと、表示モジュールと、を有し、
前記制御モジュールは、
CPUと、
前記CPUに電力を供給する機能を有する第1の二次バッテリーと、
前記第1の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第1のレギュレータと、を有し、
前記表示モジュールは、
表示駆動回路と、
前記表示駆動回路に電力を供給する機能を有する第3の二次バッテリーと、
前記第3の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第3のレギュレータと、を有し、
前記表示モジュールのオン状態またはオフ状態は、前記制御モジュールによって制御される電子機器。
【請求項3】
制御モジュールと、通信モジュールと、表示モジュールと、を有し、
前記制御モジュールは、
CPUと、
前記CPUに電力を供給する機能を有する第1の二次バッテリーと、
前記第1の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第1のレギュレータと、を有し、
前記通信モジュールは、
通信回路と、
前記通信回路に電力を供給する第2の二次バッテリーと、
前記第2の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第2のレギュレータと、を有し、
前記表示モジュールは、
表示駆動回路と、
前記表示駆動回路に電力を供給する機能を有する第3の二次バッテリーと、
前記第3の二次バッテリーが充電される時に過充電を防止する機能を有する第3のレギュレータと、を有し、
前記表示モジュールおよび前記通信モジュールのオン状態またはオフ状態は、前記制御モジュールによってそれぞれ独立に制御される電子機器。
【請求項4】
請求項1または請求項3において、
前記第2のレギュレータは、前記第2の二次バッテリーと前記通信回路との間に接続される電子機器。
【請求項5】
請求項1、請求項3、または請求項4において、
前記第2の二次バッテリーは、前記第2のレギュレータを介して無線充電により充電される電子機器。
【請求項6】
請求項2または請求項3において、
前記第3のレギュレータは、前記第3の二次バッテリーと前記表示駆動回路との間に接続される電子機器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1のレギュレータは、半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタを有する電子機器。
【請求項8】
請求項7において、
前記酸化物半導体は、InとGaとZnとを含む電子機器。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記第1の二次バッテリーは、前記第1のレギュレータを介して無線充電により充電される電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、又は製造方法に関する。又は、本発明は、プロセス、マシン、マニ
ュファクチャ、又は組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。また、本発明の
一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法又
はそれらの製造方法に関する。特に、本発明の一態様は、酸化物半導体を含む半導体装置
、表示装置、又は発光装置に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指す。表示装置、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は、半導体装置を有する
場合がある。
【背景技術】
【0003】
近年、使用者が携帯する電子機器や、使用者が装着する電子機器が盛んに開発されている
。
【0004】
使用者が携帯する電子機器や、使用者が装着する電子機器は、バッテリーを電源として動
作するため、消費電力を極力抑えている。特に電子機器にCPU(Central Pr
ocessing Unit)が含まれている場合、CPUは動作時に多くの電力を消費
するため、CPUの処理は消費電力に大きな影響を与える。
【0005】
プラスチックもしくはプラスチックフィルム基板に高機能集積回路(CPUなど)を有し
、無線で電力または信号の送受信を行う半導体装置が、特許文献1に記載されている。
【0006】
また、CPUのレジスタを、酸化物半導体トランジスタを用いた記憶回路で作製し、消費
電力の低減を行う半導体装置が、特許文献2に記載されている。
【0007】
また、近年、電子機器の小型化を目的に、半導体基板上に、半導体素子とともに、固体電
解質を用いた全固体電池を作製する技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-32927号公報
【文献】特開2013-251884号公報
【文献】特開2003-133420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
あるCPUを含む電子機器における消費電力の詳細を説明する。消費電力は、大きく分け
て、CPUによって消費される電力と、CPU周辺のシステムによって消費される電力と
、電子機器の内外に接続された複数の入出力機器および周辺機器によって消費される電力
と、に分けることができる。CPU周辺のシステムによって消費される電力には、コンバ
ータでのロス、配線パターンでのロス、及びバスやコントローラなどでの消費電力などが
含まれる。
【0010】
また、電子機器が小型化、薄型化すると、バッテリーもその制限を受ける。しかし、バッ
テリーは体積が小さくなると、容量が小さくなってしまう。従って、より小さなスペース
に回路やバッテリーなどを収納することとなる。
【0011】
また、バッテリーは、充電または放電によって発熱し、周囲に熱的影響を及ぼす恐れがあ
る。
【0012】
電子機器が小型化して、より小さなスペースに回路やバッテリーなどを収納するに従って
、消費電力と発熱をどう制御するかが、課題の一つとなっている。
【0013】
本発明の一態様は、新規な半導体装置、回路やバッテリーが効率よく収納された半導体装
置、消費電力が小さい半導体装置、または、発熱が抑えられた半導体装置を提案する。
【0014】
また、本発明の一態様は、新規な構造の電子機器を提案する。具体的には、さまざまな外
観形状にすることができる新規な構造の電子機器を提案する。より具体的には、体に装着
して使用するウェアラブル型電子機器や、体内に埋め込んで使用する電子機器を提案する
。
【0015】
なお、複数の課題の記載は、互いの課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はない。また、列記した以外の課題が、明細
書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、これらの課題も、本
発明の一形態の課題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、二次バッテリーと、
を有する半導体装置である。第1のトランジスタ、第2のトランジスタ及び二次バッテリ
ーは、基板に設けられる。第1のトランジスタのチャネル領域はシリコンを含む。第2の
トランジスタのチャネル領域は酸化物半導体を含む。二次バッテリーは、固体電解質を有
する。
【0017】
上記態様において、基板は可撓性を有することが好ましい。
【0018】
上記態様において、二次バッテリーは、無線によって充電される機能を有することが好ま
しい。
【0019】
上記態様において、二次バッテリーはリチウムを含むことが好ましい。また、二次バッテ
リーと第1のトランジスタの間、又は、二次バッテリーと第2のトランジスタの間に、ハ
ロゲンを含む絶縁膜を設けても良い。
【0020】
上記態様において、二次バッテリーの上に冷却装置を設けても良い。
【0021】
上記態様において、二次バッテリーは、半導体製造プロセスで作製されることが好ましい
。
【0022】
本発明の一態様は、上記態様に記載の半導体装置と、表示装置と、を有する電子機器であ
る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様により、新規な半導体装置を提供すること、回路やバッテリーが効率よく
収納された半導体装置を提供すること、消費電力が小さい半導体装置を提供すること、ま
たは、発熱が抑えられた半導体装置を提供することが可能になる。
【0024】
また、本発明の一態様により、新規な構造の電子機器を提供することが可能になる。具体
的には、さまざまな外観形状にすることができる新規な構造の電子機器を提供することが
可能になる。より具体的には、体に装着して使用するウェアラブル型電子機器や、体内に
埋め込んで使用する電子機器を提供することが可能になる。
【0025】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、
図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項な
どの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図5】本発明の一態様を示すバッテリーの上面図及び断面図。
【
図6】本発明の一態様を示すバッテリーの上面図及び断面図。
【
図7】本発明の一態様を示すバッテリーの上面図及び断面図。
【
図9】本発明の一態様に含まれるトランジスタの上面図及び断面図。
【
図10】本発明の一態様に含まれるトランジスタの断面図およびそのエネルギーバンド図。
【
図11】本発明の一態様に含まれるトランジスタの上面図及び断面図。
【
図16】本発明の一態様を示す半導体装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異な
る態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、
以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下に説明する
実施の形態及び実施例において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を
異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場
合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模
式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0029】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混
同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0030】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置
関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係
は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した
語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0031】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む
少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン
領域またはドレイン電極層)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極層)の
間にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流す
ことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主とし
て流れる領域をいう。
【0032】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動
作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細
書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする
。
【0033】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタ
などのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有す
る素子などが含まれる。
【0034】
(実施の形態1)
<デバイスのブロック図>
図1は、本発明の一態様であるデバイス10のブロック図を示している。
【0035】
本実施の形態にかかるデバイス10は、制御モジュール15と、表示モジュール21と、
通信モジュール26とを有する。制御モジュール15は、デバイス10全体の制御と、通
信や、表示部16への情報の表示を制御するコントローラである。
【0036】
制御モジュール15は、CPU11、バッテリー12、レギュレータ13、および無線受
信部14を有する。
【0037】
また、表示モジュール21は、表示部16、表示駆動回路19、バッテリー17、レギュ
レータ18、および無線受信部20を有する。
【0038】
また、通信モジュール26は、通信回路22、バッテリー23、レギュレータ24、およ
び無線受信部25を有する。
【0039】
レギュレータとは電子回路の一種であり、出力される電圧または電流を常に一定に保つよ
うに制御する回路のことである。レギュレータは、電力負荷の程度などによって、リニア
レギュレータとスイッチングレギュレータの2種類に分類される。なお、スイッチングレ
ギュレータはDCDCコンバータとも呼ばれる。
【0040】
各モジュールは、それぞれレギュレータとバッテリーを有している。各バッテリーは繰り
返し充放電が可能な二次バッテリーであり、無線充電ができるように回路が接続されてい
る。各バッテリーは、それぞれのレギュレータを介してそれぞれの無線受信部と電気的に
接続される構成とする。各レギュレータは、接続されているバッテリーから各機能回路に
必要な電力または信号を供給する。また、各レギュレータは、接続されているバッテリー
が充電している時に、過充電などを防止する機能をもつ。
【0041】
デバイス10は、それぞれのモジュールを独立してオン状態、或いはオフ状態とすること
ができる。使用するモジュールのみを選択的に駆動させるオペレーションシステムにより
、デバイス10の省電力化を図ることができる。
【0042】
例えば、使用者が通信機能を用いることなく、表示部16で情報を見る場合、通信モジュ
ール26においては、通信回路22への電力を遮断し、バッテリー23を使わないオフ状
態とし、表示モジュール21及び制御モジュール15をオン状態とする。
【0043】
さらに、静止画であれば、表示モジュール21及び制御モジュール15をオン状態として
表示部16で静止画を表示させた後、静止画を表示させたまま制御モジュール15をオフ
状態としても、表示モジュール21のみをオン状態として静止画を表示し続けることがで
きる。この場合、静止画を表示しているものの制御モジュール15は動作させておらず、
外から見て制御モジュール15の消費電力はゼロとみなすこともできる。なお、表示部1
6において、オフ電流の低い酸化物半導体(例えばIn、Ga、及びZnを含む酸化物材
料など)トランジスタを用いる、または画素ごとにメモリを有する構成とすれば、静止画
表示後にバッテリー17からの電力供給を遮断しても一定時間の間であれば、静止画を表
示しつづけることもできる。
【0044】
このように、電子機器に使用する部品ごとにバッテリーを設け、使用する部品のみを選択
的に駆動させることで、省電力化を図ることができる。
【0045】
なお、CPU11のレジスタに、酸化物半導体トランジスタを含むメモリセルを用いるこ
とが好ましい。CPU11に酸化物半導体トランジスタを用いることで、一時的にCPU
11の動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが
可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコン
ピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも
、CPU11の動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる
。
【0046】
また、レギュレータ13、18、24に用いるトランジスタとして酸化物半導体トランジ
スタを用いると、オフ電流が小さいため、省電力化を図ることができる。特に、酸化物半
導体トランジスタで制御回路が構成されたレギュレータ(DC-DCコンバータ)は、1
50℃以上の高温下でも動作可能である。よって、このようなDC-DCコンバータは、
動作時に温度が上昇する可能性が高い電子機器に好適である。
【0047】
本実施の形態では、表示モジュール21、制御モジュール15、及び通信モジュール26
がそれぞれバッテリーを有する例を示したが、特にこれら3つのバッテリーに限定されず
、さらに機能モジュール及びそのバッテリーを加えて4つ以上のバッテリーを有する電子
機器としてもよい。
【0048】
例えば、デバイス10の外装体をフレキシブルな材料とすれば、体に装着して使用するウ
ェアラブル型デバイスを実現できる。その場合、小型のバッテリーをデバイス10内部に
分散させて配置することにより、一つの大きなバッテリーを有するデバイスよりも重量感
を軽減することができる。また、個々の小型のバッテリーが発熱しても使用者の装着感を
阻害しない。
【0049】
次に、デバイス10に用いることが可能な半導体装置について、
図2乃至
図4を用いて説
明を行う。
【0050】
<半導体装置の構成例1>
図2は、同一基板上に作製された、トランジスタ720と、トランジスタ730と、バッ
テリー740と、を含む半導体装置1000の断面図を示している。トランジスタ720
は基板700に設けられ、トランジスタ730はトランジスタ720の上に設けられ、バ
ッテリー740はトランジスタ730の上に設けられている。
【0051】
半導体装置1000は、基板700と、トランジスタ720と、素子分離層727と、絶
縁膜731と、トランジスタ730と、絶縁膜732と、絶縁膜741と、バッテリー7
40と、絶縁膜742と、プラグ701、703、704、706と、配線702、70
5と、配線707と、を有し、トランジスタ720は、ゲート電極726と、ゲート絶縁
膜724と、側壁絶縁層725と、ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領
域721と、LDD(Lightly Doped Drain)領域やエクステンショ
ン領域として機能する不純物領域722と、チャネル領域723と、を有する。
【0052】
不純物領域721の不純物濃度は、不純物領域722よりも高い。ゲート電極726およ
び側壁絶縁層725をマスクとして用いて、不純物領域721及び不純物領域722を自
己整合的に形成することができる。
【0053】
基板700としては、シリコンや炭化シリコンから成る単結晶半導体基板、多結晶半導体
基板、シリコンゲルマニウムからなる化合物半導体基板や、SOI(Silicon o
n Insulator)基板などを用いることができる。半導体基板を用いて形成され
たトランジスタは、高速動作が容易である。なお、基板700としてp型の単結晶シリコ
ン基板を用いた場合、基板700の一部にn型を付与する不純物元素を添加してn型のウ
ェルを形成し、n型のウェルが形成された領域にp型のトランジスタを形成することも可
能である。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)、砒素(As)等を用いるこ
とができる。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)等を用いることができる
。
【0054】
また、基板700は絶縁基板上に半導体膜を設けたものでもよい。該絶縁基板として、例
えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、
ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを
有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィル
ムなどが挙げられる。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノ
ホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板の一例としては、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエー
テルサルフォン(PES)に代表されるプラスチック、又はアクリル等の可撓性を有する
合成樹脂などがある。貼り合わせフィルムの一例としては、ポリプロピレン、ポリエステ
ル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。基材フィルムの一例としては、
ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は
紙類などがある。
【0055】
なお、ある基板を用いて半導体素子を形成し、その後、別の基板に半導体素子を転置して
もよい。半導体素子が転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、紙基板、セ
ロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、
布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)
若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)
、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいト
ランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱
性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
【0056】
トランジスタ720は素子分離層727により、基板700に形成される他のトランジス
タと分離されている。
【0057】
トランジスタ720としてシリサイド(サリサイド)を有するトランジスタや、側壁絶縁
層を有さないトランジスタを用いてもよい。シリサイド(サリサイド)を有する構造であ
ると、ソース領域およびドレイン領域がより低抵抗化でき、半導体装置の高速化が可能で
ある。また、低電圧で動作できるため、半導体装置の消費電力を低減することが可能であ
る。
【0058】
トランジスタ720に第1の半導体材料を用い、トランジスタ730に第2の半導体材料
を用いた場合、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とする
ことが好ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコン
(歪シリコン含む)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ
素、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガリウム、有機半導体など)とし
、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料として
単結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半
導体を用いたトランジスタは、オフ電流が低い。
【0059】
なお、酸化物半導体トランジスタの詳細については、後述する実施の形態3で説明を行う
。
【0060】
ここで、下層に設けられるトランジスタ720にシリコン系半導体材料を用いた場合、ト
ランジスタ720の半導体膜の近傍に設けられる絶縁膜中の水素はシリコンのダングリン
グボンドを終端し、トランジスタ720の信頼性を向上させる効果がある。一方、上層に
設けられるトランジスタ730に酸化物半導体を用いた場合、トランジスタ730の半導
体膜の近傍に設けられる絶縁膜中の水素は、酸化物半導体中にキャリアを生成する要因の
一つとなるため、トランジスタ730の信頼性を低下させる要因となる場合がある。した
がって、シリコン系半導体材料を用いたトランジスタ720の上層に酸化物半導体を用い
たトランジスタ730を積層して設ける場合、これらの間に水素の拡散を防止する機能を
有する絶縁膜731を設けることは特に効果的である。絶縁膜731により、下層に水素
を閉じ込めることでトランジスタ720の信頼性が向上することに加え、下層から上層に
水素が拡散することが抑制されることでトランジスタ730の信頼性も同時に向上させる
ことができる。
【0061】
絶縁膜731としては、例えば酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム
、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化
窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0062】
また、酸化物半導体膜を含んで構成されるトランジスタ730を覆うように、トランジス
タ730上に水素の拡散を防止する機能を有する絶縁膜732を形成することが好ましい
。絶縁膜732としては、絶縁膜731と同様の材料を用いることができ、特に酸化アル
ミニウムを適用することが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物お
よび酸素の双方に対して膜を透過させない遮断(ブロッキング)効果が高い。したがって
、トランジスタ730を覆う絶縁膜732として酸化アルミニウム膜を用いることで、ト
ランジスタ730に含まれる酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防止するとともに、酸化
物半導体膜への水および水素の混入を防止することができる。
【0063】
プラグ701、703、704、706及び配線702、705、707は、銅(Cu)
、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マン
ガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)
、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)の低抵抗材料からなる単体、
もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とする
ことが好ましい。特に、これらプラグ及び配線に、Cu-Mn合金を用いると、酸素を含
む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、該酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能
を持つので好ましい。
【0064】
バッテリー740は、繰り返し充放電が可能な二次バッテリーであり、且つ、固体電解質
を含む全固体電池である。また、バッテリー740は無線充電が可能となるように、レギ
ュレータを介して無線受信部と電気的に接続されている。
【0065】
また、バッテリー740は、半導体製造プロセスを用いて作製することができる。なお、
半導体製造プロセスとは、成膜工程、結晶化工程、メッキ工程、洗浄工程、リソグラフィ
工程、エッチング工程、研磨工程、不純物注入工程、熱処理工程など、半導体デバイスを
製造するときに用いられる手法全般を表す。
【0066】
なお、バッテリー740の詳細については、後述する実施の形態2で説明を行う。
【0067】
絶縁膜741は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、
酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジ
ルコニウム、酸化イットリウム、酸化ガリウム、酸化ランタン、酸化セシウム、酸化タン
タルまたは酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。
【0068】
バッテリー740がリチウムを含む場合、絶縁膜741はリチウムの拡散を防ぐ(ブロッ
クする)機能を有することが好ましい。バッテリー740に含まれるリチウムが、可動イ
オンとして半導体素子(トランジスタ720またはトランジスタ730)へ侵入すると、
半導体素子の劣化を引き起こす。絶縁膜741がリチウムイオンをブロックすることで、
信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0069】
バッテリー740がリチウムを含む場合、絶縁膜741は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素
などのハロゲンを含むことが好ましい。絶縁膜741がハロゲンを含むことで、アルカリ
金属であるリチウムと容易に結合し、リチウムが絶縁膜741の中で固定化され、リチウ
ムが絶縁膜741の外へ拡散することを防ぐことができる。
【0070】
例えば、絶縁膜741として、窒化シリコンをCVD(Chemical Vapor
Deposition)法で成膜した場合、原料ガス中に体積比で3%から6%、例えば
5%ほどのハロゲンを含むガスを混入させておくと、得られる窒化シリコン膜中にハロゲ
ンが取り込まれる。絶縁膜741に含まれるハロゲン元素は、二次イオン質量分析法(S
IMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得
られる濃度を、1×1017atoms/cm3以上、好ましくは1×1018atom
s/cm3以上、より好ましくは1×1019atoms/cm3以上とする。
【0071】
絶縁膜742は、バッテリー740を保護する機能を有する。絶縁膜742としては、例
えば樹脂(ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ
樹脂、フェノール樹脂など)、ガラス、アモルファス化合物、セラミックス等の絶縁性材
料を用いることができる。また、樹脂の層間に、吸水層としてフッ化カルシウムなどを有
する層を設けてもよい。絶縁膜742は、スピンコート法、インクジェット法などによっ
て形成する事ができる。また、絶縁膜742は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化
酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニ
ウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ガリウム、酸化ラン
タン、酸化セシウム、酸化タンタルまたは酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層
または積層で作製してもよい。
【0072】
半導体装置1000は、バッテリー740の上に、さらに半導体素子を作製してもよい、
この場合、絶縁膜741と同様に、絶縁膜742にリチウムの拡散を防ぐ(ブロックする
)機能を有することが好ましい。絶縁膜742がリチウムをブロックすることで、信頼性
の高い半導体装置を提供することができる。
【0073】
バッテリー740の上に半導体素子を作製する場合、絶縁膜742は、絶縁膜741と同
様に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを含むことが好ましい。絶縁膜742
がハロゲンを含むことで、アルカリ金属であるリチウムと容易に結合し、リチウムが絶縁
膜742の外へ拡散することを防ぐことができる。
【0074】
なお、
図2乃至
図4において、符号及びハッチングパターンが与えられていない領域は絶
縁体で構成された領域を表している。該領域には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニ
ウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化
ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む
絶縁体を用いることができる。また、該領域には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ア
クリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いること
もできる。
【0075】
図2の半導体装置1000は、バッテリー740の上部に、ヒートシンク、水冷クーラー
、冷却ファンなどの冷却装置を設けることが好ましい。冷却装置を設けることで、バッテ
リー740の発熱による、半導体装置1000の誤動作を防ぐことができる。
【0076】
図2の半導体装置1000は、バッテリー740とトランジスタ730との間に、エアギ
ャップ(真空層の隙間)を設けてもよい。その場合の断面図を
図16に示す。
図16に示
す半導体装置1300は、バッテリー740とトランジスタ730との間に、エアギャッ
プ762を有している。エアギャップ762は、トレンチを有する絶縁膜761に、被覆
性の低い絶縁膜763を成膜することで形成することが可能である。絶縁膜761、76
3には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、
窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いてもよい。
バッテリー740の下にエアギャップ762を設けることで、バッテリー740から発熱
した熱が、トランジスタ720及びトランジスタ730まで伝わるのを防ぐことができ、
熱によるトランジスタ720及びトランジスタ730の誤動作を防ぐことができる。
【0077】
図2は、バッテリー740を、トランジスタ720及びトランジスタ730の上に設けて
いるが、バッテリー740を、トランジスタ720とトランジスタ730の間に設けても
よい。その場合、トランジスタ720、バッテリー740、トランジスタ730の順に素
子が形成されることになる。特に、バッテリー740を作製する際に、トランジスタ73
0が破壊されるほどの高温な熱処理が必要な場合、バッテリー740を形成してからトラ
ンジスタ730を形成することが好ましい。
【0078】
例えば、トランジスタ720及びトランジスタ730を用いて、
図1のデバイス10に含
まれるCPU11またはレギュレータ13、18、24などの回路を作製し、これら回路
に電源を供給するバッテリー740を、これら回路と同一基板上に作製することで、デバ
イス10を小型化又は薄膜化することが可能になる。
【0079】
<半導体装置の構成例2>
図2では、トランジスタ720がプレーナ型のトランジスタの場合を示したが、トランジ
スタ720の形状はこれに限定されない。例えば、FIN(フィン)型、TRI-GAT
E(トライゲート)型などのトランジスタなどとすることができる。その場合の断面図の
例を、
図3に示す。
【0080】
図3に示す半導体装置1100は、基板700に設けられたFIN型のトランジスタ75
0を有する点で、
図2の半導体装置1000と相違する。
図3において、左側に示したト
ランジスタ750は、トランジスタのチャネル長方向の断面図を示し、右型に示したトラ
ンジスタ750は、トランジスタのチャネル幅方向の断面図を示している。
【0081】
図3では、基板700の上に、絶縁膜757が設けられている。基板700は、先端の細
い凸部(フィンともいう)を有する。なお、凸部の上には、絶縁膜が設けられていてもよ
い。その絶縁膜は、凸部を形成するときに、基板700がエッチングされないようにする
ためのマスクとして機能するものである。なお、凸部は、先端が細くなくてもよく、例え
ば、略直方体の凸部であってもよいし、先端が太い凸部であってもよい。基板700の凸
部の上には、ゲート絶縁膜754が設けられ、その上には、ゲート電極756及び側壁絶
縁層755が設けられている。基板700には、ソース領域又はドレイン領域として機能
する不純物領域751と、LDD領域やエクステンション領域として機能する不純物領域
752と、チャネル領域753が形成されている。なお、ここでは、基板700が、凸部
を有する例を示したが、本発明の一態様に係る半導体装置は、これに限定されない。例え
ば、SOI基板を加工して、凸部を有する半導体領域を形成しても構わない。
【0082】
半導体装置1100のその他の構成要素に関しては、半導体装置1000の記載を参照す
る。
【0083】
<半導体装置の構成例3>
図4に示した半導体装置1200は、バッテリー740がトランジスタ730の下に設け
られている点で、
図2の半導体装置1000と相違する。
【0084】
半導体装置1200は、
図4に示した構成にすることで、トランジスタ720に接続され
るプラグ及び配線と、バッテリー740に接続されるプラグ及び配線を同時に作製するこ
とができ、工程を簡略化することができる。また、バッテリー740を作製する際に、プ
ラグ701または配線702が破壊される程の高温処理が必要な場合は、バッテリー74
0を形成してから、プラグ701及び配線702を形成する必要がある。その場合、
図4
のように、トランジスタ720とバッテリー740を同一の階層に設ける方が好ましい。
【0085】
なお、
図4では、トランジスタ720を形成した後に、バッテリー740を形成している
が、バッテリー740を先に形成してから、トランジスタ720を形成してもよい。特に
、バッテリー740を形成する際に、トランジスタ720が破壊される程の高温処理が必
要な場合は、先にバッテリー740を形成してから、トランジスタ720を形成した方が
好ましい。
【0086】
半導体装置1200のその他の構成要素に関しては、半導体装置1000の記載を参照す
る。
【0087】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合
わせて用いることができる。
【0088】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示したバッテリーの詳細及び構成例について、図を用
いて詳述する。
【0089】
<バッテリーの構成例1>
図5(A)は、バッテリー100の上面図であり、
図5(A)における一点鎖線X-Yに
おける断面図を
図5(B)に示す。なお、
図5(A)では、図の明瞭化のために一部の要
素を拡大、縮小、または省略して図示している。
【0090】
図5(A)に示すバッテリー100は、絶縁膜101と、絶縁膜101上に形成された正
極集電体層102と、正極集電体層102上に形成された正極活物質層103と、正極活
物質層103上に形成された固体電解質層104と、固体電解質層104上に形成された
負極活物質層105と、負極活物質層105上に形成された負極集電体層106と、を有
し、正極集電体層102及び正極活物質層103は正極として機能し、負極集電体層10
6及び負極活物質層105は負極として機能する。さらに、負極集電体層106上に、絶
縁膜107が成膜され、絶縁膜107の開口部には、配線108が形成され、配線108
は、正極集電体層102又は負極集電体層106と電気的に接続されている。
【0091】
また、図示していないが、固体電解質層104と正極活物質層103の界面、または固体
電解質層104と負極活物質層105の界面に、リチウム層が形成されていてもよい。こ
のリチウム層は、バッテリー100において、キャリアとなるリチウムを正極活物質層ま
たは負極活物質層へ供給する(プレドープともいう。)ための層である。なお、上記リチ
ウム層は、被形成面全てに形成されていてもよい。また、リチウム層と接して、銅層また
はニッケル層が形成されてもよい。該銅層またはニッケル層の形状は、リチウム層と略同
一であればよい。該銅層またはニッケル層は、リチウム層から、正極活物質層または負極
活物質層へリチウムのプレドープを行う際に、集電体として機能することができる。
【0092】
なお、上記プレドープによってリチウム層の全てのリチウムが正極活物質層または負極活
物質層へドープされてもよいし、リチウム層が残っていてもよい。このようにプレドープ
後もリチウム層が残っていることによって、その後、バッテリーの充放電による不可逆容
量で消失したリチウムを補充するために用いることができる。
【0093】
絶縁膜101の詳細は、実施の形態1における絶縁膜741に関する記載を参照すればよ
い。
【0094】
正極集電体層102、正極活物質層103、負極活物質層105および負極集電体層10
6は、スパッタリング法、CVD法、ナノインプリント法、蒸着法などにより形成するこ
とができる。スパッタリング法を用いた場合、RFではなくDC電源を用いて成膜するこ
とが好ましい。DC電源を用いたスパッタリング法は、成膜レートが大きく、そのためタ
クトが短くなり、好ましい。正極集電体層102、正極活物質層103、負極活物質層1
05および負極集電体層106の膜厚は、例えば100nm以上100μm以下とすれば
よい。
【0095】
正極集電体層102は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、金(Au)および白金
(Pt)の一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。また、上記金属の合金
またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜を、単層または積層で用いてもよい。
【0096】
正極活物質層103は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム、
ニッケル酸リチウムおよび酸化バナジウムの一種以上を選択して、単層または積層で用い
ればよい。
【0097】
また正極活物質層103はオリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩を用いることがで
きる。リチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(I
I)、Co(II)、Ni(II)の一以上))の代表例としては、LiFePO4、L
iNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFea
CobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbP
O4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、L
iFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0
<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+
h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等がある。
【0098】
固体電解質層104は、スパッタ法、蒸着法、CVD法で形成することのできる無機系固
体電解質を用いる。無機系固体電解質は、硫化物系固体電解質や酸化物系固体電解質を用
いることができる。
【0099】
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4
、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、Li2S-P2
S5、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-
Ga2S3、Li2S-SiS2-Li4SiO4、LiI-Li2S-P2S5、Li
I-Li2S-B2S3、LiI-Li2S-SiS2、等のリチウム複合硫化物材料が
挙げられる。
【0100】
また、酸化物系固体電解質としては、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、L
i1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li4SiO4-Li3BO3、L
i2.9PO3.3N0.46、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li1.5Al0
.5Ge1.6(PO4)3、Li2O、Li2CO3、Li2MoO4、Li3PO4
、Li3VO4、Li4SiO4、LLT(La2/3-xLi3xTiO3)、LLZ
(Li7La3Zr2O12)等のリチウム複合酸化物および酸化リチウム材料が挙げら
れる。
【0101】
また、固体電解質層104には、塗布法等により形成するPEO(ポリエチレンオキシド
)等の高分子系固体電解質を用いてもよい。さらに、上述した無機系固体電解質と高分子
系固体電解質を含む複合的な固体電解質を用いてもよい。
【0102】
また、必要に応じて、固体電解質層104の中に、正極と負極が短絡しないように、セパ
レータを設けてもよい。セパレータは、空孔が設けられた絶縁体を用いることが好ましい
。例えば、セルロース、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビ
ニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポ
リウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0103】
負極活物質層105は、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(
Sn)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、チタン酸リチウム、ニオブ酸リチウ
ム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ケイ素の一種以上を選択して、単層または積層で用
いればよい。
【0104】
負極集電体層106は、チタン(Ti)、銅(Cu)、ステンレス、鉄(Fe)、金(A
u)、白金(Pt)およびニッケル(Ni)の一種以上を選択して、単層または積層で用
いればよい。また、上記金属の合金またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜を、
単層または積層で用いてもよい。
【0105】
正極活物質層103、及び負極活物質層105は、必要に応じて、活物質の密着性を高め
るための結着剤(バインダ)、を有してもよい。
【0106】
バインダとしては、例えば水溶性の高分子を含むことが好ましい。水溶性の高分子として
は、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロ
ース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース
およびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉、などを
用いることができる。
【0107】
また、バインダとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン
・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロ
ピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。これらのゴム材料は、
前述の水溶性高分子と併用して用いると、さらに好ましい。
【0108】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メ
チル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ
エチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、
ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソブチレン、ポリエチ
レンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニト
リル(PAN)、等の材料を用いることが好ましい。
【0109】
バインダは上記のうち二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
また、正極活物質層103、及び負極活物質層105は、活物質層の導電性を高めるため
の導電助剤等を有してもよい。
【0111】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊
維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維
、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カ
ーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノ
チューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例
えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)又はグラフェンなどの炭素材
料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金
属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
【0112】
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並びに機
械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用い
ることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
【0113】
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下
の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシ
ートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のこ
とをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェン
に含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに
酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPS(X線光電子分光法)で測定した場合にグラ
フェン全体の2%以上20%以下、好ましくは3%以上15%以下である。
【0114】
絶縁膜107の詳細は、実施の形態1における絶縁膜742に関する記載を参照すればよ
い。
【0115】
配線108の詳細は、実施の形態1における配線707に関する記載を参照すればよい。
【0116】
なお、バッテリー100は、
図5(B)に示す正極と負極の上下関係を入れ替えてもよい
。つまり、下から順に、負極集電体層106、負極活物質層105、固体電解質層104
、正極活物質層103、正極集電体層102を作製してもよい。
【0117】
例えば、正極活物質層103に膜厚が1μmのLiFePO4を用いた場合、バッテリー
100の容量を計算すると、およそ60μAh/cm2の容量が得られる。
【0118】
例えば、正極活物質層103に膜厚が1μmのLiCoO2を用いた場合、バッテリー1
00の容量を計算すると、およそ70μAh/cm2の容量が得られる。
【0119】
例えば、正極活物質層103に膜厚が1μmのLiMn2O4を用いた場合、バッテリー
100の容量を計算すると、およそ60μAh/cm2の容量が得られる。
【0120】
なお、上記の計算は全て、負極活物質層105にリチウムを仮定し、それぞれの正極活物
質の理論容量値(LiFePO4は170mAh/g、LiCoO2は137mAh/g
、LiMn2O4は148mAh/g)を用いて計算を行った。
【0121】
バッテリー100は、接続される半導体装置または電子機器に必要な電力量に応じて、バ
ッテリー100の面積及び容量を決定すればよい。例えば、正極活物質層103にLiF
ePO4を用いた場合、上記計算結果を用いると、バッテリー100の面積(正極活物質
層103と負極活物質層105が重なる部分の面積)を、1cm2以上、100cm2以
下に収めることで、バッテリー100の容量を60μAh以上、6mAh以下にすること
ができる。
【0122】
また、バッテリーに接続される半導体装置または電子機器に必要な電力量に応じて、複数
のバッテリー100を、直列および/または並列に接続してもよい。特に、積層された複
数のバッテリー100を直列および/または並列に接続することで、バッテリーのエネル
ギー密度を大きくし、且つ占有面積を小さくできるので好ましい。
【0123】
<バッテリーの構成例2>
図6に、本発明の一態様に含まれるバッテリーの一例を示す。
図6(A)は、バッテリー
120の上面図であり、
図6(A)における一点鎖線X-Yにおける断面図を、
図6(B
)に示す。なお、
図6(A)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または
省略して図示している。
【0124】
図6(B)に示すバッテリー120は、絶縁膜101と、絶縁膜101上の同一平面上に
形成された正極集電体層102および負極集電体層106と、正極集電体層102上の正
極活物質層103と、負極集電体層106上の負極活物質層105と、少なくとも正極活
物質層103および負極活物質層105と接する固体電解質層104と、を有し、正極集
電体層102および正極活物質層103は正極として機能し、負極集電体層106および
負極活物質層105は負極として機能する。さらに、固体電解質層104上に絶縁膜10
7が形成され、絶縁膜107の開口部には配線108が形成され、配線108は、正極集
電体層102または負極集電体層106に、電気的に接続されている。
【0125】
バッテリー120は、正極集電体層102と負極集電体層106が同一平面上に形成され
、
図6(B)のXY方向に正極と負極が存在する点で、
図5のバッテリー100と異なる
。バッテリー120を
図6(B)に示す構成にすることで、正極と負極の間にある一定の
距離を設けることが可能になり、正極と負極の短絡を防ぐことができる。
【0126】
バッテリー120のそれぞれの構成要素に関する詳細は、
図5のバッテリー100の記載
を参照すればよい。
【0127】
なお、バッテリー120の正極集電体層102と負極集電体層106を、同一材料で同時
に形成してもよい。正極と負極の集電体層を同一材料で同時に形成することで、製造工程
を簡略化することができる。
【0128】
<バッテリーの構成例3>
図7に、本発明の一態様に含まれるバッテリーの一例を示す。
図7(A)は、バッテリー
130の上面図であり、
図7(A)における一点鎖線X-Yにおける断面図を、
図7(B
)に示す。なお、
図7(A)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または
省略して図示している。
【0129】
図7(B)に示すバッテリー130は、絶縁膜101と、絶縁膜101上の同一平面上に
形成された正極集電体層102および負極集電体層106と、正極集電体層102上に形
成された正極活物質層103と、正極活物質層103、絶縁膜101及び負極集電体層1
06の上に形成された固体電解質層104と、固体電解質層104を介して正極活物質層
103の一部と重なり、固体電解質層104及び負極集電体層106上に形成された負極
活物質層105と、を有し、正極集電体層102および正極活物質層103は正極として
機能し、負極集電体層106および負極活物質層105は負極として機能する。さらに、
負極活物質層105上に絶縁膜107が形成され、絶縁膜107の開口部には配線108
が形成され、配線108は、正極集電体層102または負極集電体層106と、電気的に
接続されている。
【0130】
図7(B)に示すバッテリー130は、負極活物質層105が、固体電解質層104の上
に形成されている点で、
図6(B)に示すバッテリー120と異なる。バッテリー130
を
図7(B)に示す構成にすることで、短絡を防ぐために正極集電体層102と負極集電
体層106との間に、ある一定の距離を設けることができ、イオンの移動を効率よく行う
ために、正極活物質層103と負極活物質層105の距離を近づけることができる。
【0131】
バッテリー130のそれぞれの構成要素に関する詳細は、
図5のバッテリー100の記載
を参照すればよい。
【0132】
なお、バッテリー130は、正極と負極の位置関係を入れ替えてもよい。つまり、正極集
電体層102と負極集電体層106の位置関係、及び正極活物質層103と負極活物質層
105の位置関係を入れ替えても良い。
【0133】
また、バッテリー130の正極集電体層102と負極集電体層106を、同一工程で形成
してもよい。正極と負極の集電体層を同一工程で形成することで、製造工程を簡略化する
ことができる。
【0134】
<バッテリーの構成例4>
図8に、本発明の一態様に含まれるバッテリーの一例を示す。
図8(A)は、バッテリー
140の断面図である。
【0135】
図8(A)に示すバッテリー140は、絶縁膜101と、絶縁膜101上に形成された正
極集電体層102と、正極集電体層102上に形成された正極活物質層103と、正極活
物質層103上に形成された固体電解質層104と、固体電解質層104上に形成された
絶縁膜110と、固体電解質層104および絶縁膜110上に形成された負極活物質層1
05と、負極活物質層105上に形成された負極集電体層106と、を有し、正極集電体
層102及び正極活物質層103は正極として機能し、負極集電体層106及び負極活物
質層105は負極として機能する。さらに、負極集電体層106の上に、絶縁膜107が
形成されている。また、図示されていないが、正極集電体層102及び負極集電体層10
6は、配線を介して外部の装置に電気的に接続されている。
【0136】
図8(A)に示すバッテリー140は、固体電解質層104と負極活物質層105との間
に、絶縁膜110が存在する領域を有する。絶縁膜110は、正極と負極の短絡を防ぐ機
能を有する。
【0137】
絶縁膜110は、例えば、有機樹脂又は無機絶縁材料を用いることができる。有機樹脂と
しては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エ
ポキシ樹脂、又はフェノール樹脂等を用いることができる。無機絶縁材料としては、酸化
シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。絶縁膜110の作製が容易となる
ため、特に感光性の樹脂を用いることが好ましい。絶縁膜110の形成方法は、特に限定
されず、例えば、フォトリソグラフィ法、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法(インクジェ
ット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)等を用いればよい。
【0138】
バッテリー140のその他の構成要素に関する詳細は、
図5のバッテリー100の記載を
参照すればよい。
【0139】
なお、バッテリー140は
図8(B)に示すように、正極活物質層103の上に、絶縁膜
110を形成してもよい。
【0140】
なお、
図8(A)及び(B)に示すバッテリー140は、正極と負極の上下関係を入れ替
えてもよい。つまり、下から順に、負極集電体層106、負極活物質層105、固体電解
質層104、正極活物質層103、正極集電体層102を作製してもよい。
【0141】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合
わせて用いることができる。
【0142】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した酸化物半導体トランジスタついて図を用いて説
明する。なお、本実施の形態に示す酸化物半導体トランジスタは一例であり、本発明に用
いることができるトランジスタの形状はこれに限定されない。
【0143】
<酸化物半導体トランジスタの構成例>
図9(A)乃至
図9(D)は、トランジスタ600の上面図および断面図である。
図9(
A)は上面図であり、
図9(A)に示す一点鎖線Y1-Y2方向の断面が
図9(B)に相
当し、
図9(A)に示す一点鎖線X1-X2方向の断面が
図9(C)に相当し、
図9(A
)に示す一点鎖線X3-X4方向の断面が
図9(D)に相当する。なお、
図9(A)乃至
図9(D)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示して
いる。また、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル長方向、一点鎖線X1-X2方向をチャ
ネル幅方向と呼称する場合がある。
【0144】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトラン
ジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域
、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)と
ドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトラン
ジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのト
ランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では
、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値
または平均値とする。
【0145】
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で
電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域にお
ける、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトランジ
スタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのト
ランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では
、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値
または平均値とする。
【0146】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネ
ル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示される
チャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、
立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図
において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる
場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の上面に
形成されるチャネル領域の割合に対して、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合
が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よ
りも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0147】
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測
による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積
もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状
が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0148】
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが重なる
領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャ
ネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel W
idth)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合に
は、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細
書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。な
お、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチ
ャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、
値を決定することができる。
【0149】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求め
る場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャ
ネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0150】
トランジスタ600は、基板640上の絶縁膜652と、絶縁膜652上に、酸化物半導
体661、酸化物半導体662の順で形成された積層と、該積層の一部と電気的に接続す
るソース電極671およびドレイン電極672と、該積層の一部、ソース電極671の一
部、およびドレイン電極672の一部を覆う酸化物半導体663と、該積層の一部、ソー
ス電極671の一部、ドレイン電極672の一部、酸化物半導体663と重なるゲート絶
縁膜653およびゲート電極673と、ソース電極671およびドレイン電極672、な
らびにゲート電極673上の絶縁膜654と、絶縁膜654上の絶縁膜655を有する。
なお、酸化物半導体661、酸化物半導体662および酸化物半導体663をまとめて、
酸化物半導体660と呼称する。
【0151】
なお、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(又
は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体層
の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)に設けられて
いる。
【0152】
または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(
又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体
層の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)と、接触し
ている。または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくと
も一部(又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)など
の半導体層の少なくとも一部(又は全部)と、接触している。
【0153】
または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(
又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体
層の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)と、電気的
に接続されている。または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の
、少なくとも一部(又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体6
61)などの半導体層の一部(又は全部)と、電気的に接続されている。
【0154】
または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(
又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体
層の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)に、近接し
て配置されている。または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の
、少なくとも一部(又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体6
61)などの半導体層の一部(又は全部)に、近接して配置されている。
【0155】
または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(
又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体
層の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)の横側に配
置されている。または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少
なくとも一部(又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661
)などの半導体層の一部(又は全部)の横側に配置されている。
【0156】
または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(
又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体
層の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)の斜め上側
に配置されている。または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の
、少なくとも一部(又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体6
61)などの半導体層の一部(又は全部)の斜め上側に配置されている。
【0157】
または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少なくとも一部(
又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661)などの半導体
層の、表面、側面、上面、および/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)の上側に配
置されている。または、ソース電極671(および/又は、ドレイン電極672)の、少
なくとも一部(又は全部)は、酸化物半導体662(および/又は、酸化物半導体661
)などの半導体層の一部(又は全部)の上側に配置されている。
【0158】
なお、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを
採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることが
ある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替
えて用いることができるものとする。
【0159】
本発明の一態様のトランジスタは、チャネル長が10nm以上1000nm以下、好まし
くはチャネル長が20nm 以上500nm以下、より好ましくはチャネル長が30nm
以上300nm以下のトップゲート型構造である。
【0160】
以下に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0161】
<基板>
基板640は、単なる支持材料に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された
基板であってもよい。この場合、トランジスタ600のゲート電極673、ソース電極6
71、およびドレイン電極672の一つは、上記の他のデバイスと電気的に接続されてい
てもよい。
【0162】
<下地絶縁膜>
絶縁膜652は、基板640からの不純物の拡散を防止する役割を有するほか、酸化物半
導体660に酸素を供給する役割を担うことができる。したがって、絶縁膜652は酸素
を含むことが好ましく、化学量論組成よりも多い酸素を含むことがより好ましい。例えば
、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)法にて
、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1019atoms/cm3以上である
膜とする。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃
以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。また、上述のように基板64
0が他のデバイスが形成された基板である場合、絶縁膜652は、表面が平坦になるよう
にCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等で平坦
化処理を行うことが好ましい。
【0163】
絶縁膜652は、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シ
リコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化
ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどの
酸化物絶縁膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶
縁膜、または上記材料を混合した膜を用いて形成することができる。
【0164】
<酸化物半導体>
酸化物半導体660は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M-
Zn酸化物(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、SnまたはHf)がある
。とくに、酸化物半導体660としては、In-M-Zn酸化物(Mは、Ti、Ga、Y
、Zr、La、Ce、Nd、SnまたはHf)を用いると好ましい。
【0165】
ただし、酸化物半導体660は、インジウムを含む酸化物に限定されない。酸化物半導体
660は、例えば、Zn-Sn酸化物、Ga-Sn酸化物であっても構わない。
【0166】
酸化物半導体660がスパッタリング法で作製されたIn-M-Zn酸化物(Mは、Ti
、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、SnまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物
を成膜するために用いるターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満た
すことが好ましい。このようなターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn
=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:
M:Zn=2:1:3が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体660の原子数比はそ
れぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプ
ラスマイナス40%の変動を含む。
【0167】
次に、酸化物半導体661、酸化物半導体662、および酸化物半導体663の積層によ
り構成される酸化物半導体660の機能およびその効果について、
図10(B)に示すエ
ネルギーバンド構造図を用いて説明する。
図10(A)は、
図9(B)に示すトランジス
タ600のチャネル領域を拡大した図で、
図10(B)は、
図10(A)にA1-A2の
鎖線で示した部位のエネルギーバンド構造を示している。また、
図10(B)は、トラン
ジスタ600のチャネル領域のエネルギーバンド構造を示している。
【0168】
図10(B)中、Ec652、Ec661、Ec662、Ec663、Ec653は、そ
れぞれ、絶縁膜652、酸化物半導体661、酸化物半導体662、酸化物半導体663
、ゲート絶縁膜653の伝導帯下端のエネルギーを示している。
【0169】
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(「電子親和力」ともいう。)は、真
空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう。)からエネ
ルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(
HORIBA JOBIN YVON社 UT-300)を用いて測定できる。また、真
空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultrav
iolet Photoelectron Spectroscopy)装置(PHI社
VersaProbe)を用いて測定できる。
【0170】
なお、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のスパッタリングターゲットを用いて形
成したIn-Ga-Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.5eV、電子親和力は約4
.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4のスパッタリングター
ゲットを用いて形成したIn-Ga-Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.4eV、
電子親和力は約4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:6のス
パッタリングターゲットを用いて形成したIn-Ga-Zn酸化物のエネルギーギャップ
は約3.3eV、電子親和力は約4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn
=1:6:2のスパッタリングターゲットを用いて形成したIn-Ga-Zn酸化物のエ
ネルギーギャップは約3.9eV、電子親和力は約4.3eVである。また、原子数比が
In:Ga:Zn=1:6:8のスパッタリングターゲットを用いて形成したIn-Ga
-Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.5eV、電子親和力は約4.4eVである。
また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:6:10のスパッタリングターゲットを用いて
形成したIn-Ga-Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.5eV、電子親和力は約
4.5eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のスパッタリングタ
ーゲットを用いて形成したIn-Ga-Zn酸化物のエネルギーギャップは約3.2eV
、電子親和力は約4.7eVである。また、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2の
スパッタリングターゲットを用いて形成したIn-Ga-Zn酸化物のエネルギーギャッ
プは約2.8eV、電子親和力は約5.0eVである。
【0171】
絶縁膜652とゲート絶縁膜653は絶縁体であるため、Ec653とEc652は、E
c661、Ec662、およびEc663よりも真空準位に近い(電子親和力が小さい)
。
【0172】
また、Ec661は、Ec662よりも真空準位に近い。具体的には、Ec661は、E
c662よりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15e
V以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下真空準位に
近いことが好ましい。
【0173】
また、Ec663は、Ec662よりも真空準位に近い。具体的には、Ec663は、E
c662よりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15e
V以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下真空準位に
近いことが好ましい。
【0174】
また、酸化物半導体661と酸化物半導体662との界面近傍、および、酸化物半導体6
62と酸化物半導体663との界面近傍では、混合領域が形成されるため、伝導帯下端の
エネルギーは連続的に変化する。即ち、これらの界面において、準位は存在しないか、ほ
とんどない。
【0175】
従って、当該エネルギーバンド構造を有する積層構造において、電子は酸化物半導体66
2を主として移動することになる。そのため、酸化物半導体661と絶縁膜652との界
面、または、酸化物半導体663とゲート絶縁膜653との界面に準位が存在したとして
も、当該準位は電子の移動にほとんど影響しない。また、酸化物半導体661と酸化物半
導体662との界面、および酸化物半導体663と酸化物半導体662との界面に準位が
存在しないか、ほとんどないため、当該領域において電子の移動を阻害することもない。
従って、上記酸化物半導体の積層構造を有するトランジスタ600は、高い電界効果移動
度を実現することができる。
【0176】
なお、
図10Bに示すように、酸化物半導体661と絶縁膜652の界面、および酸化物
半導体663とゲート絶縁膜653の界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準
位Et600が形成され得るものの、酸化物半導体661、および酸化物半導体663が
あることにより、酸化物半導体662と当該トラップ準位とを遠ざけることができる。
【0177】
特に、本実施の形態に例示するトランジスタ600は、チャネル幅方向において、酸化物
半導体662の上面と側面が酸化物半導体663と接し、酸化物半導体662の下面が酸
化物半導体661と接して形成されている(
図9(C)参照)。このように、酸化物半導
体662を酸化物半導体661と酸化物半導体663で覆う構成とすることで、上記トラ
ップ準位の影響をさらに低減することができる。
【0178】
ただし、Ec661またはEc663と、Ec662とのエネルギー差が小さい場合、酸
化物半導体662の電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。ト
ラップ準位に電子が捕獲されることで、絶縁膜の界面にマイナスの固定電荷が生じ、トラ
ンジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
【0179】
従って、Ec661、およびEc663と、Ec662とのエネルギー差を、それぞれ0
.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変
動が低減され、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができるため、好ましい
。
【0180】
また、酸化物半導体661、および酸化物半導体663のバンドギャップは、酸化物半導
体662のバンドギャップよりも広いほうが好ましい。
【0181】
酸化物半導体661および酸化物半導体663には、例えば、Al、Ti、Ga、Ge、
Y、Zr、Sn、La、CeまたはHfを酸化物半導体662よりも高い原子数比で含む
材料を用いることができる。具体的には、当該原子数比を1.5倍以上、好ましくは2倍
以上、さらに好ましくは3倍以上とする。前述の元素は酸素と強く結合するため、酸素欠
損が酸化物半導体に生じることを抑制する機能を有する。すなわち、酸化物半導体661
および酸化物半導体663は、酸化物半導体662よりも酸素欠損が生じにくいというこ
とができる。
【0182】
なお、酸化物半導体661、酸化物半導体662、酸化物半導体663が、少なくともイ
ンジウム、亜鉛およびM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ceまたは
Hf等の金属)を含むIn-M-Zn酸化物であるとき、酸化物半導体661をIn:M
:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体662をIn:M:Zn=x2:
y2:z2[原子数比]、酸化物半導体663をIn:M:Zn=x3:y3:z3[原
子数比]とすると、y1/x1およびy3/x3がy2/x2よりも大きくなることが好
ましい。y1/x1およびy3/x3はy2/x2よりも1.5倍以上、好ましくは2倍
以上、さらに好ましくは3倍以上とする。このとき、酸化物半導体662において、y2
がx2以上であるとトランジスタの電気特性を安定させることができる。ただし、y2が
x2の3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y2は
x2の3倍未満であることが好ましい。
【0183】
酸化物半導体661および酸化物半導体663のZnおよびOを除いてのInおよびMの
原子数比率は、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上
、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする
。また、酸化物半導体662のZnおよびOを除いてのInおよびMの原子数比率は、好
ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましく
はInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
【0184】
酸化物半導体661および酸化物半導体663の厚さは、3nm以上100nm以下、好
ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物半導体662の厚さは、3nm以
上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上
50nm以下とする。また、酸化物半導体662は、酸化物半導体661および酸化物半
導体663より厚い方が好ましい。
【0185】
なお、酸化物半導体をチャネルとするトランジスタに安定した電気特性を付与するために
は、酸化物半導体中の不純物濃度を低減し、酸化物半導体を真性または実質的に真性にす
ることが有効である。ここで、実質的に真性とは、酸化物半導体のキャリア密度が、1×
1017/cm3未満であること、好ましくは1×1015/cm3未満であること、さ
らに好ましくは1×1013/cm3未満であることを指す。
【0186】
また、酸化物半導体において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金属元
素は不純物となる。例えば、水素および窒素はドナー準位の形成に寄与し、キャリア密度
を増大させてしまう。また、シリコンは酸化物半導体中で不純物準位の形成に寄与する。
当該不純物準位はトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある。し
たがって、酸化物半導体661、酸化物半導体662および酸化物半導体663の層中や
、それぞれの界面において不純物濃度を低減させることが好ましい。
【0187】
酸化物半導体を真性または実質的に真性とするためには、SIMS分析において、例えば
、酸化物半導体のある深さにおいて、または、酸化物半導体のある領域において、シリコ
ン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/c
m3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。また、水素濃
度は、例えば、酸化物半導体のある深さにおいて、または、酸化物半導体のある領域にお
いて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm
3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1
018atoms/cm3以下とする。また、窒素濃度は、例えば、酸化物半導体のある
深さにおいて、または、酸化物半導体のある領域において、5×1019atoms/c
m3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×101
8atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とす
る。
【0188】
また、酸化物半導体が結晶を含む場合、シリコンや炭素が高濃度で含まれると、酸化物半
導体の結晶性を低下させることがある。酸化物半導体の結晶性を低下させないためには、
例えば、酸化物半導体のある深さにおいて、または、酸化物半導体のある領域において、
シリコン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atom
s/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする部分を有
していればよい。また、例えば、酸化物半導体のある深さにおいて、または、酸化物半導
体のある領域において、炭素濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5
×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3
未満とする部分を有していればよい。
【0189】
また、上述のように高純度化された酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタの
オフ電流は極めて小さい。例えば、ソースとドレインとの間の電圧を0.1V、5V、ま
たは、10V程度とした場合に、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流を数y
A/μmから数zA/μmにまで低減することが可能となる。
【0190】
本実施の形態に例示するトランジスタ600は、酸化物半導体660のチャネル幅方向を
電気的に取り囲むようにゲート電極673が形成されているため、酸化物半導体660に
対しては垂直方向からのゲート電界に加えて、側面方向からのゲート電界が印加される(
図9(C)参照)。すなわち、酸化物半導体の全体的にゲート電界が印加させることとな
り、電流はチャネルとなる酸化物半導体662全体に流れるようになり、さらにオン電流
を高められる。
【0191】
<酸化物半導体の結晶構造>
次に、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0192】
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で
配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、
「略平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をい
う。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている
状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」と
は、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0193】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す
。
【0194】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに分けられる。ま
たは、酸化物半導体は、例えば、結晶性酸化物半導体と非晶質酸化物半導体とに分けられ
る。
【0195】
なお、非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(C Axis Aligned
Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物
半導体、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体などがある。また、結晶性酸化物半導
体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物
半導体などがある。
【0196】
まずは、CAAC-OS膜について説明する。
【0197】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0198】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micro
scope)によって、CAAC-OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(
高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。
一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC-OS膜は、結
晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0199】
試料面と略平行な方向から、CAAC-OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、
結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、
CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した
形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0200】
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC-OS膜の平面の高分解能TEM像を観察す
ると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認で
きる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0201】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略
垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0202】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0203】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0204】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0205】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、
当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(
ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとな
る。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要す
る時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が
高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定と
なる場合がある。
【0206】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性
の変動が小さい。
【0207】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0208】
微結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領
域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。微結晶酸化物半導体膜
に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大き
さであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微
結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc
-OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)
膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確
認できない場合がある。
【0209】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異なる
結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。し
たがって、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かな
い場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXR
D装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面
を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ
径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を
行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し
、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子
回折を行うと、スポットが観測される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子回折を
行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、
nc-OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが
観測される場合がある。
【0210】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。その
ため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、
nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-O
S膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0211】
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
【0212】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸化
物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
【0213】
非晶質酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶部を確認することができない。
【0214】
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out-of-p
lane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半
導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半
導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが
観測される。
【0215】
なお、酸化物半導体膜は、nc-OS膜と非晶質酸化物半導体膜との間の物性を示す構造
を有する場合がある。そのような構造を有する酸化物半導体膜を、特に非晶質ライク酸化
物半導体(a-like OS:amorphous-like Oxide Semi
conductor)膜と呼ぶ。
【0216】
a-like OS膜は、高分解能TEM像において鬆(ボイドともいう。)が観察され
る場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる
領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。a-like OS膜は、
TEMによる観察程度の微量な電子照射によって、結晶化が起こり、結晶部の成長が見ら
れる場合がある。一方、良質なnc-OS膜であれば、TEMによる観察程度の微量な電
子照射による結晶化はほとんど見られない。
【0217】
なお、a-like OS膜およびnc-OS膜の結晶部の大きさの計測は、高分解能T
EM像を用いて行うことができる。例えば、InGaZnO4の結晶は層状構造を有し、
In-O層の間に、Ga-Zn-O層を2層有する。InGaZnO4の結晶の単位格子
は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層を6層有する、計9層がc軸方向に層
状に重なった構造を有する。よって、これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の
格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nm
と求められている。そのため、高分解能TEM像における格子縞に着目し、格子縞の間隔
が0.28nm以上0.30nm以下である箇所においては、それぞれの格子縞がInG
aZnO4の結晶のa-b面に対応する。
【0218】
また、酸化物半導体膜は、構造ごとに密度が異なる場合がある。例えば、ある酸化物半導
体膜の組成がわかれば、該組成と同じ組成における単結晶の密度と比較することにより、
その酸化物半導体膜の構造を推定することができる。例えば、単結晶の密度に対し、a-
like OS膜の密度は78.6%以上92.3%未満となる。また、例えば、単結晶
の密度に対し、nc-OS膜の密度およびCAAC-OS膜の密度は92.3%以上10
0%未満となる。なお、単結晶の密度に対し密度が78%未満となる酸化物半導体膜は、
成膜すること自体が困難である。
【0219】
上記について、具体例を用いて説明する。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子
数比]を満たす酸化物半導体膜において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4
の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1
[原子数比]を満たす酸化物半導体膜において、a-like OS膜の密度は5.0g
/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:
1[原子数比]を満たす酸化物半導体膜において、nc-OS膜の密度およびCAAC-
OS膜の密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
【0220】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる
単結晶を組み合わせることにより、所望の組成の単結晶に相当する密度を算出することが
できる。所望の組成の単結晶の密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して
、加重平均を用いて算出すればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を
組み合わせて算出することが好ましい。
【0221】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、a-like OS膜、微結
晶酸化物半導体膜、CAAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0222】
また、CAAC-OS膜をスパッタリング法で成膜するために、以下の条件を適用するこ
とが好ましい。
【0223】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、処理室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素、および窒素など)
を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点
が-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0224】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグ
レーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましく
は200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平
板状又はペレット状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーシ
ョンが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0225】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体
積%とする。
【0226】
ターゲットの一例として、In-Ga-Zn系酸化物ターゲットについて以下に示す。
【0227】
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理
後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-G
a-Zn系酸化物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで
、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末が、2
:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、1:4:4、3:1:2
または2:1:3である。なお、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製す
るターゲットによって適宜変更すればよい。
【0228】
<ゲート電極>
ゲート電極673は、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)
、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)
、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(
Co)、ルテニウム(Ru)から選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金
、または上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、
ゲート電極673は、一層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコ
ンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、
窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層
する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する
二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタ
ン膜を形成する三層構造、Cu-Mn合金膜の単層構造、Cu-Mn合金膜上にCu膜を
積層する二層構造、Cu-Mn合金膜上にCu膜を積層し、さらにその上にCu-Mn合
金膜を積層する三層構造等がある。特にCu-Mn合金膜は、電気抵抗が低く、且つ、酸
素を含む絶縁膜との界面に酸化マンガンを形成し、Cuの拡散を防ぐことができるため好
ましい。
【0229】
また、ゲート電極673には、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム
酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸
化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添
加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0230】
<ゲート絶縁膜>
ゲート絶縁膜653には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒
化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化
イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび
酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、ゲート絶縁膜653は
上記材料の積層であってもよい。なお、ゲート絶縁膜653に、ランタン(La)、窒素
、ジルコニウム(Zr)などを、不純物として含んでいてもよい。
【0231】
また、ゲート絶縁膜653の積層構造の一例について説明する。ゲート絶縁膜653は、
例えば、酸素、窒素、シリコン、ハフニウムなどを有する。具体的には、酸化ハフニウム
、および酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含むと好ましい。
【0232】
酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがっ
て、等価酸化膜厚に対して物理的な膜厚を大きくできるため、等価酸化膜厚を10nm以
下または5nm以下とした場合でも、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることが
できる。即ち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構
造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率
を備える。したがって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有す
る酸化ハフニウムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系
などが挙げられる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0233】
<ソース電極およびドレイン電極>
ソース電極671およびドレイン電極672は、ゲート電極673と同様の材料で作製す
ることができる。特にCu-Mn合金膜は、電気抵抗が低く、且つ、酸化物半導体660
との界面に酸化マンガンを形成し、Cuの拡散を防ぐことができるため好ましい。
【0234】
<保護絶縁膜>
絶縁膜654は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングで
きる機能を有する。絶縁膜654を設けることで、酸化物半導体660からの酸素の外部
への拡散と、外部から酸化物半導体660への水素、水等の入り込みを防ぐことができる
。絶縁膜654としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜
としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム
等がある。なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキング効
果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化
物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜と
しては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、
酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等があ
る。
【0235】
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、および酸素の両方に対して膜を透過さ
せない遮断効果が高いので絶縁膜654に適用するのに好ましい。したがって、酸化アル
ミニウム膜は、トランジスタの作製工程中および作製後において、トランジスタの電気特
性の変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体660への混入防止、酸化物
半導体660を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体からの放出防止、絶縁膜6
52からの酸素の不必要な放出防止の効果を有する保護膜として用いることに適している
。また、酸化アルミニウム膜に含まれる酸素を酸化物半導体中に拡散させることもできる
。
【0236】
<層間絶縁膜>
また、絶縁膜654上には絶縁膜655が形成されていることが好ましい。当該絶縁膜に
は、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリ
コン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ラ
ンタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用い
ることができる。また、当該絶縁膜は上記材料の積層であってもよい。
【0237】
<第2のゲート電極>
なお、
図9において、トランジスタ600が1つのゲート電極を有する例を示したが、本
発明の一態様は、これに限定されない。トランジスタに複数のゲート電極が設けられてい
てもよい。一例として、トランジスタ600に、第2のゲート電極として導電膜674が
設けられている例を、
図11(A)乃至
図11(D)に示す。
図11(A)は上面図であ
り、
図11(A)に示す一点鎖線Y1-Y2方向の断面が
図11(B)に相当し、
図11
(A)に示す一点鎖線X1-X2方向の断面が
図11(C)に相当し、
図11(A)に示
す一点鎖線X3-X4方向の断面が
図11(D)に相当する。なお、
図11(A)乃至図
11(D)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示して
いる。
【0238】
導電膜674の構成は、ゲート電極673の記載を参照すればよい。導電膜674は、第
2のゲート電極としての機能を有する。なお、導電膜674は、ゲート電極673と同じ
電位が与えられてもよいし、異なる電位が与えられてもよい。
【0239】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合
わせて用いることができる。
【0240】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について、
図12を用いて説明を行う。
【0241】
図12(A)乃至
図12(F)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体
5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、操作キー500
5(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子5006、センサ5007(力
、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、
音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい
又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、等を有することがで
きる。
【0242】
図12(A)はモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ5009、
赤外線ポート5010、等を有することができる。
図12(B)は記録媒体を備えた携帯
型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表示
部5002、記録媒体読込部5011、等を有することができる。
図12(C)はゴーグ
ル型ディスプレイであり、上述したものの他に、第2表示部5002、支持部5012、
イヤホン5013、等を有することができる。
図12(D)は携帯型遊技機であり、上述
したものの他に、記録媒体読込部5011、等を有することができる。
図12(E)はテ
レビ受像機能付きデジタルカメラであり、上述したものの他に、アンテナ5014、シャ
ッターボタン5015、受像部5016、等を有することができる。
図12(F)は携帯
型遊技機であり、上述したものの他に、第2表示部5002、記録媒体読込部5011、
等を有することができる。
【0243】
図12(A)乃至
図12(F)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例
えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチ
パネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プロ
グラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコン
ピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受
信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表
示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器において
は、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報を
表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画
像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器において
は、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正
する機能、撮影した画像を記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した
画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図12(A)乃至
図12
(F)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有
することができる。
【0244】
本実施の形態において述べた電子機器は、複数のバッテリーを内蔵し、無線充電できる無
線受信部を有することを特徴とする。
【0245】
また、
図13(A)及び
図13(B)に電子機器の使用例について説明する。
【0246】
図13(A)は、車などの移動体の車内で情報端末を操作している例を示す。
【0247】
5103はハンドルであり、内部にアンテナを有している。ハンドル5103内部のアン
テナから電子機器5100に電力供給できるようにする。電子機器5100は複数のバッ
テリーを有しており、そのうちの少なくとも一つが無線充電によって充電される。ハンド
ル5103に電子機器5100を固定できるような治具を設けてもよい。ハンドル510
3に電子機器5100を固定すれば、ハンドフリーで電話、またはテレビ電話をかけるこ
ともできる。また、電子機器5100に設けたマイクで音声認証し、操縦者の音声によっ
て車を操縦することもできる。
【0248】
例えば、電子機器5100を停車中に操作して位置情報を表示部5102に表示させるこ
とができる。また、車の表示部5101に表示していない情報、例えばエンジン回転数、
ハンドル角度、温度、タイヤ空気圧などを表示部5102に表示させてもよい。表示部5
102はタッチ入力機能を有する。また、車外を撮影する1つまたは複数のカメラを用い
て車外の様子を表示部5102に表示させることもでき、例えばバックモニターとしても
用いることができる。また、居眠り運転を防止するために、車から走行速度などの情報を
無線で受信し、走行速度をモニタリングしながら走行時は、電子機器5100から運転手
を撮影し、目を閉じている状態が長いと電子機器5100を振動させる、または、警告音
や、音楽が流れるようにする設定などを運転手が適宜選択できる。また、車の停止時には
運転手の撮影を停止して省電力を図り、さらに停止中には無線で電子機器5100のバッ
テリーを充電することができるようにしてもよい。
【0249】
車などの移動体においては、上述したように様々な利用が考えられ、電子機器5100は
、そのいろいろな機能を持たせるために多くのセンサや、複数のアンテナが内蔵されるこ
とが望まれる。車などの移動体は、電源を有しているが制限があり、移動体を駆動させる
電力などを考慮すると、電子機器5100に使用する電力はなるべく少なく抑えることが
好ましく、特に電気自動車などは電子機器5100が使用する消費電力によって走行距離
が短くなる恐れがある。電子機器5100にいろいろな機能を持たせても同時に全ての機
能を使用することは少なく、必要に応じて1つの機能または2つの機能だけ使用すること
が多い。機能ごとにバッテリーを用意し、複数のバッテリーを有する電子機器5100に
いろいろな機能を持たせる場合、使用したい機能だけをオン状態としてそれぞれの機能に
対応するバッテリーから電力を供給することで省電力化が図れる。さらに、複数のバッテ
リーのうち、停止している機能に対応するバッテリーは、車に設けたアンテナから無線充
電することができる。
【0250】
また、
図13(B)は、飛行機などの機内で情報端末を操作している例を示す。飛行機な
どの機内においては個人の情報端末を使用できる時間などが制限されることもあり、長時
間のフライトである場合には飛行機に備え付けの情報端末が使用できることが望まれる。
【0251】
電子機器5200は、映画やゲームや宣伝などの映像を表示する表示部5202を有して
おり、通信機能により現在の飛行位置や、残りの到着時間などをリアルタイムに取得でき
る情報端末である。また、表示部5202はタッチ入力機能を有する。
【0252】
また、シート5201に設けられた凹部に電子機器5200をはめこみ、電子機器520
0と重なる位置にアンテナ設置部5203を設け、はめ込んでいる間は無線充電できるよ
うにする。また、電子機器5200は、使用者が体調不良などを乗務員に連絡したい場合
の電話や連絡ツールとしても機能させることができる。電子機器5200に翻訳機能など
を持たせておけば、乗務員とは言語の異なる乗員であっても電子機器5200の表示部5
202を用いてコミュニケーションをとることができる。また、隣り合った言語の異なる
乗員同士でも電子機器5200の表示部5202を用いてコミュニケーションをとること
ができる。また、例えば、乗員が寝ている間、表示部5202に「起こさないでください
」と英語表示させ続ける、など伝言板としても機能させることもできる。
【0253】
電子機器5200は、機能ごとにバッテリーを複数有し、複数のバッテリーを有する電子
機器であり、使用したい機能だけをオン状態とし、使用していない機能をオフ状態とし、
省電力化が図れる。さらに、複数のバッテリーのうち、停止している機能に対応するバッ
テリーは、アンテナ設置部5203から無線充電することができる。
【0254】
また、機内においては、危険物は持ち込むことが困難であり、小型バッテリーを複数有す
る電子機器5200は、安全性が高く、例え一つのバッテリーが爆発したとしてもサイズ
が小さいため、被害を最小限に抑えることができる。また、故障、爆発、または破壊によ
って、一つのバッテリーが使えなくなっても他のバッテリーを用いることで電子機器52
00が有する機能の一部は使用できる。
【0255】
また、飛行機の電力系統の異常があった場合、複数のシートにそれぞれある電子機器52
00の複数のバッテリーを非常用に使用できるように設計してもよい。複数のシートにそ
れぞれある電子機器5200は全て同じ製品であり、同じ設計であるため、非常用電源と
して直列接続できるようにシステムを構築してもよい。
【0256】
電子機器5200が有する複数の小型バッテリーとしては、リチウムポリマー電池などの
リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、レドック
スキャパシタのいずれか一、または複数種用いることができる。
【0257】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できる。
【0258】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である人工臓器の例を示す。
【0259】
図14は、ペースメーカの一例を示す断面模式図である。
【0260】
ペースメーカ本体5300は、バッテリー5301a、5301bと、レギュレータと、
制御回路と、アンテナ5304と、右心房へのワイヤ5302、右心室へのワイヤ530
3とを少なくとも有している。
【0261】
ペースメーカ本体5300は手術により体内に設置され、二本のワイヤは、人体の鎖骨下
静脈5305及び上大静脈5306を通過させて一方のワイヤ先端が右心室、もう一方の
ワイヤ先端が右心房に設置されるようにする。
【0262】
また、アンテナ5304で電力が受信でき、その電力は複数のバッテリー5301a、5
301bに充電され、ペースメーカの交換頻度を少なくすることができる。ペースメーカ
本体5300は複数のバッテリーを有しているため、安全性が高く、一方が故障したとし
てももう一方が機能させることができるため、補助電源としても機能する。また、ペース
メーカに設けるバッテリーをさらに複数に分けて薄型のバッテリーとすれば、CPUなど
を含む制御回路が設けられているプリント基板に搭載し、ペースメーカ本体5300の小
型化や、ペースメーカ本体5300の厚さを薄くすることができる。
【0263】
また、電力を受信できるアンテナ5304とは別に、生理信号を送信できるアンテナを有
していてもよく、例えば、脈拍、呼吸数、心拍数、体温などの生理信号を外部のモニタ装
置で確認できるような心臓活動を監視するシステムを構成してもよい。
【0264】
本実施の形態により、小型化や薄型化が実現できれば、ペースメーカ本体5300を埋め
込んだ場所に生じる凸部を目立たない大きさにすることができる。
【0265】
なお、このペースメーカの設置方法も一例であって、心臓疾患に合わせて様々な形態とな
る場合がある。
【0266】
また、本実施の形態は、ペースメーカに限定されない。ペースメーカよりも普及している
人工臓器として人工内耳がある。人工内耳は音を電気信号に変え、蝸牛の中に入れた刺激
装置で聴神経を直接刺激する装置である。
【0267】
人工内耳は手術で耳の奥などに埋め込む第1の装置と、音をマイクで拾って埋め込んだ第
1の装置へ送る第2の装置とで構成される。第1の装置と第2の装置は電気的には接続さ
れておらず、ワイヤレスで送受信するシステムである。第1の装置は、音を変換した電気
信号を受信するアンテナと、蝸牛に達するワイヤとを少なくとも有している。また、第2
の装置は、音を電気信号に変換するための音声処理部と、その電気信号を第1の装置に送
信する送信回路とを少なくとも有している。
【0268】
本実施の形態では、第1の装置と第2の装置の両方に小型のバッテリーを設けることで、
人工内耳の小型化を図ることができる。
【0269】
また、人工内耳は小児の段階で手術して埋め込むことが多く、小型化が望まれている。
【0270】
本実施の形態により、人工内耳の小型化が実現できれば、人工内耳を埋め込んだ場所に生
じる凸部を目立たない大きさにすることができる。
【0271】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できる。
【0272】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様であるウェアラブルな電子機器の例を示す。
【0273】
複雑な外形形状の電子機器とする場合、複数の小型のバッテリーを適宜、所定の場所に配
置させることで、電子機器の設計の自由度を上げることができる。
図15(A)に示すよ
うに電子機器5400は、円筒形であり、人体に装着するためには、1つのバッテリーよ
りも複数のバッテリーに分けて適宜配置することで重量感を緩和させることができる。ま
た、多くの機能を持たせると、待機時のバッテリーの消費が多くなるため、機能ごとにバ
ッテリーを用意する。複数のバッテリーを有する電子機器5400にいろいろな機能を持
たせる場合、使用したい機能だけをオン状態としてそれぞれの機能に対応するバッテリー
から電力を供給することで省電力化が図れる。
【0274】
図15(A)に示すように電子機器5400は、左腕の上腕部に位置する服5401の上
から装着している。服5401としては、軍服、防護服、スーツ、制服、宇宙服などの袖
のある服が挙げられる。装着する方法としては特に限定されないが、上腕部に重なる服に
縫製加工によって縫い付ける方式や、上腕部に重なる服にマジックテープ(登録商標)な
どを設けて電子機器5400を貼り付ける方式、バンドや留め金などで固定する方式、帯
状の板バネで巻きつける方式などがある。
【0275】
また、電子機器5400はアンテナを有しており、電子機器5400を肌の上から装着し
、無線充電を行っている場合の斜視図を
図15(B)に示す。
図15(B)では、上腕5
402に電子機器5400を装着している。皮膚に接するため、電子機器5400の肌に
触れる表面は、肌に優しいフィルムや、皮革、紙、布などの天然素材を用いることが好ま
しい。また、5412は、電力送信装置であり、電子機器5400に電波5413を用い
て無線で充電を行うことができる。また、電子機器5400は、電力だけでなく、その他
の情報も送受信できるアンテナや回路を設けることで、その他の情報も送受信できる。例
えば、電子機器5400をスマートフォンのように用いることもできる。
【0276】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できる。
【符号の説明】
【0277】
10 デバイス
11 CPU
12 バッテリー
13 レギュレータ
14 無線受信部
15 制御モジュール
16 表示部
17 バッテリー
18 レギュレータ
19 表示駆動回路
20 無線受信部
21 表示モジュール
22 通信回路
23 バッテリー
24 レギュレータ
25 無線受信部
26 通信モジュール
100 バッテリー
101 絶縁膜
102 正極集電体層
103 正極活物質層
104 固体電解質層
105 負極活物質層
106 負極集電体層
107 絶縁膜
108 配線
110 絶縁膜
120 バッテリー
130 バッテリー
140 バッテリー
600 トランジスタ
640 基板
652 絶縁膜
653 ゲート絶縁膜
654 絶縁膜
655 絶縁膜
660 酸化物半導体
661 酸化物半導体
662 酸化物半導体
663 酸化物半導体
671 ソース電極
672 ドレイン電極
673 ゲート電極
674 導電膜
700 基板
701 プラグ
702 配線
703 プラグ
704 プラグ
705 配線
706 プラグ
707 配線
720 トランジスタ
721 不純物領域
722 不純物領域
723 チャネル領域
724 ゲート絶縁膜
725 側壁絶縁層
726 ゲート電極
727 素子分離層
730 トランジスタ
731 絶縁膜
732 絶縁膜
740 バッテリー
741 絶縁膜
742 絶縁膜
750 トランジスタ
751 不純物領域
752 不純物領域
753 チャネル領域
754 ゲート絶縁膜
755 側壁絶縁層
756 ゲート電極
757 絶縁膜
761 絶縁膜
762 エアギャップ
763 絶縁膜
1000 半導体装置
1100 半導体装置
1200 半導体装置
1300 半導体装置
5000 筐体
5001 表示部
5002 表示部
5003 スピーカ
5004 LEDランプ
5005 操作キー
5006 接続端子
5007 センサ
5008 マイクロフォン
5009 スイッチ
5010 赤外線ポート
5011 記録媒体読込部
5012 支持部
5013 イヤホン
5014 アンテナ
5015 シャッターボタン
5016 受像部
5100 電子機器
5101 表示部
5102 表示部
5103 ハンドル
5200 電子機器
5201 シート
5202 表示部
5203 アンテナ設置部
5300 ペースメーカ本体
5301a バッテリー
5301b バッテリー
5302 ワイヤ
5303 ワイヤ
5304 アンテナ
5305 鎖骨下静脈
5306 上大静脈
5400 電子機器
5401 服
5402 上腕
5413 電波