(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法、装置、チップ、コンピュータ機器、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20221202BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20221202BHJP
H03M 13/37 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G06N10/00
G06N3/02
H03M13/37
(21)【出願番号】P 2021549530
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2020135047
(87)【国際公開番号】W WO2021208462
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】202010296660.4
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 一▲聰▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲勝▼誉
【審査官】関口 明紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110572166(CN,A)
【文献】Milap Sheth,Sara Zafar Jafarzadeh,and Vlad Gheorghiu,Neural ensemble decording for topological quantum error-correcting codes,PHYSICAL REVIEW A,2020年03月23日,インターネット:<URL:https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/PhysRevA.101.032338>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00
G06N 3/02
H03M 13/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法であって、
量子回路の誤りシンドローム情報を取得するステップであって、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である、ステップ、
ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得するステップであって、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指す、ステップ、及び
前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得するステップであって、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる、ステップを含むニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワーク復号器はカスケードされたm個の特徴抽出層を含み
、mは正の整数であり、
ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得する前記ステップは、
前記m個の特徴抽出層によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、前記特徴情報を獲得するステップを含み、
第1の特徴抽出層は前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、第iの特徴抽出層は1つ前の特徴抽出層の特徴抽出結果に対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ
、iは1より大きく且
つm以下の整数である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誤りシンドローム情報はT個のデータ配列を含み、各データ配列は前記量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対して1回の誤りシンドローム測定を行って獲得するものであり
、Tは1より大きい整数であり、
量子回路の誤りシンドローム情報を取得する前記ステップの後、
前記誤りシンドローム情報を少なくとも2つのデータユニットに分割するステップを更に含み、
1つのデータユニットは前記T個のデータ配列のうちの同じ位置にあるT個の配列ユニットを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記誤りシンドローム情報は前記量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズがある誤りシンドローム測定を行って獲得する真の誤りシンドローム情報であり、前記ニューラルネットワーク復号器は第1復号器及び第2復号器を含み、
前記第1復号器は前記真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、前記真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類を獲得することに用いられ、前記論理誤り類は前記量子回路に発生する誤りがマッピングを経た後の類であり、
前記第2復号器は前記真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、前記真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得することに用いられ、前記完全な誤りシンドローム情報とは前記量子回路に対してノイズがない誤りシンドローム測定を行って獲得する情報を指し、
前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得する前記ステップの後、
前記論理誤り類及び前記完全な誤りシンドローム情報にしたがって、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記論理誤り類及び前記完全な誤りシンドローム情報にしたがって、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定する前記ステップは、
前記論理誤り類に対応する第1誤り結果を取得するステップ、
前記完全な誤りシンドローム情報に対応する第2誤り結果を取得するステップ、及び
前記第1誤り結果及び前記第2誤り結果にしたがって、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定するステップを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記論理誤り類に対応する第1誤り結果を取得する前記ステップは、
前記論理誤り類に含まれる元素の中から、任意の1つの元素を前記第1誤り結果として選択するステップを含み、
前記論理誤り類中に少なくとも1つの等価の誤り元素が含まれる請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記完全な誤りシンドローム情報に対応する第2誤り結果を取得する前記ステップは、
マッピングテーブルを問い合わせて前記完全な誤りシンドローム情報のうちの各々の誤りシンドロームポイントにそれぞれ対応する簡単な誤りを取得するステップであって、前記マッピングテーブル中には少なくとも1組の誤りシンドロームポイントと簡単な誤りとの間のマッピング関係が含まれる、ステップ、及び
前記各々の誤りシンドロームポイントにそれぞれ対応する簡単な誤りを乗算して、前記第2誤り結果を獲得するステップを含む請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1誤り結果及び前記第2誤り結果にしたがって、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定する前記ステップは、
前記第1誤り結果と前記第2誤り結果の相乗積を計算し、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを獲得するステップを含む請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第2復号器の数はkであり
、kは正の整数であり且つ前記kは前記量子誤り訂正符号のスケールに関連し、
前記k個の第2復号器は前記真の誤りシンドローム情報に対してそれぞれ復号を行って、k個の完全な誤りシンドロームビットを獲得することに用いられ、
前記k個の完全な誤りシンドロームビットは統合されて前記完全な誤りシンドローム情報を獲得することに用いられる請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記ニューラルネットワーク復号器の訓練データの生成過程は以下のとおりである:
サンプル量子回路に含まれる物理量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、
前記サンプル量子回路に対応する補助量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、前記補助量子ビットは前記サンプル量子回路の誤りシンドローム情報を測定して獲得することに用いられ、
前記サンプル量子回路に対応する固有値測定回路に含まれる制御NOTゲート上で誤りを確率的に発生させ、前記固有値測定回路はスタビライザージェネレータの固有値を測定することに用いられ、
量子誤り訂正符号を採用して前記サンプル量子回路に対して誤りシンドローム測定を行う時に測定誤りを確率的に発生させ、
前記サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、前記訓練データを生成する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ニューラルネットワーク復号器の訓練データの生成過程は以下のとおりである:
サンプル量子回路に対して量子プロセストモグラフィを行い、前記サンプル量子回路のノイズモデルを抽出し、
前記ノイズモデルに基づいて前記サンプル量子回路の量子状態のノイズ作用下での進化に対してシミュレーションを行い、
前記サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、前記訓練データを生成する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得する前記ステップの後、
前記誤り結果情報にしたがって誤り訂正制御信号を生成するステップであって、前記誤り訂正制御信号は前記量子回路に生じた誤りに対して訂正を行うことに用いられる、ステップ、及び
前記量子回路に前記誤り訂正制御信号を送信するステップを更に含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ機器に応用される、ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法であって、
量子回路の誤りシンドローム情報を取得するステップであって、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である、ステップ、
ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得するステップであって、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指す、ステップ、及び
前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得するステップであって、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる、ステップを含むニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法。
【請求項14】
ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号装置であって、前記装置は、シンドローム情報取得モジュール、ブロック分割特徴抽出モジュール及び融合復号処理モジュールを含み、
前記シンドローム情報取得モジュールは、量子回路の誤りシンドローム情報を取得することに用いられ、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列であり、
前記ブロック分割特徴抽出モジュールは、ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得することに用いられ、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指し、
前記融合復号処理モジュールは、前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得することに用いられ、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号装置。
【請求項15】
チップであって、前記チップはプログラマブル論理回路及び/又はプログラム命令を含み、前記チップはコンピュータ機器上で演算し、請求項1~12のいずれか1項に記載のニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を
実施することに用いられるチップ。
【請求項16】
コンピュータ機器であって、前記コンピュータ機器はプロセッサ及びメモリを含み、前記メモリ中に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットは前記プロセッサがロードして実行することで、請求項1~12のいずれか1項に記載のニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を
実施するコンピュータ機器。
【請求項17】
コンピュータプログラムであって、前記
コンピュータプログラム中に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットはプロセッサがロードして実行することで、請求項1~12のいずれか1項に記載のニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を
実施する
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は人工知能及び量子の技術分野に関し、特にニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法、装置及びチップに関する。
【0002】
本願は2020年4月15日に提出された出願番号が第202010296660.4号であり、発明の名称が「ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法、装置及びチップ」である中国特許出願の優先権を主張し、その全部の内容を引用により本願に組み込む。
【背景技術】
【0003】
量子ビットが非常にノイズの影響を受けやすいため、物理量子ビット上で量子計算を直接実現することは従来の技術では、まだ現実的ではない。量子誤り訂正符号及びフォールトトレラント量子計算技術の発展は、原則上はノイズがある量子ビット上で任意の精度の量子計算を実現する可能性を提供する。
【0004】
量子情報に対して記憶を行うだけであれば、我々はあらゆる誤りシンドロームを検出して収集し、且つ最後にあらゆるシンドローム情報にしたがって誤り訂正を行うことができ、この誤り訂正方式は後処理と呼ばれる。しかし、フォールトトレラント量子計算を行う時、量子回路自体は誤りのタイプをリアルタイムに変更でき、シンドローム情報のみによって異なる時空間で発生する誤りを正確に追跡して特定することができない。量子計算をスムーズに行うことができるようにするために、誤りシンドロームを得た後に直ちに復号を行い、且つ量子アルゴリズムの各計算ステップの演算前(又は次回の誤り訂正の開始前)に誤り訂正を完了する必要がある。これはリアルタイムな誤り訂正と呼ばれ、大規模な汎用量子計算を実現するために不可欠な技術である。
【0005】
リアルタイムな誤り訂正は量子誤り訂正符号の復号アルゴリズムの演算時間マージンに対して高い剛性要件を提出したが、従来のいくつかの量子誤り訂正符号の復号アルゴリズムはリアルタイムな誤り訂正の要件を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施例はニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法、装置及びチップを提供し、量子誤り訂正符号の復号アルゴリズムの復号時間を短縮でき、それによりリアルタイムな誤り訂正の要件を満たす。前記技術的手段は以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本願の実施例はニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を提供し、
量子回路の誤りシンドローム情報を取得するステップであって、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である、ステップ、
ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得するステップであって、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指す、ステップ、及び
前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得するステップであって、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる、ステップを含む。
【0008】
他の態様では、本願の実施例はニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を提供し、コンピュータ機器に応用され、
量子回路の誤りシンドローム情報を取得するステップであって、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である、ステップ、
ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得するステップであって、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指す、ステップ、及び
前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得するステップであって、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる、ステップを含む。
【0009】
他の態様では、本願の実施例はニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号装置を提供し、前記装置はシンドローム情報取得モジュール、ブロック分割特徴抽出モジュール、及び融合復号処理モジュールを含み、
前記シンドローム情報取得モジュールは、量子回路の誤りシンドローム情報を取得することに用いられ、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列であり、
前記ブロック分割特徴抽出モジュールは、ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得することに用いられ、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指し、
前記融合復号処理モジュールは、前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得することに用いられ、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる。
【0010】
他の態様では、本願の実施例はコンピュータ機器を提供し、前記コンピュータ機器はプロセッサ及びメモリを含み、前記メモリ中に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットは前記プロセッサによりロードして実行されることで、上記ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現する。
【0011】
他の態様では、本願の実施例はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供し、前記記憶媒体中に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットはプロセッサによりロードして実行されることで、上記ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現する。
【0012】
別の態様では、本願の実施例はチップを提供し、前記チップはプログラマブル論理回路及び/又はプログラム命令を含み、前記チップはコンピュータ機器上で演算し、上記ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現することに用いられる。
【0013】
更なる態様では、本願の実施例はコンピュータプログラム製品を提供し、該コンピュータプログラム製品が実行されると、それは上記ニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現することに用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本願の実施例で提供される技術的手段は少なくとも以下の有益な効果を含む。
【0015】
量子回路の誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行うことによって、複数の組の特徴情報を獲得し、その後、更に上記複数の組の特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得する。ブロック分割特徴抽出の方式を採用するので、入力データに対して完全な特徴抽出を行うことに比べて、一方では、毎回の特徴抽出で獲得される特徴情報のチャネル数を減少させることができ、次回の特徴抽出の入力データが減少でき、これはニューラルネットワーク復号器における特徴抽出層の数の減少に寄与し、それによりニューラルネットワーク復号器の深さを短くし、ニューラルネットワーク復号器の深さが短くなるため、その復号時間も相応に短縮され、他方では、ブロック分割特徴抽出を行う時、複数の特徴抽出ユニットを採用して複数のブロックに対して並列する特徴抽出処理を行い、即ち、複数の特徴抽出ユニットは同期(又は同時と呼ばれる)に特徴抽出処理を行うことができ、これも特徴抽出に必要な消費時間の短縮に寄与し、それにより復号時間を短縮させ、最終的に、上記2つの要素を組み合わせて、ニューラルネットワーク復号器を採用して量子誤り訂正復号を行う時、復号時間を十分に短縮させ、それによりリアルタイムな誤り訂正の要件を満たす。
【0016】
本願の実施例における技術的手段をより明確に説明するために、以下、実施例の記述に使用される必要がある図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に記述される図面は単に本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な努力を必要としない前提下で、これらの図面にしたがって他の図面を取得することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願の実施例に示される1種の表面符号の構造模式図である。
【
図2】本願の実施例に示される1種の表面符号誤りが発生する模式図である。
【
図3】本願の一実施例で提供される解決手段の応用シーンの模式図である。
【
図4】
図3に示される解決手段の応用シーンに関する誤り訂正復号過程の模式図である。
【
図5】本願の一実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法のフローチャートである。
【
図6】本願の一実施例に示されるブロック分割特徴抽出の模式図である。
【
図7】本願の一実施例で提供される固有値測定回路の模式図である。
【
図8】本願の一実施例に示されるノイズを含む状況下での誤りシンドローム模式図である。
【
図9】本願の一実施例に示される3次元シンドローム分布の模式図である。
【
図10】本願の一実施例に示されるノイズ及びシンドロームの時空間特徴の断面図である。
【
図11】本願の他の実施例に示されるブロック分割特徴抽出の模式図である。
【
図12】本願の他の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法のフローチャートである。
【
図13】本願の一実施例に示される完全な誤りシンドローム情報の模式図である。
【
図14】本願の他の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法のフローチャートである。
【
図15】本願の一実施例に示されるフォールトトレラント誤り訂正復号過程の模式図である。
【
図16】本願の他の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法のフローチャートである。
【
図17】本願の一実施例に示されるシミュレーション結果比較の模式図である。
【
図18】本願の一実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号装置のブロック図である。
【
図19】本願の他の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号装置のブロック図である。
【
図20】本願の一実施例で提供されるコンピュータ機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、図面に関連付けて本願の実施形態を更に詳細に記述する。
【0019】
本願の実施例に対して紹介、説明を行う前、まず、本願に関するいくつかの用語に対して解釈、説明を行う。
【0020】
1:量子計算(Quantum Computation、QC):量子状態の重ね合わせ及びもつれの性質を利用して特定の計算タスクを迅速に完了する方式である。
【0021】
2:量子テレポーテーション(quantum teleportation):量子もつれ状態を配送し、且ついくつかの古典的な情報を伝送するという方式を利用して任意の未知量子状態を任意の距離に転送する技術である。
【0022】
3:量子誤り訂正符号(Quantum Error Correction、QEC):量子状態を量子多体系のヒルベルト空間のうちの1つの部分空間中にマッピングして符号化する方式である。量子ノイズは符号化される量子状態を他の部分空間に移すことができる。量子状態が位置する空間を連続的に観測すること(シンドローム抽出)によって、我々は量子ノイズを評定して訂正するとともに、符号化される量子状態に干渉しないことができ、それにより符号化される量子状態が量子ノイズの干渉を受けないように保護する。具体的には、1つの[[n,k,d]]量子誤り訂正符号はn個の物理量子ビット中にk個の論理量子ビットを符号化することを代表し、任意の単一量子ビット上で発生する任意の個数([数1])の誤りを訂正することに用いられる。
【0023】
【0024】
4:データ量子状態:量子計算時に量子情報を格納するためのデータ量子ビットの量子状態である。
【0025】
5:スタビライザージェネレータ(stabilizer generator):パリティチェック演算子とも呼ばれる。量子ノイズ(誤り)の発生はあるスタビライザージェネレータの固有値を変更でき、それにより我々はこれらの情報にしたがって量子誤り訂正を行うことができる。
【0026】
6:スタビライザー群(stabilizer group):スタビライザー群はスタビライザージェネレータにより生成される群である。k個のスタビライザージェネレータがあれば、スタビライザー群のうちに2k個の元素が含まれ、これは1つのアーベル群(Abelian group)である。
【0027】
7:誤りシンドローム(error syndrome):誤りがない場合、スタビライザージェネレータの固有値は0であり、量子ノイズが発生した場合、ある誤り訂正符号のスタビライザージェネレータ(パリティチェック演算子)の固有値は1になる。これらの0、1シンドロームビットからなるビットストリングは誤りシンドロームと呼ばれる。
【0028】
8:シンドローム測定回路:またチェック回路と呼ばれ、誤りシンドロームを取得する量子回路である。一般的な状況下で、該回路自体はノイズに汚染されることがある。
【0029】
9:トポロジー量子誤り訂正符号(topological quantum code):量子誤り訂正符号のうちの1種の特殊な種類である。この種類の誤り訂正符号の量子ビットは2次元より大きい格子配列上に分布する。格子は1つの高次元多様体の離散構造を構成する。この時、誤り訂正符号のスタビライザージェネレータは幾何学的に隣接し且つ限られる量子ビット上で定義され、全ては幾何学的に局在化され且つ容易に測定されるものである。このような誤り訂正符号の論理演算子が作用する量子ビットは格子点配列の多様体上に1種類のトポロジー非自明的幾何学的オブジェクトを構成する。
【0030】
10:表面符号(surface code):表面符号は2次元多様体上に定義される1種類のトポロジー量子誤り訂正符号である。そのスタビライザージェネレータが通常4つの量子ビットによりサポートされ(境界で2つの量子ビットによりサポートされる)、論理演算子が配列に跨るストリップ状の非自明的鎖である。表面符号の具体的な2次元構造(5×5、合計で25個のデータ量子ビット及び24個の補助量子ビットであり、2つの量子ビット上で任意に発生する誤りを訂正することができる)は
図1に示されるとおりであり、白色円11は量子計算のためのデータ量子ビットを代表し、黒色円12は補助量子ビットを代表する。補助量子ビットは初期に|0>又は|+>状態で準備される。斜線充填13及び白色充填14の四角形(又は半円形)は2種の異なるタイプのスタビライザージェネレータを代表し、それぞれZ誤り及びX誤りを検出することに用いられる。本願では、
図1に示される回転表面符号(rotated surface code)を使用し、これは約半分の物理量子ビットを節約でき、最近の実験上で認証しやすいためである。
【0031】
11:表面符号スケールL:表面符号配列周長の1/4である。
図1における表面符号配列L=5である。
【0032】
12:スタビライザー符号:1組のスタビライザージェネレータにより定義される量子誤り訂正符号である。スタビライザージェネレータは相互に交換し且つ独立してn個の量子ビット上で作用する1組のパウリ演算子である。この組のパウリ演算子の共通固有値が+1である固有部分空間はスタビライザー符号の符号化空間である。
【0033】
13:ホモロジー類(homology class):トポロジーでは、ホモロジー理論中のホモロジー類は境界が0である幾何学的サブオブジェクトの有限線型結合により表される。この線型結合の幾何学的オブジェクトが1より大きい次元の幾何学的オブジェクトの境界と見なすことができる場合、それは「0」(ここでの0とはトポロジー意味上の自明類-点まで連続的に収縮できる幾何学的オブジェクトを指す)とホモロジーであると考えられる。以下では、「誤り類」と混同する場合がある。
【0034】
14:X及びZ誤り:物理量子ビットの量子状態上で生じた、ランダムに生じたパウリX及びパウリZ進化誤りである。量子誤り訂正理論にしたがって、誤り訂正符号はX及びZ誤りを訂正できれば、単一量子ビット上で任意に発生する誤りを訂正できる。
【0035】
15:フォールトトレラント量子誤り訂正(Fault Tolerant Quantum Error Correction、FTQEC):量子ゲート及び量子測定を含む真の量子計算中の全ての操作過程にはノイズがある。つまり、量子誤り訂正のための回路自体にもノイズが含まれる。フォールトトレラント量子誤り訂正とは、我々が誤り訂正回路を巧妙に設計することによってノイズがある誤り訂正回路を使用して誤り訂正を行うことができ、かつ、依然として誤りを訂正し且つ誤りが時間的に拡散するのを阻止するという目的を達成できることを指す。
【0036】
16:フォールトトレラント量子計算(Fault Tolerant Quantum Computation、FTQC):即ち、量子誤り訂正保護を有する量子計算である。量子計算の過程において、量子誤り訂正回路自体及び量子ビット測定を含む任意の物理操作にはノイズがある。同時に古典的な操作にはノイズがないと仮定される。フォールトトレラント量子計算は、量子誤り訂正の解決手段を合理的に設計し、且つ符号化される論理量子状態に対して特定方式のゲート操作を行うという方法によって、ノイズがある量子ビットを使用して量子計算を行う過程において、誤りを効果的に制御して訂正するのを確保できる技術的手段である。
【0037】
17:物理量子ビット:真の物理デバイスを使用して実現する量子ビットである。
【0038】
18:論理量子ビット:誤り訂正符号で定義されたヒルベルト部分空間における数学的自由度である。その量子状態の記述は通常、多体もつれ状態であり、一般的に複数の物理量子ビットがヒルベルト空間の2次元部分空間と組み合わせるものである。フォールトトレラント量子計算は誤り訂正符号により保護される論理量子ビット上で演算する必要がある。
【0039】
19:物理量子ゲート/回路:物理量子ビット上で作用する量子ゲート/回路である。
【0040】
20:論理量子ゲート/回路:論理量子ビット上で作用する量子ゲート/回路である。
【0041】
21:データ誤り:データ量子ビット上で発生する誤りである。
【0042】
22:測定誤り:測定過程が完全ではないことにより引き起こされる誤りである。
【0043】
23:閾値定理(threshold theorem):フォールトトレラント量子計算の要件に合致する計算解決手段に対して、全ての操作の誤り率がある閾値より低い場合、よりよい誤り訂正符号、より多い量子ビット、又はより多い量子操作を使用することによって、計算の正確率を1に任意に近似させることができ、同時にこれらの追加のリソースオーバーヘッドは量子計算の指数加速に対して無視できる。
【0044】
24:ニューラルネットワーク:人工ニューラルネットワークは大量の簡単な基本素子-ニューロンが相互に連結されてなる自己適応非線形動的システムである。各ニューロンの構造及び機能は比較的簡単であるが、大量のニューロンの組み合わせにより発生するシステム挙動は非常に複雑であり、原則上は任意の関数を表現することができる。
【0045】
25:畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、CNN):畳み込みニューラルネットワークは畳み込み計算を含み且つ深さ構造を有する1種類のフィードフォワードニューラルネットワークである。畳み込み層(convolutional layer)は畳み込みニューラルネットワークのコア基盤であり、即ち、離散2次元又は3次元フィルター(畳み込み核とも呼ばれ、それぞれ2次元又は3次元行列である)は2次元又は3次元データビットマップと畳み込み操作を行う。
【0046】
26:正規化線形ユニット層(Rectified Linear Units layer、ReLU layer):正規化線形ユニット(Rectified Linear Units、ReLU)f(x)=max(0,x)をニューラルネットワークの活性化関数として使用する。
【0047】
27:誤差逆伝搬アルゴリズム(BP、Back Propagation):人工ニューラルネットワークにおける教師あり学習アルゴリズムである。BPニューラルネットワークアルゴリズムは理論上で任意の関数に近似でき、基本的な構造は非線形変化ユニットからなり、非常に強い非線形マッピング能力を有する。
【0048】
28:FPGA:Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイチップである。
【0049】
本願の技術的手段は量子技術及び人工知能の技術分野に関する。人工知能(Artificial Intelligence、AI)はデジタルコンピュータ又はデジタルコンピュータが制御する機械を利用して人間の知能を模擬、延伸及び拡張し、環境を感知し、知識を取得し且つ知識を使用して最適な結果を取得する理論、方法、技術及びアプリケーションシステムである。言い換えれば、人工知能はコンピュータ科学の1つの総合技術であり、それは知能の本質を理解し、且つ人類の知能と類似する方式で反応できる新しい知能機械を生産しようとする。人工知能は様々な知能機械の設計原理及び実現方法を研究し、機械に感知、推理、及び意思決定のを有させるものである。
【0050】
人工知能技術は総合学科であり、関する分野が広く、ハードウェア面の技術もあり、ソフトウェア面の技術もある。人工知能の基礎技術は一般的に、例えばセンサ、専用人工知能チップ、クラウドコンピューティング、分散型記憶、ビッグデータ処理技術、オペレーティング/インタラクティブシステム、メカトロニクス等の技術を含む。人工知能ソフトウェア技術は主にコンピュータ視覚技術、音声処理技術、自然言語処理技術及び機械学習/深層学習等のいくつかの方向を含む。
【0051】
機械学習(Machine Learning、ML)は多分野融合学科であり、確率論、統計学、近似論、凸解析、アルゴリズム複雑度理論等の複数の学科に関する。コンピュータがどのように人類の学習挙動を模擬又は実現することで、新しい知識又は技能を取得し、既存の知識構造を組織し直して自体の性能を絶えずに改善するかを専門的に研究する。機械学習は人工知能のコアであり、コンピュータに知能を有させる根本的な経路であり、その応用は人工知能の各々の分野に広がっている。機械学習及び深層学習は通常、人工ニューラルネットワーク、信念ネットワーク、強化学習、転移学習、帰納学習、教示学習等の技術を含む。
【0052】
人工知能技術の研究及び進歩に伴って、人工知能技術は、複数の分野、例えば、一般的なスマートホーム、スマートウェア機器、仮想アシスタント、スマートスピーカー、スマートマーケティング、無人運転、自動運転、ドローン、ロボット、スマート医療、スマートカスタマーサービスなどで研究及び応用を展開し、技術の発展に伴って、人工知能技術がより多くの分野で応用され、且つますます重要な価値を発揮すると信じている。
【0053】
本願の実施例で提供される解決手段は量子技術分野での人工知能の機械学習技術の応用に関し、具体的には、量子誤り訂正符号の復号アルゴリズムにおける機械学習技術の応用に関し、具体的には、以下の実施例によって説明を行う。
【0054】
一般的に、量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータに対して測定(パリティチェックとも呼ばれる)を行うことは、遠距離量子ゲートを導入する必要があり、同時に追加の量子ビットによって複雑な量子補助状態を準備してフォールトトレラント誤り訂正を完了する必要がある。従来の実験手段の制限により、現在では、人々は高精度な遠距離量子ゲートを実現する能力がなく、複雑な量子補助状態を準備する能力もない。一方、表面符号をフォールトトレラント量子誤り訂正及びフォールトトレラント量子計算の解決手段として使用すると、遠距離量子ゲートの使用及び複雑な量子補助状態の準備を必要とせず、従って、現在の技術を利用して汎用フォールトトレラント量子コンピュータを実現する可能性が高いと考えられている。
【0055】
1つの誤り訂正符号として、誤りが発生した後、我々はパリティチェックを行うことによって誤りシンドロームを獲得することができ、その後、これらのシンドロームにしたがって、我々は更に誤り訂正符号に対する具体的な復号アルゴリズムによって誤りの発生位置及びタイプ(X誤り又はZ誤りであるか、それとも両方、即ちY誤りであるか)を判断する必要がある。表面符号にとって、誤り及び誤りシンドロームは具体的な空間位置を有し、誤りがあってシンドロームを引き起こした場合、対応する位置の補助量子ビットの固有値は1であり(該位置に1つの点粒子が発生すると見なすことができる)、誤りがない場合、対応する位置の補助量子ビットの固有値は0である。この時、復号は以下の問題としてまとめることができる。1つの空間デジタル配列(2次元又は3次元、数値が0又は1である)を与え、特定の誤り発生モデル(error model)-量子ビット上で発生する誤り確率分布にしたがって、誤り発生の可能性が最も高いのはどの量子ビットであるか、及び具体的な誤りのタイプを推理し、この推理結果にしたがって誤り訂正を行う。
【0056】
図2に示すように、それは表面符号誤りが発生する模式図を示す。量子ビットは2次元配列の辺上にあり、誤りシンドロームを測定する補助量子ビットは2次元配列のノード上にある(これらのシンドロームは完全な測定である)。
図2における黒色辺21は誤りが発生する量子ビットにより形成される誤り鎖を代表し、斜線充填円部分22は誤りによりもたらすシンドローム値が1である点を代表する。点状シンドロームによって鎖状誤りを決定できれば復号を完了できる。
【0057】
上記で紹介したように、誤り訂正符号の復号アルゴリズム(復号器と呼ばれてもよい)を採用して誤りシンドローム情報に対して復号を行うと、相応の誤り結果情報を獲得でき、例えば誤りの発生位置及びタイプを含む。1つの復号器の復号能力は、復号アルゴリズム複雑度、復号時間、復号性能、及びリアルタイムな誤り訂正を行うのに適合できるか否かという4つの重要な指標から評価できる。
【0058】
復号アルゴリズム複雑度:復号アルゴリズムの演算に必要な全ての基本計算ステップを指し、計算複雑性に対応する。
【0059】
復号時間:ここでの時間は1つの仮想的な概念であり、真の復号時間とは異なるが、強い関連性がある。ここでは復号アルゴリズムを十分に並列化した後のアルゴリズム深さを指す。
【0060】
復号性能:ある特定のノイズモデルで復号した後、論理量子ビット上での誤り率で評価する。同一の物理量子ビット誤り率について、論理誤り率が低いほど、復号性能はよい。
【0061】
リアルタイムな誤り訂正に適合すること:量子ビットの寿命が短く(例を挙げて説明し、超伝導量子ビットの寿命は比較的良いプロセス下で約50マイクロ秒程度であり、誤りの発生が時間の増加に伴って徐々に蓄積するため、理論的には誤り訂正過程全体の消費時間が超伝導量子ビット寿命の1/100未満であることを要求し、つまり、誤り訂正時間の剛性マージンは500ns程度であり、そうでないと、誤り発生率は表面符号の誤り訂正能力を超えるおそれがある)、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)及びGPU(Graphics Processing Unit、グラフィックス処理装置)にはメモリの読み取り及び書き込み時間の不確定性が長時間の遅延を引き起こし、ニーズを満たすことができず、且つCPU/GPUの計算マイクロ構造が復号アルゴリズムに対して最適化を行わないため、性能指標を非常に達成しにくい。本願は復号アルゴリズムを特定の計算機器、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)上に移植することを考慮する。このような機器は簡単なステップを演算して並列化すること(例えばベクトルの内積、行列乗算等)により適合し、条件判定及びジャンプがある複雑な命令を演算することに適合しない。最後に、FPGA/ASICの大部分のチップ面積がリアルタイムな計算に用いられ、予約できるオンチップキャッシュが限られるため、これは、我々がチップにデータを過多にプリロードしてはならないことを要求する。
【0062】
ニューラルネットワークに基づいて復号器(ニューラルネットワーク復号器と呼ばれてもよい)を構築し、誤りシンドローム情報に対して復号を行うことによって、相応の誤り結果情報を獲得する。復号過程自体が(誤りシンドローム情報)を入力し(誤り結果情報)を出力する1つの関数であるため、ニューラルネットワークを構築し、且つ正確な入出力結果を用いて、如何に誤りの位置及びタイプを判断するかを学習する(教師あり学習)ようにニューラルネットワークを訓練することができる。ニューラルネットワーク復号器の異なる出力タイプにしたがって2種類に分けることができる。1種類は物理レベルであり、もう1種類は論理レベルである。物理レベルで出力されるモデルは、誤りが発生する具体的な量子ビット情報、即ち具体的にどのデータ量子ビットにどのタイプの誤りが発生するかを直接生成する。論理レベルで出力されるモデルは、1つの具体的な誤りが特定のマッピングを経た後の論理誤り類(表面符号にとってホモロジー類である)を出力し、その後、この論理誤り類にしたがって具体的にデータ量子ビット上で発生する等価誤りを逆推定できる(推定して得たこの誤りは必ずしも元に発生した誤りと完全に同じではないが、生じた効果は同様であり、これは量子誤り訂正符号の特有の誤り縮退現象である)。比較的一般的なニューラルネットワーク復号アルゴリズムは完全接続ネットワーク、CNN、又はRNN(Recurrent Neural Network、再帰型ニューラルネットワーク)等を使用する。ニューラルネットワークの演算の大部分は行列演算であり、高度並列化でき、且つ特定のハードウェア(例えばFPGA又はASIC)上で非常に短いリアルタイムな計算時間で演算するのに非常に適合し、大きな実用潜在力を備える。
【0063】
ニューラルネットワーク復号器の復号アルゴリズム複雑度、復号時間、復号性能及びリアルタイムな誤り訂正に適合するか否かはいずれも、選ばれるニューラルネットワークモデル自体に決められ、且つ物理レベル出力それとも論理レベル出力を使用するかに関連する。異なるニューラルネットワークについて、各面で大きな差異がある。表面符号スケールが小さい場合、ニューラルネットワークの構築は相対的に容易であり、そして復号性能は一般的にMWPM(Minimum Weight Perfect Matching、最小重み完全マッチング)復号アルゴリズムの性能をはるかに超えることができ、且つ最適な復号器(optimal decoder)に近い。しかし、従来のニューラルネットワークモデルは普遍的にスケールが大きな表面符号に対して復号を行うことができず、この表面符号のニューラルネットワークの事前訓練を達成するために必要なサンプル数がL(即ち上記に紹介した表面符号スケール)に伴って指数関数的に上昇するためである。同時に、スケールが大きな表面符号に対する既知のニューラルネットワークは深さが深く、必ずしもリアルタイムな誤り訂正に適合しない。一方、ニューラルネットワークアルゴリズム自体はFPGA/ASICで実現するのに非常に適合するが、物理レベル復号器について、復号時間が一定ではなく、極端な状況下で復号時間が非常に長くなることはある。
【0064】
他の復号アルゴリズムに比べて、ニューラルネットワーク復号器はスケールが小さな表面符号に対してよりよい復号性能を達成でき、同時に使用する復号時間も相対的に短い。本願の技術的手段はニューラルネットワークアルゴリズムフレームに基づき、それが直面する問題を解決しようとする。本願の技術的手段で提供されるニューラルネットワーク復号器は、分割統治(divide and conquer)と類似する構想を取り、誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行う。このように、我々はニューラルネットワークの深さが浅いことを確保でき、深さが復号時間の下限を与えるためである。また、ニューラルネットワーク復号器は論理レベル出力を使用でき、その複雑度の低減に寄与し、それにより更に復号時間を短縮させる。同時にリアルタイムな誤り訂正のニーズに適応するために、本願の技術的手段で設計されるネットワーク構造も非常に簡単であり、全ての基本計算は比較的容易にハードウェアを使用して並列化して直接完了することができ(行列乗算及び加算)、同時にネットワークパラメータ総量は対応する表面符号のサイズ増加に伴って緩やかに増加する(最大でLに伴って多項式的に増加し、全てのネットワークパラメータはFPGA/ASICオンチップキャッシュにプリロードする必要があり、従って、数は多すぎてはならない)。同時に、必要な復号性能を達成するために該ニューラルネットワーク復号器を訓練するのに使用するサンプル数及びデータ体積もLに伴って緩やかに増加し、このように、我々の復号器は拡張可能である。数値シミュレーションから、我々の復号器はLが大きくない状況下で復号性能がMWPMを超え、優れた復号性能を有することを示す。
【0065】
図3に参照されるように、それは本願の一実施例で提供される解決手段の応用シーンの模式図を示す。
図3に示すように、該応用シーンは超伝導量子計算プラットフォームであってもよく、該応用シーンは、量子回路31、希釈冷凍機32、制御機器33及びコンピュータ34を含む。
【0066】
量子回路31は物理量子ビット上で作用する回路であり、量子回路31は量子チップ、例えば絶対零度付近に位置する超伝導量子チップとして実現できる。希釈冷凍機32は超伝導量子チップのために絶対零度の環境を提供することに用いられる。
【0067】
制御機器33は量子回路31に対して制御を行うことに用いられ、コンピュータ34は制御機器33に対して制御を行うことに用いられる。例えば、プログラミングされた量子プログラムはコンピュータ34におけるソフトウェアにより命令としてコンパイルされ、制御機器33に送信され、制御機器33は上記命令を電子/マイクロ波制御信号に変換して希釈冷凍機32に入力し、10mKに位置する超伝導量子ビットを制御する。読み取りの過程はそれと逆である。
【0068】
図4に示すように、本願の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法は制御機器33と結合する必要があり、制御機器33の総合制御システム33a(例えば中央ボードFPGA)は量子回路31から誤りシンドローム情報を読み取った後、総合制御システム33aは誤り訂正命令を制御機器33の誤り訂正モジュール33bに送信し、該誤り訂正命令には上記量子回路31の誤りシンドローム情報が含まれ、誤り訂正モジュール33bはFPGA又はASICチップであってもよく、誤り訂正モジュール33bはニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号アルゴリズムを演算し、誤りシンドローム情報に対して復号を行い、且つ復号して獲得した誤り結果情報を誤り訂正制御信号にリアルタイムに変換して量子回路31に送信して誤り訂正を行う。
【0069】
以下の紹介を容易にするために、ここで、まず復号量子誤り訂正符号の基本アルゴリズムを紹介する。1つの誤り訂正符号として、誤りが発生した後、パリティチェックを行うことによって誤りシンドローム(syndrome)を獲得することができる。これらのシンドロームにしたがって、更に誤り訂正符号に対する具体的な復号アルゴリズムによって誤りの発生位置及びタイプ(X誤り又はZ誤りであるか、それとも両方、即ちY誤りであるか)を判断する必要がある。つまり、復号過程は、1つの誤り発生モデル(量子ビット上で発生する誤りの確率分布)及び単一の測定から獲得された症状を与え、発生する可能性が最も高い誤りが何かであることを推理することと等価であってもよい。
【0070】
一般的な誤り訂正符号とは異なり、表面符号の誤り及びシンドロームはいずれも幾何学的意味を有し、表面符号にとって、誤り訂正過程自体の誤りを考慮しなければ(即ち、測定過程が完全であれば、完全シンドロームと呼ばれる)、誤りシンドロームは0、1からなる1つの2次元配列画像であると考えられてもよい。表面符号にとって、これらのシンドロームの位置によって誤りの発生位置及びタイプを判定する。量子誤り訂正理論にしたがって、我々は2種類の誤りを訂正する必要があり、即ち、X及びZ誤りであり、このように対応して、X及びZ誤りに関するシンドロームもある。我々はそれぞれX及びZ誤りに対して誤り訂正を行うことができ、この2種類のシンドロームの誤り訂正方式は類似するものである。より最適化される解決手段は同時にX及びZ誤りに対して誤り訂正を行うべきであり、これは多くの状況下で、この2種類の誤りが関連するためである(MWPMは同時に2種類の誤りのシンドロームの関連を利用できない)。ノイズがない(完全)誤り症状に対して、我々はまず最大事後確率(Maximum A Posterior、MAP)アルゴリズムを紹介し、同時に最適なアルゴリズムである。
【0071】
Sを[[n,k,d]]量子誤り訂正符号のスタビライザー群(stabilizer group)として定義し、Lをnビットのパウリ群におけるSのある標準サブ類として定義する。任意に発生するパウリ誤りEに対して、我々はいつでもそれを次のように分解できる。
【0072】
E=L(E)T(S(E))
【0073】
ここで、L(E)∈Lはある標準サブ類Lに属し、且つEの関数であり、S(E)は誤りEのシンドロームであり、誤りシンドロームにしたがってマッピングする1つの誤りであり、該マッピングにより1組の誤りセットを生成し、シンドロームセットと1対1で対応し、T(S(E))は簡単な誤り訂正(simple decoding)と呼ばれ、この誤りセットのうちの元素は簡単な誤り(simple error)と呼ばれる。T(S(E))の選びには大きな任意性があるが、ある特定の選び方式は我々がよりよく理解することに寄与する。ここで我々はこれを詳しく説明しない。他の誤りE’に対して、EとE’は同じ誤りシンドロームを有する場合、以下のようになる。
【0074】
E’=L(E’)T(S(E’)=S(E))
【0075】
L(E’)とL(E)はいずれも同一の標準サブ類Lに属すれば、この2つの誤りはスタビライザー群のうちの1つの元素だけが異なり、つまり、それらの符号化空間に対する作用は等価であり、我々はE’を選んでEに対して誤り訂正を行うことができ(即ち、真に発生する誤りはEであるが、実際にE’にしたがって誤り訂正を行うことができ、両方が等価であるためである)、同様の効果を獲得する。表面符号をはじめとするトポロジー量子誤り訂正符号に対して、異なる標準サブ類Lは、演算子が異なるトポロジーホモロジー類に属することを代表する。トポロジー誤り訂正符号に対して、以下では我々は「ホモロジー類」又は「誤り類」等の用語を使用して標準サブ類を代表する。なお、ホモロジー類に属する誤りはいずれの誤りシンドロームも発生せず(誤りシンドロームはいずれも0である)、従って、このような誤りは論理誤りと等価である。原因としては、ホモロジー類の誤りは数学上で発生すると論理誤りである。論理誤りは符号化空間で発生し、それに対してシンドローム測定を行った結果はいずれも0である。
【0076】
このように、発生する誤りEを与え、MAP復号器の推理過程は以下の[数2]のように記載できる。
【0077】
【0078】
即ち、我々は簡単な誤りを取り除いた後、誤りがどの標準化サブ類(nomarlizer class)に属する可能性が最も高いかを判定すればよく、その後、該類のうちの任意の元素を選んで簡単な復号器の出力誤りを乗算して、訂正する必要がある誤りを獲得することができる。つまり、復号問題は1つの分類問題と等価である。表面符号にとって、標準化サブ類に対応する3つの類は、論理量子ビットのX、Y及びZの3つの演算子及びそれらの等価演算子のセットである。これは正に高性能ニューラルネットワーク分類器によって効果的に解決できる(最適解に近似する)。非常に高い正確率でホモロジー類[数3]を推定した後、誤りシンドロームが完全であるため、我々は直ちに簡単な誤りT(S(E))を獲得して[数3]のうちの任意の元素[数4]を乗算して我々が訂正する必要がある誤りを獲得することができる(以下、[式1]を参照)。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
一般的な誤り訂正符号と比較して、表面符号の誤り及びシンドロームはいずれも幾何学的意味を有し、表面符号にとって、誤り訂正過程自体の誤りを考慮しなければ(即ち、シンドローム測定過程全体は完全であり、完全な誤りシンドローム情報と呼ばれる)、誤りシンドローム情報は0、1からなる1つの2次元配列画像であると考えられてもよい。表面符号にとって、誤り訂正はこれらのシンドロームの位置によって誤りの発生位置及びタイプを判定することである。以降の記述の便宜上、ここで、我々は幾何学的意味を有する1類の簡単な復号器を紹介し-この簡単な復号器は我々のフォールトトレラント誤り訂正復号フレームを理解することに対して比較的直感的な描写を提供でき-我々はそれを「最小境界距離」復号器と呼ぶ。表面符号のパリティチェック演算子はそれぞれX誤り及びZ誤りを測定する。この2つの誤りが対称であるため、我々はそのうちの1種を考慮し、Z誤りであると仮定する。回転表面符号に対して、任意の1つの値が1であるシンドロームビットについては、我々はそれが1つのX演算子鎖(誤り鎖)により生成されると見なし、且つ該鎖はシンドロームポイントを2つの境界の任意1つに接続するように作用する。我々はこれら全ての鎖のうち境界からの距離が最小のものを取り、このシンドロームポイントに対応する簡単な誤りを記録する。L×Lの回転表面符号について、X類誤りに対して、我々は(L2-1)/2個の値が1であるシンドロームに対していずれも「最小境界距離」復号器を使用して復号を行い、且つその対応する簡単な誤りを以下のように記録する必要がある。
【0083】
{Eα|α=1,...(L2-1)/2}
【0084】
その後、我々は測定してシンドローム(以下、[数6])を獲得する時、我々は簡単な復号器の復号出力が以下、[数7]であると定義し、即ち、全てのシンドロームビットが1である簡単な誤りの相乗積である。同様に、Z類誤りに対して、(L2-1)/2個の値が1であるシンドロームに対してもいずれも「最小境界距離」復号器を使用して復号を行い、且つその対応する簡単な誤りを記録する必要がある。最終的に(L2-1)組のマッピング関係を含む1つのマッピングテーブルを構築し、各組のマッピング関係は1つの誤りシンドロームポイントと1つの簡単な誤りとの間のマッピング関係を含む。なお、簡単な復号過程は並列でき(本質的には1つのルックアップ過程後の和である)、実際の状況下で、時間複雑度はO(1)であってもよい。
【0085】
【0086】
【0087】
MAP又は最適アルゴリズムを使用して復号を行う複雑性はNP-complete(NP完全又はNP完備)であり、つまり我々は近似の方法を使用して最適解に近似する必要がある。量子誤り訂正符号の各種類の復号アルゴリズムはいずれも最適解の近似であると考えられてもよい。本願の技術的手段は主にニューラルネットワーク復号器を取って近似を行う。
【0088】
本願の方法実施例に対して紹介、説明を行う前に、まず該方法の演算環境(又は実行主体と呼ばれる)に対して紹介、説明を行う。本願の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法は、古典的なコンピュータ(例えばPC(Personal Computer、パーソナルコンピュータ)、サーバ、計算ホストコンピュータ等)により実行して実現されてもよく、例えば古典的なコンピュータによって相応なコンピュータプログラムを実行して該方法を実現し、量子コンピュータにより実行されてもよく、古典的なコンピュータと量子コンピュータの混合機器環境下で実行されてもよく、例えば量子コンピュータにより量子回路の誤りシンドローム情報を取得する等のステップを実行し、次に古典的なコンピュータにより誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出及び融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得する等のステップを実行し、量子回路を量子コンピュータ上に直接配備して実行するため、古典的なコンピュータ上で上記量子回路を模擬することに比べて、相応な計算結果は理論上でより優れているはずである。
【0089】
下記の方法実施例では、説明を容易にするために、コンピュータ機器(
図3に示される応用シーンの制御機器)のみを各ステップの実行主体として紹介、説明を行う。理解すべきものとして、該コンピュータ機器は古典的なコンピュータであってもよく、量子コンピュータであってもよく、更に古典的なコンピュータと量子コンピュータの混合実行環境を含んでもよく、本願の実施例はこれを限定しない。
【0090】
以下、いくつかの実施例によって本願の技術的手段に対して紹介、説明を行う。
【0091】
図5に参照されるように、それは本願の一実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法のフローチャートを示し、該方法は
図3に示される応用シーンの制御機器に応用でき、該方法は以下のいくつかのステップ(501~503)を含んでもよい。
【0092】
ステップ501:量子回路の誤りシンドローム情報を取得し、該誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である。
【0093】
量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対して誤りシンドローム測定を行って、相応の誤りシンドローム情報を獲得でき、該誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である。選択的に、誤りシンドローム情報は0及び1からなる2次元又は3次元のデータ配列である。例えば、誤りがない場合、スタビライザージェネレータの固有値は0であり、誤りが発生する場合、スタビライザージェネレータの固有値は1である。
【0094】
量子誤り訂正符号が表面符号であることを例とすると、表面符号にとって、誤り及び誤りシンドロームは具体的な空間位置を有する。誤りがあってシンドロームを引き起こす場合、対応する位置の補助量子ビットの固有値は1であり(該位置に1つの点粒子が発生すると見なすことができる)、誤りがない場合、対応する位置の補助量子ビットの固有値は0である。従って、表面符号にとって、誤り訂正過程自体の誤りを考慮しなければ(即ち、測定過程が完全であれば、完全シンドロームと呼ばれる)、誤りシンドローム情報は0、1からなる1つの2次元配列画像であると考えられてもよく、
図6に示される。
【0095】
ステップ502:ニューラルネットワーク復号器によって誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得する。
【0096】
ステップ503:ニューラルネットワーク復号器によって特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得し、該誤り結果情報は量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる。
【0097】
ニューラルネットワーク復号器はニューラルネットワークに基づいて構築した誤りシンドローム情報に対して復号を行うための機械学習モデルである。該ニューラルネットワーク復号器の入力データは誤りシンドローム情報であり、出力データは該誤りシンドローム情報に対応する誤り結果情報である。ニューラルネットワーク復号器は誤りシンドローム情報に対して特徴抽出を行う時、分割統治の構想を使用し、ブロック分割特徴抽出の方式を採用する。即ち、ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられる。所謂ブロック分割特徴抽出とは、ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層が特徴情報を抽出する時、入力データに対してブロック分割を行い、複数の小さなブロックに分割し、各々の小さなブロックに対してそれぞれ特徴抽出を行うことを指す。即ち、ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して該少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指す。ここで、少なくとも2つのブロックと少なくとも2つの特徴抽出ユニットは1対1で対応し、各特徴抽出ユニットは1つのブロックに対して特徴抽出を行うことに用いられ、ブロック及び特徴抽出ユニットの数は同じである。また、上記少なくとも2つのブロックが特徴抽出を行う時、並列するものであり、即ち、同時に行うものであり、それにより特徴抽出に必要な消費時間の短縮に寄与する。
【0098】
我々はまず完全な誤りシンドロームを取得できる状況を考慮すると、この状況はモデルの有効性を検査できる。復号問題が1つの分類問題と等価であってもよいため、我々は従来のニューラルネットワークを使用して異なる入力の誤りシンドロームに対して分類を行うことを試みることができる。最も簡単な仕方は1つの完全接続ネットワークを使用することであり、入力層(input layer)、中間隠れ層(hidden layers)、出力層(output layer)からなる。出力層は分類する必要がある4つのホモロジー類(I,X,Y,Z)のみを含み、ここで、Iは誤りがないことを表し、XはX誤りを表し、ZはZ誤りを表し、YはX誤りがあるだけでなくZ誤りがあることを表す。問題は、このようなネットワークは復号する必要がある表面符号のスケールがますます大きくなることに伴って、含まれるパラメータの数が指数関数的に上昇し、訓練難度(必要なデータセット及び収束時間)も指数関数的に上昇することである。この状況に対処するために、本願は分割統治の構想を使用し、ブロック分割特徴抽出の方式を採用することを提案する。即ち、大きな表面符号を小さなブロックと小さなブロックに分割し、小さなブロックに対して「分類」(ここでの「分類」とは特徴情報の抽出を指す)を行い、その後、分類の情報(各々の類の確率)を上位層に伝達し、その後、上位層は下位層から伝達された情報及び上位層の等価の誤りシンドロームにしたがって該層の各誤り類の発生確率を判断する。このように再帰的に、表面符号全体の誤り類の確率を最終的にとりまとめた後に分類及び誤り訂正を行う。
【0099】
例示的な実施例では、ニューラルネットワーク復号器はカスケードされたm個の特徴抽出層を含み、mは正の整数である。特徴抽出層は特徴抽出用のニューラルネットワーク層である。上記ステップ502は、m個の特徴抽出層によって誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得することを含んでもよい。ここで、第1の特徴抽出層は誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、第iの特徴抽出層は1つ前の特徴抽出層の特徴抽出結果に対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、iは1より大きく且つm以下の整数である。
【0100】
選択的に、ニューラルネットワーク復号器はカスケードされた複数の特徴融合層を更に含み、特徴融合層は特徴抽出層が抽出した特徴情報に対して融合復号処理を行うためのニューラルネットワーク層である。
【0101】
畳み込みニューラルネットワークを例とすると、特徴抽出層は畳み込み層であり、特徴融合層は完全接続層であってもよい。ニューラルネットワーク復号器は入力層、少なくとも1つの畳み込み層、少なくとも1つの完全接続層及び出力層を含む。畳み込み層の数は通常複数であり、完全接続層の数も通常複数である。
図6に示すように、誤りシンドローム情報61は複数のデータユニットに分割され、
図6において誤りシンドローム情報が4×4データ配列であることを例とすると、それは4つのデータユニットに分割され(異なるデータユニットは
図6において異なる充填で示される)、各データユニットは2×2サブ配列である。誤りシンドローム情報61はニューラルネットワーク復号器62中に入力される。ニューラルネットワーク復号器62の畳み込み層について、ブロック分割特徴抽出の方式を採用し、異なるデータユニットが同時に1つの同一の畳み込み核により読み取られ、C個の特徴を読み取る必要があれば、C個のこのような畳み込み核を必要とする。ここで、Cは畳み込み層の対応するチャネル数である。スケールがLである1つの表面符号について、毎回畳み込みに対応するサブ配列のスケールがlであり、我々の第1層は1つのチャネルからC
1(L)個のチャネルにマッピングする1つのl×l畳み込み核を必要とし、第2層はC
1(L)個のチャネルからC
2(L)個のチャネルにマッピングするl×l畳み込み核を必要とし、このように類推すると、合計で約log(L/l)層の畳み込みを必要とする。ここでチャネル数は1つの調節する必要があるハイパーパラメータであり、Lに伴って増加する。最終的に畳み込み層からサイズが約O(C
log(L/l)(L))である1つの配列を出力し、それを完全接続層に入力し、その後、1つの完全接続層を経るたびに、我々がC
k(L)~O(L
2)を選べば、完全接続層の深さは約O(logL)であり、このように、非常に大きなスケールに対しても、我々は小さな深さのモデルを使用できる。このように、モデルの深さは徐々にO(logL)になる。我々がCk(L)~O(L
2)を選べば、第k層~第k+1層の畳み込みニューラルネットワークはO(L
2)個のパラメータを含み、全部の畳み込み層の総パラメータ量はO(L
4logL)である。同様に、完全接続層の総パラメータもO(L
4logL)である。なお、ここで、サブ配列のサイズは毎回の繰り込みに対して異なる数値が選択されてもよい。なお、この増加方式は明らかに多項式的なものであり、指数関数的なものではなく、つまり、我々の解決手段は拡張できるべきである。
【0102】
誤りシンドローム情報が1つの8×8データ配列であることを例とすると、16個の2×2のサブ配列に区分でき、第1層畳み込み層の畳み込み核のサイズが2×2であり、該第1層畳み込み層によってブロック分割特徴抽出を行って、1つの4×4の特徴データ配列を獲得でき、該4×4の特徴データ配列を4つの2×2のサブ配列に区分でき、第2層畳み込み層の畳み込み核のサイズが2×2であり、該第2層畳み込み層によってブロック分割特徴抽出を行って、1つの2×2の特徴データ配列を獲得できる。説明する必要があるものとして、誤りシンドローム情報又は特徴データ配列に対してブロック分割を行う時、分割した各々のサブ配列のサイズは同じであってもよく、異なってもよい。異なる量子ビットの誤り率が異なる状況で、異なるサイズは原則上で長所をもたらす。しかし、訓練であろうと推理であろうと、サイズが同じであれば操作が比較的容易である。
【0103】
選択的に、特徴抽出層がブロック分割特徴抽出を行う時、任意の2つのブロック分割の間には共通集合がない。即ち、各層の特徴抽出について、あらゆるサブ配列の間に通信がなく、畳み込み核が作用する領域の間にもシンドロームの共通集合がない。それらの特徴情報を収集した後に次の層にとりまとめる時にのみ、それらの情報は同時に加工されて総合的に利用される。我々のここでの特徴抽出が必ずしも具体的な量子ビット誤り確率に対応しないため、我々は確率伝播(belief propagation)を行って周辺確率(marginal probability)を整列する必要がなく、これは同時にアルゴリズムを簡略化させることができ、且つよりよい性能を提供する可能性が高い。
【0104】
例示的に、L=15を例としてアルゴリズムに対して説明を行う。ここで合計で2層の畳み込みがある。第1層畳み込みについて我々は4×4の畳み込み核を使用でき、1つのチャネルから500個のチャネルにマッピングし、第2層畳み込み核のサイズは2×2であり、500個のチャネルから1000個のチャネルにマッピングし、この時、第2層ニューロンの数は4000である。その後、我々は完全接続ネットワークを使用してこの4000個のニューロンの数値に対して分類を行う。第1層完全接続層が4000及び1024個のニューロンに接続され、第2層完全接続層が1024及び512個のニューロンに接続され、第3層完全接続層が512及び128個のニューロンに接続され、第4層完全接続層が128~4個の(I、X、Y、Z)に接続される。具体的なネットワークモデルのpytorchコードは以下のとおりであってもよい。
【0105】
from torch import nn
class CNN_2D(nn.Module):
def __init__(self, input_size, output_size = 4):
self.input_size = input_size
super(CNN_2D, self).__init__()
self.conv1 = nn.Conv2D(15, 500, stride = 4, kernel_size = 4, padding = 0)
self.relu1 = nn.ReLU()
self.conv2 = nn.Conv2D(500, 1000, stride = 2, kernel_size = 2, padding = 0)
self.relu2 = nn.ReLU()
self.fc1 = nn.Linear(1000*2*2, 1024)
self.relu3 = nn.ReLU()
self.fc2 = nn.Linear(1024, 512)
self.relu4 = nn.ReLU()
self.fc3 = nn.Linear(512, 128)
self.relu5 = nn.ReLU()
self.fc4 = nn.Linear(128, 4)
def forward(self, x):
x = self.conv1(x)
x = self.relu1(x)
x = self.conv2(x)
x = self.relu2(x)
x = x.view(-1, 1000*2*2)
x = self.c1(x)
x = self.relu3(x)
x = self.fc2(x)
x = self.relu4(x)
x = self.fc3(x)
x = self.relu5(x)
x = self.fc4(x)
【0106】
上記例示から見出すことができるように、簡単なReLU層を取り除き、ニューラルネットワーク全体の層数は6層のみあり、非常に浅いニューラルネットワークである。
【0107】
ニューラルネットワーク復号器から出力された誤り結果情報に基づいて、量子回路中に誤りが発生する物理量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定できる。例えば、出量子回路中に誤りが発生する物理量子ビットの位置、及び該位置に誤りが発生する物理量子ビットの誤りのタイプ、例えばX誤り、Z誤りであるか、それともY誤りであるかを決定する。
【0108】
選択的に、ニューラルネットワーク復号器の複雑度を低減させ、それにより復号時間を更に短縮させるために、ニューラルネットワーク復号器は論理レベル出力を使用できる。この状況下で、ニューラルネットワーク復号器から出力された誤り結果情報は論理レベル出力結果を含み、該論理レベル出力結果とは誤りが特定のマッピングを経た後の論理誤り類を指す。
【0109】
また、リアルタイムな量子誤り訂正を行う時、本願の2種類のスタビライザージェネレータに対する測定(パリティチェック)回路は
図7に示される。ここで、
図7における(a)部分はZ誤りを測定するスタビライザージェネレータの固有値測定回路を示し、
図7における(b)部分はX誤りを測定するスタビライザージェネレータの固有値測定回路を示す。この回路では、制御NOTゲート(Control not、CNOT)の作用順序は非常に重要であり、前後を逆にしてはならず、そうでないと異なる量子ゲートが同じ量子ビットを使用することによる衝突を引き起こす。この過程において、制御NOTゲート、補助状態準備及び最後の補助状態測定を含むあらゆるステップはいずれもノイズを引き起こすことがある。制御NOTゲートが誤りを伝達でき、X及びZのこの2種類のシンドローム測定が相互にネストするためである。
図7に示される並べ方式は誤りの伝播を最大限に減少させ、その誤り訂正能力への影響を無視することができる。他の順序の並べは誤り訂正の能力を大幅に低減させることができる。
【0110】
図8はシンドローム測定回路(固有値測定回路又はパリティチェック回路とも呼ばれる)にノイズを含む状況下での誤りシンドローム模式図を示す。
図8において、白色点81は測定値が1であり且つ測定が正確な誤りシンドロームを代表し、黒色点82は測定値が1であり且つ測定が誤る誤りシンドロームを代表する。ここで、左下角の中央に白色がある黒色点は、もともと1を測定したが、結果0を測定したことを代表する。予期できるように、1つのみの不正確なシンドロームポイントがあっても壊滅的な結果をもたらすことができ(これは表面符号が簡単なシンドローム測定回路を採用するためであり、1つの不正確なシンドロームポイントにしたがって復号誤り訂正を行って非常に多い誤りをもたらすことができ、それにより直ちに誤り訂正符号の誤り訂正能力を超える)、従って、我々は1回のシンドローム測定の結果に依存してはならない。それに対応して、我々は複数回のシンドローム測定をする必要がある。理論上で、フォールトトレラント誤り訂正の有効性を確保するために、我々はT=O(L)回測定された誤りシンドローム情報を収集し、且つこれらのシンドロームの全てを利用して、どこでどの誤りが発生するかを推定して誤り訂正を行う必要がある。
【0111】
図9に示すように、それは1種の3次元シンドローム分布の模式図を示し、縦方向は時間である。0、1からなる1つの3次元のデータ配列と見なすことができる。
図9において、合計で4つのセグメント91を含み、各セグメント91は1回の測定により取得された誤りシンドローム情報を代表する。各セグメント91では、一部の黒色ドットはZ誤りを測定したシンドローム固有値が1であることを代表し、他の一部の黒色ドットはX誤りを測定したシンドローム固有値が1であることを代表し、
図9において区別を行わない。
【0112】
同時に我々が着目できる点として、シンドローム測定回路に発生するノイズは量子ビット上で発生する1つのランダムノイズ及び補助状態測定自体がもたらす1つのノイズと等価であってもよい。このように、全てのノイズ及びシンドロームの時空間特徴の1つの断面は
図10に示されるものと類似する。
図10において、斜線充填線分101はシンドロームが1であることを代表し、黒色充填線分102は発生する誤りを代表し、横方向の誤りはデータ量子ビット上で発生する誤りを表し、縦行の誤りは補助量子ビットに対して測定することによる誤りを表し、この2種類の誤りを総合(「加算」)すると必ず3次元空間(時間上で無限に延伸する)上での1つの閉じた曲線である。着目に値するものとして、この時、物理上で量子ビットのノイズが独立しても、量子ビット上で発生するこの等価のノイズは確かに弱く関連し、これは制御NOTゲートが1つの補助量子ビット上で発生するノイズを2つのデータ量子ビットに伝播するためである。しかし、この程度の関連の損害が限られ、それらは表面符号の誤り訂正範囲内にあるためであり、それでも、それらは依然として誤り訂正性能をわずかに低下させる。
【0113】
例示的な実施例では、量子誤り訂正復号の有効性を確保するために、取得された誤りシンドローム情報はT個のデータ配列を含み、各データ配列は量子誤り訂正符号を採用してターゲット量子回路に対して1回の誤りシンドローム測定を行って獲得するものであり、Tは1より大きい整数である。選択的に、上記で紹介したように、T=O(L)である。
【0114】
この状況下で、誤りシンドローム情報を取得した後、該誤りシンドローム情報を少なくとも2つのデータユニットに分割し、ここで、1つのデータユニットはT個のデータ配列のうちの同じ位置にあるT個の配列ユニットを含む。具体的なニューラルネットワークアルゴリズムは
図11に示されるように、その構造は完全シンドローム状況下でのものと非常に類似するが、異なる箇所もある。
図11に示すように、誤りシンドローム情報111は複数のデータユニットに分割され、
図11において誤りシンドローム情報が4×4×4データ配列であることを例とすると、それは4つのデータユニットに分割され(異なるデータユニットは
図11において異なる充填で示される)、各データユニットは2×2×4サブ配列である。誤りシンドローム情報111はニューラルネットワーク復号器112中に入力される。ニューラルネットワーク復号器112の畳み込み層について、ブロック分割特徴抽出の方式を採用して特徴情報の抽出を行う。リアルタイムな誤り訂正過程において、ホモロジー類を分類する他に、我々は更にシンドロームに対して分類を行う必要がある。繰り返しを回避するために、ここで我々は依然としてホモロジー類に対する分類のみを列挙して例示とする。まず、我々の第1層CNN入力チャネルはT層になる。次に他の各層CNNの出力チャネルの数はO(L
2)からO(L
3)に増える。このように、最終的に復号器の深さは依然としてO(logL)であり、約O(L
6logL)のパラメータを必要とする。我々はハードウェア演算アルゴリズムを選ぶ時、これらのパラメータを記憶し及び各畳み込み層と完全接続層を並列化するのに十分な空間があるか否かを十分に考える必要がある。
【0115】
以上のように、本願の実施例で提供される技術的手段は、量子回路の誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行うことによって、複数の組の特徴情報を獲得し、その後、更に上記複数の組の特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得する。ブロック分割特徴抽出の方式を採用するので、入力データに対して完全な特徴抽出を行うことに比べて、一方では、毎回の特徴抽出で獲得される特徴情報のチャネル数を減少させることができる。そのため、次回の特徴抽出の入力データが減少でき、ニューラルネットワーク復号器における特徴抽出層の数の減少に寄与し、それによりニューラルネットワーク復号器の深さを短くし、ニューラルネットワーク復号器の深さが短くなるためにその復号時間も相応に短縮される。また、他方では、ブロック分割特徴抽出を行う時、複数の特徴抽出ユニットを採用して複数のブロックに対して並列する特徴抽出処理を行い、即ち、複数の特徴抽出ユニットは同期(又は同時と呼ばれる)に特徴抽出処理を行うことができ、これも特徴抽出に必要な消費時間の短縮に寄与する。そのため復号時間を短縮させ、最終的に、上記2つの要素を組み合わせて、ニューラルネットワーク復号器を採用して量子誤り訂正復号を行う時に、復号時間を十分に短縮させ、それによりリアルタイムな誤り訂正の要件を満たす。
【0116】
例示的な実施例では、誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対してノイズがある誤りシンドローム測定を行って獲得する真の誤りシンドローム情報であり、フォールトトレラント誤り訂正復号を実現するために、上記ニューラルネットワーク復号器は第1復号器及び第2復号器を含み、
図12に示すように、本願の他の実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法は以下のいくつかのステップ(1201~1204)を含んでもよい。
【0117】
ステップ1201:量子回路の真の誤りシンドローム情報を取得する。
【0118】
真のシーン下で、量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対して誤りシンドローム測定を行う時にノイズがあり、即ち測定誤りが存在するため、ここでの真の誤りシンドローム情報とは真のシーン下で測定して獲得したノイズがある誤りシンドローム情報を指す。
【0119】
また、フォールトトレラント誤り訂正の有効性を確保するために、取得された真の誤りシンドローム情報はT個のデータ配列を含み、各データ配列は量子誤り訂正符号を採用して量子回路に対して1回のノイズがある誤りシンドローム測定を行って獲得するものであり、Tは1より大きい整数である。選択的に、上記で紹介したように、T=O(L)であり、Lは量子誤り訂正符号のスケールである。このように、毎回の誤りシンドローム測定により獲得される真の誤りシンドローム情報は(L+1)×(L+1)の1つの2次元データ配列であってもよく(機械学習を容易にするために、各時刻のシンドローム境界を適度に拡張する)、T回の誤りシンドローム測定により獲得される真の誤りシンドローム情報は(L+1)×(L+1)×Tの1つの3次元データ配列を構成することができる。
【0120】
ステップ1202:第1復号器を採用して真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類を獲得する。
【0121】
第1復号器は真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類を獲得することに用いられる。論理誤り類は量子回路に発生する誤りがマッピングを経た後の類である。論理誤り類はホモロジー類とも呼ばれ、I、X、Y及びZの4種の分類を含む。ここで、Iは誤りがないことを表し、XはX誤りを表し、ZはZ誤りを表し、YはX誤りがあるだけでなくZ誤りがあることを表す。各論理誤り類中に、少なくとも1つの等価の誤り元素が含まれる。選択的に、各論理誤り類中に、複数の等価の誤り元素が含まれる。論理誤り類Iのうちの元素は、スタビライザー群のうちの元素である。論理誤り類Xのうちの元素は、論理X演算子がそれぞれスタビライザー群のうちの各々の元素と乗算した後に獲得する元素セットである。論理誤り類Yのうちの元素は、論理Y演算子がそれぞれスタビライザー群のうちの各々の元素と乗算した後に獲得する元素セットである。論理誤り類Zのうちの元素は、論理Z演算子がそれぞれスタビライザー群のうちの各々の元素と乗算した後に獲得する元素セットである。同一の論理誤り類のうちに属する各々の元素は等価であり、真に発生する誤りEと他の誤りE’が同一の論理誤り類に属すると仮定すると、誤りEに対して誤り訂正を行うことと誤りE’に対して誤り訂正を行うことは等価であり、同様の効果を達成できる。
【0122】
本願の実施例では、訓練された第1復号器によって予測して真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類を獲得する。第1復号器の数は1つであってもよく、該第1復号器は1つの四項分類モデルであってもよく、その出力には分類する必要がある4つの論理誤り類、即ちI、X、Y及びZが含まれる。第1復号器は完全接続ネットワーク、CNN、RNN又は他のニューラルネットワークに基づいて構築される分類モデルであってもよく、本願の実施例はこれを限定しない。
【0123】
また、第1復号器は真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、対応する論理誤り類を獲得する時、上記実施例で紹介されたブロック分割特徴抽出の方式を採用できる。第1復号器を採用して真の誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得し、第1復号器を採用して特徴情報に対して融合復号処理を行って、真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類を獲得する。
【0124】
ステップ1203:第2復号器を採用して真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得する。
【0125】
第2復号器は真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得することに用いられる。完全な誤りシンドローム情報とは量子回路に対してノイズがない誤りシンドローム測定を行って獲得する情報を指す。本願の実施例では、真の誤りシンドローム情報に対して復号を行うのは、対応する論理誤り類を獲得する他に、更に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得する必要があり、このようにしてこそ、上記で紹介された式1に従って最終的に量子回路の誤り結果情報を決定できる。例示的に、
図13に示すように、それは1つの完全な誤りシンドローム情報の模式図を示し、
図13において、黒色ドット131はデータ量子ビットを代表し、十字132は補助量子ビットを代表し、補助量子ビット上で発生する誤りは完全シンドローム測定に対して影響がなく、各々の誤りは図においてX、Y及びZでマークされる。
【0126】
本願の実施例では、訓練された第2復号器によって予測して真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得する。第2復号器の数は1つであってもよく、複数であってもよい。選択的に、第2復号器の数はkであり、kは正の整数であり且つkは量子誤り訂正符号のスケールに関連する。量子誤り訂正符号がスタビライザー符号であり、且つそのスケールがLであると仮定すると、第2復号器の数はk=L2-1である。この状況下で、第2復号器は1つの二項分類モデルであってもよく、その出力には分類する必要がある2つの誤りシンドローム値、即ち0及び1が含まれ、ここで0は誤りがないことを表し、1は誤りがあることを表す。
【0127】
説明する必要があるものとして、上記ステップ1202及び1203は先後に実行されてもよく、並列に実行されてもよく、両者は並列に実行される時、プロセスの実行の消費時間を短くすることに寄与する。リアルタイムなフォールトトレラント誤り訂正復号を実現するために、できるだけより多い機器(例えばFPGA/ASIC)及び適切な通信接続を選択して並列実行を完了すべきである。
【0128】
例示的な実施例では、第2復号器の数はkであり、kは正の整数であり且つkは量子誤り訂正符号のスケールに関連する。該k個の第2復号器は真の誤りシンドローム情報に対してそれぞれ復号を行って、k個の完全な誤りシンドロームビットを獲得することに用いられ、該k個の完全な誤りシンドロームビットは統合されて完全な誤りシンドローム情報を獲得することに用いられる。即ち、
図14に示すように、上記ステップ1203は以下のステップにより置き換えて実現されてもよい。
【0129】
ステップ1203a:真の誤りシンドローム情報をそれぞれk個の第2復号器に入力して、k個の完全な誤りシンドロームビットを獲得する。
【0130】
ステップ1203b:k個の完全な誤りシンドロームビットを統合して、真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得する。
【0131】
各第2復号器は1つのシンドローム測定位置の完全な誤りシンドロームビットを出力して獲得することに用いられ、k個の第2復号器の出力結果を統合して、全てのシンドローム測定位置の完全な誤りシンドロームビット、即ち真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得することができる。
【0132】
図15に示すように、真の誤りシンドローム情報に対応する3次元データ配列151をそれぞれ第1復号器152及び各々の第2復号器153に入力し、第1復号器152は真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類154を出力し、第2復号器153は完全な誤りシンドロームビットを出力し、各々の第2復号器153から出力された完全な誤りシンドロームビットを統合して、真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報155を獲得し、最後に論理誤り類154及び完全な誤りシンドローム情報155にしたがって、量子回路の誤り結果情報156を決定する。
【0133】
また、第2復号器は完全接続ネットワーク、CNN、RNN又は他のニューラルネットワークに基づいて構築される分類モデルであってもよく、本願の実施例はこれを限定しない。上記各々の復号器(第1復号器及び各々の第2復号器を含む)のモデル構造は同じであってもよく、異なってもよいが、モデルの深さをできるだけ一致させて、最大の並列化を達成することを期待する。
【0134】
また、各々の第2復号器は真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得する時、上記実施例で紹介されたブロック分割特徴抽出の方式を採用できる。第2復号器を採用して真の誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得し、第2復号器を採用して特徴情報に対して融合復号処理を行って、完全な誤りシンドロームビットを獲得する。
【0135】
ステップ1204:論理誤り類及び完全な誤りシンドローム情報にしたがって、量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定する。
【0136】
上記で紹介された式1に参照されるように、論理誤り類及び完全な誤りシンドローム情報を獲得した後、該完全な誤りシンドローム情報にしたがって相応の簡単な誤りを決定することができ、その後、該簡単な誤りに論理誤り類のうちの任意の1つの元素を乗算して、訂正する必要がある誤り、即ち量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを獲得することができる。例えば、量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビットの位置、及び該位置に誤りが発生したデータ量子ビットの誤りのタイプ、例えばX誤り、Z誤りであるか、それともY誤りであるかを決定する。
【0137】
例示的な実施例では、
図14に示すように、上記ステップ1204は以下のステップにより置き換えて実現されてもよい。
【0138】
ステップ1204a:論理誤り類に対応する第1誤り結果を取得する。
【0139】
例示的な実施例では、
図16に示すように、上記ステップ1204aは以下のステップにより置き換えて実現されてもよい。ステップ1204a-1、論理誤り類に含まれる元素の中から、任意の1つの元素を第1誤り結果として選択し、ここで、論理誤り類中に少なくとも1つの等価の誤り元素が含まれる。
【0140】
例えば、復号して獲得した真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類がXであると、該論理誤り類Xに含まれる各々の誤り元素の中から、任意の1つの元素を第1誤り結果として選択する。
【0141】
ステップ1204b:完全な誤りシンドローム情報に対応する第2誤り結果を取得する。
【0142】
復号して真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得した後、簡単な復号器を採用して該完全な誤りシンドローム情報に対応する第2誤り結果を獲得できる。
【0143】
例示的な実施例では、
図16に示すように、上記ステップ1204bは以下のステップにより置き換えて実現されてもよい。ステップ1204b-1、マッピングテーブルを問い合わせて完全な誤りシンドローム情報のうちの各々の誤りシンドロームポイントにそれぞれ対応する簡単な誤りを取得し、ここで、マッピングテーブル中には少なくとも1組の誤りシンドロームポイントと簡単な誤りとの間のマッピング関係が含まれる。ステップ1204b-2、各々の誤りシンドロームポイントにそれぞれ対応する簡単な誤りを乗算して、第2誤り結果を獲得する。
【0144】
ステップ1204c:第1誤り結果及び第2誤り結果にしたがって、量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定する。
【0145】
例示的な実施例では、
図16に示すように、上記ステップ1204cは以下のステップにより置き換えて実現されてもよい。ステップ1204c-1、第1誤り結果と第2誤り結果の相乗積を計算し、量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを獲得する。
【0146】
説明する必要があるものとして、上記方式で論理誤り類を逆推して獲得するのはデータ量子ビット上で発生する等価誤りであり、推定して得たこの誤りは必ずしも元に発生した誤りと同じではないが、効果は同様であり(又は誤りの差異は局在化される)、これは量子誤り訂正符号に特有の誤り縮退現象である。
【0147】
また、上記ステップ1204a及び1204bは先後に実行されてもよく、並列に実行されてもよく、両者は並列に実行される時、プロセスの実行の消費時間を短くすることに寄与する。リアルタイムなフォールトトレラント誤り訂正復号を実現するために、できるだけより多い機器(例えばFPGA/ASIC)及び適切な通信接続を選択して並列実行を完了すべきである。
【0148】
選択的に、量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定した後、更に以下のステップを実行してもよい(
図16において図示しない)。
【0149】
ステップ1205:誤り結果情報にしたがって誤り訂正制御信号を生成し、誤り訂正制御信号は量子回路に生じた誤りに対して訂正を行うことに用いられる。
【0150】
ステップ1206:量子回路に誤り訂正制御信号を送信する。
【0151】
選択的に、該誤り訂正制御信号はマイクロ波制御信号であってもよく、電子制御信号であってもよく、又は他の形態の制御信号であってもよく、本願の実施例はこれを限定しない。量子回路に該誤り訂正制御信号を送信することによって、量子回路に該誤り訂正制御信号に基づいてそれに発生したデータ量子ビット誤りに対して訂正を行わせ、それによりリアルタイムな誤り訂正の目的を達成する。
【0152】
以上のように、本願の実施例で提供される技術的手段は、量子回路の真の誤りシンドローム情報に対して復号を行うことによって、対応する論理誤り類及び完全な誤りシンドローム情報を獲得し、その後、該論理誤り類及び完全な誤りシンドローム情報にしたがって、量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定し、それにより量子回路の誤りシンドローム情報が不完全である状況下で、ニューラルネットワークアルゴリズムによる誤りシンドローム情報に対するフォールトトレラント誤り訂正復号を実現する。そして、この解決手段はフォールトトレラント誤り訂正復号を1つの分類問題と等価であるようにするのを実現するため、効率的なニューラルネットワーク分類器を採用して誤りシンドローム情報に対してフォールトトレラント誤り訂正復号を行うことに適合し、フォールトトレラント誤り訂正復号の速度を向上させ、適切なニューラルネットワーク分類器を選べば、復号アルゴリズムの速度を大幅に加速できるため、リアルタイムなフォールトトレラント誤り訂正復号を実現するために道を開いた。
【0153】
以下、ニューラルネットワーク復号器の訓練過程に対して紹介、説明を行う。
【0154】
ニューラルネットワーク復号器の訓練データについてはシミュレーションの方式を採用して、タグ付き訓練データを生成することができ、その後、教師あり学習の方式を採用して該タグ付き訓練データを使用してニューラルネットワーク復号器に対して訓練を行う。
【0155】
まず、依然として完全な誤りシンドロームを取得できる状況を考慮する。1種の可能な実施形態は、サンプル量子回路に含まれる物理量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、その後、サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、訓練データを生成することである。例えば、確率pによってサンプル量子回路の各物理量子ビット上でX又はY又はZ誤りを発生させ、具体的には標準の乱数発生方法を採用でき、[0,1]間に均一に分布して乱数をサンプリングし、[0,p/3]にあれば、X誤りと設定し、[p/3,2p/3]にあれば、Y誤りと設定し、[2p/3,p]にあれば、X誤りと設定し、[p,1]にあれば、Iと設定する(即ち、誤りがない)。このように、スケールがLである表面符号に対して、我々は2種類のパリティチェックの結果を獲得して1つの2次元の(L+1)×(L+1)の配列を接合し、更にシミュレーションの誤りの中から簡単な誤りを取り除き、それが属する誤り類(ホモロジー類)を抽出して該データサンプルに対するタグとする。
【0156】
しかし、このようなノイズモデルは理想的すぎる。他の1種の可能な実施形態は、我々がまず実験上で量子ビットに対して量子プロセストモグラフィ(Quantum Process Tomography、QPT)を行って真のノイズモデルを抽出することである。QPTリソース消費が多すぎるため、我々は最大でQPTを幾何学的に隣接する2つの量子ビット上で作用することのみに限定する。このように、3つ以上の量子ビットのノイズ関連を無視することと等価である。この関連が非常に強いなら、まず実験上でこの種類の関連を取り除くべきであり、それらは量子誤り訂正に対して致命的な影響をもたらすためである。QPTを完了した後、我々はQPTにしたがってMonte Carlo(モンテカルロ)の方法を使用して、真の物理ノイズによる量子状態に対する影響を直接シミュレートし、その後、理想的なパリティチェックを行い、且つシンドローム及び誤りホモロジー類を抽出してタグデータを取得することができる。このようにする欠点は我々がスケールが大きい表面符号(例えばL>10の表面符号)に対して模擬を行うことができないことであり、これはフル量子力学シミュレーション(full quantum simulation)を必要とし、計算複雑度が現在の最も強いコンピュータの能力を超えるためである。
【0157】
ニューラルネットワーク復号器の訓練は標準のニューラルネットワーク訓練方式に従う。選択的に、交差エントロピー(cross entropy)をターゲット関数として使用し、且つ確率的勾配降下(stochastic gradient decent)アルゴリズムで訓練を行う。一般的な状況下で、ADAM(Adaptive Moment Estimation、適応モーメント推定)アルゴリズムを使用してよりよい性能を取得できる。訓練サンプルは1百万から3千万まで様々であってもよく、学習強度(learning rate)は1e-5~1e-2区間を取り、学習モメンタム(momentum)は1e-4~1e-6を取る。実験から分かるように、以上のハイパーパラメータの設定下で、pytorch 1.2下で我々はより満足のいく訓練結果を取得できる。
【0158】
取得された誤りシンドローム情報中にノイズ干渉が存在する状況についても、完全シンドロームの状況と類似し、我々はここでシミュレーションの方式によって訓練データセットを発生させる。同様に我々は比較的簡単な方式又は比較的実際の方式を使用してもよい。
【0159】
比較的簡単な方式を採用すれば、ニューラルネットワーク復号器の訓練データの生成過程は以下のとおりである。
【0160】
1:サンプル量子回路に含まれる物理量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、例えば、各個のデータ量子ビットに対して、パリティチェック開始前に確率pで各量子ビット上でX、Y又はZ誤り(メモリノイズ)を発生させる。
【0161】
2:サンプル量子回路に対応する補助量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、該補助量子ビットはサンプル量子回路の誤りシンドローム情報を測定して獲得することに用いられ、例えば、|0>(又は|+>)に準備された補助量子ビットに対して、確率pで1つのX又はZ誤り(状態準備ノイズ)を発生させる。
【0162】
3:サンプル量子回路に対応する固有値測定回路に含まれる制御NOTゲート上で誤りを確率的に発生させ、該固有値測定回路はスタビライザージェネレータの固有値を測定することに用いられる。例えば、固有値測定回路における各制御NOTゲートに対して、確率pで15個のダブルパウリ演算子(IX、IY、IZ、XI、YI、ZI、XX、XY、XZ、YX、YY、YZ、ZX、ZY及びZZを含む)のうちの1つの誤り(量子ゲートノイズ)を発生させる。
【0163】
4:量子誤り訂正符号を採用してサンプル量子回路に対して誤りシンドローム測定を行う時に測定誤りを確率的に発生させ、例えば、確率pでZ(X)測定前に1つのX(Z)誤り(測定ノイズ)を発生させ、ここで、Z(X)はX誤りのみがZ測定に影響を与えることを表し、X(Z)はZ誤りのみがX測定に影響を与えることを表す。
【0164】
5:サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、訓練データを生成する。
【0165】
上記で紹介された方式を採用し、パリティチェック測定をT回繰り返し、スケールがLである表面符号に対して、我々は2種類のパリティチェックの結果を獲得して1つの2次元のT×(L+1)×(L+1)の0、1配列を接合し、その後、我々はシミュレーションの結果に対して処理を行って獲得した誤り及びこの2次元シンドローム配列中から、訓練に必要なホモロジー類タグ及び完全な誤りシンドロームタグを抽出できる。
【0166】
比較的現実的な方式を採用すれば、ニューラルネットワーク復号器の訓練データの生成過程は以下のとおりである。
【0167】
1:サンプル量子回路に対して量子プロセストモグラフィを行い、サンプル量子回路のノイズモデルを抽出する。
【0168】
2:ノイズモデルに基づいてサンプル量子回路の量子状態のノイズ作用下での進化に対してシミュレーションを行う。
【0169】
3:サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、訓練データを生成する。
【0170】
この方式を採用する状況下で、まず実験上で量子ビットに対して量子プロセストモグラフィを行ってメモリノイズ、状態準備ノイズ、量子ゲートノイズ及び測定ノイズの正確な数学記述を抽出し、その後、量子状態のノイズ作用下での進化に対してシミュレーションを直接行った後にシンドローム及びタグを発生させることができる。
【0171】
上記ではニューラルネットワーク復号器の訓練データセットの生成過程及び訓練方式に対して紹介、説明を行っており、第1種の訓練データ生成方式について、理想的なノイズモデルによって誤りシミュレーションを行って訓練データを生成し、この方式は比較的簡単である。第2種の訓練データ生成方式について、量子プロセストモグラフィを採用することによって真のノイズモデルを抽出し、その後、該真のノイズモデルを採用して真の物理ノイズによるサンプル量子回路に対する影響をシミュレートして訓練データを生成し、この方式はより現実に近い。
【0172】
完全な誤りシンドロームの状況に基づいて、スケールがLである表面符号に対して数値模擬を行う。数値模擬方法は以下のとおりである。ランダムに各量子ビット上でpの確率でX、Y、Z誤りを発生させ、(1-p)でいずれの誤りも発生させない。ここでpは物理誤り率である。その後、我々はp=0.11又はp=0.12で訓練セットを発生させてニューラルネットワーク復号器を訓練する。復号器の訓練を完了した後、我々は同様に同じノイズモデルによって異なるpで大量のノイズサンプルを発生させ、その後、それらをニューラルネットワーク復号器に入力し且つ誤り類(ホモロジー類)結果を出力し、真のノイズの誤り類と比較を行い、且つその復号が正確であるか否かを判定し、その後、復号の誤りの頻度(確率)を記録し、これは論理ビット誤り率である。我々は同時にMWPMをも使用してシミュレーションを行うことにより復号器の性能を比較する。具体的なシミュレーション結果は
図17に示される。
【0173】
ここで我々は明らかに分かるように、スケールが小さな表面符号(L=5、L=7、L=11)に対して、本願で提供されるニューラルネットワーク復号器は簡単であるが、誤り率の各々の区間でいずれもMWPMよりも優れる。L=15の状況について、復号性能がMWPMよりもわずかに劣り、これは我々がL=11と同じネットワークモデル及び同様数のサンプルのみを使用するためである(ロード後に我々がテストに使用する単一マシンメモリの上限32GBに達する)。明らかに、L=15について、約3000万以上のサンプル量を使用してネットワークを訓練すると、MWPMを超えることができる。また、この簡単なニューラルネットワーク復号器の閾値も15%に達し、MWPMの閾値を超え、理論の限界に近似する。
【0174】
我々は異なるスケール表面符号に対応するニューラルネットワークパラメータに対して[表1]に列挙する。
【0175】
【0176】
我々が理解できるように、ネットワークの深さは確かにLに伴って緩慢に変化し、且つ実際の実行時間が迅速に増加しない。着目に値するものとして、我々のネットワークパラメータ及び必要な訓練データセットはLに伴って指数関数的に上昇せず、逆に、それらは多項式的に上昇し、且つ上昇の速度はあまり速くない。これは我々のアルゴリズムが原則上で拡張できることを意味する。しかし、実際上で我々は依然として大量の時間を要してスケールが大きな表面符号の訓練セットを発生させ(並列化可能)、モデル訓練時に依然としてより多いメモリ及びGPU計算リソースを消費する必要がある(特にL>=15に対して、128GBより大きいメモリ及び2つのnVidia V100のGPUを必要とする)。このようにしてこそ、許容可能な時間の長さ以内に訓練を完了して予期される復号性能指標に達することができる。ただし、一方では、これらのハードウェアリソースは従来の条件において高価ではなく、他方では、一旦実験システム上でアルゴリズムの有効性を確かに検証すると、これらの追加リソースの投入は価値があり、訓練過程は1回限りであるためである。
【0177】
説明する必要があるものとして、表1における効果的な実行時間とは同時に数千回の復号を同時に1つのGPU(ここで、nVidia GTX 2070に基づく)に入力した後の総演算時間/復号回数が達することができる最大値(約5000)を指す。この時間は1つの参照の必要条件としてしかできないが(この値が高すぎれば、我々のアルゴリズムは必然的に低い遅延を獲得できなくなる)、GPUのリアルタイムな復号の計算時間と等価ではない。
【0178】
最後に、説明する必要があるものとして、モデル設計過程において、我々はCK~O(L2)を選んでいるが、これは必要ではない。我々は他の多項式的な漸進的増加方式を選択してもよく、且つネットワーク深さにあまり多くの影響を与えない。本願で提供される技術的手段は表面符号に応用するだけでなく、他の基本トポロジー符号のフォールトトレラント量子誤り訂正解決手段、例えばカラーコードにも応用する。励起層の前に類似のbatch-normalization(バッチ正規化)層を導入でき、我々は異なるターゲット関数を使用してもよく、異なる学習方策、例えばADAMを使用してもよい。上記の実施例で紹介された解決手段はフォールトトレラント誤り訂正のための畳み込み層に対して空間のみで繰り込みを行い、3つの方向で繰り込みを行って誤り訂正効果を比較することを考慮してもよい。本解決手段は主にシミュレーションにより生成されたタグ付き訓練データを使用する。実際の実験では、我々は実験データを直接測定することによって誤りに対応するホモロジー類を取得してもよい。
【0179】
下記は本願の装置実施例であり、本願の方法実施例を実行することに用いることができる。本願の装置実施例中に開示されていない細部について、本願の方法実施例を参照する。
【0180】
図18に参照されるように、それは本願の一実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号装置のブロック図を示す。該装置は上記方法例示を実現する機能を有し、前記機能はハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアにより相応なソフトウェアを実行して実現されてもよい。該装置はコンピュータ機器であってもよく、コンピュータ機器中に設置されてもよい。該装置1800は、シンドローム情報取得モジュール1810、ブロック分割特徴抽出モジュール1820及び融合復号処理モジュール1830を含んでもよい。
【0181】
シンドローム情報取得モジュール1810は、量子回路の誤りシンドローム情報を取得することに用いられ、前記誤りシンドローム情報は量子誤り訂正符号のスタビライザージェネレータの固有値からなるデータ配列である。
【0182】
ブロック分割特徴抽出モジュール1820は、ニューラルネットワーク復号器によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、特徴情報を獲得することに用いられる。ここで、前記ニューラルネットワーク復号器の特徴抽出層は入力データに対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記ブロック分割特徴抽出とは入力データに対してブロック分割を行って少なくとも2つのブロックを獲得した後、少なくとも2つの特徴抽出ユニットを採用して前記少なくとも2つのブロックに対して並列する特徴抽出処理を行うことを指す。
【0183】
融合復号処理モジュール1830は、前記ニューラルネットワーク復号器によって前記特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得することに用いられ、前記誤り結果情報は前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる。
【0184】
例示的な実施例では、前記ニューラルネットワーク復号器はカスケードされたm個の特徴抽出層を含み、前記mは正の整数である。
【0185】
前記ブロック分割特徴抽出モジュール1820は、前記m個の特徴抽出層によって前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行って、前記特徴情報を獲得することに用いられる。
【0186】
ここで、第1の特徴抽出層は前記誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、第iの特徴抽出層は1つ前の特徴抽出層の特徴抽出結果に対してブロック分割特徴抽出を行うことに用いられ、前記iは1より大きく且つ前記m以下の整数である。
【0187】
例示的な実施例では、前記特徴抽出層がブロック分割特徴抽出を行う時、任意の2つのブロック分割の間には共通集合がない。
【0188】
例示的な実施例では、前記誤りシンドローム情報はT個のデータ配列を含み、各データ配列は前記量子誤り訂正符号を採用して前記ターゲット量子回路に対して1回の誤りシンドローム測定を行って獲得するものであり、前記Tは1より大きい整数である。
図19に示すように、該装置1800更にシンドローム情報分割モジュール1812を含み、前記シンドローム情報分割モジュール1812は、前記誤りシンドローム情報を少なくとも2つのデータユニットに分割することに用いられ、ここで、1つのデータユニットは前記T個のデータ配列のうちの同じ位置にあるT個の配列ユニットを含む。
【0189】
例示的な実施例では、前記誤りシンドローム情報は前記量子誤り訂正符号を採用して前記量子回路に対してノイズがある誤りシンドローム測定を行って獲得する真の誤りシンドローム情報であり、前記ニューラルネットワーク復号器は第1復号器及び第2復号器を含み、ここで、
前記第1復号器は前記真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、前記真の誤りシンドローム情報に対応する論理誤り類を獲得することに用いられ、前記論理誤り類は前記量子回路に発生する誤りがマッピングを経た後の類であり、
前記第2復号器は前記真の誤りシンドローム情報に対して復号を行って、前記真の誤りシンドローム情報に対応する完全な誤りシンドローム情報を獲得することに用いられ、前記完全な誤りシンドローム情報とは前記量子回路に対してノイズがない誤りシンドローム測定を行って獲得する情報を指す。
【0190】
図19に示すように、該装置1800は更に誤り決定モジュール1840を含み、前記誤り決定モジュール1840は、前記論理誤り類及び前記完全な誤りシンドローム情報にしたがって、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる。
【0191】
例示的な実施例では、
図19に示すように、前記誤り決定モジュール1840は、第1取得ユニット1841、第2取得ユニット1842及び誤り決定ユニット1843を含み、
前記第1取得ユニット1841は、前記論理誤り類に対応する第1誤り結果を取得することに用いられ、
前記第2取得ユニット1842は、前記完全な誤りシンドローム情報に対応する第2誤り結果を取得することに用いられ、
前記誤り決定ユニット1843は、前記第1誤り結果及び前記第2誤り結果にしたがって、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを決定することに用いられる。
【0192】
例示的な実施例では、前記第1取得ユニット1841は、前記論理誤り類に含まれる元素の中から、任意の1つの元素を前記第1誤り結果として選択することに用いられ、ここで、前記論理誤り類中に少なくとも1つの等価の誤り元素が含まれる。
【0193】
例示的な実施例では、前記第2取得ユニット1842は、マッピングテーブルを問い合わせて前記完全な誤りシンドローム情報のうちの各々の誤りシンドロームポイントにそれぞれ対応する簡単な誤りを取得することに用いられる。ここで、前記マッピングテーブル中には少なくとも1組の誤りシンドロームポイントと簡単な誤りとの間のマッピング関係が含まれ、前記各々の誤りシンドロームポイントにそれぞれ対応する簡単な誤りを乗算して、前記第2誤り結果を獲得する。
【0194】
例示的な実施例では、前記誤り決定ユニット1843は、前記第1誤り結果と前記第2誤り結果の相乗積を計算し、前記量子回路中に誤りが発生したデータ量子ビット及び相応の誤りのタイプを獲得することに用いられる。
【0195】
例示的な実施例では、前記第2復号器の数はkであり、前記kは正の整数であり且つ前記kは前記量子誤り訂正符号のスケールに関連し、前記k個の第2復号器は前記真の誤りシンドローム情報に対してそれぞれ復号を行って、k個の完全な誤りシンドロームビットを獲得することに用いられ、前記k個の完全な誤りシンドロームビットは統合されて前記完全な誤りシンドローム情報を獲得することに用いられる。
【0196】
例示的な実施例では、前記ニューラルネットワーク復号器の訓練データの生成過程は以下のとおりである:
サンプル量子回路に含まれる物理量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、
前記サンプル量子回路に対応する補助量子ビット上で誤りを確率的に発生させ、前記補助量子ビットは前記サンプル量子回路の誤りシンドローム情報を測定して獲得することに用いられ、
前記サンプル量子回路に対応する固有値測定回路に含まれる制御NOTゲート上で誤りを確率的に発生させ、前記固有値測定回路はスタビライザージェネレータの固有値を測定することに用いられ、
量子誤り訂正符号を採用して前記サンプル量子回路に対して誤りシンドローム測定を行う時に測定誤りを確率的に発生させ、
前記サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、前記訓練データを生成する。
【0197】
例示的な実施例では、前記ニューラルネットワーク復号器の訓練データの生成過程は以下のとおりである:
サンプル量子回路に対して量子プロセストモグラフィを行い、前記サンプル量子回路のノイズモデルを抽出し、
前記ノイズモデルに基づいて前記サンプル量子回路の量子状態のノイズ作用下での進化に対してシミュレーションを行い、
前記サンプル量子回路の誤りシンドローム情報及び誤り結果情報を取得し、前記訓練データを生成する。
【0198】
例示的な実施例では、
図19に示すように、前記装置1800は更に誤り訂正信号生成モジュール1850及び誤り訂正信号送信モジュール1860を含む。
【0199】
誤り訂正信号生成モジュール1850は、前記誤り結果情報にしたがって誤り訂正制御信号を生成することに用いられ、前記誤り訂正制御信号は前記量子回路に生じた誤りに対して訂正を行うことに用いられる。
【0200】
誤り訂正信号送信モジュール1860は、前記量子回路に前記誤り訂正制御信号を送信することに用いられる。
【0201】
以上のように、本願の実施例で提供される技術的手段は、量子回路の誤りシンドローム情報に対してブロック分割特徴抽出を行うことによって、複数の組の特徴情報を獲得し、その後、更に上記複数の組の特徴情報に対して融合復号処理を行って、誤り結果情報を獲得する。ブロック分割特徴抽出の方式を採用するので、入力データに対して完全な特徴抽出を行うことに比べて、一方では、毎回の特徴抽出で獲得される特徴情報のチャネル数を減少させることができ、次回の特徴抽出の入力データが減少でき、これはニューラルネットワーク復号器における特徴抽出層の数の減少に寄与し、それによりニューラルネットワーク復号器の深さを短くし、ニューラルネットワーク復号器の深さが短くなるため、その復号時間も相応に短縮され、他方では、ブロック分割特徴抽出を行う時、複数の特徴抽出ユニットを採用して複数のブロックに対して並列する特徴抽出処理を行い、即ち、複数の特徴抽出ユニットは同期(又は同時と呼ばれる)に特徴抽出処理を行うことができ、これも特徴抽出に必要な消費時間の短縮に寄与し、それにより復号時間を短縮させ、最終的に、上記2つの要素を組み合わせて、ニューラルネットワーク復号器を採用して量子誤り訂正復号を行う時、復号時間を十分に短縮させ、それによりリアルタイムな誤り訂正の要件を満たす。
【0202】
説明する必要があるものとして、上記実施例で提供される装置については、その機能を実現する時、上記各機能モジュールの分割のみを例として説明したが、実際の応用中に、需要にしたがって上記機能を異なる機能モジュールに割り当て完了することができ、即ち、機器の内部構造を異なる機能モジュールに分割して、以上に記述された全部又は一部の機能を完了する。また、上記実施例で提供される装置は方法実施例と同一の技術的思想に属し、その具体的な実現過程は方法実施例を詳細に参照し得るため、ここでは繰り返して説明しない。
【0203】
図20に参照されるように、それは本願の一実施例で提供されるコンピュータ機器の構造模式図を示す。該コンピュータ機器は
図3に示される解決手段の応用シーンにおける制御機器33であってもよい。該コンピュータ機器は上記実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実施することに用いることができる。該コンピュータ機器が古典的なコンピュータであることを例とすると、具体的に以下のとおりである。
【0204】
前記コンピュータ機器2000は処理ユニット2001(例えばCPU及び/又はGPUを含む)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)2002及び読み出し専用メモリ(Read-Only Memory、ROM)2003を含むシステムメモリ2004、及びシステムメモリ2004と処理ユニット2001を接続するシステムバス2005を含む。前記コンピュータ機器2000はコンピュータ内の各々のデバイス間に情報を伝送するのに寄与する基本入力/出力システム(I/O(Input/Output)システム)2006、及びオペレーティングシステム2013、アプリケーションプログラム2014及び他のプログラムモジュール2015を記憶するための大容量記憶機器2007を更に含む。
【0205】
前記基本入力/出力システム2006は情報を表示するためのディスプレイ2008及びユーザが情報を入力するためのマウス、キーボードなどの入力機器2009を含む。ここで、前記ディスプレイ2008及び入力機器2009はいずれもシステムバス2005に接続された入出力コントローラ2010を介して処理ユニット2001に接続される。前記基本入力/出力システム2006は更に入出力コントローラ2010を含んでもよく、それによりキーボード、マウス、又は電子スタイラス等の複数の他の機器からの入力を受信及び処理することに用いられる。類似して、入出力コントローラ2010は更にディスプレイスクリーン、プリンタ又は他のタイプの出力機器に出力を提供する。
【0206】
前記大容量記憶機器2007はシステムバス2005に接続された大容量記憶コントローラ(図示せず)を介して処理ユニット2001に接続される。前記大容量記憶機器2007及びそれに関連するコンピュータ読み取り可能な媒体はコンピュータ機器2000に不揮発性記憶を提供する。つまり、前記大容量記憶機器2007はハードディスク又はCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory、読み出し専用光ディスク)ドライバ等のコンピュータ読み取り可能な媒体(図示せず)を含んでもよい。
【0207】
一般性を失うことなく、前記コンピュータ読み取り可能な媒体はコンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体はコンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータ等の情報を記憶するための任意の方法又は技術で実現される揮発性及び不揮発性、移動可能及び移動不可能な媒体を含む。コンピュータ記憶媒体はRAM、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ)、フラッシュメモリ又は他のソリッドステートメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Video Disc、高密度デジタルビデオ光ディスク)又は他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶又は他の磁気記憶機器を含む。勿論、当業者は前記コンピュータ記憶媒体が上記のいくつかに限定されないことを知っている。上記のシステムメモリ2004及び大容量記憶機器2007はメモリと総称されてもよい。
【0208】
本願の様々な実施例によれば、前記コンピュータ機器2000は更にインターネット等のネットワークを介してネットワーク上の遠隔コンピュータに接続して演算されてもよい。即ち、コンピュータ機器2000は前記システムバス2005上に接続されたネットワークインタフェースユニット2011を介してネットワーク2012に接続されてもよく、又は、ネットワークインタフェースユニット2011を使用して他のタイプのネットワーク又は遠隔コンピュータシステム(図示せず)に接続されてもよい。
【0209】
前記メモリ中に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットは1つ又は1つ以上のプロセッサにより実行されることで、上記実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現するように構成される。
【0210】
例示的な実施例では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を更に提供し、前記記憶媒体中に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記命令セットはコンピュータ機器のプロセッサにより実行される時に上記実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現する。例示的な実施例では、上記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体はROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク及び光データ記憶機器等であってもよい。
【0211】
例示的な実施例では、コンピュータプログラム製品を更に提供し、当該コンピュータプログラム製品は実行される時、上記実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現することに用いられる。
【0212】
例示的な実施例では、チップを更に提供し、該チップはプログラマブル論理回路及び/又はプログラム命令を含み、該チップはコンピュータ機器上で演算し、上記実施例で提供されるニューラルネットワークに基づく量子誤り訂正復号方法を実現することに用いられる。
【0213】
選択的に、該チップはFPGAチップ又はASICチップである。
【0214】
理解すべきものとして、本明細書で言及された「複数」とは2つ又は2つ以上を指す。「及び/又は」は、関連オブジェクトの関連関係を記述し、3種の関係が存在できることを表し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独で存在することの3種の状況を表すことができる。符号「/」は一般的に前後の関連オブジェクトが「又は」の関係であることを表す。また、本明細書で記述されたステップ番号は、ステップ間の1種の可能な実行の先後の順序を例示的に示すだけであり、いくつかの他の実施例では、上記ステップは番号順序に応じて実行されなくてもよく、例えば番号が異なる2つのステップは同時に実行され、又は番号が異なる2つのステップは図示とは逆の順序に応じて実行され得るが、本願の実施例はこれを限定しない。
【0215】
以上は本願の例示的な実施例に過ぎず、本願を限定するためのものではなく、本願の精神及び原則内においてなされた任意の修正、均等の置き換え、改良等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0216】
11 白色円
12 黒色円
13 斜線充填
14 白色充填
21 黒色辺
22 斜線充填円部分
31 量子回路
32 希釈冷凍機
33 制御機器
33a 総合制御システム
33b 訂正モジュール
34 コンピュータ
61 シンドローム情報
62 ニューラルネットワーク復号器
81 白色点
82 黒色点
91 セグメント
101 斜線充填線分
102 黒色充填線分
111 シンドローム情報
112 ニューラルネットワーク復号器
131 黒色ドット
151 次元データ配列
152 第1復号器
153 第2復号器
1800 装置
1810 シンドローム情報取得モジュール
1812 シンドローム情報分割モジュール
1820 ブロック分割特徴抽出モジュール
1830 融合復号処理モジュール
1840 決定モジュール
1841 第1取得ユニット
1842 第2取得ユニット
1843 決定ユニット
1850 訂正信号生成モジュール
1860 訂正信号送信モジュール
2000 コンピュータ機器
2001 処理ユニット
2002 ランダムアクセスメモリ
2003 専用メモリ
2004 システムメモリ
2005 システムバス
2006 出力システム
2006 出力システム
2007 大容量記憶機器
2008 ディスプレイ
2009 入力機器
2010 入出力コントローラ
2011 ネットワークインタフェースユニット
2012 ネットワーク
2013 オペレーティングシステム
2014 アプリケーションプログラム
2015 プログラムモジュール