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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】車体側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
B62D25/04 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021550466
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033162
(87)【国際公開番号】W WO2021065301
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2019183600
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長浜 拓
(72)【発明者】
【氏名】梅壽 光大
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-173403(JP,A)
【文献】特開2012-40910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0057066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルとが接合されて上下方向に延びるセンタピラーを備えた車体側部構造において、
前記インナパネルには、シートベルト部品を挿入する開口部が形成され、
前記アウタパネルは、
前記アウタパネルの下部を形成するロア部と、
前記ロア部に重ねられて上方へ延びるアッパ部と、を備え、
前記アッパ部の下端は、前記ロア部および前記アッパ部が重ねられ接合するラップ部の下端に沿って車体前後方向に向けて上方または下方に傾斜し、前記開口部に対峙する位置に配置されている、
車体側部構造。
【請求項2】
前記アウタパネルは、
車体前後方向に向けて配置された頂部と、前記頂部の両端部から車幅方向の内側に延びた一対の脚部と、前記一対の脚部から車体前後方向に張り出された一対のつば部と、を有し、
前記頂部、一対の前記脚部及び一対の前記つば部は、車幅方向の内側に向けて開口するハット断面に形成され、
前記頂部には前記アッパ部の下端に沿って脆弱部が配置されている、
請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記アウタパネルは、
前記ロア部が、車体前後方向に延びるサイドシルの外面に接合され、
前記インナパネルは、
前記サイドシルを貫通して接合されている、
請求項1または請求項2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記サイドシルは、
前記サイドシルの車幅方向の内側において、車幅方向に延びるフロアクロスメンバが、車幅方向内側に対峙する内面に接合されている、
請求項3に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記センタピラーは、
車体前後方向に延びるルーフサイドレールの外面に前記アッパ部の上端部が接合され、 前記ルーフサイドレールの内面に前記インナパネルの上端部が接合されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記脆弱部の前端部には、
フロントドアビームの後端部が車幅方向の外側において対峙するように配置され、
前記脆弱部の後端部には、
リヤドアビームの前端部が車幅方向の外側において対峙するように配置されている、
る請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記脆弱部は、
前記ロア部のうち、前記アッパ部の下端から下方へ所定間隔をおいて設けられた補強部材により形成されている、
請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項8】
前記脆弱部は、
前記ロア部において、ドアヒンジが取り付けられる取付台座の曲げ部で形成されている、
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項9】
前記センタピラーは、
前記アッパ部に重ねられた第1の補強部材と、
前記第1の補強部材に比べて上下方向において小さく形成され、前記第1の補強部材に重ねられた第2の補強部材と、を備え、
前記アッパ部、前記第1の補強部材、および前記第2の補強部材が、ベルトラインより上方の部位において3枚重ねられている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項10】
前記第1の補強部材は、前記アウタパネルの内面に沿ってU字断面に形成され、
前記第2の補強部材は、前記第1の補強部材の内面に沿ってU字断面に形成され、
前記センタピラーは、
前記第1の補強部材および前記第2の補強部材の少なくとも一方に設けられ、車幅方向への潰れ変形を抑制するバルクヘッドを備えている、
請求項9に記載の車体側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部構造に関する。
本願は、2019年10月4日に出願された日本国特願2019-183600号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造は、通常ルーフサイドレールが車体上部の側方において車体前後方向に延設され、サイドシルが車体下部の側方において車体前後方向に延設され、サイドシルおよびルーフサイドレールにセンタピラーが連結されている。センタピラーは、例えば、アウタパネルとインナパネルとにより上下方向に延設される閉断面が形成されている。このセンタピラーは、アウタパネルの上端部がルーフサイドレールの外面に固定され、アウタパネルの下端部がサイドシルの外面に固定されている。また、インナパネルの上端部がルーフサイドレールの内面に固定され、インナパネルの下端部がサイドシルの内面に固定されている。
【0003】
ここで、センタピラーのなかには、アウタピラーの後側フランジに補強部材が接合されることにより、後側フランジが補強部材で補強されているものが知られている。このセンタピラーに、例えば、側面衝突などにより荷重が入力した場合、入力した荷重により、後側フランジや補強部材を緩やかに折れ曲げることができる。よって、入力した荷重を後側フランジや補強部材で分散させることができる。これにより、後側フランジに亀裂が発生することを抑制できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、センタピラーのなかには、シートベルトリトラクタ用のブラケットがインナパネルに取り付けられ、ブラケットに設けられた補強部材により、リインフォースのアッパ部とロア部との結合部を補強するものが知られている。このセンタピラーに、例えば、側面衝突などにより荷重が入力した場合、入力した荷重により、リインフォースがアッパ部とロア部との結合部に亀裂が発生することを補強部材で抑制できる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、センタピラーのなかには、インナパネルの下部に開口部が設けられ、開口部の角部のうち、側面衝突により入力する荷重で応力集中が生じ易い角部に、曲率半径の小さい略直線形状の応力分散直線部が形成されたものが知られている。インナパネルの開口部にはシートベルトリトラクタが配置される。
このセンタピラーに、例えば、側面衝突などにより荷重が入力した場合、入力した荷重により、応力分散直線部に応力が集中することを抑制できる。これにより、応力分散直線部に亀裂が発生することを抑制できる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特許第3104530号公報
【文献】日本国特開2008-254595号公報
【文献】日本国特開2009-184515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1のセンタピラーは、アウタピラーの後側フランジに亀裂が発生することを抑えるために、後側フランジを補強部材で補強する必要があり、そのことが重量の増加を抑える妨げになる。
また、特許文献2のセンタピラーは、リインフォースのアッパ部とロア部との結合部に亀裂が発生することを抑えるために、結合部を補強部材で補強する必要があり、そのことが重量の増加を抑える妨げになる。
さらに、特許文献3のセンタピラーは、インナパネルの開口部に亀裂が発生することを抑えるために、開口部に応力分散直線部を形成する必要がある。このため、開口部が大きくなり過ぎてインナパネルの曲げ強度が低下し、衝撃エネルギーの吸収量が低下することが考えられる。
【0008】
本発明の態様は、重量の増加を抑え、衝撃エネルギーの吸収量を確保できる車体側部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る車体側部構造は、アウタパネルとインナパネルとが接合されて上下方向に延びるセンタピラーを備え、前記インナパネルにシートベルト部品を挿入する開口部が形成された車体側部構造において、前記アウタパネルは、前記アウタパネルの下部を形成するロア部と、前記ロア部に重ねられて上方へ延びるアッパ部と、を備え、前記アッパ部の下端は、前記ロア部および前記アッパ部が重ねられ接合するラップ部の下端に沿って車体前後方向に向けて上方または下方に傾斜し、前記開口部に対峙する位置に配置されている。
【0010】
(1)の態様によれば、ロア部およびアッパ部が重ねられ接合するラップ部の下端に沿って車体前後方向に向けて上方または下方に傾斜する脆弱部を容易に形成できる。これにより、センタピラーに、例えば、側面衝突などにより荷重が入力した場合、入力した荷重により、センタピラーがこの脆弱部に沿って曲げ変形する。ここで、脆弱部は、車体前後方向に向けて上方または下方に傾斜され、開口部に対峙する位置に配置されている。よって、脆弱部に対峙する開口部の周縁に車体前後方向に向けて上方または下方に傾斜する仮想線に沿って引張荷重が上下方向に作用する。これにより、開口部の周縁において、傾斜する仮想線に沿って変形させることにより、衝撃エネルギーを吸収し、その後、開口部の周縁を仮想線に沿って亀裂、破断させる。
開口部の周縁において亀裂を傾斜させることにより、例えば、開口部の周縁に水平な亀裂を発生させる場合と比べて、亀裂の長さ(すなわち、変形の長さ)を増すことができる。亀裂の長さを増すことにより、側面衝突などにより入力した衝撃エネルギーの吸収量を増すことができる。このように、脆弱部を車体前後方向に向けて傾斜させることにより、センタピラーの重量の増加を抑えるとともに、衝撃エネルギーの吸収量を確保できる。
【0011】
(2)上記(1)の態様において、前記アウタパネルは、車体前後方向に向けて配置された頂部と、前記頂部の両端部から車幅方向の内側に延びた一対の脚部と、前記一対の脚部から車体前後方向に張り出された一対のつば部と、により、車幅方向の内側に向けて開口するハット断面に形成されてもよく、前記頂部には前記アッパ部の下端に沿って前記脆弱部が配置されていてもよい。
【0012】
(2)の態様によれば、センタピラーに、側面衝突などにより荷重が入力した場合、荷重が頂部に入力する。頂部には、車体前後方向に向けて傾斜する脆弱部が配置されている。よって、頂部に入力した荷重は、脚部からつば部に向けて脆弱部の傾斜に対応する仮想線に対して引張荷重が上下方向に作用する。
ここで、つば部にインナパネルが接合され、インナパネルに開口部が形成されている。これにより、つば部に作用する引張荷重により、傾斜する仮想線に沿って開口部の周縁に効率よく亀裂を発生させることができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)の態様において、前記アウタパネルは、前記ロア部が、車体前後方向に延びるサイドシルの外面に接合されてもよく、前記インナパネルは、前記サイドシルを貫通して接合されていてもよい。
【0014】
(3)の態様によれば、サイドシルの外面にアウタパネルのロア部を接合し、サイドシルを貫通してインナパネルを接合させた。よって、センタピラーは、サイドシルに強固に接合されている。これにより、側面衝突などによりセンタピラーに荷重が入力した場合、入力した荷重により、脆弱部に対応する仮想線に沿って引張荷重を上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を確保できる。
加えて、サイドシルは、車体前後方向に中空構造が連続して形成され、特に、車体前後方の荷重に対して強度、剛性の高い骨格部材である。これにより、例えば、前面衝突や、後面衝突により入力する荷重を、サイドシルで支えることができ、センタピラーに与える影響を抑えることができる。
【0015】
(4)上記(3)の態様において、前記サイドシルは、前記サイドシルの車幅方向の内側において、車幅方向に延びるフロアクロスメンバが、車幅方向内側に対峙する内面に接合されていてもよい。
【0016】
(4)の態様によれば、サイドシルの内面にフロアクロスメンバが接合されている。よって、側面衝突などによりセンタピラーに入力する荷重に対して、センタピラーをサイドシルで一層強固に支持できる。これにより、側面衝突などでセンタピラーに入力した荷重により、脆弱部に対応する仮想線に沿って引張荷重を上下方向に一層確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を一層良好に確保できる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記センタピラーは、車体前後方向に延びるルーフサイドレールの外面に前記アッパ部の上端部が接合されてもよく、前記ルーフサイドレールの内面に前記インナパネルの上端部が接合されていてもよい。
【0018】
(5)の態様によれば、アッパ部の上端部をルーフサイドレールの外面に接合させ、インナパネルの上端部をルーフサイドレールの内面に接合させた。よって、センタピラーの上端部がルーフサイドレールに強固に接合されている。これにより、側面衝突などによりセンタピラーに荷重が入力した場合、入力した荷重により、脆弱部に対応する仮想線に沿って引張荷重を上下方向に一層確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を一層良好に確保できる。
【0019】
(6)上記(2)から(5)のいずれかの態様において、前記脆弱部の前端部には、フロントドアビームの後端部が車幅方向の外側において対峙するように配置されてもよく、前記脆弱部の後端部には、リヤドアビームの前端部が車幅方向の外側において対峙するように配置されていてもよい。
【0020】
(6)の態様によれば、フロントドアビームの後端部を脆弱部の前端部に対峙させた。また、リヤドアビームの前端部を脆弱部の後端部に対峙させた。よって、側面衝突などにより荷重が入力した場合、入力した荷重をフロントドアビーム、リヤドアビームから脆弱部に伝えることができる。すなわち、入力した荷重で脆弱部を確実に車幅方向の内側に凹ませるように変形させることができる。これにより、脆弱部に対応する仮想線に沿って引張荷重を上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を良好に確保できる。
【0021】
(7)上記(2)から(6)のいずれかの態様において、前記脆弱部は、前記ロア部のうち、前記アッパ部の下端から下方へ所定間隔をおいて設けられた補強部材により形成されていてもよい。
【0022】
(7)の態様によれば、アッパ部の下端から下方へ所定間隔をおいて補強部材を設け、補強部材で脆弱部を形成した。これにより、ロア部に脆弱部を容易に形成できる。
また、補強部材を利用して、例えば、センタピラーの車体後方のサイドドア(リヤサイドドア)のヒンジ(下側のヒンジ)を、センタピラーに強固に固定できる。
【0023】
(8)上記(2)から(7)のいずれかの態様において、前記脆弱部は、前記ロア部において、ドアヒンジが取り付けられる取付台座の曲げ部で形成されていてもよい。
【0024】
(8)の態様によれば、ドアヒンジが取り付けられる取付台座の曲げ部を利用して脆弱部を形成するようにした。これにより、脆弱部をアウタパネルに容易に形成できる。加えて、車体後方のサイドドアに設けられた下側のドアヒンジをセンタピラーに固定できる。 また、取付台座に、例えば、センタピラーの車体後方のサイドドア(リヤサイドドア)のヒンジ(下側のヒンジ)を強固に固定できる。
【0025】
(9)上記(1)から(8)のいずれかの態様において、前記センタピラーは、前記アッパ部に重ねられた第1の補強部材と、前記第1の補強部材に比べて上下方向において小さく形成され、前記第1の補強部材に重ねられた第2の補強部材と、を備えてもよく、前記アッパ部、前記第1の補強部材、および前記第2の補強部材が、ベルトラインより上方の部位において3枚重ねられていてもよい。
【0026】
(9)の態様によれば、ベルトライン(窓の下端)より上方の部位において、アッパ部、第1の補強部材、および第2の補強部材を3枚重ねるようにした。すなわち、ベルトラインより上方の部位の強度、剛性が高められている。よって、側面衝突などにより入力した荷重を脆弱部に伝えて、伝えた荷重で脆弱部を確実に車幅方向の内側に凹ませるように変形させることができる。これにより、脆弱部に対応する仮想線に沿って引張荷重を上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を良好に確保できる。
【0027】
(10)上記(1)から(9)のいずれかの態様において、前記第1の補強部材は、前記アウタパネルの内面に沿ってU字断面に形成されてもよく、前記第2の補強部材は、前記第1の補強部材の内面に沿ってU字断面に形成されてもよく、前記センタピラーは、前記第1の補強部材および前記第2の補強部材の少なくとも一方に設けられ、車幅方向への潰れ変形を抑制するバルクヘッドを備えていてもよい。
【0028】
(10)の態様によれば、第1の補強部材および第2の補強部材の少なくとも一方にバルクヘッドを設け、バルクヘッドにより車幅方向への潰れ変形を抑制するようにした。よって、側面衝突などにより入力した荷重を脆弱部に伝えて、伝えた荷重で脆弱部を確実に車幅方向の内側に凹ませるように変形させることができる。これにより、脆弱部に対応する仮想線に沿って引張荷重を上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を良好に確保できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の態様によれば、脆弱部を車体前後方向に向けて傾斜し、脆弱部を開口部に対峙する位置に配置した。これにより、重量の増加を抑え、衝撃エネルギーの吸収量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る実施形態の車体側部構造を示す斜視図である。
図2】実施形態の車体側部構造をセンタピラーで破断した状態を車体前方側からみた斜視図である。
図3】実施形態のサイドシルを破断した状態を車室側からみた斜視図である。
図4】実施形態のサイドシルを破断した状態を車外側からみた斜視図である。
図5】実施形態のセンタピラーからインナパネルを除去した側面図である。
図6】実施形態の車体側部構造をセンタピラーで破断した状態を車室側からみた斜視図である。
図7】実施形態のセンタピラーを破断した状態を示す斜視図である。
図8】実施形態のセンタピラーを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態の図面において、矢印FRは車両1の前方を示し、矢印UPは車両1の上方を示し、矢印LHは車両1の左方を示す。
実施形態の車体側部構造10は、概ね左右対称の構成であり、左右の構成部材について同じ符号を付し、主に左側の構成について詳しく説明する。
【0032】
<車体側部構造>
図1に示すように、車体側部構造10は、サイドシル12と、センタピラー14と、ルーフサイドレール16と、を備える。
【0033】
サイドシル12は、車体下部の側方において車体前後方向に延びる閉断面に形成されている。サイドシル12の車体前後方向の中央部12aからセンタピラー14が上方へ向けて延びている。センタピラー14(具体的には、後述するアッパ部38)の上端部38aにルーフサイドレール16が固定されている。ルーフサイドレール16は、車体上部の側方において車体前後方向に延びる閉断面(図2参照)に形成されている。
【0034】
<サイドシル>
図2図3に示すように、サイドシル12は、サイドシルアウタパネル21と、サイドシルインナパネル22と、を備える。
サイドシルアウタパネル21は、上フランジ21aおよび下フランジ21bを有するハット断面に形成されている。サイドシルインナパネル22は、上フランジ22aおよび下フランジ22bを有するハット断面に形成されている。
サイドシルアウタパネル21とサイドシルインナパネル22との上フランジ21a,22a同士が接合されている。また、サイドシルアウタパネル21とサイドシルインナパネル22との下フランジ21b,22b同士が接合されている。これにより、サイドシルアウタパネル21およびサイドシルインナパネル22によりサイドシル12が閉断面に形成されている。換言すれば、サイドシル12は、車体前後方向に中空構造が連続して形成されている。サイドシル12は、車体前後方の荷重に対して強度、剛性の高い骨格部材である。
【0035】
サイドシルインナパネル22の内面(サイドシルの内面)22cには、フロアクロスメンバ24の端部24aが接合されている。サイドシルインナパネル22の内面22cは、車幅方向内側に対峙する面である。フロアクロスメンバ24は、例えば、フロアパネル27の表面に沿って車幅方向に延びるハット断面の部材である。フロアクロスメンバ24がフロアパネル27の表面に接合されることにより、フロアクロスメンバ24およびフロアパネル27により、強度、剛性の高い閉断面が形成されている。
フロアクロスメンバ24の左端部には、取付ブラケット28が取り付けられている。取付ブラケット28の左端部28aがサイドシルインナパネル22に接合されている。取付ブラケット28には、フロントシートの脚部が取り付けられる。
これにより、例えば、側面衝突などにより荷重がセンタピラー14に車幅方向の外側から入力した場合、センタピラー14に入力する荷重に対して、センタピラー14をサイドシル12で強固に支持できる。
【0036】
<ルーフサイドレール>
図1図2に示すように、ルーフサイドレール16は、ルーフサイドアウタパネル25と、ルーフサイドインナパネル26と、を備える。
ルーフサイドアウタパネル25は、上フランジ25aおよび下フランジ25bを有する。ルーフサイドインナパネル26は、上フランジ26aおよび下フランジ26bを有する。ルーフサイドアウタパネル25とルーフサイドインナパネル26との上フランジ25a,26a同士が接合されている。また、ルーフサイドアウタパネル25とルーフサイドインナパネル26との下フランジ25b,26b同士が接合されている。
これにより、ルーフサイドアウタパネル25およびルーフサイドインナパネル26によりルーフサイドレール16が閉断面に形成されている。ルーフサイドレール16は、車体上部の側方において車体骨格を形成する剛性の高い部材である。
【0037】
<センタピラー>
図4図5に示すように、センタピラー14は、アウタパネル31と、インナパネル32と、第1の補強部材33と、第2の補強部材34と、第1のバルクヘッド(バルクヘッド)35と、第2のバルクヘッド(バルクヘッド)36と、を備える。センタピラー14は、アウタパネル31とインナパネル32とが接合されることにより閉断面が形成され、形成された閉断面が上下方向に延びている。
アウタパネル31は、ロア部37と、アッパ部38と、を備えている。ロア部37は、アウタパネル31の下部領域を形成する部材である。アッパ部38は、ロア部37の途中からロア部37に重ねられて上方へ延びる上部領域である。ロア部37よりアッパ部38は高強度の材料である。
【0038】
図1図4に示すように、ロア部37は、車幅方向外側に膨出するロア膨出部41と、ロア膨出部41から車体前方に張り出されたロア前つば部(一対のつば部の一方)42と、ロア膨出部41から車体後方に張り出されたロア後つば部(一対のつば部の他方)43と、を備える。
前記ロア膨出部41は、車体前後方向に向けて配置されたロア頂部(頂部)44と、ロア頂部44の前辺(両端部の一方)から車幅方向の内側に延びたロア前脚部(一対の脚部の一方)45と、ロア頂部44の後辺(両端部の他方)から車幅方向の内側に延びたロア後脚部(一対の脚部の他方)46と、を有する。
【0039】
ロア頂部44、ロア前脚部45、およびロア後脚部46により、ロア膨出部41が、車幅方向内側へ向けて開口された略U字断面(U字断面を含む)に形成されている。
ロア前つば部42は、ロア膨出部41(すなわち、ロア前脚部45)の前開口辺から車体前方へ向けて張り出されている。ロア後つば部43は、ロア膨出部41(すなわち、ロア後脚部46)の後開口辺から車体後方へ向けて張り出されている。
ロア膨出部41、ロア前つば部42、およびロア後つば部43により、ロア部37が、車幅方向の内側に向けて開口するハット断面に形成されている。
【0040】
図6に示すように、アッパ部38は、車幅方向外側に膨出するアッパ膨出部51と、アッパ膨出部51から車体前方に張り出されたアッパ前つば部(一対のつば部の一方)52と、ロア膨出部41から車体後方に張り出されたアッパ後つば部(一対のつば部の他方)53と、を備える。
アッパ膨出部51は、車体前後方向に向けて配置されたアッパ頂部(頂部)54と、アッパ頂部54の前辺(両端部の一方)から車幅方向の内側に延びたアッパ前脚部(一対の脚部の一方)55と、アッパ頂部54の後辺(両端部の他方)から車幅方向の内側に延びたアッパ後脚部(一対の脚部の他方)56と、を有する。
【0041】
アッパ頂部54、アッパ前脚部55、およびアッパ後脚部56により、アッパ膨出部51が、車幅方向内側へ向けて開口された略U字断面(U字断面を含む)に形成されている。
アッパ前つば部52は、アッパ膨出部51(すなわち、アッパ前脚部55)の前開口辺から車体前方へ向けて張り出されている。アッパ後つば部53は、アッパ膨出部51(すなわち、アッパ後脚部56)の後開口辺から車体後方へ向けて張り出されている。
アッパ膨出部51、アッパ前つば部52、およびアッパ後つば部53により、アッパ部38が、車幅方向の内側に向けて開口するハット断面に形成されている。
【0042】
図4に示すように、アッパ部38は、下部にアッパラップ部58を有する。アッパラップ部58は、アッパ頂部54の下端が、傾斜辺54aと、湾曲辺54bにより、形成されている。傾斜辺54aは、アッパ後脚部56の下端56aから車体前方へ向けて下り勾配に傾斜されている。湾曲辺54bは、傾斜辺54aの前端54cからアッパ前脚部55の下端55aまで下方に膨出するように湾曲に形成されている。
【0043】
図2図5に示すように、アッパラップ部58には、ロア部37のロアラップ部59が車幅方向の外側から重ねられ接合されている。これにより、ロア部37およびアッパ部38によりアウタパネル31が形成されている。ロアラップ部59とアッパラップ部58とが重ねられた状態に接合されることにより、ロアラップ部59とアッパラップ部58とによりラップ部62が形成されている。
ラップ部62の下端が傾斜辺54aを形成している。すなわち、アッパ部38の下端(具体的には、アッパ頂部54の傾斜辺54a)は、ロア部37およびアッパ部38が重ねられ接合するラップ部62の下端に沿って車体前後方向に向けて下方に傾斜し、後述する開口部96に対峙する位置に配置されている。
なお、他の例として、アッパラップ部58をロアラップ部59に車幅方向の外側から接合してもよい。この場合、側突荷重を後述する脆弱部107(図7参照)に集中させることができる。
アウタパネル31は、ロア部37の下端部37aがサイドシルアウタパネル21の外面(サイドシルの外面)21cに接合されている。アウタパネル31は、アッパ部38の上端部38aがルーフサイドアウタパネル25の外面(ルーフサイドレールの外面)25cに接合されている。
【0044】
(補強部材)
図4図6に示すように、アッパ部38の内面に第1の補強部材33が重ねられた状態に接合されている。第1の補強部材33は、アッパ部38の下端部寄りの部位38bからアッパ部38の上端部38aまで上方向に延びている。具体的には、第1の補強部材33は、第1頂部65と、第1前脚部66と、第1後脚部67と、を有する。第1頂部65、第1前脚部66、および第1後脚部67により、第1の補強部材33が、アッパ部38の内面に沿って略U字断面(U字断面を含む)に形成されている。
【0045】
第1の補強部材33の内面に第2の補強部材34が重ねられた状態に接合されている。第2の補強部材34は、第2頂部71と、第2前脚部72と、第2後脚部73と、を有する。第2頂部71、第2前脚部72、および第2後脚部73により、第2の補強部材34が、第1の補強部材33の内面に沿って略U字断面(U字断面を含む)に形成されている。
第2の補強部材34は、例えば、ベルトライン部(ベルトライン)75からベルトライン上側位置77までの室内側に湾曲する部位に延びている。
ベルトライン部75とは、車体のサイド窓ガラスの下端部を横方向に走るラインをいう。ベルトライン上側位置77は、ベルトライン部75とルーフサイドレール16との間の中間位置である。
【0046】
第2の補強部材34は、第1の補強部材33に比べて高さ寸法が上下方向において小さく形成されている。アッパ部38、第1の補強部材33、および第2の補強部材34は、例えば、ベルトライン部75より上方の部位において3枚重ねられている。換言すれば、センタピラー14は、ベルトライン部75より上方の部位において、アッパ部38、第1の補強部材33、および第2の補強部材34が3枚重ねられている。
【0047】
図4図6に示すように、インナパネル32は、車幅方向内側に膨出するインナ膨出部81と、インナ膨出部81から車体前方に張り出されたインナ前つば部82と、インナ膨出部81から車体後方に張り出されたインナ後つば部83と、を備える。
インナ前つば部82は、アウタパネル31のロア前つば部42およびアッパ前つば部52に接合されている。インナ後つば部83は、ロア後つば部43およびアッパ後つば部53に接合されている。
これにより、インナパネル32がアウタパネル31に接合され、インナパネル32およびアウタパネル31によりセンタピラー14が閉断面に形成されている。センタピラー14は、サイドシル12およびルーフサイドレール16の間において上下方向に延び、車体骨格を形成する剛性の高い部材である。
【0048】
図2図3に示すように、インナパネル32は、下端部32aがサイドシル12を上下方向に貫通して接合されている。インナパネル32の下端部32aは、サイドシルアウタパネル21の上フランジ21aと、サイドシルインナパネル22の上フランジ22aとに挟持された状態に接合されている。さらに、インナパネル32の下端部32aは、サイドシルアウタパネル21の下フランジ21bと、サイドシルインナパネル22の下フランジ22bとに挟持された状態に接合されている。
アウタパネル31は、ロア部37の下端部37aがサイドシルアウタパネル21の外面21cに接合されている。これにより、センタピラー14は、下端部14aがサイドシル12に強固に接合されている。
【0049】
図5に示すように、インナパネル32は、上端部32bがルーフサイドインナパネル26の内面(ルーフサイドレールの内面、車室側の面)26cに接合されている。アウタパネル31は、アッパ部38の上端部38aがルーフサイドアウタパネル25の外面25cに接合されている。すなわち、センタピラー14は、上端部14bがルーフサイドレール16に強固に接合されている。
【0050】
(バルクヘッド)
図4図6に示すように、センタピラー14の第1の補強部材33の内部に第1のバルクヘッド35が設けられている。第1のバルクヘッド35は、仕切り壁85と、第1折返しフランジ86と、第2折返しフランジ87と、を有する。
仕切り壁85は、第1の補強部材33の長手方向に対して交差(具体的には、直交)して配置されている。仕切り壁85は、第2外側辺85aと、第2前辺85bと、第2後辺85cと、第2内側辺85dと、を有する。第2外側辺85a、第2前辺85b、および第2後辺85cにより、仕切り壁85が第1の補強部材33の略U字状断面に沿って外形の輪郭が形成されている。
また、第2内側辺85dは、第1の補強部材33の開口側(インナ膨出部81側)に配置されている。
【0051】
第2外側辺85a、第2前辺85b、および第2後辺85cに第1折返しフランジ86がそれぞれ設けられている。第2外側辺85aのうち、車体前後方向の中央部から、第1折返しフランジ86が下方へ向けて第1の補強部材33の第1頂部65に沿って折り曲げられ、第1頂部65に接合されている。
第2前辺85bから、第1折返しフランジ86が、下方へ向けて第1の補強部材33の第1前脚部66に沿って折り曲げられ、第1前脚部66に接合にされている。第2後辺85cから、第1折返しフランジ86が、下方へ向けて第1の補強部材33の第1後脚部67に沿って折り曲げられ、第1後脚部67に接合されている。
すなわち、仕切り壁85は、第1折返しフランジ86により第1の補強部材33の略U字状断面の内部に接合されている。
【0052】
第2内側辺85dに第2折返しフランジ87が設けられている。具体的には、第2内側辺85dのうち、車体前後方向の中央部から、第2折返しフランジ87が上方へ向けてインナパネル32のインナ膨出部81に沿って折り曲げられ、インナ膨出部81に締結部材(例えば、ボルト88、ナット)により結合されている。
【0053】
このように、第1の補強部材33の第1頂部65、第1前脚部66、および第1後脚部67の略U字状断面の壁部に、第1折返しフランジ86が接合されている。また、インナ膨出部81に、第2折返しフランジ87が結合されている。これにより、第1の補強部材33とインナパネル32とにより形成される矩形断面の4つの壁部のすべてを第1のバルクヘッド35で拘束できる。よって、センタピラー14の強度、剛性を高めることができる。
【0054】
また、センタピラー14の第2の補強部材34の内部に第2のバルクヘッド36が設けられている。第2のバルクヘッド36は、上下方向において、第1のバルクヘッド35と概ね対称に形成されている。
すなわち、第2のバルクヘッド36の仕切り壁91は、第1折返しフランジ92により第2の補強部材34の略U字状断面の内部に接合されている。
また、仕切り壁91の第2折返しフランジ93が、インナパネル32のインナ膨出部81に締結部材(例えば、ボルト94、ナット)により結合されている。よって、仕切り壁91は、第2折返しフランジ93によりインナ膨出部81に結合されている。
これにより、第2の補強部材34とインナパネル32とにより形成される矩形断面の4つの壁部のすべてを第2のバルクヘッド36で拘束できる。よって、センタピラー14の強度、剛性を高めることができる。
【0055】
このように、第1の補強部材33に第1のバルクヘッド35が設けられている。第2の補強部材34に第2のバルクヘッド36が設けられている。よって、第1のバルクヘッド35および第2のバルクヘッド36により、アッパ部38のアッパ前脚部55およびアッパ後脚部56が補強されている。
これにより、例えば、側面衝突などによる荷重がセンタピラー14に車幅方向外側から入力した場合、入力した荷重により、アッパ前脚部55およびアッパ後脚部56が車体前後方向に折れ曲がることを抑えることができる。換言すれば、入力した荷重により、アッパ部38が車幅方向内側へ潰れ変形することを抑制できる。
【0056】
(開口部)
図7に示すように、インナパネル32の下部には開口部96が形成されている。開口部96は、アッパラップ部58の傾斜辺54aおよび湾曲辺54b、後述する脆弱部107、および、後述する補強ブラケット105に対峙する位置に配置されている。
開口部96には、不図示のシートベルト装置のリトラクタ(シートベルト部品)が挿入(配置)される。リトラクタは、シートベル装置のウエビングを巻き取り、繰り出しをする装置である。
【0057】
(脆弱部)
図7図8に示すように、ロアラップ部59とアッパラップ部58とが重ねられた状態に接合されるラップ部62の下端が傾斜辺54aを形成している。このため、傾斜辺54aに隣接するロア部37は脆弱部107を形成する。脆弱部107をさらに確定するため、以下の構造を採用する。ロア部37のロア頂部44には、下方のドアヒンジを固定する取付台座101が形成されている。取付台座101は、アッパラップ部58の傾斜辺54aの下方に平行に配置され、ロア頂部44の外面44aに対して車幅方向外側に膨出している。取付台座101は、台座部102と、台座周壁103と、を有する。 台座部102は、ロア頂部44の外面44aに対して車幅方向外側に配置され、四角形の形状に形成されている。また、台座部102は、ロア頂部44に沿って平坦に形成されている。台座部102の周縁に沿って台座周壁103が形成されている。台座周壁103は、ロア頂部44から台座部102まで車幅方向の外側に折り曲げられている。台座周壁103は、上周壁(曲げ部)103aが車体後方から車体前方へ向けて下り勾配に形成されている。
【0058】
台座部102の裏面102aには、補強ブラケット(補強部材)105が車室側から接合されている。補強ブラケット105は、台座部102の外形と概ね同じ四角形の形状に形成されている。補強ブラケット105は、上ブラケット辺105aが上周壁103aに対して下方に所定間隔をおいて配置されている。上ブラケット辺105aは、上周壁103aに沿って下り勾配に形成されている。
補強ブラケット105が台座部102の裏面102aに重ねて接合されることにより、台座部102の強度、剛性が高められている。台座部102の表面102bには、例えば、リヤサイドドア116(図1参照)のドアヒンジがボルト、ナット(図示せず)などの締結部材で取り付けられている。リヤサイドドア116は、例えば、センタピラー14の車体後方に開閉自在に配置されるサイドドアである。
【0059】
ロア頂部44において、補強ブラケット105の上ブラケット辺105aと、アッパ頂部54の傾斜辺54aとの間に脆弱部107が形成されている。脆弱部107は、上ブラケット辺105a、上周壁103a、および傾斜辺54a(すなわち、ラップ部62の下端)により確定されている。換言すれば、アッパ部の下端(すなわち、傾斜辺54a)に沿って脆弱部107が配置されている。
また、脆弱部107は、アッパ頂部54の傾斜辺54a(ラップ部62の下端)に沿って車体前方に向けて下り勾配に延びている。さらに、脆弱部107は、後述するインナパネル32の開口部96に対峙する位置に配置されている。
【0060】
ここで、ラップ部62は、ロアラップ部59とアッパラップ部58とが重ねられた状態に接合された部位である。また、脆弱部107の下方は、取付台座101に補強ブラケット105が接合されている。すなわち、補強ブラケット105およびラップ部62に比べて、脆弱部107の強度が好適に低く抑えられている。
よって、例えば、側面衝突などによる荷重がセンタピラー14に車幅方向外側から入力した場合、脆弱部107に応力を好適に集中させることができる。これにより、センタピラー14に入力した荷重により、脆弱部107を好適に変形させることができる。
【0061】
脆弱部107は、開口部96に対峙する位置に配置されている。よって、インナパネル32のうち、脆弱部107に対峙する開口部96の周縁32cにおいて、仮想線120に沿って引張荷重Fが上下方向に作用する。仮想線120とは、脆弱部107と略同じ高さで同様に車体前方に向けて傾斜する線をいう。
これにより、開口部96の周縁32cを、傾斜する仮想線120に沿って変形させることができる。周縁32cを仮想線120に沿って変形させることにより、衝撃エネルギーを吸収し、その後、開口部96の周縁32cを仮想線120に沿って亀裂、破断させることができる。
【0062】
このように、アッパ部38の下端(傾斜辺54a)から下方へ所定間隔をおいて補強ブラケット105が設けられ、補強ブラケット105の上ブラケット辺105aなどで脆弱部107が形成されている。これにより、脆弱部107をロア部37(アウタパネル31)に容易に形成できる。
ドアヒンジが取り付けられる取付台座101の上周壁103aを利用して脆弱部107が形成されている。これにより、脆弱部107をロア頂部44に一層容易に形成できる。
さらに、上周壁103aは、取付台座101の曲げ部である。曲げ部は、車体前方に向けて下り勾配に延びている。よって、曲げ部(すなわち、上周壁103a)を利用して脆弱部107を形成することにより、例えば、側面衝突により入力した荷重により、脆弱部107を車体前方に向けた下り勾配に好適に変形させることができる。
取付台座101および補強ブラケット105には、リヤサイドドア116(図1参照)に設けられたドアヒンジが固定される。これにより、ドアヒンジをセンタピラー14に強固に固定できる。
【0063】
図1に示すように、脆弱部107の前端部107aには、フロントドアビーム112の後端部112aが車幅方向の外側において対峙するように配置される。フロントドアビーム112は、フロントサイドドア113を補強するために、例えばフロントサイドドア113の前辺から後辺まで下り勾配に形成されている。なお、フロントドアビーム112を水平に配置してもよい。
また、脆弱部107の後端部107bには、リヤドアビーム115の前端部115aが車幅方向の外側において対峙するように配置される。リヤドアビーム115は、リヤサイドドア116を補強するために、例えばリヤサイドドア116の前辺から後辺まで上り勾配に形成されている。なお、リヤドアビーム115は水平に配置されてもよい。
【0064】
以上説明したように、車体側部構造10によれば、センタピラー14に、例えば、側面衝突などにより荷重が入力した場合、入力した荷重により傾斜する脆弱部107に圧縮荷重(応力)を集中させることができる。傾斜する脆弱部107に圧縮荷重(応力)を集中させることにより、センタピラー14を傾斜する脆弱部107に沿って室内側に曲げ変形させることができる。
ここで、傾斜する脆弱部107は、アウタパネル側にあって車体前方に向けて傾斜されている。さらに、前記脆弱部107は、インナパネルの開口部96に対峙する位置に配置されている。このため、脆弱部107に対峙する開口部96の周縁32cにほぼ同じ高さと前後位置で傾斜する仮想線120が形成される。この傾斜する仮想線120に沿って引張荷重Fが上下方向に作用する。
これにより、周縁32cを傾斜する仮想線120に沿って変形させて衝撃エネルギーを吸収し、その後、開口部96の周縁32cを仮想線120に沿って亀裂、破断させることができる。
【0065】
開口部96の周縁32cにおいて亀裂を傾斜させて発生させることにより、例えば、開口部96の周縁32cに、車体前後方向へ水平に延びる亀裂を発生させる場合と比べて、亀裂の長さ(すなわち、変形の長さ)を増すことができる。亀裂の長さを増すことにより、側面衝突などにより入力した衝撃エネルギーの吸収量を増すことができる。このように、脆弱部107を車体前方に向けて傾斜させることにより、センタピラー14の重量の増加を抑えるとともに、衝撃エネルギーの吸収量を確保できる。
【0066】
また、脆弱部107は、ロア部37のロア頂部44に設けられている。ここで、センタピラー14に、側面衝突などにより荷重が車幅方向の外側から入力した場合、荷重がロア頂部44に入力する。よって、ロア頂部44に入力した荷重は、ロア前脚部45およびロア後脚部46からロア前つば部42およびロア後つば部43に向けて作用する。ロア前つば部42およびロア後つば部43に作用する荷重が、脆弱部107に対応する仮想線120に対して引張荷重Fが上下方向に作用する。
ロア前つば部42およびロア後つば部43にインナパネル32が接合されている。インナパネル32に開口部96が形成されている。これにより、ロア前つば部42およびロア後つば部43に作用する引張荷重Fにより、同じく傾斜する仮想線120に沿って開口部96の周縁32cに効率よく同じく傾斜する亀裂を発生させることができる。
【0067】
センタピラー14は、下端部14aがサイドシル12に強固に接合されている。これにより、側面衝突などによりセンタピラー14に荷重が入力した場合、入力した荷重により、傾斜する脆弱部107に対応する同じく傾斜する仮想線120に沿って引張荷重Fを上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を確保できる。
さらに、サイドシル12は、車体前後方向に中空構造が連続して形成され、特に、車体前後方の荷重に対して強度、剛性の高い骨格部材である。これにより、例えば、前面衝突や、後面衝突により入力する荷重を、サイドシル12で支えることができ、センタピラー14に与える影響を抑えることができる。
加えて、サイドシルインナパネル22の内面22cにフロアクロスメンバ24の端部24aが接合されている。よって、側面衝突などにより荷重が車幅方向の外側からセンタピラー14に入力した場合、センタピラー14をサイドシル12で強固に支持できる。これにより、側面衝突などでセンタピラー14に入力した荷重により、脆弱部107に対応する仮想線120に沿って引張荷重Fを上下方向に一層確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を一層良好に確保できる。
【0068】
センタピラー14は、上端部14bがルーフサイドレール16に強固に接合されている。これにより、側面衝突などによりセンタピラー14に荷重が車幅方向の外側から入力した場合、入力した荷重により、脆弱部107に対応する仮想線120に沿って引張荷重Fを上下方向へ確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を一層良好に確保できる。
【0069】
さらに、脆弱部107の前端部107aには、フロントドアビーム112の後端部112aが車幅方向の外側において対峙するように配置される。脆弱部107の後端部107bには、リヤドアビーム115の前端部115aが車幅方向の外側において対峙するように配置される。
よって、側面衝突などにより荷重が車幅方向の外側から入力した場合、入力した荷重 をフロントドアビーム112、リヤドアビーム115から脆弱部107に伝えることができる。すなわち、入力した荷 で脆弱部107を確実に車幅方向の内側に凹ませるように変形させることができる。これにより、脆弱部107に対応する仮想線120に沿って引張荷重Fを上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を良好に確保できる。
【0070】
センタピラー14は、ベルトライン部75より上方の部位において、アッパ部38、第1の補強部材33、および第2の補強部材34が3枚重ねられている。すなわち、センタピラー14は、ベルトライン部75より上方の部位の強度、剛性が高められている。よって、側面衝突などにより入力した荷重を脆弱部107に伝えて、伝えた荷重で脆弱部107を確実に車幅方向の内側に凹ませるように変形させることができる。これにより、脆弱部107に対応する仮想線120に沿って引張荷重Fを上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を良好に確保できる。
【0071】
さらに、第1の補強部材33に第1のバルクヘッド35が設けられている。第2の補強部材34に第2のバルクヘッド36が設けられている。よって、側面衝突などにより荷重が車幅方向の外側からセンタピラー14に入力した場合、入力した荷重により、アッパ部38が車幅方向に潰れ変形することを抑制できる。
これにより、側面衝突などにより入力した荷重を脆弱部107に伝えて、伝えた荷重 で脆弱部107を確実に車幅方向の内側に凹ませるように変形させることができる。したがって、脆弱部107に対応する仮想線120に沿って引張荷重Fを上下方向に確実に作用させて衝撃エネルギーの吸収量を良好に確保できる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、前記実施形態では、脆弱部107を車体前方に向けて下り勾配に形成した例について説明したがこれに限らない。その他の例として、脆弱部107を車体前方に向けて上り勾配に形成してもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、強度の高いラップ部62と補強ブラケット105との間に脆弱部107を形成することにより、脆弱部107の強度を好適に低く抑える例について説明したが、これに限らない。その他の例として、脆弱部をビード形状や、薄肉化などにより形成してもよい。
【0074】
さらに、前記実施形態では、第1の補強部材33に第1のバルクヘッド35を設け、第2の補強部材34に第2のバルクヘッド36を設けた例について説明したが、これに限らない。その他の例として、第1の補強部材33、第2の補強部材34の一方にバルクヘッドを設けてもよい。あるいは、第1の補強部材33、第2の補強部材34に任意の数のバルクヘッドを設けてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 車体側部構造
12 サイドシル
14 センタピラー
16 ルーフサイドレール
21 サイドシルアウタパネル
21c サイドシルアウタパネルの外面(サイドシルの外面)
22 サイドシルインナパネル
22c サイドシルインナパネルの内面(サイドシルの内面)
24 フロアクロスメンバ
25 ルーフサイドアウタパネル
25c ルーフサイドアウタパネルの外面(ルーフサイドレールの外面)
26 ルーフサイドインナパネル
26c ルーフサイドインナパネルの内面(ルーフサイドレールの内面)
31 アウタパネル
32 インナパネル
32b インナパネルの上端部
33 第1の補強部材
34 第2の補強部材
35 第1のバルクヘッド(バルクヘッド)
36 第2のバルクヘッド(バルクヘッド)
37 ロア部
38 アッパ部
38a アッパ部の上端部
42 ロア前つば部(つば部)
43 ロア後つば部(つば部)
44 ロア頂部(頂部)
45 ロア前脚部(脚部)
46 ロア後脚部(脚部)
52 アッパ前つば部(つば部)
53 アッパ後つば部(つば部)
54 アッパ頂部(頂部)
54a 傾斜辺(ラップ部の下端、アッパ部の下端)
55 アッパ前脚部(脚部)
56 アッパ後脚部(脚部)
62 ラップ部
75 ベルトライン部(ベルトライン)
96 開口部
101 取付台座
103a 上周壁(曲げ部)
105 補強ブラケット(補強部材)
107 脆弱部
107a 脆弱部の前端部
107b 脆弱部の後端部
112 フロントドアビーム
112a フロントドアビームの後端部
115 リヤドアビーム
115a リヤドアビームの前端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8