(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】積層ワーク成形方法、及びその装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/26 20060101AFI20221202BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20221202BHJP
B29C 51/12 20060101ALI20221202BHJP
B29C 51/30 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/10
B29C51/12
B29C51/30
(21)【出願番号】P 2021552103
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027403
(87)【国際公開番号】W WO2021075106
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019190090
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩西 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】田口 東
(72)【発明者】
【氏名】長井 風雅
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-305904(JP,A)
【文献】特開2000-280790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/26
B29C 51/10
B29C 51/12
B29C 51/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク本体を吸着保持する第1金型と、
前記ワーク本体に積層されるシート材の表面に転写可能な模様を内面に有し、且つ前記シート材を前記ワーク本体に押し付ける第2金型と、
を備える積層ワーク成形装置を用いて、前記シート材を前記ワーク本体に接着して積層ワークを成形する積層ワーク成形方法であって、
前記第2金型に前記シート材を貼り付けさせて前記模様を前記シート材に転写する転写工程を有し、
前記第1金型には、前記ワーク本体と接触する部分に開口するように貫通する吸引孔が設けられ、
前記吸引孔には、前記ワーク本体を吸引する吸着用吸引装置が接続され、
該吸着用吸引装置による吸引前あるいは吸引中に、前記シート材の非接着領域に孔を空け、前記シート材が前記ワーク本体の接着領域以外の前記非接着領域に張り付かないように、前記吸着用吸引装置による吸引を弱めることを特徴とする積層ワーク成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層ワーク成形方法であって、
前記シート材を加温してから前記シート材の前記非接
着領域に孔を空けることを特徴とする積層ワーク成形方法。
【請求項3】
ワーク本体を吸着保持する第1金型と、
前記ワーク本体に蓄積されるシート材の表面に模様を転写可能な模様を内面に有し、且つ前記シート材を前記ワーク本体に押し付ける第2金型と、
を備える積層ワーク成形装置であって、
前記第1金型には、前記ワーク本体を吸着させるための吸引孔が設けられ、
前記吸引孔には、吸着用吸引装置が接続され、
前記吸着用吸引装置による吸引前又は吸引中に、前記シート材の非接着領域に孔を空け、前記吸着用吸引装置による吸引を弱める孔を成形する孔成形手段を前記第2金型に備えることを特徴とする積層ワーク成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の積層ワーク成形装置であって、
前記孔成形手段は、前記第2金型の内面であって前記非接着領域に設けられた貫通孔と、前記貫通孔から前記シート材を吸引して、前記シート材の前記非接着領域に孔を開ける孔形成用吸引装置と、を備えることを特徴とする積層ワーク成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の積層ワーク成形装置であって、
前記孔形成用吸引装置は、前記吸着用吸引装置であり、前記吸着用吸引装置を用いて前記貫通孔を介して前記シート材を吸引して、前記シート材の前記非接着領域に孔を開けることを特徴とする積層ワーク成形装置。
【請求項6】
請求項3に記載の積層ワーク成形装置であって、
前記第2金型は、前記第1金型に向かって開口する凹部を備え、
前記凹部の開口は、前記シート材を吸着させる複数の吸着用孔が穿設されたプレートで覆われていることを特徴とする積層ワーク成形装置。
【請求項7】
請求項3に記載の積層ワーク成形装置であって、
前記シート材を加温してから前記孔を空けることを特徴とする積層ワーク成形装置。
【請求項8】
請求項3に記載の積層ワーク成形装置であって、
前記非接
着領域において加温した前記シート材を前記ワーク本体から離して支える離隔部が設けられていることを特徴とする積層ワーク成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ワーク成形方法、及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク本体とワーク本体に積層されるシート材とで構成される積層ワークを、ワーク本体を吸着保持する第1金型を用いて成形する積層ワーク成形装置が知られている(例えば、日本国特開平7-24909号公報参照)。
【0003】
日本国特開平7-24909号公報のものでは、ワーク本体の中央部に形成された逃げ凹部にシート材が引き込まれて破れることがないように逃げ凹部をシャッターで閉塞している。
【0004】
また、逃げ凹部を覆うシャッターを設けるとワーク本体のレイアウト自由度が制限されるため、ワーク本体の中央部に形成された逃げ凹部に位置させて、シート材をワーク本体から離す方向に吸引する吸引装置を設けたものも知られている(例えば、日本国特開2000-218688号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-24909号公報
【文献】特開2000-218688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
日本国特開平7-24909号公報の積層ワーク成形装置は、シート材の表面に転写可能な模様を内面に有する第2金型を用いる場合、シート材を第2金型で吸着して模様を転写した後、ワーク本体を吸着する第1金型と第2金型とを重ね合わせるようにして、シート材をワーク本体に貼り付けるときに、シート材が第2金型から剥がれ易くするために空気などの流体を第2金型から噴出させることが考えられる。
【0007】
この場合、日本国特開平7-24909号公報のようにワーク本体の中央部の逃げ凹部に位置させてシート材をワーク本体から離す方向に吸引する吸引装置を設けることができない。従って、ワーク本体のレイアウト自由度を向上させるためには、逃げ凹部に入子を配置することが考えられる。
【0008】
また、ワーク本体のレイアウト自由度に影響を与えないワーク本体の周縁では、シャッター装置を設けて、ワーク本体の周縁においてシート材を貼り付けない場所にシート材が張り付くことを防止することが考えられる。
【0009】
しかしながら、ワーク本体の周縁にシャッター装置を設けると、シート材はシャッター装置の外側に配置されたクランプで把持されるため、シャッター装置の分だけ大きなシート材を用意する必要があり、積層ワークの製造コストを抑えることができないという問題がある。
【0010】
また、シャッター装置の構成が複雑であり、且つシャッター装置を複数個所に設置する必要があり、金型製造コストを抑えることができず、また、シャッター装置のメンテナンスにも手間が掛かり、メンテナンス性が低いものであった。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、積層ワーク及び金型の製造コストを抑えることができ、且つメンテナンス性を向上させる積層ワーク成形方法及び積層ワーク成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記目的を達成するため、本発明の積層ワーク成形方法は、
ワーク本体(例えば、実施形態のワーク本体42。以下同一。)を吸着保持する第1金型(例えば、実施形態の第1金型20。以下同一。)と、
前記ワーク本体に積層されるシート材(例えば、実施形態のシート材44。以下同一。)の表面に転写可能な模様を内面に有し、且つ前記シート材を前記ワーク本体に押し付ける第2金型(例えば、実施形態の第2金型30。以下同一。)と、
を備える積層ワーク成形装置(例えば、実施形態の積層ワーク成形装置1。以下同一。)を用いて、前記シート材を前記ワーク本体に接着して積層ワーク(例えば、実施形態の積層ワーク40。以下同一。)を成形する積層ワーク成形方法であって、
前記第2金型に前記シート材を貼り付けさせて前記模様を前記シート材に転写する転写工程(例えば、実施形態の転写工程。以下同一。)を有し、
前記第1金型には、前記ワーク本体と接触する部分に開口するように貫通する吸引孔(例えば、実施形態の吸引孔22。以下同一。)が設けられ、
前記吸引孔には、前記ワーク本体を吸引する吸着用吸引装置(例えば、実施形態の第2吸引装置52。以下同一。)が接続され、
該吸着用吸引装置による吸引前あるいは吸引中に、前記シート材の非接着領域に孔を開け、前記シート材が前記ワーク本体の接着領域以外の前記非接着領域に張り付かないように、前記吸着用吸引装置による吸引を弱めることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、シャッター装置を設けることなく、シート接着させたくない基材部のシートに穴を空け、製品内板部のシートを挟んで第1金型側と第2金型側の真空度を同一とし、第1金型側の真空によるワーク本体の非接着領域へのシート接触を阻止することができる。
【0014】
[2]また、本発明においては、前記シート材を加温してから前記シート材の前記非接着領域に孔を空けることが好ましい。本発明によれば、シート材に孔を容易に空けることができる。
[3]また、本発明の積層ワーク成形装置は、
ワーク本体を吸着保持する第1金型と、
前記ワーク本体に蓄積されるシート材の表面に模様を転写可能な模様を内面に有し、且つ前記シート材を前記ワーク本体に押し付ける第2金型と、
を備える積層ワーク成形装置であって、
前記第1金型には、前記ワーク本体を吸着させるための吸引孔が設けられ、
前記吸引孔には、吸着用吸引装置が接続され、
前記吸着用吸引装置による吸引前又は吸引中に、前記シート材の非接着領域(例えば、実施形態の非接着領域。以下同一。)に孔を開け、前記吸着用吸引装置による吸引を弱める孔を成形する孔成形手段(例えば、実施形態の貫通孔32及び第1吸引装置51、又は実施形態の第1金型または第2金型に設けられた凸部。以下同一。)を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、従来のシャッターのごとき複雑で高価な機構を追加することなく、孔成形手段でシート材の積層しない部分に孔を成形することで、ワーク本体の非接着領域にシート材が付着することを防止できる積層ワーク成形装置を提供することができる。
【0016】
[4]また、本発明においては、前記孔成形手段は、前記第2金型の内面であって前記非接着領域に設けられた貫通孔と、前記貫通孔から前記シート材を吸引して、前記シート材の前記非接着領域に孔を開ける孔形成用吸引装置(例えば、実施形態の第1吸引装置51。以下同一。)と、を備えることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、例えば、第1金型または第2金型に設けられた凸部などでシート材に孔を開ける場合と比較して、容易且つ確実にシート材に孔を開けて、非接着領域において、シート材がワーク本体に付着することを防止することができる。
【0018】
[5]また、本発明においては、前記孔形成用吸引装置は、前記吸着用吸引装置であり、前記吸着用吸引装置を用いて前記貫通孔を介して前記シート材を吸引して、前記シート材の前記非接着領域に孔を開けることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、孔成形手段専用の吸引装置を設ける必要がなく、模様転写用の既存の吸引装置を用いて、例えば、転写工程と同時に、シート材に孔を開けることができる。従って、積層ワーク成形装置の小型化、低廉化を図ることができると共に、転写工程と同時に孔を形成することにより、製造工程の簡略化も図ることができる。
[6]また、本発明においては、前記第2金型は、前記第1金型に向かって開口する凹部を備え、前記凹部の開口は、前記シート材を吸着させる複数の吸着用孔が穿設されたプレートで覆われるように構成することができる。本発明によれば、プレートにシート材をしっかりと吸着させてシート材に孔を比較的容易に空けることができる。
[7]また、本発明においては、前記シート材を加温してから前記孔を空けることが好ましい。かかる構成によれば、シート材を柔らかくして容易にシート材に孔を空けることができる。
[8]また、本発明においては、前記非接着領域において加温した前記シート材を前記ワーク本体から離して支える離隔部を設けてもよい。かかる構成によれば、非接着領域において離隔部でシート材がワーク本体に接触することを阻止できるため、シート材に孔を空ける前にシート材がワーク本体に接触することを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の積層ワーク成形装置の実施形態を模式的に示す説明図。
【
図2】本実施形態の第1金型及びワーク本体を示す説明図。
【
図4】本実施液体のシート材に孔を空けた状態を示す説明図。
【
図5】比較例としてのシャッター装置を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図を参照して、本発明の積層ワーク成形装置及び積層ワーク成形方法の実施形態を説明する。
図1を参照して、本実施形態の積層ワーク成形装置1は、多孔質構造の第1金型20と、多孔質構造の第2金型30とを備える。積層ワーク成形装置1で成形されるインストルメントパネルなどの積層ワーク40は、ワーク本体42と、ワーク本体42に積層されるシート材44とを備える。
【0022】
積層ワーク成形装置1は、シート材44の周縁を把持する複数のクランプ2を備えている。クランプ2は、第1金型20の周縁の外部から上方に起立する支持装置(図示省略)によって移動自在に支持されている。
【0023】
図2は、第1金型20にワーク本体42が載置された状態を示している。
【0024】
図3に示すように、第1金型20には、ワーク本体42が載置される載置面に開口する複数の吸引孔22が設けられている。吸引孔22は、第1金型20の多孔質構造を利用して第1金型20が多孔質構造のためにそもそも備えている複数の気孔の連続または開気孔によって構成することもできる。第2金型30の内面には、シート材44の表面に転写するためのシボや梨地などの模様が形成されている。
【0025】
第2金型30には、第2金型30をワーク本体42及びシート材44を挟んで第1金型20に重ね合わせたときに、ワーク本体42の周縁の位置に開口するように貫通させた貫通孔32が設けられている。本実施形態の貫通孔32は、第2金型30の内面に形成された凹部36の開口を覆うようにプレート71が設けられ、このプレート71に穿設された孔で構成されている。
図4に示すように、貫通孔32は、吸引時にシート材44が部分的に破れるように設定されている。また、プレート71には、シート材44をプレート71に吸着させるべく貫通孔32よりも小径の吸着用孔71aが複数設けられている。
【0026】
また、第2金型30には、ワーク本体42の周縁を除いた部分であるワーク本体42の中央部の位置に開口するように貫通させた噴出孔34が設けられている。
図3及び
図4では、噴出孔34は1つしか示していないが、実際には、複数個所に設けられている。噴出孔34は、第2金型30の多孔質構造を利用して第2金型30が多孔質構造のためにそもそも備えている複数の気孔の連続または開気孔によって構成することもできる。この場合、凹部36と噴出孔34とが第2金型30の多孔質構造によって連通しないように、凹部36にメッキ加工を施したり、樹脂で固めたりなどの、連通阻止加工を施して、凹部36と噴出孔34との連通を阻止すればよい。
【0027】
プレート71に穿設された貫通孔32には、シート材44を吸引するための第1吸引装置51が第1接続配管51aを介して接続されている。本実施形態においては、貫通孔32及び第1吸引装置51で、孔成形手段が構成されている。吸引孔22にはワーク本体42を吸引するための第2吸引装置52が第2接続配管52aを介して接続されている。第2金型30の噴出孔34には、空気などの気体を供給する気体供給吸引装置53が第3接続配管53aを介して接続されている。
【0028】
第1接続配管51aと第3接続配管53aには、バイパス路53bが接続されている。バイパス路53bには、第3接続配管53aから第1接続配管51aへの気体の流れを阻止する逆止弁53cが介設されている。第3接続配管53aとバイパス路53bの接続部分には、流路切換弁54が設けられている。
【0029】
流路切換弁54は、「噴出可能状態」と、「吸引可能状態」との2つの状態に切り替え自在に構成されている。「噴出可能状態」は、噴出孔34に第3接続配管53aを介して気体供給吸引装置53を接続し、バイパス路53bを介した噴出孔34と第1吸引装置51との接続を断つ状態である。「吸引可能状態」は、噴出孔34に第3接続配管53a、バイパス路53b、および第1接続配管51aを介して第1吸引装置51を接続し、噴出孔34と気体供給吸引装置53との接続を断つ状態である。
【0030】
また、
図2を参照して、第1金型20と、ワーク本体42とには、第2金型30に向かって突出する金型側突部20aと、ワーク側突部42aが、複数の貫通孔32を囲うようにして、シート材44の接着領域の外縁に沿うように延在して、夫々設けられている。
【0031】
積層ワーク成形装置1は、第1吸引装置51、第2吸引装置52、気体供給吸引装置53、流路切換弁54を制御する制御部61を備える。制御部61は、CPU及びメモリ等により構成された電子制御ユニットであり、メモリなどの記憶部に保持された制御プログラムをCPUで実行して指示信号を送信することにより、第1吸引装置51、第2吸引装置52、気体供給吸引装置53、流路切換弁54を制御する。
また、
図3に示すように、第1金型20には、加温装置(図示省略)で暖められたシート材44を第2金型30とワーク本体42との間に配置したときにシート材44が暖められた所為で垂れ下がったとしてもワーク本体42の非接
着領域Xに接触しないようにピン81(本実施形態における離隔部に相当する。)が設けられている。なお、本実施形態においては、離隔部としてピン81を用いて説明したが、本発明の離隔部はピン81に限らず、例えば、ワーク本体42の非接
着領域Xに先端の面積が小さいピンを上方に突出するように設け、このピンの先端で、シート材44が暖められて垂れ下がったとしてもワーク本体42の非接
着領域Xに接触することなく、支えるように構成してもよい。
【0032】
次に、積層ワーク成形装置1を用いた積層ワーク成形方法を説明する。
【0033】
まず、第1金型20及び第2金型30を開いた状態とし、第1金型20にワーク本体42を載置する。そして、クランプ2で把持されたシート材44を加温装置(図示省略)で暖めた後でワーク本体42と第2金型30との間に配置させる。このとき、
図3に示すように、シート材44は非接
着領域Xにおいてピン81で下方から支えられ、ワーク本体42との接触が阻止されている。そして、第1金型20及び第2金型30を互いに接近するようにして閉じた状態とする。
【0034】
次に、制御部61は、流路切換弁54を「噴出可能状態」(噴出孔34に第3接続配管53aを介して気体供給吸引装置53を接続し、噴出孔34を介して気体供給吸引装置53で吸引可能な状態)に切り換えて、噴出孔34を介して気体供給吸引装置53でシート材44を吸引して第2金型30の内面に貼り付けさせる。これにより、第2金型30の内面に形成された模様をシート材44の表面に転写することができる(転写工程)。
【0035】
また、この転写工程において、貫通孔32を介して、第1吸引装置51でシート材44を吸引するとともに、貫通孔32によってシート材44の非接着領域X(
図4参照)が破いて孔を開ける。貫通孔32の直径は、シート材44の材質および厚さ、シート材44の加熱温度、第1吸引装置51の吸引力などに基づいて、シート材44に孔を開けられるように設定される。
【0036】
次に、ワーク本体42又はシート材44に接着剤を塗布した状態で、シート材44をワーク本体42に押し付けるようにして第2吸引装置52の吸引力で接着させる(接着工程)。
【0037】
ここで、シート材44は、ワーク本体42の表面の全てに接着させるわけではなく、自動車などの組み立てたときに露出する部分にのみ接着させ、組み付け時に他の部品に隠れる周縁などの部分については組み付け不良を防ぐべく接着させずに非接着とし、接着部分のみを残して切断され非接着の部分は廃棄される。
【0038】
そして、接着工程においては、制御部61は、流路切換弁54を「噴出可能状態」(噴出孔34に第3接続配管53aを介して気体供給吸引装置53を接続し、バイパス路53bを介した噴出孔34と第1吸引装置51との接続を断つ状態)に切り換えて、噴出孔34を介して気体供給吸引装置53でシート材44と第2金型30との間に気体を供給して、シート材44が第2金型30から剥がれるようにする。
【0039】
ワーク本体42の周縁に位置する非接着の部分が貫通孔32を介して第1吸引装置51で吸引されて孔が開けられるため、非接
着領域Xにおいてシート材44がワーク本体42側に吸引されない。従って、
図5に比較例として示すように、ワーク本体42の周縁にシート材44の接着を防ぐシャッター装置100’を、本実施形態では設ける必要がない。このため、シャッター装置100’を避けるようにしてシャッター装置100’の外側にクランプを配置して、広いシート材44を用意する必要がなく、シート材44の廃棄部分の量を低減させることができ、積層ワーク40の製造コストを抑えることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、第1接続配管51aと第3接続配管53aとをバイパスするバイパス路53bが設けられ、且つ第3接続配管53aとバイパス路53bの接続部分に流路切換弁54が設けられたものを説明したが、本発明の構成はこれに限らず、例えば、流路切換弁54はなくてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、孔成形手段として、吸引装置で吸引することでシート材44に孔を空ける積層ワーク成形装置1を説明したが、本発明の孔成形手段はこれに限らない。例えば、孔成形手段を、第1金型または第2金型にシート材を突き破る凸部を非接着領域に設けて、この凸部でシート材に孔を空けるように構成してもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、第1吸引装置51を備える積層ワーク成形装置1を説明したが、本発明は、これに限らず、例えば、第1吸引装置51を省略して、気体供給吸引装置53で、貫通孔32から吸引し、非接着領域Xに孔を開けるようにして積層ワーク成形装置の小型化及び低廉化を図ることもできる。
【0043】
また、本実施形態においては、転写工程において、シート材44に第2金型30の内面の模様を転写すると同時に、貫通孔32から第1吸引装置51で吸引してシート材44の非接着領域Xに孔を成形するものを説明した。しかしながら、本発明の孔の成形工程は、これに限らず、例えば、転写工程の前に、孔を形成してもよいし、転写工程の後に、接着工程で、非接着領域Xにおいてシート材44がワーク本体42に付着する前にシート材44に孔を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 積層ワーク成形装置
2 クランプ
20 第1金型
20a 金型側突部
22 吸引孔
30 第2金型
32 貫通孔
34 噴出孔
36 凹部
40 積層ワーク
42 ワーク本体
42a ワーク側突部
44 シート材
51 第1吸引装置
51a 第1接続配管
52 第2吸引装置
52a 第2接続配管
53 気体供給吸引装置
53a 第3接続配管
53b バイパス路
53c 逆止弁
54 流路切換弁
61 制御部
71 プレート
71a 吸着用孔
81 支持ピン
100’ シャッター装置
X 非接着領域
Y 接着領域