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特許7186905自動ねじ締め方法および自動ねじ締め装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】自動ねじ締め方法および自動ねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
B23P19/06 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021574628
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2021001223
(87)【国際公開番号】W WO2021153269
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020011141
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 隆史
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 博康
(72)【発明者】
【氏名】吉田 史宣
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-6452(JP,A)
【文献】特開2011-210884(JP,A)
【文献】特開2020-6448(JP,A)
【文献】特開平6-262453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじを保持するドライバービットに対してモータによって前記ドライバービットの軸に回転運動を発生させる自動ねじ締め装置における雌ねじ穴に対する前記雄ねじの自動ねじ締め方法であって、
前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじの1回の自動ねじ締めにおける、前記雄ねじのねじ締めの開始時点から、前記ねじ締めの完了時点までの、前記モータのねじ締めトルクの時間変化のデータと、モータ回転速度の時間変化のデータとを計測する計測ステップと、
計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータとから複数の特徴量を抽出する抽出ステップと、
複数の前記特徴量を用いて前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定ステップと、
を含み、
前記判定ステップは、
複数の前記特徴量から単一の数値指標を求めるステップを有し、
前記数値指標と予め決められたしきい値とを比較して、前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定し、
前記数値指標は、複数の前記特徴量に基づいたT法における総合評価尺度であること、
を特徴とする自動ねじ締め方法。
【請求項2】
複数の前記特徴量は、
前記ねじ締めの開始時点から前記ねじ締めの完了時点までのねじ締め作業において前記ねじ締めの開始時点から相対的に小さいねじ締めトルクが続くねじ込み工程における、前記ねじ締めトルクの時間変化のデータから抽出されるねじ締めトルクの最大値と、前記ねじ締めトルクが前記ねじ込み工程後から前記ねじ締めの完了時点までのねじ締め工程における、前記ねじ締めトルクの時間変化のデータから抽出されるねじ締め工程の時間と、前記ねじ締めトルクが前記ねじ締め工程における予め決められた規定締付トルクに達した後にさらに規定締付トルクを保持する予め決められた保持時間における、前記モータ回転速度の時間変化のデータから抽出される前記雄ねじの回転角度と、のうちの少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め方法。
【請求項3】
雄ねじを保持するドライバービットに対してモータによって前記ドライバービットの軸に回転運動を発生させる自動ねじ締め装置における雌ねじ穴に対する前記雄ねじの自動ねじ締め方法であって、
前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締めの開始時点から、前記ねじ締めの完了時点までの、前記モータのねじ締めトルクの時間変化のデータと、モータ回転速度の時間変化のデータとを計測する計測ステップと、
計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータとから複数の特徴量を抽出する抽出ステップと、
複数の前記特徴量を用いて前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定ステップと、
を含み、
前記抽出ステップにおいて抽出する特徴量の種類の選定方法に、
計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータと、計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータとに関連付けられた前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かの判定データとを含む学習データを用いて、前記適合および前記不適合と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定するルールを学習する機械学習方法を適用したこと、
を特徴とする自動ねじ締め方法。
【請求項4】
雄ねじを保持するドライバービットに対してモータによって前記ドライバービットの軸に回転運動を発生させて前記雄ねじを雌ねじ穴にねじ締めする自動ねじ締め装置であって、
前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじの1回の自動ねじ締めにおける、前記雄ねじのねじ締めの開始時点から、前記ねじ締めの完了時点までの、前記モータのねじ締めトルクの時間変化のデータと、モータ回転速度の時間変化のデータとを計測する計測部と、
計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータとから複数の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
複数の前記特徴量を用いて前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定部と、
を含み、
前記判定部は、
複数の前記特徴量から単一の数値指標を求める単一数値指標算出部を有し、
前記数値指標と予め決められたしきい値とを比較して、前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定し、
前記数値指標は、複数の前記特徴量に基づいたT法における総合評価尺度であること、
を特徴とする自動ねじ締め装置。
【請求項5】
複数の前記特徴量は、
前記ねじ締めの開始時点から前記ねじ締めの完了時点までのねじ締め作業において前記ねじ締めの開始時点から相対的に小さいねじ締めトルクが続くねじ込み工程における、前記ねじ締めトルクの時間変化のデータから抽出されるねじ締めトルクの最大値と、前記ねじ締めトルクが前記ねじ込み工程後から前記ねじ締めの完了時点までのねじ締め工程における、前記ねじ締めトルクの時間変化のデータから抽出されるねじ締め工程の時間と、前記ねじ締めトルクが前記ねじ締め工程における予め決められた規定締付トルクに達した後にさらに規定締付トルクを保持する予め決められた保持時間における、前記モータ回転速度の時間変化のデータから抽出される前記雄ねじの回転角度と、のうちの少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする請求項4に記載の自動ねじ締め装置。
【請求項6】
雄ねじを保持するドライバービットに対してモータによって前記ドライバービットの軸に回転運動を発生させて前記雄ねじを雌ねじ穴にねじ締めする自動ねじ締め装置であって、
前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締めの開始時点から、前記ねじ締めの完了時点までの、前記モータのねじ締めトルクの時間変化のデータと、モータ回転速度の時間変化のデータとを計測する計測部と、
計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータとから複数の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
複数の前記特徴量を用いて前記雌ねじ穴に対する前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定部と、
を含み、
前記抽出部において抽出する特徴量の種類の選定方法に、
計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータと、計測された前記ねじ締めトルクの時間変化のデータと前記モータ回転速度の時間変化のデータとに関連付けられた前記雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かの判定データとを含む学習データを用いて、前記適合および前記不適合と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定するルールを学習する特徴量選定部を有する機械学習装置を適用したこと、
を特徴とする自動ねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動でねじ締めを行う自動ねじ締め方法および自動ねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転運動を発生するモータと、ねじを保持および回転させるねじ締めツールであるドライバービットとに加えて、モータとドライバービットとを結合して回転運動を伝達するとともに予め設定されたねじ締めトルクに達すると両者の結合を開放するトルクリミッタを備えることで、ねじ締めトルクを一定に管理するタイプの自動ねじ締め装置が用いられている。しかしながら、上記のようにトルクリミッタを備えるタイプの自動ねじ締め装置で実際にねじ締め作業を行うと、ねじ山に傷などの異常がある場合、およびねじ穴に対してねじの位置または姿勢が正しくなかった場合には、ねじ締めの途中でねじ締めトルクがねじ締めを終了する設定値に達してしまい、ねじ締めが不完全な状態のままでねじ締め作業が終了することが発生する。
【0003】
これに対して、特許文献1には、トルクリミッタ動作検出センサ、モータ負荷電流を検出する手段およびモータ回転量を検出する手段を備える自動ねじ締め装置が開示されている。特許文献1に記載された自動ねじ締め装置は、ねじ締めの開始時点からねじ締めの完了を示すトルクアップ動作時点までにモータが回転した積算量と、トルクアップ動作時点でのねじ締めトルクに対応する負荷電流値とを、各々について予め設定した目標値と比較することによって、ねじ締め状態の良否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/192469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された自動ねじ締め装置では、ねじ山に傷などの異常があっても傷の程度が軽度である場合は、ねじ締めの途中の状態では、ねじ締めトルクがねじ締めを終了する設定値を超えずにそのままねじ締めが進行し、外観上は正常なねじ締め作業が行われた場合と同様にねじ締めが完了してしまうことがある。
【0006】
ところが、ねじ山に傷がある場合は、傷の程度が軽度であっても、雌ねじと雄ねじとの噛み合わせ部分でねじ山の一部がちぎれた金属粉である異物が発生し、異物が座面に噛み込んだままの状態でねじ締め動作が完了してしまう。また、ねじ山が正常である場合でも、ねじ穴に対してねじの位置または姿勢が正しくなかった場合には、雌ねじと雄ねじとの噛み合わせ部分でねじ山の一部がちぎれた金属粉である異物が発生し、異物が座面に噛み込んだままの状態でねじ締め動作が完了してしまう。
【0007】
上記のように異物が座面に噛み込んだままの状態でねじ締め動作が完了した状態では、ねじ締めトルクがねじ締めを終了する設定値に達していても座面とねじが密着していないため、座面に働く摩擦力が適切に確保できず、最悪の場合、製品出荷後にねじが緩むといった不都合が発生する可能性がある。
【0008】
上記特許文献1に記載された自動ねじ締め装置では、トルクリミッタ動作検出センサのトルクアップ動作時点のモータ負荷電流とモータ回転量の積算量とによって、ねじ締め状態の良否を判定する。このため、トルクアップ動作時点より前に発生するねじの異常、または雌ねじと雄ねじとの間における異物の噛み込みを判定することは不可能である。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ねじ締め状態が不良な不適合品を判定可能な自動ねじ締め方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる自動ねじ締め方法は、雄ねじを保持するドライバービットに対してモータによってドライバービットの軸に回転運動を発生させる自動ねじ締め装置における雌ねじ穴に対する雄ねじの自動ねじ締め方法であって、雌ねじ穴に対する雄ねじの1回の自動ねじ締めにおける、雄ねじのねじ締めの開始時点から、ねじ締めの完了時点までの、モータのねじ締めトルクの時間変化のデータと、モータ回転速度の時間変化のデータとを計測する計測ステップと、計測されたねじ締めトルクの時間変化のデータとモータ回転速度の時間変化のデータとから複数の特徴量を抽出する抽出ステップと、複数の特徴量を用いて雌ねじ穴に対する雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定ステップと、を含む。判定ステップは、複数の特徴量から単一の数値指標を求めるステップを有し、数値指標と予め決められたしきい値とを比較して、雌ねじ穴に対する雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する。数値指標は、複数の特徴量に基づいたT法における総合評価尺度である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ねじ締め状態が不良な不適合品を判定可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかる自動ねじ締め装置の構成を示す模式図
図2】実施の形態1にかかる自動ねじ締め装置におけるサーボモータおよび制御系機器の接続構成を示す模式図
図3】実施の形態1にかかる制御装置の制御部の機能構成を示す図
図4】実施の形態1においてサーボコントローラで計測されて制御装置に記憶されるねじ締めトルク波形と回転速度波形とを示す特性図
図5図1に示す自動ねじ締め装置を用いて適合品のボルトをねじ締めしたときに計測された実際のねじ締めトルク波形および回転速度波形を示す特性図
図6図1に示す自動ねじ締め装置を用いて不適合品のボルトをねじ締めしたときに計測した実際のねじ締めトルク波形および回転速度波形を示す特性図
図7図1に示す自動ねじ締め装置を用いて不適合品のボルトをねじ締めしたときに計測した実際のねじ締めトルク波形および回転速度波形を示す特性図
図8図1に示す自動ねじ締め装置を用いて不適合品のボルトをねじ締めしたときに計測した実際のねじ締めトルク波形および回転速度波形を示す特性図
図9図1に示す自動ねじ締め装置によるねじ締め方法を示すフローチャート
図10】実施の形態2の自動ねじ締め方法において第1の特徴量の値ごとの、適合品および不適合品の発生頻度の分布を示した特性図
図11】実施の形態2の自動ねじ締め方法において第2の特徴量の値ごとの、適合品および不適合品の発生頻度の分布を示した特性図
図12】実施の形態2における自動ねじ締め方法において第1の特徴量および第2の特徴量の値ごとの適合品および不適合品の発生頻度の分布と、しきい値境界線とを示した特性図
図13】実施の形態2の自動ねじ締め方法における数値指標の値ごとの、適合品および不適合品の発生頻度の分布を示した特性図
図14】実施の形態2における制御装置の制御部の機能構成を示す図
図15】実施の形態2にかかるねじ締め方法を示すフローチャート
図16図14に示した自動ねじ締め装置の制御装置と、追加した機械学習装置の機能構成を示す図
図17】実施の形態3における学習に使用されるニューラルネットワークの構成例を示す図
図18】実施の形態3にかかる特徴量選定部の、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定する選定ルールを学習する選定ルール学習部としての機能構成を示す図
図19】実施の形態1,2,3にかかる制御装置のハードウェア構成の例を示す第1の図
図20】実施の形態1,2,3にかかる制御装置のハードウェア構成の例を示す第2の図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態にかかる自動ねじ締め方法および自動ねじ締め装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本開示が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1にかかる自動ねじ締め装置1の構成を示す模式図である。図2は、本実施の形態1にかかる自動ねじ締め装置1におけるサーボモータ11および制御系機器の接続構成を示す模式図である。本実施の形態1にかかる自動ねじ締め装置1は、ワーク3に形成された雌ねじであるねじ穴4に対して雄ねじであるボルト2のねじ締めを自動で行う装置である。すなわち、自動ねじ締め装置1は、ワーク3の雌ねじ穴に対して雄ねじのねじ締めを自動で行う装置である。
【0015】
自動ねじ締め装置1は、上下方向に移動可能な一軸ステージ21にねじ締め機構10が搭載されている。ねじ締め機構10は、サーボモータ11、減速機13、カップリング14、軸受機構15およびドライバービット16を備える。
【0016】
サーボモータ11には、サーボモータ11の回転角を検知するためのエンコーダ111が内蔵されている。サーボモータ11の出力軸112は、減速機13に接続されている。減速機13には、カップリング14を介して軸受機構15およびドライバービット16がこの順で連結されている。上記の構成により、サーボモータ11の出力軸112の回転力は、最終的に、ドライバービット16の先端に吸着保持されるボルト2に伝達される。
【0017】
自動ねじ締め装置1は、制御系機器として、制御装置31、サーボコントローラ32およびステージコントローラ33を備える。制御装置31とサーボコントローラ32との間、および制御装置31とステージコントローラ33との間では、相互に情報を通信可能である。
【0018】
ステージコントローラ33は、一軸ステージ21に接続されている。ステージコントローラ33は、制御装置31から送信される指令に基づいて、一軸ステージ21の上下方向における移動と停止とを制御するとともに、一軸ステージ21の現在位置の情報を取得して、一軸ステージ21の現在位置の監視を行う。
【0019】
サーボコントローラ32は、サーボモータ11およびエンコーダ111に接続されている。サーボコントローラ32は、計測部であるモータ負荷電流値計測部321と、計測部であるモータ回転速度計測部322と、を有する。モータ負荷電流値計測部321は、時々刻々と変化するサーボモータ11の負荷電流値であるモータ負荷電流値を計測し、計測したモータ負荷電流値のデータとモータ負荷電流値を計測した時刻の情報とを制御装置31に送信する。モータ回転速度計測部322は、サーボモータ11の回転速度であるモータ回転速度を計測し、計測したモータ回転速度のデータとモータ回転速度を計測した時刻の情報とを制御装置31に送信する。すなわち、サーボコントローラ32は、制御装置31から送信される指令に基づいてサーボモータ11の回転および停止を制御するとともに、時々刻々と変化するモータ負荷電流値とモータ回転速度とを計測する。
【0020】
制御装置31は、自動ねじ締め装置1全体の制御を行う。制御装置31は、サーボコントローラ32において計測されたモータ負荷電流値のデータをサーボコントローラ32から受信し、ねじ締めトルク波形のデータとして記憶する。また、制御装置31は、サーボコントローラ32において計測されたモータ回転速度のデータをサーボコントローラ32から受信し、回転速度波形のデータとして記憶する。ねじ締めトルク波形のデータは、ねじ締めトルクの時間変化のデータである。回転速度波形のデータは、モータ回転速度の時間変化のデータである。
【0021】
制御装置31は、計測されたねじ締めトルク波形のデータと回転速度波形のデータとから複数の特徴量を抽出し、抽出した複数の特徴量を、抽出した複数の特徴量に対して予め決められたしきい値と比較して、ねじ締め作業が適合か不適合かを比較結果に基づいてリアルタイムに判別する。すなわち、制御装置31は、ワーク3のねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かを、比較結果に基づいてリアルタイムに自動で判定する。
【0022】
制御装置31は、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)が用いられる。
【0023】
図3は、本実施の形態1にかかる制御装置31の制御部310の機能構成を示す図である。制御装置31は、自動ねじ締め装置1全体の制御を行う制御部310を有する。また、制御部310は、ねじ締めトルク記憶部311と、回転速度記憶部312と、特徴量抽出部313と、時間計測部314と、適合品判定部315と、を備える。
【0024】
ねじ締めトルク記憶部311は、サーボコントローラ32のモータ負荷電流値計測部321から取得したモータ負荷電流値のデータを、モータ負荷電流値が計測された時刻の情報と関連付けて、モータ負荷電流値が計測された時刻の情報と一緒に記憶する。
【0025】
回転速度記憶部312は、サーボコントローラ32のモータ回転速度計測部322から取得したモータ回転速度のデータを、モータ回転速度が計測された時刻の情報と関連付けて、モータ回転速度が計測された時刻の情報と一緒に記憶する。
【0026】
特徴量抽出部313は、ねじ締めトルク記憶部311に記憶されているモータ負荷電流値のデータに基づいて特徴量を抽出し、回転速度記憶部312に記憶されているモータ回転速度のデータに基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出部である。特徴量抽出部313がどの特徴量を抽出するかという情報は、予め決められて特徴量抽出部313に記憶されている。すなわち、特徴量抽出部313が抽出する特徴量の種類は、予め決められて特徴量抽出部313に記憶されている。
【0027】
時間計測部314は、ねじ締め作業時間を計測する。
【0028】
適合品判定部315は、特徴量抽出部313で抽出された特徴量と、予め決められたしきい値との比較結果に基づいてワーク3のねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定部である。以下、ねじ締め状態が適合である製品を適合品と呼び、ねじ締め状態が不適合である製品を不適合品と呼ぶ。
【0029】
つぎに、ねじ締めトルク波形のデータと回転速度波形のデータとを用いてワーク3のねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かを制御装置31が判定する処理について説明する。図4は、本実施の形態1においてサーボコントローラ32で計測されて制御装置31に記憶されるねじ締めトルク波形と回転速度波形とを示す特性図である。図4において、横軸は、時間を示しており、縦軸は、ねじ締めトルクと回転速度とを示している。
【0030】
なお、ねじ締めトルクは、モータ負荷電流値と正比例関係にあり、モータ負荷電流値に対して、減速機13の減速比と、サーボコントローラ32に固有の定数と、を乗じて換算される。また、回転速度は、ドライバービット16の先端に吸着保持されるボルト2に伝達された回転速度、すなわちドライバービット16およびボルト2の回転速度であり、モータ回転速度を減速機13の減速比で除した値である。
【0031】
なお、以降の説明では、図4に示すように、自動ねじ締め装置1によるねじ締め作業において、ねじ締めの開始時点からねじ締めトルク波形が相対的に低い位置にある前半をねじ込み工程とし、ねじ込み工程後にねじ締めトルク波形が急激に立ちあがってからねじ締めの完了時点までをねじ締め工程とする。
【0032】
図4において、ねじ締めトルク波形は、ねじ締めの開始時点から比較的低いねじ締めトルクが続き、後半に急激に大きくなって規定締付トルクに達する。規定締付トルクは、自動ねじ締め装置1によるねじ締め作業において予め設定されている最終的な且つ最大の締付トルクであり、使用するボルト2のサイズと強度区分によって異なる。規定締付トルクは、例えば強度区分が4.6であるM3なべねじでは0.70N・mであり、強度区分が10.9であるM4六角穴付ボルトでは、6.30N・mである。
【0033】
その後、自動ねじ締め装置1は、さらに、予め決められた保持時間だけ、規定締付トルクを保持して、ねじ締め作業を完了する。予め決められた保持時間は、例えば100ms以上1000ms以下である。
【0034】
一方、回転速度波形は、図4に示すように、ねじ込み工程では予め設定された速度が維持されているが、ねじ締め工程になると回転速度が急激に下がり、保持時間の間はほぼゼロになる。これにより、ねじ込み工程からねじ締め工程に移行する時点でボルト2の頭部座面部がワーク3の表面に着座していると推定される。したがって、ねじ込み工程の時間は、ねじ締めの開始時点からボルト2の頭部座面部がワーク3の表面に着座するまでの時間と換言できる。そして、ねじ込み工程の時間は、ねじ締めに使用するボルト2の長さとピッチ、ねじ込み工程時の回転速度から計算で求めることができる。
【0035】
(適合品のボルト2のねじ締めの場合の例)
図5は、図1に示す自動ねじ締め装置1を用いて適合品のボルト2をねじ締めしたときに計測された実際のねじ締めトルク波形および回転速度波形を示す特性図である。ただし、具体的な数値は割愛している。図5から、適合品のボルト2をねじ締めした場合には、ねじ込み工程、ボルト2の頭部座面部のワーク3の表面への着座、ねじ締め工程がこの順で順調に進み、ねじ締めトルクが規定締付トルクに達していることがわかる。また、ねじ締めトルクが規定締付トルクに達した後、ねじ締めトルクを既定の保持時間だけ規定締付トルクで保持した後、サーボモータ11を停止して、ねじ締めが正常に完了したことが分かる。
【0036】
(不適合品のボルト2のねじ締めの場合の例)
図6から図8は、図1に示す自動ねじ締め装置1を用いて不適合品のボルト2をねじ締めしたときに計測した実際のねじ締めトルク波形および回転速度波形を示す特性図である。
【0037】
図6は、ボルト2の先端のねじ山に傷があり、ねじ込み作業が正常に完了できなかった場合の例を示している。この場合、ねじ締めの開始時点から時間が経過してもねじ締めトルクが規定締付トルクに達しないため、ねじ締めが完了しない。そこで、本実施の形態1では、ねじ締めタイムオーバを予め制御装置31に設定しておく。制御装置31は、ねじ締めの開始時点から予め決められた規定作業時間が経過してもねじ締めトルクが規定締付トルクに達しない場合には、サーボモータ11を停止してねじ込み作業を中止し、不適合品と判定する。
【0038】
図7は、ボルト2の中央付近のねじ山に傷があり、ねじ込み作業が正常に完了できなかった場合の例を示している。この場合は、ねじ締めトルクが規定締付トルクに達しているので、一般的な自動ねじ締め装置を用いてねじ込み作業を行う場合であれば適合品としてねじ締めが完了する。しかし、図7のねじ締めトルク波形を、図5に示した適合品のボルト2をねじ締めした場合のねじ締めトルク波形と比べると、ねじ込み工程の途中からねじ締めトルクが上昇していることが分かる。そこで、本実施の形態1では、ねじ込み工程におけるねじ締めトルクの上限値を予め制御装置31に設定しておく。制御装置31は、ねじ込み工程におけるねじ締めトルクが上限値を超えた場合には、ねじ締め動作中に異常が発生したと判定する。ねじ込み工程におけるねじ締めトルクの上限値は、特徴量と比較されるしきい値である。
【0039】
図8は、座面に異物が噛み込み、ねじ込み作業が正常に完了できなかった場合の例を示している。この場合も、ねじ締めトルクが規定締付トルクに達していて、ねじ締めトルク波形は、一見すると適合品と同じ波形に見える。しかし、ねじ込み工程を詳細に調べたところ、ねじ締めトルクが急激に立ちあがってからねじ締めの完了時点までのねじ締め工程の時間が適合品に比べて20ms以上200ms以下程度長いことが分かった。そこで、本実施の形態1では、ねじ締め工程の時間の上限値を予め制御装置31に設定しておく。制御装置31は、ねじ締め工程の時間が上限値を超えた場合には、ねじ締め動作中に異常が発生したと判定する。ねじ締め工程の時間の上限値は、特徴量と比較されるしきい値である。
【0040】
さらに、図8の回転速度波形に注目すると、保持時間の間も回転速度がゼロにならない、すなわちボルト2がゆっくりと回転していることが分かった。そこで、本実施の形態1では、制御装置31は、保持時間の間の回転速度を積算して保持時間のドライバービット16およびボルト2の回転角度を求め、保持時間のドライバービット16およびボルト2の回転角度の値が予め設定された上限値を超えた場合には、ねじ締め動作中に異常が発生したと判定する。保持時間のドライバービット16およびボルト2の回転角度の上限値は、特徴量と比較されるしきい値であり、予め決められて制御装置31に設定される。
【0041】
以上説明した工程をフローチャートにまとめると図9のようになる。図9は、図1に示す自動ねじ締め装置1によるねじ締め方法を示すフローチャートである。
【0042】
すなわち、ステップS10において、ドライバービット16の先端にボルト2を供給してドライバービット16とボルト2とを嵌合する。
【0043】
ステップS20において、制御装置31の制御部310から送信される指令に基づいて、ステージコントローラ33が一軸ステージ21を下方に移動させて、ねじ締め機構10をボルト2の先端がワーク3のねじ穴4に接触するまで下降させ、一定の推力でボルト2をねじ穴4に押し付ける。
【0044】
ステップS30において、制御装置31の制御部310から送信される指令に基づいて、サーボコントローラ32が、サーボモータ11を予め指定された速度で回転させる。そして、ねじ締めトルク波形と回転速度波形との計測および記憶を開始する。すなわち、サーボコントローラ32のモータ負荷電流値計測部321が、モータ負荷電流値の計測および記憶を開始する。モータ負荷電流値計測部321は、計測したモータ負荷電流値のデータとモータ負荷電流値を計測した時刻の情報とを制御装置31に送信する。また、サーボコントローラ32のモータ回転速度計測部322が、モータ回転速度の計測および記憶を開始する。モータ回転速度計測部322は、計測したモータ回転速度のデータとモータ回転速度を計測した時刻の情報とを制御装置31に送信する。すなわち、ステップS30は、雌ねじ穴に対する雄ねじのねじ締めの開始時点から、ねじ締めの完了時点までの、モータのねじ締めトルクの時間変化のデータと、モータ回転速度の時間変化のデータとを計測する計測ステップを構成する。
【0045】
ステップS40において、制御装置31は、ねじ締めトルクが規定締付トルクに達したか否かを判定する。具体的には、特徴量抽出部313が、ねじ締めトルク記憶部311に記憶されているモータ負荷電流値のデータに基づいて、特徴量であるねじ締めトルクを抽出する。ねじ締めトルクが規定締付トルクに達していないと判定された場合は、ステップS40においてNoとなり、ステップS50に進む。ねじ締めトルクが規定締付トルクに達したと判定された場合は、ステップS40においてYesとなり、ステップS80に進む。
【0046】
ステップS50において、制御装置31は、ねじ締めタイムオーバに達したか否かを判定する。具体的には、適合品判定部315が、時間計測部314で計測されたねじ締めの開始時点からの経過時間であるねじ締め作業時間と、ねじ締めの開始時点からの規定作業時間とに基づいて、ねじ締めタイムオーバに達したか否かを判定する。適合品判定部315は、ねじ締め作業時間が規定作業時間を超えている場合には、ねじ締めタイムオーバに達していると判定する。適合品判定部315は、ねじ締め作業時間が規定作業時間を超えていない場合には、ねじ締めタイムオーバに達していないと判定する。ねじ締めタイムオーバに達していないと判定された場合は、ステップS50においてNoとなり、ステップS40に戻る。ねじ締めタイムオーバに達したと判定された場合は、ステップS50においてYesとなり、ステップS60に進む。
【0047】
ステップS60において、制御装置31は、サーボモータ11を停止させる制御を行ってステップS70に進む。
【0048】
ステップS70において、制御装置31の適合品判定部315が不適合品と判定し、一連のねじ締め作業を終了する。
【0049】
ステップS80において、制御装置31は、サーボモータ11にさらに保持時間だけ規定締付トルクを掛けて保持させる制御を行った後、サーボモータ11を停止させる。
【0050】
ステップS90において、制御装置31は、ねじ締めトルク波形と回転速度波形とから、複数の特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部313が、ねじ締めトルク記憶部311に記憶されているモータ負荷電流値のデータに基づいて特徴量であるねじ締めトルクを抽出し、回転速度記憶部312に記憶されているモータ回転速度のデータに基づいて特徴量である回転速度を抽出する。すなわち、特徴量抽出部313は、複数種類の特徴量を抽出する。ステップS90は、計測されたねじ締めトルクの時間変化のデータとモータ回転速度の時間変化のデータとから複数の特徴量を抽出する抽出ステップを構成する。
【0051】
ステップS100において、制御装置31は、ねじ込み工程のねじ締めトルクが上限値を超えたか否かを判定する。具体的には、特徴量抽出部313が、ねじ込み工程のねじ締めトルクと、あらかじめ決められて特徴量抽出部313に記憶されているねじ込み工程のねじ締めトルクの上限値とを比較する。ねじ込み工程のねじ締めトルクが上限値を超えたと判定された場合は、ステップS100においてYesとなり、ステップS70に進む。ねじ込み工程のねじ締めトルクが上限値を超えていないと判定された場合は、ステップS100においてNoとなり、ステップS110に進む。
【0052】
ステップS110において、制御装置31は、ねじ締め工程の時間が上限値を超えたか否かを判定する。具体的には、特徴量抽出部313が、ねじ締め工程の時間と、あらかじめ決められて特徴量抽出部313に記憶されているねじ締め工程の時間の上限値とを比較する。ねじ締め工程の時間が上限値を超えたと判定された場合は、ステップS110においてYesとなり、ステップS70に進む。ねじ締め工程の時間が上限値を超えていないと判定された場合は、ステップS110においてNoとなり、ステップS120に進む。
【0053】
ステップS120において、制御装置31は、保持時間の回転角度が上限値を超えたか否かを判定する。具体的には、特徴量抽出部313が、保持時間の回転角度と、あらかじめ決められて特徴量抽出部313に記憶されている保持時間の回転角度の上限値とを比較する。保持時間の回転角度が上限値を超えたと判定された場合は、ステップS120においてYesとなり、ステップS70に進む。保持時間の回転角度が上限値を超えていないと判定された場合は、ステップS120においてNoとなり、ステップS130に進む。なお、制御装置31は、モータ回転速度計測部322から取得したモータ回転速度のデータから回転速度を算出する。
【0054】
ステップS130において、制御装置31の適合品判定部315が適合品と判定し、一連のねじ締め作業を終了する。ステップS40からステップS130は、複数の特徴量を用いて雌ねじ穴に対する雄ねじのねじ締め状態が適合か不適合かを判定する判定ステップを構成する。
【0055】
上記のように、特徴量として、ねじ締めの開始時点からねじ締めの完了時点までのねじ締め作業においてねじ締めの開始時点から相対的に小さいねじ締めトルクが続くねじ込み工程における、ねじ締めトルクの時間変化のデータから抽出されるねじ締めトルクの最大値と、ねじ締めトルクがねじ込み工程後からねじ締めの完了時点までのねじ締め工程における、ねじ締めトルクの時間変化のデータから抽出されるねじ締め工程の時間と、ねじ締めトルクがねじ締め工程における予め決められた規定締付トルクに達した後にさらに規定締付トルクを保持する予め決められた保持時間における、モータ回転速度の時間変化のデータから抽出され、保持時間の間のボルト2の回転速度を積算したボルト2の回転角度と、のうちの少なくとも1つを含めることができる。
【0056】
なお、ねじ締めトルクのデータおよびモータ回転速度のデータのサンプリング周期は、1ms以上10ms以下程度が適当である。サンプリング周期が1msより短くなると、処理を行うべきデータ数が膨大になり、制御部310におけるデータの計算速度が遅くなり、多量のメモリ容量を必要とするため好ましくない。
【0057】
一方、サンプリング周期が10msより長くなると、ねじ締めトルクのデータおよびモータ回転速度のデータの計測精度が低くなるため、ねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かの判別精度が低下するため好ましくない。
【0058】
上述したように、自動ねじ締め装置1を用いてステップS10からステップS130の手順に基づいた自動ねじ締め方法を実施することによって、一般的な自動ねじ締めでは判定が難しい、ねじ山に軽度の傷があるボルト2をねじ穴4にねじ込む段階で発生する異物が座面に噛み込んだ場合でも、異物の噛み込みの発生を判別して、不適合品の流出を防ぐことができる。したがって、本実施の形態1にかかる自動ねじ締め方法は、自動ねじ締めにおける品質管理方法とも言える。
【0059】
また、上述したように自動ねじ締め装置1を用いた自動ねじ締め方法を実施することによって、ねじ山が正常なボルト2のねじ穴4に対する位置または姿勢が正しくないことに起因してボルト2をねじ穴4にねじ込む段階で発生する異物が座面に噛み込んだ場合でも、異物の噛み込みの発生を判別して、不適合品の流出を防ぐことができる。
【0060】
すなわち、上述した自動ねじ締め装置1を用いた自動ねじ締め方法を実施することによって、専用の検査工程を追加することなく、リアルタイムで且つ非破壊的に、ねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かを精度良く判定でき、ねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態の品質管理が可能となる。
【0061】
したがって、本実施の形態1によれば、ねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かをリアルタイムで、容易に、且つ精度良く判定できる、という効果を奏する。
【0062】
実施の形態2.
図10は、本実施の形態2の自動ねじ締め方法において第1の特徴量tの値ごとの、適合品および不適合品の発生頻度の分布を示した特性図である。図10では、第1の特徴量tに基づいた適合品と不適合品との判定結果の度数を示している。図10においては、不適合品を流出させないように決めた、第1の特徴量tの値の範囲を区分するためのしきい値をtth1としている。図11は、本実施の形態2の自動ねじ締め方法において第2の特徴量tの値ごとの、適合品および不適合品の発生頻度の分布を示した特性図である。図11は、第2の特徴量tに基づいた適合品と不適合品との判定結果の度数を示している。図11においては、不適合品を流出させないように決めた、第2の特徴量tの値の範囲を区分するためのしきい値をtth2としている。第1の特徴量tおよび第2の特徴量tは、例えば上述した実施の形態1で挙げたねじ込み工程のねじ締めトルク、ねじ締め工程の時間、保持時間の回転角度などが例示される。
【0063】
上述した実施の形態1では、上記のステップS10からステップS130の手順に基づいた自動ねじ締め方法によって、抽出した複数の特徴量の各々に上限値を設定してねじ締め状態の適合品と不適合品とを判定した。
【0064】
そして、図10および図11に示されるように、第1の特徴量tおよび第2の特徴量tについて適切なしきい値を設定することにより、しきい値の前後において概ね、ねじ締め状態の適合品と不適合品とを判定することができる。
【0065】
しかしながら、図10および図11に示すように特徴量のある範囲においては、適合品と不適合品とが混在していることが多く、不適合品を流出させないようにしきい値を決めると、適合品のうちのいくつかは不適合品と見なされ、本来出荷できるはずの適合品が廃却されることになってしまい、不適合品の発生率と製造コストとが共に増大する。
【0066】
そこで、本実施の形態2では、複数の特徴量を組み合わせて単一の数値指標に統合し、単一の数値指標を用いることによって、適合品と不適合品とを判別する精度がより向上することについて説明する。図12は、本実施の形態2における自動ねじ締め方法において第1の特徴量tおよび第2の特徴量tの値ごとの適合品および不適合品の発生頻度の分布と、しきい値境界線とを示した特性図である。多数の適合品と不適合品とについて第1の特徴量tおよび第2の特徴量tとの関係を調べたところ、図12のような分布になった。
【0067】
図10および図11に示すように、できるだけ不適合品を流出させないようにしきい値を決めると第1の特徴量tのしきい値はtth1、第2の特徴量tのしきい値はtth2となり、単独の特徴量で適合品と不適合品とを判定した場合、適合品のいくつかは不適合品とみなされて廃却されてしまう。そこで、2つの特徴量のしきい値判定の論理積である「t>tth1、かつ、t<tth2」を用いて適合品と不適合品とを判定すると、廃却される適合品の数をある程度減らすことができるが、不適合品と見なされてしまう適合品をゼロにすることは難しい。
【0068】
これに対して、図12に示す直線900で適合品と不適合品とを判別すれば判別精度が向上することが分かる。直線900は、しきい値境界線である。このような複数の特徴量が互いに直交する超空間の中に、とある境界超平面を設定して多次元の特徴量を境界超平面からの距離に変換すれば、単一の数値指標で適合品および不適合品の判別を精度良く行うことができる。複数の特徴量が、第1の特徴量tと第2の特徴量tとである場合、2つの特徴量が互いに直交する超空間は、平面となり、しきい値境界超平面はこの平面において直線になる。このような複数の特徴量を単一の数値指標に総合する手法の1つに、タグチ法と呼ばれる多変量解析のT法における、タグチの距離と呼ばれる総合評価尺度が知られている。T法については、「田口玄一、品質工学便覧、日刊工業新聞社(2007)、p143-147」参照。
【0069】
ここで単一の数値指標Dをタグチの距離で計算する過程で、適合品および不適合品の状態を数値化した尺度が必要となる。そこで、たとえば適合品の場合は0、不適合品の場合は1のように、任意の異なる値を与えればよい。この値を、適合品の場合の真値、不適合品の場合の真値という。したがって、上記のように真値を設定した場合、数値指標Dは、適合品の場合は0に近い値に、不適合品の場合は1に近い値かそれより大きい値になる。
【0070】
図13は、本実施の形態2の自動ねじ締め方法における数値指標Dの値ごとの、適合品および不適合品の発生頻度の分布を示した特性図である。図12に示す特性図における適合品および不適合品のデータに対して、単一の数値指標Dをタグチの距離で計算したところ、図13のようになった。以下、単一の数値指標を数値指標Dと呼ぶ。数値指標Dを用いることで、数値指標Dのある範囲において適合品と不適合品とが混在するようなことがなくなる。このため、不適合品を流出させないように数値指標Dの範囲を区分するためのしきい値Dthを容易に設定することができるため、適合品と不適合品とを判別する精度が向上する。
【0071】
そして、数値指標Dを用いて適合品と不適合品を判別する場合には、ねじ締めトルク波形と回転速度波形とから複数の特徴量を抽出し、単一の数値指標Dであるタグチの距離を算出する。つぎに、算出したタグチの距離を、予め設定されたしきい値Dthと比較して適合品および不適合品の判定を行う。
【0072】
図14は、本実施の形態2における制御装置31の制御部310aの機能構成を示す図である。制御部310aは、制御部310の構成に加えて単一数値指標算出部316を備える。
【0073】
単一数値指標算出部316は、複数の特徴量から単一の数値指標D、すなわちタグチの距離を算出する。
【0074】
以上説明した工程をフローチャートにまとめると図15のようになる。図15は、本実施の形態2にかかるねじ締め方法を示すフローチャートである。実施の形態2にかかるねじ締め方法は、図1に示す自動ねじ締め装置1において制御装置31が以下の処理を行うことによって実施可能である。以下、図15に示すフローチャートのうち、図9に示すフローチャートと異なる部分について説明する。
【0075】
本実施の形態2にかかる自動ねじ締め方法では、ステップS80の後にステップS210に進む。
【0076】
ステップS210において、制御装置31は、ねじ締めトルク波形と回転速度波形とから複数の特徴量を抽出し、さらに複数の特徴量から単一の数値指標D、すなわちタグチの距離を算出する。具体的には、特徴量抽出部313が、ねじ締めトルク記憶部311に記憶されているモータ負荷電流値のデータに基づいて特徴量を抽出し、回転速度記憶部312に記憶されているモータ回転速度のデータに基づいて特徴量を抽出する。そして、単一数値指標算出部316が、複数の特徴量から単一の数値指標D、すなわちタグチの距離を算出する。
【0077】
ステップS220において、制御装置31は、数値指標Dが予め設定されたしきい値Dthより大きいか否かを判定する。具体的には、適合品判定部315が、数値指標Dが予め設定されたしきい値であるしきい値Dthより大きいか否かを判定する。数値指標Dがしきい値Dthより大きいと判定された場合、ステップS220においてYesとなり、ステップS70に進む。数値指標Dがしきい値Dth以下であると判定された場合は、ステップS220においてNoとなり、ステップS130に進む。しきい値Dthは、ねじ穴4に対するボルト2のねじ締め状態が適合か不適合かを判定するために数値指標Dと比較されるしきい値である。
【0078】
ここで抽出する特徴量には、上述した実施の形態1で挙げたねじ込み工程のねじ締めトルク、ねじ締め工程の時間、保持時間の回転角度などが使えることは言うまでもなく、さらにそれ以外のまったく別の特徴量でも問題ない。さらに、上述した実施の形態1では複数の特徴量の各々に上限値を設定する必要があった。一方、単一の数値指標Dを用いることで設定するしきい値が1つとなるため、しきい値Dthを容易に設定できる。
【0079】
上述したように、実施の形態2にかかるねじ締め方法では、上述した実施の形態1にかかるねじ締め方法と同様の効果が得られる。
【0080】
また、実施の形態2にかかるねじ締め方法では、単一の数値指標Dを用いることで適合品と不適合品との判定をより精度良く行うことができる。すなわち、各々の特徴量に対して個別にしきい値を設定する方法に比べて、適合品および不適合品の判別精度が向上する。これにより、適合品のうち、不適合品と見なされ本来出荷できるはずの適合品が廃却されることを防止することができ、不適合品の発生率と製造コストとの増大を防止することが可能である。
【0081】
実施の形態3.
上述した実施の形態2にかかるねじ締め状態の品質管理方法では、単一の数値指標Dを用いることで適合品と不適合品とを判別する精度が向上した。ただし、ねじ締めトルク波形と回転速度波形とから特徴量として何を抽出するかを最初に決める必要があり、適合品および不適合品との相関が高い特徴量の選定には多大な労力が必要である。そこで、本実施の形態3では、特徴量の選定に機械学習を適用する方法を以下に説明する。
【0082】
本実施の形態3は、図1に示した自動ねじ締め装置1に機械学習装置を追加した実施の形態である。図16は、図14に示した自動ねじ締め装置1の制御装置31と、追加した機械学習装置41の機能構成を示す図である。
【0083】
(学習フェーズ)
はじめに、自動ねじ締め装置1を用いて学習用データを作成する。具体的には、不適合品の割合が5%以上10%以下となるように、通常のボルト2に加えて、予めねじ山に傷のあるボルト2およびねじ山の表面に異物があるボルト2を準備し、自動ねじ締め装置1を用いてねじ締め動作を繰り返し実施する。このとき、制御装置31は、サーボコントローラ32において計測されたモータ負荷電流値を、ねじ締めトルク波形のデータとしてねじ締めトルク記憶部311に記憶する。また、制御装置31は、サーボコントローラ32において計測されたモータ回転速度を、回転速度波形のデータとして回転速度記憶部312に記憶する。
【0084】
また、制御装置31は、ねじ締め動作完了後にねじ締め状態の適合品および不適合品の判定を手動で行い、ねじ締めトルク波形のデータおよび回転速度波形のデータに関連付けて一緒に保存する。
【0085】
つぎに、制御装置31は、機械学習装置41の特徴量選定部411が、ねじ締めトルク記憶部311に保存されたねじ締めトルク波形のデータと、回転速度記憶部312に保存された回転速度波形のデータと、ねじ締めトルク波形のデータおよび回転速度波形のデータに関連付けられた適合品および不適合品の判定データと、を入力として、ねじ締め状態の適合品および不適合品と相関が高く、且つ、ばらつきの小さい特徴量を自動的に選定し、特徴量抽出部313に出力する。特徴量は、複数個、たとえば3個以上10個以下程度が好ましい。
【0086】
さらに、しきい値決定部412が、特徴量選定部411において選定された複数の特徴量について、各々の数値指標Dをタグチの距離で計算し、しきい値Dthを決定して適合品判定部315に出力する。
【0087】
機械学習装置41の特徴量選定部411が用いる学習アルゴリズムは、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、ニューラルネットワークを適用した場合について説明する。
【0088】
特徴量選定部411は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定するルールを学習する。ここで、教師あり学習とは、入力と結果(ラベル)のデータの組を機械学習装置41に与えることで、それらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推定する手法をいう。
【0089】
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層と、複数のニューロンからなる中間層である隠れ層と、複数のニューロンからなる出力層とで構成される。中間層は、1層、または2層以上でもよい。
【0090】
図17は、本実施の形態3における学習に使用されるニューラルネットワークの構成例を示す図である。図17に示すニューラルネットワークは、3層のニューラルネットワークである。入力層は、ニューロンX1,X2,X3を含む。中間層は、ニューロンY1,Y2を含む。出力層は、ニューロンZ1,Z2,Z3を含む。なお、各層のニューロンの数は任意とする。入力層へ入力された複数の値は、重みW1であるw11,w12,w13,w14,w15,w16が乗算されて、中間層へ入力される。中間層へ入力された複数の値は、重みW2であるw21,w22,w23,w24,w25,w26が乗算されて、出力層から出力される。出力層から出力される出力結果は、重みW1,W2の値に従って変化する。
【0091】
本実施の形態3において、ニューラルネットワークは、制御装置31によって取得されるねじ締めトルク波形のデータと回転速度波形のデータ、および、これらの適合品および不適合品の判定データの組み合わせに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定するルールを学習する。
【0092】
すなわち、ニューラルネットワークは、入力層にねじ締めトルク波形のデータと回転速度波形のデータとから抽出される特徴量を入力として出力層から出力された結果が、適合品および不適合品に近づくように重みW1と重みW2を調整することで学習する。
【0093】
特徴量選定部411は、以上のような学習を実行することで特徴量を自動で選定し、特徴量抽出部313に出力する。特徴量は、複数個、たとえば3個以上10個以下程度が好ましい。
【0094】
さらに、しきい値決定部412は、特徴量選定部411で選定された特徴量の組み合わせから数値指標Dをタグチの距離で計算し、しきい値Dthを設定して適合品判定部315に出力する。
【0095】
特徴量抽出部313は、特徴量選定部411から出力された特徴量の組み合わせを記憶する。さらに、適合品判定部315は、しきい値決定部412から出力されたしきい値Dthを記憶する。
【0096】
図18は、本実施の形態3にかかる特徴量選定部411の、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定する選定ルールを学習する選定ルール学習部61としての機能構成を示す図である。機械学習装置である選定ルール学習部61は、状態観測部62とデータ取得部63と学習部64とを有する。
【0097】
状態観測部62には、ねじ締めトルク波形のデータと、回転速度波形のデータとが入力される。状態観測部62は、ねじ締めトルク波形のデータおよび回転速度波形のデータを、状態変数として観測する。状態観測部62は、状態変数を学習部64へ出力する。
【0098】
データ取得部63は、教師データである、ねじ締めトルク波形のデータおよび回転速度波形のデータに関連付けられた適合品および不適合品の判定データを取得する。データ取得部63は、教師データを学習部64へ出力する。
【0099】
学習部64は、状態変数と教師データとの組み合わせに基づいて作成されるデータセットに従って、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定するルールを学習する。
【0100】
学習部64は、例えば、上述したようにニューラルネットワークモデルに従い、いわゆる教師あり学習によって、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類を選定するルールを学習する。
【0101】
(活用フェーズ)
上記のようにして選定された複数の特徴量を使って実際のねじ締め作業を行う場合も、実施の形態2で示した図15のフローチャートと同じ手順でねじ締め作業を行うことができる。
【0102】
なお、ステップS210においては、特徴量抽出部313には特徴量選定部411が選定した複数の特徴量の種類が記憶されているので、特徴量抽出部313は、ねじ締めトルク波形のデータと回転速度波形のデータとから、特徴量選定部411が選定した複数の特徴量の種類に対応する特徴量を抽出する。また、単一数値指標算出部316が、抽出された複数の特徴量から単一の数値指標D、すなわちタグチの距離を算出する。
【0103】
また、ステップS220においては、適合品判定部315は、しきい値決定部412が選定したしきい値Dthと数値指標Dとを比較する。
【0104】
なお、特徴量の選定およびしきい値Dthの決定が終わった時点で機械学習装置41は自動ねじ締め装置1から切り離されても問題はない。
【0105】
さらに、機械学習装置41は、例えば、ネットワークを介して自動ねじ締め装置1の制御装置31に接続され、この自動ねじ締め装置1とは別個の装置であってもよい。また、機械学習装置41は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0106】
なお、本実施の形態3では、機械学習装置41の特徴量選定部411で選定した複数の種類の特徴量を用いて適合品および不適合品の判定をするものとして説明したが、他の自動ねじ締め装置1等の外部から特徴量の種類の情報を取得し、これらの特徴量の種類についての特徴量に基づいて適合品および不適合品の判定をするようにしてもよい。
【0107】
上述したように、実施の形態3にかかるねじ締め方法では、上述した実施の形態2にかかるねじ締め方法と同様の効果が得られる。
【0108】
また、実施の形態3にかかるねじ締め方法では、機械学習装置41を用いることにより、ねじ締めトルク波形のデータと回転速度波形のデータとからの、適合品および不適合品と相対的に相関が高く、且つ、相対的にばらつきが小さい特徴量の種類の選定に掛かる多大な労力が省略できる。また、上記のようにして機械学習装置41で選定された特徴量の種類を用いて実際のねじ締め作業を行う場合も、実施の形態2の場合と処理手順の変更点は無く、単一の数値指標を使って適合品および不適合品の判定を行うため、適合品と不適合品とを判別する精度が向上する。
【0109】
図19は、実施の形態1,2,3にかかる制御装置31のハードウェア構成の例を示す第1の図である。図19には、制御装置31の機能が専用のハードウェアを使用して実現される場合におけるハードウェア構成を示している。制御装置31は、各種処理を実行する処理回路51と、各種情報を記憶する外部記憶装置52と、制御装置31の外部の機器との接続インタフェースである入出力インタフェース53とを備える。入出力インタフェース53は、キーボードあるいはポインティングデバイスといった情報入力のための入力デバイス、または、表示デバイスあるいは音声デバイスといった情報出力のための出力デバイスを有しても良い。図19に示す制御装置31の各部は、バスを介して相互に接続されている。
【0110】
専用のハードウェアである処理回路51は、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらの組み合わせである。図3に示す制御部310の特徴量抽出部313と時間計測部314と適合品判定部315との各機能は、処理回路51を用いて実現される。外部記憶装置52は、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)である。図3に示す制御部310のねじ締めトルク記憶部311と回転速度記憶部312との機能は、外部記憶装置52を用いて実現される。
【0111】
図20は、実施の形態1,2,3にかかる制御装置31のハードウェア構成の例を示す第2の図である。図20には、制御装置31の機能がプログラムを実行するハードウェアを用いて実現される場合におけるハードウェア構成を示している。プロセッサ54およびメモリ55は、外部記憶装置52および入出力インタフェース53と相互に接続されている。
【0112】
プロセッサ54は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。図3に示す制御部310の特徴量抽出部313と時間計測部314と適合品判定部315との各機能は、プロセッサ54と、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、内蔵メモリであるメモリ55に格納される。メモリ55は、不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであって、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)またはEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。
【0113】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 自動ねじ締め装置、2 ボルト、3 ワーク、4 ねじ穴、10 ねじ締め機構、11 サーボモータ、13 減速機、14 カップリング、15 軸受機構、16 ドライバービット、21 一軸ステージ、31 制御装置、32 サーボコントローラ、33 ステージコントローラ、41 機械学習装置、61 選定ルール学習部、62 状態観測部、63 データ取得部、64 学習部、111 エンコーダ、112 出力軸、310,310a 制御部、311 ねじ締めトルク記憶部、312 回転速度記憶部、313 特徴量抽出部、314 時間計測部、315 適合品判定部、316 単一数値指標算出部、321 モータ負荷電流値計測部、322 モータ回転速度計測部、411 特徴量選定部、412 しきい値決定部、900 直線、D 数値指標、t第1の特徴量、t第2の特徴量。
図1
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