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特許7186934半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/311 20060101AFI20221202BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20221202BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G01R31/311
G01R31/28 L
H01L21/66 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022549628
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011686
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021118430
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】活洲 政敬
(72)【発明者】
【氏名】中村 共則
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-168798(JP,A)
【文献】特開2014-192444(JP,A)
【文献】米国特許第5750981(US,A)
【文献】特開2019-21778(JP,A)
【文献】特開平7-140209(JP,A)
【文献】特開2014-143348(JP,A)
【文献】特開2004-146428(JP,A)
【文献】特開2022-31283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/28-31/3193、
31/26-31/27、
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って第1照射光を照射する第1解析部と、
前記第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って第2照射光を照射する第2解析部と、
前記第1照射光及び前記第2照射光が照射されている前記半導体デバイスが出力する電気信号を受ける電気信号取得部と、
前記第1解析部及び前記第2解析部の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
前記第2照射光によって前記第2主面に形成される第2照射領域の大きさは、前記第1照射光によって前記第1主面に形成される第1照射領域の大きさより小さく、
前記制御部は、前記第2照射領域の全体が前記第1照射領域に重複した状態を維持しながら、前記第1照射光及び前記第2照射光を照射させる制御信号を前記第2解析部に出力する半 導体故障解析装置。
【請求項2】
前記第1解析部は、前記第1経路に沿って前記第1照射領域が移動するように、前記第1照射光を反射する第1光走査部を有し、
前記第2解析部は、前記第2経路に沿って前記第2照射領域が移動するように、前記第2照射光を反射する第2光走査部を有し、
前記制御部は、前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとに基づく比率を利用して、前記第1光走査部及び前記第2光走査部を制御する、請求項1に記載の半導体故障解析装置。
【請求項3】
前記第1解析部は、
前記第1照射光を発生させる第1光源と、
前記第1照射光を前記第1光源から前記第1主面に導く第1光学部材と、を有し、
前記第2解析部は、
前記第2照射光を発生させる第2光源と、
前記第2照射光を前記第2光源から前記第2主面に導く第2光学部材と、を有し、
前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとの相違は、前記第1光学部材の光学特性と前記第2光学部材の光学特性との相違によって生じる、請求項1又は2に記載の半導体故障解析装置。
【請求項4】
前記第1解析部は、前記第1経路に沿って前記第1照射領域が移動するように、前記第1照射光を反射する第1光走査部を有し、
前記第2解析部は、前記第2経路に沿って前記第2照射領域が移動するように、前記第2照射光を反射する第2光走査部を有し、
前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとの相違は、前記第1経路と前記第2経路の相違によって生じる、請求項1又は2に記載の半導体故障解析装置。
【請求項5】
半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って第1照射光を照射する第1解析部と、
前記第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って第2照射光を照射する第2解析部と、
前記第1照射光及び前記第2照射光が照射されている前記半導体デバイスが出力する電気信号を受ける電気信号取得部と、
前記第1解析部及び前記第2解析部の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
前記第1照射光によって前記第1主面に形成される第1照射領域の大きさは、前記第2照射光によって前記第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なり、
前記制御部は、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の一方の全体が、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、前記第1照射光及び前記第2照射光を照射させる制御信号を出力し、
前記第1解析部は、前記第1照射領域の大きさが所定の大きさとなるように前記第1照射光を前記第1主面に集光する第1レンズを有し、
前記第2解析部は、前記第2照射領域の大きさが、前記第1照射領域の大きさとは異なる大きさとなるように前記第2照射光を前記第2主面に集光する第2レンズを有し、
前記第1レンズの倍率は、前記第2レンズの倍率とは異なる半導体故障解析装置。
【請求項6】
半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って第1照射光を照射する第1解析部と、
前記第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って第2照射光を照射する第2解析部と、
前記第1照射光及び前記第2照射光が照射されている前記半導体デバイスが出力する電気信号を受ける電気信号取得部と、
前記第1解析部及び前記第2解析部の少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
前記第1照射光によって前記第1主面に形成される第1照射領域の大きさは、前記第2照射光によって前記第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なり、
前記制御部は、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の一方の全体が、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、前記第1照射光及び前記第2照射光を照射させる制御信号を出力し、
前記第1解析部は、
前記第1照射光を発生させる第1光源と、
前記第1照射光を前記第1光源から前記第1主面に導く第1光学部材と、を有し、
前記第2解析部は、
前記第2照射光を発生させる第2光源と、
前記第2照射光を前記第2光源から前記第2主面に導く第2光学部材と、を有し、
前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとの相違は、前記第1光学部材の配置と前記第2光学部材の配置との相違によって生じる半導体故障解析装置。
【請求項7】
前記第1解析部は、前記第1経路に沿って前記第1照射領域が移動するように、前記第1照射光を反射する第1光走査部を有し、
前記第2解析部は、前記第2経路に沿って前記第2照射領域が移動するように、前記第2照射光を反射する第2光走査部を有し、
前記制御部は、前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとに基づく比率を利用して、前記第1光走査部及び前記第2光走査部を制御する、請求項5又は6に記載の半導体故障解析装置。
【請求項8】
半導体デバイスを解析する半導体故障解析方法であって、
前記半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って照射される第1照射光を発生する第1解析部のための第1照射条件と、前記第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って照射される第2照射光を発生する第2解析部のための第2照射条件と、を準備する設定工程と、
前記設定工程で設定した前記第1照射条件及び前記第2照射条件に基づく制御信号を前記第2解析部に対して出力することによって、前記半導体デバイスに対して前記第1照射光及び前記第2照射光を照射しながら、前記半導体デバイスが出力する電気信号を取得する解析工程と、を有し、
前記設定工程では、前記第照射光によって前記第主面に形成される第照射領域の大きさが、前記第照射光によって前記第主面に形成される第照射領域の大きさより小さくなるように、前記第1照射条件及び前記第2照射条件を設定し、
前記解析工程では、前記第2照射領域の全体が前記第1照射領域に重複した状態を維持しながら、前記第1照射光及び前記第2照射光を照射する、半導体故障解析方法。
【請求項9】
前記設定工程では、前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとに基づく比率を利用して、前記第1解析部及び前記第2解析部を制御し、
前記解析工程では、前記第1経路に沿って前記第1照射領域が移動するように、前記第1解析部が有する第1光走査部によって前記第1照射光を反射させながら前記第1照射光を照射し、前記第2経路に沿って前記第2照射領域が移動するように、前記第2解析部が有する第2光走査部によって前記第2照射光を反射させながら前記第2照射光を照射する、請求項8に記載の半導体故障解析方法。
【請求項10】
前記第1解析部は、
前記第1照射光を発生させる第1光源と、
前記第1照射光を前記第1光源から前記第1主面に導く第1光学部材と、を有し、
前記第2解析部は、
前記第2照射光を発生させる第2光源と、
前記第2照射光を前記第2光源から前記第2主面に導く第2光学部材と、を有し、
前記解析工程では、前記第1光学部材の光学特性と前記第2光学部材の光学特性との相違によって、前記第2照射領域の大きさが前記第1照射領域の大きさより小さい状態が生じる、請求項8又は9に記載の半導体故障解析方法。
【請求項11】
前記解析工程では、前記第1経路と前記第2経路の相違によって、前記第2照射領域の大きさが前記第1照射領域の大きさより小さい状態が生じる、請求項8又は9に記載の半導体故障解析方法。
【請求項12】
半導体デバイスを解析する半導体故障解析方法であって、
前記半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って照射される第1照射光を発生する第1解析部のための第1照射条件と、前記第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って照射される第2照射光を発生する第2解析部のための第2照射条件と、を準備する設定工程と、
前記設定工程で設定した前記第1照射条件及び前記第2照射条件に従って、前記半導体デバイスに対して前記第1照射光及び前記第2照射光を照射しながら、前記半導体デバイスが出力する電気信号を取得する解析工程と、を有し、
前記第1解析部は、前記第1照射光を前記第1主面に集光する第1レンズを有し、
前記第2解析部は、前記第2照射光を前記第2主面に集光する第2レンズを有し、
前記第1レンズの倍率が前記第2レンズの倍率とは異なることによって、前記第1照射光によって前記第1主面に形成される第1照射領域の大きさは、前記第2照射光によって前記第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なり、
前記解析工程では、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の一方の全体が、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、前記第1照射光及び前記第2照射光が照射される、半導体故障解析方法。
【請求項13】
半導体デバイスを解析する半導体故障解析方法であって、
前記半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って照射される第1照射光を発生する第1解析部のための第1照射条件と、前記第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って照射される第2照射光を発生する第2解析部のための第2照射条件と、を準備する設定工程と、
前記設定工程で設定した前記第1照射条件及び前記第2照射条件に従って、前記半導体デバイスに対して前記第1照射光及び前記第2照射光を照射しながら、前記半導体デバイスが出力する電気信号を取得する解析工程と、を有し、
前記第1解析部は、
前記第1照射光を発生させる第1光源と、
前記第1照射光を前記第1光源から前記第1主面に導く第1光学部材と、を有し、
前記第2解析部は、
前記第2照射光を発生させる第2光源と、
前記第2照射光を前記第2光源から前記第2主面に導く第2光学部材と、を有し、
前記第1光学部材の配置と前記第2光学部材の配置との相違によって、前記第1照射光によって前記第1主面に形成される第1照射領域の大きさは、前記第2照射光によって前記第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なり、
前記解析工程では、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の一方の全体が、前記第1照射領域及び前記第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、前記第1照射光及び前記第2照射光が照射される、半導体故障解析方法。
【請求項14】
前記設定工程では、前記第1照射領域の大きさと前記第2照射領域の大きさとに基づく比率を利用して、前記第2解析部を制御し、
前記解析工程では、前記第1経路に沿って前記第1照射領域が移動するように、前記第1解析部が有する第1光走査部によって前記第1照射光を反射させながら前記第1照射光を照射し、前記第2経路に沿って前記第2照射領域が移動するように、前記第2解析部が有する第2光走査部によって前記第2照射光を反射させながら前記第2照射光を照射する、請求項12又は13に記載の半導体故障解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進んでいる。半導体デバイスの微細化には、半導体デバイスを製造するための露光技術の向上及びパターニング技術の向上が望まれる。これらの露光技術及びパターニング技術を用いて製造された半導体デバイスが正常に動作するか否かを明らかにする技術も重要である。半導体デバイスが正常に動作しない場合には、不具合を生じている原因を明らかにする技術も重要である。
【0003】
特許文献1は、半導体集積回路の内部に形成された配線を検査する装置を開示する。特許文献1の検査装置は、電流の供給を受けている半導体集積回路チップの表面に、レーザビームを照射する。レーザビームの照射に起因して、半導体の内部に電子-正孔対が発生するので、半導体集積回路の配線には電流が流れる。特許文献1の装置は、この電流を用いて配線の検査を行う。
【0004】
特許文献2は、いわゆるレーザプロービング技術を用いて集積回路マイクロチップをテストする技術を開示する。テスト電気信号によって駆動されたテストデバイスにレーザビームを照射する。レーザビームは、テストデバイスによって反射する。反射光は、テスト電気信号に対するテストデバイスの応答状態を示す信号成分を含む。特許文献2の技術では、反射ビームに対応する波形を電気信号に変換する。そして、電気信号を分析する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-167924号公報
【文献】特開2007-64975公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体故障解析装置の技術分野では、半導体デバイスの故障箇所を良好に検出する技術が望まれている。本発明は、半導体デバイスの故障箇所を良好に検出する半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である半導体故障解析装置は、半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って第1照射光を照射する第1解析部と、第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って第2照射光を照射する第2解析部と、第1照射光及び第2照射光が照射されている半導体デバイスが出力する電気信号を受ける電気信号取得部と、第1解析部及び第2解析部の少なくとも一方を制御する制御部と、を備える。第1照射光によって第1主面に形成される第1照射領域の大きさは、第2照射光によって第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なる。制御部は、第1照射領域及び第2照射領域の一方の全体が、第1照射領域及び第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、第1照射光及び第2照射光を照射させる制御信号を出力する。
【0008】
本発明の別の形態である半導体デバイスを解析する半導体故障解析方法は、半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って照射される第1照射光のための第1照射条件と、第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って照射される第2照射光のための第2照射条件と、を準備する設定工程と、設定工程で設定した第1照射条件及び第2照射条件に従って、半導体デバイスに対して第1照射光及び第2照射光を照射しながら、半導体デバイスが出力する電気信号を取得する解析工程と、を有する。設定工程では、第1照射光によって第1主面に形成される第1照射領域の大きさが、第2照射光によって第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なるように、第1照射条件及び第2照射条件を設定する。解析工程では、第1照射領域及び第2照射領域の一方の全体が、第1照射領域及び第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、第1照射光及び第2照射光を照射する。
【0009】
半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法は、半導体デバイスが備える第1主面及び第2主面のそれぞれに、第1照射光及び第2照射光を照射する。第1照射領域の大きさは、第2照射領域の大きさと異なっている。その結果、第1照射領域と第2照射領域とのうち、小さい方の照射領域の全体を、大きい方の照射領域に重複させることが可能になる。つまり、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとを互いに異ならせながら、半導体デバイスの検査面を走査することが可能である。従って、半導体デバイスに対して、第1主面と第2主面の両側から確実に光刺激を与えることができる。その結果、光刺激の影響を受けた電気信号が半導体デバイスから出力される。従って、故障箇所を確実に顕在化できる。つまり、半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法は、半導体デバイスの故障箇所を良好に検出することができる。
【0010】
上記の半導体故障解析装置において、第2照射領域の大きさは、第1照射領域の大きさより小さくてもよい。制御部は、制御信号を第2解析部に対して出力してもよい。この構成によれば、第2照射領域の全体を第1照射領域に対して確実に重複させることができる。
【0011】
上記の半導体故障解析装置の第1解析部は、第1経路に沿って第1照射領域が移動するように、第1照射光を反射する第1光走査部を有してもよい。第2解析部は、第2経路に沿って第2照射領域が移動するように、第2照射光を反射する第2光走査部を有してもよい。制御部は、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとに基づく比率を利用して、第1光走査部及び第2光走査部を制御してもよい。これらの構成によっても、第2照射領域の全体を第1照射領域に対して確実に重複させることができる。
【0012】
上記の半導体故障解析装置の第1解析部は、第1照射光を発生させる第1光源と、第1照射光を第1光源から第1主面に導く第1光学部材と、を有してもよい。第2解析部は、第2照射光を発生させる第2光源と、第2照射光を第2光源から第2主面に導く第2光学部材と、を有してもよい。第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違は、第1光学部材の光学特性と第2光学部材の光学特性との相違によって生じてもよい。これらの構成によれば、光学部材の選択によって、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違を生じさせることができる。
【0013】
上記の半導体故障解析装置の第1解析部は、第1照射領域の大きさが所定の大きさとなるように第1照射光を第1主面に集光する第1レンズを有してもよい。第2解析部は、第2照射領域の大きさが、第1照射領域の大きさとは異なる大きさとなるように第2照射光を第2主面に集光する第2レンズを有してもよい。第1レンズの倍率は、第2レンズの倍率とは異なってもよい。これらの構成によれば、対物レンズの倍率の選択によって、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違を生じさせることができる。
【0014】
上記の半導体故障解析装置の第1解析部は、第1照射光を発生させる第1光源と、第1照射光を第1光源から第1主面に導く第1光学部材と、を有してもよい。第2解析部は、第2照射光を発生させる第2光源と、第2照射光を第2光源から第2主面に導く第2光学部材と、を有してもよい。第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違は、第1光学部材の配置と第2光学部材の配置との相違によって生じてもよい。これらの構成によれば、光学部材の配置によって、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違を生じさせることができる。
【0015】
上記の半導体故障解析装置の第1解析部は、第1経路に沿って第1照射領域が移動するように、第1照射光を反射する第1光走査部を有してもよい。第2解析部は、第2経路に沿って第2照射領域が移動するように、第2照射光を反射する第2光走査部を有してもよい。第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違は、第1経路と第2経路の相違によって生じてもよい。これらの構成によれば、第1経路と第2経路の相違によって、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとの相違を生じさせることができる。
【0016】
本発明のさらに別の形態である半導体故障解析装置は、半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って第1照射光を照射する第1解析部と、第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って第2照射光を照射する第2解析部と、第1照射光に応じて発生する半導体デバイスからの第1応答光を受ける第1光検出部と、第2照射光に応じて発生する半導体デバイスからの第2応答光を受ける第2光検出部と、第1解析部及び第2解析部の少なくとも一方を制御する制御部と、を備える。第1照射光によって第1主面に形成される第1照射領域の大きさは、第2照射光によって第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なる。制御部は、第1照射領域及び第2照射領域の一方の全体が、第1照射領域及び第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、第1照射光及び第2照射光を照射させる制御信号を出力する。
【0017】
本発明のさらに別の形態である半導体デバイスを解析する半導体故障解析方法は、半導体デバイスの第1主面に設定された第1経路に沿って照射される第1照射光のための第1照射条件と、第1主面の裏側である第2主面に設定された第2経路に沿って照射される第2照射光のための第2照射条件と、を準備する設定工程と、設定工程で設定した第1照射条件に従って半導体デバイスに対して第1照射光を照射しながら半導体デバイスからの第1応答光を取得すると共に、設定工程で設定した第2照射条件に従って半導体デバイスに対して第2照射光を照射しながら半導体デバイスからの第2応答光を取得する解析工程と、を有する。設定工程では、第1照射光によって第1主面に形成される第1照射領域の大きさが、第2照射光によって第2主面に形成される第2照射領域の大きさと異なるように、第1照射条件及び第2照射条件を設定する。解析工程では、第1照射領域及び第2照射領域の一方の全体が、第1照射領域及び第2照射領域の他方に重複した状態を維持しながら、第1照射光及び第2照射光を照射する。
【0018】
半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法は、半導体デバイスが備える第1主面及び第2主面のそれぞれに、第1照射光第2照射光を照射する。第1照射領域の大きさは、第2照射領域の大きさと異なっているから、第1照射領域と第2照射領域とのうち、小さい方の照射領域の全体を、大きい方の照射領域に重複させることが可能になる。その結果、半導体デバイスに対して、第1主面と第2主面の両側から確実に光刺激を与えることができる。従って、光刺激の影響を受けた第1応答光と第2応答光とを得ることが可能であるから、故障箇所を確実に顕在化できる。つまり、半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法は、半導体デバイスの故障箇所を良好に検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半導体デバイスの故障箇所を良好に検出する半導体故障解析装置及び半導体故障解析方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態の半導体故障解析装置の構成図である。
図2図2(a)、図2(b)及び図2(c)は、第1照射領域と第2照射領域との重複を説明するための概念図である。
図3図3は、第1照射領域の大きさと第2照射領域の大きさとを互いに異ならせる構成を説明するための図である。
図4図4は、半導体デバイスへのレーザマーキングイメージを説明するための図である。図4(a)はレーザマーキングされた半導体デバイスの第1主面を示す図である。図4(b)はレーザマーキングされた半導体デバイスの第2主面を示す図である。図4(c)は図4(b)のII(c)-II(c)に沿った断面図である。
図5図5は、図1の解析装置におけるマーキング制御を説明するための図である。
図6図6は、ターゲットを平面視して示す図である。
図7図7は、図1の解析装置を用いた半導体故障解析方法の主要な工程を示すフロー図である。
図8図8は、第2実施形態の半導体故障解析装置の構成図である。
図9図9は、図2の解析装置を用いた半導体故障解析方法の主要な工程を示すフロー図である。
図10図10は、変形例1の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図11図11は、変形例2の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図12図12は、変形例3の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図13図13は、変形例4の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図14図14は、変形例5の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図15図15は、変形例6の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図16図16は、変形例7の故障解析装置が備える第1光学系及び第2光学系の構成図である。
図17図17(a)及び図17(b)は、変形例8の故障解析装置における第1経路と第2経路とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、第1実施形態の半導体故障解析装置は、被検査デバイス(DUT:Device Under Test)である半導体デバイスDを解析する。半導体故障解析装置は、例えば、倒立型のエミッション顕微鏡であってもよい。以下の説明において、第1実施形態の半導体故障解析装置は、単に「解析装置1」と称する。半導体デバイスDの解析とは、例えば、半導体デバイスDが含む故障箇所の位置の特定が挙げられる。半導体デバイスDの解析は、故障箇所の位置の特定に限定されない。半導体デバイスDの解析は、半導体デバイスDに関するその他の解析及び検査などを含む。以下、本実施形態の解析装置1は、半導体デバイスDが含む故障箇所の位置を特定するものとして説明する。
【0022】
解析装置1は、故障箇所の位置を特定する機能に加えて、故障箇所の周囲に故障箇所を示す印(マーク)を付す機能を付加的に有してもよい。この印を付す動作を「マーキング」と称する。マークは、故障解析の後に行われる工程において、解析装置1が特定した故障箇所を容易に把握するためのものである。
【0023】
半導体デバイスDは、トランジスタ等のPN接合を有する集積回路(IC:Integrated Circuit)、大規模集積回路(LSI:LargeScale Integration)であるロジックデバイス、メモリデバイスおよびアナログデバイスである。半導体デバイスDは、上記のデバイスを組み合わせたミックスドシグナルデバイスであってもよい。半導体デバイスDは、大電流用MOSトランジスタ、高圧用MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ及びIGBT等の電力用半導体デバイス(パワーデバイス)等であってもよい。半導体デバイスDは、基板及び金属層を含む積層構造を有する。半導体デバイスDの基板としては、例えばシリコン基板が用いられる。
【0024】
解析装置1は、故障箇所を特定するために、電気信号画像を得る。解析装置1が取得する電気信号画像には、いくつかの種類がある。解析装置1が取得する電気信号画像には、例えば、光起電流画像であるOBIC(Optical Beam Induced Current)画像、電気量変化画像であるOBIRCH(Optical Beam Induced Resistance Change)画像、正誤情報画像であるSDL(Soft Defect Localization)画像、及びLADA(LaserAssisted Device Alteration)画像等が例示できる。
【0025】
OBIC画像は、光の照射によって生じた光起電流に基づく。OBIC画像は、光起電流の電流値又は電流変化値を電気信号特性値として画像化したものである。
【0026】
半導体デバイスDにレーザといった光が照射されると、光が照射された位置に熱が発生する。熱の発生に伴う温度の変化によって、半導体デバイスDを構成する配線及びコンタクト、トランジスタのチャンネル、故障箇所等では抵抗値の変化が生じる。OBIRCH画像は、熱に起因して生じる抵抗値の変化に基づく。より詳細には、熱に起因して生じる抵抗値の変化は、温度、温度変化量、元々の抵抗値等に依存する。熱に起因して生じる抵抗値の変化は、電圧値又は電流値の変化として得ることができる。従って、OBIRCH画像は、電圧値の変化又は電流値の変化を示す電気信号特性値を画像化したものである。例えば、一定の電圧を受けている半導体デバイスDに光が照射された場合には、光の照射に起因する抵抗値の変化は、電流値の変化として得ることができる。故障箇所が大きな抵抗値を有している場合には、故障箇所から顕著な電気信号特性値を得ることができる。
【0027】
SDL画像は、誤作動状態に関する情報(例えばPASS/FAIL信号)に基づく。テストパターンなどの刺激信号が印加された半導体デバイスDに光を照射する。この光は、電荷といったキャリアを励起しない。半導体デバイスDに光が照射されると、光が照射された位置に熱が生じる。刺激信号の印加と光の照射に起因する発熱とによって、発生させた誤作動状態を検出することができる。その結果、照射位置の情報と誤作動の情報とに基づいてSDL画像を得ることができる。誤作動の情報は、輝度値として取得できる。SDL画像は、輝度値に基づく画像である。
【0028】
LADA画像も、誤作動状態に関する情報(例えばPASS/FAIL信号)に基づく。LADA画像を得る場合の光は、電荷といったキャリアを励起する。キャリアを励起する光を照射する点において、LADA画像を得る動作は、SDL画像を得る動作と異なる。刺激信号の印加と光の照射位置の情報とによって、誤作動の情報を輝度値として取得する点と、輝度値及び光の照射位置に基づき画像データを生成する点は、SDL画像と同様である。
【0029】
解析装置1は、第1解析部10と、第2解析部20と、デバイス配置部30と、計算機40と、電気信号取得部61と、を含む。第1解析部10は、半導体デバイスDの下側に配置されている。第1解析部10が照射する第1照射光L1は、半導体デバイスDの第1主面D1に照射される。第2解析部20は、半導体デバイスDの上側に配置されている。第2解析部20が照射する第2照射光L2は、半導体デバイスDの第2主面D2に照射される。解析装置1は、第1照射光L1及び第2照射光L2を照射したときに半導体デバイスDから出力される電気信号を利用して、半導体デバイスDの故障箇所を特定する。
【0030】
第1解析部10は、故障箇所を特定するための構成要素を有する。具体的には、第1解析部10は、第1照射光光源11(第1光源)と、第1光学系12と、第1XYZステージ13と、第1カメラ14(第1光検出部)と、を有する。
【0031】
第1照射光光源11は、半導体デバイスDに照射する第1照射光L1を発生する。第1照射光光源11の詳細は、解析の手法に応じて決まる。例えば、半導体デバイスDにレーザのようなコヒーレントな光を照射する解析では、第1照射光光源11として、固体レーザ源又は半導体レーザ源等を採用してよい。OBIRCH画像又はSDL画像を取得する解析では、第1照射光光源11は、半導体デバイスDが電荷(キャリア)を発生しない波長帯のレーザを出力する。例えば、シリコンにより構成される半導体デバイスDの解析では、第1照射光光源11は、1200nmより大きい波長帯のレーザを出力する。第1照射光光源11は、1300nm程度の波長帯のレーザを出力する。OBIC画像又はLADA画像を取得する解析では、第1照射光光源11は、半導体デバイスDが電荷(キャリア)を発生する波長帯の光を出力する。OBIC画像又はLADA画像を取得する解析では、第1照射光光源11は、1200nm以下の波長帯の光を出力する。例えば、第1照射光光源11は、1064nm程度の波長帯のレーザを出力する。半導体デバイスDにインコヒーレントな光を照射する解析では、第1照射光光源11として、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)、自然放射増幅光(ASE:AmplifiedSpontaneous Emission)、及び発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等を採用してよい。
【0032】
第1光学系12は、光カプラ及び光ファイバを介して第1照射光光源11から出射された第1照射光L1を受ける。第1光学系12は、第1光走査部12sと、第1対物レンズ12a(第1光学部材、第1レンズ)と、第1ビームスプリッタ12bと、を有する。第1光走査部12sは、半導体デバイスDの裏面である第1主面D1に対して第1照射光L1をあらかじめ定めた第1経路R1(図2参照)に沿って照射する。第1光走査部12sは、例えばガルバノミラー又はMEMSミラー等の光走査素子である。第1光走査部12sは、外部から提供される制御信号に基づいて、制御される。制御信号を提供する装置には、計算機40、第2解析部20、パルスジェネレータ及びテスタなどが挙げられる。第1対物レンズ12aは、第1光走査部12sから受けた第1照射光L1を第1主面D1に集光する。
【0033】
第1光学系12は、第1XYZステージ13に載置されている。第1XYZステージ13は、第1対物レンズ12aの光軸方向であるZ軸方向に第1光学系12を移動させる。さらに、第1XYZステージ13は、Z軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向にも第1光学系12を移動させる。第1XYZステージ13は、計算機40よって制御される。第1XYZステージ13の位置によって観察エリアが決定される。
【0034】
第1カメラ14は、第1主面D1を撮像する。第1カメラ14は、撮像によって得た画像データを計算機40に出力する。第1カメラ14は、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、又はエリアイメージセンサ等である。
【0035】
第2解析部20は、故障箇所を特定するための構成要素を有する。具体的には、第2解析部20は、第2照射光光源21(第2光源)と、第2光学系22と、第2カメラ24(第2光検出部)と、第2XYZステージ23と、を有する。第2照射光光源21は、第1照射光光源11と同様の構成を有する。第2光学系22は、第2光走査部22sと、第2対物レンズ22a(第2光学部材、第2レンズ)と、第2ビームスプリッタ22bと、を有する。第2光走査部22sは、第1光走査部12sと同様の構成を有する。第2カメラ24は、第1カメラ14と同様の構成を有する。
【0036】
ところで、解析装置1が故障箇所を特定する動作を行うとき、第1光学系12は、第1照射光L1を半導体デバイスDの第1主面D1に照射する。第2光学系22は、第2照射光L2を半導体デバイスDの第2主面D2に照射する。第1照射光L1及び第2照射光L2の照射は、時間的に並行する。
【0037】
図2(a)に示すように、第1照射光L1は、第1照射領域A1を形成する。第1光学系12は、第1照射領域A1があらかじめ設定された第1経路R1に沿って移動するように、第1照射光L1を照射する。第2照射光L2は、第2照射領域A2を形成する。同様に、第2光学系22は、第2照射領域A2があらかじめ設定された第2経路R2に沿って移動するように、第2照射光L2を照射する。
【0038】
例えば、第1光学系12の光軸の方向から半導体デバイスDを見たとき、第1照射領域A1は、第2照射領域A2と重複する。半導体デバイスDは、第1主面D1側から照射された第1照射光L1と、第2主面D2側から照射された第2照射光L2によって、エネルギーを受ける。その結果、第1主面D1及び第2主面D2の両面からエネルギーの入力を受けた部分は、故障箇所を特定するための状態の変化を生じる。例えば、発熱に起因する抵抗値の変化をとらえるOBIRCH解析の場合には、第1主面D1から第1照射光L1の照射を受けると共に第2主面D2から第2照射光L2の照射を受けた部分は、所定量の発熱を生じる。その結果、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射された箇所に故障箇所が存在する場合には、故障の状態を顕在化できる。
【0039】
ところで、図2(a)に示すように、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射される位置(つまり、第1照射領域A1及び第2照射領域A2)は、時間の経過と共に移動する。第1照射領域A1は、第1経路R1に沿って移動する。第2照射領域A2は、第2経路R2に沿って移動する。第1照射光L1の移動は、第1光走査部12sによって実現される。第2照射光L2の照射位置の移動は、第2光走査部22sによって実現される。
【0040】
図2(a)に示すように、理想的な動作であるとき、第1照射光L1が実際に照射された領域と、第2照射光L2が実際に照射された領域と、が互いに完全に重複することによって、重複領域AL12が形成される。しかし、様々な要因によって、図2(a)のような理想的な動作とはならない場合がある。図2(b)は、第1照射光L1は第1経路R1に沿って理想的に動作したが、第2照射光L2は第2経路R2から外れながら動作した場合を示している。この場合には、第1照射光L1が実際に照射された領域と、第2照射光L2が実際に照射された領域と、が互いに完全に重複しない場合がある。具体的には、第1照射光L1のみが照射された第1非重複領域AL1と、第2照射光L2のみが照射された第2非重複領域AL2と、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射された重複領域AL12と、が生じる。
【0041】
上述したように、半導体デバイスDの故障箇所を顕在化させるためには、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射される必要がある。第1照射光L1のみが照射された第1非重複領域AL1は、光による刺激が足りない。その結果、第1非重複領域AL1に故障箇所が存在する場合であっても、故障箇所が顕在化しない可能性がある。同様に、第2照射光L2のみが照射された第2非重複領域AL2も、光による刺激が足りない。その結果、第2非重複領域AL2に故障箇所が存在する場合であっても、故障箇所が顕在化しない可能性がある。その結果、半導体デバイスの故障箇所を良好に検出できる領域(重複領域AL12)が狭くなる。つまり、設定された第1経路R1に対して、実際に照射された第1照射光L1の位置がずれると、半導体デバイスDの故障箇所を良好に検出できる領域(重複領域AL12)が減少してしまう。同様に、設定された第2経路R2に対して、実際に照射された第2照射光L2の位置がずれると、半導体デバイスDの故障箇所を良好に検出できる領域(重複領域AL12)が減少してしまう。
【0042】
上記の問題に鑑み、第1実施形態の解析装置1は、故障箇所を確実に顕在化させる重複領域AL12の減少を抑制する。その結果、第1実施形態の解析装置1は、半導体デバイスDの故障箇所を良好に検出する。
【0043】
具体的には、図2(c)に示すように、第1照射光L1の走査を停止した状態において、第1照射光L1を第1主面D1に照射すると、円形状の第1照射領域A1が生じる。第2照射光L2の走査を停止した状態において、第2照射光L2を第2主面D2に照射すると、円形状の第2照射領域A2が生じる。第1照射領域A1の大きさは、第2照射領域A2の大きさと異なっている。
【0044】
ここでいう「大きさ」とは、第1照射領域A1の面積及び第2照射領域A2の面積と規定してよい。第1照射領域A1及び第2照射領域A2の形状が円である場合には、「大きさ」とは、第1照射領域A1及び第2照射領域A2の直径と規定してもよい。第1照射領域A1及び第2照射領域A2の直径は、いわゆるスポット径である。
【0045】
第1照射領域A1の大きさは、第2照射領域A2の大きさと一致していない。より詳細には、第2照射領域A2の大きさは、第1照射領域A1の大きさより小さい。第1解析部10の光軸の方向から、第1照射領域A1と第2照射領域A2と、を見た場合には、第2照射領域A2の全体は、第1照射領域A1に重複する。
【0046】
図3に示すように、第1照射領域A1と第2照射領域A2との関係は、第2解析部20が有する第2対物レンズ22aの倍率が、第1解析部10が有する第1対物レンズ12aよりも高いことに起因している。換言すると、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとの相違は、第1対物レンズ12aと第2対物レンズ22aとの光学的な特性の相違によって実現されている。
【0047】
第2解析部20が有する第2対物レンズ22aは、第1解析部10が有する第1対物レンズ12aと異なる光学特性を有する。第2対物レンズ22aの倍率は、第1対物レンズ12aの倍率と異なっている。第2対物レンズ22aの倍率は、第1対物レンズ12aの倍率と一致していない。第2対物レンズ22aの倍率は、第1対物レンズ12aの倍率より高い。
【0048】
倍率の違いは、焦点距離の違いと言い換えてもよい。第1対物レンズ12aから第1主面D1までの距離K1と、第2対物レンズ22aから第2主面D2までの距離K2と、は、互いに同じである。第2対物レンズ22aの第2焦点距離F2は、第1対物レンズ12aの第1焦点距離F1よりも、短い。第1主面D1は、第1焦点P1よりも第1対物レンズ12a側に位置する。第2主面D2は、第2焦点P2よりも第2対物レンズ22a側に位置する。その結果、第2照射領域A2の大きさは、第1照射領域A1の大きさよりも小さくなる。
【0049】
第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとが互いに異なっていればよい。上記の説明では、第1照射領域A1が第2照射領域A2より小さい場合を例示した。例えば、第2照射領域A2が第1照射領域A1より大きくてもよい。
【0050】
故障箇所を顕在化させる領域の減少を抑制する効果は、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとが互いに異なっていれば発生する。第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを異ならせる構成は、第1対物レンズ12aの倍率と第2対物レンズ22aの倍率との相違である必要はない。第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを異ならせる別の構成は、変形例1~8として後に説明する。
【0051】
<デバイス配置部>
図1を参照する。デバイス配置部30は、半導体デバイスDを保持する。デバイス配置部30は、第1解析部10に対する半導体デバイスDの位置を変更する。デバイス配置部30は、第2解析部20に対する半導体デバイスDの位置を変更する。デバイス配置部30は、サンプルステージ31と、ウェハチャック32と、XY駆動部33と、を有する。
【0052】
解析装置1は、第1解析部10の第1XYZステージ13と、第2解析部20の第2XYZステージ23と、デバイス配置部30のXY駆動部33と、を有する。解析装置1は、3個の駆動機構を有する。解析装置1は、3つの自由度を有する。3つの自由度を有する構成によれば、例えば、第1解析部10を固定した状態で、第2解析部20及びデバイス配置部30を移動させることができる。第1解析部10及び第2解析部20を固定した状態で、デバイス配置部30を移動させることもできる。「固定」とは、位置を変更しないことを意味する。例えば、「第1解析部10及び第2解析部20を固定した状態」とは、第1解析部10に対する第2解析部20の相対的な位置が維持される状態いう。
【0053】
ウェハチャック32は、サンプルステージ31に載置される。ウェハチャック32は、サンプルステージ31に対して摺動可能である。ウェハチャック32は、デバイス保持部32aを有する。デバイス保持部32aは、半導体デバイスDを保持する。デバイス保持部32aは、ウェハチャック32に設けられた貫通穴と、貫通穴を物理的にふさぐガラス板と、を含む。
【0054】
ウェハチャック32は、アライメントターゲット50を有する。アライメントターゲット50(図6参照)は、ガラス板である。ガラス板の第1の面には、基準点bpを中心に放射状に伸びるパターンが設けられている。このパターンは例えば、金属膜である。一例としては、パターンはアルミニウムの薄膜によって作成される。従って、パターンは、不透明部50bを構成する。ガラス板は、半導体デバイスDの基板SiEを透過する波長の光を透過する。従って、パターンが設けられていない領域は、光透過部50aを構成する。ウェハチャック32は、ターゲット穴32bを有している。ターゲット穴32bには、アライメントターゲット50が配置される。アライメントターゲット50は、ターゲット穴32bを閉鎖するように配置される。このアライメントターゲット50の配置によれば、第1カメラ14及び第2カメラ24は、ガラス板の一面に設けられたパターンの像を取得することができる。
【0055】
アライメントターゲット50は、ウェハチャック32に設けられている。ウェハチャック32において、デバイス保持部32aが設けられた位置は、アライメントターゲット50が設けられた位置と異なる。XY駆動部33によってウェハチャック32の位置が変更された場合には、半導体デバイスDの位置及びアライメントターゲット50の位置が同時に変更される。ウェハチャック32に取り付けられた半導体デバイスDに対するアライメントターゲット50の位置は、不変である。
【0056】
XY駆動部33は、計算機40からの制御命令に応じて、ウェハチャック32をX軸方向又はY軸方向に移動させる。その結果、第1解析部10及び第2解析部20を移動させることなく、観察エリアを変更することができる。
【0057】
デバイス配置部30の具体的な構成は、上記の構成に限定されない。デバイス配置部30は、半導体デバイスDを保持する機能と、半導体デバイスDをX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方へ移動させる機能と、を発揮できる構成を採用してよい。例えば、サンプルステージ31及びXY駆動部33に代えて、XYステージを有してもよい。このXYステージは、ウェハチャック32をX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方へ移動させる。
【0058】
解析装置1は、必要に応じて刺激信号印加部60及びマーキング光源26を有してもよい。
【0059】
刺激信号印加部60は、ケーブルを介して半導体デバイスDに電気的に接続されている。刺激信号印加部60は、半導体デバイスDに刺激信号を印加する。刺激信号印加部60は、電源から受けた電力によって動作する。刺激信号印加部60は、半導体デバイスDに所定のテストパターンなどの刺激信号を繰り返し印加する。刺激信号印加部60が出力する刺激信号は、変調電流信号であってもよいし、CW(continuous wave)電流信号であってもよい。
【0060】
刺激信号印加部60は、ケーブルを介して計算機40に電気的に接続されている。刺激信号印加部60は、計算機40から指定された刺激信号を、半導体デバイスDに印加する。刺激信号印加部60は、必ずしも計算機40に電気的に接続されていなくてもよい。刺激信号印加部60は、計算機40に電気的に接続されていない場合には、単体でテストパターンなどの刺激信号を決定する。電源又はパルスジェネレータ等を刺激信号印加部60として用いてもよい。
【0061】
<マーキング光源>
図4及び図5に示すように、解析装置1は、マーキングのためのマーキング光源26を付加的に有してもよい。
【0062】
マーキング光源26は、計算機40によって特定された故障箇所の周囲に、マークを付す。図4(a)及び図4(b)に示されるように、故障箇所fpの周囲にマーキング箇所mpが設定される。図4(a)及び図4(b)では、4個のマーキング箇所mpを図示する。レーザマーキングが完了した状態においては、図4(c)に示されるように、半導体デバイスDのメタル層MEを貫通する貫通穴が形成される。レーザマーキングは、メタル層MEと基板SiEとの境界面ssに達する貫通穴を形成する。その結果、基板SiEにおけるメタル層MEに接する面が露出する。本明細書でいう「マーク」とは、メタル層MEに形成された貫通穴を意味してもよい。本明細書でいう「マーク」とは、貫通穴から露出する基板SiEを意味してもよい。
【0063】
マーキング光源26は、マーキング用のレーザを、第2光学系22を介して半導体デバイスDのマーキング箇所mpに照射する。マーキング光源26は、半導体デバイスDのメタル層ME側からマーキング箇所mpにレーザを照射する。レーザは、メタル層MEに貫通穴を形成する。マーキング光源26は、計算機40からレーザの照射を開始させる制御信号を受けると、レーザの照射を開始する。マーキング光源26は、例えば固体レーザ源及び半導体レーザ源等を採用してよい。マーキング光源26から照射される光の波長は、250nm以上2000nm以下である。
【0064】
第2光学系22は、半導体デバイスDのマーキング箇所mpにレーザを導く。具体的には、第2光学系22は、半導体デバイスDのメタル層ME側からレーザを半導体デバイスDに照射する。換言すると、第2光学系22は、半導体デバイスDの第2主面D2の側からレーザを半導体デバイスDに照射する。第2光学系22の第2ビームスプリッタ22bは、マーキング光源26及び第2カメラ24の光路を切り替える。第2対物レンズ22aは、レーザをマーキング箇所mpに集光する。第2対物レンズ22a及び第2ビームスプリッタ22bは、半導体デバイスDの表面から来た光を第2カメラ24へ導く。
【0065】
第2XYZステージ23を駆動して第2対物レンズ22aの光軸をマーキング位置に一致させることにより、マーキング位置にレーザを照射させてもよい。第2光走査部22sによってマーキング位置にレーザを照射させてもよい。第2光学系22は、シャッタを備えてもよい。シャッタは、マーキング光源26からのレーザを通過させる状態と遮る状態とを相互に切り替える。その結果、レーザの照射と停止とを制御することができる。これらの動作は、後述する計算機40のマーキング制御部41bが出力する制御信号に従う。
【0066】
第2カメラ24は、半導体デバイスDの第2主面D2側から、半導体デバイスDのメタル層MEを撮像する。第2カメラ24は、撮像した撮像画像を計算機40に出力する。ユーザは、撮像画像を確認することにより、半導体デバイスDの第2主面D2側から見たレーザマーキングの状況を把握することができる。照明光源25は、第2カメラ24で撮像するときに半導体デバイスDへ照明光を照明する。
【0067】
<計算機>
図1を参照する。計算機40は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータである。計算機40は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備える。計算機40としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。計算機40は、メモリに格納されているプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。
【0068】
計算機40は、故障箇所を特定する機能のための要素として、照射制御部41sと、画像処理部41hと、を有する。照射制御部41sは、第2解析部20に制御信号を出力する。制御信号を受けた第2解析部20は、半導体デバイスDへ第2照射光L2を照射する。第1解析部10は、計算機40から第1照射光L1のための制御信号を受けない。第1解析部10は、第1照射光L1のための制御信号を第2解析部20から受ける。第1照射光L1と第2照射光L2とを同期させる動作は、計算機40から制御信号を受けた第2解析部20が、第2解析部20の動作に追従させるように第1解析部10に対して制御信号を出力することによりなされる。第2照射領域A2は、第1照射領域A1よりも小さい。計算機40は、小さい方の第2照射領域A2を形成する第2解析部20に対して、制御信号を出力する。
【0069】
制御信号は、第2照射光L2の照射開始及び照射停止を制御する。制御信号は、第2照射光L2の照射位置を制御する。具体的には、制御信号は、第2光走査部22sを制御する。第2光走査部22sがミラーである場合には、制御信号はミラーの角度を制御する。
【0070】
照射制御部41sは、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとの比率に基づいて、第2光走査部22sのための制御信号を生成してよい。例えば、大きい方の第1照射領域A1を生成する第1対物レンズ12aの倍率を「1」とした場合には、第2照射領域A2を生成する第2対物レンズ22aの倍率は「1」より大きい値(N)で示される。第1対物レンズ12aの倍率と第2対物レンズ22aの倍率との比率が、1:Nとして示されると仮定する。この場合、照射制御部41sは、第2光走査部22sを構成するミラーの振り角度がN倍となるように制御する。
【0071】
対物レンズの倍率の比率に応じて、スキャン角度を大きくする。その結果、第1対物レンズ12aの視野の大きさと、第2対物レンズ22aの視野の大きさと、を互いに一致させることができる。例えば、第2対物レンズ22aの倍率が第1対物レンズ12aの倍率の2倍であるとする。この場合には、第2対物レンズ22aの視野の大きさ(視野の各辺の長さ)は、第1対物レンズ12aの視野の大きさ(視野の各辺の長さ)の半分である。従って、第2対物レンズ22aに光を導くミラーの振り角は、第1対物レンズ12aに光を導くミラーの振り角の2倍に設定する。
【0072】
計算機40は、第2解析部20への制御信号の出力と並行して、第1解析部10へ制御信号を出力してもよい。
【0073】
画像処理部41hは、電気信号取得部61が出力する電気信号特性値を得る。画像処理部41は、電気信号特性値に基づいて電気信号画像を生成する。電気信号画像とは、例えば、OBIC画像、OBIRCH画像、SDL画像及びLADA画像である。
【0074】
解析装置1がマーキングを付す機能を有する場合には、計算機40は、機能的な構成要素として、マーキング設定部41aと、マーキング制御部41bと、マーキング画像作成部41cと、を付加的に有してもよい。
【0075】
<マーキング設定部>
マーキング設定部41aは、入力部41eから入力された故障箇所fpを示す情報に基づいて、マーキング箇所mpを設定する。特定された故障箇所fpの周囲には、数か所のマーキング箇所mpが設定される。数か所とは例えば4箇所である。マーキング設定部41aは、例えば故障箇所fpを示す情報が入力された場合には、故障箇所fpを中心として、故障箇所fpの周囲の4箇所に、マーキング箇所mpを自動的に設定する。具体的には、マーキング設定部41aは、例えば平面視において、故障箇所fpを中心とした十字状にマーキング箇所mpを設定する(図4(a)及び図4(b)参照)。マーキング箇所mpは、ユーザから入力された情報によって設定されてもよい。ユーザは、表示部41dに表示された解析画像を見ながら、マーキング箇所mpを示す情報を入力する。マーキング箇所mpを示す情報は、入力部41eが受け付ける。ユーザが情報を入力する場合、マーキング設定部41aは、マーキング箇所mpを自動的に設定しない。マーキング設定部41aは、入力部41eから入力されるマーキング箇所mpを示す情報に基づいて、マーキング箇所mpを設定する。マーキング設定部41aは、リファレンス画像を生成する。リファレンス画像は、解析画像に対して、故障箇所fpを示す目印と、マーキング箇所mpを示す目印と、を付加したものである。マーキング設定部41aは、リファレンス画像を計算機40のメモリに保存する。
【0076】
<マーキング制御部>
マーキング制御部41bは、第2カメラ24の視野に故障箇所の観察エリアが収まるように、第2解析部20の第2XYZステージ23を制御する。マーキング制御部41bは、第1光学系12の光軸に第2光学系22の光軸が一致するように、マーキング光源26の第2XYZステージ23を制御する。マーキング制御部41bは、第2光学系22の光軸がマーキング箇所mpに重複するように、デバイス配置部30のXY駆動部33を制御する。マーキング制御部41bは、第2光走査部22sを制御してもよい。
【0077】
マーキング制御部41bは、マーキング光源26も制御する。マーキング制御部41bは、マーキング画像作成部41cによってマーク像が現れたと判断された場合に、マーキング光源26に対して出力停止信号を出力する。マーキング光源26は、出力停止信号が入力された場合に、レーザの出力を停止する。このため、マーキング光源26は、マーキング制御部41bによって出力開始信号が入力されてから出力停止信号が入力されるまでの間、レーザを出力し続ける。マーキング制御部41bは、レーザマーキングによって形成されるマーク像がパターン画像に現れるまでレーザマーキングが行われるように、マーキング光源26を制御する。レーザの貫通閾値が設定されている。マーキング制御部41bは、レーザがメタル層MEを貫通するまでレーザマーキングが行われるように、マーキング光源26を制御する。
【0078】
<マーキング画像作成部>
計算機40は、ケーブルを介して第1カメラ14に電気的に接続されている。計算機40は、第1カメラ14から入力された画像データを利用して、パターン画像及び発光画像を作成する。発光画像だけでは、半導体デバイスDのパターンにおける発光位置を特定することが難しい。計算機40は、解析画像として、重畳画像を生成する。重畳画像は、半導体デバイスDからの反射光に基づくパターン画像と、半導体デバイスDからの発光に基づく発光画像と、を含む。パターン画像と発光画像とは、互いに重畳している。
【0079】
マーキング画像作成部41cは、マーキング画像を作成する。マーキング画像は、マーク像を含むパターン画像と発光画像とを含む。パターン画像と発光画像とは、互いに重複している。作成されたマーキング画像は、計算機40のメモリに保存される。マーキング画像作成部41cは、マーキング画像を表示部41dに表示させる。マーキング画像により、ユーザは、後工程において、故障箇所の位置に対するマーキング位置を正確に把握することができる。マーキング画像作成部41cは、マーキング情報を取得する。マーキング情報とは、故障箇所の位置に対するマーキング位置を把握するために必要な情報である。マーキング情報として、例えば、マーキング位置から故障箇所までの位置の距離、及び故障箇所の位置を基準にしたマーキング位置の方位などが挙げられる。取得されたマーキング情報は、リストとして表示してもよい。マーキング情報は、マーキング画像に付加して表示してもよい。マーキング情報は、紙媒体で出力してもよい。
【0080】
計算機40は、解析画像を表示部41dに出力する。表示部41dは、ユーザに解析画像等を示すためのディスプレイ等の表示装置である。ユーザは、表示部41dに表示された解析画像から故障箇所の位置を確認することができる。ユーザは、入力部41eを用いて故障箇所を示す情報を入力する。入力部41eは、ユーザからの入力を受け付けるキーボード及びマウス等の入力装置である。入力部41eは、故障箇所を示す情報を計算機40に出力する。計算機40、表示部41d、及び入力部41eは、タブレット端末であってもよい。
【0081】
マーキング画像作成部41cは、レーザの照射を停止させる制御命令をマーキング制御部41bに出力させてもよい。レーザの照射を停止させる制御命令は、パターン画像に現れるマーク像を利用して生成される。具体的には、マーキング画像作成部41cは、マーキング光源26が出力したレーザによるレーザマーキングと並行して、パターン画像を順次生成する。レーザマーキングによって、マーキング箇所mpのメタル層MEには穴が形成される。メタル層MEの穴が浅いときには、マーキング位置での反射光の強度変化が小さいので、光学反射像の変化も小さい。換言すると、レーザマーキングにより形成される穴がメタル層MEにのみ形成されているために、基板SiEにまで到達していないときには、マーキング位置での反射光の強度変化が小さい。従って、光学反射像の変化も小さい。その結果、レーザマーキングの影響は、パターン画像に現れない。メタル層MEの穴が深くなると、第1主面D1側の光の屈折率、透過率、及び反射率の少なくともいずれか1つの変化が大きくなる。具体的には、穴がメタル層MEと基板SiEとの境界面ssに達する程度に深くなると、第1主面D1側の光の屈折率、透過率、及び反射率の少なくともいずれか1つの変化が大きくなる。これらの変化に起因して、マーキング位置での反射光の強度変化が大きくなる。その結果、パターン画像にはマーキング箇所を示すマーク像が現れる。
【0082】
マーキング画像作成部41cは、例えば、上述したリファレンス画像と、パターン画像とを比較する。比較の結果、画像の差異が予め定めた規定値よりも大きくなっている場合に、マーキング画像作成部41cは、マーク像が現れたと判断する。規定値を予め設定しておくことにより、マーク像が現れたと判断されるタイミングを決定することができる。
【0083】
マーキング画像作成部41cは、ユーザからの入力内容に応じて、マーク像が現れたか否かを判断してもよい。マーキング画像作成部41cは、マーク像が現れたと判断した場合において、リファレンス画像とパターン画像とを比較する。パターン画像のマーク形成箇所がリファレンス画像のマーキング箇所mpとずれている場合には、マーキング画像作成部41cは、マークの位置ずれが生じていると判断してもよい。この場合、正しいマーキング箇所mpにマークが形成されるようにレーザマーキングを再度行ってもよい。
【0084】
マーキングは、以下のような変形を伴ってもよい。
【0085】
例えば、レーザがメタル層MEを貫通することによって、基板SiEにおけるメタル層MEに接する面が露出する程度までレーザマーキングが行われるとして説明した。しかし、この態様には、限定されない。レーザマーキングによる穴の深さは、マーク像がパターン画像に現れる程度であればよい。具体的には、例えば、メタル層MEを貫通すると共に基板SiEにおけるメタル層MEに接する面が露出した後も更にレーザマーキングが行われてもよい。例えばメタル層MEの厚さが10μmであり、基板SiEの厚さが500μmである場合に、基板SiEにおけるメタル層MEに接する面から更に1μm程度深く、レーザマーキングによる穴が形成されてもよい。レーザマーキングによる穴は、必ずしもメタル層MEを貫通しなくてもよい。例えば、メタル層MEの厚さが10μmであり、基板SiEの厚さが500μmである場合を仮定する。この場合に、レーザマーキングによる穴が形成された箇所のメタル層MEの厚さは、50nm程度であってもよい。レーザマーキングによる穴は、基板SiEにおけるメタル層MEに接する面に到達しなくてもよい。
【0086】
パターン画像の生成は、レーザマーキングが行われている間に行われるとして説明した。しかし、この態様には限定されない。例えば、レーザの出力が停止しているときに、パターン画像が生成されてもよい。この場合、レーザを出力する動作と、レーザを停止すると共にパターン画像を生成する動作と、は、所定の間隔で交互に行われてもよい。
【0087】
マーキング光源26から出力されるレーザの波長が1000ナノメートル以上である場合は、第1解析部10は、1000ナノメートル以上である波長のレーザのみを遮る光学フィルタを有してもよい。マーキング光源26から出力されたレーザが半導体デバイスDの基板SiEを透過した場合、レーザは、第1解析部10によって遮光される。その結果、レーザによって光検出器が破壊されることを抑制することができる。
【0088】
マーキング光源26から出力されるレーザの波長は、1000ナノメートル未満であってもよい。この場合、例えば半導体デバイスDがシリコン基板などの基板により構成されている場合、レーザは、基板に吸収される。その結果、光学フィルタ等を備えることなく、第1カメラ14等の光検出器がレーザにより破壊されることを抑制することができる。
【0089】
半導体デバイスDに刺激信号を印加する構成要素は、刺激信号印加部60に限られない。半導体デバイスDに刺激信号を印加する構成要素である刺激信号印加部として、半導体デバイスDに電圧又は電流を印加する装置を採用してよい。これらの装置を用いて、半導体デバイスDに刺激信号を印加してもよい。
【0090】
解析装置1の解析処理について説明する。図7は、解析装置1を用いた解析処理の主要な工程を示すフロー図である。
【0091】
<設定工程S100>
第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを互いに異ならせるための準備を行う。第1実施形態の解析装置1は、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを互いに異ならせるために、第1対物レンズ12aの倍率と第2対物レンズ22aの倍率とを異ならせた。設定工程S100では、第1対物レンズ12aの倍率を所定の倍率に設定すると共に、第2対物レンズ22aの倍率を第1対物レンズ12aとは異なる倍率に設定する。例えば、第1解析部10及び第2解析部20は、互いに異なる倍率の複数の対物レンズを備えている。解析に用いる対物レンズは、入力部41eを用いたユーザの入力操作によって、選択される。計算機40は、選択された対物レンズの情報を第1解析部10及び第2解析部20に出力する。第1解析部10は、入力された情報に従う対物レンズを、第1対物レンズ12aとして光軸上に配置する。第2解析部20は、入力された情報に従う対物レンズを、第2対物レンズ22aとして光軸上に配置する。
【0092】
<アライメント工程S110>
次に、第1光学系12と第2光学系22との位置合わせを行う(S110)。「位置合わせ」とは、第1光学系12の光軸に第2光学系22の光軸を一致させることである。より詳細には、「位置合わせ」とは、第1光学系12に関する第1光走査領域の中心に対する第2光学系22に関する第2光走査領域の中心のずれを解消することをいう。照射制御部41sは、工程S110のためのアライメント命令を出力する。第1光学系12の視野にアライメントターゲット50を捉えるように、XY駆動部33は、ウェハチャック32を移動させる(S111)。照射制御部41sは、半導体デバイスDの移動量を記憶する。移動量は、ウェハチャック32のものとしてもよい。
【0093】
次に、第1光学系12の第1光走査領域と第2光学系22の第2光走査領域とを互いに合わせる(S112)。第1光学系12の光軸に第2光学系22の光軸を合わせることで、第1光学系12に関する第1光走査領域の中心と、第2光学系22に関する第2光走査領域の中心とが合う。第2光学系22の視野にアライメントターゲット50を捉えるように、第2XYZステージ23は、第2光学系22を移動させる。次に、照明光源25は、アライメントターゲット50に向けて照明光を出力する。照明光は、アライメントターゲット50の光透過部50aを透過する。第1光学系12の第1カメラ14は、アライメントターゲット50の光透過部50aを透過した光による透過像を得る。第1カメラ14は、透過像を計算機40に出力する。第2カメラ24は、アライメントターゲット50の不透明部50bで反射した反射光による反射像を得る。第2カメラ24は、反射像を計算機40に出力する。画像処理部41hは、透過像及び反射像を用いて、第1光学系12の光軸に対する第2光学系22の光軸のずれを算出する。このずれが許容範囲に収まるまで、第2光学系22を移動させる動作と、ずれ量を確認する動作と、を繰り返す。ずれが許容範囲に収まったと判定されたとき、光軸の位置合わせが完了する。これにより、第1光学系12に関する第1光走査領域の中心を第2光学系22に関する第2光走査領域の中心に合わせることができる。ずれを許容範囲に収めるための動作として、第1光学系12の位置を固定した状態で第2光学系22を移動させてもよい。第2光学系22の位置を固定した状態で第1光学系12を移動させてもよい。第1光学系12及び第2光学系22の両方を移動させてもよい。
【0094】
光走査領域の位置合わせが完了した後に、第1光学系12及び第2光学系22の視野に半導体デバイスDを捉えるように、XY駆動部33は、ウェハチャック32を移動させる(S113)。このとき、照射制御部41sは、半導体デバイスDの退避時に記憶した移動量に基づいて、XY駆動部33を制御してよい。第1カメラ14及び第2カメラ24から出力される画像データを用いて、第1光学系12及び第2光学系22と半導体デバイスDとの相対的な位置を制御してもよい。この場合にも、移動の対象は、半導体デバイスDのみである。走査領域の位置合わせが完了した直後は、半導体デバイスDが退避している。つまり、第1光学系12及び第2光学系22の視野に半導体デバイスDは、存在しない。そこで、走査領域の位置合わせが完了した後に、第1光学系12及び第2光学系22の視野に半導体デバイスDを収める。より詳細には、第1光学系12の第1光走査領域及び第2光学系22の第2光走査領域に、半導体デバイスDを配置する。位置合わせが完了した後に移動させるものは、半導体デバイスDである。換言すると、位置合わせが完了した後には、第1光学系12及び第2光学系22は、移動させない。その結果、第1光学系12の第1光走査領域に対する第2光学系22の第2光走査領域の相対的な位置関係は、位置合わせの結果が維持される。
【0095】
<解析工程S120>
次に、半導体デバイスDの故障箇所を特定する(S120)。具体的には、計算機40は、第2解析部20に制御信号を出力する。その結果、第2解析部20による光走査が開始される。第2解析部20の動作に伴って、第1解析部10の光走査も開始する。半導体デバイスDから電気特性信号を取得する。電気特性信号の取得と並行して、半導体デバイスDからの反射光を検出することによって、パターン画像を取得してもよい。第1解析部10及び第2解析部20が受ける制御信号は、パルスジェネレータ又はテスタから入力されてもよい。この場合には、パルスジェネレータ又はテスタから、第1解析部10に制御信号が与えられると共に、第2解析部20にも並行して制御信号が与えられる。
【0096】
解析工程S120では、第1照射光L1及び第2照射光L2の特性に応じて、所望の電気信号画像を得る。さらに、解析工程S120では、照射光を受けている半導体デバイスDの状態に応じて、所望の電気信号画像を得る。電気信号画像とは、例えば、OBIC画像、OBIRCH画像、SDL画像及びLADA画像等である。
【0097】
第1解析動作として、OBIC画像を得る動作が挙げられる。第1解析では、第1照射光L1及び第2照射光L2を半導体デバイスDに照射する。第1解析では、刺激信号印加部60は、半導体デバイスDに刺激信号を与えない。レーザを受けた半導体デバイスDは、光起電流が生じることがある。電気信号取得部61は、光起電流の電流値又は電流変化値を電気信号特性値として出力する。
【0098】
第2解析動作として、OBIRCH画像を得る動作が挙げられる。第2解析では、第1照射光L1及び第2照射光L2を半導体デバイスDに照射する。第2解析では、刺激信号印加部60は、半導体デバイスDに刺激信号である一定の電流を与える。刺激信号は、一定の電圧であってもよい。刺激信号を受けた半導体デバイスDにレーザを照射すると、半導体デバイスDにおける照射位置の抵抗値が変化する。電気信号取得部61は、抵抗値の変化に応じた電圧値又は電圧の変化値を電気信号特性値として出力する。
【0099】
第3解析動作として、SDL画像を得る動作が挙げられる。第3解析では、第1照射光L1及び第2照射光L2を半導体デバイスDに照射する。第3解析では、第1照射光L1及び第2照射光L2として、キャリアが励起されない波長のレーザを採用する。第3解析動作では、刺激信号印加部60は、テストパターンなどの刺激信号を与える。刺激信号を受けた半導体デバイスDにキャリアが励起されない波長のレーザを照射すると、半導体デバイスDの誤動作状態を検出できる。電気信号取得部61は、誤作動状態に係る情報(例えばPASS/FAIL信号)を電気信号特性値として出力する。
【0100】
第4解析動作として、LADA画像を得る動作が挙げられる。第4解析では、第1照射光L1及び第2照射光L2を半導体デバイスDに照射する。第4解析では、第1照射光L1及び第2照射光L2として、キャリアが励起される波長のレーザを採用する。第4解析動作では、刺激信号印加部60は、テストパターンなどの刺激信号を与える。刺激信号を受けた半導体デバイスDにキャリアが励起される波長のレーザを照射すると、半導体デバイスDの誤動作状態を検出できる。電気信号取得部61は、誤作動状態に係る情報(例えばPASS/FAIL信号)を電気信号特性値として出力する。
【0101】
<マーキング工程S130>
必要に応じて、マーキング箇所mpへマーキングを形成する動作(S130)を行ってもよい。マーキング制御部41bは、工程S130のためのマーキング命令をマーキング光源26及びデバイス配置部30に出力する。具体的には、マーキング光源26は、レーザを出力する。レーザマーキングは、設定されたマーキング箇所mpのすべてに対して実行する。それぞれのマーキング箇所mpへのレーザの出力動作において、マーキング画像作成部41cは、パターン画像にマーク像が現れたか否かを判定してもよい。パターン画像にマーク像が現れていないと判定された場合には、再度、レーザの照射を実行する。レーザの照射動作と並行して、マーキング画像作成部41cは、パターン画像を生成する。
【0102】
以下、本実施形態の解析装置1の作用効果について説明する。
【0103】
半導体故障解析装置1は、半導体デバイスDの第1主面D1に設定された第1経路R1に沿って第1照射光L1を照射する第1解析部10と、第1主面D1の裏側である第2主面D2に設定された第2経路R2に沿って第2照射光L2を照射する第2解析部20と、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射されている半導体デバイスDが出力する電気信号を受ける電気信号取得部61と、第2解析部20を制御する計算機40と、を備える。第1照射光L1によって第1主面D1に形成される第1照射領域A1の大きさは、第2照射光L2によって第2主面D2に形成される第2照射領域A2の大きさと異なる。計算機40は、第2照射領域A2の全体が、第1照射領域A1に重複した状態を維持しながら、第1照射光L1及び第2照射光L2を照射させる。
【0104】
半導体デバイスDを解析する半導体故障解析方法は、半導体デバイスDの第1主面D1に設定された第1経路R1に沿って照射される第1照射光L1のための第1照射条件と、第1主面D1の裏側である第2主面D2に設定された第2経路R2に沿って照射される第2照射光L2のための第2照射条件と、を準備する設定工程S100と、設定工程S100で設定した第1照射条件及び第2照射条件に従って、半導体デバイスDに対して第1照射光L1及び第2照射光L2を照射しながら、半導体デバイスDが出力する電気信号を取得する解析工程S120と、を有する。設定工程S100では、第1照射光L1によって第1主面D1に形成される第1照射領域A1の大きさが、第2照射光L2によって第2主面D2に形成される第2照射領域A2の大きさと異なるように、第1照射条件及び第2照射条件を設定する。解析工程S120では、第2照射領域A2の全体が第1照射領域A1に重複した状態を維持しながら、第1照射光L1及び第2照射光L2を照射する。
【0105】
半導体デバイスDに対して両側に配置された第1光学系12及び第2光学系22によって光走査を伴う故障解析では、半導体デバイスDの両側に配置された第1光学系12及び第2光学系22による光スポットの位置を一致させながら走査しようとすると、制御の精度から難しい場合がある。そのため、第1光学系12の光軸と第2光学系22の光軸とが完全に一致しない場合であっても、光スポットである光照射領域を重複させることが望まれる。
【0106】
半導体故障解析装置1及び半導体故障解析方法は、半導体デバイスDが備える第1主面D1に第1照射光L1を照射すると共に、第2主面D2に第2照射光L2を照射する。第1照射領域A1の大きさは、第2照射領域A2の大きさと異なっている。その結果、第1照射領域A1と第2照射領域A2とのうち、小さい方である第2照射領域A2の全体を、大きい方である第1照射領域A1に重複させることが可能になる。その結果、半導体デバイスDを第1主面D1と第2主面D2との両側から確実に光刺激を与えることができる。従って、光刺激の影響を受けた電気信号が半導体デバイスDから出力されるので、故障箇所を確実に顕在化できる。つまり、半導体故障解析装置1及び半導体故障解析方法は、半導体デバイスDの故障箇所を良好に検出することができる。
【0107】
半導体故障解析装置1及び半導体故障解析方法では、半導体デバイスDに対して両側に配置された第1光学系12及び第2光学系22による光スポットの大きさを互いに異ならせる。その結果、第1光学系12及び第2光学系22の光軸が一致しない場合であっても光照射領域は重複した状態を保つことができる。
【0108】
具体的な例示を挙げて、解析装置1及び解析方法の作用効果を詳細に説明する。例えば、第1の例として、図2(a)に示すように、第1照射領域A1が第1経路R1から外れることなく移動すると共に、第2照射領域A2も第2経路R2から外れることなく移動する場合を挙げる。第2の例として、図2(b)及び図2(c)に示すように、第1照射領域A1は第1経路R1から外れることなく移動するが、第2照射領域A2が第2経路R2から外れながら移動する場合を挙げる。
【0109】
図2(b)に示すように、第1照射領域A1と第2照射領域A2とが互いに一致する場合について説明する。第2照射領域A2が第2経路R2から外れながら移動すると、重複領域AL12と、第1非重複領域AL1と、第2非重複領域AL2と、が生じる。重複領域AL12は、第1照射光L1と第2照射光L2とが照射される。第1非重複領域AL1は、第1照射光L1のみが照射される。第2非重複領域AL2は、第2照射光L2のみが照射される。第2照射領域A2が第2経路R2から外れながら移動する状態と理想的な場合(図2(a)参照)と、を比較する。理想的な場合とは、第1照射領域A1と第2照射領域A2とが互いに一致した状態で移動する場合をいう。第2照射領域A2が第2経路R2から外れながら移動する状態では、重複領域AL12の面積は、第1非重複領域AL1の面積だけ減少する。故障箇所の顕在化は、重複領域AL12においてなされる。従って、第1非重複領域AL1によって故障箇所の顕在化が可能な領域が減少してしまう。
【0110】
図2(c)に示すように、第1照射領域A1に対して第2照射領域A2が大きい場合について説明する。第1照射領域A1が第1経路R1から外れながら移動した場合であっても、第2照射領域A2は、第1照射領域A1に常に重複する。つまり、第2照射領域A2に対して第1照射領域A1が大きい場合には、図2(a)のように理想的な動作によって得られる重複領域AL12と同じ面積を有する重複領域AL12が得られる。従って、照射光の位置が経路から外れたとしても、故障箇所を顕在化できる重複領域AL12は、減らない。
【0111】
半導体故障解析装置1において、第2照射領域A2の大きさは、第1照射領域A1の大きさより小さい。計算機40は、第2解析部20に対して制御信号を出力する。この構成によれば、第2照射領域A2の全体を第1照射領域A1に対して確実に重複させることができる。
【0112】
半導体故障解析装置1の第1解析部10は、第1経路R1に沿って第1照射領域A1が移動するように、第1照射光L1を反射する第1光走査部12sを有する。第2解析部20は、第2経路R2に沿って第2照射領域A2が移動するように、第2照射光L2を反射する第2光走査部22sを有する。計算機40は、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとに基づく比率を利用して、第1光走査部12s及び第2光走査部22sを制御する。この構成によっても、第1照射領域A1の全体を第2照射領域A2に対して確実に重複させることができる。
【0113】
半導体故障解析装置1の第1解析部10は、第1照射光L1を発生させる第1照射光光源11と、第1照射光L1を第1照射光光源11から第1主面D1に導く第1対物レンズ12aと、を有する。第2解析部20は、第2照射光L2を発生させる第2照射光光源21と、第2照射光L2を第2照射光光源21から第2主面D2に導く第2対物レンズ22aと、を有する。第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとの相違は、第1対物レンズ12aの光学特性である倍率と第2対物レンズ22aの光学特性である倍率との相違によって生じる。この構成によれば、対物レンズの倍率の選択によって、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとの相違を生じさせることができる。
【0114】
<第2実施形態の半導体故障解析装置>
第2実施形態に係る半導体故障解析装置は、EOP解析又はEOFM解析(Electro-OpticalFrequency Mapping)と称される光プロービング技術により故障箇所を特定する。EOFM解析を利用して、光学プローブ熱反射率イメージマッピング(optical probed thermo-reflectance image mapping:OPTIM)を行ってもよい。光プロービング技術は、目的とした周波数で動作している回路の部位を特定する。光プロービング技術では、光源から照射された光を集積回路に照射する。集積回路で反射された光は、光センサにより検出される。光センサから出力される検出信号から、目的とする周波数を有する信号成分を抽出する。抽出した信号成分の振幅エネルギーは、時間的な経過として表示される。抽出した信号成分の振幅エネルギーは、2次元のマップとして表示される。
【0115】
光プロービング技術は、駆動中の半導体デバイスDからの光強度の変調に基づいて、半導体デバイスDの故障を解析する。半導体故障解析装置は、所定の変調周波数を有する電気信号を半導体デバイスDに印加する。変調周波数は、熱源の位置を特定する解析に用いられる刺激信号の周波数よりも高いことが多い。例えば、半導体故障解析装置は、刺激信号として半導体デバイスDの駆動信号と同等の周波数の駆動電流を与える。
【0116】
光プロービング技術は、駆動中の半導体デバイスDからの光強度の変調に基づくので、照射光に応じて発生する反射光を解析に利用する。解析装置1Aが取得する情報は、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射されているときに半導体デバイスDが出力する電気信号ではない。解析装置1Aが取得する情報は、第1応答光H1であると共に第2応答光H2である。第1応答光H1は、第1照射光L1が第1主面D1において反射することによって生じる。第2応答光H2は、第2照射光L2が第2主面D2において反射することによって生じる。
【0117】
図8に示すように、第2実施形態の半導体故障解析装置(以下、「解析装置1A」と称する)は、第1解析部10Aと、第2解析部20Aと、デバイス配置部30と、計算機40と、刺激信号印加部60と、を含む。第2実施形態の解析装置1Aは、第1実施形態の解析装置1が有する電気信号取得部61を備えない。
【0118】
第1解析部10Aは、第1照射光光源11Aと、第1光学系12Aと、第1XYZステージ13Aと、第1カメラ14Aと、を有する。第1照射光光源11Aは、EOP解析又はEOFM解析のための照射光として、非コヒーレント光を発生する。第1照射光光源11Aが出力する光は、例えば530nm以上の波長帯の光である。第1照射光光源11Aが出力する光は、好ましくは1064nm以上の波長帯の光である。第1光学系12Aは、第1実施形態の第1光学系12と同様である。第1光学系12Aの第1対物レンズ12aの倍率は、第2光学系22Aの第2対物レンズ22aの倍率より低い。第1カメラ14Aは、第1主面D1からの第1応答光H1を検出可能な構成を有する。
【0119】
第2解析部20Aは、第2照射光光源21Aと、第2光学系22Aと、第2カメラ24Aと、を有する。第2照射光光源21Aも、第1照射光光源11Aと同様に、非コヒーレント光を発生する。第2光学系22Aは、第1実施形態の第2光学系22と同様である。第2光学系22Aの第2対物レンズ22aの倍率は、第1光学系12Aの第1対物レンズ12aの倍率より高い。第2カメラ24Aは、第2主面D2からの第2応答光H2を検出可能な構成を有する。
【0120】
第2実施形態の解析装置1Aは、第1対物レンズ12aの倍率と第2対物レンズ22aの倍率とが互いに異なっている。解析装置1と同様に、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとは互いに異なっている(図2参照)。従って、第2照射光L2が予定された第2経路R2からずれたとしても、重複領域ALは狭くならない。従って、第2実施形態の解析装置1Aは、故障箇所を確実に顕在化することができる。
【0121】
第1解析部10A及び第2解析部20Aの何れか一方は、故障箇所を示すマークを付す機能を有してもよい。第1解析部10A及び第2解析部20Aの何れか一方は、第1実施形態のマーキング光源26を有してもよい。
【0122】
<第2実施形態の半導体故障解析>
次に、解析装置1Aの解析処理について説明する。図9は、解析装置1Aを用いた解析処理の主要な工程を示すフロー図である。
【0123】
<設定工程S100A>
第2実施形態の設定工程S100Aは、第1実施形態の設定工程S100と同じである。設定工程S100Aでは、第2対物レンズ22aの倍率が第1対物レンズ12aの倍率よりも大きくなるように、レンズを選択する。
【0124】
<アライメント工程S110A>
第2実施形態のアライメント工程S110Aは、第1実施形態のアライメント工程S110と同じである。
【0125】
<解析工程S120A>
次に、半導体デバイスDの故障箇所を特定する(S120A)。第1解析部10Aは、第1照射光光源11Aが発生する第1照射光L1を第1光走査部12sによって半導体デバイスDの第1主面D1に照射する。第2解析部20Aは、第2照射光光源21Aが発生する第2照射光L2を第2光走査部23sによって半導体デバイスDの第2主面D2に照射する。計算機40は、第1照射領域A1と第2照射領域A2とが互いに重複した状態を維持しながら、第2経路R2に沿って第2照射領域A2が移動するように第2光走査部22sを制御する。第1解析部10Aは、第2解析部20Aから出力される制御信号に従って、第1照射領域A1と第2照射領域A2とが重複した状態を維持しながら、第1経路R1に沿って第1照射領域A1が移動するように第1光走査部12sが動作する。
【0126】
第2照射光L2は、半導体デバイスDの第2主面D2で反射する。反射した光は、第2応答光H2として第2解析部20Aに入射する。第2応答光H2は、第2カメラ24Aによって検出される。第2カメラ24Aは、第2応答光H2に基づく情報を計算機40に出力する。第1照射光L1についても、第2照射光L2と同様の過程を経て、第1応答光H1に基づく情報として最終的に計算機40に出力される。
【0127】
次に、刺激信号印加部60は、半導体デバイスDに対してテストパターンなどの刺激信号を出力する。第1解析部10Aは、刺激信号を受けた半導体デバイスDに対して第1照射光L1を照射する。第2解析部20Aは、刺激信号を受けた半導体デバイスDに対して第2照射光L2を照射する。この動作では、ユーザが選択した照射位置に第1照射光L1及び第2照射光L2が照射される。ユーザは、表示部41dに表示された光学反射像を見ながら、入力部41eを用いて照射位置を計算機40に入力してよい。第1カメラ14Aは、刺激信号を受けている半導体デバイスDからの第1応答光H1を検出する。第2カメラ24Aは、刺激信号を受けている半導体デバイスDからの第2応答光H2を検出する。第1カメラ14Aは、計算機40に第1応答光Hに基づく情報を計算機40に出力する。第2カメラ24Aは、計算機40に第2応答光H2に基づく情報を計算機40に出力する。
【0128】
刺激信号を受けている半導体デバイスDでは、半導体デバイスDを構成する素子が動作している。素子が動作している半導体デバイスDからの応答光は、素子に動作に伴って変調されている。
【0129】
計算機40の画像処理部41hは、第1カメラ14A及び第2カメラ24Aが出力した検出信号を利用して、信号波形を生成する。画像処理部41hは、表示部41dに信号波形を表示する。計算機40は、光学反射像に基づき照射位置を変えながら、検出信号を取得すると共に信号波形を生成する。生成した信号波形を利用すると、故障個所を特定することができる。
【0130】
画像処理部41hは、電気光学周波数マッピング画像(EOFM画像)を生成してもよい。EOFM画像とは、テストパターンなどの刺激信号と検出信号との位相差情報を、照射位置に関連づけて画像化したものである。位相差情報は、検出信号から抽出した交流成分から求めることができる。交流成分と同時に抽出した直流成分を照射位置に関連づけて画像化することにより光学反射像を得ることができる。光学反射像にEOFM画像を重畳させた重畳画像は、解析画像として用いることができる。
【0131】
<マーキング工程S130A>
第1実施形態のマーキング工程S130Aは、第1実施形態のマーキング工程S130Aと同じである。
【0132】
<作用効果>
第2実施形態の解析装置1Aによっても、第1実施形態の解析装置1と同様の作用効果を得ることができる。第2実施形態の解析装置1Aも、故障箇所を確実に顕在化させる重複領域AL12の減少を抑制する。その結果、第2実施形態の解析装置1Aは、半導体デバイスDの故障箇所を良好に検出する。
【0133】
本発明は、上記の第1実施形態の半導体故障解析装置1及び第2実施形態の半導体故障解析装置1Aに限定されない。第1実施形態の説明で述べたように、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを異ならせる構成は、第1対物レンズ12a及び第2対物レンズ22aの倍率の相違である必要はない。
【0134】
対物レンズの倍率を異ならせる構成は、光学部材の光学特性を異ならせるものであった。換言すると、第1解析部10を構成する光学部材と、第2解析部20を構成する光学部材と、が互いに異なっているとも言える。「部材が異なる」には、第1実施形態のように光学特性が異なるという場合もあり得る。「部材が異なる」には、第1解析部10が有する光学部材の構成と第2解析部20が有する光学部材の構成とが異なる場合もあり得る。このような構成を変形例1~4として説明する。
【0135】
第1解析部10及び第2解析部20を構成する光学部材の光学特性が互いに同じであっても、光学部材の配置を異ならせることによって第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを異ならせることも可能である。このような構成を変形例5~7として説明する。
【0136】
第1解析部10及び第2解析部20を構成する光学部材の光学特性および配置が互いに同じであっても、第1経路R1及び第2経路R2を互いに異ならせることによって、第1照射領域A1の大きさと第2照射領域A2の大きさとを異ならせることも可能である。このような構成を変形例8として説明する。
【0137】
<変形例1>
図10は、変形例1の半導体故障解析装置1Bの第1光学系12B及び第2光学系22Bを示す。変形例1では、光学部品の光学特性が互いに異なっている。異なっている光学部品は、第1対物レンズ12aB及び第2対物レンズ22aBである。異なっている光学特性は、開口数(NA)である。例えば、第1実施形態と同様に、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすると仮定する。この場合には、第2対物レンズ22aBの開口数(NA)を第1対物レンズ12aBの開口数(NA)より小さくすればよい。このような光学特性の相違によれば、第1対物レンズ12aBから第1主面D1までの距離K1と第2対物レンズ22aBから第2主面D2までの距離K2とを同じにした状態で、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0138】
第1対物レンズ12aB及び第2対物レンズ22aBの開口数(NA)に代えて、第1照射光光源11及び第2照射光光源21の開口数(NA)を異ならせてもよい。
【0139】
<変形例2>
図11は、変形例2の半導体故障解析装置1Cの第1光学系12C及び第2光学系22Cを示す。変形例2では、光学部品の構成が互いに異なっている。異なっている光学部品は、第1対物レンズ12aC及び第2対物レンズ22aCである。第1対物レンズ12aCは、レンズ12a1と、第1瞳12a2と、を有する。第1瞳12a2は、例えば、貫通穴を有する円板部材である。第1瞳12a2は、レンズ12a1に入る第1照射光L1を絞る。第2対物レンズ22aCは、レンズ22a1と、第2瞳22a2と、を有する。第2瞳22a2も、貫通穴を有する円板部材である。第2瞳22a2は、レンズ22a1に入る第2照射光L2を絞る。例えば、第1実施形態と同様に、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすると仮定する。この場合には、第2瞳22a2の貫通穴の内径(開口径)を、第1瞳12a2の貫通穴の内径(開口径)よりも小さくすればよい。このような構成の相違によっても、変形例1と同様に、第1対物レンズ12aCから第1主面D1までの距離K1と第2対物レンズ22aCから第2主面D2までの距離K2とを同じにした状態で、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0140】
<変形例3>
図12は、変形例3の半導体故障解析装置1Dの第1光学系12D及び第2光学系22Dを示す。変形例3では、光学部品の構成が互いに異なっている。異なっている光学部品は、第1絞り11t及び第2絞り21tである。第1絞り11tは、第1照射光光源11から第1光走査部12sまでの間の光路上に配置されている。第1絞り11tは、貫通穴を有する円板部材である。第2絞り21tは、第2照射光光源21から第2光走査部22sまでの間の光路上に配置されている。第2絞り21tも、貫通穴を有する円板部材である。例えば、第1実施形態と同様に、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすると仮定する。この場合には、第2絞り21tの貫通穴の内径(開口径)を、第1絞り11tの貫通穴の内径(開口径)よりも小さくすればよい。この構成によれば、第1絞り11tによって絞られた第1照射光L1が第1対物レンズ12aDの第1瞳12a2に入る。第2絞り21tによって絞られた第2照射光L2が第2対物レンズ22aDの第2瞳22a2に入る。このような構成の相違によっても、変形例1と同様に、第1対物レンズ12aDから第1主面D1までの距離K1と第2対物レンズ22aDから第2主面D2までの距離K2とを同じにした状態で、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0141】
<変形例4>
図13は、変形例4の半導体故障解析装置1Eの第1光学系12E及び第2光学系22Eを示す。変形例3では、光学部品の構成が互いに異なっている。異なっている光学部品は、第1ファイバ12r及び第2ファイバ22rである。第1光学系12Eは、第1対物レンズ12aに代えて第1ファイバ12rを有する。第1ファイバ12rは、第1照射光光源11から第1光走査部12sに第1照射光L1を導く。第1ファイバ12rから出射された第1照射光L1の光径は、第1ファイバ12rのコア径に対応する。第1ファイバ12rから出射された第1照射光L1は、第1ファイバ12rのコア径に対応する光径を維持したまま、第1光走査部12sに入射する。第1光走査部12sに入射した第1照射光L1は、第1主面D1に至る。第2光学系22Eも、第2対物レンズ22aに代えて第2ファイバ22rを有する。第2ファイバ22rから出射された第2照射光L2は、第2ファイバ22rのコア径に対応する光径を維持したまま、第2光走査部22sに入射する。第2光走査部22sに入射した第2照射光L2は、第2主面D2に至る。第1ファイバ12rはマルチモードファイバであるのに対し、第2ファイバ22rはシングルモードファイバである点で、相違している。マルチモードファイバのコア径は、シングルモードファイバのコア径よりも大きい。従って、マルチモードファイバである第1ファイバ12rから照射される第1照射光L1の光径は、シングルモードファイバである第2ファイバ22rから照射される第2照射光L2の光径より、大きくなる。このような構成の相違によっても、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0142】
そのほかの例示として、例えば、大きい照射領域を形成する光学系は、螺旋偏光フィルタを備えていてもよい。この場合、光学系から半導体デバイスDに照射される照射光は、いわゆるベクトルビームになる。このような構成によれば、照射光が多重リング状になるので、照射領域を大きくすることができる。
【0143】
以下、光学部材の配置が互いに異なっている変形例5~7について説明する。
【0144】
<変形例5>
図14は、変形例5の半導体故障解析装置1Fの第1光学系12F及び第2光学系22Fを示す。変形例5では、第1光学系12Fが有する光学部品の配置と第2光学系22Fが有する光学部品の配置とが互いに異なっている。配置が異なっている光学部品は、第1対物レンズ12aF及び第2対物レンズ22aFである。第1対物レンズ12aFの光学特性は、第2対物レンズ22aFの光学特性と同じである。第1対物レンズ12aFの倍率は、第2対物レンズ22aFの倍率と同じである。第1対物レンズ12aFの開口数(NA)も、第2対物レンズ22aFの開口数(NA)と同じである。第1対物レンズ12aFの第1焦点距離F1も、第2対物レンズ22aFの第2焦点距離F2と同じである。変形例5では、半導体デバイスDを基準とした第1対物レンズ12aFの位置と第2対物レンズ22aFの位置とが互いに異なっている。具体的には、半導体デバイスDの第1主面D1から第1対物レンズ12aFまでの距離K1と、半導体デバイスDの第2主面D2から第2対物レンズ22aFまでの距離K2とが互いに異なっている。変形例5では、第1対物レンズ12aFの光軸Q12は、第2対物レンズ22aFの光軸Q22と重複する。第1対物レンズ12aFの光軸Q12は、第2対物レンズ22aFの光軸Q22と一致する。例えば、第1実施形態と同様に、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすると仮定する。この場合には、距離K2を距離K1より大きくすればよい。この構成によれば、第1光学系12Fを構成する光学部材と、第2光学系22Fを構成する光学部材と、を共通化した構成であっても、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0145】
<変形例6>
図15は、変形例6の半導体故障解析装置1Gの第1光学系12G及び第2光学系22Gを示す。変形例6では、第1光学系12Gが有する光学部品の配置と第2光学系22Gが有する光学部品の配置とが互いに異なっている。配置が異なっている光学部品は、第1対物レンズ12aG及び第2対物レンズ22aGである。変形例5と同様に、第1対物レンズ12aGの光学特性(倍率、NA、焦点距離)と第2対物レンズ22aGの光学特性(倍率、NA、焦点距離)とは互いに同じであってよい。変形例5では、第1対物レンズ12aFの光軸Q12は、第2対物レンズ22aFの光軸Q22と一致していた。これに対して、変形例6では、第1対物レンズ12aGの光軸Q12は、第2対物レンズ22aGの光軸Q22と一致しない。具体的には、小さい方の照射領域を形成する第2対物レンズ22aGの光軸Q22は、第2主面D2に対して直交する。そうすると、第2照射領域A2の形状は、円である。一方、大きい方の照射領域を形成する第1対物レンズ12aGの光軸Q22は、第1主面D1に対して直交しない。光軸Q22は、第1主面D1の法線に対して傾いている。そうすると、第1照射領域A1の形状は、例えば、円錐を斜めに切断したときに現れる楕円である。この構成によっても、第1光学系12Gを構成する光学部材と、第2光学系22Gを構成する光学部材と、を共通化した構成であっても、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0146】
<変形例7>
図16は、変形例7の半導体故障解析装置1Hの第1光学系12H及び第2光学系22Hを示す。変形例7では、第1光学系12Hが有する光学部品の配置と第2光学系22Hが有する光学部品の配置とが互いに異なっている。第1光学系12Hは、一対の第1ファイバ12ka、12kbを有する。図15では2本の第1ファイバ12ka、12kbを図示している。しかし、第1光学系12Hが有する第1ファイバの数は、2本以上であってもよい。第1ファイバの数は、第2ファイバの数より多ければよい。第1光学系12Hは、ファイバの数に対応する第1照射光光源11a、11bを有する。第1光学系12Hは、1台の光源から、複数のファイバに照射光を供給するものであってもよい。第1ファイバ12kaの光軸は、第1ファイバ12kbの光軸に対して並行にずれている。第1照射光光源11aが発生すると共に第1ファイバ12kaから照射された第1照射光L1aは、第1照射領域A1aを形成する。第1照射光光源11bが発生すると共に第1ファイバ12kbから照射された第1照射光L1bは、第1照射領域A1bを形成する。第1照射領域A1aは、第1照射領域A1bの一部分に重複している。その結果、第1照射領域A1a、A1bによって、第1照射領域A1が形成される。第2光学系22Hは、1本の第2ファイバ22kを有する。変形例7の第1ファイバ12ka、12kb及び第2ファイバ22kは、いずれも同じ光学特性を有する。例えば、第1ファイバ12ka、12kb及び第2ファイバ22kは、シングルモードファイバである。このような構成によると、大きい方の照射領域を形成する光学系が複数の光ファイバを有しており、それぞれの光ファイバが照射する照射光によって、大きい照射領域を形成できる。従って、この構成によっても、第1光学系12Hを構成する光学部材と、第2光学系22Hを構成する光学部材と、を共通化した構成であっても、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【0147】
以下、第1経路R1と第2経路R2とが互いに異なっている変形例8について説明する。
【0148】
<変形例8>
図17は、変形例8の半導体故障解析装置における第1経路R1と第2経路R2とを示す。変形例8では、経路のみが異なるだけである。変形例8では、第1光学系を構成する光学部材と第2光学系を構成する光学部材とは共通である。変形例8では、光学部品の配置も共通である。変形例8は、第1光学系及び第2光学系を制御する計算機40の制御によって、実現される。第1実施形態のように、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくする場合を例示する。第2照射光L2の照射スポットL2sの大きさは、第1照射光L1の照射スポットL1sの大きさと同じであると仮定する。いま、図17(a)に示すように照射スポットL2sは、第2経路R2に沿って直線状に移動させる。第2経路R2は、直線である。これに対して、照射スポットL1sは、第2経路R2を交差しながら進行する第1経路R1に沿って移動させる。より詳細には、第1経路R1は、部分R1aと、部分R1bとを、含む。部分R1aは、第2経路R2の進行方向に対して直交する方向にずれた状態で第2経路R2の進行方向に対して並行に進む。部分R1bは、第2経路R2に対して直交する方向に進む。図17(b)に示すように、照射スポットL1sよりも大きい面積を有する第1照射領域A1が形成される。変形例8の第1照射領域A1は、照射領域を疑似的に拡大したものである。このような経路の設定は、例えば、一方の経路長さを他方の経路長さよりも長くするものとも言える。このような経路の設定は、一方の走査速度を他方の走査速度よりも高速に設定するものとも言える。このような動作によれば、第1光学系を構成する光学部材と、第2光学系を構成する光学部材と、を共通化した構成であっても、第2照射領域A2の大きさを第1照射領域A1の大きさより小さくすることができる。
【符号の説明】
【0149】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H…半導体故障解析装置、10,10A…第1解析部、11,11A,11a,11b…第1照射光光源(第1光源)、20,20A…第2解析部、21,21A…第2照射光光源(第2光源)、61…電気信号取得部、A1,A1a,A1b…第1照射領域、A2…第2照射領域、D…半導体デバイス、D1…第1主面、D2…第2主面、H1…第1応答光、H2…第2応答光、L1,L1a,L1b…第1照射光、L2…第2照射光、R1…第1経路、R2…第2経路、S100,S100A…設定工程、S120…解析工程

【要約】
半導体故障解析装置1は、半導体デバイスDの第1主面D1に設定された第1経路R1に沿って第1照射光L1を照射する第1解析部10と、第1主面D1の裏側である第2主面D2に設定された第2経路R2に沿って第2照射光L2を照射する第2解析部20と、第1照射光L1及び第2照射光L2が照射されている半導体デバイスDが出力する電気信号を受ける電気信号取得部61と、第2解析部20を制御する計算機40と、を備える。第1照射光L1によって第1主面D1に形成される第1照射領域A1の大きさは、第2照射光L2によって第2主面D2に形成される第2照射領域A2の大きさと異なる。計算機40は、第2照射領域A2の全体が、第1照射領域A1に重複した状態を維持しながら、第1照射光L1及び第2照射光L2を照射させる。

図1
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図17