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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】屋上緑化システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
A01G7/00 602B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022126953
(22)【出願日】2022-08-09
【審査請求日】2022-08-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【弁理士】
【氏名又は名称】冨所 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 幹雄
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-185247(JP,A)
【文献】特開2007-097522(JP,A)
【文献】特開2006-136219(JP,A)
【文献】中国実用新案第205063197(CN,U)
【文献】特開2003-235355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00 - 7/06
A01G 9/00 - 9/08
A01G 20/00 - 20/47
A01G 24/44 - 24/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の屋上に構築される屋上緑化システムであって、
屋上の基盤面に敷設される排水保護マットと、
前記排水保護マット上に、前記排水保護マットの外縁に沿って配置された複数の区画部材と、
前記排水保護マットの外縁に取り付けられ、前記区画部材の下方に設けられた複数の排水部材と、
前記複数の区画部材で区画された領域内に配置された、緑化植物を有する複数の緑化マットと、
を備え、
前記排水部材は、排水部を備え、
前記排水部は、
重力方向上方に延びる一対の起立部と、
前記重力方向に直交する直交平面に沿って延びて前記一対の起立部の下端を繋ぐ底部と、
を備え、
前記排水部の天面は、前記一対の起立部の上端が繋がらずに開放された構成を有し、
前記一対の起立部の上端は、それぞれ、前記区画部材の下面と接触して前記区画部材を支持し、
前記排水部を通って、前記排水保護マットから外部へ水が排出される
ことを特徴とする、屋上緑化システム。
【請求項2】
前記一対の起立部のうち、一方の前記起立部の上端と、他方の前記起立部の上端と、は異なる前記区画部材の下面と接触している
ことを特徴とする、請求項1に記載の屋上緑化システム。
【請求項3】
前記区画部材が隣接する隣接方向における前記区画部材の長さをRとすると、前記排水部の幅方向における前記底部の長さSは、0.05R≦S≦0.6Rである
ことを特徴とする、請求項1に記載の屋上緑化システム。
【請求項4】
前記排水部材は、さらに、前記排水保護マットの下に配置されて前記基盤面に接地する接地部を備え、
前記接地部は、前記底部と繋がっている
ことを特徴とする、請求項1乃3のいずれか1つに記載の屋上緑化システム。
【請求項5】
前記一対の起立部は、第1起立部と、第2起立部と、から構成され、
前記第1起立部の高さと、前記排水部の幅方向における前記接地部の一端から前記第1起立部の下端までの前記幅方向における長さと、が略一致し、
前記第2起立部の高さと、前記幅方向における前記接地部の他端から前記第2起立部の下端までの前記幅方向における長さと、が略一致する
ことを特徴とする、請求項4に記載の屋上緑化システム。
【請求項6】
前記排水部が延びる延出方向における前記排水部材の長さをUとしたとき、前記延出方向における前記排水部の長さVは、0.2U≦V≦0.8Uである
ことを特徴とする、請求項4に記載の屋上緑化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上の緑化を行うために用いられる屋上緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、癒しの空間をつくるために、屋外での緑化が行われている。特に、建物の屋上を緑化することにより、屋上床面からの熱の吸収・放出を緩和することができるため、癒しの空間としての作用のほか、(1)ヒートアイランド現象を抑制することができるとともに、(2)階下の室温の変動を抑制することができ、冷暖房エネルギーを削減して温室効果ガスの削減を図ることができる。そのため、建物の屋上を緑化する屋上緑化システムが種々提案されている。
【0003】
屋上緑化システムに用いられる緑化植物の育成を維持するためには、降雨や潅水などによる水分の供給が必要となる。しかしながら、水分が必要以上に供給されると、雑草が生えて緑化植物が十分に生育できなくなる恐れがあるほか、水分過多により緑化植物が痛んで枯れてしまう恐れがある。そこで、過剰な水分を外部へ排水するための排水部が設けられた屋上緑化システムが多く採用されている。
【0004】
排水部を備えた屋上緑化システムとして、特許文献1には、建物の屋上の基盤面に、底面に排水切欠部が形成された煉瓦を複数並べて長方形状に区画したうえで、該区画領域内の基盤面上に、排水マットと、防根シートと、排水調整マットと、緑化基盤と、客土層と、がこの順で積層され、客土層に多年草植物が植生された、緑化構造物が開示されている。緑化構造物に供給される水分が、排水調整マット及び防根シートの保水能力を超えた場合には、余剰水分は、防根シートから排水マットに流下し、基盤面に沿って排水マット内を移動して、排水切欠部から屋上緑化システムの外部へと排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-019431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている、煉瓦に排水切欠き部を設ける構成によれば、排水切欠き部によって煉瓦の剛性が低下するため、重力による歪みなどで煉瓦が瓦解して排水切欠き部が塞がれ、排水が十分に行えなくなる恐れがある。かかる場合には、煉瓦の修繕・置換や、排水切欠き部を塞ぐ煉瓦の除去等、メンテナンスの手間が煩雑となる。
【0007】
そこで、本発明は、排水部を備え、煉瓦の瓦解で該排水部が塞がれることを抑制した、屋上緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の屋上緑化システムは、(1)建築構造物の屋上に構築される屋上緑化システムであって、屋上の基盤面に敷設される排水保護マットと、前記排水保護マット上に、前記排水保護マットの外縁に沿って配置された複数の区画部材と、前記排水保護マットの外縁に取り付けられ、前記区画部材の下方に設けられた複数の排水部材と、前記複数の区画部材で区画された領域内に配置された、緑化植物を有する複数の緑化マットと、を備え、前記排水部材は、排水部を備え、前記排水部を通って、前記排水保護マットから外部へ水が排出されることを特徴とする。
【0009】
(2)前記排水部は、重力方向上方に延びる一対の起立部と、前記重力方向に直交する直交平面に沿って延びて前記一対の起立部の下端を繋ぐ底部と、を備えることを特徴とする、上記(1)に記載の屋上緑化システム。
【0010】
(3)前記一対の起立部の上端は、それぞれ、前記区画部材の下面と接触している
ことを特徴とする、上記(2)に記載の屋上緑化システム。
【0011】
(4)前記一対の起立部のうち、一方の前記起立部の上端と、他方の前記起立部の上端と、は異なる前記区画部材の下面と接触していることを特徴とする、上記(3)に記載の屋上緑化システム。
【0012】
(5)前記区画部材が隣接する隣接方向における前記区画部材の長さをRとすると、前記排水部の幅方向における前記底部の長さSは、0.05R≦S≦0.6Rであることを特徴とする、上記(3)に記載の屋上緑化システム。
【0013】
(6)前記排水部材は、さらに、前記排水保護マットの下に配置されて前記基盤面に接地する接地部を備え、前記接地部は、前記底部と繋がっていることを特徴とする、上記(2)乃至(5)のいずれか1つに記載の屋上緑化システム。
【0014】
(7)前記一対の起立部は、第1起立部と、第2起立部と、から構成され、前記第1起立部の高さと、前記排水部の幅方向における前記接地部の一端から前記第1起立部の下端までの前記幅方向における長さと、が略一致し、前記第2起立部の高さと、前記幅方向における前記接地部の他端から前記第2起立部の下端までの前記幅方向における長さと、が略一致することを特徴とする、上記(6)に記載の屋上緑化システム。
【0015】
(8)前記排水部が延びる延出方向における前記排水部材の長さをUとしたとき、前記延出方向における前記排水部の長さVは、0.2U≦V≦0.8Uであることを特徴とする、上記(6)に記載の屋上緑化システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、煉瓦の瓦解で排水部が塞がれることが抑制され、煉瓦の瓦解に起因したメンテナンスの手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】屋上緑化システム1の一実施形態を示す斜視図である。
図2】屋上緑化システムを図1に示すT方向から見た側面図である。
図3】緑化マット2の構成図である。
図4図1のA-A矢視図である。
図5】排水金具5の構成図である。
図6図5に示す排水金具5の平面図である。
図7】排水金具5の製造に用いられる長方形状の金属板6を示す。
図8】屋上緑化システム1の施工方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<屋上緑化システム1の構成>
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、屋上緑化システム1の一実施形態を示す斜視図である。図2は、屋上緑化システムを図1に示すT方向から見た側面図である。図1及び図2を参照して、本実施形態における屋上緑化システム1は、複数の緑化マット2と、複数の煉瓦3(請求項1における区画部材に相当)と、排水保護マット4と、を備える。屋上床100(以下、基盤面100とも称す)上に配置された長方形状の排水保護マット4上に、排水保護マット4の外縁に沿って複数の煉瓦3が並べて固定されている。この複数の煉瓦3で区画された領域に、複数の緑化マット2が隣接して嵌め入れられている。
【0019】
排水保護マット4の外縁には、予め溝部(不図示)が等間隔に設けられており、この溝部に、排水金具5(請求項1における排水部材に相当)がはめ込まれている。排水金具5の上端(後述する起立部511の上端)は、煉瓦3の下面に接触するように設定されている。すなわち、排水金具5は、煉瓦3の直下に、排水保護マット4の外縁に沿って等間隔に配置されている。なお、「略一致」とは、完全に一致する場合のみならず、製造上の誤差等も含むことを意味する。
【0020】
排水保護マット4の外縁に沿って隣り合う排水金具5の離隔距離Bは、特に限定されないが、例えば、各煉瓦3の幅方向(煉瓦3が隣接する方向)の長さをRとすると(図2参照)、5Rを基準として3R≦B≦5Rの範囲に設定することができる。
【0021】
<緑化マット2の構成>
緑化マット2の構成について、図3を参照して説明する。図3は、緑化マット2の構成図である。緑化マット2は、苔植物21と、不織布マット22と、を備える。苔植物21の下層に不織布マット22を設けることにより、排水性が高まるため、苔植物21から透過した水の過度な貯留を抑制できる。これにより、雑草の発芽・育成が阻害され、雑草を処理するメンテナンスの手間を軽減させることができる。
【0022】
苔植物21と不織布マット22とを予め一体化させておくことで、屋上緑化システム1の施工の際の手間を軽減することができる。苔植物21と不織布マット22とを一体化させる方法として、例えば、苔植物21と不織布マット22とをネットで縛って固定する方法を採用することができる。なお、苔植物21と不織布マット22とを一体化させる方法は、これに限られず、種々の方法を採用することができる。
【0023】
本実施形態では、緑化植物として、苔植物21を用いている。しかしながら、これに限られず、その他の緑化植物(例えば、芝草など)を用いることもできる。ただし、緑化植物として、苔植物21を用いることが好ましい。この点について、以下に説明する。
通常、緑化植物を育成する場合には、緑化植物を植栽する土壌層を形成する必要がある。土壌層を形成することにより、緑化植物が根付いて倒れにくくなるとともに、土壌層に蓄えられた養分や水を緑化植物が吸収でき、良好に生育しやすくなる。しかしながら、屋上の積載荷重は制限されているため、軽量化を図るべく、土壌層を用いずに緑化植物を生育することが好ましい。この点、苔植物21は、通導組織としての根がなく、空気中から水分や養分を吸収して生育する。そのため、緑化植物として苔植物21を用いる場合、土壌層が不要となり、軽量化の観点から好ましい。
また、土壌層を形成する場合、緑化植物を良好に生育させるために、施肥や潅水などのメンテナンスを頻繁に行う必要があり、手間が煩雑となる。一方、緑化植物として苔植物21を用いる場合、土壌層が不要となるため施肥を行う必要がなく、また、空気中から水を吸収できるため潅水を行う必要がない。これにより、メンテナンスの頻度が大幅に下がり、手間を軽減できるほか、管理コストも抑えることができる。
【0024】
<排水保護マット4の構成>
図4は、図1のA-A矢視図である。図4を参照して、苔植物21に(降雨などで)供給された余分な水分は、緑化マット2から排水保護マット4へと流下し、建物の屋上の基盤面100に沿って、排水保護マット4内を移動し、排水保護マット4の外縁に設けられた排水金具5から外部へと排水される。排水保護マット4の材質としては、ポリプロピレンを好適に用いることができる。
【0025】
本実施形態では、排水保護マット4は長方形状を呈するが、排水保護マット4の形状はこれに限られず、三角形状やひし形状など、種々の形状を採用することができる。
【0026】
<排水金具5の構成>
図5は、排水金具5の構成図である。図6は、図5に示す排水金具5の平面図である。図5及び図6を参照して、排水金具5は、排水部51と、接地部52と、を備える。図5及び図6において、X軸方向は、排水部51が延びる延出方向に相当し、Y軸方向は、排水部51の幅方向に相当し、Z軸方向は、重力方向に相当し、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する。排水金具5の材質としては、ステンレスを用いることができるが、これに限られず、錆びにくい金属であれば排水金具5として用いることができる。
【0027】
排水部51は、緑化マット2から排水保護マット4へと流下した水を、図5に示す白抜き矢印の方向(図1において、屋上緑化システム1の外部へ向かう方向に相当)へと通水させる。排水部51は、Z軸方向に延びる一対の起立部511と、XY平面に沿って延びて起立部511の下端を繋ぐ底部512と、を備える。接地部52は長方形状であり、排水部51とX軸方向に並ぶように、底部512と略面一に繋がって形成されており、XY平面に沿って延びる。上述の通り、排水保護マット4の外縁には、予め溝部(不図示)が形成されている。接地部52を排水保護マット4の下に差し込むとともに、該溝部に排水部51を嵌入することで、排水金具5が排水保護マット4に取り付けられる。排水保護マット4に取り付けられた状態において、接地部52が基盤面100に接地しており、排水部51を介して、緑化マット2に供給された雨水などの余分な水が排水保護マット4から外部へと排出される。
【0028】
特許文献1に示すような、底面に排水切欠き部が形成された煉瓦を用いる場合、排水切欠き部によって煉瓦の剛性が低下するため、重力による歪みなどで煉瓦が瓦解して排水切欠き部が塞がれ、排水が十分に行えなくなる恐れがある。一方、排水保護マット4に排水金具5を取り付けて煉瓦3の下方に排水部51を設けることにより、煉瓦3に穴や切欠きを形成する必要がないため、煉瓦3が瓦解しにくくなり、排水部51が塞がれにくくなる。これにより、煉瓦3の瓦解に起因するメンテナンスの手間を軽減することができる。
【0029】
また、特許文献1に示すような、底面に排水切欠き部が形成された煉瓦を用いる場合、煉瓦の剛性低下をできるだけ避けるために、煉瓦の底面の幅方向中央に排水切欠き部を形成する必要がある。これに対し、排水保護マット4に排水金具5を取り付けて煉瓦3の下方に排水部51を設ける構成によれば、任意の位置に排水金具5を設けることができるため、屋上緑化システム1を設計する際の設計自由度を高めることができる。
【0030】
図2及び図4を参照して、起立部511のZ軸方向上端は、煉瓦3の下面に接触している。これにより、排水金具5が、直上にある煉瓦3を下方から支持することができる。そのため、煉瓦3の重みにより排水保護マット4が圧迫され外部への排水機能が低下することを抑制することができ、メンテナンスの手間をさらに軽減することができる。
【0031】
本実施形態では、隣接する煉瓦3にまたがるように、排水金具5を設けている。この配置によれば、排水金具5の各起立部511a、511bが、異なる煉瓦3の下面に接触する。すなわち、排水金具5が、2つの煉瓦3を下方から支持することができる。そのため、煉瓦3の重みにより排水保護マット4が圧迫され外部への排水機能が低下することを、より抑制することができる。
【0032】
図2図5及び図6を参照して、接地部52が基盤面100に接地することにより、排水金具5の接地面積が多くなるため、風雨などによる排水金具5の振動が抑制される。そのため、排水金具5が基盤面100や上方に位置する煉瓦3と衝突することを抑制でき、排水金具5及び煉瓦3の耐用年数をさらに長期化することができる。
【0033】
図2図5及び図6を参照して、各煉瓦3の幅方向(各煉瓦3が隣接する方向)の長さをRとすると、底部512のY軸方向長さ(一対の起立部511のY軸方向の離隔距離)Sは、0.05R≦S≦0.6Rと規定されることが好ましい。底部512のY軸方向長さSを0.05R以上とすると、排水部51の投影面積(X軸方向に見た場合における排水部51の面積)を十分確保することができるため、より多くの水量を排出することができる。底部512のY軸方向長さSを0.6R以下とすることにより、一対の起立部511のY軸方向における離隔距離を十分に狭くすることができるため、煉瓦3をより十分な強度で下方から支持することができ、煉瓦3をより瓦解しにくくすることができる。そのため、底部512のY軸方向長さSは、0.05R≦S≦0.6Rと規定されることが好ましい。また、底部512のY軸方向長さSは、0.1R≦S≦0.4Rと規定されることが、より好ましい。
【0034】
図5及び図6を参照して、X軸方向における排水金具5の長さ(排水金具5の全長)をUとしたとき、X軸方向における排水部51の長さVは、0.2U≦V≦0.8Uとすることが好ましい。X軸方向における排水部51の長さVを0.2U以上とすると、十分なX軸方向長さを有する起立部511を形成することができるため、煉瓦3をより十分な強度で支持することができ、煉瓦3をより瓦解しにくくすることができる。X軸方向における排水部51の長さVを0.8U以下とすると、十分な接地面積を有する接地部52を形成することができるため、風雨などによる排水金具5の振動がさらに抑制され、排水金具5及び煉瓦3の耐用年数をさらにより長期化することができる。そのため、X軸方向における排水部51の長さVは、0.2U≦V≦0.8Uとすることが好ましい。X軸方向における排水部51の長さVは、0.4U≦V≦0.7Uとすることが、より好ましい。
【0035】
<排水金具5の製造方法>
ここで、排水金具5の製造方法について、図7を参照して説明する。図7は、排水金具5の製造に用いられる長方形状の金属板6を示す。まず、一枚の長方形状の金属板6の一対の長辺61における、金属板6の長手方向(図5及び図6のX軸方向に相当)の同じ位置に、金属板6の短手方向(図5及び図6のY軸方向に相当)に沿って、それぞれ同じ長さの切り込み62a、62bを入れる。この切り込み62a、62bの先端から、X軸方向に延びる仮想線(図7に破線で示す)を折り目として、重力方向(図5及び図6のZ軸方向に相当)に折り曲げることによって、図5に示す排水部51及び接地部52を備えた排水金具5を製造することができる。
【0036】
なお、排水金具5の製造方法は、図7を参照した方法に限られず、種々の製造方法(例えば、排水金具5の金型を用いた鋳造等)によって排水金具5を製造することができる。ただし、図7を参照した製造方法によれば、排水金具5を一枚の長方形状の金属板から製造することができるため、排水金具5の製造が容易となる。図7を参照した製造方法で排水金具5を製造する場合、図5及び図6を参照して、起立部511aの高さと、Y軸方向における接地部52の一端から起立部511aの下端までのY軸方向長さと、が略一致し(図7に示す切り込み62aの長さに相当)、起立部511bの高さと、Y軸方向における接地部52の他端から起立部511bの下端までのY軸方向長さと、が略一致(図7に示す切り込み62bの長さに相当)する構成となる。
【0037】
(屋上緑化システム1の施工方法)
上述の実施形態における屋上緑化システム1の施工方法について、図8を参照して説明する。図8は、屋上緑化システム1の施工方法を示す工程図である。まず、基盤面100に排水保護マット4を敷設し、基盤面100と排水保護マット4とを接着させる(S101)。基盤面100と排水保護マット4との接着には、既知の接着剤や接着部材を使用することができる。
【0038】
次に、S101で敷設された排水保護マット4に設けられた溝部に、排水金具5を取り付ける(S102)。上述したように、接地部52を排水保護マット4の下に差し込み、排水部51を溝部にはめ込むことで、排水保護マット4に排水金具5を取り付ける。なお、排水保護マット4の溝部は、排水保護マット4が敷設される前に予め形成してもよく、また、排水保護マット4を敷設した後で形成してもよい。
【0039】
続いて、排水保護マット4の外縁上及び排水金具5の上に、煉瓦3を仮置きする(S103)。
【0040】
仮置きされた煉瓦3で区画された領域内に、予め作られた複数の緑化マット2を敷設し、排水保護マット4と緑化マット2とを接着させる(S104)。基盤面100と排水保護マット4との接着には、既知の接着剤や接着部材を使用することができる。緑化マット2と排水保護マット4との接着に用いられる接着剤や接着部材は、緑化マット2から排水保護マット4への水の移動をなるべく妨げないように配置される。
【0041】
緑化マット2を敷設した後(S104)、S103にて仮置きされた煉瓦3を、排水保護マット4の外縁上及び排水金具5の上に接着させて、煉瓦3を固定する(S105)。煉瓦3の接着には、既知の接着剤や接着部材を使用することができる。
【0042】
以上の工程を経ることによって、屋上緑化システム1を形成することができる。
【0043】
(変形例)
上述の実施形態では、排水金具5が、外縁に沿って等間隔に配置されている。しかしながら、排水金具5の配置はこれに限られず、外縁に沿って隣り合う2つの排水金具5の離隔距離がそれぞれ異なるように、排水金具5を配置してもよく、外縁に沿って隣り合う2つの排水金具5の離隔距離が一部だけ異なるように、排水金具5を配置してもよい。
【0044】
(変形例)
上述の実施形態では、図1及び図4に示すように、排水部51のX軸方向先端が排水保護マット4の外縁に位置するように、排水金具5が取り付けられている。しかしながら、排水金具5の取付位置はこれに限られず、排水部51のX軸方向先端が排水保護マット4の外縁よりも内側に位置するように、排水金具5を取り付けてもよい。この場合、排水金具5が外部から見えにくくなるため、屋上緑化システム1の意匠性をより高めることができる。
【0045】
(変形例)
上述の実施形態では、緑化マット2を敷設する領域を区画するための区画部材として、煉瓦3を使用している。しかしながら、これに限られず、区画部材として、種々の部材を使用することができる。
【0046】
(変形例)
上述の実施形態では、排水部材として排水金具5を使用している。しかしながら、これに限られず、排水部材として、種々の部材を使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 屋上緑化システム 2 緑化マット 3 煉瓦 4 排水保護マット
5 排水金具 6 金属板 21 苔植物 22不織布マット
51 排水部 52 設置部 100 屋上床(基盤面)
511 起立部 512 底部
【要約】
【課題】排水部を備え、煉瓦の瓦解で該排水部が塞がれることを抑制した、屋上緑化システムを提供することを目的とする。
【解決手段】建築構造物の屋上に構築される屋上緑化システム1であって、屋上の基盤面100に敷設される排水保護マット4と、排水保護マット4上に、排水保護マット4の外縁に沿って配置された複数の煉瓦3と、排水保護マット4の外縁に取り付けられ、煉瓦3の下方に設けられた複数の排水金具5と、前記複数の煉瓦3で区画された領域内に配置された、緑化植物を有する複数の緑化マット2と、を備え、排水金具5は、排水部51を備え、排水部51を通って、排水保護マット4から外部へ水が排出されることを特徴とす
る。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8