(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20221205BHJP
H01L 21/208 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/208 Z
(21)【出願番号】P 2019510183
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013444
(87)【国際公開番号】W WO2018181809
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2017073294
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017073295
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】柳生 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-010033(JP,A)
【文献】特開2016-190174(JP,A)
【文献】特開2002-299582(JP,A)
【文献】特開2010-021320(JP,A)
【文献】特開2010-103190(JP,A)
【文献】特開平11-305184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/208
B08B 3/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理剤を含むミストの雰囲気下で該ミストを基体に含浸させる含侵装置を含み、
前記含侵装置が、ミストを滞留させる滞留装置を備え、該滞留装置内で前記ミストに基体を含侵させるように構成されており、さらに、
前記滞留装置の外側に配置され、前記含浸前または含浸後に
前記滞留装置の外側で前記基体を加熱するヒーターを備えることを特徴とする処理システム。
【請求項2】
さらに、使用済みのミストを排出するミスト排出装置を含む請求項
1記載の処理システム。
【請求項3】
さらに、使用済みのミストに任意の方向への流速を付与する流速付与装置を含む請求項1
または2に記載の処理システム。
【請求項4】
さらに、基体を搬送する搬送装置を含
み、前記含侵を、前記基体を搬送しながら行うように構成されている、請求項1~
3のいずれかに記載の処理システム。
【請求項5】
さらに、基体を送給する送り装置を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の処理システム。
【請求項6】
処理剤が成膜用原料である、請求項1~
5のいずれかに記載の処理システム。
【請求項7】
処理剤がエッチング剤である、請求項1~
6のいずれかに記載の処理システム。
【請求項8】
処理剤が化学吸着剤である、請求項1~
7のいずれかに記載の処理システム。
【請求項9】
さらに、基体をガス処理するためのガス処理装置を含む請求項1~
8のいずれかに記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜やエッチングに用いられる処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において、成膜やエッチングに真空装置が用いられており、このような真空装置として、特許文献1には、複数の処理チャンバ―を備えた真空処理装置を開示している。このような真空処理装置は、例えば、内部に搬送手段を具備し、真空雰囲気下で基板が搬送されるように構成されている。しかしながら、このような枚葉式処理チャンバ―内で成膜処理やエッチング処理を行う場合、例えば、成膜処理における膜質やエッチング処理における膜質などの処理結果は、処理開始時の処理チャンバ―内の環境に依存する傾向がある。また、処理開始前に、長時間のアイドリング状態(待機状態)であった処理チャンバ―では、処理開始後数枚の基板については、目標の処理結果が得られないなどの問題が生じる場合があった。このような問題を解決するために、製品用基板の処理に先立って、非製品用基板(ダミー基板)を処理チャンバ―内に導入する必要があった。また、処理チャンバ―内の環境を安定させた後、製品用基板を導入する必要があった。さらに、ダミー基板をどのくらい導入するかは、処理チャンバ―内の環境や、アイドリング状態(待機状態)とされていた時間にも依存する。
【0003】
また、太陽電池の製造等においては、Si基板が用いられていたが、最近では、シリコン薄膜を用いたシリコン薄膜太陽電池が検討されている。そして、シリコン薄膜太陽電池は、使用するシリコンの量が少ないこと等から低コスト化が見込まれており、特に長尺の可撓性基板を用いてロール・トゥ・ロールでシリコン薄膜太陽電池を形成する方法は、低コスト化の期待が高い。しかしながら、可撓性基板を用いた場合、電極等との平行度によって、可撓性基板の処理結果(たとえば成膜処理の場合は成膜した膜の膜質や厚さであり、エッチング処理の場合はエッチング量)に面内分布が生じてしまう問題があった。また、このような問題に対して、特許文献2に記載されているような押付部材を用いる方法が提案されている。しかしながら、押付けによって摩擦が生じたり、汚れ等が付着したりして必ずしも満足のいくものではなかった。また、上記したような真空処理装置の問題があった。そのため、上記したような真空処理装置の問題なく、ロール・トゥ・ロールにも適用可能な簡便かつ容易に良質な表面処理が行える処理装置および処理方法が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-119626号公報
【文献】特開2010-070816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、工業的有利に基体を処理できる処理装置および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、成膜用原料を含むミストまたは液滴を滞留させて、基板に含浸させると、基板の両面において、簡便且つ容易に良質な膜が得られることを知見し、さらに、このような処理装置がエッチングなどの表面処理に適用可能であることをも知見し、上記した従来の問題を一挙に解決できるものとであることを見出した。また、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、成膜用原料を含むミストまたは液滴を滞留させて、基板に含浸させると、基板の両面において、簡便且つ容易に良質な膜が得られることを知見し、また、使用済みの前記ミストまたは液滴に任意の方向への流速を付与すると、より作業性が優れたものになることを知見し、さらには、このような処理装置がエッチングなどの表面処理に適用可能であることをも知見し、このような処理装置が上記した従来の問題を一挙に解決できるものとであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 処理剤を含むミストの雰囲気下で該ミストを基体に含浸させる含浸装置を含むことを特徴とする処理システム。
[2] さらに、前記ミストを滞留させる滞留装置を含む前記[1]記載の処理システム。
[3] さらに、使用済みのミストを排出するミスト排出装置を含む前記[1]または[2]に記載の処理システム。
[4] さらに、使用済みのミストに任意の方向への流速を付与する流速付与装置を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の処理システム。
[5] さらに、基体を搬送する搬送装置を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の処理システム。
[6] さらに、基体を送給する送り装置を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の処理システム。
[7] さらに、ヒーターを含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載の処理システム。
[8] 処理剤が成膜用原料である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の処理システム。
[9] 処理剤がエッチング剤である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の処理システム。
[10] 処理剤が化学吸着剤である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の処理システム。
[11] さらに、基体をガス処理するためのガス処理装置を含む前記[1]~[10]のいずれかに記載の処理システム。
[12] 処理剤を含むミストの雰囲気下で該ミストを基体に含浸させることを特徴とする処理方法。
[13] 前記ミストを滞留させること、滞留させているミストを基体に含浸させること、を含む前記[12]記載の処理方法。
[14] 含浸後、使用済みのミストを排出する前記[12]または[13]に記載の処理方法。
[15] 含浸後、使用済みのミストに任意の方向への流速を付与する前記[12]~[14]のいずれかに記載の処理方法。
[16] 含浸を、基体を搬送しながら行う、前記[12]~[15]のいずれかに記載の処理方法。
[17] 含浸を、重力方向に基体を送給してから行う、前記[12]~[16]のいずれかに記載の処理方法。
[18] 含浸前または含浸後に、基体を加熱する、前記[12]~[17]のいずれかに記載の処理方法。
[19] 処理剤が成膜用原料であり、処理が成膜処理である、前記[12]~[18]のいずれかに記載の処理方法。
[20] 処理剤がエッチング剤であり、処理がエッチング処理である、前記[12]~[19]のいずれかに記載の処理方法。
[21] 処理剤が化学吸着剤であり、処理が化学吸着処理である、前記[12]~[20]のいずれかに記載の処理方法。
[22] 含浸前または/および含浸後に、基体をガス処理する、前記[12]~[21]のいずれかに記載の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の明細書で開示される内容によれば、工業的有利に基体を処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の処理装置(システム)の好適な一態様を示す模式図である。
【
図2】本発明において用いられる霧化部(ミスト発生装置)の一態様を説明する図である。
【
図3】本発明の処理装置(システム)の好適な一態様を示す模式図である。
【
図4】本発明の処理装置(システム)の好適な一態様を示す模式図である。
【
図5】本発明の処理装置(システム)の好適な一態様を示す模式図である。
【
図6】本発明の処理装置(システム)の好適な一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の処理装置は、処理剤を含むミストまたは液滴を用いて基体を処理する処理装置であって、前記ミストまたは液滴を滞留させる滞留部を備え、さらに、滞留部内に、滞留させている前記ミストまたは液滴を前記基体に含浸させる含浸手段を備えていることを特長とする。また、本発明の処理装置は、処理剤を含むミストまたは液滴を用いて基体を処理する処理装置であって、前記ミストまたは液滴を前記基体に含浸させる含浸部を備え、使用済みの前記ミストまたは液滴に任意の方向への流速を付与するミスト・液滴加速手段を備えていることを特長とする。
【0011】
本発明において用いられる基体は、特に限定されず、公知のものであってよい。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状、多孔質体状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましく、可撓性基板がより好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されないが、1μm~100mmが好ましく、10μm~10mmがより好ましい。また、基板の面積も、特に限定されないが、5mm角以上であるのが好ましく、1cm角以上であるのがより好ましく、5cm角以上が最も好ましい。
【0012】
前記基板は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基板であってよい。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、金属基板や導電性基板であってもよい。また、本発明においては、前記基板の一部または全部の上に、金属膜、半導体膜、導電性膜および絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されているものも、前記基板として好適に用いることができる。前記金属膜の構成金属としては、例えば、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、シリコン、イットリウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられる。半導体膜の構成材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムのような元素単体、周期表の第3族~第5族、第13族~第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物、ペロブスカイト等が挙げられる。また、前記導電性膜の構成材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化インジウム(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)などが挙げられる。前記絶縁性膜の構成材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、酸窒化シリコン(Si4O5N3)などが挙げられるが、絶縁性酸化物からなる絶縁性膜であるのが好ましく、チタニア膜であるのがより好ましい。
【0013】
本発明において用いられる処理剤は、前記基体を処理できさえすれば特に限定されず、公知のものであってよい。前記処理剤としては、例えば、成膜用原料、エッチング剤、表面改質剤、洗浄剤、リンス剤などが挙げられる。また、本発明においては、前記処理剤が、化学吸着剤であるのも、さらに優れた配向性を付与することができ、大面積配向成長により適した基体を得ることができるので、好ましい。
【0014】
前記成膜用原料は、本発明の目的を阻害しない限り、公知の成膜用原料であってよく、無機材料であっても、有機材料であってもよい。本発明においては、前記成膜用原料が、金属または金属化合物を含むのが好ましく、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、ストロンチウム、バリウムおよびケイ素から選ばれる1種または2種以上の金属を含むのがより好ましく、ケイ素含有化合物であるのが最も好ましい。前記ケイ素含有化合物は、少なくとも一つのケイ素を含む化合物であれば特に限定されない。前記ケイ素含有化合物としては、例えば、シラン、シロキサン、シラザン、ポリシラザンなどが挙げられる。前記シランとしては、例えば、モノシラン(SiH4)、アルコキシシランなどが挙げられる。前記アルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアミロキシシラン、テトラオクチルオキシシラン、テトラノニルオキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシラン、ジエトキシジトリチルオキシシランまたはこれらの混合物などが挙げられる。前記シロキサンとしては、例えばヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジブチルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン及び3-グリシドキシプロピルペンタメチルジシロキサンなどが挙げられる。シラザンとしては、例えばヘキサメチルジシラザン及びヘキサエチルジシラザンなどが挙げられる。また、本発明においては、前記成膜用原料が、前記金属を錯体または塩の形態で含むのも好ましい。前記錯体の形態としては、例えば、有機錯体などが挙げられ、より具体的には、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体、キノリノール錯体等が挙げられる。前記塩の形態としては、例えば、ハロゲン化物などが挙げられ、より具体的には、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。
【0015】
前記エッチング剤は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のエッチング剤であってよい。前記エッチング剤としては、例えば、有機酸(例えば、硫酸、称賛、塩酸、酢酸、ぎ酸、ふっ酸)、酸化剤(例えば、過酸化水素、濃硫酸)、キレート剤(例えば、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン4酢酸、エチレンジアミン、エタノールアミン、アミノプロパノール)、チオール化合物などが挙げられる。また、前記エッチング剤としては、例えばイミダゾールや、イミダゾール誘導体化合物などのように自身がエッチング作用を持つものも含まれる。
【0016】
前記表面改質剤は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記表面改質剤としては、例えば、アニオン系・カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、顔料分散剤、アルコール類、脂肪酸、アミン類、アミド類、イミド類、金属せっけん、脂肪酸オリゴマー化合物、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、リン酸系カップリング剤、カルボン酸系カップリング剤、フッ素系界面活性剤、ホウ素系界面活性剤等が挙げられる。前記原料溶液は、前記表面改質剤を、1種類単独で含んでいてもよいし、2種類以上を含んでいてもよい。
【0017】
前記化学吸着剤は、特に限定されず、公知のものであってよいが、本発明においては、自己組織化単分子層(SAM)形成材料であるのが好ましい。前記SAM形成材料は、特に限定されず、公知のものであってよい。前記SAM形成材料としては、例えば、チオール化合物、シラン化合物、有機リン化合物またはカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0018】
前記洗浄剤は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記洗浄剤としては、例えば、界面活性剤(例えばアニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等)、金属石鹸などが挙げられる。
【0019】
前記リンス剤は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記リンス剤としては、例えば、フッ素系リンス剤(ハイドロフルオロカーボン(HFC)類やハイドロフルオロエーテル(HFE)類等)などが挙げられる。
【0020】
本発明においては、さらに、ミスト発生装置(霧化部または液滴化部)を備えているのが、前記処理剤を溶媒等に溶解または分散させて、処理溶液とし、ついで、処理溶液を霧化または液滴化することができるので好ましい。なお、処理溶液を霧化または液滴化して発生させるミストは液滴を含んでいてもよい。このようにしてミスト発生装置(霧化部または液滴化部)を備えることによって、処理剤の品質が、より容易に制御できるだけでなく、処理そのものの効率や品質もより向上させることができる。
前記溶媒は、処理剤が溶解または分散するものであって、霧化や液滴化が可能なものであれば特に限定されず、無機溶媒であってもよいし、有機溶媒であってもよいし、これらの混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水であるのが好ましい。
前記処理溶液中の処理剤の含有量は、特に限定されないが、好適には例えば、0.0001~80重量%であり、より好適には0.001%~50重量%である。
【0021】
本発明においては、前記ミストが、超音波霧化により得られたものであるのが好ましい。滞留させやすいからである。超音波を用いて得られたミストは、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストが、衝突エネルギーによる損傷がないためにより好ましい。前記ミストは液滴を含んでいてもよく、液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。なお、超音波霧化以外の手段で処理溶液を霧化する場合には、通常、ミストの運動を止める滞留手段が用いられる。
【0022】
本発明においては、前記霧化部または液滴化部が霧化槽を有しており、前記滞留部が、前記霧化槽内にあるのが好ましい。このような構成とすることにより、真空処理装置のようなアイドリングにともなう問題等を、より容易に解消することができる。
【0023】
前記含浸部は、重力方向または略重力方向に前記基体を送給する送り手段を有しており、送給された前記基体に含浸させるように構成されているのが好ましい。このように構成することにより、より効率的かつより大量に処理することができる。
【0024】
本発明においては、さらに、加熱手段を備えるのが好ましい。加熱手段を備えることにより、消滅時間の長い、安定したミストを、前記処理に付すことができる。
【0025】
また、本発明においては、前記基体をガス置換(ガス処理)するガス処理手段を有しているのが好ましい。このようなガス処理手段を備えることにより、より効果的かつ効率的な処理が可能になる。
【0026】
また、本発明においては、さらに、使用済みの前記ミストに任意の方向への流速を付与するミスト流速付与手段を備えるのが好ましい。流速を付与することで、使用済みのミストをより効率的に排気し、かつ未使用のミストをより効率的に処理に付すことができる。
【0027】
また、本発明の好ましい実施態様にかかる処理システムは、前記処理剤を含むミストの雰囲気下で該ミストを基体に含浸させる含浸装置を有することを特長とする。また、本発明の他の好ましい実施態様にかかる処理システムは、使用済みのミストに流速を付与する流速付与装置を有することを特長とする。
【0028】
また、前記含浸装置は、前記含浸部を含むものであれば、特に限定されず、前記含浸部と同様のものであってもよい。本発明においては、前記含浸装置が、前記ミストを滞留させる滞留装置を含んでおり、該滞留装置内で、前記ミストを基体に含浸可能なように構成されているのが、好ましい。前記滞留装置は、前記滞留部を含むものであれば、特に限定されず、前記滞留部と同様のものであってもよい。
前記処理システムは、使用済みのミストを排出するミスト排出装置を含むのも、使用済みのミストをより効率的に排気し、かつ未使用のミストをより効率的に処理に付すことができるので、好ましい。前記ミスト排出装置は、使用済みのミストを排出可能なものであれば、特に限定されない。また、前記流速付与装置は、前記流速付与手段を備えるものであれば、特に限定されず、本発明においては、前記流速付与装置が、前記ミスト排出装置であるのも好ましい。
本発明においては、前記処理システムが、さらに、ヒーターを含むのも、消滅時間の長い、安定したミストを、前記処理に付すことができるので、好ましい。なお、前記ヒーターは、前記加熱手段を備えるものであれば、特に限定されない。
【0029】
本発明においては、前記含浸装置が、基体を搬送する搬送装置を含んでおり、前記基体を搬送しながら、前記ミストを前記基体に含浸可能なように構成されているのが、より効率的かつより大量に処理することができるので、好ましい。前記搬送装置は、前記基体を搬送可能なものであれば、特に限定されない。本発明においては、前記搬送装置が、前記基体を送給する送り装置であり、前記基体を重力方向に送給してから、前記ミストを前記基体に含浸可能なように構成されているのも、好ましい。なお、前記送り装置は、前記送り手段を備えるものであれば、特に限定されない。
また、本発明においては、前記処理システムが、基体をガス処理するためのガス処理装置を含むのも、より効果的かつ効率的な処理が可能になるので、好ましい。前記ガス処理装置は、前記ガス処理手段を備えるものであれば、特に限定されない。なお、前記ガス処理には、例えば、前記滞留装置内をガス置換すること等も含まれる。
【0030】
以下、図面を用いて、本発明の好適な態様を説明する。
図1の処理装置(システム)は、送りローラ(送り装置)6、加熱ローラ(ヒーター)8、滞留部(滞留装置)10を備えている。滞留部(滞留装置)10内には、ミスト(図示せず)が滞留しており、基体5が送りローラ(送り装置)6によって、送り方向に搬送され、滞留部(滞留装置)10内で含浸処理に付されるように構成されている。なお、
図1の処理装置(システム)において、含浸部(含浸装置)17とは、滞留部(滞留装置)10、送りローラ(送り装置)6および基体5を含めた構成をいう。なお、含浸処理前に、加熱ローラ(ヒーター)8によって、基体5は熱処理に付される。そして、含浸処理後、送りローラ(送り装置)6によって、処理された基体は送り方向に搬送されていくように構成されており、ここでも加熱ローラ(ヒーター)8によって、含浸処理後、処理済みの基体5はさらに熱処理に付される。本発明においては、含浸処理を、前記基体5を送りローラ(送り装置)6によって搬送しながら行うのも好ましい。また、含浸処理を、前記基体5を送りローラ(送り装置)6によって送り方向に搬送した後に行うのも好ましい。
【0031】
図2は、本発明において用いられる霧化部(ミスト発生装置)の好適な一態様を示している。
図2に示される霧化部(ミスト発生装置)は、超音波振動子1、支持部21、固定用ナット22、Oリング23、高分子フィルム24および筒状体3の断面をそれぞれ示している。筒状体3は、処理溶液を収納する容器である。筒状体3の下部に設けられている凸部は、Oリング23および高分子フィルム24を介して、固定用ナット22と支持部21との間に嵌合されている。固定用ナット22と支持部21とは螺合されており、この螺合によって、高分子フィルム24が筒状体3の底面部を閉塞し、筒状体3の底面を形成している。また、支持部21の底面部には、超音波振動子1の設置穴が設けられており、設置穴に振動子固定具を介して、超音波振動子1が、筒状体3の底面部に対して超音波を照射可能なように設置されている。また、筒状体3の底面部と支持部21との間には、超音波伝達液2aとして水が収容されている。なお、筒状体3には、処理溶液(図示せず)が収容されている。なお、
図2では、高分子フィルム24がOリング23下に配設されているが、本発明においては、Oリング23上に高分子フィルム24を配設してもよい。そして、支持部21の底面部に設けられた設置穴内に配置された超音波振動子1を作動させることにより、超音波振動が超音波伝達液2aを介して、筒状体3内の処理溶液に伝わる。超音波が照射された処理溶液が霧化されると、筒状体3内にミストが滞留する。
【0032】
図3は、本発明の処理装置(システム)が、滞留部(滞留装置)を2つ備えている場合の例である。本発明では、2以上の滞留部(滞留装置)を備え、それぞれ2以上の含浸部(含浸装置)を備えるのが好ましく、このように構成することで、ミストを用いた場合であっても、複数の処理をより効果的にかつ効率的に行うことができる。
図3では、滞留部(滞留装置)20a内にて第1の含浸処理に付し、滞留部(滞留装置)20bにて第2の含浸処理に付す。なお、第1の含浸処理と第2の含浸処理とは、それぞれ同一の処理であってもよいし、異なる処理であってもよい。例えば、第1の滞留部(滞留装置)20aにおいて、第1の成膜用原料を含むミストに含浸させて成膜処理を行った後、第2の滞留部(滞留装置)20bにおいて、第1の成膜用原料とは異なる原料の第2の成膜用原料を含むミストに含浸させて成膜処理を行ってもよい。また、例えば、第1の滞留部(滞留装置)20aにおいて、洗浄剤を含むミストに含浸させて洗浄処理を行った後、第2の滞留部(滞留装置)20bにおいて、成膜用原料を含むミストに含浸させて成膜処理を行ってもよい。なお、
図3の処理装置(システム)において、含浸部(含浸装置)27aまたは含浸部(含浸装置)27bとは、第1の滞留部(滞留装置)20aまたは第2の滞留部(滞留装置)20b、送りローラ(送り装置)6および基体5を含めた構成をいう。
図3では、2つの滞留部(滞留装置)を備える処理装置(システム)を例に挙げたが、本発明においては、2つに限らず、3以上の滞留部(滞留装置)を備えて3以上の含浸処理に付してもよい。
【0033】
図4の処理装置(システム)は、
図3の処理装置(システム)とは、2つある滞留部(滞留装置)がそれぞれ大きさの異なるものとなっている点で異なっている。
図4では、滞留部(滞留装置)の大きさをそれぞれ違うものにすることによって、含浸処理の処理時間を調節している。また、
図4の処理装置(システム)は、プラズマ処理部(プラズマ処理装置)を備えている。滞留部(滞留装置)30にて含浸処理の後、プラズマ処理部(プラズマ処理装置)44にてプラズマ処理に付すことができる。そして、そのまま滞留部(滞留装置)40にて、含浸処理に付すことができるように構成されている。なお、
図4の処理装置(システム)において、含浸部(含浸装置)37または含浸部(含浸装置)47とは、滞留部(滞留装置)30または滞留部(滞留装置)40、送りローラ(送り装置)6および基体5を含めた構成をいう。
【0034】
図5の処理装置(システム)は、滞留部(滞留装置)60のみ含浸処理前後に熱処理できるように加熱ローラ(ヒーター)8が備えられている。また、
図5の処理装置(システム)は乾燥部(乾燥装置)64を備えており、滞留部(滞留装置)50内での含浸処理後、乾燥処理に付されるように構成されている。そして、乾燥処理後は、加熱ローラ(ヒーター)8により、熱処理に付され、ついで滞留部(滞留装置)60にて含浸処理に付され、加熱ローラ(ヒーター)8へと送り出される。なお、
図5の処理装置(システム)において、含浸部(含浸装置)57または含浸部(含浸装置)67とは、滞留部(滞留装置)50または滞留部(滞留装置)60、送りローラ(送り装置)6および基体5を含めた構成をいう。
【0035】
また、本発明の別の好ましい態様を
図6に示す。
図6の処理装置(システム)は、駆動部(駆動装置)6aを含む複数の送りローラ(送り装置)6、滞留部(滞留装置)70、霧化部(ミスト発生装置)71および排気部(ミスト排出装置)79を有している。排気部(ミスト排出装置)79は、使用済みミストを吸気して排気可能に構成されている。
図6の処理装置(システム)は、排気部(ミスト排出装置)79によって、含浸後に、使用済みの前記ミストに任意の方向への流速を付与するように構成されており、基体5が滞留部(滞留装置)70で含浸処理に付された後、使用済みのミストが排気部(ミスト排出装置)79によって排気されていく。なお、本発明においては、排気部(ミスト排出装置)79に代えて、例えば窒素ガス等のガスを送り出すようにガス処理装置を構成してもよく、このような場合には、滞留部(滞留装置)70内をガス置換したり、基体をガス処理したりすることができる。なお、
図6の処理装置(システム)において、含浸部(含浸装置)77とは、滞留部(滞留装置)70、送りローラ(送り装置)6および基体5を含めた構成をいう。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の処理装置および処理方法は、あらゆる基体の処理に用いることができ、工業的に有用である。特に、基体表面を成膜する場合やエッチング処理する場合には、本発明の処理装置および処理方法を好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 超音波振動子
2a 超純水
3 筒状体
5 基体
6 送りローラ(送り装置)
6a 駆動部(駆動装置)
8 加熱ローラ(ヒーター)
10 滞留部(滞留装置)
17 含浸部(含浸装置)
20a 滞留部(滞留装置)
20b 滞留部(滞留装置)
21 支持部
22 固定用ナット
23 Oリング
24 フィルム
27a 含浸部(含浸装置)
27b 含浸部(含浸装置)
30 滞留部(滞留装置)
37 含浸部(含浸装置)
40 滞留部(滞留装置)
47 含浸部(含浸装置)
44 プラズマ処理部(プラズマ処理装置)
50 滞留部(滞留装置)
57 含浸部(含浸装置)
60 滞留部(滞留装置)
67 含浸部(含浸装置)
64 乾燥部(乾燥装置)
70 滞留部(滞留装置)
71 霧化部(ミスト発生装置)
77 含浸部(含浸装置)
79 排気部(ミスト排気装置)