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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221205BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09F9/00 358
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018227462
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020090142
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】河村 知史
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-287818(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
G09F 9/00
B60R 11/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源よりも下方に配置され、入射された光を再帰反射する再帰反射部材と、
前記光源からの光の少なくとも一部を反射して前記再帰反射部材へと出射すると共に、前記再帰反射部材で再帰反射され入射された光の少なくとも一部を透過する光分岐部材と、を備え、
前記再帰反射部材で再帰反射され前記光分岐部材を透過した光が前記光源の像を空中に結像するように構成され、
前記再帰反射部材で再帰反射され前記空中像を結像する光の光路よりも前記光源側で、かつ、前記光分岐部材よりも前記空中像側に設けられ、上方から入射される外光の少なくとも一部を遮るように設けられた第2再帰反射部材を備え、
前記第2再帰反射部材は、前記光分岐部材側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面を有する、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記光源は、前記第2再帰反射部材の前記再帰反射面で再帰反射され前記光源まで戻った戻り光を拡散させ、再度前記光分岐部材へと出射させることが可能な拡散体を有する、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第2再帰反射部材は、外光の入射側に、入射される外光を遮光可能な遮光層を有する、
請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記光源からの光を反射して前記光分岐部材に入射する反射部材を備え、
前記第2再帰反射部材は、上方から前記反射部材に入射される外光を遮るように設けられる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記反射部材が、反射面が凹状の球面に形成された凹面鏡からなり、
前記第2再帰反射部材は、前記凹面鏡で反射され前記凹面鏡の焦点へと向かう光を遮るように、前記焦点よりも前記凹面鏡側に配置されている、
請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
車両の車体に取り付けられ、前記車体の外部へと前記光源の像が結像するように構成されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射された光を入射方向へと反射する再帰反射部材と、入射された光の一部を反射し一部を透過する光分岐部材とを用いて、光源の像を空中に結像させる表示装置が知られている。この表示装置では、光源からの光の一部を光分岐部材で反射させて再帰反射部材へと出射する。再帰反射部材で再帰反射された光の一部は、光分岐部材を透過して、光源の像を空中に結像する。以下、空中に結像される光源の像を空中像という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-247458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示装置に外部からの光(外光という)が入射された際に、表示装置を構成する部材による反射や屈折によって外光が収束されてしまう場合がある。特に、外光として太陽光が入射されると、外光が収束している部分が高温となり、表示装置を構成する部材やその周辺の部材に損傷を与えてしまうおそれがあった。
【0005】
特許文献1では、半透過性プレートを用いて外光を弱める点が記載されているが、半透過性プレート自体が高温になってしまうおそれがあった。また、半透過性プレートを用いた場合、空中像を形成する光が半透過性プレートを透過することになり、空中像の輝度が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、空中像の輝度を向上でき、かつ、外光による熱の影響を抑制可能な車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[6]の車両用表示装置を提供する。
【0008】
[1]光源と、前記光源よりも下方に配置され、入射された光を再帰反射する再帰反射部材と、前記光源からの光の少なくとも一部を反射して前記再帰反射部材へと出射すると共に、前記再帰反射部材で再帰反射され入射された光の少なくとも一部を透過する光分岐部材と、を備え、前記再帰反射部材で再帰反射され前記光分岐部材を透過した光が前記光源の像を空中に結像するように構成され、前記再帰反射部材で再帰反射され前記空中像を結像する光の光路よりも前記光源側で、かつ、前記光分岐部材よりも前記空中像側に設けられ、上方から入射される外光の少なくとも一部を遮るように設けられた第2再帰反射部材を備え、前記第2再帰反射部材は、前記光分岐部材側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面を有する、車両用表示装置。
【0009】
[2]前記光源は、前記第2再帰反射部材の前記再帰反射面で再帰反射され前記光源まで戻った戻り光を拡散させ、再度前記光分岐部材へと出射させることが可能な拡散体を有する、[1]に記載の車両用表示装置。
【0010】
[3]前記第2再帰反射部材は、外光の入射側に、入射される外光を遮光可能な遮光層を有する、[1]または[2]に記載の車両用表示装置。
【0011】
[4]前記光源からの光を反射して前記光分岐部材に入射する反射部材を備え、
前記第2再帰反射部材は、上方から前記反射部材に入射される外光を遮るように設けられる、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【0012】
[5]前記反射部材が、反射面が凹状の球面に形成された凹面鏡からなり、前記第2再帰反射部材は、前記凹面鏡で反射され前記凹面鏡の焦点へと向かう光を遮るように、前記焦点よりも前記凹面鏡側に配置されている、[4]に記載の車両用表示装置。
【0013】
[6]車両の車体に取り付けられ、前記車体の外部へと前記光源の像が結像するように構成されている、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空中像の輝度を向上でき、かつ、外光による熱の影響を抑制可能な車両用表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る車両用表示装置の概略構成図である。
図2図2(a)は、図1の車両用表示装置を車両に取り付けた際の概略構成図、図2(b)は、車体外部への空中像の表示の一例を示す図である。
図3図3(a)は、反射部材を示す斜視図であり、図3(b)は、反射部材の一変形例を示す斜視図であり、図3(c)は、本発明の一変形例に係る車両用表示装置の概略構成図である。
図4図4(a),(b)は、本発明の一変形例に係る車両用表示装置の概略構成図である。
図5図5は、本発明の一変形例に係る車両用表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
(車両用表示装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る車両用表示装置の概略構成図である。図1に示すように、車両用表示装置1は、光源2と、再帰反射部材(レトロリフレクター)3と、光分岐部材(ビームスプリッター)4と、反射部材5と、第2再帰反射部材9と、を備えている。
【0018】
光源2としては、例えば、複数のLED(発光ダイオード)を配列した板状の表示器等を用いることができる。また、光源2としては、例えば、1つ以上のLEDと、LEDからの光を拡散する拡散体と、を有するものを用いることもできる。さらに、光源2としては、液晶ディスプレイ等のディスプレイ(表示器)を用いることもできる。
【0019】
本実施の形態では、光源2として、拡散体を有するものを用いる。拡散体は、例えば、各LEDにおいてチップを封止する封止樹脂であってもよいし、LEDと別体に、LEDから出射される光を拡散する導光体を設けてもよい。この拡散体は、後述する第2再帰反射部材9の再帰反射面9aで再帰反射され光源2まで戻った戻り光を拡散させ、LEDに照射される光を弱めることで、LEDの損傷を防止し、さらに、その光の一部を再度光分岐部材4へと出射させることで、光の利用効率を高める役割を果たす。
【0020】
再帰反射部材3は、入射された光を入射方向へと反射する再帰反射を行う部材である。再帰反射部材3としては、シート状に形成された再帰反射シートを用いることができる。再帰反射部材3としては、通常一般に用いられている構造のもの、例えば、ガラスビーズを用いたものやプリズムを用いたものを用いることができる。本実施の形態では、再帰反射部材3は、光源2よりも下方に配置されている。
【0021】
光分岐部材4は、板状に形成されており、入射された光の一部を反射し、一部を透過するものである。光分岐部材4としては、ハーフミラーを用いることができる。なお、光分岐部材4は、ハーフミラーに限らず、アクリルやガラスからなる板状部材、パンチングメタル等の開口列を有する板、ワイヤーグリッドフィルム、反射型偏光フィルム、その他、一般にビームスプリッターと呼称されるものを用いることができる。
【0022】
光分岐部材4は、光源2からの光の少なくとも一部を反射して再帰反射部材3へと出射すると共に、再帰反射部材3で再帰反射され入射された光の少なくとも一部を透過する。これにより、再帰反射部材3で再帰反射され光分岐部材4を透過した光が、光源2の像を空中に結像する。以下、空中に結像される光源2の像を空中像6と呼称する。また、光分岐部材4から空中像6までの距離を、空中像6の飛び出し量という。
【0023】
(反射部材5)
本実施の形態に係る車両用表示装置1では、光源2からの光を反射部材5で反射して光分岐部材4に入射するように構成されている。光源2からの光は、反射部材5で反射された後に、光分岐部材4に入射され、入射された光の一部が再帰反射部材3へと反射されることになる。
【0024】
このように構成することで、反射部材5によって、光源2の虚像7が形成されることになり、この光源2の虚像7が、空中像6として空中に結像されることになる。すなわち、本実施の形態では、空中像6は、光分岐部材4に対して光源2の虚像7と対称な位置に結像される。その結果、光分岐部材4に対して光源2や反射部材5を大きく離間させずとも、光分岐部材4から比較的離れた位置に空中像6を結像することが可能になり、空中像6の飛び出し量を大きくしつつも車両用表示装置1の薄型化が可能になる。
【0025】
反射部材5としては、光のロスを避けるためになるべく反射率が高いものを用いることが望ましく、光源2からの光の反射率が80%以上、より好ましくは90%以上のものを用いることが望ましい。
【0026】
本実施の形態では、反射部材5として、反射面5aが凹状の球面に形成された凹面鏡51を用いた。これにより、凹面鏡51の焦点距離よりも近い位置に光源2を配置することで、光源2の虚像7をより光分岐部材4から離れた位置に形成して、空中像6の飛び出し量をより大きくすることができる。本実施の形態では、凹面鏡51の薄型化を図るため、凹面鏡51を反射型のフレネルレンズで構成している。
【0027】
また、反射部材5として凹面鏡51を用いることで、光源2の虚像7(すなわち空中像6)は光源2のサイズよりも拡大されることになるため、光源2のサイズが小さくても大きい空中像6を結像することが可能になる。よって、光源2のサイズを小さくすることができ、コンパクトでより小さいスペースに搭載可能な車両用表示装置1が実現可能になる。
【0028】
また、光分岐部材4と、反射部材5(光軸511と直交する面)とは、非平行である。反射部材5と光分岐部材4との間隔は、光源2側で狭く、再帰反射部材3側で広くすることが好ましい。これにより、より多くの光を光分岐部材4へ向けて反射でき、空中像6をより明るくすることができる。
【0029】
(第2再帰反射部材9)
第2再帰反射部材9は、太陽光等の上方から入射される外光を遮る役割と、下方(光分岐部材4側)から入射された光を再帰反射して光源2に戻し、光の利用効率を高める役割と、凹面鏡51で反射された光が焦点に収束され高温となってしまうことを抑制する役割と、を兼ねた部材である。第2再帰反射部材9は、再帰反射部材3で再帰反射され空中像6を結像する光の光路よりも光源2側(図示左上側)で、かつ、光分岐部材4よりも空中像5側(図示右上側)に設けられ、上方から入射される外光の少なくとも一部を遮るように設けられる。
【0030】
第2再帰反射部材9としては、上述の再帰反射部材3と同様に、シート状に形成された再帰反射シートを用いることができる。第2再帰反射部材9としては、例えば、ガラスビーズを用いたものやプリズムを用いたものを用いることができる。
【0031】
第2再帰反射部材9は、光分岐部材4側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面9aを有している。これにより、光分岐部材4側から入射された光源2からの光を再帰反射して光源2に戻し、拡散体で拡散させて再度光分岐部材4へと出射させることが可能になり、光の利用効率が向上して空中像6の高輝度化に寄与する。
【0032】
また、第2再帰反射部材9は、太陽光等の外光の入射側(再帰反射面9aの裏側)に、入射される外光を遮光可能な遮光層9bを有している。詳細は後述するが、本実施の形態に係る車両用表示装置1は車両10のバックドア12に設けられるため、太陽光等を車両後方に反射してしまわないように、遮光層9bとしてはなるべく反射率の低いものを用いることが望ましい。遮光層9bは、例えば黒色の樹脂層などで構成することができる。
【0033】
本実施の形態では、反射部材5としての凹面鏡51が備えられているため、凹面鏡51に太陽光が入射してしまうと、太陽光が集光されて凹面鏡51の焦点が高温となってしまうおそれがある。これを抑制するため、第2再帰反射部材9は、上方から反射部材5(凹面鏡51)に入射される外光を遮るように設けられることが望ましい。
【0034】
また、第2再帰反射部材9で覆われていない部分から入射された外光が凹面鏡51の焦点に集光されてしまうことを抑制するため、第2再帰反射部材9は、凹面鏡51で反射され凹面鏡51の焦点へと向かう光を遮るように、焦点よりも凹面鏡51側に配置されていることが望ましい。これにより、凹面鏡51の焦点へ向かう光を第2再帰反射部材9の反射面により凹面鏡51へ反射して戻すことができる。また、凹面鏡51に入射された光が凹面鏡51の焦点に集光されてしまうことが抑制され、外光の収束による温度上昇を抑制することが可能になる。
【0035】
より多くの外光を遮光し、かつ、光の利用効率を高めるという観点から、なるべく広い範囲が第2再帰反射部材9で覆われていることが望ましいといえる。つまり、第2再帰反射部材9は、空中像6に影響が出ない範囲(空中像6を結像する光の光路よりも光源2側の領域)において、できるだけ広い範囲を覆っていることが望ましい。つまり、空中像6を結像する光の光路よりも光源2側の領域において、光源2や光分岐部材4の背面全体を覆うように構成されていることが最も望ましいといえる。
【0036】
(車両への適用)
図2(a)は、図1の車両用表示装置1を車両に取り付けた際の概略構成図であり、図2(b)は、車体外部への空中像6の表示の一例を示す図である。図1及び図2(a),(b)に示すように、車両用表示装置1は、車両10の車体11に取り付けられ、車体11の外部へと空中像6が結像するように構成されている。本実施の形態では、車両用表示装置1は、車両10のバックドア(リアハッチ)12に設けられ、バックドア12の後方に空中像6を結像するように構成されている。
【0037】
車両用表示装置1では、凹面鏡51は、バックドア12の外側の板金121の外表面に設けられており、その光軸511が車両10の後方かつ上方(斜め上方向)となるように設けられている。凹面鏡51と対向するように、光源2と光分岐部材4とが設けられている。ここでは、光源2と光分岐部材4とが略同一面上に設けられている場合を示しているが、これに限定されず、光源2の背面を覆うように光分岐部材4を延長し、光分岐部材4よりも凹面鏡51側に光源2を配置してもよい。
【0038】
光源2は、凹面鏡51の光軸511よりも鉛直方向下側に配置されている。すなわち、凹面鏡51の光軸511を外して、光軸511よりも反射面51a側に光源2が配置されている。再帰反射部材3は、凹面鏡51よりも鉛直方向下側に配置されている。なお、光軸511よりも上側に光源2を配置した場合、光が上方に戻ってしまい機能しなくなってしまう(再帰反射部材3側へと光が出射されなくなってしまう)。再帰反射部材3は、光分岐部材4よりも水平方向に対する傾斜角度が小さくなるように配置されている。
【0039】
光分岐部材4の後方は、樹脂製のカバー8で覆われている。カバー8のうち、再帰反射部材3から光分岐部材4を介して空中像6へと至る光が通る部分は、少なくとも、当該光の一部を透過する部材で構成される。第2再帰反射部材9は、カバー8の内周面に貼付され固定されている。本実施の形態では、カバー8は、図示しないナンバープレートを照明するナンバー灯13を覆う役割も兼ねている。再帰反射部材3は、ナンバー灯13からの光を遮るために、板金121とカバー8との間を塞ぐように設けられている。なお、再帰反射部材3は、その表面(図示上側の面)が再帰反射をするように構成されており、その背面(図示下側の面)は、ナンバー灯13からの光を遮光可能な部材(例えば黒色の樹脂層など)で構成されている。なお、図2(a)中の符号122は、バックドア12の内層トリムを表している。
【0040】
本実施の形態では、空中像6を結像する光は湾曲したカバー8を透過するため、カバー8の影響で空中像6が歪むおそれがある。そこで、カバー8の影響による空中像6の歪みを補正するカバー歪み補正手段をさらに備えてもよい。カバー歪み補正手段としては、例えば、凹面鏡51と光源2との間にカバー8による歪みを補正可能な部材(カバー8と同じ材質で逆形状のもの等)を配置すること、あるいは、カバー8の影響で歪むことによって意図する空中像6が得られるように、もとの光源2の像自体を変更すること等が上げられる。
【0041】
図2(b)に示すように、空中像6のカバー8からの距離d(車体11からの飛び出し量)は、空中像6に触れようとした場合でも車体11にはあたらないように、少なくとも75mm以上とすることが望ましい。本実施の形態では、距離dが75mm以上120mm以下となるよう車両用表示装置1を構成した。空中像6のカバー8からの距離dは、凹面鏡51と光源2との距離、凹面鏡51の反射面5aの曲率、あるいは、凹面鏡51と光分岐部材4との距離等により適宜調整可能である。また、本実施の形態では、地上から1380mm以上1780mm以下の高さHで、かつ空中像6から後方に450mm以上750mm以下の距離Dの位置から、空中像6を見ることができるように、視野を調整した。視野の調整は、各部材(光源2、凹面鏡51、再帰反射部材3、及び光分岐部材4)の配置位置や配置角度等により適宜調整することができる。
【0042】
(変形例)
本実施の形態では、反射部材5に用いる凹面鏡51として、反射型のフレネルレンズを用いたが、図3(a)に示すように、通常の凹面鏡51を用いてもよい。また、他部材との干渉など配置スペースの制限等がある場合には、図3(b)に示すように、反射部材5として、反射面5aが円筒の一部となるように形成された反射鏡52を用いることもできる。ただし、この場合、垂直方向と水平方向で結像距離が変わり空中像6に歪みが生じるので、図3(a)に示すように反射面5aが凹状の球面に形成された凹面鏡51を用いることがより望ましい。なお、図3(b)に示すような反射面5aが円筒の一部となるように形成された反射鏡52を用いる場合、この歪みを補正する手段を追加してもよい。空中像6の歪みを補正する手段としては、例えば、反射鏡52と光源2との間に反射鏡52による歪みを補正可能な部材(レンズ等)を配置すること、あるいは、反射部材5で歪むことによって意図する空中像6が得られるように、もとの光源2の像自体を変更すること等が上げられる。
【0043】
このように、反射部材5は、反射面5aが凹状の曲面に形成された反射鏡であるとよく、光源2と反射鏡との距離を、反射鏡の焦点距離よりも短くすることで、空中像6の飛び出し量をより大きくすることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、反射部材5として凹面鏡51を1つ用いたが、図3(c)に示すように、反射部材5として、複数の凹面鏡51を用いてもよい。この場合、光源2からの光は、複数の凹面鏡51で順次反射されて光分岐部材4へと出射されることになる。複数の凹面鏡51を組み合わせることで、空中像6の飛び出し量をさらに大きくすることが可能になる。ここでは、2つの凹面鏡51を用いる場合を示しているが、3つ以上の凹面鏡51を用いてもよい。ただし、使用する凹面鏡51を多くするほど空中像6を視認可能な視野が狭くなってしまうため、視野が狭くなりすぎないように使用する凹面鏡51は2つ以下であることが望ましい。
【0045】
2つの凹面鏡51を用いる場合、光源2側の凹面鏡51a(光源2から直接光が入射される凹面鏡51)の曲率半径を、光分岐部材4側の凹面鏡51b(光分岐部材4に光を出射する凹面鏡51)の曲率半径よりも大きくすることで、空中像6をより大きくすることができる。また、光源2側の凹面鏡51aの曲率半径を、光分岐部材4側の凹面鏡51bよりも小さくすることで、空中像6の視野角を拡大することができる。
【0046】
さらに、図4(a)に示すように、反射部材5として平面鏡53を用いてもよい。この場合、上述の凹面鏡51よりも空中像6の飛び出し量は小さくなるものの、反射部材5を用いずに光源2からの光を直接光分岐部材4に入射させる場合と比較すると、空中像6の飛び出し量を大きくすることができる。反射部材5として平面鏡53を用いる場合についても、図4(b)に示すように、複数の平面鏡53を用いて、空中像6の飛び出し量をより大きくすることが可能である。平面鏡53は凹面鏡51と比較して薄く出来るため、より狭いスペースにも配置可能になる。
【0047】
さらにまた、図5に示すように、光源2、再帰反射部材3、光分岐部材4、及び反射部材5が、モールド部材14により一体に設けられていてもよい。これにより、振動により各部材の相対的な位置ずれを抑制でき、各部材の位置ずれによる空中像6の歪み等の不具合を抑制することができる。モールド部材14としては、光源2が発する光に対して透明(透過率が高い)ものを用いるとよく、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。樹脂以外のモールド部材14として、無機透明材を用いることもでき、ガラス等を用いることができる。モールド部材14を用いる場合、モールド部材14の表面に反射率の高い金属の膜を適宜な手段(例えば、蒸着等による膜形成、金属箔の貼り付け等)で形成することにより、反射部材5を形成することもできる。
【0048】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用表示装置1では、再帰反射部材3で再帰反射され空中像6を結像する光の光路よりも光源2側で、かつ、光分岐部材4よりも空中像6側に設けられ、上方から入射される外光の少なくとも一部を遮るように設けられた第2再帰反射部材9を備え、第2再帰反射部材9は、光分岐部材4側に、入射された光を再帰反射する再帰反射面9aを有している。
【0049】
このような第2再帰反射部材9を備えることで、上方からの外光を遮って外光による温度上昇を抑制可能になると共に、光分岐部材4側から入射された光を再帰反射して光源2に戻して、光の利用効率を高めることが可能になる。その結果、空中像の輝度を向上して空中像6の視認性を向上させ、かつ、外光による熱の影響を抑制して安全性・信頼性を高めた車両用表示装置1を実現できる。
【0050】
また、車両用表示装置1では、光源2からの光を反射して光分岐部材4に入射する反射部材5を備えている。反射部材5により光源2の虚像を形成するよう構成することで、光分岐部材4に対して虚像と対象の位置に空中像6が結像されることになる。この結果、光源2から直接光分岐部材4に光を入射する場合と比較して、空中像6の飛び出し量を大きくすることができ、薄型とした場合でも空中像6の飛び出し量が大きい車両用表示装置1が得られる。車両10では、搭載スペースに厳しい制限があるが、本実施の形態によれば、非常に狭い(薄い)スペースにも搭載可能な車両用表示装置1を実現できる。本実施の形態では、反射部材5として凹面鏡51を用いた場合であっても、第2再帰反射部材9により焦点に向かう光を遮ることにより、外光が凹面鏡51の焦点に収束して高温となってしまうことを抑制できる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0052】
例えば、上記実施の形態では、車両10のバックドア12に車両用表示装置1を設ける場合について説明したが、車両用表示装置1の設置位置はこれに限定されるものではない。
【0053】
また、上記の実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用表示装置
2 光源
3 再帰反射部材
4 光分岐部材
5 反射部材
5a 反射面
51 凹面鏡
6 空中像
7 虚像
9 第2再帰反射部材
10 車両
11 車体
図1
図2
図3
図4
図5