(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】根菜収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 27/00 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
A01D27/00
(21)【出願番号】P 2019038609
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】504352788
【氏名又は名称】オサダ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】井上 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】長田 秀治
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 和晃
(72)【発明者】
【氏名】大宮 秀郷
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081476(JP,A)
【文献】特開平07-155036(JP,A)
【文献】特開2001-327210(JP,A)
【文献】特開2000-060253(JP,A)
【文献】特開平11-243741(JP,A)
【文献】特開2011-135790(JP,A)
【文献】特開2006-340678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 - 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の作物の葉部を把持して抜き取り、かつ斜め後方上方へ向けて作物を搬送する抜き取り搬送装置と、
前記抜き取り搬送装置によって搬送されてきた作物を、前記抜き取り搬送装置の下方位置で切断するカッターと、
前記抜き取り搬送装置の搬送経路の下側で作物の葉部を把持し、前記カッターでの切断位置に作物の切断予定箇所を合致させるように、前記抜き取り搬送装置より緩やかな傾斜で、上下方向における作物の高さ位置を調節しながら後方搬送して前記カッターに作物を送り込む位置決め用のガイドベルトと、
前記切断位置よりも下方で、かつ切断対象の作物の葉部よりも下方の作物主部を把持して搬送する姿勢保持ベルトと、前記ガイドベルトから送り出された作物を搬送する搬送コンベアと、が備えられ、
前記ガイドベルトの後端が、前記抜き取り搬送装置の後端より前側であり、
前記カッターが、平面視で前記ガイドベルトの後端に重複する位置に配置され、
前記姿勢保持ベルトの後端が、前記カッターの切断位置の近傍であり、
前記ガイドベルトが、搬送方向の下流側に配置され伝動軸から駆動力が伝えられるガイド駆動プーリと、搬送方向の上流側のガイド従動プーリと、搬送方向で中間の出力プーリとに巻回され、
前記姿勢保持ベルトが、搬送方向の上流側の駆動プーリと、搬送方向の下流側の従動プーリとに巻回され、前記出力プーリと前記駆動プーリとが伝動軸によって一体回転可能に連結され、
作物の収穫時に、前記抜き取り搬送装置と前記ガイドベルトとで葉部を把持し、且つ前記姿勢保持ベルトで作物主部を把持する状態で、前記カッターが作物の切断を行い、
この切断の後に、前記姿勢保持ベルトの後端から作物主部を含む作物を前記搬送コンベアに落下させ、前記抜き取り搬送装置の後端から作物の葉部を排出する根菜収穫機。
【請求項2】
前記姿勢保持ベルトは、作物を把持して搬送する際の搬送速度が、前記ガイドベルトによる搬送速度よりも速く設定されている請求項1記載の根菜収穫機。
【請求項3】
前記姿勢保持ベルトは、側面視で前記ガイドベルトとほぼ平行な搬送経路を備えて配設され、前記ガイドベルトに接触する
前記出力プーリからの動力が前記姿勢保持ベルトに伝達されるように構成されている請求項1又は2記載の根菜収穫機。
【請求項4】
前記カッターは、作物の葉部と作物主部との境界よりも作物主部側を切断する位置に設けられている請求項1~3のいずれか一項記載の根菜収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行しながら圃場の作物を抜き取って後方搬送し、カッターで作物の切断予定箇所を切断して収穫する根菜収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の根菜収穫機では、引き抜いた作物を後方上方へ向けて搬送している。後方上方へ持ち上げる搬送無端体の途中から位置決め搬送体で茎葉を持ち直して、根菜の付け根が引き上げられ、位置決め搬送体に接触する状態に作物の上下方向位置が揃えられる。そして、揃えられた作物を茎部搬送体や根部搬送体で後方搬送して、作物の葉部をカッターで切断するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-243741号公報(段落番号「0026」、
図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の構成のものでは、引き抜いた作物の葉部を所定の上下方向高さ位置で精度良く切断し易い点では有用なものである。
この構造では、カッターの上下両側で作物の葉部を挟持した状態で葉部が切断されるものであるため、カッターの下側に位置する根部搬送体の上下方向幅よりも、切断後の葉部長さを短くすることはできないものであった。
また、葉部を挟持した状態で葉部が切断されるものであるため、作物主部を切断対象とすることはできないものであった。
【0005】
本発明は、作物葉部の切断長さを極力短くする、あるいは、作物主部を切断対象とした切断作業を行うことのできる根菜収穫機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る根菜収穫機の特徴構成は、圃場の作物の葉部を把持して抜き取り、かつ斜め後方上方へ向けて作物を搬送する抜き取り搬送装置と、前記抜き取り搬送装置によって搬送されてきた作物を、前記抜き取り搬送装置の下方位置で切断するカッターと、前記抜き取り搬送装置の搬送経路の下側で作物の葉部を把持し、前記カッターでの切断位置に作物の切断予定箇所を合致させるように、前記抜き取り搬送装置より緩やかな傾斜で、上下方向における作物の高さ位置を調節しながら後方搬送して前記カッターに作物を送り込む位置決め用のガイドベルトと、前記切断位置よりも下方で、かつ切断対象の作物の葉部よりも下方の作物主部を把持して搬送する姿勢保持ベルトと、前記ガイドベルトから送り出された作物を搬送する搬送コンベアと、が備えられ、前記ガイドベルトの後端が、前記抜き取り搬送装置の後端より前側であり、前記カッターが、平面視で前記ガイドベルトの後端に重複する位置に配置され、前記姿勢保持ベルトの後端が、前記カッターの切断位置の近傍であり、前記ガイドベルトが、搬送方向の下流側に配置され伝動軸から駆動力が伝えられるガイド駆動プーリと、搬送方向の上流側のガイド従動プーリと、搬送方向で中間の出力プーリとに巻回され、前記姿勢保持ベルトが、搬送方向の上流側の駆動プーリと、搬送方向の下流側の従動プーリとに巻回され、前記出力プーリと前記駆動プーリとが伝動軸によって一体回転可能に連結され、作物の収穫時に、前記抜き取り搬送装置と前記ガイドベルトとで葉部を把持し、且つ前記姿勢保持ベルトで作物主部を把持する状態で、前記カッターが作物の切断を行い、この切断の後に、前記姿勢保持ベルトの後端から作物主部を含む作物を前記搬送コンベアに落下させ、前記抜き取り搬送装置の後端から作物の葉部を排出する点にある。
【0007】
本発明によれば、位置決め用のガイドベルトを用いるとともに、切断位置よりも下方で、かつ切断対象の作物の葉部よりも下方の作物主部を把持して搬送する姿勢保持ベルトを備えているので、作物葉部の切断長さを極力短くする、あるいは、作物主部を切断対象とした切断作業を行うことができる。
つまり、姿勢保持ベルトを用いて作物主部を把持した状態で作物の切断が行われるので、切断時における作物の姿勢を安定させて、作物主部を所定切断位置で安定良く切断し易い。そして、葉部を切断対象とした場合にも、切断位置よりも下方で葉部を把持する必要がないので、葉部を極力短く、もしくは全くない状態に切断することも可能である。
このように、切断形態を多様化し得る等の利点もある。
【0008】
本発明において、前記姿勢保持ベルトは、作物を把持して搬送する際の搬送速度が、前記ガイドベルトによる搬送速度よりも速く設定されていると好適である。
【0009】
本構成によると、作物を把持して搬送する際の姿勢保持ベルトの搬送速度が、ガイドベルトによる搬送速度よりも速く設定されているので、ガイドベルトに吊り持ちされた作物の下部を、上部側よりも少し速くして、作物姿勢をガイドベルトに直交した姿勢に近い状態とし易い。したがって、カッターによる切断が、作物に直交する姿勢で綺麗に行われ易くなり、商品価値の向上にもつなげやすくなる。
【0010】
本発明において、前記姿勢保持ベルトは、側面視で前記ガイドベルトとほぼ平行な搬送経路を備えて配設され、前記ガイドベルトに接触する前記出力プーリからの動力が前記姿勢保持ベルトに伝達されるように構成されていると好適である。
【0011】
本構成によると、側面視でガイドベルトとほぼ平行な搬送経路を備えるように姿勢保持ベルトを配設し、かつガイドベルトに接触する出力プーリを用いることで、ガイドプーリ側から姿勢保持ベルトへの駆動力を取り出すようにしている。これによって、姿勢保持ベルトに対する動力伝達構造を簡素化し得る。
【0012】
本発明において、前記カッターは、作物の葉部と作物主部との境界よりも作物主部側を切断する位置に設けられていると好適である。
【0013】
本構成によると、作物の作物主部を切断対象とすることができる。したがって、葉部を除去した収穫物を得たい場合に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】作物搬送装置の後部付近を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した根菜収穫機の作業走行時における前進側の進行方向(
図1及び
図2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1及び2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
図1における矢印Uは根菜収穫機の「上」、矢印Dは「下」を示している。
【0016】
〔全体構成〕
図1及び
図2に本発明に係る根菜収穫機の一例として大根収穫機が示されている。大根収穫機は、右及び左のクローラ型式の走行装置2により、機体1が支持されており、機体1の右前部に運転部3が支持され、機体1の左部に、収穫対象の作物を抜き取って搬送する作物搬送装置4が前後方向に沿って支持されている。作物搬送装置4の前部に、抜き取り対象の作物の茎葉を条列に沿って左右に分離させるための分離装置5が支持されている。作物搬送装置4の前端下部に、圃場に接地して作物搬送装置4や分離装置5の対地高さを所定高さに保つための補助車輪6と、地中に突入して作物の抜き取りを行い易くするためのサブソイラ17と、が支持されている。
収穫対象の大根A(作物に相当する)は、葉A1(葉部に相当する)と、茎及び根で構成される身A2(作物主部に相当する)と、を備える。
【0017】
作物搬送装置4の後部における下側位置には、作物搬送装置4が備えられた側の左右方向での端部から、反対側の端部へ向けて、作物搬送装置4の後部から落下供給される作物を搬送するための搬送コンベア7が左右方向に沿って支持されている。その搬送コンベア7の後方に、補助の作業者の為の作業デッキ9が備えられている。そして、作業デッキ9の後方の機体後部に貯留部8が支持されている。つまり、作業デッキ9が搬送コンベア7と貯留部8との間に設けられ、作業デッキ9に立つ補助作業者が前方の搬送コンベア7上を流れる作物を、後方の貯留部8へ積み込むことができるようになっている。
【0018】
機体1の上部に屋根10が支持されている。屋根10は、前後方向で運転部3から貯留部8に亘り、左右方向で運転部3から作物搬送装置4に亘っている。
運転部3の下方側にエンジン(図外)が備えられている。エンジンの動力が、走行装置2、作物搬送装置4、分離装置5、搬送コンベア7等に伝達されて、走行しながら収穫作業を行うように構成されている。従って、作物搬送装置4、分離装置5、搬送コンベア7等により作業装置Sが構成されている。
【0019】
〔作物搬送装置の構成〕
図1,3に示すように、作物搬送装置4は、前部が圃場の近傍の低位置で、後部が搬送コンベア7の上側の高位置に位置するように、全体が後上がり状(前下がり状)に支持された挟持搬送ベルト41(抜き取り搬送装置に相当する)を備えて、抜き取った作物を斜め後方上方へ搬送するように構成されている。挟持搬送ベルト41は、機体1に支持された左右一対の支持フレーム40によって支持されている。
そして、作物搬送装置4は、挟持搬送ベルト41の後部で、かつ下方に離れた位置で作物を切断するカッター43、カッター43に作物を送り込む位置決め用のガイドベルト42、及び、カッター43での切断位置よりも下方で、かつ切断対象の作物の葉部よりも下方の作物主部を把持して搬送する姿勢保持ベルト44を備えている。
【0020】
右及び左の挟持搬送ベルト41,41は、右の支持フレーム40に右の挟持搬送ベルト41が支持され、左の挟持搬送ベルト41に左の挟持搬送ベルト41が支持される。左右の挟持搬送ベルト41,41同士の間に、作物の葉部を挟持する前後に長い搬送経路r1が形成されている。
【0021】
右及び左の支持フレーム40の前部に亘って、アーチ状の横向きフレーム16が連結され、右及び左の支持フレーム40の後部は後部枠11で連結されている。
支持フレーム40の前端部及び後端部に、右及び左の回転体15が支持され、前及び後の回転体15に亘って挟持搬送ベルト41が巻回されて、挟持搬送ベルト41の全体が後上がり状(前下がり状)に支持されている。
【0022】
ガイドベルト42は、挟持搬送ベルト41の前後方向での中間部の下側から後方に向けて設けられている。
このガイドベルト42も、前端側よりも後端側が上位となる後上がり状に設けられているが、挟持搬送ベルト41の後上がり傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度となるように設けられている。
つまり、挟持搬送ベルト41よりも下方に離れて位置するカッター43での切断位置に作物の切断予定箇所を合致させるように、ガイドベルト42を後方側ほど挟持搬送ベルト41から離れるように位置させてある。カッター43の切断位置は、作物の葉部と作物主部の境界よりも作物主部側を切断する位置に設定されている。
【0023】
図5に示すように、ガイドベルト42は、左右一対のガイド駆動プーリ42a及び左右一対のガイド従動プーリ42bに巻回され、左右のガイドベルト42,42の外周面同士の間に搬送経路r2が形成されている。搬送経路r2の両脇部分には、搬送経路r2側へ弾性付勢された複数個のテンション輪42cが、左右のガイドベルト42,42の内周側に設けられている。この複数個のテンション輪42cによって、左右のガイドベルト42,42同士を互いに近接する方向へ弾性的に押圧付勢している。
【0024】
カッター43は、
図1、
図3、及び
図4に示すように、支持フレーム40に上端側を支持された伝動軸12を介して駆動力が伝達されるガイド駆動プーリ42aの下側に取り付けられている。したがって、ガイド駆動プーリ42aの回転に伴ってガイドベルト42と共に駆動回転される。
このカッター43、及びガイド駆動プーリ42aは、
図5に示されるように、左側(図中下側)のガイド駆動プーリ42aが時計回りに回転し、右側(図中上側)のガイド駆動プーリ42aが反時計回りに回転している。したがって、搬送経路r2内に挟持されて搬送される作物を後方(矢印B方向)側へ引き込む方向に回転しながら切断する。
【0025】
姿勢保持ベルト44は、
図1、
図3、及び
図4に示すように、ガイドベルト42の下方で、かつカッター43の切断位置よりも下方に設けられている。この姿勢保持ベルト44により、作物の葉部から離れた下方位置で作物主部を把持して搬送する。
左右一対の姿勢保持ベルト44のそれぞれは、
図6に示すように、前側の駆動プーリ44aと後側の従動プーリ44bに巻回され、左右の姿勢保持ベルト44,44の外周面同士の間に搬送経路r3が形成されている。
【0026】
姿勢保持ベルト44の搬送経路r3は、ガイドベルト42の搬送経路r2に対して、側面視でほぼ平行している。
そして、姿勢保持ベルト44,44の各駆動プーリ44aと、ガイドベルト42,42の内周側に接触するように設けた各出力プーリ42dと、が伝動軸45で一体回転可能に連結されている。これにより、出力プーリ42dの回転に伴って駆動プーリ44aが回転駆動される。つまり、姿勢保持ベルト44の搬送経路r3とガイドベルト42の搬送経路r2とが、側面視でほぼ平行であり、かつ、出力プーリ42dの回転軸心と駆動プーリ44aが回転軸心とが同一軸心線上に並ぶ状態で配設されているので、一本の伝動軸45で出力プーリ42dから駆動プーリ44aへ動力を伝達することができる。
【0027】
このとき、駆動プーリ44aの回転径が出力プーリ42dの回転径よりも少し大きく設定されているので、駆動プーリ44aの周速度は、出力プーリ42dの周速度よりも少し速くなる。これによって、姿勢保持ベルト44,44の搬送速度もガイドベルト42の搬送速度よりも少し速くなる。
このように姿勢保持ベルト44,44の搬送速度をガイドベルト42の搬送速度よりも少し速くしているのは、
図4に示すように、カッター43で切断される時点の作物主部が、カッター43の回転面にほぼ直交する姿勢で切断されるようにするためである。
つまり、姿勢保持ベルト44,44の搬送速度と、ガイドベルト42の搬送速度と、の速度差は、自重による垂れ下がり姿勢で搬送される作物の作物主部の軸線を、カッター43の回転面にほぼ直交する前倒れ姿勢に近づけるのに適した速度であるのが望ましい。
【0028】
図6に示すように、姿勢保持ベルト44の巻回範囲内には、姿勢保持ベルト44の搬送経路r3側へ弾性付勢された第一テンション輪44cと、搬送経路r3とは反対側へ弾性付勢された第二テンション輪44dと、が配設されている。このうち、第二テンション輪44dの弾性付勢力は、第一テンション輪44cの弾性付勢力よりも弱く設定されている。
したがって、搬送経路r3内を移動する作物主部は、第一テンション輪44cの弾性付勢力から、逆向きの第二テンション輪44dの弾性付勢力を差し引いた弾性付勢力が作用する姿勢保持ベルト44で、弾性的に挟持されながらカッター43による切断位置へ搬送される。
搬送経路r3内を移動する作物主部との当接によって搬送経路r3から遠ざかる側へ第一テンション輪44cが後退したことによる姿勢保持ベルト44の緩みは、搬送経路r3とは反対側へ弾性付勢された第二テンション輪44dの、搬送経路r3とは反対側への移動によって吸収される。
【0029】
〔分離装置の構成〕
図1,2に示すように、分離装置5は、多数の係止爪18a,19aが間隔を置いて並ぶように一体的に形成された4組の分離ベルト18,19と、上下方向に配置された縦フレーム20とを備えており、縦フレーム20が支持フレーム40の前部に支持されている。
【0030】
分離ベルト19の係止爪19aが左右方向に向くように、二組の分離ベルト19が、左右方向に間隔を置いて縦フレーム20に回転自在に支持されており、右及び左の挟持搬送ベルト41の前部の前方において、右及び左の分離ベルト19の係止爪19aが互いに対向する状態となっている。
【0031】
分離ベルト19の前方において、右及び左の分離ベルト18が左右方向に間隔を置いて縦フレーム20に回転自在に支持されており、分離ベルト18の係止爪18aが前方を向いている。
【0032】
〔搬送装置の支持構造〕
図1,2に示すように、機体1の左前部に、上リンク22及び下リンク23が上下に揺動自在に支持され、上リンク22及び下リンク23の前部に縦リンク24が接続されて、四連リンクが構成されている。
【0033】
上リンク22及び下リンク23の前部に、補助車輪6及びサブソイラ17が支持されており、上リンク22及び下リンク23を上下に昇降させる油圧シリンダ25が備えられている。
【0034】
下リンク23の前部の左右方向の軸芯P1周りに、支持リンク26が揺動自在に支持され、支持リンク26の上部の左右方向の軸芯P2周りに、支持リンク27が揺動自在に支持されている。支持リンク26,27に亘って油圧シリンダ28が接続されており、支持リンク27の上部が、横向きフレーム16の上部に揺動自在に接続されている。
【0035】
機体1の左後部に縦向き支持体29が上下向きに連結されており、筒状部材30が縦向き支持体29に沿って上下方向にスライド自在に支持され、筒状部材30を上下にスライド駆動する油圧シリンダ31が備えられている。筒状部材30の上端部に、支持フレーム40の後部が揺動自在に接続されている。
【0036】
以上の構造により、油圧シリンダ31により筒状部材30を上下にスライドさせることによって、支持フレーム40の後部の高さを変更することができる。この場合、上下方向のスライドに伴う支持フレーム40の前後方向の変位は、支持リンク26,27が軸芯P1周りに前後に揺動することによって吸収される。
【0037】
大根Aの収穫において、例えば大根Aの身A2が長い場合、支持フレーム40の後部の高さを少し高くすればよい。大根Aの身A2が短い場合、支持フレーム40の後部の高さを少し低くすればよい。これにより、ガイドベルト42の後端部と搬送コンベア7の上下間隔を、大根Aの身A2の長さに合わせることができる。
【0038】
油圧シリンダ28を伸長作動及び収縮作動させ、支持リンク26,27を屈伸させて、支持リンク27の上部の位置を上下に変更することにより、支持フレーム40及び挟持搬送ベルト41の前部における対地高さを変更することができる。
【0039】
〔屋根の揺動〕
図1,2に示すように、屋根10において、作物搬送装置4の後部の上側に位置する屋根10の左後部10aは、屋根10の本体部分とは分離されている。
【0040】
屋根10の左後部10aは、屋根10の前後方向の軸芯P4周りに上下に揺動自在に支持されており、屋根10の左後部10aを上下に揺動駆動する電動シリンダ13が備えられている。
【0041】
前述したように、油圧シリンダ31により支持フレーム40の後部が昇降操作される場合、筒状部材30が上下スライド範囲の中間部及び中間部から下側に位置していると、屋根10の左後部10aは、屋根10の本体部分と平行な姿勢となっている。
【0042】
筒状部材30が上下スライド範囲の中間部から上側に移動すると、
図3に示すように、電動シリンダ13により、屋根10の左後部10aが自動的に上側に操作されるのであり、作物搬送装置4の後部と屋根10の左後部10aとの接触が回避される。
【0043】
〔分離装置の支持構造〕
図1,2に示すように、支持フレーム40の前部に、支持リンク32が上下に揺動自在に支持されており、支持リンク32の前部が、縦フレーム20の下部に揺動自在に接続されている。
【0044】
機体1の左前部の左右方向の軸芯P3周りに、操作アーム33が上下に揺動自在に支持されており、操作アーム33の前部が、縦フレーム20の上部に揺動自在に接続されている。油圧シリンダ34が、下リンク23と操作アーム33とに亘って接続されている。
以上の構造により、油圧シリンダ34により操作アーム33を上下に揺動駆動することによって、分離装置5の圃場からの高さを変更することができる。
【0045】
支持リンク26,27及び油圧シリンダ34が、下リンク23に支持されている。機体1の旋回時等において、油圧シリンダ25により上リンク22及び下リンク23を昇降させると、作物搬送装置4の前部及び分離装置5が一緒に昇降する。
【0046】
支持フレーム40と縦フレーム20とが、支持リンク32を介して接続されている。油圧シリンダ28により支持フレーム40、及び挟持搬送ベルト41の前部の圃場からの高さを変更しても、この動作が支持リンク32に吸収されて、分離装置5の高さに変化は無い。
【0047】
同様に、油圧シリンダ34により分離装置5の圃場からの高さを変更しても、この動作が支持リンク32に吸収されて、支持フレーム40、及び挟持搬送ベルト41の前部の高さに変化は無い。
【0048】
〔搬送装置及び分離装置による大根の収穫の流れ〕
図1,2に示すように、機体1が前進するのに伴って、右及び左の分離ベルト18の間に、収穫予定の列の大根Aが入る。
【0049】
右及び左の分離ベルト18において前方に向く係止爪18aが、収穫予定の列の大根Aの葉A1と隣接する列の大根Aの葉A1との間を上側に移動するように、分離ベルト18が回転駆動されて、隣接する大根Aの葉A1が互いに分離される。
【0050】
次に収穫予定の列の大根Aが右及び左の分離ベルト19の間に入るのであり、右及び左の分離ベルト19において対向する係止爪19aが上側に移動するように、分離ベルト19が回転駆動されて、収穫予定の列の大根Aにおいて、隣接する大根Aの葉A1が互いに分離される。
【0051】
左右の挟持搬送ベルト41同士の対向部分によって構成される搬送経路r1での作物搬送方向が後方向きとなるように、右及び左の挟持搬送ベルト41が回転駆動されている。同様に、左右のガイドベルト42同士の対向部分によって構成される搬送経路r1での作物搬送方向が後方向きとなるように、右及び左のガイドベルト42が回転駆動されている。同様に、左右の姿勢保持ベルト44同士の対向部分によって構成される搬送経路r3での作物搬送方向が後方向きとなるように、右及び左の姿勢保持ベルト44が回転駆動されている。
【0052】
収穫予定の列の大根Aの葉A1が、右及び左の挟持搬送ベルト41の前部から右及び左の挟持搬送ベルト41の間に入り込み、右及び左の挟持搬送ベルト41により挟持されながら、大根Aが圃場から持ち上げられて(引き抜かれて)、後側に搬送される。この場合、サブソイラ17により圃場の土が崩されるので、大根Aが圃場から無理なく持ち上げられる(引き抜かれる)。
【0053】
挟持搬送ベルト41により後方上方へ搬送される大根Aは、挟持搬送ベルト41の前後方向での中間部の下側から後方に向けて設けられている右及び左のガイドベルト42にも葉A1を挟持され、後方へ向けて搬送される。このとき、ガイドベルト42は、後方側ほど挟持搬送ベルト41から下方側へ離れるように位置させてある。
したがって、大根Aの後方搬送中に、大根Aの身A2の上端部がガイドベルト42の下縁に当接した状態となり、ガイドベルト42に対する大根Aの相対位置が位置決めされた状態となる。この状態で後方搬送された大根Aは、ガイドベルト42の後端部でガイドベルト42よりも下側に備えたカッター43により、大根Aの葉A1と身A2の境界よりも身A2側を切断される。
【0054】
ガイドベルト42及びカッター43よりも下方側に離れた位置に、切断対象の大根Aの葉A1よりも下方の身A2部分を把持して搬送する姿勢保持ベルト44が設けられていて、この姿勢保持ベルト44によって、切断直前、及び切断中の大根Aの身A2部分が把持されている。これによって、切断直前、及び切断中の大根Aの身A2部分がカッター43との当接箇所から逃げないように確実に位置保持され、安定した姿勢で切断され易く、切断途中で大根Aの身A2部分が落下してしまうような事態が発生することも避け易い。
また、姿勢保持ベルト44の搬送速度はガイドベルト42の搬送速度よりも少し速く設定されているので、大根Aの身A2部分が、カッター43の回転面にほぼ直交する姿勢で見映え良く切断され、商品価値を向上させ易い。
【0055】
ガイドベルト42及び姿勢保持ベルト44の後端部において、大根Aが搬送コンベア7上に落ちて、搬送コンベア7により右側に搬送される。作業デッキ9の作業者は、搬送コンベア7により搬送される大根Aの身A2から、良品の大根Aの身A2を取り出して貯留部8に整列状態に並べて置いていくのであり、不良の大根Aの身A2は搬送コンベア7により搬送されて、搬送コンベア7の右端部から圃場に放出される。
【0056】
この場合、前述の(搬送装置の支持構造)に記載のように、支持フレーム40(ガイドベルト42)の後部の高さを変更して、ガイドベルト42や姿勢保持ベルト44の後端部と搬送コンベア7の上下間隔を、大根Aの長さに合わせることにより、ガイドベルト42や姿勢保持ベルト44の後端部において、大根Aが、こぼれ落ちることなく、ガイドベルト42や姿勢保持ベルト44から搬送コンベア7に落ちるようにすることができる。
【0057】
大根Aの葉A1は、挟持搬送ベルト41により後側に搬送され、挟持搬送ベルト41の後端部から圃場に放出される。この場合、大根Aの葉A1が挟持搬送ベルト41の後端部の略真下に落下するように、大根Aの葉A1を案内する案内板21が備えられている。
【0058】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、抜き取り搬送装置として、一本の無端回動体からなる挟持搬送ベルト41を示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、抜き取り搬送装置として、前端から後端に至る範囲のうちの、前部側と後部側とで別々の搬送ベルトを用いて構成された構造のものであっても良いし、三箇所以上の複数箇所で別々の搬送ベルトを用いて構成された構造のものであっても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0059】
(2)上記実施形態では、カッター43が、大根Aの葉A1と身A2の境界よりも身A2側を切断する構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、カッター43が、大根Aの葉A1を切断する構造のものであったり、大根Aの葉A1と身A2の境界部分を切断する構造のものであってもよい。この場合にも、姿勢保持ベルト44が大根Aの身A2を把持した状態で切断することで安定良く大根Aの切断を行うことができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、大根を収穫対象とする大根収穫機に適した構造であるが、大根収穫機のみに限らず、人参や蕪、あるいは玉葱などの各種の根菜を収穫対象とする根菜収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
41 抜き取り搬送装置
42 ガイドベルト
43 カッター
44 姿勢保持ベルト
A 大根(作物)
A1 葉(葉部)
A2 身(作物主部)