IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ビデオリサーチの特許一覧 ▶ 株式会社iPLAB Startupsの特許一覧

<>
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図1
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図2
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図3
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図4
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図5
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図6
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図7
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図8
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図9
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図10
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図11
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図12
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図13
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図14
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図15
  • 特許-テレビ番組用広告の提供方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】テレビ番組用広告の提供方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/258 20110101AFI20221205BHJP
   H04N 17/00 20060101ALI20221205BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20221205BHJP
【FI】
H04N21/258
H04N17/00 M
H04N17/00 N
G06Q30/02 398
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019069401
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167637
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591101434
【氏名又は名称】株式会社ビデオリサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】518231965
【氏名又は名称】株式会社IPLAB TECHNOLOGIES
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 良一
(72)【発明者】
【氏名】藤森 省吾
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-533001(JP,A)
【文献】特開2010-050549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z99/00
H04B1/06
1/16
H04H20/00-20/46
20/51-20/86
20/91-40/27
40/90-60/98
H04N7/10
7/14-7/173
7/20-7/56
13/00-17/06
21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲティング広告を、テレビ番組を受信する受信装置に提供するテレビ番組用広告の提供方法であって、
複数のテレビ番組の視聴ログを基にターゲティング広告の提供対象とするテレビ番組を決定し、
当該テレビ番組に提供するターゲティング広告を決定し、
当該ターゲティング広告に付加情報を埋め込み、
当該付加情報を埋め込んだターゲティング広告を特定の受信装置に対して送信し、
前記テレビ番組を視聴する視聴者に関連する、前記特定の受信装置以外の受信装置に対して、前記ターゲティング広告と同じ広告枠において、前記ターゲティング広告とは異なるマス広告を送信し、
前記特定の受信装置から、前記送信したターゲティング広告を当該特定の受信装置に関連付けられた一人または複数の視聴者が視聴したか否かの視聴実績を受信し、前記視聴実績に基づいて前記ターゲティング広告の視聴実績を示す視聴効果情報を生成する、テレビ番組用広告の提供方法。
【請求項2】
前記付加情報は音声データに対して埋め込まれる、請求項1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
【請求項3】
前記付加情報は、チャンネルを識別する情報を含む、請求項1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
【請求項4】
前記ターゲティング広告は、テレビ番組の一又は複数の広告枠に対して送信される、請求項1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
【請求項5】
前記付加情報は、前記テレビ番組と同じチャンネルIDを識別する情報を含む、請求項1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ番組用広告の提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送局から不特定の受信装置に対して提供されるテレビCMのようなマス広告は、より多くの人にリーチができる点において優位性を有していた。
【0003】
一方で、テレビにおけるマス広告の課題として、決められたターゲットに効率よく広告を提供することができない点、特に、CM提供が長期的になるほど、視聴者に対する余剰なリーチ及びフリクエンシーが発生する傾向にある点、また、広告が及ぼす 効果が容易に把握できない点などが挙げられている。
【0004】
テレビCMの効果を高めるための技術として、ユーザのスマートフォン等の携帯端末に、テレビCMの動画広告と、関連するネット広告を同時に表示する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-178535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術は、特定ユーザの広告商品への理解を高め、その商品への購買行動を高めることができるかもしれないが、潜在的なターゲットの商品認知度を向上させる、というマス広告が有する強みについては触れられていない。
【0007】
このように、ネット広告分野におけるターゲティング広告の手法は、広告を、ターゲットに対して的確にリーチすることは実現できるとしても、同時に、広告を通じて、潜在的なターゲットを掘り起こすことを実現することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、特にテレビCMにおいて、既存のマス広告による広告内容に対する認知度向上効果を期待しながら、ターゲットに対して効率よく広告を提供できるような仕組みを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の実施形態は、ターゲティング広告を、テレビ番組を受信する受信装置に提供するテレビ番組用広告の提供方法であって、複数のテレビ番組の視聴ログを基にターゲティング広告の提供対象とするテレビ番組を決定し、当該テレビ番組に提供するターゲティング広告を決定し、当該ターゲティング広告に付加情報を埋め込み、当該付加情報が埋め込まれたターゲティング広告を特定の受信装置に対して送信する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特にテレビCMにおいて、既存のマス広告による広告内容に対する認知度向上効果を期待しながら、ターゲットに対して効率よく広告を提供できるような仕組みを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態によるシステムの構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態による、アドレッサブルDMPの機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態による、アドレッサブルDMPの制御部の詳細を示した機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態によるアドレッサブルDMPのストレージの詳細を示した図である。
図5】本発明の第1の実施の形態によるSSPの機能ブロック図である。
図6】本発明の第1の実施の形態によるSSPの制御部及びストレージの詳細を示した機能ブロック図である。
図7】本発明の第1の実施の形態による受信装置の機能ブロック図である。
図8】本発明の第1の実施の形態による視聴ログテーブルの例である。
図9】本発明の第1の実施の形態による、ターゲティング広告の視聴ログ収集に関する仕組みを説明する概念図である。
図10】本発明の第1の実施の形態による視聴率集計テーブルの例である。
図11】本発明の第1の実施の形態によるターゲティング広告対象番組格納テーブルの例である。
図12】本発明の第1の実施の形態によるターゲティング広告管理テーブルの例である。
図13】本発明の第1の実施の形態によるターゲティング広告送信管理テーブルの例である。
図14】本発明の第1の実施の形態による広告視聴効果管理テーブルの例を示した図である。
図15】本発明の第1の実施の形態によるテレビ番組用広告の提供方法の例を示すフローチャート図である。
図16】本発明の第1の実施の形態によるテレビ番組用広告の視聴実績を収集する方法の例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態によるテレビ番組用広告の提供方法は、以下のような構成を備える。
[項目1]
ターゲティング広告を、テレビ番組を受信する受信装置に提供するテレビ番組用広告の提供方法であって、
複数のテレビ番組の視聴ログを基にターゲティング広告の提供対象とするテレビ番組を決定し、
当該テレビ番組に提供するターゲティング広告を決定し、
当該ターゲティング広告に付加情報を埋め込み、
当該付加情報を埋め込んだターゲティング広告を特定の受信装置に対して送信する、テレビ番組用広告の提供方法。
[項目2]
前記付加情報は音声データに対して埋め込まれる、項目1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
[項目3]
前記付加情報は、チャンネルを識別する情報を含む、項目1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
[項目4]
前記ターゲティング広告は、テレビ番組の一又は複数の広告枠に対して送信される、項目1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
[項目5]
前記付加情報は、前記テレビ番組と同じチャンネルを識別する情報を含む、項目1に記載のテレビ番組用広告の提供方法。
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態によるテレビ番組用広告の提供方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態によるテレビ番組用広告提供システムの構成図である。
【0014】
図1に示すように、テレビ番組用広告の提供システムは、広告主1と、広告主1の広告を出稿する広告会社2と、広告会社2からの広告出稿を受け付けるDSP(Demand Side Platform)2と、放送局7から(後述するアドレッサブル広告に適した)テレビ番組の広告枠を受け付け、DSP2から広告枠に対する入札要求を行うことで、広告の調達を行うSSP6(Supply Side Platform)とを有する。また、放送局7から地上デジタル放送等の放送信号を介して、または、サイマル放送等によるインターネットを介して、テレビ番組を受信する受信装置8を有する。また、受信装置8は、放送局7からテレビ番組とともに、不特定の視聴者層に対して提供されるマス広告(TVコマーシャル)を受信する。
【0015】
また、本実施の形態におけるテレビ番組広告の提供システムは、広告会社2から提供されるテレビ番組視聴ログや、受信装置8とペアリングされた携帯端末やパーソナルコンピュータ(PC)等の端末を介して得られる視聴者の購買データや位置情報等を分析し、最適化されたターゲティング広告のプラニングを実行する広告会社DMP(Data Management Platform)4と連携しつつ、受信装置8から視聴者から得られるテレビ番組視聴ログを分析し、アドレッサブル広告(テレビ番組等の放送信号を受信し、インターネットに結線した受信装置における、特定の視聴者属性に対するターゲティング広告)に適した番組を抽出するアドレッサブルDMP5を有する。なお、アドレッサブルDMP5は、上記携帯端末やPC等の端末を介して得られる視聴者の購買データや位置情報等のデータを、広告会社DMP4を介さずに取得する場合もある。SSP6は、DSP2から調達したターゲティング広告を、放送信号またはインターネットを介して、受信装置8に送信する。また、ターゲティング広告を、受信装置とペアリングされ、特定の個人と紐づけられる携帯端末やPC等の端末にも送信し得る。ここで、本システムを構成する各装置は、共通またはローカルのインターネット等のネットワークを経由して、接続される。説明の便宜上、各装置を1台ずつ記載しているが、複数であってもよく、これに限定されない。また、本例において、DMP、DSP、SSP等の名称は別名称で呼称することもでき、また、システム構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で装置を適宜変更することもできる。
【0016】
本実施の形態において、受信装置8は、その受信装置による視聴ログを収集するための装置(後述の視聴ログ収集装置93)に接続可能とすることができ、さらに、視聴ログを収集するための装置が、個人毎の番組の視聴ログを収集する機能(後述の個人特定器95)を有することができる。また、受信装置8は、その受信装置を利用する個人の携帯端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末)とネットワーク経由でペアリングする機能を有することもできる。
【0017】
また、広告主1、広告会社2、放送局7等の装置は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはスマートフォン、タブレット、携帯端末、その他情報端末等であってもよい。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施の形態によるアドレッサブルDMPの機能ブロック図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。
【0019】
図示されるように、アドレッサブルDMP5は、データベース(図示せず)と接続されシステムの一部を構成する。DMP5は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0020】
DMP5は、少なくとも、制御部10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13、入出力部14等を備え、これらはバス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0021】
制御部10は、DMP5全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えば制御部10はCPU(Central Processing Unit)であり、ストレージ12に格納されメモリ11に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0022】
メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、DMP5の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0023】
ストレージ12は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベース(図示せず)がストレージ12に構築されていてもよい。
【0024】
送受信部13は、DMP5をネットワークに接続する。なお、送受信部13は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インターフェースを備えていてもよい。
【0025】
入出力部14は、キーボード・マウス類等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0026】
バス15は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施の形態によるアドレッサブルDMP5の制御部10の詳細を示した機能ブロック図であり、図4は、本発明の第1の実施の形態によるアドレッサブルDMP5のストレージ12の詳細を示した機能ブロック図である。前述の通り、制御部10において、本実施の形態に係る分析に係るアプリケーション・プログラムの実行がされ、この実行されるプログラムのモジュールは、図示のとおり、いくつかの機能ブロックに分けられる。また、サーバの本制御部で実行される機能ブロックの全部又は一部は、その性質に応じてSSP6、または他のネットワーク上の装置の(図示しない)制御部によって実行することも可能である。
【0028】
まず、視聴ログ分析部41は、受信装置8(より具体的には、視聴ログ分析装置33のオンラインメータ96)から、送受信部13を介して、視聴ログを受信する。受信された視聴ログは、アドレッサブルDMP5に内蔵されるストレージ12の視聴ログ格納部51に格納される。また、視聴ログ分析部41は、受信した視聴ログを基に視聴者の視聴行動を分析する。分析するに際し、個人特定器(例えば、ピープルメータ)から得られた個人の視聴ログを参照することもできる。
【0029】
また、個人の視聴ログに加えて、世帯に設置される一又は複数の受信装置から取得される視聴ログから特定の属性に紐づいた個人の視聴ログを分離する方法を用いることもできる。この場合、学習データを、事前に学習データ格納部52に格納しておくこともできる。
【0030】
例えば、学習データについては、まず、受信装置を共有する構成員を判別するため、前述の個人特定器を有する視聴ログ収集装置から取得された、受信装置(サンプル装置S)から取得される視聴ログとその装置を共有する構成員の情報とからなる第1視聴記録データに基づき、視聴チャンネル、視聴日時、属性(例えば、性別、年代による区分)に基づいて、視聴チャンネル、視聴日時から属性の存在確率を算出するための数理モデルを学習する。この学習データに基づいて、視聴ログ分析部41は、対象装置の視聴ログに含まれる視聴チャンネルや視聴日時といった情報から、特定の個人(または属性)による視聴を推定することができる。
【0031】
例えば、視聴ログ分析部41は、属性をC1(子供:4~12才)、C2(子供:13~19才)、F1(女性:20~35才)、F2(女性:35~49才)、F3(女性:50才以上)、M1(男性:20~35才)、M2(男性:35~49才)、M3(男性:50才以上)とし、それぞれに目的変数f1(x)~f8(x)に対応させる。ここでxは説明変数(ベクトル)であり、例えば、f1(x)は、装置を共有する構成員の中にC1の属性の構成員が存在する確率を示す目的変数である。なお、属性はあくまで一例であり、上記の例に限定されるものでない。そして、視聴ログ分析部41は、サンプル装置Sから得た視聴ログに基づいて、上記の目的変数f1(x)~f8(x)と説明変数xとの関係を学習する。
【0032】
そして、視聴ログ分析部41は、個人特定器を有しない視聴ログ収集装置93を設置する装置(対象装置T)から得た視聴ログに基づいて、説明変数に値を入力して、目的変数f1(x)~f8(x)の各々の値(存在確率)を算出する。そして、視聴ログ分析部41は、算出された目的変数f1(x)~f8(x)の各々の値(存在確率)に基づいて対象装置Tの構成員の属性を判定する。具体的には、視聴ログ分析部41は、目的変数f1(x)~f8(x)の値のうち、第1閾値以上である目的変数を抽出し、抽出した目的変数に対応する属性の構成員が対象装置を共有すると判定する。例えば、本実施の形態においては、存在を判定された装置ID「001」の構成員が、属性C1、F2、M2に属する個人(各々個人ID「1」、「2」、「3」)であるとする。
【0033】
次に、視聴ログ分析部41は対象装置Tから得た視聴ログの各々について、対象装置について判定された構成員(属性C1、F2、M2に属する個人)の各々の視聴の有無を判定する。すなわち、視聴ログ分析部41は、異なる時間帯(または、曜日、チャンネル)の視聴ログの各々について、上記判定されたC1、F2、M2の属性のユーザのそれぞれが視聴したかを判定する。
【0034】
装置視聴ログに対して各構成員の視聴を判定する処理に先立ち、視聴ログ分析部41は、サンプル装置Sから取得した個人視聴記録データに基づいて、視聴チャンネル視聴日時、属性(性別、年代による区分)に基づいて、対象の視聴ログが各属性のユーザにより視聴された確率(視聴確率)を算出するための数理モデルを学習する。
【0035】
例えば、視聴ログ分析部41は、C1、C2、F1、F2、F3、M1、M2、M3の属性の各々に目的変数g1(x)~g8(x)に対応させる。ここでyは説明変数(ベクトル)であり、例えば、g1(y)は、対象ログがC1の属性の構成員により視聴されたかを示す目的変数である。そして、視聴ログ分析部41は、サンプル装置Sから得た視聴ログに基づいて、上記の目的変数g1(y)~g8(y)と説明変数yとの関係を学習する。
【0036】
そして、視聴ログ分析部41は、対象装置Tから得た視聴ログに基づいて、説明変数に値を入力して、目的変数g1(y)~g8(y)のうち、対象装置Tを共有する構成員に対応する目的変数の値(視聴確率)を算出する。また、視聴ログ分析部41は、算出した視聴確率のうち、視聴ログについて設定した閾値以上である視聴確率に対応する属性のユーザが当該視聴ログを視聴していたと判定することができる。これにより、装置視聴ログに基づいて、属性C1、F2、M2に属する個人(各々個人ID「1」、「2」、「3」)の個人視聴ログを得ることができる。
【0037】
次に、ターゲティング広告対象番組抽出部42は、分析した視聴ログを基に、ターゲティング広告を挿入する対象となる番組を抽出する。抽出方法は後述する。また、ターゲティング広告対象番組抽出部42は、抽出した番組に関する情報を、ターゲティング広告対象番組情報格納部53に格納し、管理する。ここで、「ターゲティング広告」とは、特定の視聴者属性に属する個人にターゲティングされる広告のことをいう。「ターゲティング広告対象番組」とは、ターゲティング広告が含まれる番組のことをいう。
【0038】
番組情報共有部43は、抽出されたターゲティング広告対象番組を、ネットワーク上の他の装置、例えば、SSP6に通知する。
【0039】
視聴効果情報生成部46は、受信装置8から送信された、ターゲティング広告が表示されたこと、または、視聴されたことを示すログを基に、視聴実績を示す視聴効果情報を生成する。受信されたログは、視聴効果情報として視聴効果情報格納部54に格納される。
【0040】
図5は、本発明の第1の実施の形態によるSSPの機能ブロック図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。
【0041】
図示されるように、SSP6は、データベース(図示せず)と接続されシステムの一部を構成する。SSP6は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0042】
SSP6は、少なくとも、制御部20、メモリ21、ストレージ22、送受信部23、入出力部24等を備え、これらはバス25を通じて相互に電気的に接続される。個々の構成要素の機能構成は、図2のアドレッサブルDMP5と同じ構成であるので説明を省略する。
【0043】
図6は、本発明の第1の実施の形態によるアドレッサブルSSP6の制御部10の詳細を示した機能ブロック図であり、図7は、本発明の第1の実施の形態によるアドレッサブルDMP5のストレージ12の詳細を示した機能ブロック図である。前述の通り、制御部10において、本実施の形態に係る分析に係るアプリケーション・プログラムの実行がされ、この実行されるプログラムのモジュールは、図示のとおり、いくつかの機能ブロックに分けられる。また、サーバの本制御部で実行される機能ブロックの全部又は一部は、その性質に応じてDSP3、放送局7、または他のネットワーク上の装置の(図示しない)制御部によって実行することも可能である。
【0044】
広告管理部61は、ネットワーク上の他の装置、例えば、広告会社2、DSP3、または放送局7から、ターゲティング広告に関するデータを受信し、ターゲティング広告格納部54に格納する。広告管理部61はまた、放送局7から受信した、ターゲティング広告に関するデータに対し、チャンネルIDを識別する音声透かしデータまたはタグデータ等を付加情報として埋め込む処理を行う。ここで、広告管理部61は、ターゲティング広告を識別する付加情報をさらに埋め込むこともできる。
【0045】
広告送信部62は、放送信号、または、インターネット等ネットワークを介して、受信装置8にターゲティング広告を送信する。
【0046】
図7は、本発明の第1の実施の形態による受信装置8の機能ブロック図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。
【0047】
本実施の形態においては、受信装置、特に、デジタル放送受信装置を例に説明する。図8において、受信装置8は、制御部80、メモリ81、ストレージ82、ブラウザ83、チューナ部84、復調部85、分離部86、復号部87、表示制御部88、表示部89、入出力部90、送受信部91を有するよう構成され、各々の構成要素は、バス92によって接続され、互いにデータの送受信が可能な状態となっている。
【0048】
また、受信装置8は、放送局7から送出されたデジタル放送信号を、チューナ84を介して受信し、復調部85によって受信した放送信号を復調する。ここで、受信されるデジタル放送信号の一例として、MPEG-TS方式等で多重化されて伝送された信号が挙げられる。
【0049】
分離部86は、MPEG-TS方式で受信された放送信号を映像データ及び音声データ等のデータに分離し、復号部87は、分離された映像データ及び音声データを復号し、表示制御部88により、映像の場合には、ディスプレイ等の表示部29に番組映像、広告の映像等を表示し、音声の場合には、(図示しない)スピーカ等を経て音声出力する。また、受信装置8は、ブラウザ83をプリインストールしており、ブラウザ83を通じて、インターネット経由で受信されたコンテンツを表示部89に表示することができる。後述するように、受信装置8は、インターネット経由でターゲティング広告をコンテンツデータとして受信し、ブラウザ83を通じて表示部89に表示することができる。
【0050】
制御部80は、受信装置8全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えば制御部80はCPU(Central Processing Unit)であり、ストレージ82に格納されメモリ21に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0051】
メモリ81は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ81は、プロセッサ80のワークエリア等として使用され、また、DMP5の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0052】
ストレージ82は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。また、受信装置8で受信されたテレビ番組を録画先として格納することができる。ストレージ82として、ハードディスク装置を用いることができる。また、ストレージ22として、入出力部90(例えば、USBインターフェース)を介してハードディスク装置を受信装置8に対して外付けすることもできる。
【0053】
送受信部91は、受信装置8を有線または無線でネットワークに接続する。なお、送受信部91は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インターフェースを備えていてもよい。
【0054】
入出力部90は、USBインターフェース、HDMIインターフェース等からなり、ハードディスク装置や録画装置等外部装置と接続するためのインターフェースとなる。さらに、受信装置8によっては、視聴ログ収集装置93が入出力装置90を介して接続される。より具体的には、視聴ログ収集装置93は、チャンネルセンサ94、個人特定器95、オンラインメータ96を有する。
【0055】
チャンネルセンサ94は、受信装置8の電源のオンオフの状態に連動し、受信装置8の音声出力端子に接続されることで、受信装置8から出力される音声を抽出し、その音声の特徴から視聴者が現在同調しているチャンネルを認識する。また、個人特定器95(例えば、ピープルメータ)は、チャンネルセンサと同様、受信装置8の電源状態に連動し、装置を共有する構成員を特定するためのボタンを有しており、装置を共有する各構成員は、番組を視聴する際に自分に割り当てられたボタンを押す。これにより、個人特定器は、番組を視聴している構成員を特定することができる。例えば、構成員として、C1(子供:4~12才)、C2(子供:13~19才)、F1(女性:20~35才)、F2(女性:35~49才)、F3(女性:50才以上)、M1(男性:20~35才)、M2(男性:35~49才)、M3(男性:50才以上)といった属性に属する視聴者層を特定することができる。なお、個人特定器は、装置単位視聴のみを特定する場合においては、視聴ログ収集装置に含まれなくてもよい。また、オンラインメータ96は、特定されたチャンネル(番組)と個人(または個人を特定しない場合は装置)に関する情報を視聴ログとして収集し、インターネット等を介して、アドレッサブルDMP5に送信する。また、オンラインメータ96は、1分間隔で資料ログを収集し、随時アドレッサブルDMP5に送信することもできるが、視聴ログを1分刻みで蓄積しておき、バッチ処理でアドレッサブルDMP5に送信することもできる。なお、受信装置8は、前述のとおり、視聴ログ収集装置を設置しないこともできる。また、視聴ログ収集装置として、別の手段を用いることもでき、また、受信装置8に同様の機能を内蔵させることもできる。
【0056】
図8は、本発明の第1の実施の形態による視聴ログテーブルの例である。図8に示す視聴ログテーブル100は、装置ID、個人特定器95により個人を特定する方法によって特定された個人IDと、その個人の属性、その個人が視聴したチャンネル(番組)の日時、そしてチャンネルに関する情報を格納する。ここで、チャンネルが「0」であるとは、その個人が視聴を行わなかったことを示す。なお、各世帯に1台のみ受信装置が備えられている場合等、世帯と装置が一意に紐づけされる場合は、装置IDの代わりに世帯IDを用いることも可能である。
【0057】
ここで、図9に示すように、従来は、ある時間帯に視聴者が現に視聴しているチャンネルの判定に当たり、視聴ログ収集装置のチャンネルセンサが受信装置から出力される音声を抽出し、その音声の特徴から視聴者が同調しているチャンネルを認識していた。ここで、番組の一部に挿入されるマス広告については、前後に放送される番組と一体で送信されるため、視聴者によるチャンネル切換が無い限り、同じチャンネルとして認識される。例えば、従来例1において、マス広告がテレビ番組の一部に挿入される場合、番組及び広告共にチャンネル1(ch1)として識別される。
【0058】
一方で、本実施形態のように、マス広告の位置にターゲティング広告を別途生成、送信し、そして表示するような場合、番組の対応する位置について音声が一部欠損し、番組の音声特徴量が本来のものと異なることになるため、同時間帯におけるチャンネル判定が欠損する可能性がある。例えば、従来例2において、番組(ch1)内のターゲティング広告に対応する部分はチャンネル判定ができない。
【0059】
そこで、本実施形態においては、上述のように、予めSSP6(または、放送局7、他のアドサーバ、または受信装置8)において、ターゲティング広告に関するデータに対し、前後の番組から得られるチャンネルIDと同じチャンネルID(例えば、ch1)を識別する音声透かしデータまたはタグデータ等を付加情報として埋め込むことで、チャンネルセンサは、視聴者が、そのターゲティング広告の前後に放送される番組と同じチャンネルを視聴していることを、そのターゲティング広告に埋め込まれたチャンネルIDから識別することができる。なお、前後の番組から得られるチャンネルIDは、例えば、チューナ84から得られるチャンネル選局情報、または、復号部87から得られる、音声透かしデータ等により、放送局で付加された付加情報から得られる。
【0060】
図10は、本発明の第1の実施の形態による視聴率集計テーブルの例である。図10に示す番組別視聴率集計テーブル200は、番組別に、視聴率情報を属性別に格納している。例えば、テーブル200の例において、番組Aの視聴率(%)は、C1が1.1%、C2が1.2%、M1が2.4%等となる。
【0061】
図11は、本発明の第1の実施の形態によるターゲティング広告対象番組管理テーブルの例である。図11に示すターゲティング広告対象番組格納テーブル300は、ターゲティング広告対象として抽出された番組と、その番組についてターゲティングされる属性の情報を格納する。例えば、テーブル300の例において、番組Cについて、ターゲティングされる属性がM3とF2であることを示している。また、本テーブルに、ターゲティング広告が提供される広告枠(例えば、「7月13日の朝8時30分00秒から15秒」)に関する情報を格納することもできる。
【0062】
図12は、本発明の第1の実施の形態によるターゲティング広告管理テーブルの例である。図12に示すターゲティング広告管理テーブル400は、ターゲティング広告の対象となる番組について入稿されたターゲティング広告とその広告がターゲティングする属性に関する情報を格納する。例えば、テーブル400の例において、番組Cに対して、広告AA、ABが入稿され、広告AAは、属性M3の視聴者層にターゲティングされ、広告ABは、属性F2の視聴者層にターゲティングされていることを示している。
【0063】
図13は、本発明の第1の実施の形態によるターゲティング広告送信管理テーブルの例である。図13に示すターゲティング広告送信管理テーブル500は、番組Cと、番組C内で提供される広告、ターゲティングされる属性、及び個人を特定するIDを格納する。例えば、テーブル500の例において、番組Cに対して、広告ABが、属性F2の、装置IDが「001」、個人ID「2」で特定される個人に、所定の広告枠に送信されることを示している。ここで、送信設定として、前述のように、時間指定による設定、配信期間による設定、インプレッション数の上限やノルマを設定し、対象番組内で所定のインプレッション数を満たすまで送信し続ける設定、希望する属性が実際に視聴するまで送信し続ける設定等の情報を格納することもできる。ここで、ターゲティング広告を送信する個人として、個人特定器で特定される個人だけでなく、前述の、装置別の視聴ログから特定の属性に紐づいた個人の視聴ログを分離する方法を用いて推測される個人の視聴ログ(例えば、視聴チャンネルや視聴時刻、時間帯)に基づき、広告を提供する番組を視聴するであろう個人に対して広告の送信するよう設定することもできる。
【0064】
図14は、本発明の第1の実施の形態による広告視聴効果管理テーブルの例を示した図である。図14に示す広告視聴効果管理テーブル600は、番組別に、ターゲティング広告に関する情報と、ターゲティング広告が配信された(装置IDと個人IDで特定される)個人によって視聴されたか否かを示す情報を格納する。例えば、テーブル600の例において、番組Cについて、所定の広告枠に配信された広告ABを、ターゲティングした(装置ID「001」、個人ID「2」で特定される)個人が視聴したこと(TRUE)を示している。
【0065】
図15は、本発明の第1の実施の形態によるテレビ番組用広告の提供方法の例を示すフローチャート図である。本提供方法に係る処理は、例えば、アドレッサブルDMP5のメモリ11に格納されたプログラムを制御部10、または、SSP6のメモリ21に格納されたプログラムを制御部20において実行することで実現される。または、アドレッサブルDMP5またはSSP6と他のサーバまたは装置とが協働して、本処理を分散処理することもできるし、他のサーバまたは装置が単独で本処理を実行することもできる。
【0066】
まず、アドレッサブルDMP5の制御部10の視聴ログ分析部41は、受信装置8の視聴ログ収集装置93から受信した視聴ログを分析する(S101)。例えば、視聴ログ分析部41は、個人特定器(例えば、ピープルメータ)から得られた個人の視聴ログを参照し、番組別に各属性の視聴率を集計する。例えば、視聴ログ分析部41は、図8の視聴ログテーブル100に示す各個人IDと関連付けられる個人の番組視聴ログを基に、図10の番組別視聴率集計テーブル200に示すような、番組毎の属性別視聴率情報を生成する。
【0067】
他の例として、視聴ログ分析部41は、個人特定器から得られた個人の視聴ログに加え、装置別の視聴ログから特定の属性に紐づいた個人の視聴ログを分離する方法を用いて推測された個人の視聴ログを基に、図10の番組別視聴率集計テーブル700に示すような、番組毎の属性別視聴率情報を生成することもできる。本例によれば、個人特定器から得られた視聴ログより広い範囲の装置から得られた視聴ログを利用できるため、より確度の高い視聴率情報を得ることができる。
【0068】
続いて、アドレッサブルDMP5のターゲティング広告対象番組抽出部42は、ターゲティング広告を配信する対象となる番組を抽出する(S102)。例えば、ターゲティング広告対象番組抽出部42は、図10に示す番組別視聴率集計テーブル200を参照し、番組A、Bが、各属性別の視聴率にばらつきが少ないのに対し、番組C、Dが、特定の属性の視聴者層の視聴率が他の属性の視聴率に比べて突出していることを特定する。特に、番組Cについて、M3の視聴率が5.7、F2の視聴率が4.7であり、番組Dについて、C2の視聴率が5.7、F2の視聴率が4.7であるように、他の属性の視聴率に比べて顕著に高いことがわかる。この傾向は、ある番組においては、特定の属性の視聴者層にターゲティングした広告を効率的に提供する機会があることを示しており、このような番組を、番組抽出部42は、ターゲティング広告を提供することに適した番組として抽出する。すなわち、図10の例においては、番組抽出部42は、番組C、Dをターゲティング広告対象番組として抽出する。ここで、特定の属性の視聴者層の視聴率が他の属性に比べて顕著に高いことを示す基準として、絶対的な閾値を用いたり、番組の全体の視聴率と相対的な閾値を用いたりすることができる。
【0069】
次に、アドレッサブルDMP5の番組情報共有部43は、抽出されたターゲティング広告対象番組に関連する情報を共有する(S103)。例えば、番組情報共有部43は、抽出されたターゲティング広告対象番組に関連する情報を、ネットワーク上の他の装置、例えば、SSP6や放送局7に通知または共有する。共有する情報としては、例えば、図11に示すターゲティング広告対象番組格納テーブル300に示すように、「番組Cは、属性M3とF2という視聴者層がいて、ターゲティング広告に適した広告枠がある」、といった情報が挙げられる。これにより、SSP6や放送局7等の装置は、ターゲティング広告に適した番組を把握することができ、その番組を、ターゲティング広告を配信する対象番組とすることを決定すると、DSP3や広告会社2と連携して広告主1に対して広告の入稿をオファーすることができる。例えば、広告会社2は、広告主1に対して、「番組Cは、属性M3やF2といった視聴者層が〇〇人いそうなので、ターゲティング広告枠を××円で買わないか」といったオファーを提示することができる。
【0070】
続いて、SSP6の広告管理部61は、入稿されたターゲティング広告に対して、チャンネルIDを識別する音声透かしデータまたはタグデータ等を付加情報として埋め込む(S104)。具体的には、ターゲティング広告に含まれる音声データに対し、前後の番組と同じチャンネルIDが含まれた情報を電子的に埋め込み、後に、埋め込んだ情報からチャンネルIDが認識できるようになる。ここで、そのターゲティング広告に関連するチャンネルが特定できれば、チャンネルID以外のチャンネル識別子が用いられても良いし、番組ID等これらに代わる情報により、最終的に視聴者が視聴している対象(番組、チャンネル等)が特定できればよい。ここで、広告管理部61は、ターゲティング広告を識別する付加情報をさらに埋め込むこともできる。ここで、付加情報として埋め込まれるデータとして、ターゲティング広告が再生される、広告枠の時刻が埋め込まれていてもよい。
【0071】
続いて、SSP6の広告管理部61は、透かしデータまたはタグデータ等の付加情報が付加されたターゲティング広告をストレージに格納する(S105)。例えば、広告会社が、ターゲティング広告のための広告データを入稿すると、広告データは、DSP3を介してSSP6に送信され、SSP6のストレージに格納される。ここで、広告会社のほか、放送局や広告主が、直接広告データを入稿することもできる。例えば、格納されたターゲティング広告のための広告データは、インターネットを経由して、ターゲティング広告を放送する一または複数の放送局により、内容確認することもできる。広告データは、例えば、MP4/MPEG4形式のフォーマットで格納することができる。また、放送の解像度、超高解像度、標準解像度、低解像度といった異なる解像度による形式による格納、また、低速回線、高速回線といった通信状況に応じた異なる圧縮形式やファイルサイズによる格納も可能とすることが好ましい。以上の一連の処理により、ターゲティング広告を受信装置に対して配信する準備が完了する。
【0072】
図16は、本発明の第1の実施の形態によるテレビ番組用広告の視聴実績を収集する方法の例を示すフローチャート図である。本提供方法に係る処理は、例えば、SSP6のメモリ21に格納されたプログラムを制御部20において実行することにより、または、アドレッサブルDMP5のメモリ11に格納されたプログラムを制御部10において実行することで実現される。または、SSP6またはアドレッサブルDMP5と他のサーバまたは装置とが協働して、本処理を分散処理することもできるし、他のサーバまたは装置が単独で本処理を実行することもできる。例えば、SSP6で実行される処理を、アドサーバ等の広告配信サーバにより実行することもできる。
【0073】
まず、SSP6の制御部20の広告送信部62は、ターゲティング広告格納部71に格納されたターゲティング広告データを受信装置8に配信する(S201)。例えば、広告送信部62は、図13に示すターゲティング広告送信管理テーブル500を参照し、番組放送中または事前に、広告データをターゲティングする個人が視聴する受信装置8に送信する。ターゲティング広告を送信する広告枠が決まっている場合は、例えば、番組Cにおいて、広告ABに関する広告データを、装置ID「001」、個人ID「2」で特定される個人が視聴する受信装置8に対して、広告枠の時刻「7月13日8時30分00秒」または事前の時刻に、送信する。広告データが受信装置8に対して事前送信される場合は、受信装置8のメモリに広告データが一時的に蓄積され、所定の広告枠の時刻において、ターゲティング広告を表示する。他の例において、ターゲティング広告を表示すべき受信装置8が、所定のタイミングで広告の受信要求をSSP6に送信することも可能である。さらに他の例においては、放送局7が、テレビ番組とともにターゲティング広告を、放送信号を介して受信装置8に送信することもできる。また、放送局7が、サイマル放送や見逃し視聴のために、テレビ番組をインターネット配信する場合においては、テレビ番組とともにターゲティング広告を、インターネット経由で受信装置8に送信することもできる。また、前述の通り、ターゲティング広告を、受信装置とペアリングされ、特定の個人と紐づけられる携帯端末やPC等の端末にも送信し得る。
【0074】
送信されたターゲティング広告に係る広告データは、受信装置8の表示部89に、ブラウザ83を介して表示される。例えば、テレビ番組はリニア放送である場合は、テレビ番組自体は放送信号を介して受信装置8の表示部89に表示されるのに対して、ターゲティング広告は、インターネットを経由して、ブラウザ83を介して表示部29に表示される。表示形態としては、放送信号を介して表示されるテレビ番組の映像にオーバーレイするようにターゲティング広告の映像を表示することができる。他の例において、放送信号を介してテレビ番組とともにターゲティング広告を送信する場合は、ターゲティング広告が含まれる放送信号は、受信装置8において、所定の処理を経たのちに復号部87によって復号化され、その結果、ターゲティング広告が、表示部89に表示される。
【0075】
このように、システム全体として、幅広い属性の視聴者層にリーチし、広告商品やサービスの認知度を高める効果を維持するために不特定多数の視聴者に対するマス広告を提供しつつ、特定の属性の個人と紐づけられる受信装置に対しては、その属性の個人を狙ったターゲティング広告を提供することができる、といった、テレビ広告とインターネット広告双方のメリットを享受できる。
【0076】
また、一のテレビ番組において、特定の受信装置に対してターゲティング広告を提供する広告枠は、複数ある広告枠の一つの枠とすることができるし、指定されたインプレッション数に応じて回数を増やすこともできる。
【0077】
続いて、アドレッサブルDMP5の視聴効果情報生成部44は、受信装置8から、送信したターゲティング広告を視聴したか否かの視聴ログを受信する(S202)。例えば、視聴者は、番組を視聴する際に、受信装置8に設置された視聴ログ収集装置93の個人特定器(例えば、ピープルメータ)、において、視聴者個人が自分に割り当てられたボタンを押すことで、これにより、個人特定器は、番組を視聴している構成員を特定することができるので、アドレッサブルDMP5は、ターゲティング広告が配信された時刻にその広告を視聴したか否かに関する情報を視聴ログとして取得することができる。または、前述のように、装置別の視聴ログから特定の属性に紐づいた個人の視聴ログを分離する方法を用いて推測された個人の視聴ログを受信することもできる。なお、前述のように、受信装置8に、視聴ログ収集装置93(個人特定器の機能を含む)の機能を内蔵させることもできる。また、ここで、上述のように、ターゲティング広告はその音声データにチャンネルID等の識別情報が音声透かしデータまたはタグデータ等として埋め込まれているので、視聴効果情報生成部44は、視聴者が、広告配信時刻にそのチャンネルを視聴していたことを、埋め込まれた透かしデータまたはタグデータ等の付加情報から抽出されるチャンネルID等の識別情報から確認することができる。また、さらにターゲティング広告を識別する付加情報が埋め込まれている場合は、その付加情報から抽出された広告ID等の識別情報から特定のターゲティング広告を確認することができる。
【0078】
視聴効果情報生成部44は、視聴ログから、広告の視聴実績を示す視聴効果情報を生成する(S203)。例えば、視聴効果情報生成部44は、図14に示す広告視聴効果管理テーブル600のように、番組別に、ターゲティング広告に関する情報と、ターゲティング広告が配信された個人を特定するID(本例においては「装置ID」及び「個人ID」)と、個人(構成員)によって視聴されたか否かを示す情報を生成し、視聴効果情報格納部54に格納する。例えば、テーブル600の例において、番組Cについて、広告ABを(装置ID「001」、個人ID「2」で特定される)ターゲティングされた個人が視聴したこと(TRUE)を示している。一方で、同テーブルは、番組Cにおいて、広告ABを(装置ID「002」、個人ID「2」で特定される)個人は、その広告を視聴しなかったこと(FALSE)を示している。ここで、視聴実績を示す視聴効果情報として、広告毎にターゲティングされた個人が接触した回数を累計した情報を生成することもできる。
【0079】
視聴効果情報生成部44は、生成した視聴効果情報を、広告の視聴実績として、他の装置に共有する(S204)。例えば、視聴効果情報生成部44は、図14に示すような広告視聴の実績を示す情報を、配信実績としてSSP6、放送局7等に送信する。このように、提供された広告が、ターゲティングされた視聴者層により実際に視聴されたかを知ることができる。
【0080】
なお、本実施の形態においては、アドレッサブルDMP5から受信装置8に対してターゲティング広告を送信し、受信装置8から視聴ログを取得する態様を例示して説明したが、これに限定されず、例えば、広告会社DMP4または放送局7が、直接受信装置から視聴ログを取得し、また、視聴ログを基にターゲティング広告の配信先となる受信装置を決定し、その受信装置に対してターゲティング広告を送信する、という態様にも適用可能である。例えば、放送局が、データ放送を表示するBMLにタグを埋め込み、受信装置から番組の視聴ログを収集し、視聴ログを基に、ターゲティング広告の配信先を決定し、送信する、といった例にも適用し得る。
【0081】
(変形例)
第1の実施形態においては、ターゲティング広告の視聴ログを、視聴ログ収集装置が、受信装置から出力される、音声透かしデータまたはタグデータ等の付加情報を含む音声データを抽出することで、視聴者が視聴したチャンネルを認識する形態について言及しているが、音声データに限らず、視聴ログ収集装置が、受信装置から出力される映像データ、テキスト情報データ等他の形式のデータに基づいて視聴番組のチャンネルを認識する場合においては、広告管理部61は、チャンネルを識別する情報を含む他の形式の付加情報をターゲティング広告に予め埋め込むことができる。
【0082】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 広告主装置
2 広告会社装置
3 DSP
4 広告会社DMP
5 アドレッサブルDMP
6 SSP
7 放送局
8 受信装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16