(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】食品包装用フィルム及び食品包装用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20221205BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20221205BHJP
B65D 81/28 20060101ALI20221205BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221205BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D85/50 120
B65D81/28 C
B32B27/18 Z
B32B27/32 E
(21)【出願番号】P 2019103058
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】512146823
【氏名又は名称】株式会社ヒューリンク
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 清
(72)【発明者】
【氏名】森 亮佑
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-114606(JP,A)
【文献】特開2007-160530(JP,A)
【文献】特開2017-030842(JP,A)
【文献】特開2011-111437(JP,A)
【文献】特開2003-341713(JP,A)
【文献】特開2017-212940(JP,A)
【文献】特開平09-290865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 85/50
B65D 81/28
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層として第1樹脂と水酸化カルシウム粒子とを含む第1樹脂層を備え、
第2樹脂を含む第2樹脂層であって、前記第1樹脂層の一方面に積層された第2樹脂層をさらに備え、
前記第1樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含
み、
前記第2樹脂は、ポリオレフィン系ホモポリマーを含み、
前記第1樹脂層はさらにエルカ酸アミドを含んでおり、前記第2樹脂層はエルカ酸アミドを含んでおらず、
前記第1樹脂層は、前記エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を70質量%以上含んでいる
食品包装用フィルム。
【請求項2】
前記第1樹脂層の厚さは、0.01μm以上10μm以下である
請求項1に記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
前記第2樹脂層の厚さは10μmを上回る
請求項1または2に記載の食品包装用フィルム。
【請求項4】
第3樹脂を含む第3樹脂層をさらに備え、
前記第3樹脂層は、前記
第1樹脂層が積層されている一方面と対向する前記
第2樹脂層の他方面に積層されており、
前記第3樹脂層の厚さは0.01μm以上10μm以下である
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の食品包装用フィルム。
【請求項5】
前記第3樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む
請求項
4に記載の食品包装用フィルム。
【請求項6】
前記第1樹脂層は、前記第1樹脂を含む第1樹脂組成物に対して、0.1質量%以上1 2質量%以下の水酸化カルシウム粒子を含む
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の食品包装用フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の食品包装用フィルムで構成された食品包装用袋 であって、
袋の内表面が前記第1樹脂層で構成されている
食品包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルム及び食品包装用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容した生鮮食品(野菜等)の鮮度を保持する食品包装用袋、及び、該食品包装用袋を作製するための食品包装用フィルムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の食品包装用フィルムは、樹脂積層体として構成されており、該樹脂積層体の最外層として、第1樹脂と水酸化カルシウム粒子とを含む第1樹脂層を備えている。
また、特許文献1の食品包装用袋は、前記第1樹脂層が袋の内側となるように、すなわち、前記第1樹脂層が袋の内表面を構成するように、前記食品包装用フィルムをシールすることにより作製されている。
【0004】
特許文献1の食品包装用袋では、前記食品包装用フィルムの第1樹脂層に含まれる水酸化カルシウムにより、内部に収容した野菜等の生鮮食品が、雑菌の作用によって発酵したり、腐敗したりすることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、特許文献1の食品包装用袋は、前記食品包装用フィルムを搬送しながら、前記食品包装用フィルムの端縁部分をシールすることにより作製されるが、前記食品包装用フィルムの搬送中や前記食品包装用フィルムのシール中に前記食品包装用フィルムに加わる外力によって、前記食品包装用フィルムから水酸化カルシウム粒子が脱落することがある。
このような場合、前記食品包装用袋は、十分な鮮度保持性を発揮できなくなると考えられる。
【0007】
また、特許文献1の食品包装用袋では、開放端縁側から内部に野菜等の生鮮食品を収容した後に前記開放端縁部分をシールしているときにも、前記食品包装用フィルムに加わる外力によって、袋の内表面から水酸化カルシウム粒子が脱落し、脱落した水酸化カルシウム粒子が野菜等の生鮮食品に異物として混入することがある。
このように、脱落した水酸化カルシウム粒子が食品包装用袋の内部に収容された野菜等の生鮮食品に異物として混入することは、衛生面の観点から好ましくない。
【0008】
上記のごとく、特許文献1の食品包装用袋では、水酸化カルシウム粒子の脱落が懸念されるものの、水酸化カルシウムの脱落を抑制することについて十分な検討はなされていない。
【0009】
このような事情に鑑み、本発明は、水酸化カルシウム粒子が脱落することを抑制することができる食品包装用フィルム及び食品包装用袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、最外層として第1樹脂と水酸化カルシウム粒子とを含む第1樹脂層を備えた食品包装用フィルムを、前記第1樹脂がエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含むものとすることにより、前記第1樹脂層が袋の内表面を構成するように作製した食品包装用袋において、前記水酸化カルシウム粒子が前記第1樹脂層から脱落することを比較的抑制できることを見出して、本発明を想到するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る食品包装用フィルムは、
最外層として第1樹脂と水酸化カルシウム粒子とを含む第1樹脂層を備え、
前記第1樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む。
【0012】
斯かる構成によれば、前記第1樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含むので、前記第1樹脂層が袋の内表面を構成するように作製した食品包装用袋において、前記水酸化カルシウム粒子が前記第1樹脂層から脱落することを抑制することができる。
これにより、前記食品包装用袋においては、袋の内部に収容した野菜等の生鮮食品の鮮度を十分に保持することができるとともに、脱落した前記水酸化カルシウムが、袋の内部に収容した野菜等の生成食品に混入することを抑制することができる。
【0013】
前記食品包装用フィルムにおいては、
前記第1樹脂層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、前記第1樹脂層の厚さが0.01μm以上10μm以下であるので、前記第1樹脂層が袋の内表面を構成するように作製した食品包装用袋において、前記水酸化カルシウム粒子が前記第1樹脂層から脱落することをより十分に抑制することができる。
【0015】
前記食品包装用フィルムにおいては、
第2樹脂を含む第2樹脂層をさらに備え、
前記第2樹脂層は前記第1樹脂層の一方面に積層されており、
前記第2樹脂層の厚さは10μmを上回ることが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、水酸化カルシウムの脱落を抑制しつつ、フィルムの破断を抑制することができる。
これにより、水酸化カルシウム粒子の脱落を抑制しつつ、延伸性が良好なフィルムとすることができる。
【0017】
前記食品包装用フィルムにおいては、
第3樹脂を含む第3樹脂層をさらに備え、
前記第3樹脂層は、前記第1樹脂層が積層されている一方面と対向する前記第2樹脂層の他方面に積層されており、
前記第3樹脂層の厚さは0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0018】
斯かる構成によれば、水酸化カルシウム粒子の脱落を抑制しつつ、フィルムのカールを抑制することができる。
【0019】
上記食品包装用フィルムにおいては、
前記第1樹脂層は、前記第1樹脂を含む第1樹脂組成物に対して、0.1質量%以上12質量%以下の水酸化カルシウム粒子を含むことが好ましい。
【0020】
斯かる構成によれば、前記第1樹脂層が、前記第1樹脂を含む第1樹脂組成物に対して、0.1質量%以上の水酸化カルシウム粒子を含んでいるので、収容した生鮮食品(野菜等)の鮮度をより十分に保持することができる。
また、前記第1樹脂層が、前記第1樹脂組成物に対して、11質量%以下の水酸化カルシウム粒子を含んでいるので、フィルムが成形し易くなる。
【0021】
上記食品包装用フィルムにおいては、
前記第2樹脂は、ポリオレフィン系ホモポリマーを含むことが好ましい。
【0022】
斯かる構成によれば、水酸化カルシウム粒子の脱落を抑制しつつ、フィルムの機械的強度及び耐熱性を高めることができる。
【0023】
上記食品包装用フィルムにおいては、
前記第3樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含むことが好ましい。
【0024】
斯かる構成によれば、水酸化カルシウム粒子の脱落を抑制しつつ、フィルムのカールを抑制することができる。
【0025】
本発明に係る食品包装用袋は、
前記食品包装用フィルムで構成された食品包装用袋であって、
袋の内表面が前記第1樹脂層で構成されている。
【0026】
斯かる構成によれば、前記第1樹脂がエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含んでいるので、袋の内表面を構成する前記第1樹脂層から前記水酸化カルシウム粒子が脱落することを抑制することができる。
これにより、袋体の内部に収容した野菜等の生鮮食品の鮮度を十分に保持することができるとともに、脱落した前記水酸化カルシウムが、袋体の内部に収容した野菜等の生成食品に混入することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、水酸化カルシウム粒子が脱落することを抑制することができる食品包装用フィルム及び食品包装用袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る食品包装用フィルムの構成を示す断面図。
【
図2】(a)は、本実施形態に係る食品包装用袋の全体構成を示す平面図。(b)は、(a)のA側から見た構成を示す図。
【
図3】(a)は、擦傷試験前の実施例1に係る食品包装用フィルムを第1樹脂層側から撮像した図。(b)は、擦傷試験後の実施例1に係る食品包装用フィルムを第1樹脂層側から撮像した図。(c)は、擦傷試験前の比較例1に係る食品包装用フィルムを第1樹脂層側から撮像した図。(d)は、擦傷試験後の比較例1に係る食品包装用フィルムを第1樹脂層側から撮像した図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0030】
(食品包装用フィルム)
図1に示すように、本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、最外層として第1樹脂と水酸化カルシウム粒子1aとを含む第1樹脂層1を備え、前記第1樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む。
本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、水酸化カルシウム粒子が脱落することを抑制することができるフィルムであり、そのため、食品の鮮度を保つ効果に優れるフィルムである。
【0031】
また、本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、第2樹脂を含む第2樹脂層2をさ らに備え、第2樹脂層2は第1樹脂層1の一方面に積層されている。
さらに、本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、第3樹脂を含む第3樹脂層3を さらに備え、第3樹脂層3は、第1樹脂層1が積層されている一方面と対向する第2樹脂層2の他方面に積層されている。
すなわち、本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、第2樹脂層2を中心層とし、中心層たる第2樹脂層2の互いに対向する面に、第1樹脂層1及び第3樹脂層3をそれぞれ備えている。
なお、食品包装用フィルム10が第1樹脂層1の一層のみからなる場合には、第1樹脂 層1が最外層となる。
【0032】
第1樹脂層1及び第3樹脂層3は、第2樹脂層2に直に(他の層を介さずに)積層されていることが好ましい。
本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、最外層たる第1樹脂層1と、第1樹脂層 1と直に接するように積層された第2樹脂層2と、第2樹脂層2と直に接するように積層 された第3樹脂層3と、を少なくとも有する3層以上のフィルムであることが好ましく、 最外層たる第1樹脂層1と、第1樹脂層1に直に接するように積層された第2樹脂層2と、第2樹脂層2と直に接するように積層された第3樹脂層3と、からなる3層構成のフィルムであることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、無延伸成形のものでも、延伸成形されたものであってもよいが、延伸成形されたものであることが好ましく、二軸延伸成形されたものであることがより好ましい。
【0034】
第1樹脂層1は、第1樹脂と水酸化カルシウム粒子とを含む第1樹脂組成物(以下、単に、第1樹脂組成物ともいう)から構成される。第1樹脂層1は、第1樹脂組成物に対して、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を70質量%以上含んでいることが好ましく、80質量%以上含んでいることがより好ましい。
第1樹脂は、全てがエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体であってもよいし、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、結晶性ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を単量体とする単独共重合体または二元共重合体が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0035】
第1樹脂に含まれるエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体(以下、PEBともいう)は、プロピレン、エチレン及び1-ブテンを主成分とする共重合体であり、通常多段共重合法で得られる樹脂である。
PEBとしては、融点が、125~135℃の範囲のものが好ましく、130~132℃のものがより好ましい。
PEBの融点は、入力補償型DSC装置(パーキン・エルマー社製、Diamond DSC)を用い、以下の手順により測定した値である。
(i)PEB5mgを秤量し、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰めて、上記DSC装置にセットする。
(ii)窒素気流下、-40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃にて5分間保持した後、20℃/分の速度で冷却し、-40℃にて5分間保持する。
(iii)再度、20℃/分の速度で300℃まで昇温し、その際に得られたDSC曲線から、融点を求める。融点は、JIS K 7121の9.1(1)に定める溶融ピーク(DSC曲線に複数のピークがある場合には最大の溶融ピーク)のピーク温度とする。
【0036】
PEBのメルトマスフローレート(MFR)は、0.5g/10分以上10g/10分以下が好ましく、3g/10分以上8g/10分以下がより好ましく、4g/10分以上7g/10分以下がさらに好ましい。MFRを上記範囲とすることにより、第1樹脂を適度な流動性を有するものとすることができるので、フィルムを精度良い厚みで作製することができる。
PEBのMFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所製)を用いて、JIS K 7210:1999に準じて、測定温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定することができる。
【0037】
PEBの組成としては、水酸化カルシウム粒子の脱落を抑制しつつ、比較的低温(例えば、140℃)で十分なヒートシール性を確保できることから、プロピレン含有量が50質量%以上であり、かつ、エチレン含有量と1-ブテン含有量との合計が50質量%未満であることが好ましい。
また、PEBの組成としては、プロピレン含有量が99質量%未満であり、かつ、エチレン含有量と1-ブテン含有量との合計が1質量%以上であることが好ましく、プロピレン含有量が97質量%未満であり、かつ、エチレン含有量と1-ブテン含有量との合計が3質量%以上であることがより好ましく、プロピレン含有量が95質量%未満であり、かつ、エチレン含有量と1-ブテン含有量との合計が5質量%以上であることがさらに好ましい。
プロピレン含有量が97質量%未満又は95質量%未満である場合、エチレン含有量及び1-ブテン含有量は、それぞれ、1質量%以上であることが好ましい。
なお、プロピレン含有量、エチレン含有量、及び、1-ブテン含有量は、仕込み時の含有量を意味する。
【0038】
第1樹脂層1の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上8μm以下であることがより好ましく、2μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。
第1樹脂層1の厚さを上記範囲とすることにより、低コストでフィルムを作製することができる。また、ヘーズ(曇り度)を低くすることができるため、袋体としたときに、内部に収容した生鮮食品(野菜等)の視認性を向上させることができるとともに、生鮮食品の鮮度を十分に保持することができる。
第1樹脂層1の厚さは、電子顕微鏡を用いて測定することができる。具体的には、500倍の倍率で食品包装用フィルム10の断面を観察し、食品包装用フィルム10においてランダムに選んだ任意の10点の厚さを測定し、これらの測定値を算術平均することにより求めることができる。
【0039】
第1樹脂層1は、第1樹脂組成物に対して、0.1質量%以上12質量%以下の水酸化カルシウム粒子1aを含んでいることが好ましく、3質量%以上10質量%以下の水酸化カルシウム粒子1aを含んでいることがより好ましく、5質量%以上9質量%以下の水酸化カルシウム粒子1aを含んでいることがさらに好ましい。本明細書において、第1樹脂組成物に対する水酸化カルシウム粒子1aの質量割合は、配合時における、第1樹脂組成物に対する水酸化カルシウム粒子1aの質量割合を意味する。
【0040】
水酸化カルシウム粒子1aは、純度90%以上のものであることが好ましく、純度95%以上のものであることがより好ましく、純度97%以上のものであることがさらに好ましい。水酸化カルシウム粒子1a中の酸化カルシウム粒子の含有割合は1質量%以下であることが好ましい。
【0041】
水酸化カルシウム粒子1aの平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、1μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。
水酸化カルシウム粒子1aの平均粒子径は、配合前に、測定装置としてレーザー回折式粒度分布測定機(株式会社島津製作所製 SALD-2300)を用いてJISZ8825に準拠して測定する。具体的な測定方法としては、水酸化カルシウム粒子を水槽内に分散させ、上記の装置を用いて、光の回折・散乱強度分布を測定および解析し、粒子径及び体積基準の粒子径分布を測定することにより、算出している。測定方式、測定範囲、及び光源は以下の通りである。
・測定方式: レーザー回折及び散乱
・測定範囲: 0.017~2500μm
・光源:半導体レーザー(波長680nm、出力3mW)
【0042】
第1樹脂層1は、エルカ酸アミドを含有していることが好ましい。第1樹脂層1がエルカ酸アミドを含有することにより、水酸化カルシウム粒子が脱落することをより抑制することができる。その結果、フィルムを袋体としたときに、内部に収容した生鮮食品の外観が経時的変化を抑制することができるとともに、大腸菌等の細菌が経時的に増加することを抑制することができる。
第1樹脂層1がエルカ酸アミドを含有する場合、その含有量は、第1樹脂組成物に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以上0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.03質量%以上0.07質量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
第1樹脂層1は、ステアリン酸カルシウムを含有していることが好ましい。第1樹脂層1がステアリン酸カルシウムを含有することにより、水酸化カルシウム粒子が脱落することをより抑制することができることに加えて、袋体としたときの開封性がより良好となる。
第1樹脂層1がステアリン酸カルシウムを含有する場合、その含有量は、第1樹脂組成物に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.02質量%以上0.07質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
第1樹脂層1は、エルカ酸アミド及びステアリン酸カルシウムの両方を含有していることが好ましい。第1樹脂層1に、エルカ酸アミド及びステアリン酸カルシウムの両方が含有されていることにより、水酸化カルシウム粒子の脱落抑制効果がさらに奏される。第1樹脂層1がエルカ酸アミド及びステアリン酸カルシウムの両方を含有している場合、その含有量の好ましい範囲は、上述の好ましい範囲と同様である。
【0045】
第1樹脂層1は、水酸化カルシウム粒子、エルカ酸アミド、及び、ステアリン酸カルシウム以外の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、帯電防止剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。第1樹脂層1が前記添加剤を含有する場合、その含有量は、例えば、第1樹脂組成物に対して、1質量%以下であることが好ましい。
【0046】
第2樹脂層2は、第2樹脂を含む第2樹脂組成物(以下、単に、第2樹脂組成物ともいう)から構成されている。第2樹脂は、ポリオレフィン系ホモポリマーを含む。第2樹脂層2は、第2樹脂組成物に対して、ポリオレフィン系ホモポリマーを80質量%以上含んでいることが好ましく、90質量%以上含んでいることがより好ましい。
第2樹脂は、全てがポリオレフィン系ホモポリマーであってもよいし、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、結晶性ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を単量体とする単独共重合体または二元共重合体が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0047】
ポリオレフィン系ホモポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)のホモポリマー、中密度ポリエチレン(MDPE)のホモポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)のホモポリマー、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のホモポリマー、無延伸ポリプロピレン(CPP)のホモポリマー等が挙げられる。低密度ポリエチレンのホモポリマーは、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)のホモポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレンのホモポリマー、メタロセン低密度ポリエチレンのホモポリマー、または超低密度ポリエチレンのホモポリマーであってもよい。
【0048】
第2樹脂層2の厚さは、10μmを上回っていることが好ましく、12μm以上60μm以下であることがより好ましく、15μm以上40μm以下であることがさらに好ましく、20μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
また、第2樹脂層2の厚さは、本実施形態に係るフィルム全体の厚さに対して、1/3以上であることが好ましい。
第2樹脂層2の厚さは、上記した第1樹脂層1の厚さと同様にして測定することができる。
【0049】
第2樹脂層2は、他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、帯電防止剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。第2樹脂層2が前記添加剤を含有する場合、その含有量は、例えば、第2樹脂組成物に対して、1質量%以下であることが好ましい。
【0050】
第3樹脂層3は、第3樹脂を含む第3樹脂組成物(以下、単に、第3樹脂組成物という)から構成される。第3樹脂は、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む。第3樹脂層3は、第3樹脂組成物に対して、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を70質量%以上含んでいることが好ましく、80質量%以上含んでいることがより好ましい。
第3樹脂は、全てがエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体であってもよいし、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、結晶性ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を単量体とする単独共重合体または二元共重合体が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0051】
第3樹脂層3の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。
第3樹脂層3の厚さは、上記した第1樹脂層1の厚さと同様にして測定することができる。
【0052】
第3樹脂層3は、エルカ酸アミド、ステアリン酸カルシウム、帯電防止剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を含有していてもよい。第3樹脂層3が前記添加剤を含有する場合、その含有量は、例えば、第3樹脂組成物に対して、1質量%以下であることが好ましい。
【0053】
食品包装用フィルム10が、第2樹脂層2を中心層とし、中心層たる第2樹脂層2の互いに対向する面に、第1樹脂層1及び第3樹脂層3をそれぞれ備える構造、すなわち、三層構造の場合、食品包装用フィルム10の総厚さは、10μmを上回り80μm以下であることが好ましく、16μm以上46μm以下であることがより好ましく、23μm以上33μm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
(食品包装用袋)
本実施形態に係る食品包装用袋100は、食品包装用フィルム10で構成されている。本実施形態に係る食品包装用袋100においては、袋の内表面が第1樹脂層1で構成されている。
本実施形態に係る食品包装用袋100は、例えば、
図2(a)、(b)に示したように、一方面11と他方面12とが互いに重なるように略中央部から折り畳んだ食品包装用フィルム10において、折り畳んだときに形成される折り畳み線13と直交する方向に延びる端縁部分14、15を封止(シール)することにより構成されている。
【0055】
一般に、樹脂フィルムからなる袋体は、上記のように、折り畳み線13と直交する方向に延びる端縁部分14、15をヒートシールすることにより作製される。
そのため、袋の内表面を構成する樹脂層(本実施形態に係る食品包装用袋100では、第1樹脂層1)は、比較的融点が低い樹脂を含むことが好ましく、このような樹脂としては、通常、オレフィン系樹脂の共重合体が用いられる。
上記のような樹脂フィルムは、通常、延伸成形されるため、樹脂フィルムの最外層が水酸化カルシウム粒子を含んでいる場合、樹脂フィルムの延伸成形時に、最外層を構成する樹脂と水酸化カルシウム粒子との間に空隙(ボイド)が形成され、このボイドが成形された樹脂フィルムに残存していると考えられる。
また、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む樹脂フィルム及びランダムコポリマーを含む樹脂フィルムを、それぞれ、同じ温度で延伸成形した場合、一般に、エチレン-プロピレン-ブテン三元重合体の融点の方がランダムコポリマーの融点よりも低い傾向があるため、水酸化カルシウム粒子との界面密着性が高くなり、延伸成形時に空隙(ボイド)が形成され難くなっていると考えられる。
このように、形成されるボイドが少ない分だけ、本実施形態に係る食品包装用袋100は、食品包装用フィルム10から食品包装用袋100を作製するときに加わる外力(例えば、食品包装用フィルム10の搬送中や食品包装用フィルム10のシール中に食品包装用フィルム10に加わる外力)による水酸化カルシウム粒子1aの脱落の影響を受け難くなっていると考えられる。
その結果、本実施形態に係る食品包装用袋100においては、第1樹脂層1から水酸化カルシウム粒子1aが脱落し難くなっていると、本発明者は推察している。
【0056】
(食品包装用フィルムの製造方法)
本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、第1樹脂層1を構成する第1樹脂組成物、第2樹脂層2を構成する第2樹脂組成物、及び、第3樹脂層3を構成する第3樹脂組成物を共押出成形することにより製造することができる。
このような共押出成形としては、共押出多層Tダイ法が挙げられ、共押出多層Tダイ法としては、フィードブロック法、マルチマニホールド法が挙げられる。共押出多層Tダイ法は、各種公知の共押出多層成形装置を用いて行うことができる。
本実施形態に係る食品包装用フィルム10は、共押出成形された後、延伸成形されてもよい。延伸成形は、二軸延伸成形であることが好ましい。延伸成形を二軸延伸成形で行う場合、MD方向の延伸は、温度100~140℃、延伸倍率3~6倍で行うことが好ましく、TD方向の延伸は、温度130~160℃、延伸倍率8~12倍で行うことが好ましい。
【0057】
第1樹脂としては、主成分としてエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む樹脂をペレット状に成形した樹脂ペレット(以下、三元重合体樹脂ペレットという)を溶融したもの、及び、所定量の水酸化カルシウム粒子を含む樹脂(例えば、プロピレン-エチレン共重合体)をペレット状に成形した樹脂ペレットを溶融したものを用いることができる。三元共重合体樹脂ペレットとしては、例えば、住友化学工業株式会社製のFL6741、バゼル社製の5C37Fが挙げられる。三元共重合体樹脂ペレットは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2樹脂としては、主成分としてホモポリプロピレンを含む樹脂をペレット状(以下、単独共重合体樹脂ペレットという)に成形した樹脂ペレットを溶融したものを用いることができる。単独共重合体樹脂ペレットとしては、プライムポリマー社製のF-300SP、プライムポリマー社製のE-200GPが挙げられる。単独共重合体樹脂ペレットは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第3樹脂としては、主成分としてエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含む樹脂をペレット状に成形した樹脂ペレットを溶融してものを用いることができる。三元共重合体樹脂ペレットとしては、上記したものが挙げられる。三元共重合体樹脂ペレットは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1~第3樹脂ペレットを溶融させる温度は、200~300℃であることが好ましい。
【0058】
(食品包装用袋の製造方法)
本実施形態に係る食品包装用袋100は、一方面と他方面とが互いに重なるように略中央部から食品包装用フィルム10を折り畳み、折り畳んだときに形成される折り畳み線と直交する食品包装用フィルム10の両端縁部分(端縁部分14、15)を封止(シール)することにより製造することができる。食品包装用フィルム10の両端縁部分の封止(シール)はヒートシールにより行うことができる。
【0059】
なお、本発明に係る食品包装用フィルム10及び食品包装用袋100は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る食品包装用フィルム10及び食品包装用袋100は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1及び2に係る食品包装用フィルムの作製>
以下の表1及び2に示した原料を用いて、第1樹脂層、第2樹脂層、及び、第3樹脂層からなる、実施例1及び2に係る食品包装用フィルムを作製した。
なお、第1樹脂層及び第3樹脂層におけるエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体として、MFRが5.5g/10minであるバゼル社製の樹脂ペレット5C37F、及び、MFRが6.0g/10minである住友化学工業株式会社製の樹脂ペレットFL6741Gを使用した。
第2樹脂層におけるホモポリプロピレンとして、プライムポリマー社製の樹脂ペレットF-300SP、及び、プライムポリマー社製の樹脂ペレットE-200GPを使用した。
実施例1及び2において、樹脂ペレット5C37F及び樹脂ペレットFL6741Gは、質量比で5C37F:FL6741G=60:40の割合で使用した。また、樹脂ペレットF-300SP及び樹脂ペレットE-200GPは、質量比でF-300SP:E-200GP=70:30の割合で使用した。
水酸化カルシウム粒子については、プロピレン-エチレン共重合体の中に入れて、水酸化カルシウム含有マスターバッチとした。このマスターバッチを上記樹脂ペレット5C37FとFL6741Gとの混合物中に含有させた。水酸化カルシウム粒子以外の添加剤(ステアリン酸カルシウム、エルカ酸アミド、及び、その他添加剤)は、上記した樹脂ペレット5C37F、FL6741G、F-300SP、及び、E-200GPの内の少なくともいずれか1つに含まれている。
なお、水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は2.7μmであった。水酸化カルシウム粒子としては、ホタテ貝殻を1100℃以上で焼成した後、消化して得られた水酸化カルシウム粒子(ホタテ貝殻由来の水酸化カルシウム粒子)を使用した。水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は、上記の実施形態の項に記載の方法にて測定した。水酸化カルシウム粒子の純度は95%以上であった。
【0062】
実施例1及び2に係る食品包装用フィルムは、第1樹脂組成物、第2樹脂組成物、及び、第3樹脂組成物を共押出多層Tダイ法にて共押出した後、二軸延伸成形することにより作製した。共押出多層Tダイ法は、3基の一軸スクリュータイプ押出機を備える共押出多層装置を用いて行った。第1樹脂組成物の押出量、第2樹脂組成物の押出量、及び、第3樹脂組成物の押出量は、質量比で第1:第2:第3=1:8.6:0.4とした。
第1樹脂組成物は、樹脂ペレット5C37F(融点132℃)、樹脂ペレットFL6741G(融点130℃)、及び水酸化カルシウム含有マスターバッチを250℃で溶融させることにより得た。
また、第2樹脂組成物は、樹脂ペレットF-300SP及び樹脂ペレットE-200GPを250℃で溶融させることにより得た。
さらに、第3樹脂組成物は、樹脂ペレット5C37F、及び、樹脂ペレットFL6741Gを250℃で溶融させることにより得た。
二軸延伸成形において、MD方向の延伸は温度123℃にて4.6倍に延伸することにより行い、TD方向の延伸は温度151℃にて10倍延伸することにより行った。
実施例1に係る食品包装用フィルムにおいて、第1樹脂層の厚さは1.8μmであり、第2樹脂層の厚さは25.5μmであり、第3樹脂層の厚さは0.7μmであり、総厚さは、28μmであった。
また、実施例2に係る食品包装用フィルムにおいて、第1樹脂層の厚さは2.5μmであり、第2樹脂層の厚さは24.0μmであり、第3樹脂層の厚さは0.7μmであり、総厚さは27.2μmであった。
【0063】
【0064】
【0065】
<比較例1に係る食品包装用フィルムの作製>
以下の表3に示した原料を用いて、第1樹脂層、第2樹脂層、及び、第3樹脂層からなる、比較例1に係る食品包装用フィルムを作製した。
なお、第1樹脂層及び第3樹脂層におけるプロピレン-エチレン共重合体として、日本ポリプロ社製の樹脂ペレットWFW5T(融点142℃)を使用した。
第2樹脂層におけるホモポリプロピレンとして、プライムポリマー社製の樹脂ペレットF-300SP、及び、プライムポリマー社製の樹脂ペレットE-200GPを使用した。
水酸化カルシウム粒子については、プロピレン-エチレン共重合体の中に入れて、水酸化カルシウム含有マスターバッチとした。このマスターバッチを上記樹脂ペレットWFW5T中に含有させた。水酸化カルシウム粒子以外の添加剤(ステアリン酸カルシウム、エルカ酸アミド、及び、その他添加剤)は、上記した樹脂ペレットWFW5T、F-300SP、及び、E-200GPの内の少なくともいずれか1つに含まれている。
比較例1において、樹脂ペレットF-300SP及び樹脂ペレットE-200GPは、質量比でF-300SP:E-200GP=70:30の割合で使用した。
【0066】
比較例1に係る食品包装用フィルムは、第1樹脂組成物、第2樹脂組成物、及び、第3樹脂組成物を共押出多層Tダイ法にて共押出した後、二軸延伸成形することにより作製した。共押出多層Tダイ法は、3基の一軸スクリュータイプ押出機を備える共押出多層装置を用いて行った。第1樹脂組成物の押出量、第2樹脂組成物の押出量、及び、第3樹脂組成物の押出量は、質量比で第1:第2:第3=1:8.6:0.4とした。
第1樹脂組成物は、樹脂ペレットWFW5T、及び、水酸化カルシウム含有マスターバッチを250℃で溶融させることにより得た。
また、第2樹脂組成物は、樹脂ペレットF-300SP及び樹脂ペレットE-200GPを250℃で溶融させることにより得た。
さらに、第3樹脂組成物は、樹脂ペレットWFW5Tを250℃で溶融させることにより得た。
二軸延伸成形において、MD方向の延伸は温度123℃にて4.6倍に延伸することにより行い、TD方向の延伸は温度151℃にて10倍延伸することにより行った。
比較例1に係る食品包装用フィルムにおいて、第1樹脂層の厚さは1.8μmであり、第2樹脂層の厚さは25.5μmであり、第3樹脂層の厚さは0.7μmであり、総厚さは、28μmであった。
【0067】
【0068】
<食品包装用フィルムからの水酸化カルシウム粒子の脱落性評価>
光干渉式非接触表面形状測定器(菱化システム社製、非接触表面・層断面形状測定システム、VertScan(登録商標)2.0(型式:R5500GML))を用いて、各例に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層表面を評価した。
第1樹脂層表面の評価は、擦傷試験前後での第1樹脂層表面を画像観察すること、並びに、擦傷試験前後での第1樹脂層表面における凸部高さ及び尖り度を測定することにより行った。なお、擦傷試験前における前記「第1樹脂層表面における凸部高さ及び尖り度」の測定箇所は、擦傷試験後における前記「第1樹脂層表面における凸部高さ及び尖り度」の測定箇所を同一である。
擦傷試験は、各例に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層の表面をペーパーウエスで(王子ネピア社製、製品名「パブリックペーパーウエス」)で60回擦傷することにより行った。
【0069】
光干渉式非接触表面形状測定器は、以下の条件で操作した。
・測定モード:WAVE
・フィルタ:530white
・対物レンズ倍率:×10
・視野:470.92μm×353.16μm(640×480pixel)
【0070】
光干渉式非接触表面形状測定器により測定したデータについて、解析ソフトウェア「VS-Viewer」を用いて、以下の画像処理を行った。
・面補正:多項式近似4次
・補間:完全
・ノイズ除去処理:メディアンフィルタ(3×3画素)
擦傷試験前後における各例に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層における任意の凸部に対して、ズーム表示及び断面観察を行い、凸部の高さ及び尖り度を評価した。
凸部の高さ及び尖り度の評価は、以下のようにして行った。
(1)各例に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層の表面を観察し、各例に係る食品包装用フィルムについて水酸化カルシウム粒子の凸部の高さ及び尖り度を測定する。
(2)各例に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層の表面をそれぞれ観察し、近似した形状の凸部を探す。
(3)各例に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層の表面に擦傷試験を行い、試験前後で凸部の高さ及び尖り度を比較する。
なお、上記擦傷試験は、食品包装用フィルムを第1樹脂層が袋の内表面を構成するように食品包装用袋とした後から該食品包装用袋内に野菜等の生鮮食品を収容するまでの間に、前記食品包装用袋の内表面同士が擦れ合うことを模したものである。
擦傷試験前後での実施例1及び比較例1に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層表面の画像を
図3に示した。
また、擦傷試験後の凸部の高さ及び尖り度を測定した結果を以下の表4に示した。
【0071】
【0072】
図3(a)と
図3(b)とを比較すると、実施例1に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層からは水酸化カルシウム粒子の脱落が認められていないことが分かった(図の〇で囲った箇所を参照)。
これに対し、
図3(c)と
図3(d)とを比較すると、比較例1に係る鮮度保持フィルムの第1樹脂層からは水酸化カルシウム粒子の脱落が認められることが分かった(図の〇で囲った箇所を参照)。
この結果から、第1樹脂層にエチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体を含ませることにより、第1樹脂層からの水酸化カルシウム粒子の脱落が抑制されていることが確認された。
【0073】
また、表4によれば、実施例1及び2に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層では、擦傷試験前後において、第1樹脂層の凸部高さ及び尖り度に有意な差は認められなかった。すなわち、第1樹脂層からの水酸化カルシウム粒子の脱落が抑制されていることが確認された。
これに対し、比較例1に係る食品包装用フィルムの第1樹脂層では、擦傷試験後に、凸部高さが大きく低下していることが確認された。すなわち、第1樹脂層から水酸化カルシウム粒子が脱落することにより、凸部高さが大きく低下していることが確認された。
【0074】
これらにより、本発明に係る食品包装用フィルムを用いて、袋の内表面が第1樹脂層で構成されるように食品包装用袋を作製することにより、収容した生鮮食品(野菜、果物、鮮魚、精肉等、特に野菜や果物)の鮮度を十分に保持することができるとともに、脱落した前記水酸化カルシウムが、収容した生鮮食品(野菜、果物、鮮魚、精肉等、特に野菜や果物)に混入することを抑制できることが期待できる。
【0075】
<食品包装用袋の鮮度保持機能評価>
実施例1に係る食品包装用フィルムを用いて、袋の内表面が第1樹脂層で構成されるように実施例1に係る食品包装用袋を5個作製した。具体的には、
図2に示したように、一方面11と他方面12とが互いに重なるように略中央部から折り畳んだ食品包装用フィルム10において、折り畳んだときに形成される折り畳み線13と直交する方向に延びる端縁部分14、15を封止(シール)することにより、実施例1に係る食品包装用袋を5個作製した。
また、実施例2に係る食品包装用フィルムを用いて、上記と同様にして、実施例2に係る食品包装用袋を5個作製した。
さらに、比較例2に係る食品包装用袋として、OPPフィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム)を用いて作製された食品包装用袋を5個準備した。なお、この食品包装用袋は、水酸化カルシウム粒子を含んでいなかった。
【0076】
上記のように5個ずつ作製した、実施例1及び2に係る食品包装用袋、並びに、比較例2に係る食品包装用袋のそれぞれの内部にカット野菜(レタス)を収容した後、各食品包装用袋の開放端部分をシールした。
そして、これらの食品包装用袋について、経時的に1袋ずつ開封していき、大腸菌及びカット野菜(レタス)の外観の経時変化(D+0、D+2、D+3、D+4、及び、D+5。ここで、Dはカット野菜を収容した日である)について調査した。
大腸菌数は、「食品衛生検査指針 微生物編 2004、2005年7月1日 第2刷発行、社団法人 日本食品衛生協会」P.129~P.145に記載の方法で測定した。具体的には、(i)試料採取、(ii)試料液の調製、(iii)試料液の接種、(iv)一次増菌培養、(v)二次増菌培養、(vi)画線分離培養、(vii)鑑別同定、(viii)結果判定、を順に行った。
(i)の試料採取においては、試料25gを秤量し、滅菌ポリ袋に移し、(ii)の試料液の調製においては、9倍量に相当する225mlの滅菌希釈水を加えて30秒間均質化したものを試料原液とし、また滅菌希釈水で10倍段階希釈し、(iii)の試料液の接種においては、試料原液10ml、1mlおよびその10倍段階希釈液1mlずつを、5本ずつのブイヨン発酵管に接種し、(iv)の一次増菌培養においては、試料を接種したブイヨン発酵管を35±1℃、48時間で培養し、(v)の二次増菌培養においては、ブイヨン発酵管の培養液の1白金耳をEC培地発酵管に接種してこれを44.5±0.2℃の恒温水槽中で24時間培養し、(vi)の画線分離培養においては、EMB寒天培地平板に塗抹培養して35±1℃にて24時間培養し、(vii)の鑑別同定においては、大腸菌の存在が認められた試料接種発酵管数から算定した。希釈水は、0.1%ペプトン加生理食塩水を使用した。
【0077】
カット野菜の外観の経時変化は、以下の基準に従って評価した。
・A:外観変化なし
・B:赤色への変色が少し認められるものの問題なし
・C:褐色への変色が少し認められるものの問題なし
・D:赤色~褐色への変色が目立ち、問題あり
・E:褐色への変色が目立ち、問題あり
【0078】
大腸菌及びカット野菜(レタス)の外観の経時変化を調査した結果を、以下の表5に示した。
【0079】
【0080】
表5より、実施例1及び2に係る食品包装用袋は、比較例2に係る食品包装用袋と比べて、カット野菜(レタス)の外観の経時変化について、有意に改善されていることが分かった。
また、実施例1及び2に係る食品包装用袋は、大腸菌の経時変化が認められなかった。これにより、実施例1及び2に係る食品包装用袋は、食品の鮮度を保つ機能に優れることが分かった。
【0081】
また、実施例1及び2に係る食品包装用袋の一般生菌数についても評価した。一般生菌数は、食品衛生検査指針 微生物編 2004、2005年7月1日 第2刷発行、社団法人 日本食品衛生協会」P.129~P.145に記載の方法で測定した。
具体的には、(i)試料採取、(ii)試料液の調製、(iii)混釈平板の調製、(iv)混釈平板の培養、(v)出現集落の計測、(vi)生菌数の算定、を順に行った。
(i)の試料採取においては、試料25gを秤量し、滅菌ポリ袋に移し、(ii)の試料液の調製においては、9倍量に相当する225mlの滅菌希釈水を加えて30秒間均質化したものを試料原液とし、また滅菌希釈水で10倍段階希釈し、(iii)の混釈平板の調製においては、それぞれの希釈試料液を1mlずつ分注し、次いで標準寒天培地約15mlを無菌的に各ペトリ皿に注ぎ、直ちに試料と培地がよく混ざるように静かに混釈し、(iv)の混釈平地の培養においては、寒天培地が完全に凝固したらペトリ皿を倒置し、35±1℃で48時間培養し、(v)の出現集落の計測においては、コロニーカウンターを用いて測定し、(vi)の生菌数の算定においては、算定対象とした平板の集落数に希釈倍数を乗じ、さらに得られた数字の上位3桁目を四捨五入して、上位2桁を有効数字として表示し、以下に0をつけ、食品1g当たりの菌数として求めた。希釈水は、0.1%ペプトン加生理食塩水を使用した。
【0082】
その結果、保存日数D+0日において、実施例1に係る食品包装用袋では、一般生菌数が6.0×102であり、実施例2に係る食品包装用袋では、一般生菌数が7.0×102であり、比較例2に係る食品包装用袋では、一般生菌数が2.4×104であった。すなわち、実施例1及び2に係る食品包装用袋の方が、比較例2に係る食品包装用袋と比べて、一般生菌数が少ないことが分かった。
また、実施例1及び2に係る食品包装用袋の一般生菌数は、保存日数D+2日において、それぞれ、1.2×104、1.4×104であり、保存日数D+3日において、それぞれ、1.4×105、2.3×104であり、保存日数D+4日において、それぞれ、1.5×105、7.3×104であり、保存日数D+5において、それぞれ、4.5×105、2.5×105であった。
これらの結果から、実施例1及び2に係る食品包装用袋は、一般生菌数の観点からも、食品の鮮度を保つ機能を有することが分かった。
【0083】
さらに、実施例1及び2に係る食品包装用袋の大腸菌群数についても評価した。大腸菌群数は、食品衛生検査指針 微生物編 2004、2005年7月1日 第2刷発行、社団法人 日本食品衛生協会」P.129~P.145に記載の方法で測定した。
具体的には、(i)試料採取、(ii)試料液の調製、(iii)試料液の接種、(iv)増菌培養、(v)画線分離培養、(vi)鑑別同定、(vii)結果判定、を順に行った。
(i)の試料採取においては、試料25gを秤量し、滅菌ポリ袋に移し、(ii)の試料液の調製においては、9倍量に相当する225mlの滅菌希釈水を加えて30秒間均質化したものを試料原液とし、また滅菌希釈水で10倍段階希釈し、(iii)の試料液の接種においては、試料原液10ml、1mlおよびその10倍段階希釈液1mlずつを、5本ずつのブイヨン発酵管に接種し、(iv)の増菌培養においては、試料を接種したブイヨン発酵管を35±1.0℃、48時間で培養し、(v)の画線分離培養においては、EMB寒天培地平板に塗抹培養して35±1℃にて24時間培養し、(vi)の鑑別同定においては、大腸菌群数の存在が認められた試料接種発酵管数から算定した(MPN算出法)。希釈水は、0.1%ペプトン加生理食塩水を使用した。
【0084】
その結果、保存日数D+0日において、実施例1に係る食品用包装袋では、大腸菌群数が1.0×101であり、実施例2に係る食品包装用袋では、大腸菌群数が5.0×101であり、比較例2に係る食品用包装袋では、大腸菌群数が6.7×102であった。すなわち、実施例1及び2に係る食品用包装袋の方が、比較例2に係る食品用包装袋と比べて、大腸菌群数が少ないことが分かった。
また、実施例1及び2に係る食品包装用袋の大腸菌群数は、保存日数D+2において、それぞれ、1.1×102、3.6×102であり、保存日数D+3において、それぞれ、5.8×101、1.2×101であり、保存日数D+4において、それぞれ、9.2×101、4.7×101であり、保存日数D+5において、それぞれ、1.4×105、2.0×104であった。
これらの結果から、実施例1及び2に係る食品包装用袋は、大腸菌群数の観点からも、食品の鮮度を保つ機能を有することが分かった。
【符号の説明】
【0085】
1:第1樹脂層、2:第2樹脂層、3:第3樹脂層、10:食品包装用フィルム、11:一方面、12:他方面、13:折り畳み線、14:端縁部分、15:端縁部分、100:食品包装用袋、
1a:水酸化カルシウム粒子。