(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】バイオミメティック流体処理のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221205BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20221205BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/078
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2021038843
(22)【出願日】2021-03-11
(62)【分割の表示】P 2016559820の分割
【原出願日】2015-03-30
【審査請求日】2021-04-09
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505270980
【氏名又は名称】ブリガム・アンド・ウイミンズ・ホスピタル・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】515183089
【氏名又は名称】ヴィリニュス ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】トーン ジョナサン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】イタリアーノ ジョーセフ イー.
(72)【発明者】
【氏名】マズティス リナス
(72)【発明者】
【氏名】ワイツ デイヴィド エイ.
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-031428(JP,A)
【文献】特表2012-510804(JP,A)
【文献】特許第6429794(JP,B2)
【文献】Nakagawa, Y. et al.,"Two differential flows in a bioreactor promoted platelet generation from human pluripotent stem cell-derived megakaryocytes",Exp. Hematol.,2013年,Vol. 41,pp. 742-748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って第1の入力から第1の出力に延在する第1の流路と、
前記第1の流路に実質的に平行であり、前記長手方向に沿って第2の入力から第2の出力に延在する第2の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路との間の分離バリアと、を備える微少流体装置を含むバイオミメティック微少流体システムであって、
前記第1の流路は、少なくとも1つの第1の生体組成を第1の流路流量で受けるように構成され、
前記少なくとも1つの第1の生体組成は、ターゲットとなる生体物質を産生可能な生体供給材料を含み、
前記第2の流路は、少なくとも1つの第2の生体組成を第2の流路流量で選択的に受けるように構成され、
前記分離バリアは、前記第1の流路と前記第2の流路との間の流体連通経路を形成する複数の微小流路を有し、
前記複数の微小流路は、前記生体供給材料を選択的に捕捉するようなサイズであり、
前記第1の流路流量及び前記第2の流路流量は、前記複数の微小流路において前記生体供給材料を選択的に捕捉するように構成されているとともに、捕捉された前記生体供給材料によって前記ターゲットとなる生体物質の産生を引き起こすのに十分な範囲内にある前記第2の流路に沿った生理学的せん断速度を生成するように前記第1の流路と前記第2の流路との間の差異を生じさせるように構成されて
おり、
前記第1の入力の上流に位置する第1の流動フィルタと、
前記第2の入力の上流に位置する第2の流動フィルタと、をさらに備え、
前記上流とは、前記少なくとも1つの第1の生体組成及び前記少なくとも1つの第2の生体組成の流れの方向に対して定義されるものである、バイオミメティック微少流体システム。
【請求項2】
前記分離バリアは、前記第1の流路と前記第2の流路の間に配置された、フィルム、一連のカラム、メンブランおよびメッシュのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項3】
前記複数の微小流路は、前記第1の流路と前記第2の流路の間に延在する孔、ギャップ又はスリットの少なくとも1つとして形成される、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項4】
前記生体供給材料は巨核球を含み、前記ターゲットとなる生体物質は血小板を含む、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項5】
前記生理学的せん断速度は、複数の血小板の産生を引き起こすために100s
-1~10,000s
-1の範囲内になるように生成される、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項6】
前記生理学的せん断速度は、複数の血小板の産生を引き起こすために500s
-1~2,500s
-1の範囲内になるように生成される、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項7】
前記複数の微小流路は、0.1マイクロメートル~20マイクロメートルの間のサイズである、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項8】
基材をさらに備え、
前記第1の流路及び前記第2の流路が前記基材に形成される、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム。
【請求項9】
複数の微少流体装置を備える、請求項1に記載のバイオミメティック微少流体システム
。
【請求項10】
生体物質を産生するための方法であって、
ターゲットとなる生体物質を産生可能な生体供給材料を含む少なくとも1つの第1の生体組成を、第1の流路流量で
請求項1~9のいずれか一項に記載の前記バイオミメティック微少流体システムの第1の流路に導入することと、
第2の生体組成を、第2の流路流量で前記バイオミメティック微少流体システムの第2の流路に導入することと、
前記第1の流路と前記第2の流路との間の分離バリアに流体連通経路を形成する複数の微小流路によって、前記生体供給材料を選択的に捕捉することと、
捕捉された前記生体供給材料によって前記ターゲットとなる生体物質の産生を引き起こすのに十分な前記第2の流路に沿った生理学的せん断速度を生成するように流路間の差異を生じさせることと、を有する、方法。
【請求項11】
前記分離バリアは、前記第1の流路と前記第2の流路の間に配置されたフィルム、一連のカラム、メンブランおよびメッシュのうちの少なくとも1つである、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の微小流路は、0.1マイクロメートル~20マイクロメートルの間のサイズである、請求項1
0に記載の方法。
【請求項13】
500s
-1~2,500s
-1の範囲内の生理的せん断速度を生成するよう前記差異を生じさせることをさらに含む、請求項1
0に記載の方法。
【請求項14】
前記生体供給材料は巨核球を含み、前記ターゲットとなる生体物質は血小板を含む、請求項1
0に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の生体組成を用いて、産生された前記ターゲットとなる生体物質を収集することをさらに含む、請求項1
0に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年3月31日出願された、発明の名称を「バイオミメティック流体処理のためのシステム及び方法」とする米国仮出願第61/972,520号に基づいており、同仮出願の利益を主張し、同仮出願を参照により組み込む。
連邦政府の支援を受けた研究に関する陳述
【0002】
本開示は、アメリカ国立衛生研究所により与えられた1K99HL114719-01A1及びHL68130に基づく政府支援によりなされた。政府は、本開示における特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般的には、流体システム、例えば、微少流体装置、このような装置を含むシステム、並びにこのような装置及びシステムを使用する方法に関する。特に、本開示は、バイオミメティックプラットホームに基づく機能的な生体材料、物質、又は作用剤を製造する装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血小板(PLT)は、ホメオスタシス、血管新生、及び先天的な免疫に必須であり、その数が低レベルに下がることは、血小板減少症として公知であり、患者は、出血死の重篤なリスク下にある。低血小板数についての幾つかの原因としては、外科手術、ガン、ガン処置、再生不良性貧血、有害化学物質、アルコール、ウイルス、感染、妊娠、及び特発性免疫性血小板減少症が挙げられる。
【0005】
このような症状を処置するための置換PLTは、一般的には、その免疫原性及び敗血症に関連するリスクによる重大な臨床的懸念にも関わらず、完全にヒトドナーから得られる。しかしながら、ドナーの静的に近いプールと、細菌検査及び劣化による短い保管寿命とに結びついた、PLT輸血に対する増大した需要により生じた不足は、医療専門家が患者に十分な治療を提供するのをより難しくしている。さらに、代替手段、例えば、人工血小板代替物は、現在のところ、生理学的な血小板製品を置き換えることができていない。
【0006】
in vivoにおいて、PLTは、
図8に例示されたプロセスにおいて、巨核球(MK)として公知の前駆体細胞により産生される。骨髄(BM)中で血管の外側に位置したMKは、類洞血管内において、長く、分岐した細胞構造に伸びる(プロPLT)。ここで、プロPLTは、せん断速度を受け、PLTを循環中に放出する。機能的なヒトPLTは、in vitroにおいて増殖するが、今日の細胞培養アプローチでは、約10%のプロPLT産生しか得られず、ヒトMK当たりに10~100個のPLTしか得られない。対照的に、ヒトにおけるほとんど全ての成熟MKはそれぞれ、循環する血小板数のために、約1,000~10,000個のPLTを産生する必要がある。このことは、血小板輸血単位のex vivoでの産生において、明らかなボトルネックとなる。
【0007】
加えて、第2世代の細胞培養アプローチは、PLT放出の生理学的決定因子に更なる洞察を提供してきたが、細胞外マトリクス(ECM)組成、BM剛性、内皮細胞接触、又は血管せん断速度の限られた個々の制御を示すBM微小環境全体を再現することはできず、同調性のプロPLT産生を上手くできず、6~8日の期間にわたる不均一なPLT放出をもたらした。さらに、高解像での生細胞顕微鏡観察によるプロPLT伸長を解明し、生理学的に関連する条件下で放出させることができないことは、薬剤開発を可能にするPLT産生の細胞骨格力学を特定し、血小板減少症のための新たな処置を確立するための努力を
、著しく妨害してきた。したがって、臨床的に有効な数の機能的なヒトPLTを生成可能な、効率的で、ドナーに依存しないPLTシステムが、PLTの調達及び保管に関連するリスクを回避し、増大する輸血の必要性に合致するのを手助けするのに必要である。
【0008】
上記を考慮して、機能的なヒト血小板の効率的な産生に影響を及ぼすプロセス、メカニズム、及び条件を正確に反映させるために、血管の生理機能を再現することができるプラットホームを利用する、装置、システム、及び方法についての明確な要求が存在し続けている。このようなプラットホームは、輸血用のヒト血小板を効率的に生成し、薬剤有効性及び開発の前臨床段階での相互作用を確立する目的に非常に有用であることを証明するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、生理学的に正確なモデルを生成可能なシステム及び方法を提供することにより、前述の技術の欠点を克服するためのものである。同モデルは、in vivoにおいて見出される条件、環境、構造、及び動的流動を再現する。説明されるであろうように、このような生理学的モデルは、機能的なヒト血小板及び他の生体材料を生成するのに利用することができる。同生体材料は、特定の健康状態、例えば、血小板減少症等の血小板欠損症状の輸血処置に適しているであろう。また、本開示に基づいて得られる生理学的モデルのついての他の用途は、薬剤開発と、薬剤及び処置の評価を含んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に基づいて、バイオミメティック微少流体システムが提供される。本システムは、基材と、前記基材に形成された第1の流路であって、前記第1の流路が、長手方向寸法に沿って、第1の入力から第1の出力に向かって伸び、かつ、第1の横断方向寸法に沿って伸びる第1の流路と、前記基材に形成された第2の流路であって、前記第2の流路が、前記長手方向寸法に沿って、第2の入力から第2の出力に向かって伸び、かつ、前記第1の横断方向寸法に沿って伸び、前記第1及び第2の流路が、前記長手方向寸法に沿って実質的に平行に伸び、第2の横断方向寸法に沿って伸びるカラムにより分離されている第2の流路とを含む。また、本システムは、前記第1の流路と第2の流路とを分離する前記カラムに形成された一連の開口であって、前記一連の開口がそれぞれ、前記第1の横断方向及び前記第2の横断方向におけるより更に前記長手方向寸法に沿って伸び、前記基材の第1の部分近くに配置され、前記第1の流路から前記第2の流路に向かって伸びて、前記第1の流路と前記第2の流路との間を通過する流体連通経路を形成している一連の開口を含む。さらに、本システムは、前記第1の入力に接続されている第1の供給源であって、前記第1の供給源が、前記第1の流路内に、少なくとも1つの第1の生体組成を、第1の流路流量で選択的に導入するように構成されている第1の供給源と、前記第2の入力に接続されている第2の供給源であって、前記第2の供給源が、前記第2の流路内に、少なくとも1つの第2の生体組成を、第2の流路流量で選択的に導入するように構成されており、前記第1の流路流量及び前記第2の流路流量が、前記流路中において、所定の範囲内で生理学的せん断速度を生じるように構成されている差異を生じさせる第2の供給源とを含む。
【0011】
本開示の別の態様では、骨髄及び血管構造の内の少なくとも一方の生理学的モデルを製造するための方法が開示される。方法は、基材と、前記基材に形成された第1の流路であって、前記第1の流路が、長手方向寸法及び第1の横断方向寸法に沿って、第1の入力から第1の出力に向かって伸びる第1の流路とを含むバイオミメティック微少流体システムを提供することを含む。第2の流路は、前記基材に形成される。前記第2の流路は、前記長手方向寸法及び前記第1の横断方向寸法に沿って、第2の入力から第2の出力に向かって伸びる。第3の流路は、前記基材に形成される。前記第3の流路は、前記長手方向寸法及び前記第1の横断方向寸法に沿って、前記第2の入力から第3の出力に向かって伸びる。ここで、前記第1、第2、及び第3の流路は、前記長手方向寸法に沿って実質的に平行に伸び、かつ、第2の横断方向寸法に沿って伸びる。一連の微小流路は、前記第1の流路を前記第2の流路に接続しており、かつ、前記第3の流路を前記第1の流路に接続している。ここで、前記一連の微小流路は、前記第1の横断方向及び前記第2の横断方向におけるより更に前記長手方向寸法に伸び、前記基材の第1の部分近くに配置されて、前記第1の流路と前記第2の流路との間、及び、前記第1の流路と前記基材の第1の部分近くの前記第3の流路との間を通過する流体連通経路を形成している。また、本方法は、第1の供給源を使用して、第1の生体組成を前記第1の流路内に、第1の流路流量で導入することと、第2の供給源を使用して、第2の生体組成を前記第2の流路及び第3の流路内に、第2の流路流量及び第3の流路流量それぞれで導入して、前記流路中において、所定の範囲内で生理学的せん断速度を生じるように、前記第1、第2、及び第3の流路流量間の差異を生じさせることとを含む。さらに、本方法は、前記生理学的せん断速度により、前記微小流路近くに生じたターゲットとなる生体物質を収集することを含む。
【0012】
本開示の更に別の態様では、別のバイオミメティック微少流体システムが提供される。本システムは、少なくとも1つの基材と、前記少なくとも1つの基材に形成された第1のチャンバであって、前記第1のチャンバが、長手方向寸法に実質的に沿って、第1の入力から第1の出力に向かって伸びる第1のチャンバとを含む。また、本システムは、前記少なくとも1つの基材に形成された第2のチャンバであって、前記第2のチャンバが、前記長手方向寸法に沿って、第2の入力から第2の出力に向かって伸び、前記第1及び第2のチャンバが、前記長手方向寸法に沿って、実質的に平行に伸びる第2のチャンバと、横断方向寸法に沿って、前記第1及び第2のチャンバを分離するメンブランであって、前記メンブランが、前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間を通過する流体連通経路を形成しているメンブランとを含む。さらに、本システムは、各入力を使用して、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバ内に、少なくとも1つの生体組成を、前記チャンバ間に、複数の血小板の産生を促進する生理学的せん断速度を生じさせることができる流量で、選択的に導入するように構成されている少なくとも1つの供給源を含む。
【0013】
本開示の前述及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかとなるであろう。この説明において、添付の図面を参照する。同図面は、前記説明の一部を構成する。同図面において、本開示の好ましい実施形態を、例示として示される。このような実施形態は、本開示の完全な範囲を必ずしも表していないため、本開示の範囲を解釈するために、特許請求の範囲及び本明細書を参照するものとする。
【0014】
以下、本開示を、添付の図面を参照して説明するものとする。ここで、同じ参照番号は、同じ要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の態様に基づく、例示となるバイオミメティック微少流体システムの模式図を示す。
【
図2A】細胞外マトリクス(ECM)組成を再現するために、骨髄及び血管のタンパク質でコートされた微少流体流路を示す、顕微鏡観察画像を示す。
【
図2B】三次元ECM組織化及び生理学的骨髄(BM)剛性をモデル化した、アルギン酸塩ゲル中に選択的に包埋された微小流路に捕捉された巨核球(MK)を示す、顕微鏡観察画像を示す。
【
図2C】機能的な血管を生成するために、フィブリノゲンコートした第2の流路中で選択的に培養されたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の、顕微鏡観察画像を示す。
【
図2D】機能的な血小板(PLT)を生成するための完全なシステムの画像を示す。
【
図2E】本開示の態様に基づくバイオミメティック微少流体システム内での、せん断速度のシミュレーション分布のグラフィック表示を示す。
【
図2F】複数の注入速度についての、第1の流路からの横断距離の関数としてのせん断速度を示すグラフを示す。
【
図2G】ブロック微小流路数の関数としてのせん断速度を示すグラフを示す。
【
図3A】0及び18時間で培養されたMKの直径分布示すグラフを示す。
【
図3B】精製後6時間でのプロPLTの産生を例示する静的培養中でのMKの、顕微鏡観察画像を示す。
【
図3C】MK捕捉直後での生理学的せん断下におけるプロPLT産生を示す、顕微鏡観察画像を示す。
【
図3D】生理学的せん断下において得られたプロPLT産生MKの増大と、静的培養からの増大とを示すグラフを示す。
【
図3E】生理学的せん断下におけるプロPLT伸長速度を示すグラフを示す。
【
図4A】幅3μmの微小流路を通って圧迫されるMKを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図4B】幅3μmの微小流路を通って、大きな断片に伸びているMKを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図4C】プロPLT伸長を例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図4D】プロPLTシャフトに沿った種々の位置における、プロPLT伸長及び脱離イベントを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図4E】PLT産生サイクルを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図4F】生理学的範囲内で増大したせん断速度が、プロPLT伸長速度を向上させないことを示すグラフを示す。
【
図4G】GFP-β1チューブリンを発現するようにレトロウイルス性にトランスフェクションされ、プロPLT伸長を示し、PLTサイズ端においてコイルを形成する末梢微小管を含んだMKを示す、顕微鏡観察画像を示す。
【
図4H】5μM ジャスプラキノリド(Jasplankinolide)(Jas、アクチン安定化剤)及び1mM エリスロ-9-(3-[2-ヒドロキシノニル](EHNA、細胞質ダイニン阻害剤)が、せん断誘引プロPLT産生を阻害することを例示するグラフを示す。
【
図4I】生理学的せん断下におけるプロPLT産生の薬剤誘引阻害を例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図5A】本開示に基づいて産生されたPLTが、血中PLTの構造的及び機能的特性を証明することを例示するグラフを示す。
【
図5B】本開示に基づくシステム内に注入され、続けて、4日目に培養から単離されたGPIX+MKと、注入後2時間で溶出液から収集されたGPIX+MKとの、バイオマーカー発現、前方/側方散乱、及び相対濃度を例示するグラフを示す。
【
図5C】せん断の適用が、GPIX+産生を、静的培養上清に対して、よりPLTサイズの細胞にシフトさせることを例示するグラフを示す。
【
図5D】MKが、2時間にわたって、PLTに変換されることを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図5E】せん断の適用が、静的培養上清に対して、よりPLTサイズのβ1チューブリン+ Hoescht-細胞産生にシフトさせることを示すグラフ表示である。ここで、挿入図は、溶出液中の遊離核の量を示す。
【
図5F】本開示に基づいて産生されたPLTが、血中PLTに超微細構造的に類似し、皮質MTコイル、開放管系、暗調小管系、ミトコンドリア、及び特徴的な分泌顆粒を含有することを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図5G】本開示に基づいて産生されたPLT及びPLT中間体が、血中PLTに形態学的に類似し、匹敵するMT及びアクチン発現を表すことを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図6A】本開示に基づいて得られたhiPSC-PLTが、血中PLTの構造的及び機能的特性を証明することを例示するグラフを示す。
【
図6B】本開示に基づくhiPSC-MKが、初代ヒトMKに超微細構造的に類似し、分葉核、陥入膜系、グリコーゲン貯蔵、オルガネラ、及び特徴的な分泌顆粒を含有することを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図6C】静的培養におけるhiPSC-MKが、精製後6時間でプロPLTを産生し始め、18時間で最大プロPLT産生に達することを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図6D】生理学的せん断(約500s
-1)下でのhiPSC-MKが、捕捉直後にプロPLTを産生し始め、プロPLTを培養の最初の2時間以内に伸長/放出することを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図6E】生理学的せん断下でのプロPLT産生hiPSC-MKパーセント(%)が、静的培養を上回って顕著に増大することを例示するグラフである。
【
図6F】生理学的せん断下でのプロPLT伸長速度が、約19μm/分であることを例示するグラフである。
【
図6G】本開示に基づいて得られたhPLTが、ヒト血中PLTに超微細構造的に類似し、皮質MTコイル、開放管系、暗調小管系、ミトコンドリア、及び特徴的な分泌顆粒を含有することを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図6H】本開示に基づいて得られたhPLTが、ヒト血中PLTに形態学的に類似し、匹敵するMT及びアクチン発現を表す、顕微鏡観察画像を示す。
【
図6I】本開示に基づいて得られたmPLTが、ガラス表面での活性化及び展開において、フィロポディア(filpodia)/ラメリポディアを形成することを例示する、顕微鏡観察画像を示す。
【
図7】T-DM1が、MK分化を阻害し、異常なチューブリン組織化を誘導することによるプロPLT形成を妨害することを例示する、生細胞顕微鏡観察画像を示す。
【
図8】in vivoでのPLT産生を示す例示を示す。
【
図9】本開示の態様に基づく別の例示となるバイオミメティック微少流体システムの模式図を示す。
【
図10】
図9のシステムを使用して、PLT産生を示す例示を示す。
【
図11A】
図9のシステム中において、一流体流動実施例を使用して、PLT産生を比較する例示を示す。
【
図11B】
図9のシステム中において、別の流体流動実施例を使用して、PLT産生を比較する例示を示す。
【
図12】本開示の態様に基づく更に別のバイオミメティック微少流体システムの例示を示す。
【
図13】本開示の態様に基づく生理学的モデルを生成するためのプロセスの工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
血小板(PLT)は、血餅形成及び血管損傷の修復を刺激するのに重要な役割を果たす。低PLT数による出血の疾病率及び死亡率は、化学療法又は放射線処置、外傷、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、臓器移植手術、重篤な火傷、敗血症、及び遺伝性障害を含む、数多くの症状にわたって遭遇する主な臨床上の問題である。その免疫原性及び関連するリスクによる重大な臨床上の懸念にも関わらず、高い要求及び短い保存寿命による在庫不足を伴って、PLT輸血は、米国において、1年当たりに合計1000万単位超にもなる。
【0017】
このような幅広い要求及びリスクの認識のもとに、本開示には、生理機能において存在する条件、環境、構造、及び動的流動を再現可能な本明細書のシステム及び方法が記載されている。このようなシステム及び方法は、ヒトの生理機能モデルを生成するのに使用さ
れてもよい。例えば、このモデルは、機能的なヒトPLTを産生するのに使用することができる。
【0018】
PLT産生は、巨核球(MK)の分化が関与する。巨核球は、
図8に示されたように、骨髄(BM)における類洞血管の外側に存在し、長く、分岐した細胞構造(プロPLTと呼ばれる)を、循環内に伸ばす。具体的には、プロPLTは、薄い細胞質間橋により連結されたタンデムアレイ状のPLTサイズの膨張を含む。in vivoでは、プロPLTは、血管せん断を受け、PLT産生のためのアッセンブリラインとして機能する。プロPLTの詳細な特徴決定は不完全なままであるが、これらの構造は、in vitro及びin vivoの両方において特定されている。
【0019】
PLTは、プロPLTの先端から連続的に放出される。このメカニズムは、細胞の分子支柱及び桁として機能するチューブリン及びアクチンフィラメントの複雑なネットワークに高度に依存している。微小管(MT)束は、プロPLTシャフトに対して平行に走り、プロPLT伸長は、互いに摺動するMTにより駆動される。プロPLT成熟中に、オルガネラ及び分泌顆粒は、MTレール上を遠位に移動して、プロPLTの先端で捕捉される。アクチンは、プロPLT分岐及びPLT端の増幅を促進する。マウスMKの生細胞顕微鏡観察は、これを理解するのに重要であった。しかしながら、今日の大部分の研究は、静的MK培養において、in vitroで行われてきた。
【0020】
トロンボポエチン(TPO)は、MK分化の主な制御因子として特定されてきた。トロンボポエチンは、培養において、MKの濃縮集団を生成するのに使用されてきた。一参考文献において、プロPLT産生MKからin vitroで生成されたヒトPLTは機能的であったことが証明された。その後、MKは、胎仔肝細胞(FLC)、臍帯血幹細胞(CBSC)、胚性幹細胞(ESC)、及び誘導多能性幹細胞(iPSC)を含む、複数の供給源から分化されてきた。しかしながら、現在の2D及び液体MK培養では、in vivoにおいて、MK当たりに生成される推定約2000個のPLTの桁を満たさない。ごく最近、モジュール式の3Dのニット状ポリエステル足場が、培養において、100万個のCD34+ヒト臍帯血細胞から、1日当たりに最大6×106個のPLTを産生するために、連続的な流体流動下で適用されてきた。臨床的に有用なPLT数が得られることが示唆されているが、それらの3D注入バイオリアクタは、BM微小環境の複雑な構造及び流体の特徴を正確に再現しておらず、その閉鎖系モジュール設計は、プロPLT産生の可視化を妨げてしまう。このため、PLT放出メカニズムの洞察をほとんど提供しない。代替的に、ECMコートシルク系チューブに隣接する3Dポリジメチルシロキサン(PDMS)バイオチップが、BM類洞を再現し、in vitroでのMK分化及びPLT産生を研究するのに提案されている。このような装置は、成熟中のMK遊走を反復するが、高解像での生細胞顕微鏡観察に適しておらず、MK分化を駆動するのに必須の内皮細胞接触を再現できていない。
【0021】
MK分化は、培養中で研究されてきたが、プロPLT産生を刺激する条件は、特にin
vivoにおいて、ほとんど理解されていないままである。MKは、BMニッチに見出され、幾つかの証拠から、細胞-細胞、細胞-マトリクス、及びBMストローマの可溶性因子相互作用が、プロPLT形成及びPLT放出に関与することが示唆されている。実際に、ケモカインであるSDF-1及び成長因子であるFGF-4は、MKを類洞内皮細胞にリクルートする。細胞外マトリクス(ECM)タンパク質は、BM血管ニッチの別の主な構成物である。証拠から、膜貫通型糖タンパク質(GP)受容体を介したシグナル伝達は、例えば、ベルナール-スリエ症候群、グランツマン血小板無力症に見出される欠損を伴って、プロPLT形成、PLTの数及びサイズを制御することが示唆される。IV型コラーゲン及びビトロネクチンは、プロPLT産生を促進する。この産生は、そのコンジュゲートインテグリン受容体であるGPIbαに対する抗体により阻害され得る。同様に、
フィブリノゲンは、GPIIblllaを介したプロPLT形成及びPLT放出を制御する。これらの知見は、プロPLT産生の環境決定因子を明らかにするが、還元論アプローチにより限定される。したがって、BM複雑性を定義する寄与を包含する新たなモデルが、MKのPLTへの生理学的制御を解明するのに必須である。
【0022】
BMにおいて、プロPLTは、100~10,000s-1、又は特に、500~2500s-1の範囲の、壁せん断速度を受ける。PLT血栓形成における連続的な血流の役割が研究されてきたが、驚くべきことに、せん断力がPLT放出を制御するメカニズムには、ほとんど注意が払われてこなかった。また、調査された際、実験は、真の生理学的条件の代表例ではなかった。幾つかの予備的研究において、ECMコートしたスライドガラス上に、MKがかけられ、このスライドは、せん断によるECM接触活性化を区別することなく、固定化/付着MKを選択する。あるいは、放出されたプロPLTは、インキュベータ振とう機中で、求心性に振とうされてきた。この振とうでは、循環型層状せん断流動が反復されず、血管せん断速度の正確な制御が提供されず、高解像での生細胞顕微鏡観察に適していない。これらの主な制限にも関わらず、MKを高せん断速度に曝すことは、プロPLT産生を加速させると考えられる。一方、せん断の非存在下で培養されたプロPLTは、流体せん断応力で維持されたプロPLTより、少ないPLTしか放出しなかった。
【0023】
本開示から、微少流体装置が、動的流体流動を生成し、正確に調整することにより、細胞に化学的合図を伝達するための血管条件を模倣するのに、優れたプラットホームを提供することができると認められる。細胞含有ヒドロゲル内に微少流体ネットワークを埋め込むことは、3D足場を介して、可溶性因子の効率的な対流輸送を支持することが示されている。アガロースに封入された肝細胞、初代軟骨細胞を播種されたアルギン酸カルシウムヒドロゲル、及び3Dチューブ状ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲルに埋め込まれた内皮細胞からなる、生きた3D組織接触が製造されている。したがって、この技術は、肝臓、腎臓、腸、及び肺を含む、臓器-オンチップの開発に適用されてきた。加えて、微小血管-オンチップモデルの近年の開発は、心血管生物学及び病態生理学を、in vitroにおいて研究するのに使用されてきた。これらの研究から、細胞及び生理学的進行を研究するために、身体的微小環境及び生きた臓器の本来の化学的合図を模倣することの重要性が強調されている。例えば、このことは、PLT産生の薬剤媒介性阻害に特に重要である。プロPLTを産生するMKは、BM中において血管外にのみ存在するため、BMの半固体ECM微小環境及び循環の流体微小環境の両方と相互作用させて、バイオミメティック微少流体バイオチップは、関連する生理学的メカニズム、例えば、薬剤誘引血小板減少症を担うメカニズムを解明するモデルシステムを達成することができる。
【0024】
ここから
図1に切り替えて、本開示の種々の実施形態に基づく、バイオミメティックシステム100の非限定的な例を例示する模式図を示す。システム100は、基材101と、第1の流路102と、第2の流路104とを含む。ここで、各流路は、例えば、限定されず、粒子、細胞、物質、微粒子、材料、組成等を輸送する、又は、これらからなる、任意の流体媒体の流動を運ぶように構成されている。一実施形態において、システム100及び/又は基材101は、細胞不活性ケイ素系有機ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用して構成されていてもよい。
【0025】
第1の流路102は、第1の流路入力106及び第1の流路出力108を含む。同様に、第2の流路104は、第2の流路入力110及び第2の流路出力112を含む。第1の流路102及び第2の流路104は、説明されるであろうように、所望の流動プロファイル、速度、又は量、例えば、生理学的システムにおけるものを達成するために、実質的に長手方向に沿って伸び、長手方向及び横断方向に寸法を有する。一態様において、前記流路を説明する長手方向130及び横断方向132の寸法サイズは、例えば、骨髄及び血管の場合には、解剖学的又は生理学的構造、アッセンブリ、構成、又は配置と一致する範囲にあることができる。例として、長手方向130寸法は、1000~30,000マイクロメートル、又は特に、1000~3000マイクロメートルの範囲にあることができる。横断方向132寸法は、100~3,000マイクロメートル、又は特に、100~300マイクロメートルの範囲にあることができる。ただし、他の値も可能である。一部の態様では、各流路は、例えば、粒子、細胞、物質、微粒子、材料、組成等を、横断している流体媒体から、受容、局在化、捕捉、又は蓄積するように、作製、調節、又は製造されてもよい。
【0026】
また、システム100は、第1の流路102と第2の流路104とを分離する一連のカラム114も含む。カラム114の長軸は、前記流路の長手方向130寸法に対して実質的に平行に配置されることができる。一連のカラム114は、前記流路の長手方向130寸法と実質的に等しい距離を伸びる。カラム114は、一連のギャップ又は微小流路116により分離されてもよい。一連のギャップ又は微小流路116は、第1の流路102から第2の流路104に向かって伸びて、カラム114間を通過する部分的な流体連通経路を形成している。ただし、前記ギャップに言及する場合、「微小流路」という用語は、特定の幅を伴うものではない。例えば、前記ギャップは、マイクロメートル範囲より実質的に大きくてもよいし、又は、同範囲より小さくてもよい。一部の態様では、カラム114及び微小流路116は、カラム114及び微小流路116の概ね近傍の領域に、粒子、細胞、物質、微粒子、材料、組成等が、結合、付着することができ、又は、同領域に他の方法で閉じ込められることができるような寸法である。例として、カラム114の長手方向130及び横断方向132寸法は、1~200マイクロメートルの範囲にあることができる。一方、カラム114間の分離距離又はギャップにより画定される微小流路116の長手方向130寸法は、0.1~20マイクロメートルの範囲にあることができる。ただし、他の値も可能である。
【0027】
一部の態様では、第1の流路102中の第1の媒体の流動は、第1の注入口118に接続されている第1の供給源を使用して確立されてもよい。ここで、前記第1の媒体の流動は、第1の排出口120を介して抜き取り可能である。同様に、第2の流路104中の第2の媒体の流動は、第2の注入口122に接続されている第2の供給源を使用して確立されてもよい。ここで、前記第2の媒体の流動は、第2の排出口124を介して抜き取り可能である。ただし、第1の流路102又は第2の流路104からの流動は、それらの間の流体連通により、第1の排出口120又は第2の排出口124のいずれから抜き取られてもよい。一部の構成では、第1の排出口120若しくは第2の排出口124のいずれか、又は両方は、前記第1の供給源若しくは第2の供給源、又は両方を使用して確立された流動を、排出又は捕捉するための性能を含んでもよい。また、このような性能は、所望の材料又は物質、例えば、血小板又は栓球を、捕捉された流動から分離する能力を含んでもよい。
【0028】
前記第1及び第2の供給源(
図1において図示せず)は、制御された流動又は流体圧を送達するために構成された任意のシステム、例えば、微少流体ポンプシステムを含んでもよく、任意の数の要素又はコンポーネント、例えば、流動制御装置、アクチュエータ等を含んでもよい。任意の所望又は必要とされる量の時間持続可能な流速又は流量は、供給源の特定の構成、要素、及びコンポーネントを使用して、並びに、第1の流路102及び第2の流路104に関連する幾何学的寸法により制御されてもよい。一部の態様では、第1の流路102及び第2の流路104中の流量は、例えば、骨髄及び血管において見出される生理学的条件を複製するように制御されてもよい。例えば、流量は、PLTを生成するのに十分な所望の血管せん断速度を達成するように制御されてもよい。
【0029】
また、システム100は、任意の形状又は形態のろ過要素及び抵抗要素を含んでもよく、流動方向に応じて、前記第1及び第2の流体媒体それぞれの経路に沿って配置されてもよい。具体的には、前記ろ過要素は、通過中の流体媒体から、任意の種類のデブリ、ダスト、及び他の汚染物質、又は、望ましくない材料、要素、若しくは微粒子を捕捉又は除去するように設計されていてもよい。加えて、前記抵抗要素は、流動力又は流量の減衰変動を制御するのが望ましい場合がある。一部の構成では、
図1に示されたように、ろ過要素126は、望ましくない汚染物質を直ちに捕捉するために、第1の注入口118及び第2の注入口122近くに配置されることができる。次に、流動抵抗要素128は、
図1に示されたように、ろ過要素126から下流に配置されてもよい。
【0030】
一部の実施例において、ex vivoでヒト骨髄(BM)血管ニッチを再構成することは、第1の流路102を、血小板産生を制御する骨粉、ペプチド、又はタンパク質の任意の組み合わせにより、選択的に満たすことにより達成されてもよい。同組み合わせとしては、制限されず、Cl、CIV、FG、FN、VN、LN、VWF、ポリ-L-リジン、フィブリノゲン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、CCL5(RANTES)、S1PR1、SDF-1、及びFGF-4、ゲル、例えば、アガロース、アルギン酸塩、及びマトリゲル、又は、溶液、例えば、PBS、HBS、DMEM、EGM、若しくは他の培地が挙げられる。あるいは、ECMタンパク質は、表面スライドへのバイオチップ付着前にタンパク質マイクロ/ナノスタンプを使用して、又は、微少流体装置アッセンブリ後に平行微少流体流を使用して、ガラス表面又は多孔質メンブラン上に直接パターン化されてもよい。局所的な成分濃度は、整列及び3D配置に注目して、注入中に前記微少流体流の流量を制御することにより調節されてもよい。
【0031】
他の実施例では、ヒトBM血管を反復することは、内皮細胞を摂氏37度及び5% CO2で培養することにより、第2の流路104を選択的にコートすることにより達成され
てもよい。内皮細胞は、4% ホルムアルデヒドで固定されてもよく、細胞の局在及びアーキテクチャを解明するために細胞のバイオマーカーについてプローブされてもよい。内皮化されたBMバイオチップの第2の流路104は、蛍光又は発色媒体、例えば、FITC-デキストラン、又は、ビーズで満たされてもよく、サンプル/細胞/分子拡散を評価し、血管透過性を決定するために、生細胞顕微鏡観察により可視化されてもよい。
【0032】
ここから
図9に切り替えて、本開示の種々の実施形態に基づく、バイオミメティックシステム900の別の非限定的な例を示す。システム900は、基材902を含む。基材902には、第1又は中央の流路904が、中央の流路904に対して側方又は隣接する第2及び第3の流路又は側方の流路906と共に形成されている。システム900の各流路は、例えば、限定されず、粒子、細胞、物質、微粒子、材料、組成、作用剤等を輸送する、又は、これらからなる、任意の流体媒体の流動を運ぶように構成されていてもよい。一部の態様では、システム900及び/又は基材902は、細胞不活性ケイ素系有機ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、COP、COC、PC、PS、PMMA、ガラス、及び/若しくは任意の他の適切な材料、又はそれらの組み合わせを使用して構成されていてもよい。特定の構成では、基材902は、分離可能で、再密閉でき、又は接着可能なコンポーネント、例えば、前記基材の第1の部分903及び第2の部分905を含んでもよいし、又は、同部分から組み立てられてもよく、適切な技術及び方法を使用して作製及び/又は組み合わせられてもよい。
【0033】
中央の流路904及び側方の流路906は、長手方向908に沿って実質的に平行に伸びる。一部の好ましい態様では、長手方向908並びに横断方向910及び912に沿って前記流路を画定する寸法は、生理学的構造と一致する範囲にあることができる。またさらに、特定の寸法は、細胞、物質、組成、若しくは他の材料の前記流路への堆積を促進し、又は、所望の流体流動プロファイル、速度、圧力、若しくは量、例えば、生理学的システムに関連するものを、持続、制御、若しくは再現するのが望ましい場合がある。一部の設計では、横断方向910及び912に沿った中央の流路904及び側方の流路906の寸法は、
図9に例示されたように、等しくある必要はない。例として、全流路の長手方向914は、1000~30,000マイクロメートルの範囲にあることができる。一方、各流路についての横断方向寸法は、10~3,000マイクロメートルの範囲、又は特に、10~150マイクロメートルの範囲にあることができる。長手方向及び横断方向の寸法について、他の値も可能である。
【0034】
前記流路は、長手方向908に対して概ね平行に配置され、前記流路の長手方向寸法914に実質的に等しい距離を伸びるカラム916により分離される。カラム916は、任意の数の開口918を含んでもよい。開口918は、前記流路間に部分的な流体連通経路を形成している。開口918は、必要に応じた形状、寸法、及び配置をとる。開口918は、例えば、開口部、スリット、孔、ギャップ、微小流路等であることができる。これらは、中央の流路904と第1及び/又は第2の側方の流路906の各々との間に伸びる。例として、開口918の長手方向及び横断方向寸法は、0.1~20マイクロメートルの範囲にあることができる。ただし、他の値も可能である。
図9に例示されたように、開口918は、横断方向寸法より長い長手方向寸法を有してもよい。一部の好ましい設計では、開口918は、
図9に例示されたように、前記基材の第1の部分903近くに概ね位置する。最後に、開口918は、前記基材の第1の部分903に向かって伸びてもよい。これにより、捕捉されたMK及び/又はプロPLTが、例えば、流体媒体を通過することにより生じる流体圧又は圧力差により、前記基材の第1の部分903の表面に圧迫されることができる。前記基材の第1の部分903が透明である場合、改善された解像度を、プロPLT及びPLT産生プロセスを画像化することに関して達成することができる。この方法において、開口918は、所望の生体物質、例えば、PLTを最適に産生し、又は、同生体物質の収量を最大化するように、配置され、形成され、寸法決定されてもよい。
【0035】
図9に示されたように、中央の流路904は、第1の流路入力又は中央の流路入力920と、第1の流路出力又は中央の流路出力922とを含む。側方の流路906は、第2の流路入力又は側方の流路入力924を共有してもよく、別々の第2及び第3の流路出力又は側方の流路出力926を含んでもよい。側面の流路入力924の近くで、システム900の各側方の流路906は、拡張部分又はポート928を含む。特定の動作モードでは、拡張部分又はポート928は、各側方の流路906それぞれについての更なる流体入力又は出力として機能することができる。この機能は、説明されるであろうように、システム900に柔軟性の増大を提供する。
【0036】
また、システム900は、ろ過性能を含んでもよい。同ろ過性能は、任意の形状又は形態をとることができ、通過中の流体から、任意の種類のデブリ、ダスト、及び任意の他の汚染物質を捕捉又は吸着するように構成されていることができる。一方で、同ろ過性能は、流体に含有される細胞、作用剤、又は他の所望の材料、例えば、MKの流動を可能にする。
図9に示された非限定的な構成において、ろ過要素930は、側方の流路入力924の近くに配置されてもよい。また加えて、システム900は、流動制御性能を含んでもよい。同流動制御性能は、各種の形状又は形態をとることができ、流動力又は流量の減衰変動を制御するように設計されることができる。
図9に示された非限定的な構成では、流動抵抗要素932が、流路入力920及び924の近くに配置されてもよい。
【0037】
図1を参照して説明されたように、前記流路、カラム916、及び開口918は、概ね前記流路内、又は、カラム916及び開口918近傍の任意の領域に、粒子、細胞、物質、微粒子、材料、組成等が、結合、付着することができ、又は、同領域に他の方法で閉じ込められることができるように作製されてもよい。これにより、開口918近くの領域から、任意の所望又はターゲットとなる生体物質の収集が可能となる。前記流路及び/又はカラム916及び/又は開口918を予めコートするための組成、材料、又は作用剤の非限定的な例としては、制限されず、ウシ血清アルブミン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、ラミニン、IV型コラーゲン、I型コラーゲン、ポリ-L-リジン、ビトロネクチン、CCL5、S1PR1、SDF-1、FGF-4、及び他の細胞外マトリクスタンパク質、又は血小板産生を制御するタンパク質を挙げることができる。一部の態様では、このようなコーティングは、システム900の作製工程中に、又は、前記流路を通した流体媒体流動によるその後の注入までに行われることができる。加えて、前記流路には、細胞又は他の生体組成及び材料が播種されてもよく、制限されず、ヒト又は非ヒトの内皮細胞、間葉系細胞、骨芽細胞、及び繊維芽細胞が挙げられる。特に、三次元細胞外マトリクス組織化及び生理学的骨髄剛性を複製又は模倣するために、細胞が、ヒドロゲル溶液中に注入されてもよい。このヒドロゲル溶液は、その後に重合されてもよい。前記ヒドロゲル溶液としては、制限されず、アルギン酸塩、マトリゲル、及びアガロースを挙げることができ、例えば、必要に応じて、任意の流路内に選択的に充填されてもよい。
【0038】
図10に切り替えて、システム900の例示となる動作方式を示す。同動作方式は、所望の又はターゲットとなる生体物質、例えば、血中PLTを生成する、例示となるプロセス1000を示す。具体的には、工程1002において、第1の生体材料又は組成を、中央の流路入力920を介して提供する。このような生体材料としては、PLTを生成するために含有される細胞、例えば、MKを挙げることができる。次いで、工程1004において、前記生体材料の少なくとも幾らかの部分が、説明されたように、カラム916及び開口918の概ね周囲の領域に付着することができる。例えば、MKが、開口918近くに捕捉されてもよい。工程1006において、ターゲットとなる生体物質を、前記流路における流量、速度、せん断速度、又は圧力差により生成することができる。例えば、MKの通過として伸長したプロPLTは、開口918周囲で捕捉されるか、又は、開口918を通してろ過され、その後、PLTに変換する。工程1008において、ターゲットとなる産生された生体物質は、前記流体媒体により運ばれ、その後の使用のために、溶出液から収集及び分離することができる。工程1010において、収集後処理を行ってもよい。例えば、工程1010は、前記バイオリアクタから得られた血小板を、FDA認可保存媒体、例えば、Haemonetics、COBE Spectra、Trima Accel等により製造された血小板添加溶液に透析するプロセスを含んでもよい。例えば、動的透析システム、例えば、Spectrum Labs等により製造された、低せん断で、0.75mm、0.65μ mPESルーメンを通過させる連続的な流動を使用する透析システムを、使用することができる。さらに、工程1010における収集後処理は、FDAにより要求された場合、ヒトへの注入前に血小板生成物を照射するプロセスを含んでもよい。このため、培養培地を、ヒトの患者に注入することができる媒体で置き換えてもよい。
【0039】
システム900の固有の設計特徴は、双方向的な方法において、更なる流体入力又は出力として機能する、説明された入力、出力、及び拡張部分又はポート928により、媒体が選択的に注入されることができることである。すなわち、媒体、細胞、又は任意の材料、組成、若しくは物質を、任意又は全ての前記流路内に、前進又は後退両方の流体流動により、別々に又は同時に導入することができる。したがって、例えば、2つの側方の流路906によるPLTの収集効率向上に加えて、システム900により、各流路を独立して制御し、異なる動作条件、例えば、媒体、細胞、コーティング剤、材料、せん断速度、流体流動方向等の直接比較を容易にすることもできる。
図11A及び11Bは、PLTを産生するための例示となる流体流動実施例を例示する。これにより、MKを、中央の流路904(
図11A)、又は、側方の流路906(
図11B)のいずれか若しくは両方のいずれかに導入することができる。
【0040】
ここから
図12に切り替えて、本開示の種々の実施形態に基づく、バイオミメティックシステム1200の別の非限定的な例を示す。システム1200は、基材1202を含む。例として、基材1202は、細胞不活性ケイ素系有機ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、COP、COC、PC、PS、PMMA、ガラス、及び/若しくは任意の他の適切な材料、又はそれらの組み合わせを使用して構成されていてもよい。
図12に示されたように、基材1202は、基材1202に形成された、第1のチャンバ1204と、第2のチャンバ1206とを含む。これらのチャンバは、多孔質メンブラン1208により分離されている。
【0041】
一部の用途では、システム1200は、例えば、第1のチャンバ1204、第2のチャンバ1206、又は多孔質メンブラン1208を個々に作製するために、組み立て又は分解を必要とする場合がある。システム1200自体は、第2の基材(
図12において図示せず)を含んでもよい。この場合、第1のチャンバ1204は、第1の基材1202に形成され、第2のチャンバ1206は、前記第2の基材に形成される。システム1200自体は、第1のチャンバ1204及び第2のチャンバ1206が着脱可能に連結されるのを可能にする更なる機構を含んでもよい。例えば、システム1200は、第1のチャンバ1204、第2のチャンバ1206、及び多孔質メンブラン1208間の流体密封を壊す又は修復するのを容易にするコンポーネント又は要素を含んでもよい。
【0042】
第1のチャンバ1204及び第2のチャンバ1206は、所望の用途に応じて選択された長手方向及び横断方向寸法を有して、任意の所望の方法で、形成され、寸法決定されることができる。例えば、ターゲットとなる生体物質、例えば、PLTを所望の収量で産生するために、前記チャンバの寸法は、流量、速度プロファイル、せん断速度、せん断応力、又は前記チャンバ間の圧力差を制御するのに最適化されてもよい。
図12の例に示されたように、第1のチャンバ1204及び第2のチャンバ1206は、長手方向に沿って実質的に平行に伸びてもよい。例として、前記チャンバは、1000~30,000マイクロメートルの範囲の長手方向寸法と、10~300マイクロメートルの範囲の横断方向寸法とを含んでもよい。ただし、他の値も可能である。
【0043】
一部の構成では、システム1200内外へのガス輸送を可能にする開口部も、第1のチャンバ1204の上面に包含されてもよい。疎水性ガス透過性メンブラン自体が、材料が前記開口部から出てしまうのを防止するために、第1のチャンバ1204近くに積層されてもよい。このような実施例において、システム1200は、例えば、場合により、例えば、再密閉式チップホルダを使用して互いにクランプされた、疎水性ガス透過性メンブラン、第1のチャンバ1204、多孔質メンブラン1208、及び第2のチャンバ1206を含む。ここで、各チャンバは、説明されたように、別々の基材に形成されている。
【0044】
多孔質メンブラン1208は、第1のチャンバ1204と第2のチャンバ1206との間に部分的な流体連通経路を形成することができる、任意の要素であることができる。例えば、多孔質メンブラン1208は、メッシュ又は、多孔質メンブラン1208に構成された孔、開口、若しくは微小流路を有する薄膜でもよい。多孔質メンブラン1208は、特定の用途に基づいて、形作られ、形成され、寸法決定される。例として、多孔質メンブラン1208は、ポリカーボネート材料、PDMS、COP、COC、PC、PS、又はPMMA等の材料を使用して構成されることができる。加えて、多孔質メンブラン1208は、1~100ミリメートルの範囲にある横方向及び横断方向寸法を含んでもよく、0.1~30マイクロメートル、及び特に、8~12マイクロメートルの範囲にある厚みを有してもよい。ただし、他の寸法も可能な場合がある。一部の設計では、多孔質メンブラン1208は、システム1200の個々のチャンバの寸法を超えて伸びることができる。具体的には、多孔質メンブラン1208は、以下に説明されたように、複数の同時プロPLT産生プロセスを支持する性能と共に、所望の生体材料、細胞等を捕捉するための大きな表面積を有して構成されてもよく、したがって、PLT収量の増大に寄与する。
【0045】
多孔質メンブラン1208に適した孔径の選択は、細胞、例えば、MKの最大捕捉を達
成することができるようにあることができる。例えば、多孔質メンブラン1208は、直径が0.1~20マイクロメートル、及びより具体的には、5~8マイクロメートルの範囲にある孔を有することができる。一部の態様では、多孔質メンブラン1208は、特定の材料、化学物質、又は作用剤を含むように作製されてもよい。例えば、多孔質メンブラン1208は、血小板産生を制御するペプチド又はタンパク質、例えば、ポリ-L-リジン、フィブリノゲン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、CCL5(RANTES)、S1PR1、SDF-1、FGF-4等を含んでもよい。
【0046】
図12に示されたように、第1のチャンバ1204は、注入口1210及び排出口1212を含む。同様に、第2のチャンバ1206は、注入口1214及び排出口1216を含む。一部の態様では、前記チャンバは、種々の化学物質、作用剤、又は材料を使用して、1つ以上の供給源を使用する各チャンバ注入口を通した注入により、又は、関連する基材における個々の層をインキュベートすることにより、個々に作製されることができる。他の態様では、第1のチャンバ1204及び第2のチャンバ1206の注入による作製は、並行して行われてもよい。すなわち、化学物質、作用剤、又は材料を含有する流体は、層状の流動流が混ざらないように、両方の注入口から導入されてもよく、両方の排出口から収集されてもよい。
【0047】
システム1200と共に使用するための化学物質、作用剤、又は材料の非限定的な例としては、ウシ血清アルブミン(例えば、1~10%)、フィブリノゲン、フィブロネクチン、ラミニン、IV型コラーゲン、I型コラーゲン、及び他の細胞外マトリクスタンパク質、又は血小板産生を制御するタンパク質を挙げることができる。加えて、一方又は両方のチャンバには、細胞が播種されて、骨髄及び血管組成を、関連する細胞培養中の個々の層を通して注入ことにより、又は、同層をインキュベートすることにより反復することができる。これらとしては、限定されず、ヒト又はマウスの内皮細胞、間葉系細胞、骨芽細胞、及び繊維芽細胞等が挙げられる。さらに、三次元細胞外マトリクス組織化及び生理学的骨髄剛性をモデル化するために、細胞が、ヒドロゲル溶液中に注入されることができる。前記ヒドロゲル溶液としては、制限されず、アルギン酸塩及びアガロースが挙げられ、システム1200内で重合されてもよい。
【0048】
また、システム1200は、ろ過性能を含んでもよい。同ろ過性能は、任意の形状又は形態をとることができ、通過中の流体から、任意の種類のデブリ、ダスト、及び任意の他の汚染物質を捕捉又は吸着するように構成されていることができる。一部の態様では、フィルタはそれを通して、細胞、作用剤、又は他の所望の材料、例えば、MKの流動を可能にする。また加えて、システム1200は、流動制御性能を含んでもよい。同流動制御性能は、各種の形状又は形態をとることができ、流動力又は流量の減衰変動を制御するように設計されることができる。またさらに、システム1200は、システム1200を通って流動する任意の媒体の流動を確立、持続、又は排出するように構成されている、任意のシステム、装置、供給源、又は機器を含んでもよい。説明されたように、これは、システム1200のチャンバ内に生体組成を、前記チャンバ間に生理学的せん断を所定の範囲内で生成可能な流量で導入することにより、生理学的条件を複製可能な1つ以上の供給源を含んでもよい。ここで、前記所定の範囲は、100s-1~10,000s-1であることができる。
【0049】
図12に示されたように、一部の設計では、システム1200の複数のコピーが、バイオミメティック装置又はシステムを構成するように、アレイ状にアッセンブリされてもよい。システム1200の各コピーは、他のコピーとは独立して、又は、他のコピーと関連して動作する。このようなアプローチは、PLT産生プロセスを並列化させるのに都合がよく、効率的な方法を提供することができる。例えば、1つのシステム1200の注入口及び/又は排出口は、第2のシステム1200の注入口及び/又は排出口に接続されてい
てもよい等である。一部の設計では、注入口は、生体材料、例えば、MKが、各システム1200内に1つ以上の供給源を使用して、ランダムに又は同時に導入及び分布されてもよいような方式で設計されてもよい。加えて、各システム1200からの排出口は、アレイ状の全システム1200からの、ターゲットとなる生体物質、例えば、プロPLT及びPLTを含有する流出液の1つの容器内に収集可能な1つの主な流路に接続されていてもよい。
【0050】
例として、寸法50ミリメートル×75ミリメートルの多孔質メンブラン1208について、160個超のシステム1200が、1つのバイオミメティック装置上に組み合わせられてもよい。各システム1200についての孔数が約1.2×108個であると考える
と、これは、各装置が、約2×1010個の細胞を捕捉可能である場合があることを意味しており、これは、in vivo(動物及びヒト)での検査及び注入に十分な数のPLTを産生するのに十分高い値を表す。
【0051】
システム1200は、複数の利点を含む。同利点には、多孔質メンブラン1208上に位置する孔の第1の表面を、規定されたECMタンパク質で特異的にコートし、孔の第2の表面をこれらのタンパク質によらず又は他のECMタンパク質によりコートするための能力が挙げられる。これは、MKが、前記第1の表面で、対象となるそのタンパク質と接触して留まることができるのを確保する。一方、プロPLTは伸び、PLTを、互いに接触から放出する。加えて、説明されたように、システム1200の設計は、特定の用途で必要とされたような、種々の材料で構成され、種々の孔径を有する種々の多孔質メンブラン1208の洗浄又は交換を容易にする。
【0052】
本開示の態様に基づくシステム100、900、及び1200は、寸法、環境、及び条件をその中で複製することにより、ヒトの生理機能において見出された生理学的条件を複製又は再現するプラットホームを提供する。例えば、
図1を参照して説明されたように、密接に間隔が空いたカラムにより分離されている微少流体流路は、制御された環境及び流動条件を受け、ヒトBMを複製する現実的な生理学的モデルを提供する。システム100、900、及び1200を使用して、MK捕捉、BM剛性、ECM比較、微小流路サイズ、血行動態血管せん断、及び内皮細胞接触を制御することにより、機能的なPLTを生成することができる。
【0053】
図13に切り替えて、生理学的モデルを製造するためのプロセス1300の工程を示す。この場合、前記モデルは、骨髄及び血管構造の内の少なくとも一方を含むことができる。プロセスブロック1302において、任意の数の生体組成を、例えば、
図1、9、及び12を参照して説明されたように、提供されたバイオミメティック微少流体システム内に導入することができる。一部の実施例では、プロセスブロック1302は、提供されたシステムの第1の流路又はチャンバ内に、第1の流量で第1の供給源を使用して、第1の生体組成を導入することと、提供されたシステムの第2の流路又はチャンバ内に、第2の流量で第2の供給源を使用して、第2の生体組成を導入することとを含んでもよい。他の実施例では、前記システムの第3の流路又はチャンバ内に、第3の流量で前記第2又は第3の供給源を使用して、前記第2又は第3の生体組成を導入してもよい。説明されたように、各流路又はチャンバは、供給源及び流動の任意の組み合わせを使用して、生体組成により作製、処理、及び/又は注入されてもよい。この場合、各生体組成としては、半固体、固体、液体、細胞等、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0054】
プロセスブロック1304において、流量を、流路又はチャンバ間に所望の差異を生じさせるために制御することができる。一部の態様では、このような流量を制御することは、血小板産生を容易にするであろう所定の範囲内の生理学的せん断速度を生成することができる。例えば、このような所定の範囲は、100s
-1~10,000s
-1、及びより具体的には、500s
-1~2500s
-1でもよい。一部の態様では、流量の各方向を、
図11を参照して説明されたように、反転させてもよい。次に、プロセスブロック1306において、例えば、提供されたバイオミメティック微少流体システム中に構成された前記微小流路近くで産生されたターゲットとなる生体物質を、前記溶出液から収集してもよい。説明されたように、このようなターゲットとなる生体物質は、血小板を含むことができる。一部の態様では、前記溶出液は、ターゲットとなる生体物質を前記溶出液から抽出するために、プロセスブロック1306における数多くの処置工程を受けてもよい。
【0055】
これらのアプローチに利用される材料及び方法の更なる例が、以下に詳細に説明される。これらの例は、例示の目的のみで提供され、本開示の範囲を限定することを全く意図していないことが認められるであろう。実際に、本明細書に示され、説明されたものに加えて、種々の改変、例えば、血液脳関門に対する適用性又は別々の媒体にわたる分子拡散が可能である場合がある。例えば、寸法、構成、材料、細胞種、微粒子、流動性媒体、及び流量、作製法及びレシピ、並びに、画像化、処置、及び分析法等を含む特定の実施例が説明される。ただし、この実施例は、添付の特許請求の範囲の範囲内で使用され、同範囲内にあることができることが、認められるであろう。
【実施例】
【0056】
微少流体装置の設計及び作製
ソフトリソグラフィを使用して、微少流体装置を作製した。
図1の例に示されたように、前記装置は、気泡及びダストを捕捉するための受動フィルタ、続けて、流体抵抗を含む2つの流路を含んだ。前記流体抵抗は、動作中に上昇する流量の変動を減衰させるのに使用した。前記流路を、長さ1300マイクロメートル、幅130マイクロメートル、及び深さ30マイクロメートルの長方形領域に組み合わせ、3マイクロメートルの間隔を空けた一連のカラム(幅10マイクロメートル及び長さ90マイクロメートル)により分離した。効率的なガス交換を確保し、細胞培養中における高解像での生細胞顕微鏡観察を支持するために、前記微少流体装置を、スライドガラスと結合させた細胞不活性ケイ素系有機ポリマーで構築した。
【0057】
AutoCADにおけるAutoDeskソフトウェアを使用して、所望の2Dパターンを設計し、フォトリソグラフィクロムマスクに印刷した。シリコンウエハ(University Wafers,Boston,MA)を、SU-8 3025フォトレジスト(Michrochem,Newton,MA)で、膜厚30マイクロメートルにスピンコートし(Laurell Technologies,North Wales,PA)、65℃で1分間及び95℃で5分間ベーキングし、前記クロムマスクを通して、UV光(約10mJ cm-2)に30秒間露光させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に前記基材を7分間沈めることにより、結合しなかったSU-8フォトレジストを除去した。ポリジメチルシロキサン(PDMS)を、前記シリコンウエハのパターン化された側上に注ぎ、脱気し、65℃で約12時間架橋させた。硬化後、PDMS層を、型から剥がし、注入口及び排出口の孔を、直径0.75mmの生検用パンチで開けた。PDMSスラブをガラスのカバースライド(#1.5、0.17×22×50mm、Dow Corning,Seneffe,Belgium)に結合させ、続けて、酸素プラズマ(PlasmaPrep 2、GaLa Instrumente GmbH,Bad Schwalbach,Germany)で処理することにより、前記流路を密封した。PE/2チューブ(Scientific Commodities,Lake Havasu City,AZ)を介し、27ゲージ針を備えた1mLのシリンジ(Beckton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を使用して、サンプルを、前記微少流体装置内に注入した。液体の流量を、シリンジポンプ(PHD 2000、Harvard Apparatus,Holliston,MA)により制御した。
【0058】
微少流体装置の動作
細胞がガラスと直接接触するのを防止するために、装置を、0.22μmろ過した10% BSA溶液(Millipore,Billerica,MA)で、30分間コートした。
図1を参照して、第1の注入口118及び第2の注入口122それぞれに、12.5μL/時間の量で、2つのシリンジ微少流体ポンプ(Harvard Apparatus,Holliston,MA)を使用して、初代MK及び媒体を注入した。第1の排出口120を閉じた時点で、両入力溶液を、初代MKを捕捉させる第2の排出口124に方向を変えさせた。
【0059】
細胞外マトリクス組成モデリング(2D)
前記流路をローダミン-コンジュゲートフィブリノゲン(1mg/mL)又はフィブロネクチン(50μg/mL、Cytoskeleon Inc.,Denver,CO)で30分間満たすことにより、微少流体装置を、細胞外マトリクスタンパク質で選択的にコートした。層状の流動流が混ざらないように、サンプルを、両注入口を通して平行に注入し、両排出口から収集した。装置を、1×PBSで洗浄し、任意の残りの曝されたガラスをコートするために、0.22μmろ過した(Millipore,Billerica,MA)10% BSA溶液(Roche,South San Francisco,CA)で、30分間コートした。
【0060】
BM剛性モデリング(3D)
初代MKを、培養培地中に、平均分子量150~250kD(Pronova SLG100、FMC biopolymer,Norway)を有する、1% 無菌アルギン酸塩中に再懸濁させ、MKが捕捉されるまで、前記微少流体装置(
図1における、第1の注入口118、第2の排出口124)にわたって満たした。次いで、前記第2の流路を、1×PBSで選択的に満たして、この流路からアルギン酸塩を除去した。均一なアルギン酸塩ゲルを作製するために、30mM ナノ粒子炭酸カルシウム(mkNANO,Canada)を、カルシウム源として使用し、ゆっくり加水分解する、60mM D-グルコノ-δ-ラクトン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)に溶解させ、これにより、前記溶液中にカルシウムを放出する(Khavari et al NJP 2013をレビューすること)。前記炭酸カルシウム懸濁液を、前記第1の流路に保持された前記アルギン酸塩溶液が重合するまで(約20分間)、前記第2の流路に沿って注入した。次いで、前記第2の流路を、1×PBSで選択的に洗浄し、培養培地で置き換えた。アルギン酸塩ゲルの機械的特性を決定するために、0.25%、0.5%、1.0%、及び2.0% アルギン酸塩ゲルを調製し、その周波数依存性せん断係数を、37℃におけるレオロジーにより測定した(Ares G2 TA instruments,New Castle,DE)。
【0061】
類洞血管接触モデリング(3D)
微少流体装置を、上記されたように、50μg/mL フィブロネクチン(Cytoskeleon Inc.,Denver CO)及び10% BSA(Roche,South San Francisco,CA)で選択的にコートし、37℃、5% CO2のインキュベータに移した。EBM培地(Lonza,Basel,Switzerland)中の1000万個/mL HUVECを、前記フィブロネクチンコート流路上に、12.5μL/時間で播種し、この表面に3時間にわたって付着させた。前記注入口のサンプルを、細胞を含まないEBM培地に置き換え、HUVECがコンフルエントに達するまで(2~8日)、前記流路を通して満たした。細胞を、5μM CellTracker Red及び1μg/mL Hoescht 33342(Invitrogen,Carlsbad,CA)で、45分間染色し、新鮮な培地で洗浄し、又は、4% ホルムアルデヒド中で固定させ、共焦点蛍光顕微鏡観察により可視化した。
【0062】
血管せん断速度モデリング(3D)
MKに加えられるせん断応力を、前記微少流体装置内における流体力学のコンピュータモデルで推定した。市販の有限要素法ソフトウェア(COMSOL)を使用して、ナビエ-ストークス方程式を解いた。圧縮できない流動についての定常状態ナビエストークス流動方程式は、下記のとおりである。
【0063】
【0064】
式中、ρは、流体密度であり、pは、圧力であり、μは、流体粘度であり、fは、流体における物体力作用である。前記微少流体装置の正確な寸法を複製する3次元コンピュータドメインにおいて、上記方程式(1)を解いた。前記装置内の流体は、水の粘度及び密度(それぞれ、0.001Pas及び1000kg/m3)を有すると推定された。すべ
り境界条件は、前記流路壁において推定されなかった。注入流量は、12.5~200μL/時間の範囲であった。スリットでより細かく作製した三角形メッシュを使用して、前記ドメインを離散化した。前記モデルは、315,317度の自由度を含んだ。メッシュの独立性を、せん断速度間における10%未満の差異を得ることにより確認し、251,101~415,309度の自由度が見出された。UMFPACK線形系ソルバーを使用して、定常状態の溶液を得た。
【0065】
初代マウス巨核球培養
マウスFLCを、WT CD1マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)から収集し、MKを培養した。
【0066】
電子顕微鏡観察
巨核球入力物及びバイオリアクタ溶出物を、0.1M カコジル酸塩バッファー(pH7.4)中の1.25% パラホルムアルデヒド、0.03% ピクリン酸、2.5% グルタルアルデヒドで、1時間固定し、1% 四酸化オスミウムで後固定し、一連のアルコールにより脱水し、プロピレンオキシドを浸潤させ、エポキシ樹脂中に包埋した。超薄切片を染色し、Tecnai G2 Spirit BioTwin電子顕微鏡(Hillsboro,OR)により、加速電圧80kVで調べた。AMTデジタル取得及び解析ソフトウェア(Advanced Microscopy Techniques,Danvers,MA)を使用して、Advanced Microscopy Techniques(AMT)2K電荷結合素子カメラにより、画像を記録した。
【0067】
免疫蛍光顕微鏡観察
巨核球、放出されたプロPLT、又はバイオリアクタ溶出物を精製し、プローブした。サンプルを、5μM CellTracker Green(Invitrogen,Carlsbad,CA)と、45分間インキュベートし、新鮮な媒体で洗浄し、生細胞蛍光顕微鏡観察により可視化し、又は、4% ホルムアルデヒド中で固定し、ポリ-L-リジン(1μg/mL)でコートしたカバーガラス上で遠心分離した。細胞骨格成分の分析のために、サンプルを、0.5% Triton-X-100で透過処理し、免疫蛍光ブロッキングバッファー(50ml 1×PBS中の0.5g BSA、0.25ml 10% アジ化ナトリウム、5ml FCS)中で、抗体標識前に一晩ブロッキングした(55)。微小管細胞骨格を描写するために、サンプルを、マウス又はヒトβ1-チューブリン用のウサギポリクローナル一次抗体とインキュベートした。アクチン細胞骨格を描写するために、サンプルを、Alexa 568ファロイジン(Invitrogen,Carlsbad,CA)とインキュベートした。細胞核を、1μg/mL Hoescht 33342(Invitrogen,Carlsbad,CA)で標識した。バックグラウンド蛍光及び非特異的抗体標識を補正するために、スライドを、二次抗体単独とインキュベートした。したがって、全ての画像を調節した。サンプルを、10×(開口数、0.30)Plan-Neofluar air及び63×(開口数、1.4)Plan-ApoChromatオイル液浸対物レンズを備えたZeiss Axiovert 200(Carl Zeiss,Thornwood,NY)で調べた。CCDカメラ(Hamamatsu Photonics,Boston,MA)を使用して、画像を得た。画像解析ソフトウェアであるMetamorphバージョン7.7.2.0(Molecular Devices,Sunnyvale,California,USA)及びImageJバージョン1.47pソフトウェア(NIH、http://rsb.info.nih.gov.ezp-prod1.hul.harvard.edu/ij/)を使用して、画像を解析した。
【0068】
細胞サイズ及び形態決定
細胞について、個々に閾値を決め、高含量細胞質領域及び周辺測定を、ImageJにおいて、以下に概説された研究者コードソフトウェアを使用して行った。解析を、全サンプルの手検測により確認した。不適切に閾値決定された細胞を、この解析から除外した。MKの直径を、非円形細胞を説明するために、面積測定から算出した。2000個超の細胞を、各条件についてカウントした。MK面積及び溶出液組成の解析を、少なくとも3つの独立したサンプルについて行った。対応するサンプルについての両側のスチューデントt検定を使用して、統計学的有意差を確立した。エラーバーは、平均周囲のある標準偏差を表す。
【0069】
生細胞顕微鏡観察
せん断培養のために、MKを、「ネイキッド」な微少流体装置(BSAコートのみ)にロードした。注入量を、12.5μL/時間から200μL/時間に、2時間にわたって漸次倍加させた。静的培養のために、単離されたMKを、3% BSAでコートしたガラスのカバースライドを、1cmの孔を有する10mmペトリ皿上に載せることにより形成されたチャンバ中にピペッティングし、24時間培養した。静的及びせん断培養を両方とも、37℃及び5% CO2で維持し、10×(開口数、0.30)Plan-Neof
luar air対物レンズを備えたZeiss Axiovert 200(Carl
Zeiss,Thornwood,NY)で調べた。CCDカメラ(Hamamatsu Photonics,Boston,MA)を使用して、2秒(せん断培養)又は20分(静的培養)のいずれかの間隔で、微分干渉(DIC)画像を得た。Metamorphバージョン7.7.2.0画像解析ソフトウェア(Molecular Devices,Sunnyvale,California,USA)及びImageJソフトウェアバージョン1.47pを使用して、画像を解析した。プロPLT伸長速度を、少なくとも3つの独立したサンプルからの200個のMKにわたって手作業で決定した。PLT展開実験のために、溶出液を、微少流体装置から2時間後に収集し、上記されたように、コートしていない静的培養チャンバ中にピペッティングした。PLTを、重力沈降によりガラスと接触させた。展開を、5秒間隔で5分間にわたって捕捉した。
【0070】
GFP-β1チューブリンレトロウイルストランスフェクション
Dendra2融合β1チューブリンを、pMSCVプラスミド中にクローニングした。パッケージング細胞であるHEK 293細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS)を補足したDMEM中で、30~50%コンフルエントに培養した。gag/pol、vsvG、及び、pMSCVベクター中でDendra2と融合したβ1チューブリンをコードする、2μg DNAプラスミドを使用して、HEK 293細胞のトランスフェクションを行った。翌日、培地を交換した後、細胞を、ウイルス産生のために、72時間インキュベートした。0.22μm フィルタ(Millipore,Billerica,MA)を通して、上清をろ過した。アリコートを、-80℃で保存した。培養の2日目に、上記された胎仔肝臓培養物から単離されたMKを、10% FBS、8μg/mL ポリブレン(Sigma)、及び前記レトロウイルス上清を含有するDMEM中に再懸濁させた。サンプルを、6ウェルプレートに移し、800×gにおいて、25℃で90分間遠心分離し、次いで、37℃で90分間インキュベートした。インキュベート後、MKを、遠心分離により洗浄し、10% FBS及びTPOを含有する新鮮なDMEM中に再懸濁させた。MKを、培養の4日目までに成熟させ、次いで、先に説明されたように、BSA勾配により単離した。
【0071】
フローサイトメトリー
血小板を、静的MK培養又はバイオリアクタ溶出液の放出されたプロPLT画分から収集し、休止状態下で調べた。サンプルを、CD42a又はCD41/61(Emfret
Analytics,Eibelstadt,Germany)に対するFITC-コンジュゲート抗体でプローブし、FACSCaliburフローサイトメーター(Beckton Dickinson)にランした。PLTを、PLTが検出器を通過する際の、その特徴的な前方及び側方散乱によりゲーティングした。FITC-コンジュゲートIgG抗体特異性コントロール(Emfret Analytics)を差し引いた後に、その合計蛍光強度を算出した。PLT収量の定量化を、正味のGP IX+PLT産生を、溶出液回収期間にわたる正味のGP IX+MK枯渇で割ることにより決定し、少なくとも3つの独立したサンプルについて行った。結果は、GP IIbIIIa+細胞と同一であった。
【0072】
画像解析
ImageJ及びAdobe Photoshop CS3(Adobe Systems,San Jose,CA)を使用して、Metamorphにおいて取得したデジタル画像を解析した。境界線は、明確に、種々の画像を分離し、又は、同じ画像の領域を分離する。画像内の特異的な特徴について、強調、ぼかし、移動、除去、又は導入は行っておらず、輝度、コントラスト及びカラーバランスに対してなされた調節は、画像全体に線形適用した。
【0073】
微少流体装置モデルのヒトBMについての生理学的特徴
生理学的条件を反復するために、前記流路をそれぞれ、フィブリノゲン及びフィブロネクチンそれぞれで選択的にコートして、BMのECM組成及び血管微小環境を再現した(
図2Aに示す)。前記微少流体装置にわたって流動をランすることにより、第1の流路に沿って注入された初代MKは、前記カラム間に連続的に捕捉されることになり、前記第2の流路内にプロPLTを伸長し(
図2Bに示す)、生理学的なプロPLTの伸長を反復するであろう。3D ECM組織化及び生理学的BM剛性(250Pa)をモデル化するために、MKを、前記微少流体内で重合された、1% アルギン酸塩溶液に注入した。前記微少流体装置は、MKを前記第1の流路内のアルギン酸塩ゲル中に選択的に包埋する一方で、前記第2の流路において、血流を維持した。アルギン酸塩は、プロPLT産生を阻害せず、前記第2の流路からのMKの距離を制御することができた。
【0074】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、前記第2の流路に沿って選択的に播種し、コンフルエントに増殖させて、機能的な血管を産生した(
図2Cに示す)。加えて、MKの挙動を、10×~150×倍の高解像での生細胞顕微鏡観察によりモニターした。放出されたPLTを、前記溶出液から収集した。
図2Dは、動作を例示する完全なシステムを示す。層流せん断速度を特徴決定し(
図2Eに示す)、2つの微少流体ポンプ(前記第1の流路用ポンプ及び前記第2の流路用ポンプ)を使用して、密接に制御した。前記装置内の
せん断速度は、注入量に対して直線的に比例し、生理学的範囲(500~2500s
-1)に広がるように調節した。空の微小流路ジャンクションにおけるせん断速度は、前記第1の流路からの距離に対して増大する(
図2Fに示す)が、MK捕捉に基づいて、流動を、次の利用可能なギャップに向きを変えさせた。これにより、MKは、これらの部位において、生理学的(760~780s
-1)せん断速度を受け続けた(
図2Gに示す)。
【0075】
血管せん断はプロPLT産生、生理学的伸長、及び放出をトリガとする
in vivoでのBMにおいて、MKは、プロPLTを、血流方向に伸長し、PLT、プロPLT、大きな細胞質フラグメント(プレPLT)、及びMK全体さえも、類洞血管内に放出し、これを、肺の微小血管床において捕捉することができ、又は、循環中で他の方法で成熟させることができる。PLT産生における生理学的せん断の効果を決定するために、マウス胎仔肝臓培養物由来(mFLC)MKを、培養4日目に単離し、前記微少流体装置内に注入する前に、サイズ及び倍数性により特徴決定した(
図3Aに示す)。
【0076】
輸血可能なPLTをin vitroで産生するのにおける主な課題の1つは、プロPLT産生をトリガする因子を特定することであった。静的条件下では、MKは、単離後約6時間で、プロPLTを産生し始め、18時間で最大プロPLT産生に達する(
図3Bに示す)。それに比べて、生理学的せん断(
図3Cに示す、約500s
-1)下でのMKは、捕捉後数秒以内に、プロPLTを産生し始め、培養の最初の2時間以内に最大プロPLT産生及びバイオチップの飽和に達した。生理学的せん断下で培養されたMKは、静的培養に対してほとんど高度に分岐していない、より少なく、より長いプロPLTを産生した。せん断培養中のプロPLTを、前記低次の流路内に均一に伸長させ、血管流路壁に対する流動方向に整列させた。このことは、生理学的なプロPLT産生を反復している。生理学的せん断下でのプロPLT産生MKの割合は、静的培養を上回って約90%に倍加した(
図3Dに示す)。
【0077】
注入用の臨床数のPLTを生成するのにおける別の主な課題は、in vitroでの培養では、in vivoにおいて観察された速度より明らかに遅い速度でプロPLTを伸長することである。本発明者らの微少流体装置における生理学的せん断の適用は、プロPLTの伸長速度を、静的培養コントロールを上回る桁まで約30μm/分に向上させた(
図3Eに示す)。この伸長速度は、生きているマウスにおける生体内顕微鏡観察からのプロPLT伸長速度の生理学的推定値と一致しており、in vitroにおけるPLT産生の増大を支持する。
【0078】
ヒト及びマウスの両方における初期の組織学研究から、MK全体及びMKフラグメントは、肺循環床に捕捉する血管内皮裏打ちBM血管におけるギャップ又は開窓により圧迫される場合があると予測されてきた。プレPLTと呼ばれる大きなPLT中間体は、血中で近年発見された。mBM及びFLC由来MK及びプレPLTのマウスへの静脈注入は、in vivoにおいてPLTを産生した。本研究では、直径100μm+のMKが、3μm(
図4Aに示す)及び1.5μmのギャップにより圧迫し、又は、大きなMKフラグメントを伸長し(
図4B示す)、血管PLT産生のモデルを支持するのをルーチンに観察された。加えて、脱離イベントが、高解像での生細胞顕微鏡観察により、ルーチンにキャプチャされ、プロPLTシャフトに沿って可変位置において生じ、プレPLTサイズの中間体(直径3~10μm)及びPLT(直径1.5~3μm)の両方を放出した(
図4C及び
図4Dに示す)。各脱離後、得られたプロPLT端は、新たなPLTサイズの膨張を先端に形成した。この膨張は、その後伸長し、放出し、このサイクルを繰り返した(
図4Eに示す)。
【0079】
せん断速度を一定に維持したが、プロPLT伸長速度は、前記シャフトに沿った種々の位置で変動しており、これにより、プロPLT伸長の制御された細胞骨格駆動メカニズム
が予測される(
図4Cに示す)。前記生理学的範囲内で微少流体せん断速度を増大させることは、培養における、中央プロPLT伸長速度又はプロPLT伸長速度の分布に影響を及ぼさなかった(
図4Fに示す)。GFP-β1を発現するようにレトロウイルス性にトランスフェクションしたMKにおけるプロPLT投影には、外周微小管(MT)が含まれた。外周微小管は、PLTサイズ端においてコイルを形成した(
図4Gに示す)。プロPLTは、5mm超の長さに達し、in vitroにおいて、最大1000s
-1のせん断速度に耐えた。このことは、生体内顕微鏡観察からのプロPLT産生の生理学的例示を反復し、脱離イベントがせん断により生じなかったことを証明している。せん断誘導プロPLT伸長が細胞骨格由来であったことを確認するために、MKを、微少流体装置への注入前に、5μM ジャスプラキノリド(Jasplankinolide)(Jas、アクチン安定化剤)又は1mM エリスロ-9-(3-[2-ヒドロキシノニル](EHNA、細胞質ダイニン阻害剤)と共にインキュベートした。Jas及びEHNAは両方とも、静的及び生理学的せん断条件下の両方において、せん断誘導プロPLT産生(
図4H及び
図4Iに示す)及びPLT放出を阻害した。
【0080】
得られたPLTは血中PLTの構造的及び機能的特性を証明する
PLTは、その表面にバイオマーカーであるGP IX及びIIbIIIaを発現する直径約1~3μmの無核の円板状細胞であり、アクチン系細胞骨格ネットワークを取り囲む6~8個のMTの皮質MTコイルにより特徴付けられる。PLT収量を確立するために、バイオマーカー発現並びに前方/側方散乱及び糖タンパク質(GP)IX+mFLC-MKの相対濃度を、培養4日目において、本発明者らの微少流体装置への注入直前に、フローサイトメトリーにより測定した(
図5Aに示す)。溶出液を、注入後2時間で収集し、mFLC-MK入力と比較した(
図5Bに示す)。入力MK及び溶出液PLTは両方とも、その表面にGP IX及びIIbIIIaを発現し、特徴的な前方/側方散乱を示した。せん断の適用により、前記溶出液の細胞組成は、培養5日目に単離した静的培養上清に対して、よりPLTサイズのGPIX+細胞に向かってシフトした(
図5Cに示す)。85±1% MKが、2時間にわたってPLTに変換された。この変換は、% プロPLT産生の本発明者らの定量(
図3D)と一致し、静的培養を上回る有意義な改善を構成する(
図5D)。本発明者らの微少流体装置への2時間にわたる約500s
-1 せん断の連続的な注入は、MK当たりに約21個のPLTを産生し、もっと長い期間(6~8日)にわたって匹敵する数のPLTを生成する既存の培養アプローチを上回るPLT産生速度の主な利点を構成する。
【0081】
本発明者らの生成物の形態学的比較を定量化するために、本発明者らの微少流体装置からの溶出液を、β1チューブリン(PLT特異的チューブリンアイソフォーム)及びHoescht(核染料)についてプローブし、免疫蛍光顕微鏡観察により分析した。細胞を、その形態及びサイズに基づいて分類し、静的MK培養上清と比較した。せん断の適用により、前記溶出液の細胞組成が、よりPLTサイズのβ1チューブリン+Hoescht-細胞にシフトした(
図5Eに示す)。このシフトは、フローサイトメトリーデータ(
図5C)と一致し、組成において、全血中のPLT中間体分布により類似する生成物をもたらした。溶出液中の遊離核の定量から、静的培養に対して増大した微少流体装置媒介性PLT産生が確認され、MK当たりに約20±12個のPLTのPLT収量が確立された。この収量は、フローサイトメトリーデータと一致する。
【0082】
休止中のPLTは、開放管系を形成する表面膜の特徴的な陥入、暗調管系を形成する残った小胞体の閉鎖流路ネットワーク、オルガネラ、特徴的な分泌顆粒を含有し、ガラスとの接触活性化時に平坦化/展開するであろう。微少流体装置生成PLTは、薄切片透過型電子顕微鏡により、マウス血中PLTと超微細構造的に区別がつかず、皮質MTコイル、開放管系、暗調小管系、ミトコンドリア、アルファ及び密顆粒を含有した(
図5Fに示す)。微少流体装置生成PLT及びPLT中間体は、免疫蛍光顕微鏡観察により、マウス血中PLTに匹敵するMT及びアクチンの組織化を表し(
図5Gに示す)、ガラスとの接触活性化時に正常に展開し、フィロポディア(filpodia)及びラメリポディアの両方を形成した。
【0083】
ヒトPLT産生への本微少流体装置の適用
ヒトPLTを生成するために、本発明者らの微少流体装置中のmFLC-MKを、hiPSC由来MKで置き換えた。hiPSC由来MKは、注入用MKの実質的に無限の供給源を提供する。hiPSC-MKを、培養15日目に単離し、その時点で、hiPSC-MKは、最大直径20~60μmに達しており(
図6Aに示す)、初代ヒトMKと超微細構造的に類似した(
図6Bに示す)。静的培養において、hiPSC-MKは、単離後6時間でプロPLTを産生し始め、18時間で最大プロPLT産生に達した(
図6Cに示す)。それに比べて、生理学的せん断(約500s
-1)下でのhiPSC-MKは、捕捉直後にプロPLTを産生し始め、培養の最初の2時間以内にプロPLTを伸長/放出した(
図6Dに示す)。せん断下での プロPLT産生hiPSC-MKパーセント(%)は、静的培養(約10%)を上回って、約90%に顕著に増大した(
図6Eに示す)。
【0084】
プロPLT伸長速度は、mFLC-MKコントロールよりわずかに低く(30μm/分に対して、約19μm/分)(
図6Fに示す)、生理学的コントロールにより密接に近似した。微少流体装置生成PLTは、前方及び側方散乱を表した。ヒト血中PLTに特徴的な表面バイオマーカー発現は、薄切片透過型電子顕微鏡により、ヒト血中PLTと超微細構造的に区別がつかず(
図6Gに示す)、免疫蛍光顕微鏡観察により、ヒト血中PLTに匹敵するMT及びアクチン発現を表し(
図6Hに示す)、ガラスとの接触活性化時に正常に展開し、フィロポディア(filpodia)及びラメリポディアの両方を形成した(
図6Iに示す)。まとめると、これらのデータから、hiPSC-MKは、潜在的に無限数の機能的なヒトPLTを生成するために、本発明者らのバイオミメティック微少流体装置に適用することができることが証明されている。
【0085】
薬剤開発への本微少流体装置の適用
血小板減少症は、突然現れ、多くの場合、意図せず、大量出血し、死亡する恐れがある。抗体及び細胞媒介性自己免疫応答が、血小板減少症を引き起こすことが示されてきた。また加えて、血小板減少症は、癌治療剤、例えば、ダサチニブを含む広い範囲の薬品によってもトリガされる場合がある。動物モデルは、一般的には、ヒトにおける薬品の安全性及び有効性の予測因子としては不十分であり、臨床研究には、時間と費用がかかり、有害である恐れもある。ヒトBMを模倣して設計された微少流体装置は、主な臨床的に重要な領域におけるイノベーションを提供し、BM及びMKの生物学に基づく各種の薬品の影響を研究するのに効率的で現実的なプラットホームを提供する。
【0086】
PLT生存及びクリアランス速度は、通常、フローサイトメトリーを使用する注入研究により測定される。しかしながら、プロPLT産生の速度及び程度の定量は、このアプローチに適しておらず、血小板新生段階に影響を及ぼすものを確立するための直接的な可視化を必要とする。対照的に、本開示に基づく微少流体システムの適用は、PLT産生における薬剤の影響を研究するのに優れたプラットホームを提供し、PLT産生の新たな制御因子の特定を容易にすることができ、臨床的に有意義な薬剤誘引血小板減少症のメカニズムを解明することができるプラットホームを提供する。
【0087】
概念の証明として、GFP・PIチューブリン発現(生細胞顕微鏡観察)メカニズムを特定するのに、ハイコンテント生細胞顕微鏡観察を利用した。このメカニズムは、現在乳ガン用に臨床開発中の抗体薬剤コンジュゲートであるトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)がPLT産生に影響を及ぼすメカニズムである。これらの研究から、T-DM1は、MK分化を阻害し、異常なチューブリン組織化を誘引することにより、プロPLT形
成を妨害することが証明された(
図7に示す)。治療剤、例えば、T-DM1がMK成熟及びプロPLT産生に影響を及ぼす経路を定義することは、薬剤誘引血小板減少症を管理し、in vivoにおけるPLT産生を制御する戦略を生む可能性がある。
【0088】
本開示のアプローチは、ヒトBM及び血管生理学をex vivoにおいて反復し、注入用の機能的なヒトPLTの代替的な供給源を生成する、非常に新規な微少流体設計を利用する。増大する輸血需要に合致し、血小板の調達及び保管に現在関連するリスクを除去するのに臨床的に望ましいが、ここまでは、2つの主な定量的障害が、治療用途のドナーに依存しないPLTの開発において存続してきた。これは、(1)1PLT輸血単位(約3×1011個 PLT)の産生を支持する十分な数(約3×108個)のヒトMKを生成
することと、(2)MK当たりに生理学的数の機能的なヒトPLT(約103~104個)を生成することとである。ヒト胚性幹細胞培養(hESC)の開発、及びごく最近、ヒト誘導多能性幹細胞培養(hiPSC)は、in vitroにおいてヒトMKに分化して、第1の定量的障害に取り組むことができる前駆体細胞の潜在的に無限の供給源を提供する。実際には、PLTは無核であるため、PLT微少流体装置由来ユニットは、hESC又はhiPSCから得られた細胞生成物が発癌性又は催奇形性である恐れがあるという懸念に取り組むため、注入前に照射される場合がある。
【0089】
PLT産生の環境決定因子を研究する試みは、還元論アプローチにより限定されてきた。2D液体培養の主な限界は、3D BM組成及び剛性、プロPLT伸長の方向性、並びに静脈内皮への接近を説明することできないことである。同様に、類洞血管に入ったプロPLT産生MKは、500~2500s-1の壁せん断速度を受けるが、ECMコートガラススライド上にMKを満たすことによる血管の流れをモデル化する試みは、固定化/付着MKを選択し、せん断によるECM接触活性化を区別することができなくしてきた。あるいは、放出されたプロPLTは、インキュベータ振とう機中で、求心性に振とうされてきた。この振とうでは、BM血管における層状せん断流動が反復されず、血管せん断速度の正確な制御が提供されず、高解像での生細胞顕微鏡観察に適していない。これらの制限にも関わらず、MKを高せん断速度(1800s-1)に曝すことは、プロPLT産生を加速させ、せん断の非存在下で培養されたプロPLTは、2時間の約0.5Paの流体せん断応力で維持されたプロPLTより、明らかに少ないPLTしか放出しなかった。さらに、多重光子生体内顕微鏡観察における近年の進歩は、in vivoにおけるプロPLT産生の解像向上を提供し、プロPLT伸長及びPLT放出における血管流の重要性を確認してきた。これらの研究により、in vivoでのプロPLT産生の生理学的に正確な事例が提供されてきたが、微小環境の不十分な解像及び限られた制御のために、BM微小環境がPLT放出にどのように関与しているのかという詳細な研究が妨げられてきた。
【0090】
細胞-細胞接触、細胞外マトリクス(ECM)組成及び剛性、血管せん断速度、pO2/pH、可溶性因子の相互作用、並びに温度が、プロPLT形成及びPLT放出に関与するという証拠を準備することは、3D微少流体培養システム内でのBM及び血管微小環境を反復することが、臨床的に有意義な数の機能的なヒトPLTを達成するのに必須であることを示唆している。実際には、モジュール式の3Dのニット状ポリエステル足場が、培養物中の1×106個のCD34+ヒト臍帯血細胞から、1日当たりに最大6×106個のPLTを産生するために、連続的な流体流動下で適用されてきた。臨床的に有用な数の培養由来ヒトPLTが得られることが示唆されているが、3D注入バイオリアクタは、BM微小環境の複雑な構造及び流体の特徴を正確に再現しておらず、その閉鎖系モジュール設計は、プロPLT産生の直接的な可視化を妨げてしまう。このため、PLT放出メカニズムの洞察をほとんど提供しない。代替的に、ECMコートシルク系チューブに隣接する3D PDMSバイオチップが、BM類洞を再現し、in vitroでのMK分化及びPLT産生を研究するのに提案されている。成熟中のMK遊走を反復することができるが、この設計は、高解像での生細胞顕微鏡観察に適しておらず、MK分化を駆動するのに必須
の内皮細胞接触を再現していない。
【0091】
それに比べて、本開示の微少流体装置設計は、PLT放出に対する時間的に有意義な改善及び増大した合計PLT収量を可能にする、完全なパッケージを提供する。また、前記微少流体装置内での血管せん断速度の適用は、プロPLT産生を誘引し、生理学的なプロPLT伸長及び放出を再現する。さらに、MKは、循環に入る小さなギャップにより圧迫することができ、生理学的な流動条件下において、プレPLT中間体を放出することができる。本開示の微少流体装置内でのMKの連続的な注入により生じた生成物は、生理学的なPLT濃度(concentraton)に近づき、血中PLTの構造的及び機能的特性の両方を証明した。最後に、PLT微少流体装置は、ヒトMK培養に適用して、機能的なヒトPLTを産生することができた。MK当たりのPLT収量は、理論的な推定値には達しなかったが、MK培養物が、大きなMKフラグメント(プレPLT、プロPLT)をルーチンに放出し、MK自体を溶出液流路内に放出したことの観察から、実際のPLT数は、支えとなる微小環境、例えば、肺又は循環の血液における、PLT中間体のPLTへの更なる分化に依存する可能性があることが示唆される。実際には、mFLC由来プロPLTがマウスに注入された場合、これらは、12~24時間にわたって、PLTに急速に変換された。興味深いことに、本研究におけるCMFDA標識PLTは、血中において容易に検出されたが、より大きなプレPLT中間体は検出されなかった。このことは、それらが、肺の微小循環で捕捉されている可能性があることを示唆している。同様に、mFLC及びBM由来MKをマウスに注入した場合、それらはほとんどが、排他的に、肺に局在し、最初の2時間以内にPLTを放出した。両方の場合において、血管せん断速度、血中での可溶性因子の相互作用、及び内皮細胞接触が、このプロセスを制御しており、これらの組織における局所的な微小環境が末端PLT産生にどのように関与しているかを試験することは、更なる調査を保証することは、ほぼ確実である。
【0092】
1つの微少流体システム内における3D ECM組成及び剛性、細胞-細胞接触、血管せん断速度、pO2/pH、可溶性因子の相互作用、並びに温度を含むBM生理機能の主な要素を組み合わせることにより、本開示のアプローチは、薬剤開発のための、ex vivoでの微小環境の前例のない制御及びバイオミメティックプラットホームを提供する。さらに、高解像での生細胞顕微鏡観察の支援により、培養中における細胞の直接的な可視化が可能となり、ほとんど特徴決定されていない生理学的プロセスに機会を提供する。最後に、前記微少流体装置設計は、中央の流路のいずれかの側の排出流路を反映させ、より多くの数のカラムを支持する前記装置に拡張し、より大きな微少流体装置マトリクス内に複数のユニットを並列に配置することにより、容易に大型化することができる。より長い装置におけるhiPSC-MKの連続的な収集は、例えば、PLT機能の伝統的な凝集検査、及び、PLTカウントの増大を測定するための免疫抑制マウスにおけるin vivo異物性輸血研究を行うのに臨床的に有意義な数のPLTをもたらすことができる。この研究には、研究当たりに、約108個のPLTを必要とする。
【0093】
まとめると、本開示は、ヒト血小板を高解像画像化に適したアプローチにおいて生成するために、ヒトBM及び類洞血管微小環境を再現するシステム及び方法を証明してきた。本開示に基づくバイオミメティック微少流体システムは、PDMS、ガラス、及び任意の他の適切な材料を使用して作製することができ、現実的な生理学的条件、例えば、流速、せん断速度、圧力差等をシミュレーションするために設計された、複数の微少流体流路及びチャンバ構成を含むことができる。したがって、本明細書に記載された微少流体システムの流路又はチャンバは、ECM及びヒト内皮細胞並びに、生理学的システムに適合する他の生物由来物質又は材料で、選択的にコートされてもよい。説明された動作の一部の状態では、本明細書で詳述された微少流体システムの種々の流路に沿って注入された、丸い又はプロPLT産生MKは、連続的に捕捉され、隣接する流路内で血小板産生プロPLTを伸ばすことができ、これにより、収集用のPLTを連続的に放出する。このようなプロ
セスは、制御可能な生理学的せん断速度及び制御された微小環境により刺激又は最適化されることができる。流体流に入った放出されたPLTは、例えば、高解像での顕微鏡観察を使用して可視化を可能にするプロセスにより、溶出液から収集することができる。
【0094】
上記で表された種々の構成は、単に例示であり、本開示の範囲を何等限定することを意味しない。本明細書で記載された構成の変形例は、当業者に明らかであろうし、このような変形例は、本願の意図した範囲内である。特に、1つ以上の上記された構成からの特徴は、上記で明確に記載されていない場合がある特徴の部分的組み合わせを含む代替的な構成を作製するように選択することができる。加えて、1つ以上の上記構成からの特徴が選択及び組み合わせられて、上記で明確に記載されていない場合がある特徴の組み合わせを含む代替的な構成を作製することができる。このような組み合わせ及び部分的な組み合わせに適した特徴は、本願をレビューした際に、全体として当業者に容易に明らかとなるであろう。本明細書に記載され、特許請求の範囲に列記された主題は、技術上の全ての適切な変更をカバーし、包含することを意図している。