(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】自力寝返り練習具
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20221205BHJP
A61G 7/07 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
A61G7/057
A61G7/07
(21)【出願番号】P 2021174563
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】521468073
【氏名又は名称】古川 文子
(73)【特許権者】
【識別番号】521469243
【氏名又は名称】有限会社辰野製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】311012734
【氏名又は名称】有限会社 山本縫製工場
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 文子
(72)【発明者】
【氏名】新谷 祐人
(72)【発明者】
【氏名】山本 益美
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0197248(US,A1)
【文献】特開2004-105352(JP,A)
【文献】特開2011-104210(JP,A)
【文献】実開平6-19723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/057
A61G 7/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者が横臥する敷き寝具に対して固定された略帯状の下側滑りシートと、この下側滑りシートの上に重ねて設置された略帯状の上側滑りシートと、この上側滑りシートの両端側に対して連結された力増幅部とを具備しており、前記下側滑りシート及び上側滑りシートは敷き寝具に横臥した対象者の腰部から臀部にかけての位置に設置されており、対象者が力増幅部の操作部を操作すると、操作部に加えられた力が増幅されて上側滑りシートに伝わって上側滑りシートが敷き寝具の横方向に変位するようになっていることを特徴とする自力寝返り練習具。
【請求項2】
前記上側滑りシートは、前記対象者に接する側には滑らない素材からなる上面シートが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自力寝返り練習具。
【請求項3】
前記下側滑りシートは、敷き寝具に固定されたベースシートの表面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の自力寝返り練習具。
【請求項4】
前記上側滑りシートと前記ベースシートとは、帯状の弾性体で連結されており、この弾性体は、上側滑りシートに対する力増幅部からの力が解除されると、上側滑りシートを初期位置に復帰させる方向に力を与えることを特徴とする請求項3記載の自力寝返り練習具。
【請求項5】
前記力増幅部は、動滑車を利用していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の自力寝返り練習具。
【請求項6】
前記力増幅部は、加えられた力を増幅するアクチュエーターを利用していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の自力寝返り練習具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者が睡眠中に意識しなくても寝返りを行うことができるように練習するための自力寝返り練習具に関する。
【背景技術】
【0002】
寝返りは、褥瘡の防止のためにも非常に重要な身体の動きである。
しかしながら、寝たきりの高齢者や病人にとって寝返りは困難な動きであることも多い。寝返りが多いと、認知症の原因の一つとされているアミロイドβの排出をより促進されるという研究結果(Hedok Lee.Lulu Xie.Mei Yu. Hongyi Kang. Tian Feng. Rashid Deane. XJean Logan.XMaiken Nedergaard.XHelene Benveniste(2015) The Effect of Body Posture on Brain Glymphatic Transport The Journal of Neuroscience, August 5, 2015 )がある。
この研究結果では、特に、左右側臥位への寝返りは仰臥位や腹臥位に比較してアミロイドβの排出がより増加すると報告されている。すなわち、寝返りが多いということは、左右側臥位への寝返りが増加し側臥位をとる機会が増えるので、よりアミロイドβの排出が促進されるのである。
発明者は、長年の研究の結果、寝返りには異なるタイプがあることを見出した。
筋力ではなく反射を利用した寝返りは、乳児の寝返りと同様のものであり最も身体に無理をかけない自然な寝返りであることが判明した。この自然な寝返りでは、腰部の反射が生じていることが判明した。
かかる睡眠中の効率的な頸反射や腰反射による寝返りは、睡眠中断を回避することに繋がり、睡眠の質の向上に貢献することができる。また、効率的な寝返りは、余分な労作を低減できる、といったメリットもある。
【0003】
発明者は、寝たきりの高齢者等であっても自発的で自然な寝返りを行わせることにより、アミロイドβの排出をより促進することで、認知症の発生を抑制、遅延させることができるのではないかと考えた。
しかし、寝たきりの高齢者等はすでに筋力が弱っており、自発的で自然な寝返りを行えるようになる練習を行うことすら困難であった。
【0004】
ところで寝たきりの高齢者に寝返りを行わせるものとしては、特開2010-200865号公報にて開示された『寝返りシート』や、実公平06-017923号公報にて開示された『介助補助具』等がある。
【0005】
まず、特開2010-300865号公報にて開示された『寝返りシート』は、『敷き布団側に配置される下シートと人体側に配置される上シートの少なくとも2枚のシートが互いに滑面を介して重ね合わされており、前記上シートと下シートとが前記塵芥の背骨に平行な方向への相対移動を妨げるように、両者を一体化する一体化手段が設けられ』たものである。
この『寝返りシート』は、介助者の手助けを借りることなく自力での寝返りを援助するものである。
【0006】
また、実公平06-017923号公報にて開示された『介助補助具』は、『仰向け状態の患者の腰部下面に配設され患者の腰部を略覆う大きさのシート状体と、このシート状体の側端部に着脱自在に取り付けられる寝返り用回転バーとから』なるものである。
この『介助補助具』は、寝返り時の介助者の労力を低減するものである。
【0007】
【文献】特開2010-200865号公報
【文献】実公平06-017923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1にて開示されたものは、自発的な寝返りを行える者を援助するものであって、すでに自発的な寝返りが行えない者にとっては使用できないものである。
また、特許文献2にて開示されたものは、自発的な寝返りが行えない者に対する介助者の労力を低減するものであり、自発的な寝返りを行うことができない者に自発的な寝返りを行うことができるようにするものではない。
いずれにせよ、自発的な寝返りを行えない者が自発的な寝返りを行えるようにするための練習を行うものではない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、自発的な寝返りを行えない者が睡眠中に意識しなくても自発的に自然な寝返りを行えるようにするための自力寝返り練習具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る自力寝返り練習具は、対象者が横臥する敷き寝具に対して固定された略帯状の下側滑りシートと、この下側滑りシートの上に重ねて設置された略帯状の上側滑りシートと、この上側滑りシートの両端側に対して連結された力増幅部とを備えており、前記下側滑りシート及び上側滑りシートは敷き寝具に横臥した対象者の腰部から臀部にかけての位置に設置されており、対象者が力増幅部の操作部を操作すると、操作部に加えられた力が増幅されて上側滑りシートに伝わって上側滑りシートが敷き寝具の横方向に変位するようになっている。
【0011】
また、前記上側滑りシートには、前記対象者に接する側に滑らない素材からなる上面シートが設けられている。
【0012】
さらに、前記下側滑りシートは、敷き寝具に固定されたベースシートの表面に設けられている。
【0013】
前記上側滑りシートと前記ベースシートとは、帯状の弾性体で連結されており、この弾性体は、上側滑りシートに対する力増幅部からの力が解除されると、上側滑りシートを初期位置に復帰させる方向に力を与えるようになっている。
【0014】
前記力増幅部は、動滑車を利用したり、加えられた力を増幅するアクチュエーターを利用したりしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る自力寝返り練習具は、敷き寝具に横臥した対象者が操作部を操作することより、横臥した対象者の腰部から臀部にかけて位置する上側滑りシートが横方向に変位するので、対象者はこの上側滑りシートの横方向への変位を利用して自然な寝返りを練習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具を構成する下側滑りシートと上側滑りシートと敷き寝具との関係を示す概略的分解斜視図である。なお、
図1では弾性体は省略している。
【
図2】本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具の下側滑りシートの敷き寝具との関係を示す概略的平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具の概略的平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具を構成する力増幅部の概略的斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具を構成する力増幅部の概略的正面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具がセットされたベッドに対象者が横臥した状態を示す概略的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る自力寝返り練習具1000は、対象者Hが横臥する敷き寝具2000に対して固定された略帯状の下側滑りシート1100と、この下側滑りシート1100の上に重ねて設置された略帯状の上側滑りシート1200と、この上側滑りシート1200の両端側に対して連結された力増幅部1300とを備えており、前記下側滑りシート1100及び上側滑りシート1200は敷き寝具2000に横臥した対象者Hの腰部から臀部にかけての位置に設置されており、対象者Hが力増幅部1300の操作部1310を操作すると、操作部1310に加えられた力が増幅されて上側滑りシート1200に伝わって上側滑りシート1200が敷き寝具2000の横方向に変位するようになっている。
【0018】
敷き寝具2000としては、ベッドのマットレスや敷布団が該当する。本明細書では、敷き寝具2000としてベッドのマットレスを想定しているが、本発明がこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0019】
敷き寝具2000には、横臥した対象者Hの腰部から臀部に相当する位置に横長略帯状の下側滑りシート1100が固定されている。
この下側滑りシート1100は、敷き寝具2000に直接固定されているのではなく、下側滑りシート1100より大きな横長略帯状のベースシート1110に固定されている。このベースシート1100は、敷き寝具2000の裏面側にまで回り込むような長さ寸法に設定されており、敷き寝具2000の裏面側にその一部を配置することで敷き寝具2000に固定される。
下側滑りシート1100は、ベースシート1110が敷き寝具2000に固定されると、敷き寝具2000の表面側に位置するようになっている。
【0020】
ベースシート1110の敷き寝具2000における位置を調整することで、下側滑りシート1100の敷き寝具2000における位置も調整することができるようになっている。このため、下側滑りシート1100は、横臥する対象者Hの体格に応じて位置を調整することができるので、横臥する対象者Hの腰部から臀部にかけて確実に配置されるようになる。
【0021】
一方、上側滑りシート1200は、下側滑りシート1100と略同じサイズに設定されている。かかる上側滑りシート1200は、上側滑りシート1200より若干大きく設定された上面シート1210の裏面側に設けられている。すなわち、対象者Hは上面シート1210に接触するので、対象者Hは上側滑りシート1200には直接接触しないようになっている。
そして、上側滑りシート1200は下側滑りシート1100と接触するようになっている。
【0022】
上面シート1210の両端部は、
図1や
図3に示すように角部1211が突出して形成されている。この三角部1211には、後述する力増幅部1300の第2の伝達部1330の端部がリング1212を介して連結されている。
【0023】
なお、上側滑りシート1200や下側滑りシート1100には、全方向への滑り抵抗が低いナイロン製のシートが使用される。このシート同士を重ね合わせ、上側のシートに物体を乗せた状態で上側のシートを引っ張ると、上側のシートと下側のシートとの間の滑り抵抗が低いのでこの種のシートを使用しない場合より小さな力で物体を移動させることができる。
【0024】
このように構成された上側滑りシート1200と下側滑りシート1100とは、
図3に示すように、重ね合わされた状態で設置される。
また、前記下側滑りシート1100が取り付けたベースシート1110と、上側滑りシート1200が取り付けらたれた上面シート1210との間は、複数の(図面では6つ)帯状の弾性体1400で連結されている。この弾性体1400は、上側滑りシート1200に対する力増幅部1300からの力が解除されると、上側滑りシート1200を初期位置に復帰させる方向に力を与えるものである。
【0025】
前記力増幅部1300は、1つの敷き寝具2000に対して左右に1組ずつ、合計2組が設けられている。
1つの力増幅部1300は、対象者Hが手で引っ張る操作部1310と、操作部1310からの力を増幅する増幅機構1340と、この操作部1310からの力を増幅機構1340に伝える第1の伝達部1320と、増幅機構1340からの力を上側滑りシート1200の両端側に伝える第2の伝達部1330と、増幅機構1340を組み込んだフレーム1350とを有している。
前記第1の伝達部1320と第2の伝達部1330とには、ロープが使用される。
【0026】
前記操作部1310は、対象者Hが把持する把持部である。この操作部1310は、対象者Hが握りやすいように木製のグリップが使用されている。
この操作部1310には、前記第1の伝達部1320の一端側に連結されている。
【0027】
前記増幅機構1340は、
図4及び
図5に示すように、4組の定滑車1341A、1341B、1342A、1342Bと、1組の動滑車1341Cとを有している。
この増幅機構1340は、敷き寝具2000であるマットレスが設置されるベッドのベッドフレーム2100の左右両側にそれぞれ1つずつ取り付けられる。すなわち、この増幅機構1300は上側滑りシート1200に対して左右両方向から力を加えることができるように、ベッドフレーム2100の左右両側にそれぞれ1つずつ設けるのである。
【0028】
なお、本明細書では、前記1組の動滑車1341Cと4組の定滑車1341A、1341B、1342A、1342Bのうち、第1の伝達部1320と対応している1組の動滑車群1341C及び2組の定滑車1341A、1341Bを入力側滑車群1341、第2の伝達部1330と対応している残りの2組の定滑車1342A、1342Bを出力側滑車群1342と称する。
【0029】
入力側滑車群1341を構成する1組の動滑車1341Cは、同じ径を有する2つの滑車1341C1、1341C2を同軸に設けたものであり、略凹字形状の動滑車枠1341Dに回転可能に支持されている。
前記動滑車枠1341Dは、フレーム1350に設けられたスライド溝1351に沿って移動するようになっている。前記スライド溝1351は、鉛直方向に沿って形成されている。
なお、前記動滑車枠1341Dの下端には、第2の伝達部1330が連結される連結部1341D1が設けられている。
【0030】
また、入力側滑車群1341を構成する第2の定滑車1341Bは、同じ径を有する2つの滑車1341B1、1341B2を同軸に組み合わせたのであり、前記スライド溝1351の鉛直上側に回転可能に支持されている。
さらに、入力側滑車群1341を構成する第2の定滑車1341Bは、第1の滑車1341Aより下側、かつスライド溝1351より上側に回転可能に支持されている。
また、第1の定滑車1341Aは、スライド溝1351より側方に位置している。
【0031】
第1の伝達部1320は、上述したように一端側に操作部1310か連結されている。
また、この第1の伝達部1320の他端は、フレーム1350に連結固定されている。
かかる第1の伝達部1320は、第1の定滑車1341A、第2の定滑車1341Bの外側の滑車1341B1、動滑車1341Cの外側の滑車1341C1、第2の定滑車1341Bの内側の滑車1341B2、動滑車1341Cの内側の滑車1341C2を介して、フレーム1350に連結固定される。
従って、操作部1310が引っ張られると、動滑車1341C自体がスライド溝1351に沿って上方向に引っ張り上げられることになる。
【0032】
一方、出力側滑車群1342を構成する第3の定滑車1342Aは、スライド溝1351より下側、かつ第1の定滑車1341Aとは反対の側でフレーム1350に回転可能に支持されている。
【0033】
また、出力側滑車群1342を構成する第4の定滑車1342Bは、第2の定滑車1341Bより上側でフレーム1350に回転可能に支持されている。
しかも,この第4の定滑車1342Bは、その上側が前記上側滑りシート1200とほぼ同一水平面に位置し、かつ前記上側滑りシート1200が取り付けられた上面シート1210の三角部1211のリング1212のほぼ真横に位置するように設定されている。
【0034】
なお、第1~第3の定滑車1341A、1341B、1342A、1342B及び動滑車1341Cがその回転軸を敷き寝具2000の長手方向に対して直交した方向としているのに対して、第4の定滑車1342Bはその回転軸を敷き寝具2000の長手方向に対して平行としている。
【0035】
かかる出力側滑車群1342に対応している第2の伝達部1330は、一端が動滑車枠1341Dの連結部1341D1に連結され、第3の定滑車1342A、第4の定滑車1342Bを介して他端が上側滑りシート1200の連結リング1212に連結されている。
【0036】
このように構成された力増幅部1340は、以下のように作動する。
敷き寝具2000の右側に設置された力増幅部1300の操作部1310を引っ張ると、上側滑りシート1200に右側に向かってスライドする。
詳細すると、右側の操作部1300を引っ張る力は、第1の伝達部1320を介して入力側滑車群1341によってその方向を変えて動滑車枠1341Dに伝わり、動滑車枠1341Dをスライド溝1351に沿った形で上方向に向かって引っ張り上げる。
上方向に向かって引っ張り上げられた動滑車枠1341D、第2の伝達部1330を介して、出力側滑車群1342によってその方向を変えられて上側滑りシート1200を右側へと変位させる。
【0037】
力増幅部1340には、2つの滑車1341C1、1341C2から構成された動滑車1341が存在するので、この動滑車1341Cが存在しない場合と比較すると約1/4の力で上側滑りシート1200を右側へと変位させることが可能となっている。
【0038】
すなわち、対象者Hが上側滑りシート1200の上に横臥した状態で右側の操作部1310を引っ張ると、上側滑りシート1200が僅かに右側へと移動する。この上側滑りシート1200の右側への移動に伴って対象者Hの腰部も僅かに右側へと移動する。この移動により対象者Hの身体は略くの字状になり、腰反射が発現する。
この時、対象者Hが顔面を左方向に向けて(頸反射の出現)、右足踵で軽く敷き寝具2000を蹴ると身体は左側へと向きやすくなり左側臥位が完成する。すなわち、左側への寝返り動作を実現することができる。
特に、力増幅部1300が存在するので、対象者Hは弱い力であっても上側滑りシート1200の変位を容易に実現することができるようになっている。
なお、左側の操作部1310を引っ張ると、右側への寝返り動作が容易に行えるようになる。
【0039】
自発的な寝返りを行えない対象者Hが、自身の力で操作部1310を引っ張ることによって生じる上側滑りシート1200の横方向への変位を利用することで、寝返り動作を練習することができる。この練習を繰り返して行うことで、対象者Hは睡眠中に意識しなくても自発的で自然な寝返りを反射として行うことができるようになる。
その練習の結果、自発的な寝返りを行えない者であっても睡眠中に意識しなくても自然で自発的な寝返りを行うことができるようになる。
【0040】
なお、上側滑りシート1200から腰を浮かせた状態で操作部1310への引っ張りを解除すると、上側滑りシート1200とベースシート1110との間に設けられた帯状の弾性体1400が上側滑りシート1200を初期位置に復帰させる力を与える。このため、上側滑りシート1200は初期位置へと復帰するので、繰り返して寝返りの練習を行うことができる。
【0041】
上述した実施の形態では、力増幅部1300は、4組の定滑車1341A、1341B、1342A、1342Bと、1組の動滑車1341Cと、これらの滑車1341A、1341B、1342A、1342B、1341Cが取り付けられるフレーム1350とから構成されていたが、本発明に係る自力寝返り練習具1000を構成する力増幅部1300は、これに限定されることはない。
【0042】
例えば、この力増幅部1300は、対象者Hが操作部1310を引っ張る力に比例して上側滑りシート1200を引っ張る力を出力するようなモーター、動力シリンダー、変速機構、制御部等からなるアクチュエーターによって構成することも可能である。
ただし、操作部1310を引っ張るように構成することなく、単なるスイッチにしてしまうことは望ましくない。
なぜなら、操作部1310を単なるスイッチとしてしまうと、対象者Hが自身の力で操作部1310を引っ張るという行為がなくなるので、自然で自発的な寝返りの行うための練習にならなくなるためである。
【0043】
また、この自力寝返り練習具1000は、敷き寝具2000とは別体のものであるので、任意のベッドや敷蒲団に取り付けることができる。
このため、この自力寝返り練習具1000を使用するために専用のベッド等を導入する必要がなく、それまで使用していたベッド等を流用できるので、導入のハードルは大幅に低くなっている。
【符号の説明】
【0044】
1000 自力寝返り練習具
1100 下側滑りシート
1200 上側滑りシート
1300 力増幅部
1310 操作部
2000 敷き寝具
H 対象者
【要約】 (修正有)
【課題】自発的な寝返りを行えない者が睡眠中に意識しなくても自発的に自然な寝返りを行えるようにするための自力寝返り練習具とする。
【解決手段】対象者Hが横臥する敷き寝具2000に対して固定された略帯状の下側滑りシートと、この下側滑りシートの上に重ねて設置された略帯状の上側滑りシート1200と、この上側滑りシート1200の両端側に対して連結された力増幅部1300とを備えており、前記下側滑りシート及び上側滑りシート1200は敷き寝具2000に横臥した対象者Hの腰部から臀部にかけての位置に設置されており、対象者Hが力増幅部1300の操作部1310を操作すると、操作部1310に加えられた力が増幅されて上側滑りシート1200に伝わって上側滑りシート1200が敷き寝具2000の横方向に変位するようになっている。
【選択図】
図6